(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
穴を具備する歯車と、前記穴を通る軸とを有するとともに、前記穴の内周面と前記軸との間のクリアランスに保持されるグリース組成物を有し、前記歯車が前記軸の周面上で回転するものであり、前記歯車及び前記軸のうちの少なくも一方が樹脂製のものであり、前記クリアランスが10〜110[μm]の範囲であり、前記グリース組成物が、炭化水素系基油と、増ちょう剤としてのリチウム石けんとを含有し、前記炭化水素系基油と前記リチウム石けんとの重量比(炭化水素系基油:リチウム石けん)を94.5:5.5〜96.0:4.0の範囲に調整され、且つちょう度を360〜400の範囲に調整されたものであり、前記炭化水素系基油の40[℃]の条件下における動粘度が20[mm2/s]以下であることを特徴とする駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した駆動装置や画像形成装置の実施形態について説明する。
まず、本発明者らが行った実験について説明する。本発明者らは、自らの穴に通された軸の周面上で回転する歯車のスムーズな回転をどのようにして良好に維持することができるかの研究を行うにあたり、歯車の穴と、これに通された軸との関係を考察した。そして、歯車の穴の内周面と、その穴を通る軸との間の摩擦は、流体摩擦の状態であることが理想であり、歯車の穴の内周面と、穴を通る軸との間に、グリース組成物を長期間に渡って安定的に介在させることが重要であることがわかった。また、比較的固いグリース組成物を歯車の穴の内周面とその穴を通る軸との間に塗布した場合には、非常に微小な隙間が生じてしまい、歯車のスムーズな回転が維持できないこともわかった。更には、比較的柔らかいグリース組成物を塗布した場合、塗布直後には、歯車の穴の内周面とその穴を通る軸との間に介在するものの、長期間経過すると、両者間に微小な隙間が生じてしまい、歯車のスムーズな回転を維持できなくなることもわかった。微小な隙間が生じてしまうのは、歯車が軸の周面上で回転するのに伴って柔らかいグリース組成物の流出を促してしまうからである。
【0015】
そこで、本発明者らは、以下に説明する実験を行った。
まず、グリース組成物1を次に列記する処方で調合した。
・粘度24mm
2/sの合成油:74wt%
・リチウム石けん:9wt%
・PTFE:5wt%
・二硫化モリブデン:4wt%
・メラミンシアヌレート:8wt%
このグリース組成物1のちょう度(JIS K2220)は300であった。
【0016】
次に、グリース組成物2を次に列記する処方で調合した。
・粘度12mm
2/sの合成油:90wt%
・リチウム石けん:3.8wt%
・スチレン系添加剤:6.2wt%
このグリース組成物2のちょう度は370であった。
【0017】
図1は、実験に使用された試験用駆動装置920を示す概略構成図である。この試験用駆動装置920において、すべり軸受け904は、第1側板909及び第2側板910にそれぞれ設けられている。それら2つのすべり軸受け904を通る軸903には、第2歯車908が固定されている。第1側板909及び第2側板910には、それらの側板の間に架け渡された固定軸913が回転不能に固定されている。そして、固定軸913には、貫通穴を有する第1歯車911が挿入されており、固定軸913はその第1歯車911を回転自在に支持している。この第1歯車911は、同一軸線上で回転する原動側歯車部911a及び従動側歯車部911bを有しており、それら歯車部は一体形成されている。
【0018】
すべり軸受け904に回転自在に支持されている軸903の一端部には、被駆動物914が固定されている。モーターギヤ902は、第1歯車911の原動側歯車部911aに噛み合っている。モーターギヤ902の回転駆動力は、第1歯車911、第2歯車908、及び軸903を介して被駆動物914に伝わる。
【0019】
この試験用駆動装置920における各部材の条件は、次の表1に示す通りである。
【表1】
【0020】
この試験用駆動装置920において、第1歯車911と、その貫通穴を通る固定軸913との間のクリアランスを測定した。具体的には、第1歯車911の貫通穴の径を全周に渡って測定し、そのうちの最大値及び最小値を特定した。また、固定軸913の直径を軸全周に渡って測定し、そのうちの最大値及び最小値を特定した。次に、第1歯車911の穴径の最大値から固定軸913の直径の最小値を減算した結果を、クリアランス最大値として求めた。また、第1歯車911の穴径の最小値から固定軸913の直径の最大値を減じた結果を、クリアランス最小値として求めた。最大値、最小値ともに、μmの単位で値を求め、小数点第一位で四捨五入したところ、それぞれの結果は40[μm]で一致した。なお、以下、他の実験においてもクリアランスについて同様に測定しているが、何れも最大値を小数点第一位で四捨五入した値と、最小値を小数点第一位で四捨五入した値とが一致した。
【0021】
試験用駆動装置920のどこにもグリース組成物を塗布しない状態で、モーター901を2900rpmの速度で回転させ、150秒後に装置全体から発生している騒音をグリースなし時の騒音として測定した。
【0022】
以下、比較的良好な結果を示した実験条件に対して「実施例」という名称を付すのに対し、良好でない結果を示した実験条件に対して「比較例」という名称を付すことにする。
[比較例1]
第1歯車911の穴の内周面と、その穴を通る固定軸913との間にグリース組成物1を塗布し、モーター901を2900rpmの速度で回転させ、4分後に装置全体から発生している騒音を測定し、その結果をグリースなし時の騒音から減じた値を騒音改善量として求めた。なお、この結果がマイナスの値である場合には、実際には、その値は騒音改善量ではなく、騒音悪化量である。
【0023】
[実施例1]
第1歯車911の穴の内周面と固定軸913との間にグリース組成物2を塗布し、モーター901を2900rpmの速度で回転させ、4分後に装置全体から発生している騒音を測定し、その結果をグリースなし時の騒音から減じた値を騒音改善量として求めた。
【0024】
[実施例2]
固定軸913として、実施例1で用いたものの代わりに、第1歯車911の穴の内周面との間のクリアランスを10μmにするものを用いた点の他は、実施例1と同様の条件にして騒音改善量を求めた。
【0025】
[比較例2]
固定軸913として、比較例1で用いたものの代わりに、第1歯車911の穴の内周面との間のクリアランスを10μmにするものを用いた点の他は、比較例1と同様の条件にして騒音改善量を求めた。
【0026】
[比較例3]
固定軸913として、実施例1で用いたものの代わりに、第1歯車911の穴の内周面との間のクリアランスを7μmにするものを用いた点の他は、実施例1と同様の条件にして騒音改善量を求めた。
【0027】
[比較例4]
固定軸913として、比較例1で用いたものの代わりに、第1歯車911の穴の内周面との間のクリアランスを7μmにするものを用いた点の他は、比較例1と同様の条件にして騒音改善量を求めた。
【0028】
これらの結果を表2に示す。
【表2】
この結果から、ちょう度が比較的大きいグリース組成物を用い、且つ、クリアランスを比較的大きくすることで、騒音を効果的に抑え得ることがわかった。
【0029】
次に、表3に示す処方に従って、グリース組成物3〜グリース組成物12を調合した。なお、基油およびリチウム石けんからなるベースグリース組成物に、スチレン系添加剤を使用する場合には、予め基油に均一分散させておいたスチレン系添加剤と基油の混合物と、添加剤とを加えて撹拌し、潤滑グリース組成物を調製した。
【表3】
【0030】
表2に示される各成分の具体的な物質名は、次の通りである。
・基油a:ポリアルファオレフィン(40℃の条件下で18mm
2/s)。
・基油b:エチレン−アルファオレフィンオリゴマー(40℃の条件下で9850mm
2/s)。
・リチウム石けん:12ヒドロキシステアリン酸リチウム。
・オレフィン系樹脂粉末:ポリエチレンパウダー(平均粒径12μm)。
・スチレン系添加剤:水添スチレン・イソプレンブロック共重合体(スチレン含有量36wt%)。
・酸化防止剤:ADEKA社製アデカスタブQL。
・腐食防止剤:BASF社製イルガメット39。
【0031】
表3における基油粘度、ちょう度、リチウム石けん割合は、次のようにして測定された値である。
・基油粘度:JIS K 2283に従って測定した40℃における動粘度。
・ちょう度:JIS K 2220に従って測定した混和ちょう度。
・リチウム石けん割合:基油とリチウム石けんの総重量に対するリチウム石けんの割合。
【0032】
[実施例3]
固定軸913として、実施例1で用いたものの代わりに、第1歯車911の穴の内周面との間のクリアランスを55μmにするものを用い、且つ、グリース組成物2の代わりにグリース組成物3を用いた点の他は、実施例1と同様の条件にして騒音改善量を求めた。
【0033】
[実施例4]
固定軸913として、実施例1で用いたものの代わりに、第1歯車911の穴の内周面との間のクリアランスを80μmにするものを用い、且つ、グリース組成物2の代わりにグリース組成物3を用いた点の他は、実施例1と同様の条件にして騒音改善量を求めた。
【0034】
[実施例5]
固定軸913として、実施例1で用いたものの代わりに、第1歯車911の穴の内周面との間のクリアランスを110μmにするものを用い、且つ、グリース組成物2の代わりにグリース組成物3を用いた点の他は、実施例1と同様の条件にして騒音改善量を求めた。
【0035】
[比較例5]
固定軸913として、実施例1で用いたものの代わりに、第1歯車911の穴の内周面との間のクリアランスを130μmにするものを用い、且つ、グリース組成物2の代わりにグリース組成物3を用いた点の他は、実施例1と同様の条件にして騒音改善量を求めた。
【0036】
これらの結果を、表4に示す。
【表4】
【0037】
この結果と、表2の結果とから、騒音を効果的に抑えるためには、クリアランスを10〜110μmの範囲に設定する必要があることがわかった。
【0038】
[実施例5〜8、比較例6〜10]
実施例3と同様に、固定軸913として、第1歯車911の穴の内周面との間のクリアランスを55μmにするものを用いた。第1歯車911の穴の内周面と固定軸913との間に何も介在させずに、モーター901を2500rpmの速度で回転させ、2分後に装置全体から発生する騒音を測定した。次に、第1歯車911の穴の内周面と固定軸913との間にグリース組成物4を塗布し、モーター901を2500rpmの速度で回転させ、90分後に装置全体から発生する騒音をグリースなし時の騒音として測定した。そして、その測定結果を、グリースなし時の騒音から減じた結果を騒音改善量として求めた。グリース組成物5〜12についても、同様にして騒音改善量を求めた。
【0039】
これらの結果を、表5に示す。
【表5】
【0040】
[実施例9〜11、比較例11〜12]
【0041】
実施例3と同様に、固定軸913として、第1歯車911の穴の内周面との間のクリアランスを55μmにするものを用いた。第1歯車911の穴の内周面と固定軸913との間に何も介在させずに、モーター901を3000rpmの速度で回転させ、3分後に装置全体から発生する騒音をグリースなし時の騒音として測定した。次に、グリース組成物を試験用駆動装置920における第1部位P1及び第2部位P2に塗布した。第1部位P1は、すべり軸受け904と軸903との間の部位である。また、第2部位P2は、固定軸913と第1歯車911の穴内周面との間の部位である。第1部位P1及び第2部位P2にグリース組成物を塗布後、モーター901を3000rpmの速度で回転させ、50分後に装置全体から発生する騒音を測定した。そして、その結果をグリースなし時の騒音から減じた値を騒音改善量として求めた。グリース組成物としては、実施例9ではグリース組成物4、実施例10ではグリース組成物5、実施例11ではグリース組成物6をそれぞれ用いた。また、比較例11ではグリース組成物1、比較例12ではグリース組成物9をそれぞれ用いた。
【0042】
この実験の結果を表6に示す。
【表6】
【0043】
表4及び表6から、騒音を効果的に抑えるためには、グリース組成物として、次のようなものを用いなければならないことがわかる。即ち、炭化水素系基油とリチウム石けんとの重量比(炭化水素系基油:リチウム石けん)が94.5:5.5〜96.0:4.0の範囲であり、且つ、ちょう度が360〜400の範囲であるグリース組成物である。
【0044】
[実施例12〜14、比較例13]
グリース組成物4を、第1部位P1及び第2部位P2に加えて、第3部位P3及び第4部位P4にも塗布した点の他は、実施例9と同様にして騒音改善量を求めた。この実験を、実施例12とした。第3部位P3は、第1歯車911の従動側歯車部911bの歯面、及び第2歯車の歯面である。また、第4部位P4は、モーターギヤ902の歯面、及び第1歯車911の原動側歯車部911aの歯面である。
【0045】
グリース組成物5を第1部位P1及び第2部位P2に加えて、第3部位P3及び第4部位P4にも塗布した点の他は、実施例10と同様にして騒音改善量を求めた。この実験を、実施例13とした。また、グリース組成物6を第1部位P1及び第2部位P2に加えて、第3部位P3及び第4部位P4にも塗布した点の他は、実施例11と同様にして騒音改善量を求めた。この実験を、実施例14とした。また、グリース組成物1を第1部位P1及び第2部位P2に加えて、第3部位P3及び第4部位P4にも塗布した点の他は、比較例11と同様にして騒音改善量を求めた。この実験を、比較例13とした。
【0046】
これらの実験の結果を表7に示す。表6との比較から、グリース組成物を歯車の歯面にも塗布することで、更に効果的に騒音を抑え得ることがわかる。
【表7】
【0047】
[実施例15〜16、比較例14]
モーター901を固定しているブラケット915として、板厚=1.6mmのものから、板厚=1.0mmのものに変更した。このように変更した改良機において、第1部位P1、第2部位P2、第3部位P3、及び第4部位P4の全てにグリース組成物を塗布して騒音を測定した。そして、測定結果を、板厚=1.6mmのブラケット915を使用して測定したグリースなし時の騒音から減じた値を、騒音改善量として求めた。グリース組成物4を用いた実験条件を実施例15とし、グリース組成物5を用いた実験条件を実施例16とし、グリース組成物1を用いた実験条件を比較例14とした。実施例15における騒音改善量は、2.0dBであった。また、実施例16における騒音改善量は、1.6dBであった。また、比較例14における騒音改善量は、−0.6dBであった。グリース組成物を塗布せずに頑丈で強固なブラケット915(板厚=1.6mm)を用いるよりも、グリース組成物を塗布してブラケット915を薄いものにする方が、騒音を低く抑え得ることがわかった。
【0048】
[実施例17、18]
画像形成装置として、株式会社リコー社製のIPSiO SP4310を用意した。この画像形成装置から発せられる騒音をグリースなし時の騒音として測定した。その後、画像形成装置の定着装置を除く作像部に設けられた全てのすべり軸受け及びそれを通る軸について、両者間にグリース組成物4を塗布した。また、定着装置を除く全ての歯面のうち、75%の箇所にも、グリース組成物を塗布した。そして、28℃、75%RHの環境下で100000枚の記録紙にテスト画像を出力した後に、装置全体から発せられる騒音を測定し、騒音改善量を求めた(実施例17)。また、グリース組成物4の代わりにグリース組成物5を用いた点の他は同様にして、騒音改善量を求めた(実施例18)。すると、騒音改善量は、実施例17、18で、4.5dB、4.5dBであり、良好な結果を得ることができた。
【0049】
以上のように、自らの穴に通された軸の周面上で回転する歯車の穴の内周面と、その穴を通る軸とのクリアランスを10〜110μmの範囲に設定し、且つちょう度が360〜400の範囲であるグリース組成物を、クリアランス内に塗布することが、騒音を有効に抑えるための条件であることがわかった。また、グリース組成物としては、炭化水素系基油(A)と、増ちょう剤としてのリチウム石けん(B)とを含有し、(A)と(B)の比率が94.5:5.5〜96.0:4.0であるものを用いることも、騒音を有効に抑えるための条件であることがわかった。
【0050】
そこで、本発明に係る駆動装置は、穴を具備する歯車と、前記穴を通る軸とを有するとともに、前記穴の内周面と前記軸との間のクリアランスに保持されるグリース組成物を有し、前記歯車が前記軸の周面上で回転するものであり、前記すべり軸受け及び前記軸のうちの少なくも一方が樹脂製のものであり、前記クリアランスが10〜110[μm]の範囲であり、前記グリース組成物が、炭化水素系基油と、増ちょう剤としてのリチウム石けんとを含有し、前記炭化水素系基油と前記リチウム石けんとの重量比(炭化水素系基油:リチウム石けん)を94.5:5.5〜96.0:4.0の範囲に調整され、且つちょう度を360〜400の範囲に調整されたものであることを特徴とするものである。
【0051】
また、本発明に係る駆動装置は、駆動モーターの回転エネルギーを複数の歯車を介して被駆動物に伝達して、被駆動物を駆動させるものである。必要に応じて、複数の歯車に加えて、ベルトやプーリーを設けてもよい。被駆動物の数は、基本的には一つであるが、複数でもかまわない。また、本発明に係る駆動装置において、複数の歯車を介して、駆動モーターの回転速度を、減速あるいは加速することで、適切な速度で被駆動物を駆動させるようにしてもよい。
【0052】
また、本発明に係る駆動装置は、歯車として、穴を具備し、その貫通穴に固定軸が挿入された状態で、固定軸上で回転する歯車を少なくとも1つ有するものである。その歯車に加えて、すべり軸受けを通る軸に固定されて、その軸とともに回転する歯車を設けてもよい。
【0053】
本発明に係る駆動装置は、穴を具備する歯車と、その穴を通る軸との組み合わせとして、歯車及び軸の少なくとも一方が樹脂製であるものを、少なくとも1組有している。歯車、あるいは歯車の穴を通る軸の一方として、軽量で加工性に優れた樹脂製のものを用いることにより、小型、軽量で低コストの駆動装置を提供することができる。
【0054】
本発明に係る駆動装置に用いられる軸(歯車の穴に通されるもの)の材料としては、金属系材料、樹脂系材料のいずれを用いることも可能であるが、歯車にかかる力を受け止めながら歯車のスムーズな回転を維持するのに必要な強度を発揮させるという観点からすると、金属系材料を用いることが好ましい。更に、耐久性、加工性、コストを考慮すると、ステンレス鋼又は快削鋼であることが特に好ましい。
【0055】
本発明に係る駆動装置に用いられる穴を具備する歯車の材料としては、金属系材料、樹脂系材料の何れを用いることも可能であるが、軽量性やコストを考慮すると、樹脂系材料が好ましい。フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂などを例にすることができる。耐久性やコストを考慮すると、ポリアセタール樹脂が最も好ましい。
【0056】
本発明に係る駆動装置に用いられる歯車の穴の内周面と、その穴を通る軸とのクリアランスは、10〜110μm、好ましくは20〜100μm、さらに好ましくは25〜90μmである。クリアランスが10μmよりも小さいと、組立及び駆動時に歯車あるいは軸が接触して傷つき易く、歯車の回転が不安定となり、騒音が大きくなるとともに、歯車あるいは軸の耐久性が低下するので、好ましくない。また、クリアランスが110μmを超えると、歯車の回転が不安定になるため、騒音が大きくなるとともに、歯車の耐久性が低下するので、好ましくない。
【0057】
図2は、実施形態に係る駆動装置の要部を示す要部構成図である。実施形態に係る駆動装置は、少なくとも、同図に示されるように、回転不能に固定された軸302と、自らの穴に通された軸302の周面上で回転する歯車301とを有するものである。軸302は、2つの側板の間に架け渡された状態で回転不能に固定されている。駆動装置には、歯車301及び軸軸302の組み合わせが1組以上設けられている。
【0058】
歯車301の穴の内周面と軸302との間には、グリース組成物(以下、実施形態に係るグリース組成物ともいう)が介在している。このグリース組成物は、炭化水素系基油(A)と、増ちょう剤としてのリチウム石けん(B)とを含有するものである。炭化水素系基油(A)とリチウム石けん(B)との比率は、94.5:5.5〜96.0:4.0の範囲である。また、同グリース組成物のちょう度は360〜400の範囲である。このグリース組成物が、歯車301の穴の内周面と軸302との間で流体油膜圧力を発揮して軸302を支持することで、軸302を摩擦抵抗なく非常にスムーズに回転させて、騒音の発生はほとんど無くす。これにより、歯車301及び軸302の寿命を半永久的な長さで確保することができる。
【0059】
実施形態に係る駆動装置において、自らの穴に通された軸302の周面上で回転する歯車301と、その穴を通る軸302との組み合わせ(以下、「歯車軸組」という)を複数設けた場合には、全ての「歯車軸組」における歯車301の穴の内周面と軸302との間に前記グリース組成物を介在させることが望ましい。但し、歯車301の回転速度が比較的低く、且つトルクが小さい「歯車軸組」であれば、コスト的な観点から、歯車301の穴の内周面と軸302との間に前記グリース組成物を介在させなくてもよい。しかし、全ての「歯車軸組」のうち、少なくとも1つについては、歯車の穴の内周面と軸302との間に前記グリース組成物を介在させている。
【0060】
また、実施形態に係る駆動装置は、同図に示される歯車301の他にも、図示しない歯車を有している。それらの歯車の歯面にも、実施形態に係るグリース組成物を塗布することが、駆動装置から発生する騒音をより抑制することが可能になるという効果が得られるので好ましい。歯面に塗布するグリース組成物として、実施形態に係るグリース組成物とは別の、騒音防止用に一般的に用いられているグリース組成物を用いても良い。しかし、一般的に用いられている騒音防止用のグリース組成物を誤って、歯車301の穴の内周面と軸302との間に介在させると、騒音を悪化させてしまう可能性が高いので、駆動装置の組立工程では、グリース組成物を間違えないように細心の注意が必要である。実施形態に係るグリース組成物は、歯車の歯面に塗布されて使用される場合でも、優れた歯面間で優れた騒音抑制効果を発揮する。このため、駆動装置の組立工程の簡略化及び、騒音防止の観点からすると、歯面に塗布するグリース組成物も、実施形態に係るグリース組成物と同じものを用いることが好ましい。
【0061】
実施形態に係るグリース組成物のちょう度は、既に述べたように、360〜400の範囲であり、好ましくは365〜395の範囲である。これに対し、ちょう度が360よりも小さいグリース組成物では、歯車301の穴の内周面と軸302との間に均等に介在しながら流体油膜圧力を均等に維持することが難しいことから、騒音を却って大きくするとともに、歯車301や軸302の耐久性を低下させるおそれがあるので、好ましくない。また、ちょう度が400よりも大きいグリース組成物では、歯車301の穴の内周面と軸302との間に10〜110μmのクリアランスが設けられているという条件にて、次のような挙動をとるおそれがあることから、好ましくない。即ち、駆動装置の駆動に伴い、歯車301の穴の内周面と軸302との間から、外部に流出して流体油膜圧力を均等に維持することが難しくなり、騒音を却って大きくするとともに、歯車301や軸302の耐久性を低下させてしまうのである。また、騒音の更なる抑制を図ったり、歯車の耐久性を向上させたりする狙いで、ちょう度400以上のグリース組成物を駆動装置の歯車の歯面に塗布する場合には、駆動装置の駆動に伴って歯車の歯面からグリース組成物を飛散させ易くなる。これにより、駆動装置やその周囲機器を汚染するとともに、騒音を抑制したり歯車の耐久性を向上させたりするという効果を長期間に渡って安定して得ることが困難になるため、好ましくない。なお、グリース組成物のちょう度は、JIS K 2220に準拠して測定されるものである。
【0062】
実施形態に係るグリース組成物において、炭化水素系基油(A)と、増ちょう剤としてのリチウム石けん(B)との比率は、94.5:5.5〜96.0:4.0の範囲である。基油量に対する増ちょう剤の量が前述の範囲よりも多いと、グリース組成物が硬くなって撹拌抵抗を大きくするおそれがある。また、基油量に対する増ちょう剤の量が前述の範囲よりも少ないと、グリース組成物が軟化し漏洩する可能性があるため、好ましくない。
【0063】
実施形態に係るグリース組成物の炭化水素系基油としては、鉱物油、合成油の種類を問わず、また単独・混合の別を問わず、あらゆる炭化水素系基油を使用することが可能である。例えば、パラフィン系、ナフテン系に代表される鉱物油、ジエステル、ポリオールエステルに代表されるエステル系合成油、ポリアルファオレフィン、アルファオレフィンオリゴマー、ポリブテン、ポリイソブチレンに代表されるオレフィン系合成油、アルキレンジフェニルエーテル、ポリアルキレンエーテルに代表されるエーテル系合成油等が挙げられる。好ましくは、樹脂材への攻撃性が比較的小さく、耐熱性と低温性のバランスに優れるオレフィン系合成油がよい。これらの基油を単独で、若しくは2種類以上混合して使用することが可能である。但し、歯車をスムーズに回転させ、駆動装置全体としての騒音を低減するためには、基油の動粘度を、40℃において20mm
2/s以下にすることが好ましい。
【0064】
実施形態に係るグリース組成物の増ちょう剤としては、単独・複合を問わず、あらゆるリチウム石けんが使用可能である。例えば、モノカルボキシル脂肪酸またはヒドロキシモノカルボシル脂肪酸のリチウム塩およびリチウム石けんの製造に使用される種子油等の植物油、動物油またはこれらから誘導される脂肪酸類のリチウム塩等が挙げられる。好適には、モノカルボキシル脂肪酸またはヒドロキシモノカルボキシル脂肪酸のリチウム塩であり、特に、炭素原子数8〜12のモノカルボキシル脂肪酸またはヒドロキシモノカルボキシル脂肪酸のリチウム塩が好ましい。さらに具体的には、モノカルボキシル脂肪酸のリチウム塩として、ラウリン酸、ミチスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ミリストオレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸およびリノレン酸のリチウム塩が例示され、ヒドロキシモノカルボキシル脂肪酸のリチウム塩として、12−ヒドロキシステアリン酸、14−ヒドロキシステアリン酸、16−ヒドロキシステアリン酸、6−ヒドロキシステアリン酸、9,10−ヒドロキシステアリン酸のリチウム塩が例示される。さらに、金属製部材と樹脂製部材からなる潤滑部に対する耐久性に優れる直鎖状モノカルボキシル脂肪酸または直鎖状ヒドロキシモノカルボキシル脂肪酸が好ましく、更に具体的には、ステアリン酸リチウム、または12−ヒドロキシステアリン酸リチウムを用いることが好ましい。
【0065】
実施形態に係るグリース組成物には、炭化水素系基油と、リチウム石けんの他に、添加剤として、用途に応じて、固体潤滑剤、増粘剤、酸化防止剤、極圧剤、油性剤、防錆剤、腐食防止剤、金属不活性剤、染料、色相安定剤、粘度指数向上剤、構造安定剤等、通常配合される添加剤を添加してもよい。なかでも、油膜切れによる潤滑不良を防止し、歯車をスムーズに回転させ、駆動装置全体としての騒音を低減し、耐久性を向上させるために、固体潤滑剤を配合することが好ましい。かかる固体潤滑剤としては、単独・複合を問わず、あらゆる固体潤滑剤を使用することが可能である。例えば、メラミンシアヌレート、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、黒鉛、雲母、フッ化黒鉛に代表される層状化合物、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)に代表されるフッ素樹脂、二酸化チタン、酸化亜鉛に代表される金属酸化物、ポリオレフィン、ポリアミドに代表される合成樹脂等の粉末が挙げられる。歯車のスムーズな回転を継続するために、ちょう度が360〜400の範囲である非常に柔らかいグリース組成物中で分散し易いオレフィン系樹脂粉を固体潤滑剤として用いることが好ましい。この固体潤滑剤としてのオレフィン系樹脂粉の含有量は、グリース組成物全体基準で1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがさらに好ましい。オレフィン系樹脂粉が多すぎると、歯車やギアの回転抵抗が大きくなる可能性があるため、好ましくない。
【0066】
また、実施形態に係るグリース組成物は、ちょう度が360〜400と非常に柔らかいため、歯車の穴の内周面と軸との摺動部からのグリース組成物のたれ落ち、飛散を防止し、歯車をスムーズに回転させ、駆動装置全体としての騒音を低減し、耐久性を向上させるという狙いから、スチレン系増粘剤を用いることが好ましい。このスチレン系増粘剤の含有量は、グリース組成物全体基準で1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがさらに好ましい。スチレン系増粘剤量が多すぎると、炭化水素系基油とリチウム石けんの比率が94.5:5.5〜96.0:4.0の範囲において、ちょう度を360〜400に調整できず、さらに歯車やギアの回転抵抗が大きくなる可能性があり、スチレン系増粘剤量が少なすぎると、歯車の穴の内周面と軸との摺動部からのグリース組成物のたれ落ち、飛散を防止し、歯車をスムーズに回転させ、駆動装置全体としての騒音を低減し、耐久性を向上させるという、スチレン系増粘剤に期待される役割を果たせない可能性があるため、好ましくない。
【0067】
実施形態に係る駆動装置は、騒音の発生が少なく、耐久性にも優れるため、様々な装置に搭載することが可能である。静かなオフィスや密封空間、深夜等の静寂な環境下で稼働する装置や、人のすぐ近くで稼働する装置などである。特に、熱転写方式、感熱式、インクジェット方式、電子写真方式等を用いた画像形成装置(プリンタ、FAX、複写機、複合機など)には、次に説明する理由により、好適に用いることができる。即ち、かかる画像形成装置は、家庭やオフィスで広く用いられるものであり、その小型化に伴い、ユーザーのすぐ近くに配置されるようなり、騒音の抑制が強く求められるようになってきたからである。
【0068】
また、実施形態に係るグリース組成物を介在させる位置では、樹脂と樹脂との摩擦係数、樹脂と金属もしくは合金との摩擦係数、又は、金属もしくは合金と金属もしくは合金との摩擦係数が経時に渡って低いことが好ましい。特にオレフィン系樹脂粉を用いたグリース組成物においては、次の摩擦係数が0.15以下、好ましくは0.13以下、さらに好ましくは0.01〜0.12を経時に渡って維持できることが大変望ましい。ここで言う摩擦係数は、往復動試験機を用いて、そのグリース組成物を塗布した板上で1/2インチ球を摺動させた試験における10サイクル〜2000サイクルでの摩擦係数である。なお、往復動試験機を用いた摩擦係数の測定において、サイクル初期(10サイクル未満)は、グリース組成物の塗布状態に応じて摩擦係数の測定値が安定しないことがある。よって、グルース組成物が安定な塗布状態となる10サイクル〜2000サイクルで摩擦係数を測定することが重要である。
【0069】
実施形態に係るグリース組成物であって、且つオレフィン系樹脂粉を用いたものは、摩擦係数が経時に渡って低いため、駆動装置の信頼性向上にも大いに貢献する。参考のため、実施例19(実施例5で用いられたグリース組成物4を用いた例)や、画像形成装置の駆動装置に従来から用いられているグリース組成物を用いた場合の摩擦係数を、
図4に示される装置によって測定した。図示のように、この装置は、錘801、1/2インチナイロン66球(アミランCM3001−N)802、ロードセル805等を具備している。従来から用いられているグリース組成物としては、比較例15(オレフィン系油/Liせっけん/PTFE/メラミンシアヌレート、ちょう度:333)、比較例16(ジメチルシリコーン油/Liせっけん、ちょう度:357)、比較例17(パーフルオロエーテル油/PTFE、ちょう度:250)、及び比較例18(オレフィン系油/ウレア、ちょう度:262)を用いた。測定については、次のようにして行った。まず、それぞれのグリース組成物(同図における803)を個別にPOM板(ジュラコンSW−01)804上に0.1[mm]の厚さで塗布した。そして、荷重0.49[N]、摺動速度60[cpm]、摺動距離40[mm]の条件で1/2インチナイロン66球(商品名:アミランCM3001−N)802を滑らせた際の摩擦係数を測定した。
【0070】
摩擦係数の測定結果を
図5にグラフとして示す。図示のように、実施例19は、従来から一般的に用いられている比較例15、16、17、18のグリース組成物に比べて摩擦係数が低く、摩擦サイクルの変動に対する摩擦係数の変動が少なくて安定していることがわかる。
【0071】
次に、POM板(ジュラコンSW−01)804の代わりに真鍮板(C2801P)を用い、1/2インチナイロン66球(アミランCM3001−N)802の代わりにPOM球(ジュラコンM90−02)を用いて、同様にして摩擦係数を測定した。この測定結果を
図6にグラフとして示す。この測定結果においても、実施例19は、従来から一般的に用いられている比較例15、16、17、18のグリース組成物に比べて摩擦係数が低く、摩擦サイクルの変動に対する摩擦係数の変動が少なくて安定している。
【0072】
次に、POM板(ジュラコンSW−01)の804代わりに鋼板(SPCC)を用い、1/2インチナイロン66球(アミランCM3001−N)802の代わりに鋼球(SUS304)を用いて、同様にして摩擦係数を測定した。この測定結果を
図7にグラフとして示す。この測定結果においても、実施例19は、従来から一般的に用いられている比較例15、16、17、18のグリース組成物に比べて摩擦係数が低く、摩擦サイクルの変動に対する摩擦係数の変動が少なくて安定している。
【0073】
実施形態に係るグリース組成物は保存性にも優れている。特に、実施形態に係るグリース組成物にスチレン系増粘剤を用いた場合には、JIS K 2220に従って測定された離油度が極めて低い。離油度を0.2%以下、好ましくは0.15%以下、さらに好ましくは0.1%以下にすることも可能であり、保存性や安定性にも優れている。このように、実施形態に係るグリース組成物であって且つスチレン系増粘剤を用いたものは、駆動装置の信頼性向上に大いに貢献する。
【0074】
参考までに、実施形態に係るグリース組成物(実施例19)と、比較例15、16、17、18のグリース組成物とについて、離油度の経時変化を測定してみた。具体的には、JIS K 2220に準拠した離油度測定方法により、100℃で100時間までの期間における離油度の経時変化を測定した。この結果を
図8にグラフとして示す。実施例19は、比較例15、16、17、18のグリース組成物に比べて離油度の経時変動が少なく、100℃で100時間までの期間内においては、実質的に離油度が経時変動しないものである。よって、実施例19は、優れた保存性や安定性を発揮することができる。
【0075】
次に、本発明に係る駆動装置を複数搭載した、実施形態に係る画像形成装置について説明する。なお、非常に優れた騒音の抑制効果を発揮し得る実施形態に係る画像形成装置は、本発明に係る画像形成装置の一例であり、本発明に係る画像形成装置は、実施形態に係る画像形成装置に限定されるものではない。
【0076】
図3は、実施形態に係る画像形成装置100を示す概略構成図である。画像形成装置100は、画像形成を行う本体(プリンタ部)110と、この本体110の上部に設置された原稿読取部(スキャナ部)120と、その上に設置された原稿自動給紙装置(ADF)130と、本体110の下部に設置された給紙部200とを備えており、複写機の機能を有している。また、画像形成装置100は、外部装置との通信機能を有しており、装置外部のパーソナルコンピューター等と接続することにより、プリンタやスキャナとして用いることができる。更には、電話回線や光回線と接続することにより、ファクシミリとして用いることもできる。
【0077】
本体110内には、互いに同じ構成で且つ使用するトナー色が異なる4つの画像形成部(画像形成ステーション)10が並設されている。これら4つの画像形成部10は、互いに異なる色(例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))のトナーを用いて互いに異なる色のトナー像を形成する。そして、各色のトナー像を中間転写媒体7に重ね合わせて転写して多色またはフルカラー画像を形成することができる。
【0078】
4つの画像形成部10は、複数のローラに張架されたベルト状の中間転写媒体7に沿って並設されており、それら画像形成部10で形成された各色のトナー像は、中間転写媒体7に順次重ね合わせて転写される。その後、二次転写装置12によって紙等のシート状の転写媒体に一括して転写される。
【0079】
4つの画像形成部10は、それぞれドラム状の感光体1(1Y,1M,1C,1K)の周囲に、保護剤塗布装置2、帯電装置3、潜像形成装置8から発せられる書込光(例えばレーザー光)を感光体1に導くための露光部、現像装置5、一次転写装置6、クリーニング装置4などを有している。また、各色の画像形成部10は、それぞれ、感光体1、保護剤塗布装置2(クリーニング装置4を含む)、帯電装置3、現像装置5を共通のカートリッジ内に保持したプロセスカーリッジを有している。このプロセスカートリッジは、本体110に対して着脱可能に構成されている。
【0080】
次に、画像形成装置100の動作について説明する。画像形成のための一連のプロセスについて、ネガ?ポジプロセスを例にして説明する。なお、4つの画像形成部10の動作は互いに同じであるので、以下、1つの画像形成部の動作を例にして説明する。
【0081】
有機光導電層を有する有機感光体(OPC)等に代表される像担持体としてのドラム状の感光体1は、除電ランプ(図示せず)等によって除電された後、帯電部材(例えば帯電ローラ)を有する帯電装置3によって均一にマイナス極性に帯電される。帯電装置3による感光体1の帯電が行なわれる際には、電圧印加機構(図示せず)から帯電部材に対し、感光体1を所望の電位に帯電させるのに適した、適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した帯電電圧が印加される。
【0082】
帯電した感光体1は、例えば複数のレーザー光源と、カップリング光学系と、光偏向器と、走査結像光学系などからなる、レーザー走査方式の潜像形成装置8から照射されるレーザー光によって光走査される。感光体1の表面の全域のうち、この光走査によって露光された箇所は、静電潜像(露光部電位の絶対値は、非露光部電位の絶対値より低電位になっている)になる。このとき、レーザー光源(例えば半導体レーザー)から発せられたレーザー光は、高速で回転する多角柱の多面鏡(ポリゴン)等からなる光偏向器によって偏向走査され、走査レンズやミラー等からなる走査結像光学系を介して感光体1の表面を、感光体1の回転軸方向(主走査方向)に走査する。
【0083】
このようにして感光体1の表面に形成された潜像は、現像装置5の現像剤担持体である現像ローラ51の現像スリーブ上に担持されたトナー粒子、またはトナー粒子及びキャリア粒子の混合物からなる現像剤により現像され、これによってトナー像が形成される。潜像の現像時には、電圧印加機構(図示せず)から現像ローラ51の現像スリーブに対し、感光体1の露光部と非露光部との間の値で且つ適当な大きさの電圧またはこれに交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。
【0084】
このようにして各色の画像形成部10の感光体1上に形成されたトナー像は、転写ローラ等からなる一次転写装置6によって中間転写媒体7上に順次重ね合わせて一次転写される。一方、画像形成動作及び一次転写動作にタイミングを合わせて、給紙部200の多段の給紙カセット201a,201b,201c,201dの中のうち、任意の1つが選択される。そして、選択された給紙カセットから、給紙ローラ202及び分離ローラ203からなる給紙機構で紙等のシート状の転写媒体が給紙され、搬送ローラ204,205,206及びレジストローラ207を経て二次転写部に搬送される。
【0085】
二次転写部では、二次転写装置(例えば二次転写ローラ)12により、中間転写媒体7上のトナー画像が二次転写部に搬送されてきた転写媒体に二次転写される。なお、上述の転写工程において、一次転写装置6や二次転写装置12には、転写バイアスとして、トナーの帯電極性と逆極性の電位が印加されることが好ましい。
【0086】
二次転写部を通過した転写媒体は、中間転写媒体7から分離される。また、一次転写後に感光体1上に残存するトナー粒子は、クリーニング装置4のクリーニング部材41によって、クリーニング装置4内のトナー回収室へ、回収される。また、二次転写後に中間転写媒体7上に残存するトナー粒子は、ベルトクリーニング装置9のクリーニング部材によって、クリーニング装置9内のトナー回収室へ、回収される。
【0087】
画像形成装置100は、各色の画像形成部10が中間転写媒体7に沿って複数配置された、いわゆるタンデム型の構成になっており、中間転写方式によって転写媒体に画像を形成するものである。既に述べたように、各色の画像形成部10の感光体1(1Y,1M,1C,1K)上に形成した互いに色の異なるトナー像を中間転写媒体7上に順次重ね合わせて転写した後、それらを一括して転写紙等の転写媒体に転写する。そして、転写後の転写媒体を、搬送装置13によって定着装置14に送り込み、転写装置14内において熱等によってトナー像を転写媒体に定着させる。定着装置14を通過した転写媒体は、搬送装置15及び排紙ローラ16によって排紙トレイ17に排出される。
【0088】
画像形成装置100は、両面プリント機能も備えており、両面プリント時には、片面だけに画像が定着された転写媒体を搬送する際に、定着装置14よりも下流側で搬送路を切換えて、その転写媒体を両面用搬送装置210に送る。そして、両面用搬送装置210内で表裏反転させた転写媒体を、搬送ローラ206及びレジストローラ207によって二次転写部に再搬送して、その裏面にも画像を二次転写する。その後、転写媒体を定着装置14に再搬送して転写媒体の裏面の画像を定着させた後、転写媒体を排紙トレイ17に送って機外に排出する。
【0089】
なお、タンデム型の中間転写方式に代えて、タンデム型の直接転写方式を採用してもよい。この場合、中間転写媒体7の代わりに、転写媒体を担持搬送する転写ベルト等を用い、4つの画像形成部10の感光体1(1Y,1M,1C,1K)上に順次形成した互いに色の異なるトナー像を転写ベルト上の転写媒体に対して直接重ね合わせて転写する。そして、その転写媒体を定着装置14に送り、熱等によって画像を転写媒体に定着させる。
【0090】
以上の構成の画像形成装置は、感光体1、クリーニング装置4、現像装置5、1次転写装置6、中間転写媒体7を張架しながら無端移動させるための駆動ローラ、各種搬送ローラなどをそれぞれ個別に駆動するために、複数の駆動装置を備えている。それら駆動装置における少なくとも1つとして、実施形態に係る駆動装置を採用している。但し、発熱する定着装置14においては、熱で軟化したグリースの流出等のおそれがあることから、実施形態に係る駆動装置とは別の駆動装置を用いている。
【0091】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、穴を具備する歯車(例えば歯車301)と、前記穴を通る軸(例えば軸302)とを有するとともに、前記穴の内周面と前記軸との間のクリアランスに保持されるグリース組成物を有し、前記歯車が前記軸の周面上で回転するものであり、前記歯車及び前記軸のうちの少なくも一方が樹脂製のものであり、前記クリアランスが10〜110[μm]の範囲であり、前記グリース組成物が、炭化水素系基油と、増ちょう剤としてのリチウム石けんとを含有し、前記炭化水素系基油と前記リチウム石けんとの重量比(炭化水素系基油:リチウム石けん)を94.5:5.5〜96.0:4.0の範囲に調整され、且つちょう度を360〜400の範囲に調整されたものであることを特徴とするものである。
【0092】
かかる構成においては、歯車の穴の内周面と軸との間のクリアランスを適切な値にし、グリース組成物として、炭化水素系基油とリチウム石けんとの重量比やちょう度をそれぞれ適切な範囲に調整したものをクリアランス内に存在させることにより、歯車の軸の周面上におけるスムーズな回転を維持しつつ、騒音の発生を抑えることができる。
【0093】
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記軸が、金属(合金を含む)製のものであることを特徴とするものである。かかる構成においては、歯車の穴を通る軸として金属製のものを用いることにより、軸を強固なものとしてその長寿命化を図ることができる。更に、その軸を通される歯車として、軽量で生産コストの低い樹脂製のものを用いたとしても、騒音の発生を有効に抑えることができる。
【0094】
[態様C]
態様Cは、態様Bであって、前記軸が、ステンレス鋼製あるいは快削鋼製であることを特徴とするものである。かかる構成では、強度の高いステンレス鋼あるいは快削鋼からなる軸を用いる場合であっても、騒音の発生を抑えることができる。
【0095】
[態様D]
態様Dは、態様A〜Cの何れかであって、前記歯車がポリアセタール樹脂製であることを特徴とするものである。かかる構成においては、軸の周面上で回転する歯車として、軽量で生産コストの低いポリアセタール樹脂からなるものを用いる場合であっても、騒音の発生を抑えることができる。
【0096】
[態様E]
態様Eは、態様A〜Dの何れかであって、前記炭化水素系基油の40[℃]の条件下における動粘度が20[mm
2/s]以下であることを特徴とするものである。かかる構成においては、40℃の条件下における動粘度が20mm
2/s以下である炭化水素系基油を含有するグリース組成物を、歯車の穴の内周面と軸との間に隙間なく介在させて、歯車の回転をスムーズなものにすることを可能にして、騒音の発生を有効に抑えることができる。
【0097】
[態様F]
態様Fは、態様A〜Eの何れかであって、前記グリース組成物が、オレフィン系樹脂粉末を含有しているものであることを特徴とするものである。かかる構成においては、炭化水素系基油に良好に分散するオレフィン系樹脂粉末を歯車の穴の内周面と軸との間に均一に介在させることで、騒音の発生を有効に抑えることができる。
【0098】
[態様G]
態様Gは、態様A〜Fの何れかであって、前記歯車の歯面と、これに噛み合う他の歯車の歯面とにそれぞれグリース組成物が保持されており、それらのグリース組成物が炭化水素系基油と、増ちょう剤としてのリチウム石けんとを含有し、前記炭化水素系基油と前記リチウム石けんとの重量比(炭化水素系基油:リチウム石けん)を94.5:5.5〜96.0:4.0の範囲に調整され、且つちょう度を360〜400の範囲に調整されたものであることを特徴とするものである。かかる構成においては、歯車の穴の内周面と軸との間、及び、その歯車の歯面と、その歯車に噛み合う他の歯車の歯面とにそれぞれ介在させるグリース組成物として、同じ処方のものを用いることで、駆動装置の組み立ての際における作業性を向上させて(グリース組成物の塗布場所違えを回避する)、生産性を向上させることができる。
【0099】
[態様H]
態様Hは、態様A〜Gの何れかであって、前記クリアランス内に保持されるグリース組成物がスチレン系増粘剤を含有しているものであることを特徴とするものである。かかる構成においては、スチレン系増粘剤をグリース組成物に含有させることにより、グリース組成物のオイル分離がなくなることから、オイル分離による不具合を回避しつつ、騒音の発生を抑えることができる。
【0100】
[態様I]
態様Iは、画像形成装置において、態様A〜Hの何れかの駆動装置を用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、駆動装置からの騒音の発生を有効に抑えることができる。
【0101】
[態様J]
態様Jは、グリース組成物であって、
請求項1乃至8に記載の駆動装置に用いられることを特徴とするものである。かかる構成では、グリース組成物が駆動装置からの騒音の発生を有効に抑えることができる。