特許第6528907号(P6528907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6528907エネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔およびエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6528907
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔およびエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20190531BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20190531BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20190531BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20190531BHJP
   H01G 11/28 20130101ALI20190531BHJP
【FI】
   H01M4/02 Z
   H01M4/04 Z
   H01M4/66 A
   H01M2/26 A
   H01G11/28
【請求項の数】25
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2018-527985(P2018-527985)
(86)(22)【出願日】2017年11月29日
(86)【国際出願番号】JP2017042753
(87)【国際公開番号】WO2018101306
(87)【国際公開日】20180607
【審査請求日】2018年8月1日
(31)【優先権主張番号】特願2016-235100(P2016-235100)
(32)【優先日】2016年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴野 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】畑中 辰也
(72)【発明者】
【氏名】吉本 卓司
【審査官】 松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−132876(JP,A)
【文献】 特開2016−186882(JP,A)
【文献】 特開2014−116317(JP,A)
【文献】 特開平08−304035(JP,A)
【文献】 特開2012−238418(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/042080(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02−62
H01G 11/28
H01M 2/26
H01M 4/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電基板と、この集電基板の少なくとも一方の面に形成されたアンダーコート層とを有するエネルギー貯蔵デバイス電極であり、前記アンダーコート層が形成され、かつ、活物質層が形成されていない部分において、前記集電基板と金属タブとが超音波溶接によって溶接された電極構造体を作製するために用いられるエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔であって、
上記集電基板が、アルミニウム箔であり、
上記アンダーコート層が、カーボンナノチューブおよび分散剤を含み、かつ、SCI方式で測定される、L***表色系の明度L*が53以上100未満を示し、厚さが1〜00nmであることを特徴とするエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔。
【請求項2】
上記明度L*が54以上93以下である請求項1記載のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔。
【請求項3】
上記明度L*が54以上88以下である請求項1記載のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔。
【請求項4】
上記アンダーコート層の厚さが30〜80nmである請求項記載のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔。
【請求項5】
集電基板と、この集電基板の少なくとも一方の面に形成されたアンダーコート層とを有するエネルギー貯蔵デバイス電極であり、前記アンダーコート層が形成され、かつ、活物質層が形成されていない部分において、前記集電基板と金属タブとが超音波溶接によって溶接された電極構造体を作製するために用いられるエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔であって、
上記集電基板が、銅箔であり、
上記アンダーコート層が、カーボンナノチューブおよび分散剤を含み、かつ、SCI方式で測定される、L***表色系の明度L*が36以上100未満を示し、厚さが1〜00nmであることを特徴とするエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔。
【請求項6】
上記明度L*が40以上80以下である請求項記載のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔。
【請求項7】
上記明度L*が45以上80以下である請求項記載のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔。
【請求項8】
上記アンダーコート層の厚さが30〜80nmである請求項記載のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔。
【請求項9】
上記分散剤が、側鎖にオキサゾリン基を含むビニル系ポリマーまたはトリアリールアミン系高分岐ポリマーを含む請求項1〜のいずれか1項記載のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項記載のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔と、そのアンダーコート層の表面の一部に形成された活物質層とを有するエネルギー貯蔵デバイス電極。
【請求項11】
上記活物質層が、上記アンダーコート層の周縁を残し、それ以外の部分全体を覆う態様で形成された請求項10記載のエネルギー貯蔵デバイス電極。
【請求項12】
請求項10または11記載のエネルギー貯蔵デバイス電極を備えるエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項13】
一枚または複数枚の請求項11記載の電極と、金属タブとを備えて構成される電極構造体を少なくとも一つ有し、
上記電極の少なくとも一枚が、上記アンダーコート層が形成され、かつ、上記活物質層が形成されていない部分で上記金属タブと超音波溶接されているエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項14】
一枚または複数枚の請求項11記載の電極を用いたエネルギー貯蔵デバイスの製造方法であって、
上記電極の少なくとも一枚を、上記アンダーコート層が形成され、かつ、上記活物質層が形成されていない部分で金属タブと超音波溶接する工程を有するエネルギー貯蔵デバイスの製造方法。
【請求項15】
集電基板と、この集電基板の少なくとも一方の面に形成された厚さが1〜100nmであるアンダーコート層とを有するエネルギー貯蔵デバイス電極であり、前記アンダーコート層が形成され、かつ、活物質層が形成されていない部分において、前記集電基板と金属タブとが超音波溶接によって溶接された電極構造体を作製するために用いられるエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法であって、
集電基板であるアルミニウム箔上の少なくとも一方の面にカーボンナノチューブおよび分散剤を含むアンダーコート層形成用組成物を塗布し、これを乾燥してアンダーコート層を形成した後、
SCI方式で、上記アンダーコート層のL***表色系の明度L*を測定し、当該明度L*が53以上100未満であることを確認した後、さらに
上記アンダーコート層表面の少なくとも一部に活物質層を形成するエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法。
【請求項16】
上記明度L*を54以上93以下とする請求項15記載のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法。
【請求項17】
上記明度L*を54以上88以下とする請求項15記載のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法。
【請求項18】
上記アンダーコート層の厚さが30〜80nmである請求項17記載のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法。
【請求項19】
上記活物質層を、上記アンダーコート層の周縁を残し、それ以外の部分全体を覆う態様で形成する請求項1518のいずれか1項記載のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法。
【請求項20】
集電基板と、この集電基板の少なくとも一方の面に形成された厚さが1〜100nmであるアンダーコート層とを有するエネルギー貯蔵デバイス電極であり、前記アンダーコート層が形成され、かつ、活物質層が形成されていない部分において、前記集電基板と金属タブとが超音波溶接によって溶接された電極構造体を作製するために用いられるエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法であって、
集電基板である銅箔上の少なくとも一方の面にカーボンナノチューブおよび分散剤を含むアンダーコート層形成用組成物を塗布し、これを乾燥してアンダーコート層を形成した後、
SCI方式で、上記アンダーコート層のL***表色系の明度L*を測定し、当該明度L*が36以上100未満であることを確認した後、さらに
上記アンダーコート層表面の少なくとも一部に活物質層を形成するエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法。
【請求項21】
上記明度L*を40以上80以下とする請求項20記載のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法。
【請求項22】
上記明度L*を45以上80以下とする請求項20記載のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法。
【請求項23】
上記アンダーコート層の厚さが30〜80nmである請求項22記載のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法。
【請求項24】
上記活物質層を、上記アンダーコート層の周縁を残し、それ以外の部分全体を覆う態様で形成する請求項2023のいずれか1項記載のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法。
【請求項25】
上記分散剤が、側鎖にオキサゾリン基を含むビニル系ポリマーまたはトリアリールアミン系高分岐ポリマーを含む請求項2024のいずれか1項記載のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜およびエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタをはじめとしたエネルギー貯蔵デバイスは、電気自動車や電動機器などの用途に対応するために高容量化と充放電の高速化が求められている。
この要求に応えるための一つの方策として、活物質層と集電基板との間にアンダーコート層を配置して、活物質層および集電基板の接着性を強固にするとともに、それらの接触界面の抵抗を下げることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般的に、エネルギー貯蔵デバイスでは、正極および負極から電流を取り出す端子として、正極および負極に金属タブがそれぞれ溶接される。
金属タブは、通常、集電基板に溶接され、アンダーコート層が形成された電極でも、集電基板上のアンダーコート層および活物質層が形成されていない部位で金属タブとの溶接が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
アンダーコート層が形成された集電基板上に金属タブ接合部位を形成する方法としては、集電基板上の金属タブ接合部位にアンダーコート層および活物質層を形成しない、集電基板上に形成したアンダーコート層および活物質層を部分的に剥離する等の方法がある。
しかし、アンダーコート層を一部分形成しない場合、集電基板の汎用性が低下し、各種電極ごとに異なる集電基板を用意する必要が生じる。一方、一旦形成したアンダーコート層等を剥離する方法では、一工程増加するため、デバイスの生産性が低下する。
特に、デバイスの高容量化を図るため、電極板が複数枚重ね合わせて用いられる場合には、上記のような集電基板露出部分の形成に関する問題がより大きくなる。
【0005】
このような観点から、集電基板と金属タブとを溶接する際に、集電基板上において、アンダーコート層が形成され、かつ、活物質層が形成されていない部分で溶接する技術が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
ところで、昨今、電気自動車、電動機器等の製品に対する安全性、生産性等についての要求がさらに高まってきていることに伴い、蓄電デバイスに関する技術のより一層の深化が図られている。
とりわけ、より高い生産性でより高い安全性の蓄電デバイスを製造できる方法は、低価格かつ高安全性という近年の市場ニーズを満たす製品製造に直接的に貢献し得ることから、当該技術分野において強く求められている。
しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献2に係る製造方法では、その条件を満たす場合であっても炭素材料の種類によっては再現性よく超音波溶接ができないことがあった。
【0007】
さらに、上述したアンダーコート層が形成されたアンダーコート箔を製造する際には、作製するアンダーコート層の仕上がりを管理するために、目付量や膜厚を測定する必要がある。
目付量の測定は、一般に、特許文献2に記載のように、アンダーコート箔から適当な大きさの試験片を切り出し、その質量W0を測定し、その後、アンダーコート箔からアンダーコート層を剥離し、アンダーコート層を剥離した後の質量W1を測定し、その差(W0−W1)から算出する、あるいは、予め集電基板の質量W2を測定しておき、その後、アンダーコート層を形成したアンダーコート箔の質量W3を測定し、その差(W3−W2)から算出する。
また、膜厚は、アンダーコート箔から適当な大きさの試験片を切り出し、走査電子顕微鏡等で測定する。
【0008】
しかし、上述した目付量や膜厚の算出方法では、アンダーコート箔を切り出す必要があり、その都度、製造を止める必要があるため、非効率であった。そのため、より効率的な製造を可能とするための新たな方策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−170965号公報
【特許文献2】国際公開第2014/034113号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、超音波溶接が可能かつ、低抵抗なエネルギー貯蔵デバイスを与えるとともに、製造時にアンダーコート箔の仕上がりを管理することが容易なエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔を与える薄膜、集電基板に該薄膜を備えたエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔、並びに該アンダーコート箔を備えたエネルギー貯蔵デバイス電極およびエネルギー貯蔵デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、アンダーコート層の溶接性およびそれを備えたデバイスの低抵抗化、さらに製造時の管理方法の簡便さという観点から鋭意検討を重ねた結果、L***表色系において、特定範囲の明度L*を有する薄膜が、エネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔のアンダーコート層として好適であること、該アンダーコート層の明度L*を所定範囲とすることで、製造時の仕上がりの管理が簡便になること、さらに、集電基板上において、アンダーコート層が形成されている部分で効率的に超音波溶接が可能となることを見出すとともに、特定範囲の明度L*のアンダーコート箔を備えた電極を用いた場合に、低抵抗のエネルギー貯蔵デバイスが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、
1. 集電基板と、この集電基板の少なくとも一方の面に形成されたアンダーコート層とを有するエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔であって、
上記集電基板が、アルミニウム箔であり、
上記アンダーコート層が、カーボンナノチューブおよび分散剤を含み、かつ、SCI方式で測定される、L***表色系の明度L*が53以上100未満を示し、厚さが1〜200nmであることを特徴とする、超音波溶接によって当該アンダーコート箔を備える電極構造体を作製するために用いられるエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔、
2. 上記明度L*が54以上93以下である1のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔
3. アンダーコート層の厚さが1〜140nmである2のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔
4. 上記明度L*が54以上88以下である1のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔
5. アンダーコート層の厚さが30〜80nmである4のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔
6. 集電基板と、この集電基板の少なくとも一方の面に形成されたアンダーコート層とを有するエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔であって、
上記集電基板が、銅箔であり、
上記アンダーコート層が、カーボンナノチューブおよび分散剤を含み、かつ、SCI方式で測定される、L***表色系の明度L*が36以上100未満を示し、厚さが1〜200nmであることを特徴とする、超音波溶接によって当該アンダーコート箔を備える電極構造体を作製するために用いられるエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔
7. 上記明度L*が40以上80以下である6のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔
8. 上記アンダーコート層の厚さが1〜140nmである7のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔
9. 上記明度L*が45以上80以下である6のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔
10. 上記アンダーコート層の厚さが30〜80nmである9のエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔
11. 上記分散剤が、側鎖にオキサゾリン基を含むビニル系ポリマーまたはトリアリールアミン系高分岐ポリマーを含む1〜10のいずれかのエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔、
121〜11のいずれかのエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔と、そのアンダーコート層の表面の一部または全部に形成された活物質層とを有するエネルギー貯蔵デバイス電極、
13. 上記活物質層が、上記アンダーコート層の周縁を残し、それ以外の部分全体を覆う態様で形成された12のエネルギー貯蔵デバイス電極、
1412または13のエネルギー貯蔵デバイス電極を備えるエネルギー貯蔵デバイス、
15. 一枚または複数枚の13の電極と、金属タブとを備えて構成される電極構造体を少なくとも一つ有し、
上記電極の少なくとも一枚が、上記アンダーコート層が形成され、かつ、上記活物質層が形成されていない部分で上記金属タブと超音波溶接されているエネルギー貯蔵デバイス、
16. 一枚または複数枚の13の電極を用いたエネルギー貯蔵デバイスの製造方法であって、
上記電極の少なくとも一枚を、上記アンダーコート層が形成され、かつ、上記活物質層が形成されていない部分で金属タブと超音波溶接する工程を有するエネルギー貯蔵デバイスの製造方法、
17超音波溶接によって、電極と、金属タブとを備える電極構造体を作製するために用いられるエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法であって、
集電基板であるアルミニウム箔の少なくとも一方の面カーボンナノチューブおよび分散剤を含むアンダーコート層形成用組成物を塗布し、これを乾燥してアンダーコート層を形成した後、
SCI方式で、上記アンダーコート層のL***表色系の明度L*を測定し、当該明度L*が53以上100未満であることを確認した後、さらに
上記アンダーコート層表面の少なくとも一部に活物質層を形成するエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法、
18. 上記アンダーコート層の厚さが1〜200nmである17のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法、
19. 上記明度L*を54以上93以下とする17のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法、
20. 上記アンダーコート層の厚さが1〜140nmである19のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法、
21. 上記明度L*を54以上88以下とする17のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法、
22. 上記アンダーコート層の厚さが30〜80nmである21のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法、
23. 上記活物質層を、上記アンダーコート層の周縁を残し、それ以外の部分全体を覆う態様で形成する19〜21のいずれかのエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法、
24. 超音波溶接によって、電極と、金属タブとを備える電極構造体を作製するために用いられるエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法であって、
集電基板である銅箔上の少なくとも一方の面にカーボンナノチューブおよび分散剤を含むアンダーコート層形成用組成物を塗布し、これを乾燥してアンダーコート層を形成した後、
SCI方式で、上記アンダーコート層のL***表色系の明度L*を測定し、当該明度L*が36以上100未満であることを確認した後、さらに
上記アンダーコート層表面の少なくとも一部に活物質層を形成するエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法。
25. 上記アンダーコート層の厚さが1〜200nmである24のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法、
26. 上記明度L*を40以上80以下とする24のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法、
27. 上記アンダーコート層の厚さが1〜140nmである26のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法、
28. 上記明度L*を45以上80以下とする24のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法、
29. 上記アンダーコート層の厚さが30〜80nmである28のエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法、
30. 上記活物質層を、上記アンダーコート層の周縁を残し、それ以外の部分全体を覆う態様で形成する24〜29のいずれかのエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法、
31. 上記分散剤が、側鎖にオキサゾリン基を含むビニル系ポリマーまたはトリアリールアミン系高分岐ポリマーを含む24〜30のいずれかのエネルギー貯蔵デバイス電極の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、効率的に超音波溶接が可能で、製造時の仕上がりの管理が容易な、エネルギー貯蔵デバイス電極用のアンダーコート箔を提供できる。このアンダーコート箔を有する電極を用いることで、低抵抗なエネルギー貯蔵デバイスおよびその簡便かつ効率的な製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】集電基板としてアルミ箔を用いたアンダーコート箔におけるアンダーコート層の膜厚と明度L*との関係を示したグラフである。
図2】集電基板として銅箔を用いたアンダーコート箔におけるアンダーコート層の膜厚と明度L*との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る薄膜は、所定の条件で測定される特定範囲の明度L*を有するものであり、本発明に係るエネルギー貯蔵デバイス電極用アンダーコート箔(以下、アンダーコート箔という)は、集電基板と、この集電基板の少なくとも一方の面に形成されたアンダーコート層とを有し、アンダーコート層として、上記薄膜を備えるものである。
【0016】
本発明におけるエネルギー貯蔵デバイスとしては、例えば、電気二重層キャパシタ、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、プロトンポリマー電池、ニッケル水素電池、アルミ固体コンデンサ、電解コンデンサ、鉛蓄電池等の各種エネルギー貯蔵デバイスが挙げられるが、本発明のアンダーコート箔は、特に、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池に好適に用いることができる。
【0017】
本発明で用いる導電材としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンウイスカー、カーボンナノチューブ(CNT)、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、酸化チタン、ITO、酸化ルテニウム、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられるが、均一な薄膜を形成するという観点から、CNTを用いることが好ましい。
【0018】
CNTは、一般的に、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)、レーザー・アブレーション法等によって作製されるが、本発明に使用されるCNTはいずれの方法で得られたものでもよい。また、CNTには1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT(以下、SWCNTとも略記する)と、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT(以下、DWCNTとも略記する)と、複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNT(以下、MWCNTとも略記する)とがあるが、本発明においては、SWCNT、DWCNT、MWCNTをそれぞれ単体で、または複数を組み合わせて使用できる。
なお、上記の方法でSWCNT、DWCNTまたはMWCNTを作製する際には、ニッケル、鉄、コバルト、イットリウムなどの触媒金属が残存することがあるため、この不純物を除去するための精製を必要とする場合がある。不純物の除去には、硝酸、硫酸などによる酸処理とともに超音波処理が有効である。しかし、硝酸、硫酸などによる酸処理ではCNTを構成するπ共役系が破壊され、CNT本来の特性が損なわれてしまう可能性があるため、適切な条件で精製して使用することが望ましい。
【0019】
本発明で使用可能なCNTの具体例としては、スパーグロス法CNT〔国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構製〕、eDIPS−CNT〔国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構製〕、SWNTシリーズ〔(株)名城ナノカーボン製:商品名〕、VGCFシリーズ〔昭和電工(株)製:商品名〕、FloTubeシリーズ〔CNano Technology社製:商品名〕、AMC〔宇部興産(株)製:商品名〕、NANOCYL NC7000シリーズ〔Nanocyl S.A. 社製:商品名〕、Baytubes〔Bayer社製:商品名〕、GRAPHISTRENGTH〔アルケマ社製:商品名〕、MWNT7〔保土谷化学工業(株)製:商品名〕、ハイペリオンCNT〔Hypeprion Catalysis International社製:商品名〕等が挙げられる。
【0020】
本発明のアンダーコート層は、CNTと溶媒と、必要に応じてマトリックス高分子および/またはCNT分散剤とを含むCNT含有組成物(分散液)を用いて作製することが好ましい。
溶媒としては、従来、CNT含有組成物の調製に用いられるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、水;テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)などのエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどのアルコール類;n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類等の有機溶媒が挙げられ、これらの溶媒は、それぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。
特に、CNTの孤立分散の割合を向上させ得るという点から、水、NMP、DMF、THF、メタノール、イソプロパノールが好ましく、これらの溶媒は、それぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0021】
マトリックス高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔P(VDF−HFP)〕、フッ化ビニリデン−塩化3フッ化エチレン共重合体〔P(VDF−CTFE)〕などのフッ素系樹脂、ポリビニルピロリドン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)などのポリオレフィン系樹脂;PS(ポリスチレン)、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、MS(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体)、スチレン−ブタジエンゴムなどのポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、PMMA(ポリメチルメタクリレート)などの(メタ)アクリル樹脂;PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、PLA(ポリ乳酸)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート/アジペートなどのポリエステル樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;変性ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリグルコール酸;変性でんぷん;酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース;キチン、キトサン;リグニン等の熱可塑性樹脂や、ポリアニリンおよびその半酸化体であるエメラルジンベース;ポリチオフェン;ポリピロール;ポリフェニレンビニレン;ポリフェニレン;ポリアセチレン等の導電性高分子、さらにはエポキシ樹脂;ウレタンアクリレート;フェノール樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂などが挙げられるが、本発明の導電性炭素材料分散液においては、溶媒として水を用いることが好適であることから、マトリックス高分子としても水溶性のもの、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、水溶性セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール等が好ましいが、特に、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が好適である。
【0022】
マトリックス高分子は、市販品として入手することもでき、そのような市販品としては、例えば、アロンA−10H(ポリアクリル酸、東亞合成(株)製、固形分濃度26質量%、水溶液)、アロンA−30(ポリアクリル酸アンモニウム、東亞合成(株)製、固形分濃度32質量%、水溶液)、ポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製、重合度2,700〜7,500)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(和光純薬工業(株)製)、アルギン酸ナトリウム(関東化学(株)製、鹿1級)、メトローズSHシリーズ(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、信越化学工業(株)製)、メトローズSEシリーズ(ヒドロキシエチルメチルセルロース、信越化学工業(株)製)、JC−25(完全ケン化型ポリビニルアルコール、日本酢ビ・ポバール(株)製)、JM−17(中間ケン化型ポリビニルアルコール、日本酢ビ・ポバール(株)製)、JP−03(部分ケン化型ポリビニルアルコール、日本酢ビ・ポバール(株)製)、ポリスチレンスルホン酸(Aldrich社製、固形分濃度18質量%、水溶液)等が挙げられる。
マトリックス高分子の含有量は、特に限定されるものではないが、組成物中に、0.0001〜99質量%程度とすることが好ましく、0.001〜90質量%程度とすることがより好ましい。
【0023】
CNT分散剤としては、特に限定されるものではなく、従来、CNT分散剤として用いられているものから適宜選択することができ、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アクリル樹脂エマルジョン、水溶性アクリル系ポリマー、スチレンエマルジョン、シリコーンエマルジョン、アクリルシリコーンエマルジョン、フッ素樹脂エマルジョン、EVAエマルジョン、酢酸ビニルエマルジョン、塩化ビニルエマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、国際公開第2014/04280号記載のトリアリールアミン系高分岐ポリマー、国際公開第2015/029949号記載の側鎖にオキサゾリン基を有するビニル系ポリマー等が挙げられるが、本発明においては、国際公開第2014/04280号記載のトリアリールアミン系高分岐ポリマー、国際公開第2015/029949号記載の側鎖にオキサゾリン基を有するビニル系ポリマーが好適である。
【0024】
具体的には、下記式(1)および(2)で示される、トリアリールアミン類とアルデヒド類および/またはケトン類とを酸性条件下で縮合重合することで得られる高分岐ポリマーが好適に用いられる。
【0025】
【化1】
【0026】
上記式(1)および(2)において、Ar1〜Ar3は、それぞれ独立して、式(3)〜(7)で表されるいずれかの二価の有機基を表すが、特に、式(3)で示される置換または非置換のフェニレン基が好ましい。
【0027】
【化2】
(式中、R5〜R38は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、またはそれらの塩を表す。)
【0028】
また、式(1)および(2)において、Z1およびZ2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または式(8)〜(11)で表されるいずれかの一価の有機基を表す(ただし、Z1およびZ2が同時に上記アルキル基となることはない。)が、Z1およびZ2としては、それぞれ独立して、水素原子、2−または3−チエニル基、式(8)で示される基が好ましく、特に、Z1およびZ2のいずれか一方が水素原子で、他方が、水素原子、2−または3−チエニル基、式(8)で示される基、特にR41がフェニル基のもの、またはR41がメトキシ基のものがより好ましい。
なお、R41がフェニル基の場合、後述する酸性基導入法において、ポリマー製造後に酸性基を導入する手法を用いた場合、このフェニル基上に酸性基が導入される場合もある。
【0029】
【化3】
{式中、R39〜R62は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいハロアルキル基、フェニル基、OR63、COR63、NR6364、COOR65(これらの式中、R63およびR64は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいハロアルキル基、またはフェニル基を表し、R65は、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいハロアルキル基、またはフェニル基を表す。)、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、またはそれらの塩を表す。}。
【0030】
上記式(2)〜(7)において、R1〜R38は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、またはそれらの塩を表す。
【0031】
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。
炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基等が挙げられる。
カルボキシル基、スルホ基、リン酸基およびホスホン酸基の塩としては、ナトリウム,カリウムなどのアルカリ金属塩;マグネシウム,カルシウム等の2族金属塩;アンモニウム塩;プロピルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミンなどの脂肪族アミン塩;イミダゾリン、ピペラジン、モルホリンなどの脂環式アミン塩;アニリン、ジフェニルアミンなどの芳香族アミン塩;ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0032】
上記式(8)〜(11)において、R39〜R62は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいハロアルキル基、フェニル基、OR63、COR63、NR6364、COOR65(これらの式中、R63およびR64は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいハロアルキル基、またはフェニル基を表し、R65は、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいハロアルキル基、またはフェニル基を表す。)、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、またはそれらの塩を表す。
【0033】
ここで、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいハロアルキル基としては、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3−ブロモプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル基、3−ブロモ−2−メチルプロピル基、4−ブロモブチル基、パーフルオロペンチル基等が挙げられる。
なお、ハロゲン原子、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基としては、上記式(2)〜(7)で例示した基と同様のものが挙げられる。
【0034】
特に、集電基板との密着性をより向上させることを考慮すると、上記高分岐ポリマーは、式(1)または(2)で表される繰り返し単位の少なくとも1つの芳香環中に、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基、およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の酸性基を有するものが好ましく、スルホ基またはその塩を有するものがより好ましい。
【0035】
上記高分岐ポリマーの製造に用いられるアルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、7−メトキシ−3,7−ジメチルオクチルアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、3−メチル−2−ブチルアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド等の飽和脂肪族アルデヒド類;アクロレイン、メタクロレイン等の不飽和脂肪族アルデヒド類;フルフラール、ピリジンアルデヒド、チオフェンアルデヒド等のヘテロ環式アルデヒド類;ベンズアルデヒド、トリルアルデヒド、トリフルオロメチルベンズアルデヒド、フェニルベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、アセトキシベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、アセチルベンズアルデヒド、ホルミル安息香酸、ホルミル安息香酸メチル、アミノベンズアルデヒド、N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、N,N−ジフェニルアミノベンズアルデヒド、ナフチルアルデヒド、アントリルアルデヒド、フェナントリルアルデヒド等の芳香族アルデヒド類、フェニルアセトアルデヒド、3−フェニルプロピオンアルデヒド等のアラルキルアルデヒド類などが挙げられるが、中でも、芳香族アルデヒド類を用いることが好ましい。
【0036】
また、上記高分岐ポリマーの製造に用いられるケトン化合物としては、アルキルアリールケトン、ジアリールケトン類であり、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ジフェニルケトン、フェニルナフチルケトン、ジナフチルケトン、フェニルトリルケトン、ジトリルケトン等が挙げられる。
【0037】
本発明に用いられる高分岐ポリマーは、下記スキーム1に示されるように、例えば、下記式(A)で示されるような、上述したトリアリールアミン骨格を与え得るトリアリールアミン化合物と、例えば下記式(B)で示されるようなアルデヒド化合物および/またはケトン化合物とを、酸触媒の存在下で縮合重合して得られる。
なお、アルデヒド化合物として、例えば、テレフタルアルデヒド等のフタルアルデヒド類のような、二官能化合物(C)を用いる場合、スキーム1で示される反応が生じるだけではなく、下記スキーム2で示される反応が生じ、2つの官能基が共に縮合反応に寄与した、架橋構造を有する高分岐ポリマーが得られる場合もある。
【0038】
【化4】
(式中、Ar1〜Ar3、およびZ1〜Z2は、上記と同じ意味を表す。)
【0039】
【化5】
(式中、Ar1〜Ar3、およびR1〜R4は、上記と同じ意味を表す。)
【0040】
上記縮合重合反応では、トリアリールアミン化合物のアリール基1当量に対して、アルデヒド化合物および/またはケトン化合物を0.1〜10当量の割合で用いることができる。
上記酸触媒としては、例えば、硫酸、リン酸、過塩素酸などの鉱酸類;p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸一水和物などの有機スルホン酸類;ギ酸、シュウ酸などのカルボン酸類等を用いることができる。
酸触媒の使用量は、その種類によって種々選択されるが、通常、トリアリールアミン類100質量部に対して、0.001〜10,000質量部、好ましくは、0.01〜1,000質量部、より好ましくは0.1〜100質量部である。
【0041】
上記の縮合反応は無溶媒でも行えるが、通常溶媒を用いて行われる。溶媒としては反応を阻害しないものであれば全て使用することができ、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類等が挙げられる。これら溶媒は、それぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。特に、環状エーテル類が好ましい。
また、使用する酸触媒が、例えばギ酸のような液状のものであるならば、酸触媒に溶媒としての役割を兼ねさせることもできる。
【0042】
縮合時の反応温度は、通常40〜200℃である。反応時間は反応温度によって種々選択されるが、通常30分間から50時間程度である。
以上のようにして得られる重合体の重量平均分子量Mwは、通常1,000〜2,000,000、好ましくは、2,000〜1,000,000である。
【0043】
高分岐ポリマーに酸性基を導入する場合、ポリマー原料である、上記トリアリールアミン化合物、アルデヒド化合物、ケトン化合物の芳香環上に予め導入し、これを用いて高分岐ポリマーを製造する方法で導入しても、得られた高分岐ポリマーを、その芳香環上に酸性基を導入可能な試薬で処理する方法で導入してもよいが、製造の簡便さを考慮すると、後者の手法を用いることが好ましい。
後者の手法において、酸性基を芳香環上に導入する手法としては、特に制限はなく、酸性基の種類に応じて従来公知の各種方法から適宜選択すればよい。
例えば、スルホ基を導入する場合、過剰量の硫酸を用いてスルホン化する手法などを用いることができる。
【0044】
上記高分岐ポリマーの平均分子量は特に限定されるものではないが、重量平均分子量が1,000〜2,000,000が好ましく、2,000〜1,000,000がより好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定値(ポリスチレン換算)である。
具体的な高分岐ポリマーとしては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
【化6】
【0046】
一方、側鎖にオキサゾリン基を有するビニル系ポリマー(以下、オキサゾリンポリマーという)としては、式(12)に示されるような2位に重合性炭素−炭素二重結合含有基を有するオキサゾリンモノマーをラジカル重合して得られる、オキサゾリン環の2位でポリマー主鎖またはスペーサー基に結合した繰り返し単位を有するポリマーであることが好ましい。
【0047】
【化7】
【0048】
上記Xは、重合性炭素−炭素二重結合含有基を表し、R100〜R103は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基を表す。
オキサゾリンモノマーが有する重合性炭素−炭素二重結合含有基としては、重合性炭素−炭素二重結合を含んでいれば特に限定されるものではないが、重合性炭素−炭素二重結合を含む鎖状炭化水素基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素数2〜8のアルケニル基等が好ましい。
ハロゲン原子、炭素数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基としては、上記と同様のものが挙げられる。
炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、キシリル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
炭素数7〜20のアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0049】
式(12)で示される2位に重合性炭素−炭素二重結合含有基を有するオキサゾリンモノマーの具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−エチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−プロピル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−ブチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−プロピル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−ブチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−プロピル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−ブチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−プロピル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−ブチル−2−オキサゾリン等が挙げられるが、入手容易性などの点から、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
【0050】
また、水系溶媒を用いてCNT含有組成物を調製することを考慮すると、オキサゾリンポリマーは水溶性であることが好ましい。
このような水溶性のオキサゾリンポリマーは、上記式(12)で表されるオキサゾリンモノマーのホモポリマーでもよいが、水への溶解性をより高めるため、上記オキサゾリンモノマーと親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとの少なくとも2種のモノマーをラジカル重合させて得られたものであることが好ましい。
【0051】
親水性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、アクリル酸2−アミノエチルおよびその塩、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、メタクリル酸2−アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム、(メタ)アクリルニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物が好適である。
【0052】
また、オキサゾリンポリマーのCNT分散能に悪影響を及ぼさない範囲で、上記オキサゾリンモノマーおよび親水性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外のその他のモノマーを併用することができる。
その他のモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のα−オレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロオレフィン系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル系モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマーなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本発明で用いるオキサゾリンポリマー製造に用いられるモノマー成分において、オキサゾリンモノマーの含有率は、得られるオキサゾリンポリマーのCNT分散能をより高めるという点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がより一層好ましい。なお、モノマー成分におけるオキサゾリンモノマーの含有率の上限値は100質量%であり、この場合は、オキサゾリンモノマーのホモポリマーが得られる。
一方、得られるオキサゾリンポリマーの水溶性をより高めるという点から、モノマー成分における親水性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーの含有率は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がより一層好ましい。
また、モノマー成分におけるその他の単量体の含有率は、上述のとおり、得られるオキサゾリンポリマーのCNT分散能に影響を与えない範囲であり、また、その種類によって異なるため一概には決定できないが、5〜95質量%、好ましくは10〜90質量%の範囲で適宜設定すればよい。
【0054】
オキサゾリンポリマーの平均分子量は特に限定されるものではないが、重量平均分子量が1,000〜2,000,000が好ましく、2,000〜1,000,000がより好ましい。
【0055】
本発明で使用可能なオキサゾリンポリマーは、上記モノマーを従来公知のラジカル重合にて合成することができるが、市販品として入手することもでき、そのような市販品としては、例えば、エポクロスWS−300((株)日本触媒製、固形分濃度10質量%、水溶液)、エポクロスWS−700((株)日本触媒製、固形分濃度25質量%、水溶液)、エポクロスWS−500((株)日本触媒製、固形分濃度39質量%、水/1−メトキシ−2−プロパノール溶液)、Poly(2−ethyl−2−oxazoline)(Aldrich)、Poly(2−ethyl−2−oxazoline)(AlfaAesar)、Poly(2−ethyl−2−oxazoline)(VWR International,LLC)等が挙げられる。
なお、溶液として市販されている場合、そのまま使用しても、目的とする溶媒に置換してから使用してもよい。
【0056】
本発明で用いるCNT含有組成物における、CNTと分散剤との混合比率は、質量比で1,000:1〜1:100程度とすることができる。
また、組成物中における分散剤の濃度は、CNTを溶媒に分散させ得る濃度であれば特に限定されるものではないが、組成物中に0.001〜30質量%程度とすることが好ましく、0.002〜20質量%程度とすることがより好ましい。
さらに、組成物中におけるCNTの濃度は、目的とするアンダーコート層の目付量や、要求される機械的、電気的、熱的特性などにおいて変化するものであり、また、少なくともCNTの一部が孤立分散し、本発明で規定される目付量でアンダーコート層を作製できる限り任意であるが、組成物中に0.0001〜50質量%程度とすることが好ましく、0.001〜20質量%程度とすることがより好ましく、0.001〜10質量%程度とすることがより一層好ましい。
【0057】
なお、本発明で用いるCNT含有組成物には、用いる分散剤と架橋反応を起こす架橋剤や、自己架橋する架橋剤を含んでいてもよい。これらの架橋剤は、使用する溶媒に溶解することが好ましい。
トリアリールアミン系高分岐ポリマーの架橋剤としては、例えば、メラミン系、置換尿素系、またはそれらのポリマー系架橋剤等が挙げられ、これら架橋剤は、それぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。なお、好ましくは、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋剤であり、CYMEL(登録商標)、メトキシメチル化グリコールウリル、ブトキシメチル化グリコールウリル、メチロール化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メチロール化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグアナミン、ブトキシメチル化ベンゾグアナミン、メチロール化ベンゾグアナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、メチロール化尿素、メトキシメチル化チオ尿素、メトキシメチル化チオ尿素、メチロール化チオ尿素等の化合物、およびこれらの化合物の縮合体が例として挙げられる。
【0058】
オキサゾリンポリマーの架橋剤としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、チオール基、アミノ基、スルフィン酸基、エポキシ基等のオキサゾリン基との反応性を有する官能基を2個以上有する化合物であれば特に限定されるものではないが、カルボキシル基を2個以上有する化合物が好ましい。なお、薄膜形成時の加熱や、酸触媒の存在下で上記官能基が生じて架橋反応を起こす官能基、例えば、カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩等を有する化合物も架橋剤として用いることができる。
オキサゾリン基と架橋反応を起こす化合物の具体例としては、酸触媒の存在下で架橋反応性を発揮する、ポリアクリル酸やそのコポリマー等の合成高分子およびカルボキシメチルセルロースやアルギン酸といった天然高分子の金属塩、加熱により架橋反応性を発揮する、上記合成高分子および天然高分子のアンモニウム塩等が挙げられるが、特に、酸触媒の存在下や加熱条件下で架橋反応性を発揮するポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸リチウム、ポリアクリル酸アンモニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウム等が好ましい。
【0059】
このようなオキサゾリン基と架橋反応を起こす化合物は、市販品として入手することもでき、そのような市販品としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製、重合度2,700〜7,500)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(和光純薬工業(株)製)、アルギン酸ナトリウム(関東化学(株)製、鹿1級)、アロンA−30(ポリアクリル酸アンモニウム、東亞合成(株)製、固形分濃度32質量%、水溶液)、DN−800H(カルボキシメチルセルロースアンモニウム、ダイセルファインケム(株)製)、アルギン酸アンモニウム((株)キミカ製)等が挙げられる。
【0060】
自己架橋する架橋剤としては、例えば、水酸基に対してアルデヒド基、エポキシ基、ビニル基、イソシアネート基、アルコキシ基、カルボキシル基に対してアルデヒド基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基に対してイソシアネート基、アルデヒド基などの、互いに反応する架橋性官能基を同一分子内に有している化合物や、同じ架橋性官能基同士で反応する水酸基(脱水縮合)、メルカプト基(ジスルフィド結合)、エステル基(クライゼン縮合)、シラノール基(脱水縮合)、ビニル基、アクリル基などを有している化合物などが挙げられる。
自己架橋する架橋剤の具体例としては、酸触媒の存在下で架橋反応性を発揮する多官能アクリレート、テトラアルコキシシラン、ブロックイソシアネート基を有するモノマーおよび水酸基、カルボン酸、アミノ基の少なくとも1つを有するモノマーのブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0061】
このような自己架橋する架橋剤は、市販品として入手することもでき、そのような市販品としては、例えば、多官能アクリレートでは、A−9300(エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、新中村化学工業(株)製)、A−GLY−9E(Ethoxylated glycerine triacrylate(EO9mol)、新中村化学工業(株)製)、A−TMMT(ペンタエリスリトールテトラアクリレート、新中村化学工業(株)製)、テトラアルコキシシランでは、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)、テトラエトキシシラン(東横化学(株)製)、ブロックイソシアネート基を有するポリマーでは、エラストロンシリーズE−37、H−3、H38、BAP、NEW BAP−15、C−52、F−29、W−11P、MF−9、MF−25K(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
【0062】
これら架橋剤の添加量は、使用する溶媒、使用する基材、要求される粘度、要求される膜形状などにより変動するが、分散剤に対して0.001〜80質量%、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.05〜40質量%である。これら架橋剤は自己縮合による架橋反応を起こすこともあるが、分散剤と架橋反応を起こすものであり、分散剤中に架橋性置換基が存在する場合はそれらの架橋性置換基により架橋反応が促進される。
本発明では、架橋反応を促進するための触媒として、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸等の酸性化合物、および/または2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、有機スルホン酸アルキルエステル等の熱酸発生剤を添加することができる。
触媒の添加量はCNT分散剤に対して、0.0001〜20質量%、好ましくは0.0005〜10質量%、より好ましくは0.001〜3質量%である。
【0063】
アンダーコート層を形成するためのCNT含有組成物の調製法は、特に限定されるものではなく、CNTおよび溶媒、並びに必要に応じて用いられる分散剤、マトリックスポリマーおよび架橋剤を任意の順序で混合して分散液を調製すればよい。
この際、混合物を分散処理することが好ましく、この処理により、CNTの分散割合をより向上させることができる。分散処理としては、機械的処理である、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等を用いる湿式処理や、バス型やプローブ型のソニケータを用いる超音波処理が挙げられるが、特に、ジェットミルを用いた湿式処理や超音波処理が好適である。
分散処理の時間は任意であるが、1分間から10時間程度が好ましく、5分間から5時間程度がより好ましい。この際、必要に応じて加熱処理を施しても構わない。
なお、架橋剤および/またはマトリックス高分子を用いる場合、これらは、分散剤、CNTおよび溶媒からなる混合物を調製した後から加えてもよい。
【0064】
以上で説明したCNT含有組成物を集電基板の少なくとも一方の面に塗布し、これを自然または加熱乾燥し、アンダーコート層を形成して本発明のアンダーコート箔を作製することができる。
この際、CNT含有組成物を集電基板の面全体に塗布し、アンダーコート層を集電基板面全面に形成することが好ましい。
本発明では、アンダーコート箔と後述する金属タブとを、箔のアンダーコート層部分で超音波溶接等の溶接によって効率よく接合させるため、アンダーコート層の膜厚を200nm以下、好ましくは140nm以下、より好ましくは80nm以下とする。
一方、アンダーコート層の機能を担保して優れた特性の電池を再現性よく得るため、アンダーコート層の膜厚を好ましくは1nm以上、より好ましくは30nm以上とする。
【0065】
本発明におけるアンダーコート層の膜厚は、例えば、アンダーコート箔から適当な大きさの試験片を切り出し、それを手で裂く等の手法により断面を露出させ、走査電子顕微鏡(SEM)等の顕微鏡観察により、断面部分でアンダーコート層が露出した部分から求めることができる。
【0066】
一方、集電基板の一面あたりのアンダーコート層の目付量は、上記膜厚を満たす限り特に限定されるものではないが、超音波溶接等の溶接性を考慮すると、好ましくは0.1g/m2以下、より好ましくは0.09g/m2以下、より一層好ましくは0.05g/m2未満とし、アンダーコート層の機能を担保して優れた特性の電池を再現性よく得ることを考慮すると、好ましくは0.001g/m2以上、より好ましくは0.005g/m2以上、より一層好ましくは0.01g/m2以上、さらに好ましくは0.015g/m2以上とする。
【0067】
本発明におけるアンダーコート層の目付量は、アンダーコート層の面積(m2)に対するアンダーコート層の質量(g)の割合であり、アンダーコート層がパターン状に形成されている場合、当該面積はアンダーコート層のみの面積であり、パターン状に形成されたアンダーコート層の間に露出する集電基板の面積を含まない。
アンダーコート層の質量は、例えば、アンダーコート箔から適当な大きさの試験片を切り出し、その質量W0を測定し、その後、アンダーコート箔からアンダーコート層を剥離し、アンダーコート層を剥離した後の質量W1を測定し、その差(W0−W1)から算出する、あるいは、予め集電基板の質量W2を測定しておき、その後、アンダーコート層を形成したアンダーコート箔の質量W3を測定し、その差(W3−W2)から算出することができる。
アンダーコート層を剥離する方法としては、例えばアンダーコート層が溶解、もしくは膨潤する溶剤に、アンダーコート層を浸漬させ、布等でアンダーコート層をふき取るなどの方法が挙げられる。
【0068】
目付量や膜厚は、公知の方法で調整することができる。例えば、塗布によりアンダーコート層を形成する場合、アンダーコート層を形成するための塗工液(CNT含有組成物)の固形分濃度、塗布回数、塗工機の塗工液投入口のクリアランスなどを変えることで調整できる。
目付量や膜厚を大きくしたい場合は、固形分濃度を高くしたり、塗布回数を増やしたり、クリアランスを大きくしたりする。目付量や膜厚を小さくしたい場合は、固形分濃度を低くしたり、塗布回数を減らしたり、クリアランスを小さくしたりする。
【0069】
本発明では、アルミニウム箔上もしくは銅箔上に形成した場合の薄膜(アンダーコート層)について測定されるL***表色系の明度L*を指標とすることによって、アンダーコート箔の製造を止めることなく薄膜の膜厚や目付量を容易に把握することができるようになる。その結果、得られたアンダーコート箔の仕上がりを容易に管理することができる。
より具体的には、SCI方式で測定される、アルミニウム箔上もしくは銅箔上に形成された薄膜(アンダーコート層)におけるL***表色系の明度L*を測定するものである。上記SCI方式は、JIS Z 8722に記載の反射物体の測定方法における幾何条件cの光トラップなしに相当する照明受光光学系(di:8°)で測定する方式である。また、L***表色系の明度L*は、JIS Z 8781−4に準拠する。
【0070】
本発明において、上記明度L*は、アルミニウム箔上においては53以上100未満であり、好ましくは54以上93以下であり、より好ましくは54以上88以下であり、銅箔上においては36以上100未満であり、好ましくは40以上80以下であり、より好ましくは45以上80以下である。明度L*が低すぎる場合、溶接効率の低下やデバイスの内部抵抗の増加を招くおそれがある。
【0071】
上記L***表色系における明度L*は、色彩色差計で測定することができる。色彩色差計としては、例えば、コニカミノルタ(株)製のCM−2500d等を用いることができる。
【0072】
なお、本発明は、明度L*を測定してアンダーコート箔の仕上がりを管理することによって、より効率的にアンダーコート箔を製造し得るものであるが、上述した方法でアンダーコート層の目付量を直接的に算出することを妨げるものではなく、必要に応じて、両者を組み合わせてその仕上がりを管理してもよい。
【0073】
集電基板としては、従来、エネルギー貯蔵デバイス電極の集電基板として用いられているものから適宜選択すればよく、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、金、銀およびそれらの合金や、カーボン材料、金属酸化物、導電性高分子等の薄膜を用いることができるが、超音波溶接等の溶接を適用して電極構造体を作製する場合、銅、アルミニウム、ニッケル、金、銀およびそれらの合金からなる金属箔を用いることが好ましい。
集電基板の厚みは特に限定されるものではないが、本発明においては、1〜100μmが好ましい。
【0074】
CNT含有組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、フレキソ印刷法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法などが挙げられるが、作業効率等の点から、インクジェット法、キャスティング法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法が好適である。
加熱乾燥する場合の温度も任意であるが、50〜200℃程度が好ましく、80〜150℃程度がより好ましい。
【0075】
本発明のエネルギー貯蔵デバイス電極は、上記アンダーコート箔のアンダーコート層上に、活物質層を形成して作製することができる。
ここで、活物質としては、従来、エネルギー貯蔵デバイス電極に用いられている各種活物質を用いることができる。
例えば、リチウム二次電池やリチウムイオン二次電池の場合、正極活物質としてリチウムイオンを吸着・離脱可能なカルコゲン化合物またはリチウムイオン含有カルコゲン化合物、ポリアニオン系化合物、硫黄単体およびその化合物等を用いることができる。
このようなリチウムイオンを吸着離脱可能なカルコゲン化合物としては、例えばFeS2、TiS2、MoS2、V26、V613、MnO2等が挙げられる。
リチウムイオン含有カルコゲン化合物としては、例えばLiCoO2、LiMnO2、LiMn24、LiMo24、LiV38、LiNiO2、LixNiy1-y2(但し、Mは、Co、Mn、Ti、Cr,V、Al、Sn、Pb、およびZnから選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を表し、0.05≦x≦1.10、0.5≦y≦1.0)などが挙げられる。
ポリアニオン系化合物としては、例えばLiFePO4等が挙げられる。
硫黄化合物としては、例えばLi2S、ルベアン酸等が挙げられる。
【0076】
一方、上記負極を構成する負極活物質としては、アルカリ金属、アルカリ合金、リチウムイオンを吸蔵・放出する周期表4〜15族の元素から選ばれる少なくとも1種の単体、酸化物、硫化物、窒化物、またはリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な炭素材料を使用することができる。
アルカリ金属としては、Li、Na、K等が挙げられ、アルカリ金属合金としては、例えば、Li−Al、Li−Mg、Li−Al−Ni、Na−Hg、Na−Zn等が挙げられる。
リチウムイオンを吸蔵放出する周期表4〜15族の元素から選ばれる少なくとも1種の元素の単体としては、例えば、ケイ素やスズ、アルミニウム、亜鉛、砒素等が挙げられる。
同じく酸化物としては、例えば、スズケイ素酸化物(SnSiO3)、リチウム酸化ビスマス(Li3BiO4)、リチウム酸化亜鉛(Li2ZnO2)、リチウム酸化チタン(Li4Ti512)等が挙げられる。
同じく硫化物としては、リチウム硫化鉄(LixFeS2(0≦x≦3))、リチウム硫化銅(LixCuS(0≦x≦3))等が挙げられる。
同じく窒化物としては、リチウム含有遷移金属窒化物が挙げられ、具体的には、LixyN(M=Co、Ni、Cu、0≦x≦3、0≦y≦0.5)、リチウム鉄窒化物(Li3FeN4)等が挙げられる。
リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な炭素材料としては、グラファイト、カーボンブラック、コークス、ガラス状炭素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、またはこれらの焼結体等が挙げられる。
【0077】
また、電気二重層キャパシタの場合、活物質として炭素質材料を用いることができる。
この炭素質材料としては、活性炭等が挙げられ、例えば、フェノール樹脂を炭化後、賦活処理して得られた活性炭が挙げられる。
【0078】
活物質層は、以上で説明した活物質、バインダーポリマーおよび必要に応じて溶媒を含む電極スラリーを、アンダーコート層上に塗布し、自然または加熱乾燥して形成することができる。
活物質層の形成部位は、用いるデバイスのセル形態等に応じて適宜設定すればよく、アンダーコート層の表面全部でもその一部でもよいが、ラミネートセル等に使用する目的で、金属タブと電極とを超音波溶接等の溶接により接合した電極構造体として用いる場合には、溶接部を残すためアンダーコート層の表面の一部に電極スラリーを塗布して活物質層を形成することが好ましい。特に、ラミネートセル用途では、アンダーコート層の周縁を残したそれ以外の部分に電極スラリーを塗布して活物質層を形成することが好適である。
【0079】
バインダーポリマーとしては、公知の材料から適宜選択して用いることができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔P(VDF−HFP)〕、フッ化ビニリデン−塩化3フッ化エチレン共重合体〔P(VDF−CTFE)〕、ポリビニルアルコール、ポリイミド、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアニリン等の導電性高分子などが挙げられる。
なお、バインダーポリマーの添加量は、活物質100質量部に対して、0.1〜20質量部、特に、1〜10質量部が好ましい。
溶媒としては、上記CNT含有組成物で例示した溶媒が挙げられ、それらの中からバインダーの種類に応じて適宜選択すればよいが、PVdF等の非水溶性のバインダーの場合はNMPが好適であり、PAA等の水溶性のバインダーの場合は水が好適である。
【0080】
なお、上記電極スラリーは、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、酸化チタン、酸化ルテニウム、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
【0081】
電極スラリーの塗布方法としては、上述したCNT含有組成物と同様の手法が挙げられる。
また、加熱乾燥する場合の温度も任意であるが、50〜400℃程度が好ましく、80〜150℃程度がより好ましい。
【0082】
また電極は、必要に応じてプレスすることができる。プレス法は、一般に採用されている方法を用いることができるが、特に金型プレス法やロールプレス法が好ましい。ロールプレス法でのプレス圧は、特に限定されないが、0.2〜3ton/cmが好ましい。
【0083】
本発明に係るエネルギー貯蔵デバイスは、上述したエネルギー貯蔵デバイス電極を備えたものであり、より具体的には、少なくとも一対の正負極と、これら各極間に介在するセパレータと、電解質とを備えて構成され、正負極の少なくとも一方が、上述したエネルギー貯蔵デバイス電極から構成される。
このエネルギー貯蔵デバイスは、電極として上述したエネルギー貯蔵デバイス電極を用いることにその特徴があるため、その他のデバイス構成部材であるセパレータや、電解質などは、公知の材料から適宜選択して用いることができる。
セパレータとしては、例えば、セルロース系セパレータ、ポリオレフィン系セパレータなどが挙げられる。
電解質としては、液体、固体のいずれでもよく、また水系、非水系のいずれでもよいが、本発明のエネルギー貯蔵デバイス電極は、非水系電解質を用いたデバイスに適用した場合にも実用上十分な性能を発揮させ得る。
【0084】
非水系電解質としては、電解質塩を非水系有機溶媒に溶かしてなる非水系電解液が挙げられる。
電解質塩としては、4フッ化硼酸リチウム、6フッ化リン酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等のリチウム塩;テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラプロピルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、メチルトリエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムパークロレート等の4級アンモニウム塩、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド等のリチウムイミドなどが挙げられる。
非水系有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類などが挙げられる。
【0085】
エネルギー貯蔵デバイスの形態は特に限定されるものではなく、円筒型、扁平巻回角型、積層角型、コイン型、扁平巻回ラミネート型、積層ラミネート型等の従来公知の各種形態のセルを採用することができる。
コイン型に適用する場合、上述した本発明のエネルギー貯蔵デバイス電極を、所定の円盤状に打ち抜いて用いればよい。
例えば、リチウムイオン二次電池は、コインセルのワッシャーとスペーサーが溶接されたフタに、所定形状に打ち抜いたリチウム箔を所定枚数設置し、その上に、電解液を含浸させた同形状のセパレータを重ね、さらに上から、活物質層を下にして本発明のエネルギー貯蔵デバイス電極を重ね、ケースとガスケットを載せて、コインセルかしめ機で密封して作製することができる。
【0086】
積層ラミネート型に適用する場合、活物質層がアンダーコート層表面の一部に形成された電極における、アンダーコート層が形成され、かつ、活物質層が形成されていない部分(溶接部)で金属タブと溶接して得られた電極構造体を用いればよい。
この場合、電極構造体を構成する電極は一枚でも複数枚でもよいが、一般的には、正負極とも複数枚が用いられる。
正極を形成するための複数枚の電極は、負極を形成するための複数枚の電極板と、一枚ずつ交互に重ねることが好ましく、その際、正極と負極の間には上述したセパレータを介在させることが好ましい。
金属タブは、複数枚の電極の最も外側の電極の溶接部で溶接しても、複数枚の電極のうち、任意の隣接する2枚の電極の溶接部間に金属タブを挟んで溶接してもよい。
【0087】
金属タブの材質は、一般的にエネルギー貯蔵デバイスに使用されるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ニッケル、アルミニウム、チタン、銅などの金属;ステンレス、ニッケル合金、アルミニウム合金、チタン合金、銅合金などの合金などが挙げられるが、溶接効率を考慮すると、アルミニウム、銅およびニッケルから選ばれる少なくとも1種の金属を含んで構成されるものが好ましい。
金属タブの形状は、箔状が好ましく、その厚さは0.05〜1mm程度が好ましい。
【0088】
溶接方法は、金属同士の溶接に用いられる公知の方法を用いることができ、その具体例としては、TIG溶接、スポット溶接、レーザー溶接、超音波溶接などが挙げられるが、上述したように、本発明のアンダーコート層は、超音波溶接に特に適した目付量とされているため、超音波溶接にて電極と金属タブとを接合することが好ましい。
超音波溶接の手法としては、例えば、複数枚の電極をアンビルとホーンとの間に配置し、溶接部に金属タブを配置して超音波をかけて一括して溶接する手法や、電極同士を先に溶接し、その後、金属タブを溶接する手法などが挙げられる。
本発明では、いずれの手法でも、金属タブと電極とが上記溶接部で溶接されるだけでなく、複数枚の電極同士も、アンダーコート層が形成され、かつ、活物質層が形成されていない部分で互いに超音波溶接されることになる。
溶接時の圧力、周波数、出力、処理時間等は、特に限定されるものではなく、用いる材料やアンダーコート層の目付量などを考慮して適宜設定すればよい。
【0089】
以上のようにして作製した電極構造体を、ラミネートパックに収納し、上述した電解液を注入した後、ヒートシールすることでラミネートセルが得られる。
このようにして得られたエネルギー貯蔵デバイスは、金属タブと、一枚または複数枚の電極とを備えて構成される電極構造体を少なくとも一つ有し、電極が、集電基板と、この集電基板の少なくとも一方の面に形成されたアンダーコート層と、このアンダーコート層の表面の一部に形成された活物質層とを有し、電極が複数枚用いられている場合、それらが、アンダーコート層が形成され、かつ、活物質層が形成されていない部分で互いに超音波溶接されているとともに、電極のうちの少なくとも一枚が、アンダーコート層が形成され、かつ、活物質層が形成されていない部分で金属タブと超音波溶接されているという構成を備えたものである。
【実施例】
【0090】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、使用した測定装置は以下のとおりである。
(1)プローブ型超音波照射装置(分散処理)
装置:Hielscher Ultrasonics社製 UIP1000
(2)ワイヤーバーコーター(薄膜作製)
装置:(株)エスエムテー製 PM−9050MC
(3)超音波溶接機(超音波溶接試験)
装置:日本エマソン(株)製、2000Xea 40:0.8/40MA−XaeStand
(4)充放電測定装置(二次電池評価)
装置:北斗電工(株)製 HJ1001SM8A
(5)マイクロメーター(バインダー、活性層の膜厚測定)
装置:(株)ミツトヨ製 IR54
(6)ホモディスパー(電極スラリーの混合)
装置:T.K.ロボミックス(ホモディスパー2.5型(φ32)付き)(プライミクス(株)製)
(7)薄膜旋回型高速ミキサー(電極スラリーの混合)
装置:フィルミクス40型(プライミクス(株)製)
(8)自転・公転ミキサー(電極スラリーの脱泡)
装置:あわとり錬太郎(ARE−310)((株)シンキー製)
(9)ロールプレス装置(電極の圧縮)
装置:超小型卓上熱ロールプレス機 HSR−60150H(宝泉(株)製)
(10)走査電子顕微鏡(SEM)
装置:日本電子(株)製、JSM−7400F
(11)色彩色差計
装置:コミカミノルタ(株)製、CM−2500d
測定条件:測定径φ8mm、SCI方式、UV100%含む標準イルミナントD65を光源とし、観察視野は10°視野とした。
アンダーコート箔を8×10cmの大きさに切り出し、5回測定した平均値を明度L*とした。
【0091】
[1]集電基板としてアルミ箔を用いたアンダーコート箔の製造
[実施例1−1]
分散剤として国際公開第2014/042080号の合成例2と同様の手法で合成した、下記式で示されるPTPA−PBA−SO3H0.50gを、分散媒である2−プロパノール43gおよび水6.0gに溶解させ、この溶液へMWCNT(Nanocyl社製“NC7000”外径10nm)0.50gを添加した。この混合物に、プローブ型超音波照射装置を用いて室温(およそ25℃)で30分間超音波処理を行い、沈降物がなくMWCNTが均一に分散した黒色のMWCNT含有分散液を得た。
得られたMWCNT含有分散液50gに、ポリアクリル酸(PAA)を含む水溶液であるアロンA−10H(東亞合成(株)、固形分濃度25.8質量%)3.88gと2−プロパノール46.12gとを加えて撹拌し、アンダーコート液A1を得た。2−プロパノールで2倍に希釈して、アンダーコート液A2を得た。
得られたアンダーコート液A2を、集電基板であるアルミニウム箔(厚み15μm)にワイヤーバーコーター(OSP2、ウェット膜厚2μm)で均一に展開後、120℃で10分乾燥してアンダーコート層を形成し、アンダーコート箔B1を作製した。
膜厚の測定は、以下のようにして行った。上記で作製したアンダーコート箔を1cm×1cmに切り出し、その中央部分で手で裂き、断面部分でアンダーコート層が露出した部分をSEMにて10,000〜60,000倍で観察し、撮影された像から膜厚を計測した。その結果、アンダーコート箔B1のアンダーコート層の厚みは約16nmであった。
また、色差計にてアンダーコート層の明度L*を測定したところ、92.3であった。
さらに得られたアンダーコート箔B1の反対側の面にも、同様にアンダーコート液A2を塗布、乾燥することで、アルミニウム箔の両面にアンダーコート層が形成されたアンダーコート箔C1を作製した。
【0092】
【化8】
【0093】
[実施例1−2]
実施例1−1で作製したアンダーコート液A1を用いた以外は、実施例1−1と同様にして、アンダーコート箔B2およびC2を作製し、アンダーコート箔B2のアンダーコート層の厚みを測定したところ、23nmであった。また、色差計にてアンダーコート層の明度L*を測定したところ、88.4であった。
【0094】
[実施例1−3]
ワイヤーバーコーター(OSP3、ウェット膜厚3μm)を用いた以外は、実施例1−2と同様にして、アンダーコート箔B3およびC3を作製し、アンダーコート箔B3のアンダーコート層の厚みを測定したところ、31nmであった。また、色差計にてアンダーコート層の明度L*を測定したところ、79.8であった。
【0095】
[実施例1−4]
ワイヤーバーコーター(OSP4、ウェット膜厚4μm)を用いた以外は、実施例1−2と同様にして、アンダーコート箔B4およびC4を作製し、アンダーコート箔B4のアンダーコート層の厚みを測定したところ、41nmであった。また、色差計にてアンダーコート層の明度L*を測定したところ、75.5であった。
【0096】
[実施例1−5]
ワイヤーバーコーター(OSP6、ウェット膜厚6μm)を用いた以外は、実施例1−2と同様にして、アンダーコート箔B5およびC5を作製し、アンダーコート箔B5のアンダーコート層の厚みを測定したところ、60nmであった。また、色差計にてアンダーコート層の明度L*を測定したところ、60.6であった。
【0097】
[実施例1−6]
ワイヤーバーコーター(OSP8、ウェット膜厚8μm)を用いた以外は、実施例1−2と同様にして、アンダーコート箔B6およびC6を作製し、アンダーコート箔B6のアンダーコート層の厚みを測定したところ、80nmであった。また、色差計にてアンダーコート層の明度L*を測定したところ、54.2であった。
【0098】
[比較例1−1]
ワイヤーバーコーター(OSP22、ウェット膜厚22μm)を用いた以外は、実施例1−2と同様にして、アンダーコート箔B7およびC7を作製し、アンダーコート箔B7のアンダーコート層の厚みを測定したところ、210nmであった。また、色差計にてアンダーコート層の明度L*を測定したところ、52.2であった。
【0099】
[比較例1−2]
ワイヤーバーコーター(OSP30、ウェット膜厚30μm)を用いた以外は、実施例1−2と同様にして、アンダーコート箔B8およびC8を作製し、アンダーコート箔B8のアンダーコート層の厚みを測定したところ、250nmであった。また、色差計にてアンダーコート層の明度L*を測定したところ、34.9であった。
【0100】
図1に、実施例1−1〜1−6および比較例1−1〜1−2で作製した各アンダーコート箔について、横軸を膜厚とした場合における、アンダーコート層の明度L*の変化を示す。図1に示したように、明度53程度までは、アンダーコート箔の膜厚に対し、明度は直線的に減少するのに対し、明度53未満では、直線に乗らないことが分かる。これはすなわち、集電基板としてアルミ箔を用いた場合において、明度53以上のアンダーコート箔を製造する場合には、アンダーコート層の膜厚を、明度L*を測定することによって容易に計算できることを示している。
【0101】
〔超音波溶接試験〕
実施例1−1〜1−6および比較例1−1〜1−2で作製した各アンダーコート箔について、下記手法により、超音波溶接試験を行った。
日本エマソン(株)の超音波溶接機(2000Xea,40:0.8/40MA−XaeStand)を用い、アンビル上のアルミタブ(宝泉(株)製、厚み0.1mm、幅5mm)の上に、両面にアンダーコート層が形成されたアンダーコート箔5枚を積層し、上からホーンを当てて超音波振動を与えて溶接した。溶接面積は3×12mmとし、溶接後、ホーンに接触したアンダーコート箔が破れることなく、タブとアンダーコート箔を剥離させようとした場合に箔が破れる場合に○、タブと箔間で剥離する場合に×とした。結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
表1に示されるように、集電基板としてアルミ箔を用いた場合において、膜厚が100nmを超える、もしくは明度L*が53未満のものに関しては、タブ−アンダーコート箔間での溶接強度が十分ではなく、タブ−アンダーコート箔間で剥離してしまうが、膜厚が100nm以下、もしくは明度L*が53以上のものは、タブ−アンダーコート箔間での溶接強度が十分で、タブ−アンダーコート箔間で剥離させようとしても、アンダーコート箔が破れた。以上のことから、集電基板としてアルミ箔を用いた場合において、アンダーコート箔と金属タブとを十分な強度で溶接するためには、アンダーコート層の膜厚を100nm以下、もしくは明度L*を53以上とする必要があることが確認された。
【0104】
[2]集電基板として銅箔を用いたアンダーコート箔の製造
[実施例1−7]
集電基板として圧延銅箔(厚み15μm)を用いた以外は、実施例1−1と同様にしてアンダーコート箔B9およびC9を作製し、膜厚を測定した。色差計にてアンダーコート層の明度L*を測定したところ、77.0であった。
【0105】
[実施例1−8]
集電基板として圧延銅箔(厚み15μm)を用いた以外は、実施例1−2と同様にしてアンダーコート箔B10およびC10を作製し、膜厚を測定した。色差計にてアンダーコート層の明度L*を測定したところ、73.2であった。
【0106】
[実施例1−9]
集電基板として圧延銅箔(厚み15μm)を用いた以外は、実施例1−3と同様にしてアンダーコート箔B11およびC11を作製し、膜厚を測定した。色差計にてアンダーコート層の明度L*を測定したところ、62.0であった。
【0107】
[実施例1−10]
集電基板として圧延銅箔(厚み15μm)を用いた以外は、実施例1−4と同様にしてアンダーコート箔B12およびC12を作製し、膜厚を測定した。色差計にてアンダーコート層の明度L*を測定したところ、58.9であった。
【0108】
[実施例1−11]
集電基板として圧延銅箔(厚み15μm)を用いた以外は、実施例1−6と同様にしてアンダーコート箔B13およびC13を作製し、膜厚を測定した。色差計にてアンダーコート層の明度L*を測定したところ、46.8であった。
【0109】
[比較例1−3]
集電基板として圧延銅箔(厚み15μm)を用いた以外は、比較例1−2と同様にしてアンダーコート箔B14およびC14を作製し、膜厚を測定した。色差計にてアンダーコート層の明度L*を測定したところ、35.5であった。
【0110】
図2に、実施例1−7〜1−11および比較例1−3で作製した各アンダーコート箔について、横軸を膜厚とした場合における、アンダーコート層の明度L*の変化を示す。図2に示したように、明度36程度までは、アンダーコート箔の膜厚に対し、明度は直線的に減少するのに対し、明度36未満では、直線に乗らないことが分かる。これはすなわち、集電基板として銅箔を用いた場合において、明度36以上のアンダーコート箔を製造する場合には、アンダーコート層の膜厚を、明度L*を測定することによって容易に計算できることを示している。
【0111】
〔超音波溶接試験〕
実施例1−7〜1−11および比較例1−3で作製した各アンダーコート箔について、下記手法により、超音波溶接試験を行った。
日本エマソン(株)の超音波溶接機(2000Xea,40:0.8/40MA−XaeStand)を用い、アンビル上のニッケルメッキ銅タブ(宝泉(株)製、厚み0.1mm、幅5mm)の上に、両面にアンダーコート層が形成されたアンダーコート箔5枚を積層し、上からホーンを当てて超音波振動を与えて溶接した。溶接面積は3×12mmとし、溶接後、ホーンに接触したアンダーコート箔が破れることなく、タブとアンダーコート箔を剥離させようとした場合に箔が破れる場合に○、タブと箔間で剥離する場合に×とした。結果を表2に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
表2に示されるように、集電基板として銅箔を用いた場合において、膜厚が100nmを超える、もしくは明度L*が36未満のものに関しては、タブ−アンダーコート箔間での溶接強度が十分ではなく、タブ−アンダーコート箔間で剥離してしまうが、膜厚が100nm以下、もしくは明度L*が36以上のものは、タブ−アンダーコート箔間での溶接強度が十分で、タブ−アンダーコート箔間で剥離させようとしても、アンダーコート箔が破れた。以上のことから、集電基板として銅箔を用いた場合において、アンダーコート箔と金属タブとを十分な強度で溶接するためには、アンダーコート層の膜厚を100nm以下、もしくは明度L*を36以上とする必要があることが確認された。
【0114】
[3]LFPを活物質に用いた電極およびリチウムイオン電池の製造
[実施例2−1]
活物質としてリン酸鉄リチウム(LFP、TATUNG FINE CHEMICALS CO.)17.3g、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)のNMP溶液(12質量%、(株)クレハ、KFポリマー L#1120)12.8g、導電助剤としてアセチレンブラック0.384gおよびN−メチルピロリドン(NMP)9.54gを、ホモディスパーにて3,500rpmで5分間混合した。次いで、薄膜旋回型高速ミキサーを用いて周速20m/秒で60秒の混合処理をし、さらに自転・公転ミキサーにて2,200rpmで30秒脱泡することで、電極スラリー(固形分濃度48質量%、LFP:PVdF:AB=90:8:2(質量比))を作製した。
得られた電極スラリーを、実施例1−1で作製したアンダーコート箔B1に均一(ウェット膜厚200μm)に展開後、80℃で30分、次いで120℃で30分乾燥してアンダーコート層上に活物質層を形成し、さらにロールプレス機で圧着することで、活物質層の厚み50μmの電極を作製した。
【0115】
得られた電極を、直径10mmの円盤状に打ち抜き、質量を測定した後、100℃で15時間真空乾燥し、アルゴンで満たされたグローブボックスに移した。
2032型のコインセル(宝泉(株)製)のワッシャーとスペーサーが溶接されたフタに、直径14mmに打ち抜いたリチウム箔(本荘ケミカル(株)製、厚み0.17mm)を6枚重ねたものを設置し、その上に、電解液(キシダ化学(株)製、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(体積比)、電解質であるリチウムヘキサフルオロホスフェートを1mol/L含む。)を24時間以上染み込ませた、直径16mmに打ち抜いたセパレータ(セルガード(株)製、2400)を一枚重ねた。さらに上から、活物質を塗布した面を下にして電極を重ねた。電解液を1滴滴下したのち、ケースとガスケットを載せて、コインセルかしめ機で密封した。その後24時間静置し、試験用の二次電池とした。
【0116】
[実施例2−2]
実施例1−2で得られたアンダーコート箔B2を用いた以外には実施例2−1と同様にして、試験用の二次電池を作製した。
【0117】
[実施例2−3]
実施例1−3で得られたアンダーコート箔B3を用いた以外には実施例2−1と同様にして、試験用の二次電池を作製した。
【0118】
[実施例2−4]
実施例1−4で得られたアンダーコート箔B4を用いた以外には実施例2−1と同様にして、試験用の二次電池を作製した。
【0119】
[実施例2−5]
実施例1−5で得られたアンダーコート箔B5を用いた以外には実施例2−1と同様にして、試験用の二次電池を作製した。
【0120】
[実施例2−6]
実施例1−6で得られたアンダーコート箔B6を用いた以外には実施例2−1と同様にして、試験用の二次電池を作製した。
【0121】
[比較例2−1]
比較例1−1で得られたアンダーコート箔B7を用いた以外には実施例2−1と同様にして、試験用の二次電池を作製した。
【0122】
[比較例2−2]
比較例1−2で得られたアンダーコート箔B8を用いた以外には実施例2−1と同様にして、試験用の二次電池を作製した。
【0123】
[比較例2−3]
無垢のアルミニウム箔を用いた以外には実施例2−1と同様にして、試験用の二次電池を作製した。
【0124】
上記実施例2−1〜2−6および比較例2−1〜2−3で作製したリチウムイオン二次電池について、充放電測定装置を用いて電極の物性を下記の条件で評価した。5C放電時の平均電圧を表2に示す。
・電流:0.5C定電流充電、5C定電流放電(LFPの容量を170mAh/gとした)
・カットオフ電圧:4.50V−2.00V
・温度:室温
【0125】
【表3】
【0126】
比較例2−3に示した、アンダーコート層を形成していない無垢のアルミニウム箔を用いた電池では、電池の抵抗が高いために、5C放電時における平均電圧が低いことが確認された。これに対し、実施例2−1〜2−6および比較例2−1〜2−2に示したように、アンダーコート箔を用いれば、電池の抵抗が低下するために、5C放電時における平均電圧が高くなることが確認された。
以上の結果より、アンダーコート層の明度L*を53以上とすることによって、溶接が可能で、かつ低抵抗なエネルギー貯蔵デバイスが得られるアンダーコート箔を簡便に製造できることが確認された。
図1
図2