特許第6530611号(P6530611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6530611熱分析データの処理方法および熱分析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530611
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】熱分析データの処理方法および熱分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/20 20060101AFI20190531BHJP
   G01N 5/04 20060101ALI20190531BHJP
【FI】
   G01N25/20 A
   G01N5/04 D
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-23633(P2015-23633)
(22)【出願日】2015年1月23日
(65)【公開番号】特開2016-136125(P2016-136125A)
(43)【公開日】2016年7月28日
【審査請求日】2017年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(72)【発明者】
【氏名】永澤 潤
【審査官】 野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−160262(JP,A)
【文献】 特開2002−251623(JP,A)
【文献】 特開2002−257763(JP,A)
【文献】 特開2008−064698(JP,A)
【文献】 特開2000−310603(JP,A)
【文献】 特開平11−201924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00−25/72
G01N 5/00−5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分析装置により取得される波形データのうち複数の反応波形による重畳波形データを反応毎の単独波形に分離する熱分析データの処理方法において、
測定波形を取得する測定波形取得工程(S1、S2)と、
前記測定波形を微分して微分波形を生成する微分工程(S)と、
前記微分波形に含まれる重畳ピーク波形を複数の単独ピーク波形へ分離するピーク分離工程(S)と、
前記複数の単独ピーク波形をそれぞれ個別に積分してそれぞれの複数の単独反応波形を生成し表示する積分工程(S)と、
前記複数の単独反応波形のそれぞれの最大傾斜点において測定波形と交わるように又は前記複数の単独反応波形の開始点が測定波形と交わるようにXY方向への所定の移動量を個別に加算することにより任意の前記単独波形を移動させる波形シフト工程(S)と、を含むことを特徴とする熱分析データの処理方法。
【請求項2】
前記波形シフト工程は、複数の前記単独反応波形のそれぞれの最大傾斜点において前記測定波形と交わるように任意の前記単独反応波形をY方向にシフトさせることを特徴とする請求項1記載の熱分析データの処理方法。
【請求項3】
前記波形シフト工程は、複数の前記単独反応波形のそれぞれの開始点において前記測定波形と交わるように任意の前記単独反応波形をY方向にシフトさせることを特徴とする請求項1記載の熱分析データの処理方法。
【請求項4】
前記波形シフト工程は、複数のうち任意の前記単独反応波形のそれぞれが、それぞれの最大傾斜点において交わるようにXY方向への所定の移動量をシフトさせることを特徴とする請求項1記載の熱分析データの処理方法。
【請求項5】
試料を加熱する加熱炉と、
当該加熱炉の温度を制御する加熱炉制御器と、
前記試料の温度および物理量を計測する物理量センサーと、
当該物理量センサーから入力した前記試料の温度および物理量をサンプリングして測定波形として取り込む測定データ取得器と、
当該測定波形に含まれる重畳波形から複数の単独反応波形を分離する波形分離器と、
当該複数の前記単独反応波形にXY方向への所定の移動量を個別に加算するオフセット加算器と、
前記測定データおよび複数の前記単独反応波形を表示させる波形表示器と、
を備え、請求項1乃至4のいずれかに記載の熱分析データの処理方法を実行する熱分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料物性の温度依存性を調べる熱分析に関し、具体的には熱重量測定データまたは熱機械的測定データにおいて重畳波形を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱分析は、試料の物性が温度変化につれどう変化するかを調べる際の有力な手段であり、試料を一定の速度で加熱しながら前記物性の変化を温度の関数として記録する。代表的な分析方法としては、示差走査熱量測定(DSC)、示差熱測定(DTA)、熱重量測定(TG)、熱機械的測定(TMA)などがある。それぞれ、試料のエンタルピー収支、示差温度、重量、長さ、といった物性の温度依存性を測定するものである(例えば、特許文献1)。
【0003】
熱分析では、試料によって測定する温度範囲において複数の反応を生じるものがあり、さらにはそれら複数の反応が近接した温度域で生じるものがある。複数の反応が非常に近接した温度域で生じると、それら反応によって取得される波形データは、重畳波形となってしまい反応毎の解析が困難となる。その傾向は、特に測定時間を短縮するために昇温速度を大きくすると顕著となる。これは、熱分析における測定信号の検出器が固有の時定数を有することと試料の反応速度が影響することより、取得する信号が時間依存性を示すためである。
【0004】
そのような状況ではあっても、通常のDSCデータは一定の比熱容量を示す参照物質との熱量の差を熱変化に対して計測するものであり、その温度と熱量の関係で示すチャートは熱量差に応じたピークを示す形状となる。この様にピーク形状を示す波形は、非線形フィットにより比較的容易に反応毎の単独波形に分離可能である。
【0005】
これに対して、TGデータは試料の重量を昇温度に対してプロットしたものであり、任意の温度間における加熱時の重量減少量を示すものであって、ピーク形状とは異なる。この場合は、通常、複数成分それぞれの熱分解等の温度の近さによっては成分毎の重量減少量を定量することが難しくなる。このような状況は、温度変化に対する静的荷重による試料の変形量を測定するTMAデータにおいても同様である。
【0006】
そこで、昇温速度を通常の数分の一から数十分の一程度に遅くする方法以外の一対策としては、試料中の物質の変化に応じて制御するように温度を変化させながら測定を行う速度制御型熱分析(CRTA:Controlled Rate Thermal Analysis又は試料制御熱分析[SCTA:Sample Controlled Thermal Analysis]ともいう)を用いるといった方法が周知である。どちらの方法も測定データにおける波形の分離をよくすることができ、それにより重畳していた波形を複数の単独波形に分離できる場合がある。ただし、これらの方法は、基本的に測定時間が長くなる傾向がある。
【0007】
そこで測定時間を短くすることを前提とした対策は、例えば、取得した熱分析信号から活性化エネルギーを算出し、それに基づいて十分に小さい昇温速度の際に取得されるであろう熱分析信号を推定して取得することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−26402
【特許文献2】特開平11−160262
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2の対策によれば、測定信号の2次微分信号と3次微分信号に基づいてピーク位置の特定とピークの重なりの有無を判定するため、複数成分の反応を加算した重畳波形の推定を行っていることとなり、単独反応波形に対する重量減少量の定量等の解析や単独反応波形同士の違いを視覚的に行う事が困難という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
係る課題を解決するために、本発明の熱分析データの処理方法は、測定波形を取得する測定波形取得工程(S1)と、測定波形を微分して微分波形を生成する微分工程(S2)と、微分波形に含まれる重畳ピーク波形を複数の単独ピーク波形へ分離するピーク分離工程(S3)と、複数の単独ピーク波形をそれぞれ個別に積分してそれぞれの複数の単独反応波形を生成する積分工程(S4)と、複数の単独反応波形のそれぞれに対して、XY方向への所定の移動量を個別に加算することにより任意の単独波形を任意の位置まで移動させる波形シフト工程(S5)と、を含むことを特徴とする。このように、複数の反応の重畳波形を反応毎の単独波形に分離すると共に、各波形を任意の位置にシフト(移動)させるため、反応間の比較が視覚的に検討しやすくなる。
【0011】
また別途の発明は、前記任意の位置へのシフトが、複数の単独反応波形のそれぞれの最大傾斜点において測定波形と交わるように又は複数の単独反応波形の開始点が測定波形と交わるように、任意の単独反応波形をY方向にシフトさせのる。あるいは複数のうち任意の単独反応波形のそれぞれが、それぞれの最大傾斜点において交わるようにXY方向への所定の移動量をシフトさせる。このようにすることで、目視による測定波形と任意の単独反応波形との対比が容易になる。
そして、上記の方法を実施すべく熱分析装置に実装する。
【発明の効果】
【0012】
本発明における波形分離方法を用いることにより、熱分析データの複数反応の重畳波形を単独の反応波形に分離することができ、それぞれの反応毎に定量することが可能になる。これにより、従来行われてきた通常より遅い昇温速度で測定する方法やCRTA測定といった方法に伴う長時間の測定並びに適切な条件の判断や設定といった手間が不要となる。さらに、複数反応が非常に近接した温度域で生じる場合であって、前記従来方法を用いても波形の分離が困難な場合であっても、本発明に係る波形分離方法を用いることにより、効率よく適切に単独波形への分離が可能になる。
【0013】
また、本発明の波形シフト工程の作用によれば、分離した単独反応波形を様々な方法でシフトして表示することが可能になり、測定波形と単独反応波形の比較や単独反応波形同士の比較を視覚的に分かりやすく行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係わる熱分析データの波形分離方法のフロー図である。
図2】本発明に係わる熱重量測定装置の例である。
図3】本発明の第一の実施例のフロー図である。
図4】(A)TGの測定波形の例と(B)DTG波形及びピーク分離波形の例と(C)DTGピーク分離波形を積分して算出した単独反応波形の例である。
図5】(A)測定波形と(B)DTG波形と(C)積分波形の関係を示す図である。
図6】第一の実施例における積分波形の(A)シフト位置の基準と(B)測定波形と積分波形とシフトした積分波形の関係と(C)出力結果の例を示す図である。
図7】本発明の第二の実施例のフロー図である。
図8】第二の実施例における(A)測定波形と積分波形とシフトした積分波形の関係と(B)出力結果の例を示す図である。
図9】本発明の第三の実施例のフロー図である。
図10】第三の実施例における(A)積分波形とシフトした積分波形の関係と(B)出力結果の例を示す図である。
図11】第一および第三の実施例における位置合わせ点のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係わる熱分析装置の例として熱重量測定装置(TG装置)を挙げ、その動作について詳述する。
【0016】
本発明に係わる熱重量測定装置の構成を図2に示す。試料Sと、試料Sを加熱する加熱炉21と、加熱炉21の温度をオペレータの設定した温度プロファイルに従って制御する加熱炉制御器11と、試料の温度および重量(TG値)を計測する物理量センサー12と、物理量センサー12から入力した温度およびTG値をサンプリングして測定波形として取り込む測定データ取得器13と、測定波形に含まれる重畳波形から単独重量減少波形を分離する波形分離器14と、単独重量減少波形にオフセットを加算するオフセット加算器16と、ディスプレイやプリンター等の表示媒体へオフセット加算された単独重量減少波形と測定波形を表示する波形表示器17とを備える。
【実施例1】
次に、本発明の第一の実施例である熱重量測定装置の動作を図3のフローチャートに従って説明する。
【0017】
ステップ1)オペレータからの指示により加熱炉制御器11の動作が開始され、オペレータが指定した温度プロファイルに従って加熱炉21の温度が制御される。物理量センサー12は試料の温度および重量(TG)信号を出力する。
【0018】
ステップ2)測定波形取得器13は物理量センサー12から入力した温度およびTG信号をサンプリングし、測定波形F(x)として出力する。図4(A)にF(x)の例を示す。X軸は温度または時間であり、増加する方向を右向きにとる。本実施例ではX軸に温度をとった場合について説明するが、時間をとった場合も同様に実施可能である。Y軸はTGであり減少方向を下向きにとる。TGの測定波形は測定開始時のTG値から開始され、反応が起きるごとに重量が階段的に減少する波形となる。測定開始時のTG値を以降TGiniという。図4(A)はふたつの反応が近接した温度域で起こり、それぞれの波形が重畳している。ふたつの反応の間のベースライン部分(水平部分)が明確ではないため、ふたつの反応の重量減少量をそれぞれ単独で定量することが難しい状況である。
【0019】
ステップ3)波形分離器14はF(x)を微分し、微分TG(DTG)波形dF(x)を算出する。図4(A)の測定波形を微分した例を図4(B)dF(x)に示す。このようにDTG波形はピーク形状となる。そのベースライン区間のY座標はほぼ0である。図4(A)のF(x)がふたつの重量減少が重畳した波形を持つため、図4(B)のdF(x)もふたつのピークが重畳したピーク波形を持つ。
【0020】
ステップ4)波形分離器14はdF(x)に対しピーク分離を行い、重畳ピーク波形から複数の単独ピーク波形を分離する。ピーク分離は公知の方法であり、非線形フィットを用いて複数のピークが重畳した波形から単独ピーク波形を分離する方法である。
【0021】
図4(B)には、dF(x)をピーク分離した例を示す。以下、ピーク分離によって得られたn番目の単独ピーク波形をdFn(x)という。dFn(x)のピークトップの座標もピーク分離によって得られる。n番目のピークトップのX座標を以降Tnという。
【0022】
ステップ5)波形分離器14は単独ピーク波形を積分した波形を算出する。dFn(x)の積分波形を以降Fn(x)という。Fn(x)の例を図4(C)に示す。
【0023】
Fn(x)の開始点のY座標はほぼ0となる。Fn(x)はF(x)に含まれる複数の重量減少波形をそれぞれ単独で取り出した波形である。図5には、(A)測定波形、(B)DTG波形及び(C)積分波形の関係を示す。
【0024】
ステップ6)波形シフト器15は積分波形Fn(x)をシフトするループを開始する。以下、ループのインデックス変数をi(=1〜Nの正の整数)とおき、i番目の積分波形をFi(x)、i番目のピークトップのX座標をTiとおく。
ステップ7)波形シフト器15はFi(x)のY方向のシフト量ΔYiを下式のように算出する。
ΔYi=F(Ti)−Fi(Ti)
図6(A)に示すように、Tiは積分波形Fi(x)の最大傾斜点のX座標、Fi(Ti)は最大傾斜点のY座標である。
ステップ8)波形シフト器15は下式によってFi(x)をシフトした新しい波形Gi(x)を算出する。
Gi(x)=Fi(x)+ΔYi
【0025】
シフト波形Gi(x)は積分波形Fi(x)がY方向にΔYiだけシフトされた波形である。下式に示すように、Gi(x)はX座標Tiの点で測定波形F(x)とY座標が一致する。
Gi(Ti)=Fi(Ti)+ΔYi
=Fi(Ti)+F(Ti)−Fi(Ti)
=F(Ti)
図6(B)には、F(x)、Gi(x)及びFi(x)の関係を示す。
ステップ9)ループのインデックス変数iをインクリメントし、iがNと等しくなるまでステップ7およびステップ8の処理を行う。
【0026】
ステップ10)波形表示器17はF(x)とGn(x)をディスプレイやプリンターなどの表示媒体に出力する。図6(C)に出力例を示す。このように表示されることにより、F(x)とGn(x)との関係が可視化され、それぞれを単体で見るよりもより分かりやすくなる。具体的には、Gn(x)か最大傾斜点でF(x)と交わる場合、単独反応が全体の中で占める重量比や反応開始‐終了温度を一見視して理解し得る効果がある。
【実施例2】
次に、本発明の熱重量測定装置の第二の実施例の動作を図7のフローチャートを基に説明する。
ステップ1からステップ6までは実施例1と同様である。ステップ7以降について説明する。
【0027】
ステップ7)波形シフト器15は積分波形Fi(x)のY方向のシフト量ΔYiを下式のように算出する。ここでTsは測定を開始した温度であり、測定波形F(x)および積分波形Fn(x)の開始点のX座標である。
ΔYi=F(Ts)−Fi(Ts)
ステップ8)波形シフト器15は下式によってFi(x)をシフトした新しい波形Gi(x)を算出する。
Gi(x)=Fi(x)+ΔYi
【0028】
シフト波形Gi(x)は積分波形Fi(x)がY方向にΔYiだけシフトされた波形である。下式に示すように、Gi(x)はX座標Tsの点で測定波形F(x)とY座標が一致する。
Gi(Ti)=Fi(Ti)+ΔYi
=Fi(Ti)+F(Ts)−Fi(Ts)
Ti=Tsのとき、
Gi(Ts)=Fi(Ts)+F(Ts)−Fi(Ti)
=F(Ts)
図8Aには、F(x)、Gi(x)、Fi(x)の関係を示す。
ステップ9)ループのインデックス変数iをインクリメントし、iがNと等しくなるまでステップ7およびステップ8の処理を行う。
【0029】
ステップ10)波形表示器17はF(x)とGn(x)をディスプレイやプリンターなどの表示媒体に出力する。図8(B)に出力例を示す。このように表示されることにより、各反応ごとの重量減少量の比率、各反応ごとの重量減少量と総計の重量減少量の比率が可視化され、それぞれを単体で見るよりもより分かりやすくなる。
【実施例3】
次に、本発明の熱重量測定装置の第三の実施例の動作を図9のフローチャートを基に説明する。
ステップ1からステップ6までは実施例1と同様である。ステップ7以降について以下に説明する。
【0030】
ステップ7)波形シフト器15はFi(x)のX方向のシフト量ΔXiとY方向のシフト量ΔYiを下式のように算出する。ここでTiはi番目のピークトップのX座標である。ConstX、ConstYは任意の定数で値は何であってもよい。
ΔXi=ConstX−Ti
ΔYi=ConstX−Fi(Ti)
ステップ8)波形シフト器15は下式によってFi(x)をシフトした新しい波形Gi(x)を算出する。
Gi(x)=Fi(x+ΔXi)+ΔYi
【0031】
Gi(x)は図10(A)に示すようにFi(x)がX方向にΔXi、Y方向にΔYiだけシフトされた波形であり、最大傾斜点の座標が(ConstX、ConstY)になる。
ステップ9)ループのインデックス変数iをインクリメントし、iがNと等しくなるまでステップ7およびステップ8の処理を繰り返し行う。
【0032】
ステップ10)波形表示器17はF(x)とGn(x)をディスプレイやプリンターなどの表示媒体に出力する。図10(B)に出力例を示す。このように表示されることにより、それぞれの反応ごとの波形の違いが可視化され、それぞれを単体で見るよりもより分かりやすくなる。
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において均等物を含めた種々の変形に及ぶものである。
【0033】
例えば、本実施例1あるいは3では、各積分波形の最大傾斜点を用いて積分波形と測定波形あるいは積分波形同士の位置合わせを行ったが、最大傾斜点だけでなく図11に示すような点(上側外挿点、高さ二等分点、下側外挿点)を用いて位置合わせを行う方法でも同様に実施可能である。
【符号の説明】
【0034】
S ・・・試料
10・・・加熱炉
11・・・加熱炉制御器
12・・・物理量センサー
13・・・測定波形取得器
14・・・波形分離器
15・・・波形シフト器
16・・・オフセット加算器
17・・・波形表示器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11