(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6530718
(24)【登録日】2019年5月24日
(45)【発行日】2019年6月12日
(54)【発明の名称】光学結像装置のモデルベース制御
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20190531BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
【請求項の数】42
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-559512(P2015-559512)
(86)(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公表番号】特表2016-513292(P2016-513292A)
(43)【公表日】2016年5月12日
(86)【国際出願番号】EP2014053955
(87)【国際公開番号】WO2014131889
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2017年2月27日
(31)【優先権主張番号】102013203338.9
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/770,400
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ハウフ
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト ローゼンヘーファー
【審査官】
植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−175255(JP,A)
【文献】
特開2010−147469(JP,A)
【文献】
特開2006−024941(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/092020(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学結像装置(101)の制御部(108)への入力変数の実際入力値を決定する方法であって、前記実際入力値は、前記光学結像装置(101)の第1位置に割り当てられ、
検出ステップ(112.9)において、前記光学結像装置の少なくとも1つの検出装置(110.6)の検出変数の少なくとも1つの実際検出値を、前記第1位置とは異なる第2位置において検出し、
決定ステップ(112.3)において、前記少なくとも1つの実際検出値及び事前に規定可能な第1関係(111.3)を用いて、前記入力変数の前記実際入力値を決定する方法において、
前記決定ステップ(112.3)の第1計算ステップ(112.10)において、前記検出装置(110.6)の前記第2位置における前記検出変数の実際計算値を、第2関係(111.4)を用いた計算により確定し、
前記決定ステップ(112.3)の比較ステップ(112.11)において、前記検出変数の前記実際計算値(TRS)を、前記検出変数の前記実際検出値(TS)と比較し、
前記決定ステップ(112.3)の修正ステップ(112.13)において、前記第1関係(111.3)の修正を、前記比較ステップ(112.11)の結果の関数として、前記第1関係(111.3)と前記第2関係(111.4)との相互関係を用いて実行し、
前記決定ステップ(112.3)の前記修正ステップ(112.13)に後続する第2計算ステップ(112.5)において、前記入力変数の前記実際入力値を、前記第1関係(111.3)を用いて計算することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記光学結像装置がマイクロリソグラフィー用に設計された光学結像装置であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反復ステップ中の前記修正ステップ(112.13)において、少なくとも直前の修正ステップ(112.11)の結果の関数として、前記第2関係(111.4)の修正を実行し、前記修正した第2関係(111.4)を用いて前記第1計算ステップ(112.10)を反復し、その後に前記比較ステップ(112.11)を反復し、
前記反復ステップを、前記反復される比較ステップ(112.11)の結果の関数として反復することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出変数の前記実際計算値と前記検出変数の前記実際検出値との偏差が事前に規定可能な偏差を超えた場合に、前記反復ステップを反復することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2関係(111.4)の修正を、前記反復ステップにおいて、最適化アルゴリズムを用いて実行することを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記最適化アルゴリズムは、履歴的な最適化基準、局所的な最適化基準、及び大域的な最適化基準から成る最適化基準のグループからの少なくとも1つの最適化基準を用いることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記履歴的な最適化基準は、前記検出変数用の少なくとも1つの前記検出装置(110.6)についての、前回の前記修正ステップ(112.13)のうち少なくとも1回の結果を考慮に入れ、及び/または、
前記局所的な最適化基準は、前記検出装置(110.6)に隣接して配置された前記検出変数用の少なくとも1つの他の前記検出装置(110.6)についての、少なくとも1回の前記比較ステップ(112.11)の結果を考慮に入れ、及び/または、
前記大域的な最適化基準は、前記検出装置のグループ内のすべての前記検出装置(110.6)についての、前記比較ステップ(112.11)の結果を考慮に入れ、前記検出装置のグループは、前記検出変数用の複数の前記検出装置(110.6)を具え、前記検出装置は、前記光学撮像装置の構成部品に割り当てられていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記光学撮像装置の構成部品が光学素子(106.1〜106.6)であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1関係(111.3)及び/または前記第2関係(111.4)が、前記光学結像装置の構成部品(106.1〜106.6)の数学モデル(111)の一部であり、
前記数学モデル(111)は、前記光学結像装置の構成部品(106.1〜106.6)の異なる位置についての、前記検出変数の前記実際計算値の、モデル変数を形成する少なくとも1つの影響変数の実際値への依存性を表すことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記光学結像装置の構成部品が光学素子であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記数学モデル(111)がパラメータ化モデルであり、このパラメータ化モデルは、少なくとも1つのモデルパラメータを含み、
前記修正ステップ(112.13)において、前記少なくとも1つのモデルパラメータを、前記比較ステップの結果の関数として修正することを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記パラメータ化モデルが、前記少なくとも1つのモデルパラメータを有する少なくとも1つのパラメータ化微分方程式を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
反復ステップ中の前記修正ステップ(112.13)において、直前の前記比較ステップ(112.11)の結果として、前記第2関係(111.4)を修正するために、前記少なくとも1つのモデルパラメータを修正し、前記修正した少なくとも1つのモデルパラメータを用いて前記第1計算ステップ(112.10)を反復し、その後に、前記比較ステップ(112.11)を実際の比較ステップとして反復し、
前記実際の比較ステップ(112.11)が、前記検出変数の前記実際計算値と前記検出変数の前記実際検出値との偏差が事前に規定可能な偏差を超えたことを判定した場合に、前記反復ステップを反復し、
前記実際の比較ステップ(112.11)が、前記検出変数の前記実際計算値と前記検出変数の前記実際検出値との偏差が前記事前に規定可能な偏差以内であることを判定した場合に、前記第1関係(111.3)と前記第2関係(111.4)との相互関係を用いて、前記第1関係(111.3)を修正することを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1関係(111.3)及び前記第2関係(111.4)のそれぞれが、少なくとも1つのモデルパラメータを含み、前記第1関係(111.3)を修正するために、直前の前記反復ステップにおいて修正した前記少なくとも1つのモデルパラメータを前記第1関係(111.3)用に用い、
前記第2計算ステップ(112.5)において、前記入力変数の前記実際入力値を、前記第1位置について、前記数学モデル(111)を用いて計算することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの影響変数が、影響変数のグループからの変数であり、
前記影響変数のグループは、前記光学結像装置の照明装置(102)の光パワーを表す変数、前記光学結像装置の加熱装置(107.7)の加熱パワーを表す変数、前記光学結像装置の冷却装置(107.7)の冷却パワーを表す変数、前記構成部品(106.1〜106.6)の環境内の温度外乱を表す変数、前記構成部品(106.1〜106.6)に作用するアクチュエータ装置の温度外乱を表す変数、前記構成部品(106.1〜106.6)の環境内の平均温度を表す変数、前記構成部品(106.1〜106.6)に作用するアクチュエータ装置の平均温度を表す変数、隣接した構成部品との間の熱クロストークを表す変数、温度調整される隣接した構成部品との間の熱クロストークを表す変数、光学素子との間の熱クロストークを表す変数、隣接した電子部品の熱パワーを表す変数、隣接したセンサデバイスの熱パワーを表す変数、及び隣接した温度センサまたは位置センサの熱パワーを表す変数から成ることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記検出変数が温度を表す変数であり、及び/または、
前記入力変数が温度を表す変数であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記第1関係が、前記第2位置における前記検出変数の検出値と前記入力値との関係であり、
前記第2計算ステップにおいて、前記入力変数の前記実際入力値を、前記実際検出値および前記第1関係を用いて計算することを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記第1位置が、前記第2位置から距離をおいた所にあることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記第1位置が、前記少なくとも1つの検出装置(110.6)の配置に適さず、及び/または、
前記第1位置が、前記光学結像装置の構成部品(106.1〜106.6)の光学的有効面の領域内に配置されていることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
光学結像装置(101)の制御部(108)への入力変数の実際入力値を決定する方法であって、前記実際入力値は、前記光学結像装置の構成部品(106.1〜106.6)の領域内の第1位置に割り当てられ、
検出ステップ(112.9)において、前記光学結像装置の少なくとも1つの検出装置(110.6)の検出変数の少なくとも1つの実際検出値を、前記構成部品(106.1〜106.6)の領域内の前記第1位置とは異なる第2位置において検出し、
決定ステップ(112.3)において、前記入力変数の前記実際入力値を、前記少なくとも1つの実際検出値及び前記構成部品(106.1〜106.6)の数学モデル(111)を用いて決定する方法において、
前記決定ステップ(112.3)の第1計算ステップ(112.10)において、前記検出変数の実際計算値を、前記数学モデル(111)を用いた計算により確定し、
前記決定ステップ(112.3)の比較ステップ(112.11)において、前記検出変数の前記実際計算値を、前記検出変数の前記実際検出値と比較し、
前記決定ステップ(112.3)の修正ステップ(112.13)において、前記数学モデル(111)の修正を、前記比較ステップ(112.11)の結果の関数として実行し、
前記決定ステップ(112.3)の前記修正ステップ(112.13)に後続する第2計算ステップ(112.5)において、前記入力変数の前記実際入力値を、前記数学モデルを用いて計算することを特徴とする方法。
【請求項21】
前記光学結像装置がマイクロリソグラフィー用に設計された光学結像装置であることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記数学モデル(111)は、前記構成部品(106.1〜106.6)の異なる位置についての、前記検出変数の前記実際計算値の、モデル変数を形成する少なくとも1つの影響変数の実際値への依存性を表すことを特徴とする請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記数学モデル(111)は少なくとも1つのモデルパラメータを含むパラメータ化モデルであり、前記修正ステップ(112.13)において、前記少なくとも1つのモデルパラメータを、前記比較ステップの結果の関数として修正することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記パラメータ化モデルが、前記少なくとも1つのモデルパラメータを有する少なくとも1つのパラメータ化微分方程式を含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
反復ステップ中の前記修正ステップ(112.13)において、直前の前記比較ステップ(112.11)の結果として、前記数学モデル(111)を修正するために、前記少なくとも1つのモデルパラメータを修正し、前記修正した少なくとも1つのモデルパラメータを用いて前記第1計算ステップ(112.10)を反復し、その後に、前記比較ステップ(112.11)を実際の比較ステップとして反復し、
前記実際の比較ステップ(112.11)が、前記検出変数の前記実際計算値と前記検出変数の前記実際検出値との偏差が事前に規定可能な偏差を超えたことを判定した場合に、前記反復ステップを反復し、
前記実際の比較ステップ(112.11)が、前記検出変数の前記実際計算値と前記検出変数の前記実際検出値との偏差が前記事前に規定可能な偏差以内であることを判定した場合に、前記第2計算ステップ(112.5)において、直前に修正した前記少なくとも1つのモデルパラメータを有する前記数学モデル(111)を用いて、前記入力変数の前記実際入力値を、前記第1位置について計算することを特徴とする請求項22〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの影響変数が、影響変数のグループからの変数であり、前記影響変数のグループは、前記光学結像装置の照明装置(102)の光パワーを表す変数、前記光学結像装置の加熱装置(107.7)の加熱パワーを表す変数、前記光学結像装置の冷却装置(107.7)の冷却パワーを表す変数、前記構成部品(106.1〜106.6)の環境内の温度外乱を表す変数、前記構成部品(106.1〜106.6)に作用するアクチュエータ装置の温度外乱を表す変数、前記構成部品(106.1〜106.6)の環境内の平均温度を表す変数、前記構成部品(106.1〜106.6)に作用するアクチュエータ装置の平均温度を表す変数、隣接した構成部品との間の熱クロストークを表す変数、温度調整される隣接した構成部品との間の熱クロストークを表す変数、光学素子との間の熱クロストークを表す変数、隣接した電子部品の熱出力を表す変数、隣接したセンサデバイスの熱出力を表す変数、及び隣接した温度センサまたは位置センサの熱出力を表す変数から成り、及び/または、
前記検出変数が温度を表す変数であり、及び/または、
前記入力変数が温度を表す変数であることを特徴とする請求項20〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記第1位置が、前記第2位置から距離をおいた所にあることを特徴とする請求項20〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記第1位置が、前記少なくとも1つの検出装置(110.6)の配置に適さず、及び/または、
前記第1位置が、前記光学結像装置の構成部品(106.1〜106.6)の光学的有効面の領域内に配置されていることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
光学結像装置の少なくとも1つの能動部品を制御する方法であって、
前記光学結像装置の制御部(108.1)への入力変数の実際入力値を、請求項1〜28のいずれかに記載の方法を用いて決定し、前記実際入力値は、前記光学結像装置の構成部品(106.1〜106.6)に割り当てられ、
前記制御部(108.1)は、前記光学結像装置の少なくとも1つの第2能動部品(107.1〜107.6, 107.7)を、前記実際入力値の関数として駆動することを特徴とする方法。
【請求項30】
前記第1計算ステップ(112.10)、前記比較ステップ(112.11)、前記修正ステップ(112.13)、及び前記第2計算ステップ(112.5)を、少なくとも1つの事前に規定可能な時間的または非時間的イベントの発生の関数として実行することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記光学結像装置がマイクロリソグラフィー用の光学結像装置であることを特徴とする請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記第2能動部品(107.1〜107.6, 107.7)は、温度調整装置(107.7)、位置決め装置、変形装置、及び検出装置から成る構成部品のグループからの構成部品であることを特徴とする請求項29〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記第2能動部品(107.1〜107.6, 107.7)は、前記光学結像装置の構成部品(106.1〜106.6)に割り当てられ、及び/または、前記第2能動部品(107.1〜107.6, 107.7)は、前記光学結像装置の構成部品(106.1〜106.6)に作用するように構成されていることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記光学結像装置の構成部品が光学素子であることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
光学結像方法であって、
光学結像装置(101)において、光学素子の第1グループ(102.1)の光学素子を用いて照射される投影パターンを、光学素子の第2グループ(106)の光学素子である前記構成部品(106.1〜106.6)を用いて基板(105.1)上に投影し、
前記光学結像装置の前記制御部(108.1)は、前記光学結像装置の少なくとも1つの第2能動部品(107.1〜107.6, 107.7)を、請求項29〜34のいずれかに記載の方法を用いて駆動することを特徴とする光学結像方法。
【請求項36】
前記光学結像装置の前記制御部(108.1)は、前記投影パターンの結像中に、前記光学結像装置の少なくとも1つの第2能動部品(107.1〜107.6, 107.7)を駆動することを特徴とする請求項35に記載の光学結像方法。
【請求項37】
前記光学結像方法がマイクロリソグラフィー用の光学結像方法であることを特徴とする請求項35または36に記載の光学結像方法。
【請求項38】
光学結像装置であって、
投影パターンを含むマスク(103.1)を収容するマスク装置(103)と、
基板(105.1)を収容する基板装置(105)と、
第1グループの光学素子(102.1)を有して、前記投影パターンを照射する照明装置(102)と、
第2グループの光学素子(106)を有して、前記投影パターンを前記基板(105.1)上に結像させる投影装置(104)と、
制御部(108.1)とを具え、
前記制御部(108.1)は、当該制御部(108.1)への入力変数の実際入力値を、請求項1〜28のいずれかに記載の方法を用いて決定するように構成され、前記実際入力値は、前記光学結像装置の構成部品(106.1〜106.6)に割り当てられ、
前記制御部(108.1)は、前記光学結像装置の少なくとも1つの第2能動部品(107.1〜107.6, 107.7)を、前記実際入力値の関数として駆動するように構成されていることを特徴とする光学結像装置。
【請求項39】
前記光学結像装置がマイクロリソグラフィー用の光学結像装置であることを特徴とする請求項38に記載の光学結像装置。
【請求項40】
前記第2能動部品(107.1〜107.6, 107.7)は、温度調整装置(107.7)、位置決め装置、変形装置、及び検出装置から成る構成部品のグループからの構成部品であることを特徴とする請求項38または39に記載の光学結像装置。
【請求項41】
前記第2能動部品(107.1〜107.6, 107.7)は、前記光学結像装置の構成部品(106.1〜106.6)に割り当てられ、及び/または、前記第2能動部品(107.1〜107.6, 107.7)は、前記光学結像装置の構成部品(106.1〜106.6)に作用するように構成され、及び/または、
前記第2能動部品(107.1〜107.6、107.7)は、前記光学結像装置の追加的な構成部品(106.1〜106.6)に割り当てられ、及び/または、前記第2能動部品(107.1〜107.6, 107.7)は、前記光学結像装置の追加的な構成部品(106.1〜106.6)に作用することを特徴とする請求項40に記載の光学結像装置。
【請求項42】
前記光学結像装置の構成部品が光学素子であり、前記光学結像装置の追加的な構成部品が追加的な光学素子であることを特徴とする請求項41に記載の光学結像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学結像装置の制御部への入力変数の実際入力値を決定する方法、及びこうした結像装置の能動部品を実際入力値の関数として駆動する方法に関するものである。本発明は、マイクロエレクトロニクス回路の生産において用いられるマイクロリソグラフィーに関連して用いることができる。本発明は、さらに、とりわけ本発明による光学結像装置を用いて実行することができる光学結像方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に、マイクロリソグラフィーの分野では、可能な最高精度で具体化される構成部品を用いることに加えて、相応に高い結像品質を実現するためには、とりわけ、結像装置の構成部品、即ち、例えばレンズ素子、ミラーまたは格子のような光学素子の位置及び幾何学的形状を、動作中にできる限り不変に保つ必要がある。この場合、こうした高精度の要求は、数ナノメートル以下のオーダーの顕微鏡的な範囲であり、特に、生産するマイクロエレクトロニクス回路の小型化を進めるための、マイクロエレクトロニクス回路の生産に使用される光学系の分解能を絶えず増加させる必要性の結果である。
【0003】
分解能の増加を達成するためには、13nmの範囲の動作波長による極紫外(EUV:extreme ultraviolet)範囲内で動作する場合のように、光の波長を低減することができるか、あるいは、生産システムの開口数を増加させることができるかのいずれかである。開口数を、1の値より上に目に見えて増加させる1つの可能性は、いわゆる浸漬系を用いて実現され、1より大きい屈折率を有する浸漬媒体を、投影系の最終光学素子と、露光することを意図した基板との間に配置する。開口数のさらなる増加は、特に高い屈折率を有する光学素子により可能である。
【0004】
動作波長の低減及び開口数の増加の両方に伴い、動作の過程全体を通して使用される光学素子の位置決め精度及び寸法安定性に関してなされる要求の増加が存在するだけではない。もちろん、光学装置全体の結像誤差を最小にすることに関する要求の増加も存在する。
【0005】
この場合、特に重要なものは、もちろん、使用する構成部品内、特に光学素子内の温度分布、及び場合によっては、関連する構成部品、例えば光学素子の結果的な変形、及び関連する光学素子の温度に応じて生じ得る屈折率の変動である。
【0006】
EUVシステムについては、欧州特許出願公開第1477853号明細書(特許文献1)(Sakamoto、その開示を参照する形で本明細書に含める)より、専らこうしたシステムにおいて使用可能なミラーの加熱に能動的に対抗することが知られ、この加熱は入射光により生じ、そして、こうしたミラー内の特定位置で検出される温度を、特定の所定範囲内に能動的に保つことが知られている。このことは温度調整装置を用いて行われ、この温度調整装置は、ミラーの背面側の中央に配置され、ペルチェ素子等を具えている。この解決策は、第1に、特に上述した浸漬系の場合に使用されるもののような屈折光学素子と共に用いるのに適さない、という欠点を有する、というのは、中央の温度調整装置が光学的に利用される領域を覆うからである。第2に、事実上の定常状態で、ミラー内の単一箇所の温度しか、ミラーによって吸収される光エネルギーを考慮して高い信頼性で制御することができない。他の熱環境の影響、特に、浸漬媒体によってもたらされ、動的または局所的な温度分布の変動をミラー内に生じさせ得るような、非定常及び/または局所的に変化する熱の影響は、軽視されている。
【0007】
これらの問題から進めて、国際公開第2007/128835号パンフレット(特許文献2)(Gellich他、その開示を参照する形で本明細書に含める)は、とりわけ、関連する光学素子の熱モデルを用いることを提案している。この関係では、例として、こうした光学素子の熱モデルを用いて、(例えば、実際に使用する光パワー、等のような)多種多様な影響変数、及び/または(例えば、光学素子の領域内の特定点で測定される温度のような)検出変数の実際値に応じて、光学素子内の実際温度分布を推定することができる。次に、こうして得られた光学素子内の温度分布の推察を、結像装置の制御部への入力変数として用いることができ、この制御部は、能動部品(例えば、加熱素子及び/または冷却素子)を、これらの入力変数の関数として駆動して、関連する光学素子内に所望の温度分布を実現することができる。
【0008】
ここで問題になることは、第1に、熱的外乱は全く検出することができないことが多い上に、例えば実際の局所的な光パワーのような温度分布に影響する特定の影響変数は、限られた精度でしか指定することができない、ということである。このことは、上記モデルを用いて得られる光学素子内の温度分布の推定値と実際の温度分布とが、互いに大きい方または小さい方に外れ、場合によっては、時間と共にさらに外れていき、温度分布を必要に応じて制御することがもはや不可能であるという結果を伴う、という影響を与え得る。
【0009】
こうした環境は、最終的に、これに対応したモデルの改良、特に、追加的な影響変数及び/またはより多数の検出点(これらの検出点で、例えば温度のような検出変数が確定される)を考慮することによって対処することができる。しかし、この場合、第1に、熱モデルを作成することの複雑性が大幅に増加する。さらに、制御部の入力変数を確定するための計算労力、従って、能動部品を駆動するための時間の消費も、結果的に増加し、このため、特にマイクロリソグラフィーの分野で要求される制御の高いダイナミックレンジが、もはや保証されなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1477853号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/128835号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願公開第0956871号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明は、光学結像装置の制御部への入力変数の実際入力値を決定する方法、結像装置の能動部品を駆動する方法、上述した欠点を有しないか、これらの欠点を少なくともより小さい度合いで有し、かつ、特に、結像装置の能動部品の制御を、単純な方法で、できる限り精密かつ動的にすることができる光学結像方法及び光学結像装置を提供する目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、制御部への入力変数(結像装置の第1位置に割り当てられた)と所定の基準変数との既知の第1関係を用い、かつ、(結像装置の第2位置において)検出した検出変数の実際値も用いた、結像装置の能動部品の精密かつ動的な制御は、まず、実際に検出した検出変数の値を用いて第1関係の実際精度をチェックし、適切であれば、第1関係を修正すれば、行うことができる、という見識に基づく。その後に、制御部への入力変数を、場合により修正した第1関係に基づいて正確に決定することができる。このようにして、換言すれば、入力変数を決定するために用いられ、系の動的な挙動を考慮した既知の関係を、結像装置における実際状態に整合させて、入力変数をできる限り現実的に決定することができる。
【0013】
本発明によれば、1つ以上の影響変数の関数としての(上記第1関係と既知の関係にある)既知の第2関係に基づいて、まず、上記第2位置における上記検出変数の実際計算値が計算により確定されることを利用して、上記第1関係の実際精度を単純に評価することができる(この第2位置において、検出変数の実際検出値が、対応する検出装置を用いて検出される)。(第2関係に基づいて確定した)この計算値と、(検出装置を用いて)実際に検出した検出変数の値との偏差が所定閾値を超えた場合、第1関係の対応する修正を(第1関係と第2関係との間の既知の関係により)実行する。
【0014】
この修正のためには、原則として、第1関係の対応する修正は、適切な評価基準に基づいて確定した偏差から直接導出すれば十分である。この方法により、実際状態への特に急速な適応を実現することができる。
【0015】
この修正のためには、反復的な手順を選定することが好ましく、この手順では、まず、第2関係の対応する修正を、適切な評価基準に基づいて、上記確定した偏差、及び/または上記確定した偏差の時間的進行から導出する。次に、修正した第2関係を用いて、第2位置における検出変数の計算値を再度計算し、この計算値を、検出変数の実際検出値と比較する。(それぞれの修正した第2関係に基づいて確定した)計算値と検出変数の実際検出値との偏差が所定閾値を下回るまで、この反復を継続する。その後に、上記第1関係の対応する修正を、第1関係と第2関係との間の既知の関係により実行することができる。
【0016】
上記偏差の評価及び結果的なそれぞれの関係の修正には、1つまたは複数の評価基準を用いることができる。この場合、原則として、あらゆる適切な評価基準を関与させることができる。この関係では、例えば、関連する関係に影響を与える変数の少なくとも1つの時間的推移を考慮に入れた時間的評価基準を用いることができる。このことは、上記検出変数、及びこれに加えて、あるいはその代わりに、上記関係に影響を与える他の影響変数を関与させることができる。例えば、1回以上の以前の修正により生じる、上記関係自体の時間的推移を考慮することも、同様に可能である。
【0017】
同様に、これに加えて、あるいはその代わりに、空間的な評価基準を上記偏差の評価に用いることができる。この関係では、例として、(特定時点で)検出変数の計算値と実際検出値との偏差を、複数の異なる第2位置について確定することができる。次に、これらの偏差に基づいて、それぞれの関係の対応する修正を確定して実行することができる。
【0018】
この場合、さらに、適切であれば、上記閾値の動的な適応を実行することもできることは言うまでもなく、この適応に従って上記修正プロセスを終了する。この閾値の適応のためにも、あらゆる所望の時間的及び/または空間的な基準を用いることができる。
【0019】
上記第1関係及び第2関係の各々は、原則として、あらゆる適切な種類のものとすることができる。この関係では、例として、第1関係は、少なくとも、(上記検出装置の)上記第2位置における上記検出変数の値への、上記入力変数の依存性を反映することができる。同様に、これに加えて、あるいはその代わりに、第1関係を用いて、他の影響変数、及び/または、その時間的進行を考慮に入れることもできる。また、上記第2関係により、任意の影響変数、及び/または、その時間的進行を考慮に入れることもできる。
【0020】
上記第1関係と第2関係との相互関係は、原則として、あらゆる所望の種類のものとすることができる。この関係では、第1関係は、例えば、少なくとも第2関係の一部から生じさせることができる。特に単純な様式に構成される本発明の変形例では、第1関係及び第2関係はいずれも、結像装置の一部分、例えば(光学素子のような)結像装置の構成部品について事前に作成した数学モデルである。ここで、第1及び第2関係は、特定構成要素に関して互いに対応する(これらの構成要素から、第1関係と第2関係との相互関係が生じる)。この場合、第2関係の良好な修正後に、修正した第2関係の対応する構成要素のみを第1関係に取り入れて、第1関係を修正しなければならない、ということをもたらすことができる。
【0021】
このことは、上記数学モデルが、第1関係と第2関係との相互関係が少なくとも1つのモデルパラメータによって与えられるパラメータ化モデルであれば、特に単純な方法で実現することができ、第2関係を修正した後に、このモデルパラメータを第1関係に取り入れて、第1関係の修正も行うだけで済む。
【0022】
こうしたパラメータ化モデルの場合、後者(第1関係の修正)は、一組のパラメータ化微分方程式によって実現することができ、例えば、考慮すべき影響変数毎に、確定すべき入力変数に関する伝達関数を、こうしたパラメータ化微分方程式によって表すことができる。
【0023】
なお、これに関連して、適切であれば、上記検出装置を用いて上記第2位置において検出した上記検出変数の値は、上記第1関係に直接の影響は与えず、むしろ、この値を、上記第2関係の評価及び修正のみに関連して用い、この評価及び修正から、その後の第1関係の修正が生じる、ということをもたらすこともできる。従って、その結果、第1関係の修正後に行われる入力変数の直接計算が、検出変数の実際値を用いずに行われる、ということがあり得る。
【0024】
本発明は、原則として、任意の検出変数に関連して用いることができる。この関係では、例として、結像装置の構成部品の変形を、対応する検出変数を用いて検出することができ、この検出変数は、(例えば、歪みゲージの測定電圧の場合のように)この構成部品上の2つの基準点間の空間的関係の変化を再現する。関連する構成部品上の基準点の位置及び/または向きを表す検出変数を用いることも、同様に可能である。
【0025】
本発明は、関連する構成部品の上記第2位置における温度を表す検出変数に関連して用いることが好ましい。次に、関連する構成部品の上記第1位置における温度を表す変数を、第1位置に関係する開ループまたは閉ループ制御用の入力変数として同様に用いることが好ましい。
【0026】
特に単純な様式に構成される本発明の変形例では、上記検出変数が、上記第2位置における温度を表す変数であり、この温度は対応する温度センサを用いて検出される。従って、上記第1及び第2関係は、結像装置の一部分(例えば光学素子)のパラメータ化熱モデルの一部であることが好ましく、この熱モデルは、モデル化された部分の局所温度の、1つ以上の影響変数への依存性を再現する。この場合、上記局所温度を確定する箇所の位置(従って、考慮する箇所の位置)が、このモデルのモデル変数を構成する。最も単純な場合、上記第1関係と第2関係とは、考慮する箇所の位置(従って、このモデル変数の値)のみが異なり、残りの点(特に、モデルパラメータの値に関して)は、互いに対応する。
【0027】
本発明は、特にマイクロリソグラフィー用に設計された結像装置の制御部への入力変数の実際入力値を決定する方法に関するものであり、この入力値は、光学結像装置の第1位置に割り当てられる。この方法では、検出ステップにおいて、結像装置の少なくとも1つの検出装置の検出変数の少なくとも1つの実際検出値を第2位置において検出し、決定ステップにおいて、この入力変数の実際入力値を、上記少なくとも1つの実際検出値及び所定の第1関係を用いて決定する。この決定ステップの第1計算ステップでは、検出装置の第2位置における検出変数の実際計算値を、第2関係を用いた計算により確定する。決定ステップの比較ステップでは、検出変数の実際計算値を、検出変数の実際検出値と比較する。決定ステップの修正ステップでは、第1関係の修正を、第1関係と第2関係との相互関係を用いて、比較ステップの関数として実行する。そして、決定ステップの修正ステップに後続する第2計算ステップでは、第1関係を用いて入力変数の実際入力値を計算する。
【0028】
本発明は、さらに、光学結像装置の制御部への入力変数の実際入力値を決定する方法に関するものであり、この実際入力値は、結像装置の構成部品の領域内の第1位置に割り当てられ、この結像装置は、特にマイクロリソグラフィー用に設計されている。この方法では、検出ステップにおいて、結像装置の少なくとも1つの検出装置の検出変数の少なくとも1つの実際検出値を、上記構成部品の領域内の第2位置において検出し、決定ステップにおいて、入力変数の実際入力値を、少なくとも1つの実際検出値、及びこの構成部品の数学モデルを用いて決定する。この場合、決定ステップの第1計算ステップでは、第2位置における検出変数の実際計算値を、このモデルを用いた計算により確定する。決定ステップの比較ステップでは、検出変数の実際計算値を、検出変数の実際検出値と比較する。決定ステップの修正ステップでは、上記モデルの修正を、比較ステップの結果の関数として実行する。最後に、決定ステップの修正ステップに後続する第2計算ステップでは、入力変数の実際入力値を、上記モデルを用いて計算する。
【0029】
本発明は、さらに、特にマイクロリソグラフィー用の光学結像装置の少なくとも1つの能動部品を制御する方法に関するものであり、この結像装置の制御部への入力変数の実際入力値を、本発明による方法によって決定し、この入力値は、結像装置の第1構成部品に割り当てられ、上記制御部は、結像装置の少なくとも1つの第2能動部品を実際入力値の関数として駆動し、上記第1計算ステップ、比較ステップ、修正ステップ、及び第2計算ステップは、特に、少なくとも1つの事前に規定可能な時間的または非時間的イベントの発生の関数として実行する。
【0030】
本発明は、さらに、光学結像方法に関するものであり、光学結像装置内で、光学素子の第1グループをなす光学素子を用いて照射される投影パターンを、光学素子の第2グループをなす光学素子を用いて基板上に結像させ、この結像装置の制御部は、特に投影パターンの結像中に、結像装置の少なくとも1つの第2能動部品を、本発明による方法により駆動する。
【0031】
最後に、本発明は、さらに、特にマイクロリソグラフィー用の光学結像装置に関するものであり、この光学結像装置は、投影パターンを具えたマスクを収容するマスク装置、基板を収容する基板装置、投影パターンを照射するための光学素子の第1グループを有する照明装置、投影パターンを基板上に結像させるための光学素子の第2グループを有する投影装置、能動部品、及び制御部を具えている。この制御部は、本発明による方法を用いて、当該制御部への入力変数の実際入力値を決定するように構成され、この入力値は、結像装置の第1構成部品に割り当てられる。上記制御部は、さらに、結像装置の少なくとも1つの第2能動部品を、実際入力値の関数として駆動するように構成されている。
【0032】
本発明の他の好適な構成は、従属請求項、及び以下の好適な実施形態の説明より明らかになり、この説明は添付した図面を参照する。なお、本明細書に開示した特徴の任意の組合せは、従属請求項に記載されているか否かにかかわらず、本発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明による光学結像装置の好適な実施形態の概略図であり、この光学結像装置により、本発明による方法の好適な実施形態を実行することができる。
【
図2】本発明による光学結像方法の好適な実施形態のフローチャートであり、本発明による、
図1の結像装置の能動部品を制御する方法の好適な実施形態、及び本発明による、
図1の結像装置の制御部への入力変数の実際入力値を決定する方法の好適な実施形態を含む。
【
図3】
図1の結像装置の一部分の概略信号流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明によるマイクロリソグラフィー用光学結像装置の好適な実施形態を、
図1〜3を参照して説明する。
【0035】
図1に、本発明による光学結像装置の好適な実施形態の非常に概略的な例示を、マイクロリソグラフィー装置101の形態で示す。マイクロリソグラフィー装置101は、EUV範囲内の光、即ち約5nm〜20nm、本例では13nmの波長を有する光で動作する。しかし、本発明は、マイクロリソグラフィーの分野で一般に使用される他のあらゆる動作波長(特に、300nm以下、例えば193nm)に関連して用いることができることは言うまでもない。
【0036】
マイクロリソグラフィー装置101は、照明系102、マスク装置103、対物レンズの形態の投影光学系104、及び基板装置105を具えている。照明系102は、光源(図示せず)及び光学素子の第1グループ102.1を用いて、マスク装置103のマスクステージ103.2上に配置されたマスク103.1を、13nmの波長を有する投影光ビーム(概略的に図示する)で照射する。投影パターンはマスク103.1上に存在し、この投影パターンは、13nmの波長を有する投影光ビーム104.1(簡略化した様式で示す)で、対物レンズ104内に配置された光学素子の第2グループ106を介して、基板装置105のウェハーステージ105.2上に配置されたウェハー105.1の形態の基板上に投影される。
【0037】
対物レンズ104は、光学素子の第2グループ106を具え、これらの光学素子は、光学素子106.1〜106.6の形態の一連の第1構成部品によって形成される。光学素子106.1〜106.6は、対物レンズ104の筐体内に保持される。13nmの動作波長により、光学素子106.1〜106.6は反射光学素子であり、即ちミラー等である。
【0038】
特に、上記の短い動作波長のため、動作中に(特に、ウェハー105.1上への投影パターンの結像中に)光学素子106.1〜106.6内の実際の温度分布TEを、主に光学素子106.1〜106.6のそれぞれの光学面の領域内で、所定の所望温度分布TSEの付近の非常に狭い変動限界内に保つ必要がある。さもなければ、温度分布の変動により、これらの光学面の不所望な変形が生じて結像誤差を増加させ、従って、即ち低い結像品質をもたらす。
【0039】
それぞれの光学素子106.1〜106.6内の温度分布TEは、投影光ビーム104.1の光パワーの時間的進行によって影響され、そして、投影光ビーム104.1がそれぞれの光学面上に入射する領域全体にわたる位置、形状、及びパワー分布にも影響される。
【0040】
所定の所望温度分布TSEの付近の狭い変動限界に適合するために、本発明によれば、光学素子106.1〜106.6毎に第2能動部品107.1〜107.6を設け、第2能動部品はいずれも、温度調整装置107.7を具えている。各第2能動部品107.1〜107.6の温度調整装置は、割り当てられた光学素子106.1〜106.6において、少なくとも1つの位置で、一般に複数の(適切に分布した)位置で、当該光学素子を能動的に加熱及び/または冷却することによって、当該光学素子内の温度分布に能動的に影響を与える。温度調整装置107.7は、特に、それぞれの光学素子106.1〜106.6の所定の第1位置において、例えば、それぞれの光学素子106.1〜106.6の光学面の異なる点において、所定の所望温度分布TSEを実現することを可能にする。
【0041】
この目的で、ウェハー105.1上への投影パターンの結像中に、それぞれの第2能動部品107.1〜107.6を、制御装置によって、本発明による制御方法の好適な実施形態を用いて駆動する。ここで、本発明による、関連する光学素子106.1〜106.6のそれぞれの光学面上の異なる第1位置に対するこうした入力変数を決定する方法の好適な実施形態により、変数を、制御装置108の制御部108.1への入力変数として決定し、この変数は、上記光学面のこの第1位置における実際温度を表し、これについては、以下に
図2及び3を参照しながら、より詳細に説明する。
【0042】
本例では、マイクロリソグラフィー装置101の動作中に、光学素子106.1〜106.6の光学面の、所定の所望温度分布TSEからの最大偏差ΔTE=1mKを、第2の能動素子107.1〜107.6による能動的温度制御により順守する。この方法により、熱的に誘導される変形により生じる結像誤差または結像誤差変動を十分小さく保って、高い結像品質を達成する。しかし、本発明の他の変形例では、特に、使用する材料の熱変形挙動次第で、適切であれば他の最大偏差も可能であることは言うまでもない。しかし、この偏差は最大でも10mKであることが好ましい、というのは、この値で特に高い結像品質を達成することができるからである。
【0043】
同様に、本発明の特定変形例では、個別の構成部品の温度感度次第で、個別の光学素子のみに、適切であれば、さらにはこれらの光学素子のうち単一のもののみに、こうした能動的温度制御を施せば十分であり得ることも、言うまでもない。さらに、こうした能動的温度制御を施すことができるのは、投影装置104の光学素子だけでないことは言うまでもない。同様に、第1グループ102.1の光学素子のうちの1つ以上に、こうした能動的温度制御を施すこともできる。
【0044】
最後に、こうした能動的温度制御は、光学素子だけでなく、結像装置101における、熱的に誘導される変形の結果として結像品質に悪影響を与え得る他の構成要素にも施すことができることは言うまでもない。
【0045】
これに関連して、所定の所望温度分布TSEを任意に選定することができることは言うまでもない。この関係では、こうした所定の所望温度分布TSEの場合でも、光学素子106.1〜106.6が、少なくとも1種類の結像誤差について最小の結像誤差を有するように、所定の所望温度分布TSEを選定することができる。しかし、同様に、こうした所定の所望温度分布TSEの場合でも、光学素子106.1〜106.6のうちの1つが、少なくとも1種類の結像誤差について、光学素子の第2グループ106の他の光学素子106.1〜106.6の対応する結像誤差を低減するか、さらには完全に補償するのに十分な大きさを有する結像誤差を有し、これにより、対物レンズ104の総結像誤差が、少なくとも1種類の結像誤差について最小になるように、所定の所望温度分布TSEを選定することができる。こうした総結像誤差の最小化は、欧州特許出願公開第0956871号明細書(Rupp、その開示を参照する形で本明細書に含める)(特許文献3)より知られる。
【0046】
これに関連して、さらに、本発明の他の変形例では、上記能動的温度制御に加えて、あるいはその代案として、結像装置101の1つ以上の第1構成部品、特に1つ以上の光学素子の他の能動的影響を、割り当てられた第2能動部品を用いて与えることもできることは言うまでもない。この関係では、第2能動部品107.1〜107.6のうちの1つ以上を、例えば、関連する第1構成部品、従って関連する光学素子106.1〜106.6に機械的影響を与えるように、例えば、その位置及び/または向きに1つ以上の自由度で(6つの自由度まで、6つの自由度を含めて)影響を与えるように、及び/または、局所的及び/または大域的な変形による的を絞った方法で、その幾何学的形状を変更して、例えば熱的に誘導される変形、従って結像品質の劣化に対抗するように設計することができる。
【0047】
同様に、第1構成部品、例えば光学素子106.1によって生じる結像品質の劣化に、他の第1構成部品のうちの1つ以上に能動的に影響を与えることによって(従って、この場合、これらは本発明の意味での第3構成部品を構成する)対抗することができ、即ち、例えば、関連する第2能動部品107.2〜107.6によって、光学素子106.2〜106.6に影響を与えることができる。
【0048】
以下、制御装置108による第2能動部品107.1〜107.6の制御の基本構成及び手順を、例として、(本発明の意味での第1構成部品としての)光学素子106,6に割り当てられた第2能動部品107.6に基づいて説明する。しかし、他の光学素子106.1〜106.5、及びこれらに割り当てられた第2能動部品107.1〜107.5にも、同じことが当てはまることは明らかである。
【0049】
上記制御は熱的制御ループ109を含み、熱的制御ループ109は、第2能動部品107.6の温度調整装置107.7、検出装置110.6、及び制御装置108を具えている。温度調整装置107.
7は、例えばペルチェ素子の形態の一連の温度調整素子を具え、これらは、動作中に光学素子106.6上に作用する熱負荷に応じて、かつ実現すべき所望温度分布TSEに応じて、光学素子106.6全体にわたって分布する様式に配列されている。
【0050】
検出装置110.6は、光学素子106.6全体にわたって分布する様式に配列された一連の温度センサを、光学素子106.6の(複数の)第2位置に具えている。各温度センサは、検出変数として、関連する第2位置における温度TSを表す変数を検出する。
【0051】
ここで、これらの温度センサを光学素子106.6の光学面上に直接配置することは、一般に不可能である。むしろ、温度センサによる光学面の外乱を回避するために、一般に特定距離を維持しなければならない。結果的に、光学素子106.6の光学面上のそれぞれの第1位置は、上記能動的温度制御にとって重要であり、検出装置110.6の温度センサの第2位置から特定距離にある。
【0052】
それぞれの第1位置と第2位置との間の距離に起因して、これら2つの位置の実際温度に偏差が生じ、このため、第2位置におけるそれぞれの温度センサの実測値TSは、関連する第1位置における実際の温度TEの真値に直接相当せず、従って、制御装置108の制御モジュール108.1への入力変数として用いることはできず、この制御モジュールは温度調整装置107.7を駆動する。
【0053】
こうした環境を考慮するために、光学素子106.6の光学面上の第1位置における温度の計算推定TREを、制御装置108において、結像装置101の熱モデル111を用いて実行し、次に、この推定のそれぞれの結果を、制御モジュール108.1へのそれぞれの入力変数として用いる。次に、制御モジュール108.1が温度調整装置107.7を駆動し、適切であれば、例えば照明装置102のような光学素子106.6の熱負荷に影響を与える追加的な能動部品を対応する方法で駆動して、所望温度分布TSEからの偏差ΔTEを上述した限界内に保つ。
【0054】
ここで、熱モデル111は、温度調整装置の熱モデル111.1、光学素子106.6に作用する残りの熱負荷の熱モデル111.2、及び検出装置110.6のそれぞれの温度センサの熱モデル111.4を含む。それぞれの熱モデル111.1〜111.4は、1つ以上のモデル入力変数と1つ以上のモデル出力変数との関係を表し、この関係は十分な精度で知られる。
【0055】
この関係では、温度調整装置の熱モデル111.1が、温度調整装置107.7用の制御モジュール108.1の実際出力変数と、温度調整装置107.7によって生じた光学素子106.6上の実際の熱負荷分布の比率との関係を表す。この場合、例えば温度調整装置の実際の動作パラメータ等のような他の影響変数を考慮に入れることができることは明らかである。
【0056】
さらに、残りの熱負荷の熱モデル111.2は、照明装置102用の制御モジュール108.1の実際出力変数と、照明装置102によって生じた光学素子106.6上の実際の熱負荷分布の比率との関係を表す。この場合も、例えば照明装置102の実際の動作パラメータのような他の影響変数を考慮に入れることができることは言うまでもない。同様に、光学素子106.6上の熱負荷分布の対応する変化を最終的にもたらす他の熱源またはヒートシンクまたは熱外乱を、この方法により考慮に入れることができる。
【0057】
この場合、特に、光学素子106.6の周囲にある構成部品の温度分布、及び/または(特に熱的に安定した構成部品の場合の)構成部品の平均温度を考慮に入れることができる。この場合、特に、光学素子106.6の周囲にある、例えばアクチュエータ等のような能動部品(特に、光学素子106.6に直接作用する能動部品)の温度分布及び/または平均温度が、特別な関心事である。同様に、隣接する(最終的に、能動的に温度調整される)構成部品、特に他の光学素子からの、及び/またはこうした構成部品への熱クロストークを考慮に入れることができる。隣接する電子部品の熱出力、特に、例えば温度センサまたは位置センサのようなセンサデバイスの熱出力にも、同じことが当てはまる。
【0058】
光学素子106.6の熱モデル111.3は、モデル111.1及び111.2から累積した光学素子106.6上の実際の熱負荷分布と、作用する熱負荷分布の累積から生じた光学素子106.6の光学面上の真の実際温度分布TEとの関係を(本発明の意味での第1関係として)表す。この場合、例えば光学素子106.6(それ自体は能動素子として構成される)の実際の動作パラメータのような他の影響変数を考慮に入れることができることは言うまでもない。
【0059】
検出装置1
10.6の熱モデル111.4は、モデル111.1及び111.2から累積した光学素子106.6上の実際の熱負荷分布と、作用する熱負荷分布の累積から生じた、それぞれの温度センサの第2位置における真の実際温度TSとの関係(本発明の意味での第2関係)を表す。この場合、例えば光学素子106.6(それ自体は能動素子として構成される)の実際の動作パラメータのような他の影響変数を考慮に入れることができることは言うまでもない。
【0060】
2つの熱モデル111.3及び111.4は、共に熱数学モデルに基づき、この熱数学モデルは、結像装置101全体について、あるいは結像装置101の一部分について、さらには光学素子106.6自体のみについて事前に作成されている。
【0061】
本例の場合、熱モデル111.3及び111.4は、k個のパラメータ化微分方程式の組の形式のパラメータ化モデルMの一部であり、考慮すべきk個の影響変数IN
k毎に、光学素子106.6の所定点における温度の計算推定値TRに関する伝達関数TF
kを、こうしたパラメータ化微分方程式によって表し、これにより、j個のモデルパラメータp
j及びm個のモデル変数v
mで、次式が成り立つ:
【数1】
【0062】
従って、本例の場合、他方では、2つの熱モデル111.3と111.4とは、温度の計算推定値TRを確定する点の座標が異なる。これに加えて、熱モデル111.4は、例えば検出装置110.6の配置及び/または検出装置110.6の熱応答挙動及び/または検出装置110.6の誤差のような検出装置110.6の特性を表すか考慮に入れた成分を(最終的には位置に依存する様式で)含む。
【0063】
熱モデル111は、制御装置108において、あらゆる適切な様式で実現することができる。本例では、熱モデル111は対応するデータの形式であり、このデータは、特に、制御装置108の1つ以上の記憶要素内に記憶され、制御装置108の1つ以上のプロセッサによってアクセスされて上述した機能を実行する1つ以上の実行可能なプログラムを含む。
【0064】
光学素子106.6の光学面上の実際温度分布(温度調整装置107.7を制御する制御モジュール108.1への入力変数として用いられる)が、熱外乱または熱ドリフト効果により、光学素子106.6の光学面上の真の実際温度分布から大幅に外れる問題に対処するために、本例では修正部111.5を設け、修正部111.5では熱モデルMを修正し、これについては、以下に、本発明による結像方法の好適な実施形態に関連して、特に
図2を参照しながらより詳細に説明する。
【0065】
図2よりわかるように、この方法の手順は、まずステップ112.1に始まり、ステップ112.2では、マイクロリソグラフィー装置101の構成部品を位置決め及び配向し、これにより上述した構成を生じさせ、この構成では、後続するステップにおいて、投影パターンをウェハー105.1上に結像させることができる。
【0066】
投影パターンのウェハー105.1上への光学結像と並行して、決定ステップ112.3では、上記モデルMを用いて、光学素子106.6の光学面における所定の第1位置についての変数の値を確定し、この値は、光学面における実際の計算温度TREを表す。この値は、その都度、入力変数の実際入力値として制御モジュール108.1に転送し、制御モジュール108.1は、この値を用いて温度調整装置107.7を駆動し、最終的に照明装置102も駆動する。
【0067】
ステップ112.4では、ここでまずチェックを行って、熱モデルMをチェックする必要があるイベントが発生したか否かを判定する。これは任意のイベントとすることができる。この関係では、例として、照明装置102をスイッチオンすること、結像プロセスを開始すること、露光ステップの所定回数に達すること、結像装置101の特定点において特定温度に達すること、等のような非時間的イベントを事前に定め、その発生時に熱モデルMをチェックする。もちろん、同様に、任意の時間的イベント、例えば所定時間間隔の経過により、熱モデルMのチェックを開始することができる。さらに、結像装置101の少なくとも特定の動作状態において、熱モデルMの連続的なチェックを行うことができることは言うまでもない。最後に、複数のこうした時間的及び/または非時間的イベントの組合せを事前に定めることができることは言うまでもない。
【0068】
ステップ121.4において、熱モデルMのチェックを行わないことを決定した場合、計算ステップ112.5では、光学面上の実際の計算温度TREを表す制御モジュール108.1への入力変数の実際入力値を、光学面上の所定点について、制御装置108内に現在記憶されているモデルMを用いて計算する。ここでは、熱モデル111.1、111.2及び111.3を、上述した方法で用いる。
【0069】
このように確定した値を個々に、入力変数の実際入力値として制御モジュール108.1に転送し、制御モジュールは、駆動ステップ112.6において、この値を用いて温度調整装置107.7を駆動し、適切であれば照明装置102も駆動する。
【0070】
次にステップ112.7では、方法の手順を終了すべきか否かを判定するためのチェックを行う。終了すべき場合、ステップ112.8において方法の手順を終了する。さもなければ、方法はステップ112.4にジャンプして戻る。
【0071】
ステップ112.4において、熱モデルMのチェックを行うべきことを決定した場合、まず、ステップ112.9において、検出装置110.6の温度センサを用いて、検出変数の(例えば測定電圧の)実際検出値を、温度センサのそれぞれの第2位置において確定し、この検出変数は、この第2位置における実際温度TSを表す。
【0072】
さらに、(第1)計算ステップ112.10では、制御装置108内に実際に記憶されているそれぞれの温度センサの熱モデル111.4によって、そしてモデルMを用いて、温度センサの位置における温度TRSの実際計算値を計算する。この場合、熱モデル111.1、111.2及び111.4を、上述した方法で用いる。
【0073】
もちろん、ステップ112.9及び112.10は、逆の順序で実行することも、あるいは少なくとも部分的に並列して実行することもできることは言うまでもない。
【0074】
次に、比較ステップ112.11では、それぞれの温度センサについて、実際に検出した温度TSと温度の計算値TRSとの差の絶対値が所定閾値Sを超えたか否か、即ち、次式が成り立つか否かを判定するためのチェックを行う:
|TS−TRS|=DT>S (2)
【0075】
いずれの温度センサについても成り立たない場合、実際に記憶しているモデルMが、温度センサを用いて検出された現状に十分に相当するものと結論付ける。その結果、方法は(第2)計算ステップ112.5にジャンプし、即ち、光学面上の実際計算温度TREを表す、制御モジュール108.1への実際入力値を、熱モデル111.1、111.2及び111.3を用いて上述した方法で確定する。
【0076】
関係DT>Sが、温度センサのうちの1つに成り立つ場合、実際に記憶しているモデルMは、もはや、温度センサを用いて検出した現状には十分に相当しないものと結論付ける。その結果、ステップ112.12においてモデル修正を実行して、モデルMを現状に整合させる。
【0077】
モデル修正のために、モデルMの対応する修正を、適切な評価基準に基づいて確定した偏差DTから直接導出し、少なくとも1つのモデルパラメータp
jを変更してモデルMを修正する。
【0078】
偏差DTの評価、及び結果的なモデルパラメータp
jの修正のために、特に、どのモデルパラメータp
jを変更するか、及びこの変更を行う度合いについて決定するために、1つ以上の評価基準を、制御装置108の修正モジュール111.5に記憶する。ここでは、原則として、あらゆる適切な評価基準を含めることができる。この関係では、例として、履歴的または時間的な評価基準を用いることができ、この評価基準は、影響変数のうち少なくとも1つの時間的推移を考慮に入れ、これらの影響変数は、モデルM中にそれらの実体が見出される。
【0079】
このことは、例えば、検出装置110.6を用いて検出した検出変数従って、本例では温度センサを用いて検出した温度の時間的推移を含むことができる。これに加えて、あるいはその代わりに、モデルMにおいて考慮される他の影響変数を考慮に入れることもできる。同様に、例えば、1回以上の前回の修正により生じるモデルM自体の時間的推移が、モデルMの評価及び結果的な修正に影響を与えることができる。
【0080】
これに加えて、あるいはその代わりに、空間的な評価基準を、偏差DTの評価に用いることもできる。この関係では、例として、複数の温度センサについての(特定時点で存在する)偏差DT、従って、即ちモデル化した温度分布の実際温度分布からの偏差が、評価に適切な影響を与えることができ、モデルMの必要な修正に関する結論は、こうした偏差DTの空間的な分布に基づいて導出することができる。
【0081】
このことは、局所的な空間的評価基準を含むことができ、この基準は、例えば、それぞれの偏差DTの、直に隣接する温度センサの偏差DTとの関係のみを考慮に入れることができる。しかし、もちろん、すべての温度センサについての偏差DTを考慮に入れた大域的な評価基準を適用することも同様にできる。
【0082】
さらに、適切であれば、閾値Sの動的な適応を実行することができることは言うまでもなく、この閾値に従って、修正プロセスを完了する。この閾値の適応のためにも、あらゆる所望の時間的及び/または空間的基準を用いることが、同様にできる。さらに、これに加えて、あるいはその代わりに、閾値Sに空間的分布を与えることができ、即ち、異なる温度センサに異なる閾値Sを与えることができる。
【0083】
原則として、高速の適応を行う変形例の場合、モデルMと現状との整合を確立するには、モデルMの単一の修正、あるいは関連するモデルパラメータp
jの修正で十分であり得る。こうした場合、ステップ112.12の後に、上記方法はステップ112.5に直接ジャンプし、次に、このステップにおいて、対応して修正したモデル111.4のモデルパラメータp
jを、単にモデル111.3に挿入して、制御モジュール108.1への入力変数(計算温度分布を表す)を決定する
【0084】
しかし、上記修正のためには反復的手順を選定することが好ましく、この手順では、ステップ112.12における修正後の反復ステップ112.13において、上記方法は再度ステップ112.9にジャンプし、比較ステップ112.11を実行する前に、後続するステップ112.10を、最後に修正したモデルMで実行する。
【0085】
反復される比較ステップ112.11において、上記の関係DT>Sが、いずれの温度センサにも成り立たないことが判明した場合、実際に記憶している修正されたモデルMが、温度センサを用いて検出した現状に十分良好に整合するものと結論付ける。その結果、上記方法は(第2)計算ステップ112.5にジャンプし、即ち、光学面上の実際計算温度TREを表す、制御モジュール108.1への実際入力値を、熱モデル111.1、111.2及び111.3を用いて上述した方法で計算する。
【0086】
修正したモデルMでも、上記の関係DT>Sが温度センサのうちの1つに成り立つ場合、この修正したモデルでも、温度センサを用いて検出した現状に、まだ十分に相当しないものと結論付ける。その結果、反復ステップ112.13をステップ112.12から開始して、追加的なモデル修正を実行する。
【0087】
この反復は、モデルMが現状の十分な近似に達するまで反復することができる。しかし、1つ以上の終了基準をチェックするための比較ステップ112.11では、1つ以上の終了基準をチェックすることができ、これらの終了基準を満たすことが、反復の終了及びステップ112.5による方法の継続をもたらす。このことは、瞬間的に不安定な状態の場合に特に有利であり得る。
【0088】
本例では、現段階で、検出装置110.6の温度センサを用いて検出した温度TSが、モデルM、従って、制御モジュール108.1への入力変数の計算に直接影響を与える必要は必ずしもない、と言うべきである。むしろ、上述したように、これらの温度TSは、モデルMの評価及び修正に関連して用いるだけで十分であり得る。
【0089】
しかし、本発明の他の変形例は、これらの温度が制御モジュールへの入力変数の決定に直接影響を与える、ということをもたらすこともできることは言うまでもない。例として、例えば1つ以上の微分方程式の形式のそれぞれの温度センサの温度TSと、光学素子の光学面上の計算温度TREとの関係を、第1関係として事前に定めることができる。従って、この場合、それぞれの温度センサの温度TSは、この第1関係を修正するために用いると共に、制御モジュールへの入力変数を確定するために直接用いることができる。
【0090】
さらに、現段階で、モデル修正111.5は、適切であれば、
図3に破線で例示するように、温度調整装置111.1のモデル化及び/または熱負荷111.2の残り部分のモデル化に影響を与えることができる、というべきである。特に、モデルM自体が、結像装置101の完全なモデル化を含めて、それに至るまでの結像装置101の大部分のモデル化を表せば、これに当たり得る。
【0091】
本発明は、光学素子の第2グループの光学素子106.1〜106.6のすべてに能動温度制御を施す例に基づいて上述してきた。なお、ここでも現段階で、本発明の他の変形例では、もちろん、こうした能動温度制御を個別の光学素子のみに用いることができる。同様に、これに加えて、あるいはその代わりに、こうした能動温度制御は、光学素子の第1グループ102.1の光学素子のうちの1つ以上に関連して用いることもできる。
【0092】
さらに、個別の構成部品(または光学素子)の能動的影響を、他の(例えば隣接する)構成部品(またはそれぞれの光学素子)の確定した温度分布の関数としてのみ実行することができる。このことは、特に、個別光学部品(またはそれぞれの光学素子)の確定した温度分布と、こうした他の構成部品の温度分布との間に、十分な精度で知られる関係が存在する場合に当てはまる。このことは、特に、これらの他の構成要素が、熱的に同様に安定した環境にある場合に当てはまる。
【0093】
さらに、本発明は、温度を表す変数を検出変数として用いる例に基づいて上述してきた。ここでも、現段階で、本発明は、原則として、他のあらゆる検出変数に関連して用いることもできる、というべきである。この関係では、例として、結像装置の構成部品の変形を、これらの構成部品上の2つの基準点どうしの空間的変化を再現する対応する検出変数を用いて検出することができる(例えば、歪みゲージの測定電圧の場合である)。関連する構成部品上の基準点の位置及び/または向きを表す検出変数を用いることも、同様に可能である。
【0094】
本発明は、光学素子のグループ102.1及び106が専ら反射光学素子から成る例に基づいて上述してきた。しかし現段階で、本発明は、もちろん、特に他の動作波長での結像の場合に、また屈折、反射、または回折光学素子、あるいは任意の組合せにも適用することができる。