特許第6531314号(P6531314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6531314
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】光送受信装置及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/69 20130101AFI20190610BHJP
   H01S 5/14 20060101ALI20190610BHJP
   H01S 5/0683 20060101ALI20190610BHJP
   H04B 10/50 20130101ALI20190610BHJP
【FI】
   H04B10/69 170
   H01S5/14
   H01S5/0683
   H04B10/50
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-99033(P2015-99033)
(22)【出願日】2015年5月14日
(65)【公開番号】特開2016-27695(P2016-27695A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2018年2月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-130576(P2014-130576)
(32)【優先日】2014年6月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本オクラロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】種村 拓夫
(72)【発明者】
【氏名】中野 義昭
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝昌
(72)【発明者】
【氏名】向久保 優
(72)【発明者】
【氏名】山内 俊也
【審査官】 岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/140186(WO,A1)
【文献】 特表2009−510894(JP,A)
【文献】 特開2005−099025(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/110126(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00−10/90
H04J 14/00−14/08
H01S 5/0683
H01S 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射型半導体光増幅器を含む終端側光送信器と、
前記終端側光送信器からの出力光を反射する反射部と、
前記終端側光送信器と伝送路を介して接続されるとともに、前記終端側光送信器からの出力光の周波数帯域を制限して受信する端局側光受信器と、
を含み、
前記反射型半導体光増幅器は、前記反射部で反射された前記出力光を増幅するとともに、電気信号に応じて変調して出力
前記終端側光送信器は、更に、前記反射部で反射されて前記反射型半導体光増幅器に戻ってくる出力光の遅延時間に応じて、前記電気信号を遅延させるとともに、極性を反転させる遅延減衰部を有し、
前記反射型半導体光増幅器は、更に、前記遅延減衰部から出力される信号に基づいて、前記出力光を変調して出力することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記端局側光受信器は、前記出力光の相対強度雑音の周波数特性に基づいて、前記終端側光送信器からの出力光の周波数帯域を制限して受信することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
反射型半導体光増幅器と、送信信号の変調度を増大させるプリエンファシス部とを含む終端側光送信器と、
前記終端側光送信器からの出力光を反射する反射部と、
前記終端側光送信器と伝送路を介して接続される端局側光受信器と、
を含み、
前記反射型半導体光増幅器は、前記反射部で反射された前記出力光を増幅するとともに、前記変調度が増大された電気信号に応じて変調して出力
前記終端側光送信器は、更に、前記反射部で反射されて前記反射型半導体光増幅器に戻ってくる出力光の遅延時間に応じて、前記電気信号を遅延させるとともに、極性を反転させる遅延減衰部を有し、
前記反射型半導体光増幅器は、更に、前記遅延減衰部から出力される信号に基づいて、前記出力光を変調して出力することを特徴とする通信システム。
【請求項4】
前記プリエンファシス部は、前記出力光の相対雑音強度の周波数特性に応じて、前記変調度を増大させることを特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記端局側光受信器は、前記終端側光送信器からの出力光の周波数帯域を制限して受信することを特徴とする請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記端局側光受信器は、前記プリエンファシス部による前記変調度の増大に基づいて、前記終端側光送信器からの出力光の周波数帯域を制限して受信することを特徴とする請求項5記載の通信システム。
【請求項7】
前記プリエンファシス部は、伝送レートの1/2程度までの変調周波数範囲において、前記変調度の増大をすることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の通信システム。
【請求項8】
反射型半導体光増幅器を含む終端側光送信器と、
前記終端側光送信器からの出力光を反射する反射部と、
前記終端側光送信器と伝送路を介して接続されるとともに、前記終端側光送信器からの出力光を受信する端局側光受信器と、
を含み、
前記反射型半導体光増幅器は、前記反射部で反射された前記出力光を増幅するとともに、電気信号に応じて変調して出力し、
前記反射型半導体光増幅器の増幅器長は、500乃至2000μmであり、
前記終端側光送信器は、更に、前記反射部で反射されて前記反射型半導体光増幅器に戻ってくる出力光の遅延時間に応じて、前記電気信号を遅延させるとともに、極性を反転させる遅延減衰部を有し、
前記反射型半導体光増幅器は、更に、前記遅延減衰部から出力される信号に基づいて、前記出力光を変調して出力することを特徴とする通信システム。
【請求項9】
前記反射型半導体光増幅器への注入電流は、100乃至300mAであることを特徴とする請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
前記反射型半導体光増幅器は、第1の電極と、第2の電極とを有し、
前記第1及び第2の電極は互いに長さが異なり、独立して電流注入可能であることを特徴とする請求項9に記載の通信システム。
【請求項11】
前記第2の電極の前記出力光に沿った方向の長さは、前記第1の電極の長さよりも短く、
前記第2の電極には、前記電気信号に応じて出力光を変調するための電流が注入される、ことを特徴とする請求項10記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送受信装置及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
反射型半導体光増幅器を光源として用いる光送受信装置及び通信システムが、非特許文献1、2、3に開示されている。
【0003】
非特許文献1では、フィールドでの実用システムにおいて光送受信装置の偏波依存性を解消する手段として、偏波依存性の無い半導体光増幅器を用いることが提唱されている。
【0004】
非特許文献2では、偏波依存性を有する半導体光増幅器を光源に用いて光送受信装置を構成した場合、その偏波依存性のシステムへの影響を低減する手法として、ファラデー回転子とミラーを組み合わせて偏波の回転と反射を利用することで、実効的に偏波依存性の影響を無くす光波長多重通信システムが提案されている。
【0005】
非特許文献3では、反射型半導体光増幅器が有する特徴の一つであるモジュレーション キャンセレーション ダイナミック レンジ(MCDR;Modulation Cancellation Dynamic Range)が約13dBの例が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】E. Wong, et al., JLT vol.25, No.1, p67, 2007
【非特許文献2】M. Presi and E. Ciaramella, OFC2011, OMP4
【非特許文献3】S. O’Duill, et al., ECOC2012, We.2.E.1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上記偏波依存性以外のその他の課題として、非特許文献1では、光源として用いる反射型半導体光増幅器の利得飽和により、出力される信号光の周波数特性がハイパス特性を示すことが報告されている。このようなハイパス特性は、信号光の相対強度雑音スペクトルにおいても同様な特性を示すことを我々は見出し、その高周波帯域では光変調された信号光のS/N比劣化が起こる要因となる場合があることが分かった。
【0008】
また、反射型光半導体増幅器において、電流の注入を1つの電極で行うと、高速変調と高MCDR特性の両立が難しくなる場合がある。
【0009】
上記課題に鑑みて、本発明は、例えば、所望のMCDRを確保するとともに、より信号光のS/N比を向上した光波長多重通信システム、及び/または、所望のMCDRを確保するとともに、より高速変調可能な光波長多重通信システムを実現すること等を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の通信システムは、反射型半導体光増幅器を含む終端側光送信器と、前記終端側光送信器からの出力光を反射する反射部と、前記終端側光送信器と伝送路を介して接続されるとともに、前記終端側光送信器からの出力光の周波数帯域を制限して受信する端局側光受信器と、を含み、前記反射型半導体光増幅器は、前記反射部で反射された前記出力光を増幅するとともに、電気信号に応じて変調して出力する、ことを特徴とする。
【0011】
(2)上記(1)に記載の通信システムにおいて、前記端局側光受信器は、前記出力光の相対強度雑音の周波数特性に基づいて、前記終端側光送信器からの出力光の周波数帯域を制限して受信することを特徴とする。
【0012】
(3)本発明の他の通信システムは、反射型半導体光増幅器と、送信信号の変調度を増大させるプリエンファシス部とを含む終端側光送信器と、前記終端側光送信器からの出力光を反射する反射部と、前記終端側光送信器と伝送路を介して接続される端局側光受信器と、を含み、前記反射型半導体光増幅器は、前記反射部で反射された前記出力光を増幅するとともに、前記変調度が増大された電気信号に応じて変調して出力する、ことを特徴とする。
【0013】
(4)上記(3)に記載の通信システムにおいて、前記プリエンファシス部は、前記出力光の相対雑音強度の周波数特性に応じて、前記変調度を増大させることを特徴とする。
【0014】
(5)上記(4)に記載の通信システムにおいて、前記端局側光受信器は、前記終端側光送信器からの出力光の周波数帯域を制限して受信することを特徴とする。
【0015】
(6)上記(5)に記載の通信システムにおいて、前記端局側光受信器は、前記プリエンファシス部による前記変調度の増大に基づいて、前記終端側光送信器からの出力光の周波数帯域を制限して受信することを特徴とする。
【0016】
(7)上記(3)乃至(6)に記載の通信システムにおいて、前記プリエンファシス部は、伝送レートの1/2程度までの変調周波数範囲において、前記変調度の増大をすることを特徴とする。
【0017】
(8)本発明の他の通信システムは、反射型半導体光増幅器を含む終端側光送信器と、前記終端側光送信器からの出力光を反射する反射部と、前記終端側光送信器と伝送路を介して接続されるとともに、前記終端側光送信器からの出力光を受信する端局側光受信器と、を含み、前記反射型半導体光増幅器は、前記反射部で反射された前記出力光を増幅するとともに、電気信号に応じて変調して出力し、前記反射型半導体光増幅器の増幅器長は、500乃至2000μmであることを特徴とする。
【0018】
(9)上記(8)に記載の通信システムにおいて、前記反射型半導体光増幅器への注入電流は、100乃至300mAであることを特徴とする。
【0019】
(10)上記(9)に記載の通信システムにおいて、前記反射型半導体光増幅器は、第1の電極と、第2の電極とを有し、前記第1及び第2の電極は互いに長さが異なり、独立して電流注入可能であることを特徴とする。
【0020】
(11)上記(10)に記載の通信システムにおいて、前記第2の電極の前記出力光に沿った方向の長さは、前記第1の電極の長さよりも短く、前記第2の電極には、前記電気信号に応じて出力光を変調するための電流が注入される、ことを特徴とする。
【0021】
(12)上記(1)乃至(11)のいずれかに記載の通信システムにおいて、前記終端側光送信器は、更に、前記反射部で反射されて前記半導体光増幅器に戻ってくる出力光の遅延時間に応じて、前記電気信号を遅延させるとともに、極性を反転させる遅延減衰部を有し、前記反射型半導体光増幅器は、更に、前記遅延減衰部から出力される信号に基づいて、前記出力光を変調して出力することを特徴とする。
【0022】
(13)上記(1)乃至(12)のいずれかに記載の通信システムは、前記終端側光送信器をそれぞれ含む複数の終端装置を含み、前記各終端装置に含まれる前記各終端側光送信器は、出力光の波長が互いに異なることを特徴とする。
【0023】
(14)上記(1)乃至(13)のいずれかに記載の通信システムは、前記端局側光受信器を複数含むとともに、複数の端局側光送信器を含む端局を有し、前記各端局側光送信器の出力光は、波長が互いに異なることを特徴とする。
【0024】
(15)上記(1)乃至(14)に記載の終端側光送信器と、終端側光受信器と、を備える光送受信装置であることを特徴とする。
【0025】
(16)上記(1)乃至(14)に記載の端局側光受信器と、端局側光送信器と、を備える光送受信装置であることを特徴とする。
【0026】
(17)上記(16)に記載の光送受信装置において、前記反射部は、前記光送受信装置に含まれることを特徴とする。
【0027】
(18)上記(17)に記載の光送受信装置において、前記光送受信装置内の前記反射部は、光増幅器と偏波回転反射部とで構成されることを特徴とする。
【0028】
(19)上記(17)に記載の光送受信装置において、前記光送受信装置内の前記反射部は、反射型半導体光増幅器であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1の実施形態における終端装置の光送受信装置の構成の概要を示す図である。
図2】第1の実施形態における光波長多重通信システムの構成の概要を示す図である。
図3】第1の実施形態における反射型半導体光増幅器への電流注入で発生する自然放出光スペクトルの一例を示す図である。
図4】第1の実施形態における光増幅されたある特定チャネルの光スペクトルの一例を示す図である。
図5】第1の実施形態における反射型半導体光増幅器より出力される信号光の相対強度雑音スペクトルと帯域を補正した端局側光受信器の受信特性の一例を示す図である。
図6】第1の実施形態における端局側光受信器機の構成の一例を示す図である
図7】本発明の第2の実施形態の概要を説明するための図である。
図8】本発明の第2の実施形態における終端側光送信器の構成の一例を示す図である。
図9】本発明の第3の実施形態における終端側光送信器の構成の一例を示す図である。
図10】本発明の第4の実施形態における反射型半導体光増幅器の入力−出力特性について説明するための図である。
図11】本発明の第4の実施形態における反射型半導体光増幅器のMCDRと利得の増幅器長依存性について説明するための図である
図12】本発明の第5の実施形態にかかる反射型光増幅器について説明するための図である。
図13】本発明の第6の実施形態における光波長多重通信システムの構成の概要を示す図である。
図14図13における端局側光送受信装置1001の構成の一例を示す。
図15】本発明の第6の実施形態の変形例である端局側光送受信装置1003の構成の概要を示す。
図16】本発明の変形例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0031】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態における反射型半導体光増幅器を光源として用いた光送信器と、信号光を受信する光受信器とを備えた光送受信装置、及びそれを用いた光波長多重通信システムの構成について、図面に基づいて説明する。
【0032】
図1は、本発明の第1の実施形態における終端装置の光送受信装置の構成の概要を示す。図2は、本実施の形態における光波長多重通信システムの構成の概要を示す。なお、図1及び図2に示した構成の概要は一例であって、本実施の形態は図1及び図2に示す構成に限定されるものではない。
【0033】
図1及び図2に示すように、本実施の形態における光波長多重通信システム100は、主に、端局101、遠隔ノード112、終端装置103を有する。端局101と遠隔ノード112、及び、遠隔ノード112と終端装置103は、それぞれ光ファイバ204及び105で接続される。
【0034】
終端装置103に含まれる終端側光送受信装置104は、終端側光送信器108、終端側光受信器110、WDMフィルタ111を有する。終端側光送信器108は、反射型半導体光増幅器106からの出力光を信号光の光源とし、上り信号107を送信する。一方、終端側光受信器110は、端局101から送信された特定の波長の下り信号109を受信する。また、上り信号107及び下り信号109は、WDMフィルタ111により分岐されている。なお、WDMフィルタ111に代えて、光サーキュレータを用いてもよい。
【0035】
なお、本実施形態では、例えば、光源として偏波利得差が約3dBの反射型半導体光増幅器106を用いる。半導体光増幅器106の活性(増幅)層は多重量子井戸構造でもよいし、バルク構造でも構わない。また、半導体光増幅器106は、例えば、一般的なIII−V族化合物半導体材料であるInGaAsP系で構成する。なお、半導体光増幅器106は、InAlGaAs系から構成してもよい。
【0036】
上記のように、光波長多重通信システム100においては、終端装置103の接続数や伝送距離を拡張するために、終端装置103と端局101との伝送路間には遠隔ノード112を設置する。遠隔ノード112は、光合分波器113、光分岐カプラ114、及び、偏波回転反射部115を有する。光合分波器113は、端局101からの下り信号109を複数各々の終端装置103へ分波する。光分岐カプラ114は、反射型半導体光増幅器106からの出力光を分岐する。偏波回転反射部115は、光分岐カプラ114により分岐された出力光の偏波面を回転させ反射し終端装置103へ戻す。
【0037】
また、図2に示すように、端局101に含まれる端局側光送受信装置器102は端局側光送信器201、端局側光受信器203、WDMフィルタ202を有する。端局側光送信器201は、下り信号109を生成し、例えば波長可変光源や直接変調型半導体レーザ等で構成される。端局側光受信器203は、終端装置103より送信される上り信号107を受信する。WDMフィルタ202は、上り信号107と下り信号109を分岐するために設けられており、光サーキュレータに置き換えても良い。
【0038】
次に、本実施の形態における光波長多重通信システム100の動作原理について説明する。
【0039】
反射型半導体光増幅器106に電流注入を行うと自然放出光が発生する。当該発生した自然放出光は、例えば、図3に示すように、半値全幅の波長が約1530nmから約1560nm程度まで拡がったブロードな発光スペクトルである。反射型半導体光増幅器106の前方端面から出力された自然放出光は、例えば、終端装置103から約1km離れた遠隔ノード112に備えられた光合分波器113を通過する際、各々の複数の波長に分波される。なお、光合分波器113としては、例えば多層膜フィルタを用いて4〜8チャネルに合分波するケースや、アレイ型導波路を用いて周波数100GHz間隔(波長間隔0.8nm)で波長多重32チャネルに合分波する方法等を用いる。
【0040】
ある特定チャネルの波長に分波された光は、光分岐カプラ114を介して、偏波回転反射部115へと導かれる。そして、偏波回転反射部115で偏波が回転して反射する。反射した光は光合分波器113を介して、終端装置103に戻り、反射型半導体光増幅器106の出力光が出射された同一の前方端面に入力される。反射型半導体光増幅器106に入力された光は、反射型半導体光増幅器106内で後方端面に向かって光増幅されながら前進し、後方端面で反射された後、前方端面に向かって光増幅されながら後進し、再び出力光として前方端面より出力される。
【0041】
反射型半導体光増幅器106の前方端面より出力された光は、再び、光合分波器113、光分岐カプラ114を介して、偏波回転反射部115で偏波が回転して反射され、再び光合分波器113を通って終端装置103の反射型半導体光増幅器106の前方端面に入力される。
【0042】
このように、終端装置103と遠隔ノード112との間で、半導体光増幅器106の出力光の反射と増幅を繰り返すことによって、図3に示すような反射型半導体光増幅器106で発生した自然放出光スペクトルから、図4に示すようなある特定チャネル(特定波長)の光スペクトルを有する出力光が生成される。この状態で、反射型半導体光増幅器106に送信信号に応じた変調電流を重畳することにより、“1(オン)”レベル、“0(オフ)”レベルの信号光が生成され、当該生成された信号光が終端装置103から端局101へ上り信号107として送信される。
【0043】
なお、上記においては、自然放出光が1550nm帯である反射型半導体光増幅器106について説明したが、その他の帯域、例えば1300nm帯の半導体光増幅器106であってもよいことは言うまでもない。なお、1300nm帯の反射型半導体光増幅器の場合には、特性面からInGaAsPよりもInAlGaAs材料系を用いる方が望ましい。
【0044】
ここで、反射型半導体光増幅器106より出力された信号光には相対強度雑音(RIN)が含まれる。相対強度雑音は光強度の揺らぎを平均光電力により正規化したもので、一般的なレーザ光源では信号帯域内でほぼ平坦な周波数特性を示す。しかしながら、反射型光増幅器106の相対強度雑音(RIN)は、例えば、図5に示すように、周波数が高くなるに従い増加するようなハイパス特性を示すことを我々は見出した。このようなハイパス特性は、高周波雑音の影響により信号光のS/N比の劣化を引き起こし、アイ開口の波形品質に影響を及ぼす要因となる。よって、これを補償し改善していくことが重要である。
【0045】
そこで、本実施形態では、端局101の端局側光受信器203に信号光に、例えば、図5の実線で示すような伝送レートの1/2程度以上の周波数帯域における受信を制限する受信帯域を持たせる。
【0046】
具体的には、例えば、図6に示すように、本実施の形態における端局側光受信器203は、例えば、端局側受光器206と受信帯域を補正する受信帯域補正回路207を含むように構成する。当該受信帯域補正回路207により、光ファイバ204を介して送信され、端局側受光器206により取得された信号は、伝送帯域外の雑音を除去するように受信帯域を制限することができる。なお、受信帯域補正回路207は、例えば、フィルタ等により構成される。これにより、高周波数域の受信信号に含まれる伝送帯域外の雑音を抑圧することができる。
【0047】
このように、本実施の形態においては、端局101の端局側光受信器203は、反射型半導体光増幅器106から出力され、端局101の端局側受信器203に入力される入力光の検波において、信号光が持つ周波数特性を制限して受信する。これにより、光波長多重通信システム100の端局101における受信信号のS/N比の劣化を抑制することが可能となる。
【0048】
本実施の形態によれば、信号光のS/N比を向上した光波長多重通信システム100等を実現することができる。
【0049】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、下記において第1の実施形態と同様である点については説明を省略する。
【0050】
上記第1の実施形態と同様に、反射型光増幅器106の相対強度雑音(RIN)は、図5に示すように、周波数が高くなるに従い増加するようなハイパス特性を示す。そして、反射型半導体光増幅器106より出力された信号光の相対強度雑音(RIN)のハイパス特性の影響により、終端側光送信器108で光変調された信号光のS/N比が劣化する。
【0051】
そこで、本実施の形態における終端側光送信器108においては、図7に示すように、信号光の変調特性を相対強度雑音(RIN)の周波数特性に合わせて、伝送レートの1/2程度までの変調周波数範囲で、周波数の増加に従い変調度を増大させる(プリエンファシス処理を行う。これにより、端局側光受信器203と同様に終端側光送信器108側においても信号光のS/N比の劣化を抑制することが出来る。
【0052】
更に、本実施形態においては、端局側光受信器203の受信特性について、高周波域の相対強度雑音をより減衰させ、終端側光送信器108のプリエンファシスによる周波数特性を帯域内で平坦に補正するよう、図中の破線に示すような受信特性とする。これにより、受信信号のS/N比の劣化を大幅に抑圧することが可能となり、高速変調時において、より良好で安定な伝送特性を得ることが出来る。
【0053】
具体的には、本実施の形態においては、例えば、図8に示すように終端側光送信器108に、周波数特性に合わせて変調度を増大して送信するためのプリエンファシス回路121を設け、これにより送信信号の変調度を増大させて反射型光増幅器106で変調する。なお、プリエンファシス回路121は、例えば、所望の特性を持つフィルタや反射型光増幅器106の周波数特性により実現出来る。なお、終端側光受信器110は、下り信号109を受光する終端側受光器122を有する。
【0054】
また、端局側光受信器203には、例えば、上記第1の実施形態と同様に、図6に示すように受信帯域補正回路207を設ける。ただし、当該受信帯域補正回路207は、上記第1の実施形態と異なり、図7に示すように、終端側光送信器108でプリエンファシスされた周波数特性を帯域内で平坦に補正するように受信帯域を補正する。なお、上記終端側光送信器108のプリエンファシス回路121や端局側光受信器203の受信帯域補正回路207の構成は一例であって、本実施の形態は、上記のようにプリエンファシス処理や受信帯域を補正することができる限り、上記に限定されるものではない。なお、光端局側送信器201は、変調信号を生成する端局側光変調器205を有する。
【0055】
本実施の形態によれば、信号光のS/N比を向上した光波長多重通信システム100等を実現することができる。
【0056】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。なお、下記において第1及び第2の実施形態と同様である点については説明を省略する。
【0057】
本実施の形態においては、図9に示すように、例えば、上記第2の実施形態における終端側光送信器108に、更に、遅延減衰回路124を設ける。当該遅延減衰回路124は、反射型半導体光増幅器106を変調する電気信号について、反射部115から反射して戻ってくる信号光の遅延時間に応じて電気信号を遅延させ、極性を反転させた上で元の変調信号より小さい振幅で反射型半導体光増幅器106の変調信号に加算する。これにより、反射型半導体光増幅器106に戻る遅延した信号光のエコー成分を打ち消すことが出来る。なお、反射して戻ってくる信号光の遅延時間は反射点からのファイバ長により決定する。また、本実施の形態は、上記のように信号光のエコー成分を打ち消す構成を有する限り、上記に限られるものではない。具体的には、上記においては、プリエンファシス回路121に加えて遅延減衰回路124を設ける場合について説明したが、プリエンファシス回路121のみを設ける構成であってもよい。
【0058】
本実施の形態によれば、信号光のS/N比を向上した光波長多重通信システム100等を実現することができる。また、本実施の形態によれば、反射型半導体光増幅器を光源とした信号光のS/N比劣化を大幅に抑圧することが可能となる。
【0059】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。なお、下記において第1乃至第3の実施形態と同様である点については説明を省略する。
【0060】
図10(a)は、本実施形態における反射型半導体光増幅器の入力−出力特性を示す。図10(b)は、比較例として反射型ではない従来の半導体光増幅器の入力−出力特性を示す。
【0061】
図10(b)に示すように、従来の一般的な透過型の半導体光増幅器の入力−出力特性は、光増幅器の長さを幾ら長尺化しても出力平坦化効果を得ることが出来ない。
【0062】
これに対し、図10(a)に示すように、本実施の形態における反射型半導体光増幅器106では、第一端面から入力した光が第二端面で反射し増幅する過程において増幅器内で起こるクロスゲインサチュレーション効果によって出力平坦化効果を得ることが出来る。なお、反射型半導体光増幅器において、反射型半導体光増幅器106からの出力光が出射される端面が第一端面(前方端面)に相当し、入力光が反射される端面が第二端面(後方端面)に相当する。
【0063】
本実施の形態における反射型半導体光増幅器106では、このように出力が平坦化する領域、即ち、偏波回転反射部115から戻ってきた信号光を打ち消すことが可能なMCDRを使って信号光の変調を行う。従って、このMCDRがより大きいほど安定した光波長多重通信システムを構築することが出来る。なお、本実施の形態における反射型半導体光増幅器は、例えば、上記第1乃至第3の実施の形態におけるいずれかの反射型半導体光増幅器106に相当する。
【0064】
図11(a)は、本実施の形態における反射型半導体光増幅器の入力光パワーと出力光パワーの関係を示す図である。図11(b)は、本実施の形態における反射型半導体光増幅器のMCDRと利得の増幅器長依存性を示す図である。なお、図11(b)においては、一例として、半導体光増幅器106に注入した電流は200mA、第一端面、第二端面の反射率は、それぞれ無反射(<0.1%)、高反射(95%)とする。
【0065】
図11(b)に示すように、MCDRは半導体光増幅器106の増幅器長に応じて変化する特性を持っていることがわかる。この特性曲線は我々の鋭意検討により初めて見出された。増幅器長が750μm付近をピークに、MCDRは増幅器長が短くなるにつれて小さくなる傾向がある。逆に750μmより増幅器長が長くなった場合は、最初は急激にMCDRは小さくなるが、短くなる場合と比較して緩やかな減少へと変わっていく。さらに、点線で示した利得については、増幅器長が500μmより短く、もしくは2000μmより長い場合には、利得が減衰し始め一定では無くなるため、変調した信号光の伝送波形品質が低下する。
【0066】
このため、本実施形態では、これら反射型半導体光増幅器の諸特性を鑑みて、第一端面と第二端面との間の長さ、即ち増幅器長を500μm〜2000μmの範囲内とする。
【0067】
これにより、利得を安定化した状態で、15dB以上の安定動作に十分なMCDRを確保することが出来る。
【0068】
なお、さらにより安定な光波長多重通信システムを構築したい場合には、そのMCDRをさらに大きくすれば良い。例えば、増幅器の長さを600μm〜1200μmの範囲内にさらに制限する。これにより、実用上十分に大きな20dB以上のMCDRを確保することが出来る。
【0069】
ここで、第一、第二端面の反射率を変更しても、図11(b)に示した利得とMCDRの増幅器長依存性には大きな変化は見られなかった。これは、反射型増幅器の特性を支配する主要パラメータとしては、端面反射率よりも増幅器長が支配的であることを示唆している。
【0070】
また、注入する電流を200mAよりも減少させていくと、利得が一定となる幅が減少し、MCDRも小さくなっていく。逆に、注入電流を200mAよりも増加させていくと、増幅器は著しく発熱し特性が低下し始めると共に、低消費電力化の観点からも好ましくない。したがって、本実施の形態においては、例えば、注入電流を100mA乃至300mAとすることが好ましい。
【0071】
具体的には、例えば、本実施形態においては、反射型半導体増幅器106の利得が安定した状態で、より大きなMCDRを確保するために、増幅器長を1000μmとし、利得とMCDRの特性面及び低消費電力化の観点から、増幅器に注入する“1(オン)”レベル時の電流を200mAとし、“0(オフ)”レベル時の電流を120mAとする。
【0072】
本実施の形態によれば、所望のMCDRを確保するとともに、より高速変調可能な光波長多重通信システムを実現することができる。より具体的には、例えば、反射型半導体光増幅器の大きなMCDRを確保し、伝送速度5Gbpsで安定に変調動作する光波長多重通信システム等を実現することができる。また、上記第1乃至第3の実施形態と組み合わせて用いることにより、より信号光のS/N比を向上した光波長多重通信システムを実現することもできる。
【0073】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態を説明する。なお、下記において第1乃至4の実施形態と同様である点については説明を省略する。
【0074】
本実施の形態においては、図12に示すように、反射型半導体光増幅器106における信号光と略平行な一方の面に、第1の電極116及び第2の電極117を設けるとともに、他方の面に、裏面電極118を設ける。
【0075】
具体的には、例えばある特定チャネルで光増幅された信号光を生成するために電流注入を行う第1の電極116と、その信号光を変調するための第2の電極117を上記のように反射型半導体光増幅器106の一方の面に形成する。ここで、例えば、第1の電極116の長さは約400μm、第2の電極117の長さを約300μmとする。また、例えば、第1の電極116及び第2の電極117の長さを合わせた増幅器長は、図11(b)に示すようにMCDRがほぼ最大となる長さに設定する。より具体的には、例えば、反射型半導体増幅器長を775μmとする。なお、反射型半導体光増幅器106に注入する送信信号の“1(オン)”レベル時の電流を200mA、“0(オフ)”レベル時の電流を120mAとする。なお、反射型半導体増幅器長とは、反射型半導体光増幅器106への出力光が出射される端面119(第一端面)と、入力光が反射される端面120(第二端面)との間の距離に相当する。
【0076】
上記のように、本実施の形態においては、独立した2つの電極を備え、変調するための第2の電極117の長さを短くする。これにより、ある特定チャンネルで光増幅された信号光を更に高速変調することが可能となる。MCDR及び高利得を確保するための増幅器長は実質的に第一端面から第二端面との距離により決まるが、高速動作特性は変調電流を印加する第2の電極117の長さに依存する。第2電極117の長さが短い方が高速動作に有利となる。そのため、本実施の形態とすることで、MCDR及び利得特性への影響を抑制しつつ高速動作が可能となる。具体的には、例えば、伝送速度を5Gbpsから10Gbpsに高速化した変調を実現することのできる反射型半導体光増幅器106を実現することができる。
【0077】
なお、上記第1の電極116及び第2の電極117の長さと数は一例であって本実施の形態は上記に限られるものではない。例えば電流注入用として第1及び第2の電極を形成し、高速変調するための電流注入用として第3の電極を形成してもよい。
【0078】
また、本実施形態では第1端面119側の第1の電極116に直流電流を印加し、第2端面120側の第2の電極117に変調信号を印加したが、第1の電極116に変調信号を印加し、第2の電極117に直流電流を印加しても構わない。さらに、上記実施形態では、一つの反射型半導体光増幅器106の電極を二つ分けることで、直流電流を印加する領域と変調信号を印加する領域を設けたが、この二つの領域は別体であって構わない。例えば、光増幅機能を備えた半導体増幅器を上り信号が出射される側から見て前段に設け、後段に半導体増幅器と光学的に接続された反射型半導体光増幅器を設けても構わない。このとき、前段の半導体増幅器の実効的に作用する領域の増幅器長と後段の反射型半導体光増幅器の増幅器長の合計の長さは、前述した反射型半導体光増幅器106の最適な増幅器長と同等することが好ましい。
【0079】
本実施の形態によれば、より高速変調で安定に動作する光波長多重通信システムを実現することができる。また、上記第1乃至第4の実施形態と組み合わせて用いることにより、より信号光のS/N比を向上した光波長多重通信システムを実現することもできる。より具体的には、例えば、伝送速度10Gbpsの高速変調で安定に動作する光波長多重通信システムを実現することができる。
[第6の実施形態]
【0080】
次に、本発明の第6の実施形態を説明する。なお、下記において第1乃至5の実施形態と同様である点については説明を省略する。
【0081】
図13は、本発明の第6の実施形態における光波長多重通信システムの構成の概要を示す図である。本実施の形態においては、第1の実施形態で示した光分岐カプラ114及び偏波回転反射部115を遠隔ノード112内ではなく端局101内に設ける。ここで、すでに各家庭と基地局間などで光ファイバ等は敷設されている場合がある。この場合において、上記第1乃至第5の実施形態を適用するためには、その光ファイバで接続されている途中に、新たに光分岐カプラ及び偏波回転反射部を設置する必要が生じる。しかし、本実施の形態によれば、光分岐カプラ及び偏波回転反射部を端局内に設けるために、フィールドの光ファイバに手を加えずに、上記第1乃至第5の実施形態と同様の通信システムを構築することができる。
【0082】
図14は、図13における端局側光送受信装置1001の構成の一例を示す。本実施の形態においては、例えば、図14に示すように、図2に示した端局側光送受信装置102と異なり、WDMフィルタ202と端局側光受信器203との間に、光分岐カプラ114を設置し、分岐後の経路に光増幅器1002と偏波回転反射部115を設ける。また、図14に示すように、遠隔ノード113付近には光分岐カプラ114及び偏波回転反射部115は設けられていない。
【0083】
本実施形態の動作原理は第1の実施形態で説明した原理と同様で、反射型半導体光増幅器106より出射された光は、光ファイバを通り偏波回転反射部115で反射され、安定した光信号となる。偏波回転反射部115の前段に設けられた光増幅器1002は、反射型半導体光増幅器106と偏波回転反射部115との間の距離が第1の実施形態と比べて長くなっているために、光ファイバ105等による光強度の損失を補償するために設けられている。より具体的には、例えば、光増幅器1002は半導体光増幅器で構成され、半導体光増幅器に直流電流を印加することで通過する光を増幅する。なお、光強度の増幅が得られれば半導体光増幅器である必要はなく、ファイバアンプ等でも構わない。ただし、端局側光送受信装置1001の小型化・低消費電力の観点より、半導体光増幅器を用いることが好ましい。
【0084】
なお、本実施の形態は、次のような変形例として構成してもよい。図15は、第6の実施形態の変形例である端局側光送受信装置1003の構成の概要を示す。端局側光送受信装置1001と異なる点は、光分岐カプラ114以降の構成である。本変形例においては、上記光増幅器1002および偏波回転反射部115に代えて、偏波回転子1004及び反射型半導体光増幅器1005を用いる。本変形例の動作原理は、基本的には上記と同様で、反射型半導体光増幅器1005が、光強度の損失分の増幅と終端側にある反射型半導体光増幅器106への光反射の両方の機能を有している。なお、前段に設けられた偏波回転子1004は、必要に応じて設けらればよく、反射型半導体光増幅器106の偏波依存性が小さい(通信システムにとって影響とならない程度)場合には、不要となる。
【0085】
本実施の形態によれば、より高速変調で安定に動作する光波長多重通信システムを実現することができる。また、上記第1乃至第6の実施形態と組み合わせて用いることにより、より信号光のS/N比を向上した光波長多重通信システムを実現することもできる。より具体的には、例えば、伝送速度10Gbpsの高速変調で安定に動作する光波長多重通信システムを実現することができる。
【0086】
本発明は、上記第1乃至第6の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記各実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。具体的には、例えば、図16に示すように、端局101に複数の端局側光送受信装置102を配置し、終端装置103を複数局とした光波長多重通信システム100として構成してもよい。この場合、例えば、1つの端局101内に、波長多重伝送に対応した波長が異なる端局側光送受信装置102をチャネル別に増設する。また、上記第1乃至5の実施形態は、互いに矛盾しない限り、組み合わせて用いてもよい。例えば、第4または第5の実施形態において、第1乃至3の実施形態を組み合わせて用いてもよい。なお、特許請求の範囲における通信システムは、例えば、上記光波長多重通信システム100に相当し、特許請求の範囲における反射部は、例えば、上記偏波回転反射部115に相当する。
【0087】
また、上記実施例では説明の便宜上「終端」、「端局」という表現を用いたが、本願発明は2点間(2か所間)の光通信であれば適用することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0088】
100 光波長多重通信システム、101 端局、102、1001、1003 端局側光送受信装置器、103 終端装置、104 終端側光送受信装置、105、204 光ファイバ、106、1005 反射型半導体光増幅器、107 上り信号、108 終端側光送信器、201 端局側光送信器、109 下り信号、110 終端側光受信器、203 端局側光受信器、111 WDMフィルタ、112 遠隔ノード、113 光合分波器、114 光分岐カプラ、115 偏波回転反射部、116 第1の電極、117 第2の電極、118 裏面電極、119 第1端面、120 第2端面、121 プリエンファシス回路、122 終端側受光器、124 遅延減衰回路、202 WDMフィルタ、205 端局側光変調器、206 端局側受光器、207 受信帯域補正回路、1002 光増幅器、1004 偏波回転子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16