(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原料供給源の固体の原料を昇華してキャリアガスと共に真空雰囲気である処理容器内に供給して被処理体に対して行われる成膜処理であって、副生成物の蒸気圧が前記原料の蒸気圧よりも高い成膜処理を行うための成膜装置において、
各々ガス中の原料を捕捉し、原料供給源となる第1の原料捕捉部及び第2の原料捕捉部と、
前記第1及び第2の原料捕捉部にキャリアガスを供給し、原料捕捉部に捕捉された原料を昇華して原料供給路を介して前記処理容器内に供給するためのキャリアガス供給部と、
前記第1及び第2の原料捕捉部の温度を、原料を捕捉するための温度と捕捉した原料を昇華させるための温度との間で調整するための温度調整部と、
前記処理容器内を前記第1の原料捕捉部を介して真空排気機構により真空排気するための第1の排気路と、
前記処理容器内を前記第2の原料捕捉部を介して真空排気機構により真空排気するための第2の排気路と、
前記第1の原料捕捉部を用いて被処理体に対して成膜処理を行っているときには前記第2の排気路により真空排気を行い、前記第2の原料捕捉部を用いて被処理体に対して成膜処理を行っているときには前記第1の排気路により真空排気を行うように排気路を切り替える切替え部と、を備えたことを特徴とする成膜装置。
原料供給源の固体の原料を昇華してキャリアガスと共に真空雰囲気である処理容器内に供給して被処理体に対して成膜処理を行う成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項4または5に記載の成膜方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施の形態]
本発明の成膜装置に係る第1の実施の形態について
図1〜
図4を参照して説明する。
図1に示すように成膜装置は、被処理体、例えば基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)に対して、例えばいわゆるALD法による成膜処理を行なうための3つの成膜処理部1A〜1Cと、各成膜処理部1A〜1Cに原料ガスを供給する原料供給系2A〜2Cと、各原料供給系2A〜2Cに対して後述のように原料を補充するための共通の原料タンク3と、を備えている。この例ではALD法として、原料ガスであるWCl
6(六塩化タングステン)と、反応ガス(還元ガス)である水素(H
2)とを処理ガスとしてW(タングステン)膜を成膜する例を挙げている。
【0012】
原料タンク3は例えばステンレスで構成され、原料となる常温では固体(粉体)のWCl
6を固体の原料(固体原料)300として収容している。原料タンク3の天井部には、原料タンク3にキャリアガスとなる不活性ガス、例えばN
2(窒素)ガスが流入するキャリアガス供給路64の下流端部と、原料タンク3から原料ガスを各原料供給系2A〜2Cに供給して原料を補充する原料補充用の配管30の上流端部と、が接続されている。キャリアガス供給路64には、キャリアガスの流量を調整するためのマスフローコントローラ65と、バルブV64と、が介設されている。
【0013】
原料タンク3の周囲はヒータ8、例えば抵抗発熱体を備えたジャケット状のマントルヒータで覆われている。原料タンク3のヒータ8は、図示しない電源から供給される電力の調整により、原料タンク3の温度を調節できるように構成されている。原料タンク3のヒータ8の設定温度は、固体原料300が昇華し、且つWCl
6が分解しない範囲の温度、例えば150℃に設定される。
【0014】
続いて成膜処理部1A〜1C、及び原料供給系2A〜2Cについて、成膜処理部1A及び成膜処理部1Aに接続された原料供給系2Aを例に挙げて説明する。
図2に示すように成膜処理部1Aは、処理容器である真空容器10内に、ウエハ100を水平保持すると共に、不図示のヒータを備えた載置台12と、原料ガス等を真空容器10内に導入するガス導入部11(具体的にはガスシャワーヘッド)と、を備えている。真空容器10は、例えばアルミニウムで構成され、内面は例えばアルマイトによりコーティングがされている。また真空容器10には、内部の圧力を測定する圧力計110が設けられている。
【0015】
さらに真空容器10には、ウエハ100を搬入出するための搬入出口19が設けられている。搬入出口19は、ゲートバルブ20を介して(図示しない)真空搬送室に接続されている。なお真空搬送室には、ロードロック室などが接続されており、例えば1torr(133Pa)以下の高真空下において、真空搬送室内に設けられた搬送アームにより、ウエハ100の受け渡しが行われる。また真空容器10の内壁には図示しないヒータが埋設されており、例えば真空容器10を160℃に加熱して原料の析出を抑制している。
【0016】
ガス導入部11にはガス供給管15が接続され、このガス供給管15には、原料供給系2AからWCl
6を含む原料ガスを供給する供給用流路となる原料供給用の配管37、原料ガスと反応する反応ガスを供給する反応ガス供給管70が合流されている。また真空容器10側を下流とすると原料供給用の配管37と反応ガス供給管70との合流点の上流側には、置換ガスを供給する置換ガス供給管75が合流されている。反応ガス供給管70の他端側は、H
2ガスの供給源である反応ガスの供給源71に接続されたガス供給管73と、不活性ガス例えば窒素(N
2)ガスの供給源72に接続されたガス供給管74とに分岐されている。また置換ガス供給管75の他端側は置換ガス例えばN
2ガスの供給源76に接続されている。また原料供給用の配管37には、マスフローメータ77が設けられている。図中のV73〜V75は、夫々ガス供給管73、ガス供給管74及び置換ガス供給管75に設けられたバルブである。
【0017】
原料供給系2Aは、原料タンク3において昇華し、キャリアガスと共に供給された原料を再固化して捕捉し、成膜処理部1Aに対して原料供給源となる2個の原料捕捉部41、42を備えている。原料捕捉部41、42は、各々
図3、4に示すように、例えばステンレスにより、上面側が開口した高さ130mm、幅130mm、長さ175mmの概略箱型に形成された下部ケース51と、下部ケース51の上面に溶接されて、下部ケース51の開口を塞ぐステンレス製の蓋部52と、から構成される角筒状のケース体40を備えている。以下明細書中においてはケース体40の長さ方向の一端側を前面40A、他端側を後面40Bとして説明する。
【0018】
ケース体40の内周面に表面が固化面となる板状の捕捉部43が成形されている。捕捉部43は、下部ケース51を前方側から見て、右側の壁部から左側の壁部に向けて伸びる捕捉部43と、左側の壁部から右側の壁部に向けて伸びる捕捉部43と、が下部ケース51の長さ方向に交互に並べ合わせて複数枚設けられている。従ってケース体40内には迷路構造である屈曲した流路が形成される。
【0019】
ケース体40の高さ方向中央よりも上方の位置には、ケース体40の前面40Aの右寄りの位置から、右側の壁部内を後方に伸び、更に後面側(背面側)の壁部及び左側の壁部を介して、ケース体40の前面40Aの左寄りの位置まで引き回される冷媒流路53が形成されている。
図3中54は、冷媒流路53の入口、55は冷媒流路53の出口であり、入口54には、冷媒がチラー46から供給される供給管44が接続され、出口55には、冷媒をチラー46に排出する排出管45が接続されている。このように冷媒流路53は、ケース体40内を一周し、冷媒である例えば冷却水が通流する。冷却水の通流により原料ガスの主成分であるWCl
6の凝固点以下であって、WCl
6に含まれる不純物であるWCl
2O
2(二塩化二酸化タングステン)やWCl
4O(四塩化酸化タングステン)が凝固しない温度まで、一方及び他方の原料捕捉部41、42が強制的に冷却される。冷媒流路53、供給管44、排出管45及びチラー46は冷却部を構成する。
【0020】
またケース体40の左壁部の上方及び右壁部の下方には、ケース体40の前後方向に伸びる、例えば抵抗加熱体で構成された加熱部49が埋設されている。冷却部及び加熱部49は温度調整部を構成し、本発明の実施の形態においては、温度調整部は、冷却水を通流しながら、加熱部49の出力を変更することにより、一方及び他方の原料捕捉部41、42の温度を原料を捕捉するための温度と、原料を昇華させるための温度との間で調整する。
【0021】
図2に戻って、一方の原料捕捉部41におけるケース体40には、長さ方向の一端側(上流側)に原料補充用の配管30から分岐した分岐管31、33の一方の分岐管31の下流端が接続され、他方の原料捕捉部42におけるケース体40には、長さ方向の一端側(上流側)に他方の分岐管33の下流端が接続されている。原料補充用の配管30及び分岐管31、33は、補充用流路に相当する。なお図中V0はバルブである。
【0022】
また一方の原料捕捉部41におけるケース体40には、長さ方向の他端側(下流側)に原料供給用の配管37から分岐した分岐管32、34の一方の分岐管32の上流端が接続され、他方の原料捕捉部42におけるケース体40には、長さ方向の他端側(下流側)に他方の分岐管34の上流端が接続されている。従って、一方の原料捕捉部41及び他方の原料捕捉部42は、原料タンク3と成膜処理部1Aとの間の流路に並列に接続されていることになる。一方及び他方の原料捕捉部41、42の上流側の分岐管31、33には、夫々バルブV1、V3が介設され、一方及び他方の原料捕捉部41、42の下流側の分岐管32、34には、夫々バルブV2、V4が介設されている。原料供給用の配管37及び分岐管32、34は供給用流路に相当する。
【0023】
また原料供給系2Aには一方及び他方の原料捕捉部41、42から成膜処理部1Aに原料ガスを供給するために、一方及び他方の原料捕捉部41、42に不活性ガス例えばN
2ガスであるキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給管60が設けられている。キャリアガス供給管60は、配管61、62に分岐しており、配管61は、分岐管31におけるバルブV1の下流側に接続され、配管62は、分岐管33におけるバルブV3の下流側に接続されている。またキャリアガス供給管60にはキャリアガスの流量を調整するためのマスフローコントローラ63が設けられている。
【0024】
続いて真空容器10から排気される原料ガスを含む排気ガスを一方及び他方の原料捕捉部41、42に供給する排気路について説明する。真空容器10には、主排気路13が設けられ、例えば真空ポンプからなる真空排気機構24により真空排気される。主排気路13には、真空容器10側から、バルブV13、及び真空容器10内の圧力を調整するための圧力調整部16が介設されている。
また主排気路13におけるバルブV13よりも真空容器10側には、例えばステンレスで構成された戻り管路80の一端が接続されている。戻り管路80の他端側は、戻り管路81、82に分岐されており、戻り管路81は分岐管31におけるバルブV1の下流側に接続され、戻り管路82は分岐管33におけるバルブV3の下流側に接続されている。戻り管路81、82には夫々バルブV9、V10が介設されている。
【0025】
さらに原料供給系2Aには一方及び他方の原料捕捉部41、42の冷却時に一方及び他方の原料捕捉部41、42を通過したガスを排気するための合流管38が設けられる。合流管38は、その一端側が、主排気路13における、圧力調整部16よりも真空排気機構24側の位置に接続されている。合流管38の他端側は、排気管35、36に分岐されており、排気管35は分岐管32におけるバルブV2の上流側に接続され、排気管36は分岐管34におけるバルブV4の上流側に接続されている。排気管35、36、合流管38には夫々バルブV5、V6が介設されている。また排気管35、36には、夫々一方及び他方の原料捕捉部41、42内の圧力を調整する圧力調整部17、18が介設されている。また圧力調整部17は、真空容器10から、一方の原料捕捉部41を通過させて排気するときに真空容器10内の圧力を調整し、圧力調整部18は、真空容器10から、他方の原料捕捉部42を通過させて排気するときに真空容器10内の圧力を調整する。
【0026】
第1の実施の形態においては、真空容器10から、戻り管路80及び戻り管路81を介して、一方の原料捕捉部41を通過し、排気管35、合流管38、主排気路13を介して排気される排気経路が、一方の原料捕捉部41から見たときの第1の排気路に相当する。また真空容器10から戻り管路80及び戻り管路82を介して、他方の原料捕捉部42を通過し、排気管36、合流管38、主排気路13を介して排気される排気経路が一方の原料捕捉部41から見たときの第2の排気路に相当する。
【0027】
また真空容器10から、戻り管路80及び戻り管路82を介して、他方の原料捕捉部42を通過し、排気管36、合流管38、主排気路13を介して排気される排気経路が、他方の原料捕捉部42から見たときの第1の排気路に相当する。さらに真空容器10から戻り管路80及び戻り管路81を介して、一方の原料捕捉部41を通過し、排気管35、合流管38、主排気路13を介して排気される排気経路が他方の原料捕捉部42から見たときの第2の排気路に相当する。
従って真空排気を行う排気路を第1の排気路と第2の排気路との間で切り替えるバルブV5、V6、V9、V10及びV13は切替え部に相当する。
【0028】
また原料ガスを含むガスが通過する原料補充用の配管30、分岐管31、33、原料供給用の配管37、分岐管32、34、排気管35、36、合流管38、戻り管路80、81、82及び主排気路13は、例えば、図示しないテープヒータなどにより覆われており、テープヒータで覆われた領域は、原料ガスが析出しない温度、例えば160℃に加熱されている。
【0029】
原料供給系2A〜2Cの各機器及び原料タンク3は、制御部9によりコントロールされるように構成されている。制御部9は、一方の原料捕捉部41の加熱部49、他方の原料捕捉部42の加熱部49及び原料タンク3のヒータ8の各々のオン、オフの制御や各バルブV0〜V10、V13の開閉制御及びマスフローコントローラ63、65による流量の制御、圧力調整部16〜18による圧力の制御等を実行するためのステップ(命令)群が組まれたプログラムを備えている。プログラムは、コンピュータ記憶媒体、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、光磁気ディスク等に格納され制御部9にインストールされる。
【0030】
続いて上述の実施の形態の作用について、原料供給系2Aを例に
図5〜
図7を参照して説明する。なお
図5〜
図11において、開状態のバルブを白抜きで示し、閉状態のバルブはハッチングを付して示した。これから成膜処理を行うための装置の運転を開始するものとし、原料タンク3内の固体原料300は、未だ消費されておらず一方及び他方の原料捕捉部41、42には、固体原料300が未だ捕捉されていないものとして説明を進める。まず原料タンク3のヒータ8をオンにして、原料タンク3を例えば150℃に加熱し、固体原料300を気化(昇華)させて、原料タンク3内の原料の濃度を飽和濃度に近い濃度まで高める。また加熱部49をオンにして、一方の原料捕捉部41を例えば60℃に加熱する。
【0031】
次いで
図5に示すように原料タンク3に接続されたキャリアガス供給路64のバルブV64、原料タンク3と一方の原料捕捉部41との間を結ぶ配管30のバルブV0、V1及び一方の原料捕捉部41側の排気管35のバルブV5を開く。これにより原料タンク3にキャリアガスが供給され、原料タンク3内にて昇華し、飽和している原料がキャリアガスと共に原料補充用の配管30、分岐管31を介して、一方の原料捕捉部41のケース体40に供給される。ケース体40を通過したガスは、分岐管32から排出され、排気管35を介して主排気路13から排気される。
【0032】
一方の原料捕捉部41のケース体40内の温度は、原料であるWCl
6の凝固点よりも低い60℃に設定されている。このため多段の捕捉部43により形成された迷路である屈曲路を、ガスである原料が通過するときに捕捉部43及びケース体40の内面に捕捉されて析出し(再固化し)、捕捉部43の表面にWCl
6が薄膜状に付着する。原料捕捉部41、42は、キャリアガスと原料とを含む原料ガスを原料捕捉部41、42を通過させたときに原料ガス中の原料がほぼすべて捕捉(再固化)されるようにケース体40の大きさや捕捉部43間の離間寸法、段数などが設定されている。
【0033】
ここで市販のWCl
6の固体原料には、通常WCl
6と共に微量のWCl
2O
2やWCl
4Oが含まれている。WCl
6は凝固点が60℃よりも高いので、60℃に冷却すると再固化をするが、WCl
2O
2やWCl
4Oは、凝固点が60℃よりも低いので、60℃では凝固しない。そのため、一方の原料捕捉部41の温度を0℃〜60℃例えば60℃に設定し、原料ガスを一方の原料捕捉部41を通過させて再固化させたときに、WCl
6は、一方の原料捕捉部41に析出し、WCl
2O
2やWCl
4Oは一方の原料捕捉部41を通過してキャリアガスと共に排気される。
【0034】
一方の原料捕捉部41に析出した原料が、例えば400gとなったときにバルブV1を閉じる。設定量の原料が一方の原料捕捉部41に析出した時点については、例えば一方の原料捕捉部41内へのガスの通流時間により管理される。こうして一方の原料捕捉部41は成膜処理部1Aに対する原料供給源として準備が整ったことになる。
【0035】
次いで成膜を開始する前に一方の原料捕捉部41の加熱部49をオンにして、ケース体40内を設定温度である150〜200℃、例えば160℃まで上昇し、既述のようにして一方の原料捕捉部41に析出した原料を昇華させる。そしてキャリアガス用の配管61のバルブV7を開いて、一方の原料捕捉部41にキャリアガスを供給し、昇華した原料とキャリアガスとの混合ガスである原料ガスを一方の原料捕捉部41から成膜処理部1Aを迂回させて排気管35及び合流管38を介して真空排気機構24により排気させ、原料ガスの流量を安定させる。また主排気路13から分岐した戻り管路81、82のバルブV9、V10を閉状態、主排気路13のバルブV13を開状態とし、真空容器10内の真空排気を行って、真空容器10内の圧力を例えば1Torr(133Pa)以下に設定する。その後ゲートバルブ20を開き、真空搬送室内の図示しない搬送アームにより、真空容器10内にウエハ100搬入し、載置台12に載置する。
【0036】
その後、ゲートバルブ20を閉じ、例えば
図2に示すバルブV75を開いて真空容器10内にN
2ガスを供給し、成膜処理時の圧力と同程度の圧力、例えば10〜50Torr(1.33KPa〜6.67KPa)程度の圧力に上昇させる。一方ウエハ100は載置台12に設けられた図示しないヒータにより例えば500℃に加熱される。
【0037】
続いて圧力が10Torr(1.33KPa)以上に上昇し、ウエハ100が十分に加熱された後、
図6に示すように分岐管32に設けられたバルブV2及びキャリアガス用の配管61のバルブV7を開くと共に、
図2に示すバルブV75を閉じる(
図2参照)。これにより一方の原料捕捉部41にキャリアガスが供給され、一方の原料捕捉部41からから真空容器10にキャリアガスと原料とを含む原料ガスが供給され、ウエハ100表面にWCl
6が吸着する。
【0038】
そして他方の原料捕捉部42を60℃に設定すると共に、主排気路13のバルブV13を閉じ、他方の原料捕捉部42側の排気管36のバルブV6及び他方の原料捕捉部42側の戻り管路82のV10を開いておく。これにより真空容器10から排気された排気ガスが、主排気路13、戻り管路80、82を介して、他方の原料捕捉部42を通過し分岐管36、合流管38、主排気路13を介して排気される。
【0039】
この時排気ガスに含まれる原料であるWCl
6は凝固点まで冷やされるため、他方の原料捕捉部42に析出する。続いてバルブV2を閉状態とし、
図2に示すバルブV75を開状態とする。これにより真空容器10中に置換ガスであるN
2ガスが供給される。なお置換ガス、及び続くH2ガスを真空容器10に供給するときにおいても排気経路は、
図6に示す状態と同じである。即ち、置換ガスの供給時に真空容器10中に残されていた原料を含む排気ガスが他方の原料捕捉部42を通過して排気されるため、排気ガス中に含まれる原料が捕捉される。
【0040】
続いて
図2に示すバルブV75を閉状態とし、バルブV73、V74を開状態とする。これにより反応ガスであるH
2ガスが真空容器10に供給される。これによりウエハ100に吸着されているWCl
6がH
2により還元され、1原子層のW膜が成膜される。
この時H
2と残留するWCl
6とにより、例えばWCl
4、WCl
5、H
2,HCl、Cl
2などの副生成物が生成され、排気ガスとして、他方の原料捕捉部42を通過する。原料となるWCl
6と比較して、分解生成物であるWCl
4、WCl
5、H
2、HCl、Cl
2は、蒸気圧が高い。他方の原料捕捉部42は、真空容器10とおよそ同じ圧力である10〜50Torr(1.33KPa〜6.67KPa)となっており、更に0℃〜60℃、例えば60℃に設定されている。そのため、他方の原料捕捉部42には、WCl
6のみが析出し、WCl
4、WCl
5、H
2、HCl、Cl
2などの分解生成物は、他方の原料捕捉部42を通過して、排気される。そして
図2に示すバルブV73、V74を閉じた後、バルブV75を開き、置換ガスを真空容器10に供給して、真空容器10内の雰囲気を置換する。こうしてバルブV2、V73、V74、V75のオン、オフ制御によって真空容器10内に、WCl
6を含む原料ガス→置換ガス→反応ガス→置換ガスを供給するサイクルを複数回繰り返すことにより、所定の厚さのW膜の成膜を行う。
【0041】
1枚のウエハ100当たり30g程度のWCl6を真空容器10に供給すると、成膜には、例えばおよそ1.5gのWCl
6が寄与する。また例えば1.0g程度のWCl
6が分解し、1.5g程度のWCl
6が真空容器10に付着してしまう。そして残りの26g及び1gの分解生成物、例えばWCl
4、WCl
5、H
2、HCl、Cl
2などが他方の原料捕捉部42を通過して排気される。従って他方の原料捕捉部42により、およそ94%の原料が回収される。
【0042】
また真空容器10に原料ガス及び反応ガスを供給している際には、真空容器10の温度が160℃程度となっており、真空容器10内の圧力が10〜50Torr(1.33KPa〜6.67KPa)に設定されている。そのため真空容器10内の金属の腐食は少なく、真空容器10の排気に金属はほとんど含まれない。また上述の実施の形態においては、真空容器10の内面をアルマイトにより覆っているため金属の腐食をより抑制することができる。
【0043】
また戻り管路80〜82は、ステンレスで構成され、プロセス中の温度は160℃に設定されている。そのため真空容器10から他方の原料捕捉部42に排気が通流される間に金属の混入するおそれが少ない。従って他方の原料捕捉部42には、主原料であるWCl
6が高純度で析出することになる。
【0044】
ALD法による成膜処理が終了した後、
図7に示すように他方の原料捕捉部42に接続されている戻り管路82のバルブV10を閉じると共に、主排気路13のバルブV13を開く。これにより真空容器10からの排気が他方の原料捕捉部42を通過せずに排気される。その後、圧力調整部16により、真空容器10内の圧力を1Torr(133Pa)以下まで下げた後、ゲートバルブ20を開きウエハ100を取り出す。後述のように他方の原料捕捉部42に対して原料タンク3から原料を補充する工程が行われるので、このバルブV10を閉じている間に、配管33のバルブV3を開き、当該工程の一部を行うようにしてもよい。
【0045】
またウエハ100の出し入れの際には、真空容器10内の圧力を1Torr(133Pa)以下の高真空にしている。1Torr(133Pa)以下の高真空にした場合には、真空容器10から成膜プロセス中には、昇華しない金属材料なども昇華するおそれがある。そのため真空容器10にウエハ100を搬入出させるにあたって、真空容器10内の圧力を例えば10Torr(1330Pa)以下の圧力にする前に、バルブV10を閉じ、V13開き、その後圧力を下げることで、他方の原料捕捉部42に金属が混入するおそれが低くなる。
【0046】
その後、例えば1ロットのウエハWの処理を終えた後、他方の原料捕捉部42に捕捉された原料の量を測定する。原料の量の測定には、例えば公知のビルドアップ法を用いればよい。
ここでビルドアップ法について説明する。密閉された容器内に原料が析出すると容器の気相の体積が析出した原料の体積分小さくなる。温度を一定にして真空の容器内に一定の流速でガスを供給したときの圧力は、ボイルの法則に従うため、体積に反比例する。そのため容器内に原料が析出していない状態において、容器内にN
2ガスを供給したときのN
2ガスの供給量と圧力の変化とにより容器の体積を求める。そして容器内に原料を析出させて、容器内にN
2ガスを供給したときのN
2ガスの供給量と圧力の変化とにより求まる容器内気相の体積を差し引くことにより、析出している原料の体積が求まる。更に原料の体積が求まることから、予め原料の密度を把握しておくことにより、析出した原料の重量が分かる。その後バルブV3を開き、不足分の原料を原料タンク3から他方の原料捕捉部42に補充する。
【0047】
他方の原料捕捉部42に原料が補充された後、あるいは補充されている途中で、続くロットのウエハ100を真空容器10に搬入するにあたっては、既述のウエハ100の搬入時あるいは搬出時と同様にバルブV13を開いて主排気路13を介して真空容器10を真空排気しながら、ウエハ100を真空容器10に搬入する。そして他方の原料捕捉部42に原料の補充が完了し、他方の原料捕捉部を原料供給源として用いる準備が整った後、他方の原料捕捉部42を160℃に加熱して、他方の原料捕捉部42に捕捉された原料を昇華させる。その後他方の原料捕捉部42に接続されている配管61のバルブV8を開き、他方の原料捕捉部42にキャリアガスを供給すると共に、一方の原料捕捉部41を原料供給源としたときと同様にバルブV6を開いて原料ガスの流量を安定させた後、他方の原料捕捉部42に接続されている分岐管34のバルブV4を開き、バルブV6を閉じる。これにより他方の原料捕捉部42から真空容器10に原料が供給される。また一方の原料捕捉部41の温度を60℃に設定した後、バルブV13を閉じると共に排気管35のバルブV5、戻り管路81のバルブV9を開く。これにより真空容器10から排気される原料を含む排気ガスが、一方の原料捕捉部41を通過して排気され、排気ガスに含まれる原料が一方の原料捕捉部41に捕捉される。
【0048】
このように一方の原料捕捉部41を成膜処理部1Aに対して、原料供給源として用いながら、他方の原料捕捉部42に排気ガスを通流させて原料を捕捉させる工程と、他方の原料捕捉部42を原料供給源として用いながら、一方の原料捕捉部41に排気ガスを通流させて原料を捕捉させる工程と、を交互に繰り返す。即ち原料供給源として一方の原料捕捉部41と他方の原料捕捉部42とを交互に使用する。そして
図1に示す他の原料供給系2B、2Cにおいても、同様にして成膜処理部1B、1Cに原料ガスの供給を行う。
【0049】
上述の実施の形態によれば、WCl
6を昇華させて、キャリアガスと共に真空容器10に供給して成膜処理を行うにあたって、真空容器10から排気された排気ガス中の原料を一方の原料捕捉部41、または他方の原料捕捉部42にて、捕捉(再固化)させ、捕捉した原料を昇華させて処理ガスとして再利用している。従って、原料の消費量を減らすことができる。
既述のように半導体デバイスにおいて薄膜の多層化が進み、ウエハ100の表面積が大きくなって原料の使用量が増大しているなどの事情から本発明は極めて有効である。
また、一方及び他方の原料捕捉部41、42の一方を原料供給源として使用しているときに、他方に真空容器10からの排気ガスを通流させて排気ガス中の原料を捕捉して回収しているため、装置の稼働率の低下が抑えられる。
【0050】
本発明では、2個の原料捕捉部41、42に加えて、原料捕捉部41、42と同様に構成された原料捕捉部101を設けるようにしてもよい。このような例においては、例えば
図9〜
図11に示すように3個の原料捕捉部41、42、101が互いに並列に接続される。なお
図9〜11中の102は配管30から分岐した分岐管、103は、原料供給用の配管37から分岐した分岐管、104は、合流管38の他端側にて分岐した排気管、105は、戻り管路80の他端側にて分岐した分岐路である。また原料捕捉部101には、原料捕捉部41、42と同様にキャリアガス供給管(図示しない)が接続されている。なおV102〜V105はバルブである。また明細書中においては、
図9〜
図11を正面に見て、左側の原料捕捉部41、中央の原料捕捉部42、右側の原料捕捉部101として示す。
【0051】
このような第2の実施の形態では、
図9に示すように、まず原料タンク3から左側の原料捕捉部41及び中央の原料捕捉部42に原料を補充する。その後成膜処理部1Aに原料を供給するにあたって、まず
図10に示すようにバルブV2、V7を開いて、左側の原料捕捉部41から真空容器10に原料を供給する。即ち左側の原料捕捉部41を原料供給源とする。そして、バルブV104、V105を開き、真空容器10からの排気ガスを右側の原料捕捉部101に通流させて、右側の原料捕捉部101に原料を析出させるようにする。
【0052】
このように左側の原料捕捉部41を原料供給源として用いて原料の供給を行った後、
図11に示すように中央の原料捕捉部42から真空容器10に原料を供給して、真空容器10からの排気ガスを左側の原料捕捉部41を通流させて原料を析出させる。またこの間に右側の原料捕捉部101に不足分の原料を原料タンク3から補充する。その後、右側の原料捕捉部101から真空容器10に原料を供給して、真空容器10からの排気を中央の原料捕捉部42に通流させて排気すると共に、左側の原料捕捉部41に不足分の原料を捕捉する。このように構成することにより1ロットのウエハの処理を終えた時点で、続くロットのウエハ101を成膜処理するための原料捕捉部がスタンバイの状態(原料供給源として使用可能な状態)になっているため、原料捕捉部に原料の補充する待ち時間がない。従って成膜装置を連続運転することができ、稼働効率の点では有効である。
【0053】
また原料捕捉部は一つであってもよい。例えば
図2に示した原料供給系2Aにおいて、一方の原料捕捉部41を設けずに分岐管31と、配管37とを接続した例が挙げられる。この場合には、原料タンク3から原料をキャリアガスと共に分岐管31と、配管37と、を介して成膜処理部1Aに供給して成膜処理を行い、真空容器10の排気ガスを他方の原料捕捉部42に通流させて、排気ガス中の原料を捕捉させる。その後原料供給源を原料タンク3から他方の原料捕捉部42に切り替えて成膜処理を行うようにすればよい。
このような例においては、真空容器10から、戻り管路80及び戻り管路82を介して、原料捕捉部42を通過し、排気管36、合流管38、主排気路13を介して排気される排気経路が第1の排気路に相当し、主排気路13から真空排気機構24により排気される排気経路が第2の排気路に相当する。
【0054】
さらに本発明は、原料ガスと、反応ガスとを真空容器10に供給して成膜処理を行うCVD法に適用しても原料の消費量を抑制することができるが、ALD法においては、原料ガスと反応ガスとを置換ガスで、置換して成膜処理を行うため、真空容器10に供給した原料の成膜への寄与率が低く多くが排気される。そのため本発明はALD法に適用した場合により効果が大きいと言える。
【0055】
また固体原料は、主原料の蒸気圧が主たる副生成物の蒸気圧よりも低い原料であればよい。例えばWCl
5(五塩化タングステン)、MoCl
5(五塩化モリブデン)、ZrCl
4(塩化ジルコニウム(IV))、HfCl
4(塩化ハフニウム(IV))、AlCl
3(塩化アルミニウム)などであってもよい。