特許第6533068号(P6533068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6533068
(24)【登録日】2019年5月31日
(45)【発行日】2019年6月19日
(54)【発明の名称】プロセスチーズ類、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 19/09 20060101AFI20190610BHJP
【FI】
   A23C19/09
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-30131(P2015-30131)
(22)【出願日】2015年2月19日
(65)【公開番号】特開2016-149991(P2016-149991A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大熊 明子
(72)【発明者】
【氏名】水谷 真也
(72)【発明者】
【氏名】小泉 詔一
【審査官】 金田 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−113127(JP,A)
【文献】 特開平01−218548(JP,A)
【文献】 Journal of Texture Studies,1998年,Vol. 29,pp. 569-586
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 1/00−23/00JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPI/
FSTA/AGRICOLA/BIOTECHNO(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タピオカ加工デンプンを2.0〜18.0重量%、α化デンプンを2.0〜20.0重量%、原料チーズを34〜73重量%含有し、かつ、バターを1.5重量%〜25重量%、植物油脂を1.5重量%〜40重量%含有することを特徴とするプロセスチーズ類。
【請求項2】
前記プロセスチーズ類のpHが5.0〜6.0、かつ、水分が48.0〜60.0%であることを特徴とする請求項1記載のプロセスチーズ類。
【請求項3】
75℃以上まで加熱後、25℃まで冷却したプロセスチーズ類の硬度が、850gf以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプロセスチーズ類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱冷却後も糸引き性を有するプロセスチーズ類であって、かつ、加熱冷却後においても、固くならず、良好な練り性を有することを特徴とするプロセスチーズ類およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生乳等を原料に乳酸菌やレンネットを使用して凝固させた乳からホエーを除去して、固めた物がナチュラルチーズである。このナチュラルチーズを原料にして、溶融塩を加え、加熱、攪拌して溶融した後、冷却して固めた物がプロセスチーズである。プロセスチーズを作る工程において、製品中のチーズ分が51%以上の食品は「チーズフード」、製品中のチーズ分が51%未満の食品は「乳等を主要原料とする食品(以下、「乳主原」という。)」と当業界において一般的に規定されている。本発明のプロセスチーズ類とは、チーズフードや乳主原規格のものも含む、チーズ様の食品をすべて包含するものである。
【0003】
プロセスチーズ類では、加熱によってとろけて糸を引く性質や、こんがりとした焦げ目のつきやすい性質、加熱をしても型崩れをしない性質など、風味以外の特徴も商品特性として重要な要素となる。このため、特許文献1に記載されるような、トースターで焼成した際に好ましい焼き色を呈するプロセスチーズ類に関する技術や、特許文献2に記載されるような、加熱時のみではなく、冷却後も糸曳き性を有する歯切れのよいホクホクした食感を有するプロセスチーズ類に関する技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−158278号公報
【特許文献2】特開2014−113127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されているプロセスチーズ類は、冷却後も攪拌、すなわち、人の手によって「練る」ことによって、加熱時と同等の良好な糸曳き性を得ることができるものであるが、このプロセスチーズ類は冷却によって硬くなる性質があり、糸曳き性を得るための「練る」操作が難しいという課題があった。そこで、本願発明は、特許文献2に記載されるような冷却後も攪拌によって良好な糸曳き性を有するプロセスチーズ類において、冷却後の「練り易さ」を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、以下の構成要件により、冷却後の糸曳き性を維持しつつ、かつ冷却後の練り易さを向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1)タピオカ加工デンプンを2.0〜18.0重量%、α化デンプンを2.0〜20.0重量%、原 料チーズを34〜73重量%含有し、かつ、バター及び植物油脂を含有することを特徴 とするプロセスチーズ類。
(2)前記バター及び植物油脂の含有量が、バター1.5重量〜25重量%、植物油脂1.5重 量%〜40重量%であることを特徴とする(1)記載のプロセスチーズ類。
(3)前記プロセスチーズ類のpHが5.0〜6.0、かつ、水分が48.0〜60.0%であることを 特徴とする(1)または(2)に記載のプロセスチーズ類。
(4)75℃以上まで加熱後、25℃まで冷却したプロセスチーズ類の硬度が、850g f以下であることを特徴とする(1)乃至(3)記載のプロセスチーズ類。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷却後も練り易さを維持し、かつ良好な糸引き性を有するプロセスチーズ類を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のプロセスチーズ類について具体的に説明する。
【0010】
本発明におけるプロセスチーズ類とは、プロセスチーズ、チーズフード等、乳等省令(昭和26年12月27日厚生省令第52号)、公正競争規約の成分規格において規定されたものの他、乳主原等の規格に該当するチーズ様食品等、当該技術分野において一般的に「プロセスチーズ類」と呼ばれるものを全て包含するものとする。
【0011】
本発明は、特許文献2に記載されたプロセスチーズ類の改良を目的としたものである。よって、原料チーズ類や使用するデンプン類については特許文献2に記載のものをそのまま適用することができる。
すなわち、本発明における原料チーズは、特に限定されないが、ゴーダチーズ、チェダーチーズ、エグモントチーズ、モザレラチーズ等のナチュラルチーズの他、プロセスチーズやチーズフード等を用いることができる。これらを1種類もしくは複数種類組み合わせて使用することができるし、最終的に得られるプロセスチーズ類に必要な風味に合わせて配合比を決定することができる。本発明では、これらの原料チーズを、製品であるプロセスチーズ類に対して、34〜73重量%含有させる。好ましくは39〜59重量%含有させることができる。原料チーズが34重量%未満、もしくは、73重量%を超える場合には十分な糸引き性を有しなくなる。
【0012】
また、本発明に用いるタピオカ加工デンプンとしては、加工処理を施したタピオカ加工デンプンを用いることができる。加工処理としては、エーテル化処理、エステル化処理、酸処理、架橋処理等が挙げられ、例えば、ヒドロキシプロピルデンプン・ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン・デンプングルコース酸ナトリウム・カルボキシメチルデンプン・カチオンデンプン等のエーテル化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉・酢酸デンプン・リン酸デンプン・リン酸架橋デンプン等のエステル化デンプンを用いることができ、特に、ヒドロキシプロピルデンプン・ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉・カルボキシメチルデンプン・カチオンデンプン・酢酸デンプン・酸化澱粉を使用することが好ましい。本発明では、これらタピオカ加工デンプンを、最終製品であるプロセスチーズ類に対して、2.0〜18.0重量%、好ましくは4.0〜17.0重量%含有させることができる。タピオカ加工デンプンが2.0重量%未満、もしくは18.0重量%を越える場合には、良好な食感を有しなくなる場合がある。なお、本発明において、タピオカ加工デンプンとしては、α化処理したタピオカ加工デンプンは含まない。
【0013】
本発明に用いるα化デンプンとしては、とうもろこし、小麦粉、米、タピオカ、馬鈴薯、サゴ等をα化したデンプンを用いることができる。なかでもハイアミローススターチを用いるのが好ましい。本発明では、これらα化デンプンを最終製品であるプロセスチーズ類に対して、2.0〜9.0重量%含有させる。好ましくは4.0〜8.0重量%含有させることができる。α化デンプンが2.0重量%未満、もしくは、9.0重量%を超える場合には、口どけが非常に良好であり、ホクホク感があり、ねちゃつきがない歯切れの良い食感を有しなくなる場合がある。
【0014】
本発明では、上述の原料チーズ類およびデンプン類のほかに、バター及び植物油脂を配合することを特徴とする。バターや植物油脂は、特許文献2においても、副原料として使用することができることが記載されているところ、プロセスチーズ類の製造において、一般的に原料チーズの含有量を低減する目的で使用することはあるが、本発明のように冷却後の「練り易さ」の向上を目的として配合することは行われていない。さらに本発明は、タピオカ加工澱粉やα化デンプンを配合した冷却後も糸曳き性を有するプロセスチーズ類において、その糸曳き性を維持したまま「練り易さ」の向上を図るという新規な課題を鑑みてなされるものである。
本発明では、後の試験例で示すとおり、バター及び植物油脂を併用することを特徴としている。すなわち、バターのみ、あるいは植物油脂のみを配合した場合では、プロセスチーズ類の冷却後の「練り易さ」は向上せず、本発明の効果を得ることはできない。バターと植物油脂を併用することによって「練り易さ」を向上させることについては特許文献2にはなんら開示されていない。
本発明におけるバターの配合量は1〜25%が好ましく、植物油脂の配合量は5%〜40%であることが好ましい。バター、植物油脂がこの配合量よりも低い場合には、冷却後の練り易さは向上せず、また、この配合量よりも多い場合には、プロセスチーズ類の乳化が壊れ、油分と水分が分離するオイルオフが発生しやすくなり、好ましくない。
本発明で使用できる植物油脂としては、植物油脂であれば特に制限はないが、例えば大豆油、パーム油、ヤシ油、ナタネ油、コーン油、ベニバナ油、コメ油、オリーブ油などが挙げられる。
【0015】
本発明では、最終製品のプロセスチーズ類のpHを好ましくは5.0〜6.0、より好ましくは5.5〜6.0に調整することができる。pHが5.0未満、もしくは、6.0を超える場合には、十分な糸引き性を有しなくなる場合があるため好ましくない。
【0016】
さらに、本発明では、最終製品であるプロセスチーズ類の水分を好ましくは48.0〜60.0%、より好ましくは54.0〜60.0%に調整することができる。水分が48.0%未満、もしくは、60.0%を超える場合には、十分な糸引き性を有しなくなる場合があるため好ましくない。
【0017】
本発明品に使用できるその他の副原料は、特に限定されず、プロセスチーズ類の製造に使用するものであればいずれの原料を配合することができる。その他の副原料としては、例えば、溶融塩、チーズ類に使用できる溶融塩以外の乳化剤、安定剤(増粘多糖類、セルロース等)、香料等の食品添加物のほか、乳タンパク質源としての乳素材、デンプン、ゼラチン、寒天等の食品、風味付け等に使用するシーズニング等を例示することができる。
【0018】
本発明のプロセスチーズ類の製造方法について以下に説明する。プロセスチーズ類の製造方法は、原料チーズ、タピオカ加工デンプン、α化デンプン、バター及び植物油脂を配合する配合工程と、前記配合した原材料を混合する混合工程と、前記混合した原材料を加熱乳化する乳化工程と、前記加熱乳化した原材料を冷却する冷却工程を有する。
【0019】
本発明の配合工程、混合工程では、原料チーズとタピオカ加工デンプン、α化デンプン、バター、植物油脂を配合し、その後前記配合した原材料を混合し、原材料のpHを5.0〜6.0、および、水分を48.0〜60.0%に調整する。他の副原料はタピオカ加工デンプン等と一緒に添加しても良いし、タピオカ加工デンプン等を混合後に添加しても良い。その後、乳化工程、冷却工程では、前記pHおよび水分を調整した原材料を加熱乳化、冷却してプロセスチーズ類を製造する。プロセスチーズ類のpH調整方法であるが、例えば、クエン酸、乳酸、重炭酸ナトリウム等のチーズ類のpH調整に用いる一般的なpH調整剤を用いて、pHを5.0〜6.0に調整することができる。
【0020】
プロセスチーズ類の水分含量は、原材料の水分含量と、原材料に添加する水の量、加熱乳化時に加える蒸気量の合算で算出される。よって、本発明のプロセスチーズ類では、最終的な製品の水分量が48.0〜60.0%となるように調整する。これは、各原材料に含まれる水分量や加熱乳化時に増える水分量から原材料に添加する水量を算出して加水することにより、製品であるチーズ類の水分を調整することができる。
【0021】
加熱乳化に用いる乳化機としては、特に限定はなく、クッカー型乳化機、ケトル型乳化機、縦型高速せん断式乳化機、かきとり式熱交換機等、チーズ類の製造に使用される乳化機を用いることができる。乳化温度や撹拌速度等は一般的なチーズを製造する条件の範囲で製造することができる。例えば、低速せん断乳化釜等を用いて、50〜200rpmの低速で攪拌すること、高速せん断乳化釜を用いて、350〜1,500rpmの中速から高速で攪拌することができる。このように加熱乳化された乳化物を目的に応じた型に充填し、冷却する。冷却温度やスピードについては特に限定はないが、通常の食品と同様に、速やかに10℃以下まで冷却保存することが望ましい。
【0022】
加熱溶解後、急冷または除冷されたプロセスチーズ類は、油脂分や水分が多いが、加熱時に油脂や水が分離せず、加熱時のみならず冷却後も糸引き性を有する歯切れの良いホクホクした食感を有し、また、冷却後も良好な練り易さを有する。
【0023】
本発明のプロセスチーズ類は、加熱時のみならず冷却後も糸引き性を有し、また冷却後も練り易い物性を有するめ、家庭用、業務用のプロセスチーズ類としての用途を有する。例えば、チーズフォンデュやアリゴ様チーズとして用いることができる。
【0024】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
チェダーチーズ5kgおよびゴーダチーズ5kgを原料チーズとして用いて、低速せん断乳化釜に投入した。これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ジリン酸ナトリウム100g、タピオカ加工デンプン(ヒドロキシプロピル澱粉(エーテル化)(松谷化学製ファリネックスTG600))を2kg、α化デンプン(日本食品化工製 アルスターH)1kgを添加した。そこにバター及び大豆油を最終製品であるプロセスチーズ類中に、バター1.5重量%/大豆油10重量%(実施例品1)、バター5重量%/大豆油10重量%(実施例品2)、バター25重量%/大豆油10重量%(実施例品3)、バター5重量%/大豆油1.5重量%(実施例品4)、バター5重量%/大豆油40重量%(実施例品5)となるように加え、その後、最終製品の水分含有量が55.0%となるように水を添加し、低速せん断乳化釜で120rpm、85℃まで加熱攪拌した。加熱溶解したチーズを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却してプロセスチーズ(実施例品1〜実施例品5)を製造した。
【0026】
[比較例1]
チェダーチーズ5kgおよびゴーダチーズ5kgを原料チーズとして用いて、低速せん断乳化釜に投入した。これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ジリン酸ナトリウム100g、タピオカ加工デンプン(ヒドロキシプロピル澱粉(エーテル化)(松谷化学製ファリネックスTG600))を2kg、α化デンプン(日本食品化工製 アルスターH)1kgを添加した。そこにバター及び大豆油を最終製品であるプロセスチーズ類中に、バター0重量%/大豆油20重量%(比較例品1)、バター30重量%/大豆油20重量%(比較例品2)、バター10重量%/大豆油0重量%(比較例品3)、バター10重量%/大豆油50重量%(比較例品4)、バター0重量%/大豆油0重量%(比較例品5)となるように加え、その後、最終製品の水分含有量が55.0%となるように水を添加し、低速せん断乳化釜で120rpm、85℃まで加熱攪拌した。加熱溶解したチーズを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却してプロセスチーズ(比較例品1〜比較例品5)を製造した。
【0027】
[試験例1]
実施例品1〜5及び比較例品1〜5について、加熱時(85℃)の糸曳き性、冷却時(5℃)の糸曳き性、冷却時(5℃)の練り易さについて比較評価を実施した。また、25℃における硬度を測定した。硬度は、加熱後、5℃に冷却したプロセスチーズ類を25℃まで加温し、レオメーター(サン科学社製)を使用して測定し、測定条件は、カード測定用アダプターを用いて、試料台速度150mm/minとした。糸引き性については、プロセスチーズ類100gをカップに採取し、毎秒10cmの速度でプロセスチーズ類を引き上げ、プロセスチーズ類の糸が切れるまでの長さを測定することで評価し、30cm以上であるものについて特に良好(◎)、10cm以上30cm未満であるものを良好(○)、10cm未満のものを不良(×)との評価を行った。
また、冷却時の練り易さについては、訓練された官能評価パネラー10人で練り試験を行い、7人以上が練り易いとの判断したものを○、7人未満の場合を×とした。
オイルオフについてはオイルオフが発生しなかったものを○、オイルオフが発生したものを×とした。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から、一定量のバター及び大豆油を併用した場合においては、冷却時の練り易さが向上することが明らかとなった。比較例の結果から、バターまたは大豆油のいずれかのみを配合した場合では、併用した場合に見られるような練り易さの向上は見られなかった。一方、バター配合量、大豆油配合量が過剰になった場合は、オイルオフが発生した。
【実施例2】
【0030】
チェダーチーズ5kgおよびゴーダチーズ5kgを原料チーズとして用いて、低速せん断乳化釜に投入した。これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ジリン酸ナトリウム100g、タピオカ加工デンプン(酸化澱粉(松谷化学製 スタビローズTA-8)2kg、α化デンプン(日本食品化工製 ネオビスC-60)1kgを添加した。そこにバター及びヤシ油を最終製品であるプロセスチーズ類中に、バター1.5重量%/ヤシ油10重量%(実施例品6)、バター5重量%/ヤシ油10重量%(実施例品7)、バター25重量%/ヤシ油10重量%(実施例品8)、バター5重量%/ヤシ油1.5重量%(実施例品9)、バター5重量%/ヤシ油40重量%(実施例品10)となるように加え、その後、最終製品の水分含有量が55.0%となるように水を添加し、低速せん断乳化釜で120rpm、85℃まで加熱攪拌した。加熱溶解したチーズを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却してプロセスチーズ(実施例品6〜実施例品10)を製造した。
【0031】
[比較例2]
チェダーチーズ5kgおよびゴーダチーズ5kgを原料チーズとして用いて、低速せん断乳化釜に投入した。これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ジリン酸ナトリウム100g、タピオカ加工デンプン(酸化澱粉(松谷化学製 スタビローズTA-8)2kg、α化デンプン(日本食品化工製 ネオビスC-60)1kgを添加した。そこにバター及び大豆油を最終製品であるプロセスチーズ類中に、バター0重量%/ヤシ油20重量%(比較例品6)、バター30重量%/ヤシ油20重量%(比較例品7)、バター10重量%/ヤシ油0重量%(比較例品8)、バター10重量%/ヤシ油50重量%(比較例品9)、バター0重量%/ヤシ油0重量%(比較例品10)となるように加え、その後、最終製品の水分含有量が55.0%となるように水を添加し、低速せん断乳化釜で120rpm、85℃まで加熱攪拌した。加熱溶解したチーズを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却してプロセスチーズ(比較例品6〜比較例品10)を製造した。
【0032】
[試験例2]
実施例品6〜10及び比較例品6〜10について、加熱時(85℃)の糸曳き性、冷却時(5℃)の糸曳き性、冷却時(5℃)の練り易さ、オイルオフについて試験例1と同様の方法で比較評価を実施した。また、25℃における硬度を測定した。結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2から、バター及びヤシ油を一定量で併用した場合においては、冷却時の練り易さが向上することが明らかとなった。比較例との対比から、バターまたはヤシ油のいずれかのみを配合した場合では、併用した場合に見られるような練り易さの向上は見られなかった。一方、バター配合量、ヤシ油配合量が過剰になった場合は、オイルオフが発生した。
【実施例3】
【0035】
チェダーチーズ5kgおよびゴーダチーズ5kgを原料チーズとして用いて、低速せん断乳化釜に投入した。これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム100g、ジリン酸ナトリウム100g、タピオカ加工デンプン(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(エステル化)(松谷化学製ファリネックスVA70TJ))を2kg、α化デンプン(日本食品化工製 アルスターE)1kgを添加した。そこにバター及びパーム油を最終製品であるプロセスチーズ類中に、バター1.5重量%/パーム油1.5重量%(実施例品11)、バター25重量%/パーム油1.5重量%(実施例品12)、バター1.5重量%/パーム油40重量%(実施例品13)、バター25重量%/パーム油40重量%(実施例品14)となるように加え、その後、最終製品の水分含有量が55.0%となるように水を添加し、低速せん断乳化釜で120rpm、85℃まで加熱攪拌した。加熱溶解したチーズを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却してプロセスチーズ(実施例品11〜実施例品14)を製造した。得られた実施例品11〜14について、加熱時(85℃)の糸曳き性、冷却時(5℃)の糸曳き性、冷却時(5℃)の練り易さについて試験例1と同様の方法で評価を実施したところ、いずれも良好な糸曳き性を有しており、また冷却時においても良好な練りやすさを有していた。これらについて25℃における硬度を測定したところ、いずれも850gf以下であった。なお、オイルオフも見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のプロセスチーズ類は、加熱後および冷却後も糸引き性を有し、かつ冷却時においても良好な練り易さを維持できるため、家庭用、業務用を問わず、又加熱調理される用途だけでなく、チルド状態で食品となる用途のプロセスチーズ類として用いることができる。