特許第6534871号(P6534871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6534871
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】板状ワークの貼り合わせ方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20190617BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20190617BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   H01L21/02 C
   H01L21/78 M
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-126409(P2015-126409)
(22)【出願日】2015年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-11151(P2017-11151A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗村 茂也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智瑛
【審査官】 井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−037768(JP,A)
【文献】 特開2015−003356(JP,A)
【文献】 特開2001−002436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/02
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と板状ワークとを熱可塑性の樹脂からなるワックスで固定する板状ワークの貼り合わせ方法であって、
該支持基板と該板状ワークとの間に粉末状のワックスを配置する粉末ワックス配置工程と、
該粉末ワックス配置工程の後、減圧環境下で該支持基板と該板状ワークとの間を密閉して形成された減圧密閉室を減圧する減圧空間形成工程と、
該減圧空間形成工程の後、該ワックスを加温して溶かし該支持基板と該板状ワークとの間をワックスで満たすワックス拡張工程と、
該ワックス拡張工程の後、該ワックスを冷却し固化させ該板状ワークと該支持基板とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、からなる板状ワークの貼り合わせ方法。
【請求項2】
前記減圧空間形成工程は、
前記支持基板を保持する保持テーブルと、前記板状ワークより面積の大きい粘着テープと、該粘着テープを保持する粘着テープ保持部と、該粘着テープを該支持基板に貼着する貼着手段と、該保持テーブルと該粘着テープ保持部と該貼着手段とを包囲した空間を減圧する減圧チャンバと、を用い、
該減圧チャンバ内を減圧するとともに、該粘着テープ保持部が保持する該粘着テープを該板状ワークに接近させ該板状ワークを該粘着テープで覆う粘着テープ配置工程と、
該粘着テープ配置工程の後、該貼着手段によって、該板状ワークからはみ出した該粘着テープの外周部を該支持基板に貼着し前記減圧密閉室を形成する減圧密閉室形成工程とからなり、
前記貼り合わせ工程の後、該粘着テープを該板状ワークから剥離する剥離工程を含む請求項記載の板状ワークの貼り合わせ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂からなる接着層を用いて板状ワークと支持基板とを貼り合わせる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削ブレードで板状ワークを切削するために、熱可塑性の樹脂からなるワックスで支持基板に板状ワークを固定してから、切削ブレードを板状ワークに切り込ませて切削する方法がある(例えば、下記の特許文献1を参照)。ここで、テープで支持基板と板状ワークとを貼り合わせた場合は、テープの糊層に切削ブレードが切り込むため、切削ブレードの先端に糊が付着してしまうが、ワックスによれば、切削ブレードの先端に糊が付着するのを防止でき、切削ブレードの切削力を低下させることがない。また、ワックスにピラーなどを含ませておけば、切削ブレードのドレッシングを行いながら板状ワークの切削加工をすることも可能となる。
【0003】
さらに、ワックスの固定力はテープの粘着力よりも強いため、テープで支持基板と板状ワークとを貼着する場合と比べて、分割されたチップが動かされにくいというメリットがある。また、切削ブレードで板状ワークを分割した後、ワックスを加熱して軟化させることにより、個々のチップに容易に分割することができるため、チップの取り出しも容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−003356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、板状ワークと支持基板との間に上記のようなワックスを介在させ、板状ワークを支持基板に固定させるときに、ワックスの内部(ワックスの層)に気泡が発生することがある。そのため、切削ブレードで板状ワークを切削する際に、切削ブレードがワックスの層の気泡を通過すると、切削屑が気泡に溜まってしまい、チップに切削屑が付着するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、支持基板と板状ワークとを貼り合わせるワックスの層に気泡を発生させないようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、支持基板と板状ワークとを熱可塑性の樹脂からなるワックスで固定する板状ワークの貼り合わせ方法であって、該支持基板と該板状ワークとの間に粉末状のワックスを配置する粉末ワックス配置工程と、該粉末ワックス配置工程の後、減圧環境下で該支持基板と該板状ワークとの間を密閉して形成された減圧密閉室を減圧する減圧空間形成工程と、該減圧空間形成工程の後、該ワックスを加温して溶かし該支持基板と該板状ワークとの間をワックスで満たすワックス拡張工程と、該ワックス拡張工程の後、該ワックスを冷却し固化させ該板状ワークと該支持基板とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、からなる。
【0008】
上記減圧空間形成工程は、前記支持基板を保持する保持テーブルと、前記板状ワークより面積の大きい粘着テープと、該粘着テープを保持する粘着テープ保持部と、該粘着テープを該支持基板に貼着する貼着手段と、該保持テーブルと該粘着テープ保持部と該貼着手段とを包囲した空間を減圧する減圧チャンバと、を用い、該減圧チャンバ内を減圧するとともに、該粘着テープ保持部が保持する該粘着テープを該板状ワークに接近させ該板状ワークを該粘着テープで覆う粘着テープ配置工程と、該粘着テープ配置工程の後、該貼着手段によって、該板状ワークからはみ出した該粘着テープの外周部を該支持基板に貼着し前記減圧密閉室を形成する減圧密閉室形成工程とからなり、前記貼り合わせ工程の後、該粘着テープを該板状ワークから剥離する剥離工程を含むことが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る板状ワークの貼り合わせ方法は、支持基板と板状ワークとの間に粉末状のワックスを配置する粉末ワックス配置工程と、支持基板と板状ワークとの間を減圧する減圧空間形成工程と、ワックスを加温して溶かすことにより支持基板と板状ワークとの間をワックスで満たすワックス拡張工程と、ワックスを冷却して固化させ板状ワークと支持基板とを貼り合わせる貼り合わせ工程とからなるため、ワックスを固化させ板状ワークを支持基板に貼り合わせると、ワックスの内部に気泡が発生することがない。よって、例えば切削ブレードで板状ワークを切削する際に、切削ブレードがワックスに切り込んでも切削屑が気泡に溜まるということがなく、チップに切削屑が付着するのを防止することができる。
【0010】
上記減圧空間形成工程では、支持基板と前記板状ワークとの間を減圧環境下で密閉して減圧密閉室を形成するため、支持基板と板状ワークとの間に配置されたワックスに空気が混入するのをより確実に防止することができる。
【0011】
上記減圧空間形成工程は、減圧チャンバ内を減圧するとともに、粘着テープ保持部が保持する粘着テープを板状ワークに接近させ板状ワークを粘着テープで覆う粘着テープ配置工程と、板状ワークからはみ出た粘着テープの外周部を支持基板に貼着し上記減圧密閉室を形成する減圧密閉室形成工程とからなるため、支持基板と板状ワークとの間に配置されたワックスに気泡が発生するのを防止し、板状ワークと支持基板とを確実に貼り合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】粉末ワックス配置工程を示す断面図である。
図2】減圧空間形成工程のうち、粘着テープ配置工程を示す断面図である。
図3】減圧空間形成工程のうち、減圧密閉室形成工程を示す断面図である。
図4】ワックス拡張工程を示す断面図である。
図5】剥離工程を示す断面図である。
図6】粉末ワックス配置工程の第2例を示す断面図である。
図7】減圧空間形成工程の第2例のうち、粘着テープ配置工程を示す断面図である。
図8】減圧空間形成工程の第2例のうち、減圧密閉室形成工程を示す断面図である。
図9】減圧密閉室形成工程の第2例を実施した後、粘着テープの外周部が支持基板に粘着された状態を示す断面図である。
図10】ワックス拡張工程の第2例を示す断面図である。
図11】剥離工程の示す第2例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1 板状ワークの貼り合わせ方法の第1例
図1図5を参照しながら、支持基板1と板状ワーク2とをワックス3によって貼り合わせる板状ワークの貼り合わせ方法の第1例について説明する。
【0014】
(1)粉末ワックス配置工程
図1に示すように、支持基板1を保持テーブル12に搬入する。保持テーブル12は、その上面が支持基板1を吸引保持する保持面12aとなっており、保持面12aは吸引源13に連通しており、吸引源13の吸引力によって支持基板1を保持面12aにおいて吸引保持する。支持基板1は、上下面が平坦面に形成された平板であり、例えばガラス基板や樹脂基板から構成されている。また、支持基板1は、保持テーブル12の保持面12aにおいて吸引保持可能なサイズに形成され、板状ワーク2よりも大きく形成されている。したがって、支持基台1の外周上面1bが、板状ワーク2の外周側からはみ出した状態となっている。なお、板状ワーク2は、被加工物の一例であって、特に材質等が限定されるものではない。
【0015】
次に、支持基板1の上面1aに粉末状のワックス3を敷設する。次いで、板状ワーク2の下面2bをワックス3の上に重ね、支持基板1と板状ワーク2との間にワックス3を挟みこみ、板状ワーク2の上面2aを露出させる。
【0016】
ワックス3は、熱可塑性樹脂によって構成され、例えば、日化精工株式会社が提供する固形状のシフトワックスを粉末状に砕いたものである。シフトワックスからなるワックス3は、所定の温度(例えば100℃〜120℃)で軟化し、常温で硬化する特性を有する。
【0017】
(2)減圧空間形成工程
【0018】
図1に示すように、保持テーブル12は、減圧チャンバ10の内部に収容されている。また、チャンバ10の内部であって保持テーブル12の上方には、板状ワーク2よりも面積の大きい粘着テープ4を保持する粘着テープ保持部15が配設されている。
【0019】
減圧チャンバ10は、カバー100を有し、カバー100の側方には、扉101aを開閉させる扉開閉手段101が配設されている。また、カバー100には、減圧口103が形成され、減圧口103は、空間5を減圧して減圧空間を形成する減圧手段11に連通している。図1の例では、扉開閉手段101が扉101aを下方に移動させ、減圧チャンバ10の内部に連通する開口部102が開いた状態となっている。
【0020】
粘着テープ保持部15は、その下面が保持面15aであり、保持面15aは、吸引路150を介して吸引源16に連通している。吸引源16の吸引力が吸引路150を通じて保持面15aに作用することにより、粘着テープ4を保持面15aで吸引保持することができる。
【0021】
粘着テープ保持部15には、粘着テープ保持部15を昇降させる昇降手段18が接続されている。昇降手段18は、シリンダ180と、昇降軸181と、昇降軸181の上端に連結されたアーム部182とから構成され、アーム部182には、粘着テープ保持部15が連結されている。昇降軸181がシリンダ180内において上下に移動することにより、粘着テープ保持部15を昇降させることができる。
【0022】
粘着テープ保持部15には、粘着テープ4を支持基板1に貼着する貼着手段となる押付部17が、押付部昇降手段19によって粘着テープ保持部15に対して昇降可能に配設されている。押付部昇降手段19は、押付部昇降手段19は、粘着テープ保持部15の内部において、エアシリンダ190と昇降軸191とにより構成されている。エアシリンダ190には、バルブ192を介してエアー供給源20が接続されている。昇降軸191は押付部17に接続されている。エアー供給源20から送られるエアーによって昇降軸191がエアシリンダ190内において上下に移動することにより、押付部17を昇降させることができる。押付部17は、粘着テープ保持部15の周囲を囲繞するように円環状に一体に形成されている。また、押付部17は、円環状に一体に構成されるものに限定されず、円環状に複数配置させた構成でもよい。
【0023】
減圧空間形成工程は、粘着テープ配置工程と減圧密閉室形成工程との2工程から構成され、保持テーブル12と粘着テープ保持部15と押付部17とを包囲した空間5を減圧する減圧チャンバ10内において行われる。以下においてそれぞれについて具体的に説明する。
【0024】
(2−1)粘着テープ配置工程
図1に示したように、粘着テープ保持部15の保持面15aにおいて、粘着面を下に向けた状態で粘着テープ4を保持する。そして、図2に示すように、扉開閉手段101によって扉101aを閉めて空間5を密閉する。そして、減圧手段11によって減圧口103を通じて減圧チャンバ10の空間5を減圧して真空状態の減圧空間を形成する。この減圧環境下で、昇降手段18が粘着テープ保持部15を降下させていき、粘着テープ4を板状ワーク2に接近させ、粘着テープ4を板状ワーク2の上面2aに貼着する。これにより、板状ワーク2が粘着テープ4によって覆われるとともに、板状ワーク2の上面2aに載置された粘着テープ4の外周部4aが、板状ワーク2の外周部からはみ出した状態となる。なお、本実施形態では、粘着テープ4を板状ワーク2の上面2aに載置した状態となっているが、これに限定されるものではなく、板状ワーク2の側面側を粘着テープ4で覆うようにしてもよい。また、粘着テープ4は、粉末ワックス配置工程の前から粘着テープ配置工程の前までに減圧チャンバ10の内部に搬入すればよい。
【0025】
(2−2)減圧密閉室形成工程
粘着テープ配置工程を実施した後、図3に示すように、エアー供給源20から送られるエアーによって昇降軸191がエアシリンダ190内を下方に移動し、押付部17を下降させる。そして、押付部17が粘着テープ4の外周部4aを支持基板1に対して押し付け、外周部4aを支持基板1の外周上面1bに貼着する。これにより、板状ワーク2及びワックス3を板状ワーク1と粘着テープ4とによって囲んだ減圧密閉室6を形成する。減圧密閉室6は、支持基板1と板状ワーク2との間を減圧環境下で密閉しワックス3の内部に空気を入れない密閉空間として機能する。
【0026】
(3)ワックス拡張工程
減圧空間形成工程を実施した後、図4に示すように、昇降手段18によって粘着テープ保持部15を粘着テープ4から離反させる。そして、電源スイッチ140をオンにしてヒータ14を加熱させワックス3を加温し、ワックス3を溶かして粘着テープ4の内側で拡張させ、支持基板1と板状ワーク2との間にワックス3を満たす。
【0027】
(4)貼り合わせ工程
ワックス拡張工程を実施した後、拡張されたワックス3を冷却し固化させて板状ワーク2と支持基板1とを貼り合わせる。冷却する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、電源スイッチ140をオフにしてヒータ14を停止しワックス3を常温に戻す方法や、エアーを噴きかけてワックス3から除熱する方法などがある。このようにして、ワックス3を冷却し、ワックス3を固化させて板状ワーク2と支持基板1とを貼り合わせる。このとき、粉末状のワックス3の内部には気泡が発生することがないことから、板状ワーク2と支持基板1とを隙間なく貼り合わせることができる。
【0028】
(5)剥離工程
貼り合わせ工程を実施した後、図4に示した減圧チャンバ10から、ワックス3によって支持基板1に貼り合わせられた板状ワーク2を取り出し、図5に示す別の保持テーブル21の保持面21aに載置する。そして、吸引源22の吸引力が保持テーブル21の保持面21aにおいて作用し、支持基板1を保持面21aで吸引保持する。
【0029】
その後、例えば挟持部23が挟持した剥離テープ24を粘着テープ4の外周部4aに貼り付けた状態で、挟持部23を上昇させることにより、粘着テープ4を支持基板1の外周上面1b及び板状ワーク2の上面2aから剥離する。その後、支持基板1に貼り合わせられた板状ワーク2は、例えば切削装置に搬送され、個々のチップに分割される。
【0030】
2 板状ワークの貼り合わせ方法の第2例
次に、図6図11を参照しながら、支持基板1と板状ワーク2とをワックス3によって貼り合わせる板状ワークの貼り合わせ方法の第2例について説明する。
【0031】
(1)粉末ワックス配置工程
図6に示すように、支持基板1を、保持テーブル33に搬入する。保持テーブル33は、その上面が支持基板1を吸引保持する保持面33aとなっており、保持テーブル33に支持基板1を載置し保持面33aにおいて支持基板1を吸引保持したら、支持基板1の上面1aに粉末状のワックス3を敷設する。そして、ワックス3の上に板状ワーク2の下面2bを重ね、支持基板1と板状ワーク3との間にワックス3を挟みこみ、板状ワーク2の上面2aを露出させる。
【0032】
(2)減圧空間形成工程
【0033】
図6に示すように、保持テーブル33は、減圧チャンバ30の内部に収容されている。また、チャンバ30の内部であって保持テーブル33の上方には、水平移動手段37及び昇降手段36によって駆動されて移動する貼着ローラ34が配設されている。
【0034】
減圧チャンバ30は、カバー300を有し、カバー300の側方には、カバー300を開閉させるレバー31が取り付けられている。カバー300には、減圧口38が形成されており、減圧口38は、空間5aを減圧して減圧空間を形成する減圧手段39に連通している。図6の例では、レバー31を持ち上げて、開口部32が開いた状態となっている。第2例においても、減圧空間形成工程は、粘着テープ配置工程と減圧密閉室形成工程との2工程から構成され、保持テーブル33と貼着ローラ34と包囲した空間5aを減圧する減圧チャンバ30内において行われる。
【0035】
(2−1)粘着テープ配置工程
図7に示すように、粘着テープ4を板状ワーク2の上面2aに配置する。すなわち、図6に示した開口部32から粘着テープ4を減圧チャンバ30の内部に搬入し、保持テーブル33に保持された板状ワーク2の上面2aに粘着テープ4を載置する。その後、レバー31によってカバー300を下げて空間5aを密閉するとともに、減圧手段39によって減圧口38を通じて空間5aを減圧して真空状態の減圧空間を形成する。
【0036】
(2−2)減圧密閉室形成工程
粘着テープ配置工程を実施した後、減圧チャンバ30の内部に配設された貼着ローラ34によって、板状ワーク2の外周縁からはみ出た粘着テープ4の外周部4aを支持基板1に貼着する。ここで、貼着ローラ34は、軸部350を有する支持部35に対して回転可能に構成されている。支持部35には、昇降手段36が接続されており、昇降手段36を構成する昇降軸360が上下に昇降することにより、貼着ローラ34を昇降させることができる。
【0037】
粘着テープ4の外周部4aを支持基板1に貼着する際には、図8に示すように、軸部350を中心にして貼着ローラ34を例えば矢印A方向に回転させながら、昇降手段36によって貼着ローラ34を保持テーブル33に接近する方向に下降させ、貼着ローラ34を粘着テープ4の外周部4aに接触させる。そして、回転する貼着ローラ34で粘着テープ4の外周部4aを支持基板1に対して押付け、粘着テープ4の外周部4aを支持基板1の外周上面1bに貼着する。
【0038】
続けて、水平移動手段37によって貼着ローラ34を水平方向に転動させ、図9に示すように、板状ワーク2及び支持基板1に粘着テープ4を貼着する。これにより、板状ワーク2及びワックス3を板状ワーク1と粘着テープ4とによって囲んだ減圧密閉室6aを形成する。減圧密閉室6は、支持基板1と板状ワーク2との間を減圧環境下で密閉しワックス3の内部に空気を入れない密閉空間として機能する。
【0039】
(3)ワックス拡張工程
減圧空間形成工程を実施した後、減圧チャンバ30から、ワックス3によって支持基板1に貼り合わせられた板状ワーク2を取り出し、図10に示すように、ヒータテーブル40に載置する。ヒータテーブル40の上面は、支持基板1を保持する保持面40aとなっており、保持面40aは吸引源42に連通している。また、ヒータテーブル40の内部にはヒータ41が配設されており、保持面40a側を加温することができる。
【0040】
ヒータテーブル40の保持面40aに支持基板1が載置されると、保持面40aに吸引力を作用させて支持基板1を吸引保持する。そして、電源スイッチ410をオンにしてヒータ41を加熱してワックス3を加温し、ワックス3を溶かして粘着テープ4の内側で拡張させ、支持基板1と板状ワーク2との間にワックス3を満たす。
【0041】
(4)貼り合わせ工程
ワックス拡張工程を実施した後、拡張されたワックス3を冷却して固化させて板状ワーク2と支持基板1とを貼り合わせる。第1例の貼り合わせ工程と同様の動作によってワックス3を冷却し、ワックス3を固化させる。このとき、粉末状のワックス3の内部に気泡が発生することがなく、板状ワーク2と支持基板1とを隙間なく貼り合わせることができる。
【0042】
(5)剥離工程
貼り合わせ工程を実施した後、図11に示すように、粘着テープ4を板状ワーク2から剥離する。本工程においても、第1例の剥離工程と同様に、例えば挟持部23aが挟持した剥離テープ24aを粘着テープ4の外周部4aに貼り付けた状態で、挟持部23aを上昇させ、粘着テープ4を支持基板1の外周上面1b及び板状ワーク2の上面2aから剥がす。その後、支持基板1に貼り合わせられた板状ワーク2は、例えば切削装置に搬送され、個々のチップに分割される。
【0043】
このように、本発明に係る板状ワークの貼り合わせ方法の第1例及び第2例では、粉末ワックス配置工程を実施して支持基板1と板状ワーク2との間に粉末状のワックス3を配置した後、減圧チャンバ10の空間5または減圧チャンバ30の空間5aを減圧するとともに、押付部17または貼着ローラ34によって、粘着テープ4の外周部4aを、板状ワーク2の外周側からはみ出た支持基板1の外周上面1bに貼着することにより、支持基板1と板状ワーク2との間を密閉させて減圧密閉室6,6aを形成するように構成したため、ワックス3を溶かして板状ワーク2と支持基板1との間に満たした後、ワックス3を冷却して固化させ板状ワーク2を支持基板1に貼り合わせると、ワックス3の内部に気泡が発生することがない。よって、例えば切削ブレードで板状ワーク2に切り込ませて切削するときに、切削屑が気泡に溜まることはなく、チップに切削屑が付着することがなくなる。
【0044】
板状ワークの貼り合わせ方法の第1例及び第2例は、研削加工にも適用することができる。すなわち、従来のテープで支持基板に貼り合わされた板状ワークを研削加工する場合、テープに発生した気泡が研削加工時に板状ワークに転写され、その部分が厚く仕上げられてしまうが、上記したようなワックス3で支持基板1に貼り合わされた板状ワーク2であれば、ワックス3の内部に気泡が発生しないため、板状ワーク2を平坦に研削することができる。ワックスにより板状ワークを固定して行う研削加工は、特に、研削時の砥石からの負荷が大きい硬質の板状ワークの研削に有用である。
【符号の説明】
【0045】
1:支持基板 1a:上面 1b:外周上面 2:板状ワーク 2a:上面 2b:下面3:ワックス 4:粘着テープ 5,5a:空間 6,6a:減圧密閉室
10:減圧チャンバ 100:カバー 101:扉開閉手段 101a:扉
102:開口部 11:減圧手段 12:保持テーブル 12a:保持面 13:吸引源14:ヒータ 140:電源スイッチ 15:粘着テープ保持部 15a:保持面
150:吸引路 16:吸引源 17:押付部
18:昇降手段 180:シリンダ 181:昇降軸 182:アーム部
19:押付部昇降手段 190:エアシリンダ 191:昇降軸 192:バルブ
20:エアー供給源 21:保持テーブル 21a:保持面 22:吸引源
23,23a:挟持部 24,24a:剥離テープ
30:減圧チャンバ 300:カバー 31:レバー 32:開口部
33:保持テーブル 33a:保持面
34:貼着ローラ 35:支持部 350:軸部 36:昇降手段 360:昇降軸
37:水平移動手段 38:減圧口 39:減圧手段 40:ヒータテーブル
40a:保持面 41:ヒータ 410:電源スイッチ 42:吸引源
図1
図2
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図11