(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(E)成分が金属石鹸、ワックス、フッ素系ポリマーからなる群より選択させる1種またはその組み合わせである、請求項1記載の金型表面離型処理用シリコーンゴム組成物。
硬化性シリコーン組成物が、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、硫酸バリウムおよび酸化ジルコニウムからなる群より選択される少なくとも一種の白色顔料を含有することを特徴とする、請求項4乃至6のいずれか1項記載のシリコーン硬化物の形成方法。
硬化性シリコーン組成物が、非球状シリカ、球状シリカ、およびガラスファイバーからなる群より選択される少なくとも一種の無機充填剤を含有することを特徴とする、請求項4乃至7のいずれか1項記載のシリコーン硬化物の形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
はじめに、本発明の金型表面離型処理用シリコーンゴム組成物を詳細に説明する。
(A)成分は、平均組成式:
R
1aSiO
(4−a)/2
で表されるオルガノポリシロキサンである。
【0017】
式中、R
1はハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、ヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基:ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基;クロロフェニル基、フロロフェニル基等のハロゲン置換アリール基が挙げられる。但し、一分子中の少なくとも2個のR
1はアルケニル基であり、好ましくは、ビニル基である。
【0018】
また、式中、aは1.95〜2.05の数である。このような(A)成分の分子構造は限定されないが、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状である。また、(A)成分の重合度は限定されないが、好ましくは、1,000以上であり、さらに好ましくは、2,000〜100,000であり、特に好ましくは、3,000〜20,000である。
【0019】
(A)成分としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体,分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン共重合体が例示される。
【0020】
(B)成分は、本組成物の硬化物に補強性を付与するための、BET比表面積が少なくとも50m
2/gであり、好ましくは、少なくとも100m
2/gであるシリカ微粉末である。このような(B)成分としては、ヒュームドシリカ、沈降法シリカ等が挙げられる。このような(B)成分としては、その表面を、メチルトリメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン;トリメチルクロロシラン等のオルガノハロシラン;ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン;分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルフェニルシロキサンオリゴマー、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー等のシロキサンオリゴマー;ジオルガノシクロポリシロキサン等の有機ケイ素化合物で予め処理したものを用いてもよい。また、(A)成分中で、(B)成分の表面を前記有機ケイ素化合物によりin-situ処理してもよい。
【0021】
本組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、10〜100質量部の範囲内である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られるシリコーンゴム組成物を固体(シート)として扱えるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られるシリコーンゴム組成物の取扱作業性が優れるからである。
【0022】
(C)成分は、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。(C)成分中のケイ素原子に結合するその他の基としては、脂肪族不飽和炭素結合を有さないハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基;クロロフェニル基、フロロフェニル基等のハロゲン化アリール基が例示される。また、(C)成分の分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、環状、網状、一部分岐を有する直鎖状が例示される。
【0023】
(C)成分としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、式:R
3SiO
1/2で示されるシロキサン単位と式:R
2HSiO
1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO
4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R
2HSiO
1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO
4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RHSiO
2/2で示されるシロキサン単位と式:RSiO
3/2で示されるシロキサン単位または式:HSiO
3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、およびこれらのオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物が例示される。なお、式中、Rは脂肪族不飽和炭素結合を有さないハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基であり、前記と同様の基が例示される。
【0024】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲内である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲内であると、得られる組成物が十分に硬化するからである。
【0025】
(D)成分はヒドロシリル化反応用触媒であり、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が挙げられ、好ましくは、白金系触媒である。このヒドロシリル化反応用白金系触媒としては、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金とジケトン錯体、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体が例示される。
【0026】
(D)成分の含有量は、触媒量であり、具体的には、(A)成分100万質量部に対して、(D)成分中の金属原子が1〜1,000質量部の範囲内となる量であることが好ましくは、さらには、1〜100質量部の範囲内となる量であることが好ましい。
【0027】
(E)成分は、本組成物をトランスファー成型用、圧縮成型用、または射出成型用の加熱成形用金型中で硬化させることにより、その表面を離型処理するための、酸価が5.0mg/g以下、かつ40〜160℃の融点を有する離型成分である。この様な離型成分としては金属石鹸、ワックス、またはフッ素系ポリマーが例示され、これらの離型成分は単独または組み合わせて使用しても良い。
【0028】
この金属石鹸としては、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、モンタン酸、パルミチン酸、アラギン酸等の金属塩が例示され、酸価が5.0mg/g以下であり、ヒドロシリル化反応硬化性シリコーン組成物に対して硬化阻害が少ないという観点から、ステアリン酸カルシウム(融点=150℃)、ステアリン酸マグネシウム(融点=130℃)、またはモンタン酸カルシウム(融点=150℃)であることが好ましい。
【0029】
また、このワックスとしては酸価が5.0mg/g以下、かつ40〜160℃の融点を有する物であれば、天然ワックスや合成ワックスなど、どの様なワックスでも良いが、酸価が低いという観点から、フィッシャー・トロプシェワックス(サゾールワックス)、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、合成脂肪酸エステルワックスなどが好ましい。また、天然ワックスであっても、酸性成分が除去された様な物であれば使用できる。
【0030】
また、このフッ素系ポリマーとしては、融点が上記範囲内かつ酸価5.0mg/g以下であればポリマーの構造に制約はないが、例えば、ダイキン社製の固形フッ素系離型剤(フッ素系ポリマー、融点=45℃)、PVDF(融点=120〜140℃)、PVDFと有機樹脂とのポリマーアロイ、PTFEと有機樹脂とのポリマーアロイが利用できる。
【0031】
(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜40質量部の範囲内である。これは、(E)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、金型表面を十分に離型処理することができるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、離型処理した金型表面に汚れが目立たないからである。
【0032】
本組成物は、上記(A)成分〜(E)成分から少なくともなるが、さらに、(F)一般式:
R
23SiO(R
22SiO)
nSiR
23
で表されるオルガノポリシロキサンを含有してもよい。
【0033】
式中、R
2は脂肪族不飽和結合を有さない同種または異種のハロゲン置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基;クロロフェニル基、フロロフェニル基等のハロゲン化アリール基が例示される。
【0034】
また、式中、nは0〜1,000の整数である。これは、nが上記範囲の上限以下であると、本組成物をトランスファー成型用または圧縮成型用の加熱成形用金型中で硬化させることにより、その表面を十分に離型処理することができるからである。このような(F)成分の25℃における粘度は特に限定されないが、好ましくは、1〜100,000mm
2/sの範囲内である。
【0035】
このような(F)成分としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・フェニルメチルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体が例示される。
【0036】
(F)成分の含有量は特に限定されないが、好ましくは、(A)〜(D)成分の合計100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲内である。これは、(F)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、本組成物をトランスファー成型用、圧縮成型用、または射出成型用の加熱成形用金型中で硬化させることにより、その表面を十分に離型処理することができるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、離型処理した金型表面に液体成分等の付着がなく良好であるからである。
【0037】
また、本組成物には、取扱作業性や硬化性をコントロールするための(G)ヒドロシリル化反応抑制剤を含有してもよい。この(G)成分としては、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾールが例示される。(G)成分の含有量は、本組成物に対して、質量単位で10〜50,000ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0038】
さらに、本組成物には、その他任意の成分として、例えば、ケイソウ土、石英粉末、炭酸カルシウム、マイカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、弁柄等の無機質充填剤;希土類酸化物、希土類水酸化物、セリウムシラノレート、セリウム脂肪酸塩等の耐熱添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
【0039】
本組成物を調製する方法は特に限定されず、例えば、(A)成分と(B)成分を混練してシリコーンゴムベースコンパウンドを調製し、次いで、このコンパウンドに(C)成分を混練した後、(E)成分、その他任意の成分を混練した後、(D)成分を混練することが好ましい。本発明の調製においては、上記各成分を2本ロ−ルミキサー、バンバリーミキサー、ドウミキサー(ニーダー)等のゴム混練り機を用いて均一に混合し、必要に応じて熱処理を施すことによって得ることができる。また、本組成物を2本ロ−ルまたは押し出し成型によってシート状あるいはブロック状に成形することができる。
【0040】
本発明は、取扱作業性および金型表面離型処理の効率を考慮し、そのウィリアムス可塑度(ASTM D926)が200〜1,000の範囲内であることが好ましく、さらには200〜800の範囲内であることが好ましい。これは、ウィリアムス可塑度が上記範囲の下限以上であると、未加硫状態でも固体として扱えるからであり、上記範囲の上限以下であると、金型内での流動性が優れ、金型表面をくまなく離型処理することができるからである。なお、このウィリアムス可塑度は、本組成物を体積2cm
3用いて、高さおよそ10mmのシリンダー状試験片に成形し、25℃で3分間49ニュートンの圧縮荷重をかけた後の厚さ(ミリメートル)を100倍した値である。
【0041】
次に、本発明のシリコーン硬化物の形成方法を図面を用いて詳細に説明する。
本方法では、はじめに、トランスファー成型、圧縮成型、または射出成型における金型中で上記の金型表面離型処理用シリコーンゴム組成物を加熱硬化させる。
図1は、上金型1と下金型2の間に金型表面離型処理用シリコーンゴム組成物3を配置した状態を示している。シリコーンゴム組成物3の充填量は、上金型1と下金型2とを圧接して形成されるキャビティを充填するのに十分な量である。シリコーンゴム組成物3が室温で固体状である場合、所定量のシートあるいはブロックを金型の間に配置することができる。また、シリコーンゴム組成物3が室温でペースト状である場合、これを金型の間に所定量圧送してもよい。
【0042】
次いで、上金型1と下金型2とで金型表面離型処理用シリコーンゴム組成物3を挟んだ状態で加熱硬化することにより、金型表面を離型処理することができる。
図2は、上金型1と下金型2の間でシリコーンゴム組成物を加熱硬化して硬化物4を形成した状態を示している。この後、上金型1と下金型2を開き、硬化物4を排出するが、この硬化物4自体、非常に離型性を有するので、容易に上金型1と下金型2とから脱型することができる。また、本発明の方法では、硬化物4の排出により、金型表面に付着している異物も排出されるという利点もある。
【0043】
次に、
図3は、硬化物4を排出した後、上金型1と下金型2の間に基材5と硬化性シリコーン組成物6を配置した状態を示している。
図3は、硬化性シリコーン組成物6を圧縮成型により基材5上にシリコーン硬化物7を形成する場合を示している。トランスファー成型や射出成型により基材5上にシリコーン硬化物7を形成する場合には、上金型1と下金型2との間に基材5を置き、上金型1と下金型2とを圧接した状態で、硬化性シリコーン組成物6を金型内に圧送する。
【0044】
図4は、上金型1と下金型2の間で硬化性シリコーン組成物を硬化してシリコーン硬化物7を形成した状態を示している。この後、上金型1と下金型2を開き、シリコーン硬化物7を形成した基材5を排出する。本発明の方法では、金型表面が持続して離型性を有し、異物が付着し難いので、金型表面の離型処理やクリーニング工程を経ることなく、上金型1と下金型2の間で硬化性シリコーン組成物を硬化してシリコーン硬化物7を形成する工程を繰り返すことができる。
【0045】
また、金型表面離型処理用シリコーンゴム組成物を加熱硬化させる条件は(D)成分の添加量により調整できるが、120〜200℃で60〜600秒であることが好ましい。硬化温度は硬化性シリコーン組成物の硬化温度と合わせると作業性を向上させることができる。
【0046】
本方法で成形することのできる硬化性シリコーン組成物としては、加熱硬化性のものであればその硬化機構は特に限定されず、例えば、ヒドロシリル化反応硬化性、有機過酸化物硬化性が挙げられる。硬化性シリコーン組成物としては、ヒドロシリル化反応硬化性シリコーン組成物が好ましい。
【0047】
ヒドロシリル化反応硬化性シリコーン組成物は、
(a)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(b)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、および
(c)ヒドロシリル化反応用触媒
から少なくともなる。
【0048】
(a)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。また、(a)成分中のケイ素原子に結合するその他の基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基:ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基;クロロフェニル基、フロロフェニル基等のハロゲン置換アリール基等の脂肪族不飽和結合を有さないハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基が例示される。
【0049】
(a)成分の分子構造としては特に限定されず、例えば、直鎖状、環状、一部分岐を有する直鎖状、分岐状が挙げられる得られるシリコーン硬化物に十分な硬度と強度を付与できることから、(a)成分は、分岐状のオルガノポリシロキサンを含むことが好ましい。また、(a)成分の粘度は限定されないが、好ましくは、25℃において1〜10,000mPa・sの範囲内である。
【0050】
(b)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基:ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基;クロロフェニル基、フロロフェニル基等のハロゲン置換アリール基等の脂肪族不飽和結合を有さないハロゲン置換または非置換の一価炭化水素基が例示される。(b)成分の分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状、環状、一部分岐を有する直鎖状、分岐状が挙げられる。(b)成分の粘度は特に限定されないが、好ましくは、25℃において1〜10,000mPa・sの範囲内である。
【0051】
(b)成分の含有量は上記の組成物を硬化させるに十分な量であればよく、好ましくは、(a)成分中のアルケニル基1モルに対して、(b)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.3〜10モルの範囲内となる量である。これは、(b)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、硬化を十分に行うことができるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られるシリコーン硬化物の機械的強度が向上するからである。
【0052】
(c)成分は、上記の組成物の架橋反応を促進するためのヒドロシリル化反応用触媒であり、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が挙げられ、好ましくは、白金系触媒である。このヒドロシリル化反応用白金系触媒としては、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金とジケトン錯体、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体が例示される。
【0053】
(c)成分の含有量は、触媒量であり、具体的には、(a)成分100万質量部に対して、(c)成分中の金属原子が1〜1,000質量部の範囲内となる量であることが好ましくは、さらには、1〜100質量部の範囲内となる量であることが好ましい。
【0054】
また、上記組成物には、その他の任意の成分として、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−フェニル−1−ブチン−3−オール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、ベンゾトリアゾール等のヒドロシリル化反応抑制剤を含有してもよい。このヒドロシリル化反応抑制剤の含有量は、上記組成物に対して、質量単位で10〜50,000ppmの範囲内であることが好ましい。
【0055】
また、上記組成物を硬化して得られるシリコーン硬化物を光半導体装置用の光反射材として使用する場合には、その白色度を高めるために、上記組成物は白色顔料を含有することが好ましい。この白色顔料としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ジルコン、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化アンチモンが挙げられ、光反射率と隠蔽性が高いことから、酸化チタンが好ましく、UV領域の光反射率が高いことから、酸化亜鉛、チタン酸バリウムが好ましい。この白色顔料の平均粒径や形状は限定されないが、平均粒径は0.05〜10.0μmの範囲内であることが好ましく、特に、0.1〜5.0μmの範囲内であることが好ましい。また、この白色顔料は、(a)成分への分散性を高めるため、シランカップリング剤、シリカ、アルミナ等で表面処理してもよい。
【0056】
白色顔料の含有量は、(a)成分と(b)成分の合計100質量部に対して50質量部以上であり、好ましくは、60質量部以上である。これは、上記下限以上であると、得られる硬化物の光反射率が良好であるからである。
【0057】
また、上記組成物には、得られるシリコーン硬化物の寸法安定性を向上させたり、その線膨張率を低下さるため、上記組成物に上記白色顔料以外の無機系充填剤を含有してもよい。この無機系充填剤としては、例えば、球状シリカ、非球状シリカ、ガラスファイバーが挙げられる。
【0058】
球状シリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、溶融シリカ、爆燃シリカが挙げられる。上記組成物への充填性が良好であることから、溶融シリカが好ましい。球状シリカの粒径は限定されないが、平均粒径は0.1〜100μmの範囲内であることが好ましく、特に、0.5〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0059】
非球状シリカとしては、石英粉末、ガラスビーズが例示され、好ましくは、石英粉末である。非球状シリカの平均粒径は限定されないが、0.1〜100μmの範囲内であることが好ましく、特に、0.5〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0060】
ガラスファイバーとしては、チョップドガラスファイバー、ミルドガラスファイバーが例示され、好ましくは、ミルドガラスファイバーである。ガラスファイバーの形状は限定されないが、ファイバー径が1〜50μmの範囲内であることが好ましく、特に、5〜20μmの範囲内であることが好ましく、また、そのファイバー長が5〜500μmの範囲内であることが好ましく、特に、10〜300μmの範囲内であることが好ましい。
【0061】
この無機系充填剤の含有量は、(a)成分と(b)成分の合計100質量部に対して100質量部以上であることが好ましく、さらには、120質量部以上であることが好ましい。これは、無機系充填剤の含有量が上記上限以下であると、得られるシリコーン硬化物の線膨張率が低く、寸法安定性が良好であるからである。
【0062】
なお、上記白色顔料および上記白色顔料以外の無機系充填剤の合計の含有量は、(a)成分と(b)成分の合計100質量部に対して700質量部以下であることが好ましく、さらには、600質量部以下であることが好ましい。これは、白色顔料と無機系充填剤の合計の含有量が上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の取扱作業性が良好であるからである。
【0063】
本発明の方法では、光半導体装置における基板上にシリコーン硬化物からなる枠材または反射材を形成する方法として好適である。この基板としては、例えば、表面に電極が形成されたアルミナ等の絶縁性基板;アルミナ、銅、ニッケル等の金属製電極(リード)あるいはその表面が銀メッキされた金属製電極が挙げられる。
図5では、金属製電極(リード)からなる基材5にシリコーン硬化物7からなる反射材を形成した光半導体装置用の基板を示している。このような基板のリード上にLEDチップをダイボンディングし、LEDチップを封止した後、反射材と基板をダイシングして個片の光半導体装置とすることができる。
【実施例】
【0064】
本発明の金型表面離型処理用シリコーンゴム組成物、およびシリコーン硬化物の形成方法を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中、Me、Ph、Viは、それぞれメチル基、フェニル基、ビニル基を示す。また、粘度は25℃における値である。
【0065】
実施例において、次の成分を用いた。
(A)成分として
(A−1):平均組成式:
Vi
0.002Me
1.998SiO
1.000
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位99.85モル%とメチルビニルシロキサン単位0.15モル%からなり、重合度が5,000である。)
【0066】
(B)成分として
(B−1):BET比表面積が300m
2/gである湿式法シリカ微粉末
【0067】
(C)成分として
(C−1):平均単位式:
Me
3SiO(Me
2SiO)
3(MeHSiO)
5SiMe
3
で表される、粘度25mm
2/gの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体
【0068】
(D)成分として
(D−1):塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(白金金属含有量=1質量%)
【0069】
(E)成分として
(E−1):ステアリン酸カルシウム(川村化成製;融点=152℃、酸価=0.5mg/g未満)
(E−2):モンタン酸カルシウム(クラリアント製のリコモントCaV102;融点=147℃、酸価=3.5mg/g)
(E−3):ステアリン酸アルミニウム(川村化成製のアルステ33;融点=140℃、酸価=9.0mg/g)
(E−4):モンタン酸ナトリウム(クラリアント製のリコモントNaV101;融点=220℃、酸価=1.0mg/g)
(E−5):フッ素系固形離型剤(ダイキン工業製のFB−962(フッ素系ポリマー);融点=45〜50℃、酸価=0.5mg/g未満)
(E−6):PVDF(アルケマ製のkynar Flex 2750−00;融点=130℃、酸価=0.5mg/g未満)
(E−7):PTFE−PEアロイ(Shamlock製のfluoroslip511;融点=120℃、酸価=0.5mg/g未満)
(E−8):PTFE(住友3M製のTF9205;融点=320℃、酸価=0.5mg/g未満)
(E−9):モンタン酸ワックス(クラリアント製のOP−E;融点=80℃、酸価=15mg/g)
(E−10):PEワックス(三井化学製のサンワックス;融点=120℃、酸価=0.5mg/g未満)
(E−11):加藤洋行製のカルナウバワックス(融点=80℃、酸価=20mg/g)
(E−12):加藤洋行製のサゾールワックス(融点=80℃、酸価=0.5mg/g未満)
(E−13):特殊脂肪酸エステル(理研ビタミン製のリケスターEW−440A;融点=80℃、酸価=0.5mg/g未満)
【0070】
なお、(E)成分の酸価はJIS−0070−1992に規定されている中和滴定法により測定した。試料の溶解を促進するために、溶剤としてキシレンを使用した。
【0071】
(F)成分として
(F−1):式:
Me
3SiO(Me
2SiO)
65SiMe
3
で表される、粘度100mm
2/gの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン
(F−2):式:
Me
3SiO(Me
2SiO)
600SiMe
3
で表される、粘度10,000mm
2/gの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン
【0072】
(G)ヒドロシリル化反応抑制剤として
(G−1):1−エチニル−シクロヘキサノール
【0073】
[実施例1〜13、比較例1〜8]
(A)成分と(B)成分を表1および2に記載の量、および可塑剤として、粘度60mm
2/sの分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン 3.3質量部をニーダーミキサーに投入して、加熱下に混練してシリコーンゴムベースコンパウンドを調製した。
【0074】
次に、前記シリコーンゴムベースコンパウンドに対して、(C)成分〜(F)成分、最後に(G)成分をそれぞれ表1および2に記載の量となるように二本ロールで混合した後、二本ロールの間幅を3mmに調整して、金型表面離型処理用シリコーンゴム組成物からなるシートを作製した。
【0075】
[参考例1−ヒドロシリル化反応硬化性シリコーン組成物の調製]
平均単位式:
(MeViSiO
2/2)
0.25(Ph
2SiO
2/2)
0.30(PhSiO
3/2)
0.45(HO
1/2)
0.02
で表されるメチルビニルフェニルポリシロキサン 48.4質量部、平均単位式:
(Me
2ViSiO
1/2)
0.20(PhSiO
3/2)
0.80(HO
1/2)
0.01
で表されるメチルビニルフェニルポリシロキサン 51.6質量部、平均式:
ViMe
2SiO(MePhSiO)
17.5SiViMe
2
で表されるジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン 12.9質量部、式:
(HMe
2SiO)
2SiPh
2
で表される1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン 29.0質量部(上記のメチルビニルフェニルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサンのビニル基の合計1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.94モルとなる量)、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン溶液(本組成物に対して白金金属が質量単位で5ppmとなる量)、1−エチニル−1−シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位で250ppmとなる量)、平均一次粒子径0.2μmの酸化チタン(堺化学工業製のSX−3103) 118質量部、及び平均粒子径15μmの球状シリカ(新日鉄マテリアルズ マイクロン社製のHS−202) 213質量部を均一に混合して、ヒドロシリル化反応硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0076】
[実施例14〜26、比較例9〜16]
実施例1〜13、比較例1〜8でそれぞれ調製した金型表面離型処理用シリコーンゴム組成物7gを切り取り、150℃に設定されたトランスファー成型機の成型用金型面に置き、そのまま5分間圧縮成形を行った後、硬化物を排出した。硬化物を排出後の金型表面を観察した。その後、参考例1で調製した硬化性シリコーン組成物を150℃、2分の成形条件でリードフレームと一体成形を30回連続して行い、金型への貼り付き等がなく連続して成形できる回数を確認した。その結果を表3および表4に示した。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】