特許第6535163号(P6535163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535163
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】信号処理回路及びイメージセンサ
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/378 20110101AFI20190617BHJP
   H03M 1/54 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   H04N5/378
   H03M1/54
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-246054(P2014-246054)
(22)【出願日】2014年12月4日
(65)【公開番号】特開2015-173432(P2015-173432A)
(43)【公開日】2015年10月1日
【審査請求日】2017年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-33138(P2014-33138)
(32)【優先日】2014年2月24日
(33)【優先権主張国】JP
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100185225
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 恭一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正英
(72)【発明者】
【氏名】井口 義則
(72)【発明者】
【氏名】大竹 浩
(72)【発明者】
【氏名】萩原 啓
【審査官】 梅本 達雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−276071(JP,A)
【文献】 特開2007−235488(JP,A)
【文献】 特開2008−072512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/378
H03M 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子で生成された電荷量をアナログ/デジタル変換する信号処理回路であって、
光電変換素子と並列接続される蓄積容量と、
前記蓄積容量の電圧と基準電圧とを比較し、両者が一致したときにパルスを出力する比較器と、
前記比較器の出力により、前記蓄積容量の電圧をリセット電圧に戻すリセット手段と、
を備えており、前記パルスをカウントして出力する信号処理回路において、
前記光電変換素子と前記蓄積容量との間に転送ゲートトランジスタを設け、
前記転送ゲートトランジスタは前記比較器の出力に基づいて制御され、前記リセット手段の動作期間中はOFFとなり、
基板電位或いは接地電位を基準とした、前記光電変換素子のビルトインポテンシャルVB、前記転送ゲートトランジスタがONしたときのチャネルのポテンシャルVCH、前記蓄積容量のリセット電圧VR、及び前記比較器の基準電圧VREFは、
|VR|>|VREF|>|VCH|>|VB
の関係となるように設定されることを特徴とする信号処理回路。
【請求項2】
光電変換素子で生成された電荷量をアナログ/デジタル変換する信号処理回路であって、
光電変換素子と並列接続される蓄積容量と、
前記蓄積容量の電圧を入力とし、所定の反転電圧で出力を反転するインバータ回路と、
前記インバータ回路の出力により、前記蓄積容量の電圧をリセット電圧に戻すリセット手段と、
を備えており、前記インバータ回路の出力パルスをカウントして出力する信号処理回路において、
前記光電変換素子と前記蓄積容量との間に転送ゲートトランジスタを設け、
前記転送ゲートトランジスタは前記インバータ回路の出力に基づいて制御され、前記リセット手段の動作期間中はOFFとなることを特徴とする信号処理回路。
【請求項3】
請求項又はに記載の信号処理回路において、前記転送ゲートトランジスタがOFFとなってから所定時間後に前記リセット手段がONとなり、前記リセット手段がOFFとなってから所定時間後に前記転送ゲートトランジスタがONとなることを特徴とする信号処理回路。
【請求項4】
請求項に記載の信号処理回路において、前記転送ゲートトランジスタは、比較器又はインバータ回路の出力パルスと該出力パルスを遅延させた遅延パルスの少なくとも一方が出力されている期間はOFFとなり、前記リセット手段は、比較器又はインバータ回路の出力パルスと該出力パルスを遅延させた遅延パルスの両者が出力されている期間にONとなることを特徴とする信号処理回路。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の信号処理回路を各画素に備え、光電変換信号をデジタル信号として出力する画素並列信号処理方式のイメージセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理回路及びイメージセンサ(撮像素子)に関し、特に、イメージセンサの各画素において、光電変換した信号をアナログ/デジタル変換する信号処理回路と、その信号処理回路を用いたイメージセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、イメージセンサは、光電変換された信号電荷をアナログ信号として処理していたが、信号電荷(電荷量)をイメージセンサ内でAD(アナログ/デジタル)変換し、デジタルデータとして出力することにより、光電変換のダイナミックレンジを拡大するとともに、出力信号の処理を容易化することができる。
【0003】
これまで、縦横にアレイ状に並んだ画素の列毎にAD変換回路を共有する方式の列並列信号処理イメージセンサが作製されている。しかし、このような一列の画素のAD変換処理を一つのAD変換回路で行う構成では、イメージセンサの高精細度化に伴って(すなわち、一列あたりの画素数の増大に伴って)、AD変換処理にかかる時間が長時間化し、動画イメージ処理において1フレームレートの時間内で全画素の信号処理を行うことが困難になってきている。
【0004】
この問題に対処するため、動画用イメージセンサとして、各画素内にAD変換回路を備え、光電変換した信号を全画素並列に出力することができる画素並列信号処理方式のイメージセンサが提案されている。画素並列信号処理イメージセンサは、従来の列並列信号処理イメージセンサの欠点である走査線数とフレームレートのトレードオフを解消することができるため、将来の高性能イメージセンサの有力な候補として研究が進められている。中でも、非特許文献1に記載のイメージセンサは、1ビット型AD変換回路(1bit ADC)と称される回路を搭載しており、イメージセンサのダイナミックレンジを格段に向上することができるとされている。
【0005】
非特許文献1で提案されているイメージセンサの信号処理回路の動作を、以下に説明する。非特許文献1中のFig.3に回路が図示されているが、説明を簡単にするため、回路動作に本質的ではないトランジスタ(Tr1、Tr3、Tr4)とそれらを含むフィードバック回路やカウンタの詳細を省略した回路(図8)を用いて説明する。
【0006】
図8に、非特許文献1に記載された従来の1ビット型AD変換回路(1bit ADC)を用いた信号処理回路を示す。
【0007】
91は光電変換素子としてのフォトダイオード(PD)であり、92は電圧Vddをフォトダイオード91の電極に印加するためのトランジスタ(TR)である。94はインバータ群(インバータ回路)であり、インバータ(Inv_1、Inv_2,・・・Inv_n)が奇数段接続されている。フォトダイオード91とトランジスタ92との接続点93の電位がインバータ群94に入力される。インバータ群94の出力は、AD変換回路出力(ADC_OUT)として、カウンタ95に入力されるとともに、トランジスタ92のゲート電極に印加される。カウンタ95は、電圧Vrsが印加され、AD変換回路出力(ADC_OUT)のパルス数をカウントして、例えば8ビットのカウンタ出力として出力する。
【0008】
次に、図8の信号処理回路の動作を説明する。
【0009】
(1)はじめに、フォトダイオード91の電位がリセット(≒Vdd)された状態で、初段のインバータ(Inv_1)の入力がHiで出力がLo、2段目のインバータ(Inv_2)の出力がHi、最終段のインバータ(Inv_n)の出力、すなわちAD変換回路出力(ADC_OUT)がLoであり、トランジスタ(TR)92がオフ(OFF)状態になっているとする。[初期化状態]
【0010】
(2)フォトダイオード91に光が入射すると、光電変換により生成した電子がフォトダイオード91内に蓄積して、フォトダイオード91の電位(接続点93の電圧)が下がる。
【0011】
(3)フォトダイオード91の電位(接続点93の電圧)が初段のインバータ(Inv_1)の反転電圧(VT)に達するとインバータ(Inv_1)の出力がHiに反転する。インバータはn段(nは奇数)接続されており、順次出力が反転して伝達され、最終段のインバータ(Inv_n)の出力、すなわち、AD変換回路出力(ADC_OUT)がHiとなる。なお、インバータが1段ではなくn段接続されているのは、n段のインバータによる遅延を利用して、回路動作を安定化するためである。
【0012】
(4)AD変換回路出力(ADC_OUT)がHiになると、トランジスタ92がオン(ON)状態になり、フォトダイオード91の電極に電圧Vddが印加され、フォトダイオード91が再度リセットされる。
【0013】
(5)フォトダイオード91がリセットされると、初段のインバータ(Inv_1)の入力がHi、AD変換回路出力(ADC_OUT)がLoになり、(1)に戻る。
【0014】
その後、上記(1)〜(5)が繰り返され、インバータ群94の出力がHiとLoを繰り返す。フォトダイオード91へ入射する光量が多ければフォトダイオード91の電位変化が速くなり、インバータ群94の反転タイミングが早くなる。したがって、動画の1フレーム期間内にAD変換回路出力(ADC_OUT)には光量に比例した数のパルスが発生する。
【0015】
カウンタ95では逐次パルスを積算しており、1フレーム期間終了後に、カウンタ出力を読み出す。非特許文献1の試作例では、カウンタは8ビットであるが、1bit ADCの能力としては、60フィールド/秒の動作で18〜19ビットのダイナミックレンジを実現できると記述されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】F.Andoh et.al, "A Digital Pixel Image Sensor for Real-Time Readout", IEEE Transaction on electron devices, (2000年), vol.47, No.11, pp.2123-2127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来の1ビット型AD変換回路(1bit ADC)は、フォトダイオードの電圧がインバータの反転電圧VTに達するまでは電圧反転が起こらず、パルスが出力されない。インバータを反転させるのに必要な電荷数N(最小検出電荷数)は、以下で表わされる。ここで、CPDはフォトダイオードの静電容量、VTはインバータの反転電圧(Vddを基準とする電圧)、eは電気素量(1.6×10-19 C)である。
【0018】
N=CPD・VT/e (式1)
【0019】
静電容量CPDは、フォトダイオード(PD)のpn接合を階段接合で近似すると、以下の式で表わされる。
【0020】
PD=ε0・εr・S/W (式2)
【0021】
なお、ε0は真空の誘電率(8.85×10-12 F/m)、εrは比誘電率で、シリコンフォトダイオードの場合は12、Sはフォトダイオードの面積、Wはフォトダイオードの空乏層厚である。動画用イメージセンサの一例として、S=16μm2、W=2μmとして計算するとCPD=0.85fFとなる。1bit ADCを安定に動作させるためには、インバータの反転電圧VTは少なくとも10mV程度とするのが妥当である。これらの値を(式1)に代入すると、
【0022】
N=0.85×10-15×10-2/1.6×10-19=53(個)
【0023】
と試算される。同程度のフォトダイオードを持つ現在主流の列並列信号処理方式のCMOSイメージセンサでは、10個以下の電子を検出できるのが一般的であるから、1bit ADCを用いた画素並列信号処理イメージセンサは、現在主流のCMOSイメージセンサに比べ、電子の検出感度が低い(最小検出電荷数が大きい)といった問題がある。
【0024】
検出感度を向上させるため、すなわち、より少数の電荷数Nを検出するためには、(式1)から、CPDやVTを小さくすることが考えられる。そして、静電容量CPDを小さくするためには、(式2)より、面積Sを小さくするか、空乏層厚Wを大きくすればよい。しかし、フォトダイオードの面積Sを小さくすると、同じ照度であっても単位時間当たりにフォトダイオードが受けるフォトン数が減るため、光電変換で発生する電子数が減る。したがって、電子の検出感度が向上したとしても、より低照度での撮影が可能になるわけではなく、イメージセンサとしての撮像感度の向上にはつながらない。また、pn接合の空乏層幅Wを大きくすると、暗電流が増加し、イメージセンサのS/N比が低下する。したがって、フォトダイオードの容量を小さくすることは好ましくない。
【0025】
一方、インバータの反転電圧VTは、回路を安定に動作させるためには、必要以上に低電圧化することが困難であり、VTを小さくして電子の検出感度を向上させることも現実的ではない。したがって、容易に考えられる方法によって従来の1bit ADCを用いた画素並列信号処理イメージセンサの電子の検出感度を向上させることは困難である。
【0026】
従って、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、AD変換回路を用いた信号処理回路において、従来に比べ、電子(画像信号)の検出感度を向上させることが可能な信号処理回路及び、その回路を用いたイメージセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題を解決するために本発明に係る信号処理回路は、フォトダイオードとは別個の蓄積容量を備え、フォトダイオードで発生した電子を蓄積容量に転送することで少数の電荷の検出を可能にするものである。
【0028】
本発明に係る信号処理回路は、光電変換素子で生成された電荷量をアナログ/デジタル変換する信号処理回路であって、光電変換素子と並列接続される蓄積容量と、前記蓄積容量の電圧と基準電圧とを比較し、両者が一致したときにパルスを出力する比較器と、前記比較器の出力により、前記蓄積容量の電圧をリセット電圧に戻すリセット手段と、を備えており、前記パルスをカウントして出力する信号処理回路において、前記光電変換素子と前記蓄積容量との間に転送ゲートトランジスタを設け、前記転送ゲートトランジスタは前記比較器の出力に基づいて制御され、前記リセット手段の動作期間中はOFFとなり、基板電位或いは接地電位を基準とした、前記光電変換素子のビルトインポテンシャルVB、前記転送ゲートトランジスタがONしたときのチャネルのポテンシャルVCH、前記蓄積容量のリセット電圧VR、及び前記比較器の基準電圧VREFは、|VR|>|VREF|>|VCH|>|VB|の関係となるように設定されることを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る信号処理回路は、光電変換素子で生成された電荷量をアナログ/デジタル変換する信号処理回路であって、光電変換素子と並列接続される蓄積容量と、前記蓄積容量の電圧を入力とし、所定の反転電圧で出力を反転するインバータ回路と、前記インバータ回路の出力により、前記蓄積容量の電圧をリセット電圧に戻すリセット手段と、を備えており、前記インバータ回路の出力パルスをカウントして出力する信号処理回路において、前記光電変換素子と前記蓄積容量との間に転送ゲートトランジスタを設け、前記転送ゲートトランジスタは前記インバータ回路の出力に基づいて制御され、前記リセット手段の動作期間中はOFFとなることを特徴とする。
【0032】
また、本発明に係る信号処理回路は、前記転送ゲートトランジスタがOFFとなってから所定時間後に前記リセット手段がONとなり、前記リセット手段がOFFとなってから所定時間後に前記転送ゲートトランジスタがONとなることが望ましい。
【0033】
また、本発明に係る信号処理回路において、前記転送ゲートトランジスタは、比較器又はインバータ回路の出力パルスと該出力パルスを遅延させた遅延パルスの少なくとも一方が出力されている期間はOFFとなり、前記リセット手段は、比較器又はインバータ回路の出力パルスと該出力パルスを遅延させた遅延パルスの両者が出力されている期間にONとなることが望ましい。
【0034】
また、本発明に係る画素並列信号処理方式のイメージセンサは、上記の信号処理回路を各画素に備え、光電変換信号をデジタル信号として出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、フォトダイオードの静電容量CPDを小さくしたり、インバータの反転電圧VTを必要以上に小さくしたりすることなく、電子の検出感度を向上させ、画素並列信号処理イメージセンサの撮像感度を改善することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の第1の実施例の信号処理回路である。
図2】本発明の第1の実施例の模式的な回路構成とポテンシャル図である。
図3】本発明の第1の実施例のタイミングチャートである。
図4】本発明の第2の実施例の信号処理回路である。
図5】本発明の第3の実施例の信号処理回路である。
図6】本発明の第3の実施例のタイミングチャートである。
図7】本発明のイメージセンサの概念図である。
図8】従来の1ビット型AD変換回路を用いた信号処理回路である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0038】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1は、検出感度を向上させた信号処理回路である。
【0039】
(第1の実施例)
図1に本発明の第1の実施例としてのイメージセンサの信号処理回路を示す。本発明の回路の特徴的な部分は、フォトダイオードで発生した信号電荷を蓄積する蓄積容量を有することである。
【0040】
回路構成を説明する。1は光電変換素子としてのフォトダイオード(PD)であり、例えば、暗電流が少ない埋め込み型フォトダイオードで構成する。なお、光電変換素子の形態はこれに限られず、基板表面に形成された通常のPN接合フォトダイオードや、MOS型フォトダイオード、更には、薄膜型のフォトダイオード等、光電変換機能を有する素子であれば、任意のものが利用できる。
【0041】
2は、フォトダイオード1と並列に接続される蓄積容量(FD)であり、フォトダイオード1で光電変換により発生した信号電荷を蓄積する。フォトダイオード1及び蓄積容量2の一つの電極には、基準電位(例えば、基板電位)が与えられている。蓄積容量2の容量は、フォトダイオード1よりも小さくすることにより、光検出感度を高めることができる。蓄積容量2の構造は、基板表面に形成された通常のPN接合容量やMOS容量であっても良く、また、積極的に容量素子を形成せずに、寄生容量を利用することも可能である。
【0042】
3は、フォトダイオード1で生成した信号電荷を蓄積容量2に転送する転送ゲートとして機能するトランジスタ(TR1)である。この転送ゲートトランジスタ(TR1)3はエンハンスメント型であり、本実施例では、トランジスタ(TR1)3のゲート電極に、後述するインバータ(Inv)6の出力パルスが印加され、ON/OFF制御される。蓄積容量2とトランジスタ(TR1)3の接続点には、信号電荷に基づく蓄積容量(FD)2の電圧VFDが現れる。
【0043】
4は、蓄積容量2の電極電位をリセットするためのリセットトランジスタ(TR2)である。ゲート電極に印加される信号(比較器5の出力パルス)に基づいて導通(ON)状態となり、リセット電圧VRと蓄積容量2の電極とを接続し、蓄積容量2に蓄積された信号電荷を排出すると共に、蓄積容量(FD)2の電位をリセット(VR)する。リセットトランジスタ(TR2)4は、リセット電圧源とともに、本発明のリセット手段を構成する。
【0044】
5は比較器(Comp)であり、蓄積容量(FD)2の電圧VFDと基準電圧VREFを比較して、両者が一致したときパルスを出力する。このパルスは、AD変換回路出力(ADC_OUT)として、カウンタ(図示せず)に入力されるとともに、リセットトランジスタ(TR2)4のゲート電極に印加され、また、インバータ(Inv)6に入力される。
【0045】
6はインバータ(Inv)であり、比較器(Comp)5の出力パルス(ADC_OUT)を受けてこれを反転し、転送ゲートトランジスタ(TR1)3のゲート電極に印加する。したがって、本実施例においては、転送ゲートトランジスタ(TR1)3とリセットトランジスタ(TR2)4は、交互にON/OFFする。
【0046】
なお、図1の回路構成において、基板電位或いは接地電位を基準とした、フォトダイオード(PD)1のビルトインポテンシャルVB、トランジスタ(TR1)3がONしたときのチャネルのポテンシャルVCH、蓄積容量(FD)2のリセット電圧VR、及び比較器(Comp)の基準電圧VREFは、次の関係となるように設定される。
【0047】
|VR|>|VREF|>|VCH|>|VB
【0048】
各電圧は、上記関係を保つように適宜設定することができるが、例えば、ビルトインポテンシャルVBを0.6V程度とし、トランジスタ(TR1)3のチャネルポテンシャルVCHを1V前後とし、リセット電圧VRを3V程度とし、基準電圧VREFをリセット電圧VRに近い電圧に設定することができる。この関係により、フォトダイオード1で生成された信号電荷が蓄積容量2に流れ込む。また、後述するように、基準電圧VREFとリセット電圧VRとの差を小さくすることにより、光検出感度を向上させることができる。
【0049】
次に、図2の模式的な回路構成とポテンシャル図、及び図3のタイミングチャートを用いて、図1の信号処理回路をより詳細に説明する。
【0050】
図2(a)は、図1の信号処理回路の一部をpn接合領域とゲート電極等で表わした模式的な回路構成であり、図1と同じ構成は同じ符号を付してある。ただし、図2(a)は本発明の各素子構造を限定するものではない。光電変換素子は、基板(例えば、p型半導体基板)に形成された、例えば、n型半導体領域11と表面の比較的高濃度のp型半導体領域12を有する埋め込み型のフォトダイオード(PD)1からなる。蓄積容量(FD)2は、基板に形成されたn型不純物領域21からなり、基板とn型不純物領域21との間のpn接合容量を蓄積容量として利用する。フォトダイオード1と蓄積容量2との間の基板表面には、ゲート絶縁膜(図示せず)を介してゲート電極31が設けられ、ゲート電極31とn型不純物領域11及び21とにより、転送ゲートトランジスタ(TR1)3を構成する。蓄積容量2を構成する不純物領域21の近傍には、リセット電圧(VR)に接続されたn型不純物領域42が設けられている。n型不純物領域42と蓄積容量2との間の基板表面には、ゲート絶縁膜(図示せず)を介してゲート電極41が設けられ、ゲート電極41とn型不純物領域21及び42とにより、リセットトランジスタ(TR2)4を構成する。比較器5及びインバータ6の接続関係は、図1と同じである。
【0051】
図2(b)及び(c)は、図2(a)の模式的な回路構成に対応するポテンシャル図である。基板の電位を基準として、図の下向きに各領域の正の電位をとり、電子に対するポテンシャルを表示している。図2(b)は、転送ゲートトランジスタ3が非導通(OFF)でリセットトランジスタ4が導通(ON)したときの状態[リセット状態]、図2(c)は、リセットトランジスタ4がOFFであり、転送ゲートトランジスタ3が導通(ON)して、蓄積容量2に電荷蓄積を行っているときの状態[蓄積状態]を示している。
【0052】
また、図3において、(a)はAD変換回路出力(ADC_OUT)、(b)は転送ゲートトランジスタ(TR1)のON/OFF、(c)はリセットトランジスタ(TR2)のON/OFF、(d)は蓄積容量(FD)の電位VFD、のそれぞれのタイミングチャートであり、リセット状態と蓄積状態のそれぞれの変化を示す。
【0053】
以下、回路動作について説明する。
【0054】
(1)AD変換回路出力(ADC_OUT)にパルスが発生した状態から動作を説明する。AD変換回路出力(ADC_OUT)にHiのパルスが発生すると、インバータ6を介した反転パルス(Lo)がゲート電極31に印加されて、転送ゲートトランジスタ(TR1)3が非導通(OFF)となり、また、AD変換回路出力パルスがゲート電極41に印加され、リセットトランジスタ(TR2)4が導通(ON)する。この結果、フォトダイオード(PD)1が蓄積容量(FD)2から切り離されると同時に、領域21の電位がリセット電圧VRに等しくなり、蓄積容量(FD)2の電位がリセット(VR)される。この状態が、図2(b)に示す「リセット状態」であり、図3において、(a)のAD変換回路出力がHi、(b)の転送ゲートトランジスタ(TR1)3がOFF、(c)のリセットトランジスタ(TR2)がON、(d)の蓄積容量(FD)の電位がVRの状態である。
【0055】
(2)AD変換回路出力(ADC_OUT)のパルスが立ち下がりLoになると、リセットトランジスタ(TR2)4がOFF状態となり、インバータ6を介した反転パルスにより転送ゲートトランジスタ(TR1)3がON状態となる。リセットトランジスタ4のチャネルのOFF時のポテンシャルにより、領域21と領域42は遮断され、蓄積容量2はポテンシャル井戸となる。この状態でフォトダイオード(PD)1に光が入射すると、フォトダイオード1内で電子が発生するが、トランジスタ(TR1)3のON状態のチャネルポテンシャルはVCHであり、蓄積容量2の電位VFDはほぼリセット電圧VRであり、|VR|>|VCH|>|VB|の関係があるので、発生した電荷は蓄積容量2に転送される。そして、電荷が蓄積されることにより、蓄積容量2の電位VFDが次第に変化する。この状態が、図2(c)に示す「蓄積状態」であり、図3において、(a)のAD変換回路出力がLo、(b)の転送ゲートトランジスタ(TR1)3がON、(c)のリセットトランジスタ(TR2)がOFF、(d)の蓄積容量(FD)の電位VFDが変化して次第に基準電圧VREFに近づく状態である。
【0056】
(3)蓄積容量2の電位VFDが比較器5の基準電圧VREFに達すると、比較器5がAD変換回路出力(ADC_OUT)としてのHiのパルスを発生し、(1)の状態に戻る。蓄積容量2の電位VFDがリセット電圧VRから基準電圧VREFまで変化する時間は、光電変換された電荷量、したがって受光量に応じて短くなる。また、比較器5のパルス幅(Hiの期間)は、蓄積容量2が蓄積電荷を全て放出してリセット電圧(VR)に戻るのに十分な最小時間、リセットトランジスタ4を導通させるように設計することが望ましい。
【0057】
以下、(1)〜(3)が繰り返され、動画の1フレーム期間内にAD変換回路出力(ADC_OUT)には光量に比例した数のパルスが発生する。カウンタ(図示せず)では逐次パルスを積算しており、1フレーム期間終了後に、カウンタ出力を読み出す。
【0058】
この実施例では、リセットトランジスタ(TR2)4がONとなると同時に転送ゲートトランジスタ(TR1)3がOFFとなり、フォトダイオード1の電位がリセット電圧VRとなるのを防止できる。また、リセット期間にフォトダイオード1に光が入射することで発生した電荷を、フォトダイオード1内に一時的に蓄積しておくことができ、その後、リセット期間終了後に電荷を蓄積容量2に転送することにより、フォトダイオード1で発生した電荷を誤差なく検出することができる。
【0059】
従来の1bit ADCでは、フォトダイオードが光電変換と電子の蓄積の両方の機能を担っていたため、電子の検出感度を高める(少数の電子を検出する)ためにはフォトダイオード容量を小さくする必要がある(式1)にもかかわらず、光電変換機能に対しては、フォトダイオードの面積(容量に比例)は一定量が必要であるため、電子の検出感度を向上させることが困難であった。本発明の回路では、光電変換を担うフォトダイオードと、フォトダイオードで発生した電荷を蓄積する蓄積容量を分離しているため、検出感度に密接な関係を有する蓄積容量の大きさを、フォトダイオードと独立に設定できる。また、第1の実施例では、比較器の基準電圧VREFの設定を調整することにより、信号電荷の検出感度を容易に調整することができる。
【0060】
本発明の検出感度について試算する。第1の実施例において、最小電荷検出数Nは、CFDを蓄積容量(FD)の静電容量として次式で表わされる。
【0061】
N=CFD・(VR−VREF)/e (式3)
【0062】
すなわち、蓄積容量をフォトダイオード容量より小さくすることで、従来技術に比べ最小電荷検出数Nを小さくできる。換言すると、従来の1bit ADCに比べると、電子の検出感度をCPD/CFD倍に向上させることができる。例えば、CFDを0.08fFとすれば、(VR−VREF)=10mVとして、N=5個となり、現在主流の列並列信号処理CMOSイメージセンサに劣らない電子の検出感度を得ることができる。一方、本回路は1bit ADCの動作を踏襲しているため、列並列信号処理回路に比べ、広いダイナミックレンジを実現することができる。ダイナミックレンジは、例えば108程度まで可能である。
【0063】
(第2の実施例)
第2の実施例を図4に示す。第2の実施例の信号処理回路は、第1の実施例(図1)において、比較器5をインバータ回路(インバータ群)7に代えたものである。従来の1bit ADCと同様に、インバータ回路7は、インバータ(Inv_1、Inv_2,・・・Inv_n)が奇数段接続されている。蓄積容量2の電位がインバータ回路7の初段のインバータ(Inv_1)に入力される。インバータ回路7の出力は、AD変換回路出力(ADC_OUT)として、カウンタ(図示せず)に入力されるとともに、リセットトランジスタ(TR2)4のゲート電極に印加され、また、インバータ(Inv)6に入力される。
【0064】
第2の実施例の回路動作は、基本的には、図1図2の信号処理回路と同じであるが、リセットトランジスタ4がON状態となる期間は、蓄積容量に蓄積した電荷をリセットトランジスタが放出する時間とインバータ群による遅延時間によって設計される。
【0065】
第2の実施例は、回路を単純なインバータで構成することができ、設計が簡単になる。
【0066】
(第3の実施例)
図5に本発明の第3の実施例としての信号処理回路を示す。また、図6にそのタイミングチャートを示す。第3の実施例は、第1の実施例の転送ゲートトランジスタ3とリセットトランジスタ4のON/OFFの動作タイミングを改良したものである。
【0067】
図5に示す信号処理回路において、フォトダイオード(PD)1、蓄積容量(FD)2、転送ゲートトランジスタ(TR1)3、リセットトランジスタ(TR2)4、及び比較器(Comp)5の回路構成は、図1の第1の実施例と同じである。
【0068】
図5の回路では、比較器(Comp)5の出力、すなわち、AD変換回路出力(ADC_OUT)の出力が分岐され、その1つが遅延回路(Delay)81に接続されている。遅延回路(Delay)81は、入力に対して所定時間(ΔT)遅延した波形(D_OUT)を生成する。したがって、比較器5の出力パルスに対して、立上がり・立下りが所定時間(ΔT)遅延した遅延パルスを出力する。なお、図5においては、遅延回路(Delay)81を偶数個のインバータで構成しているが、所定の遅延時間を生じる任意の回路構成として良い。
【0069】
NOR回路82は、AD変換回路出力(ADC_OUT)の出力パルスと、遅延回路(Delay)81の出力パルス(遅延パルス:D_OUT)が入力され、その出力が転送ゲートトランジスタ(TR1)3のゲート電極に接続される。
【0070】
また、AND回路83は、AD変換回路出力(ADC_OUT)の出力パルスと、遅延回路(Delay)81の出力パルス(遅延パルス:D_OUT)が入力され、その出力がリセットトランジスタ(TR2)4のゲート電極に接続される。
【0071】
図6のタイミングチャートを参照して、図5の信号処理回路の回路動作を説明する。
【0072】
(1)AD変換回路出力(ADC_OUT)にパルスが発生した状態から動作を説明する。AD変換回路出力(ADC_OUT)にHiのパルスが発生すると、そのパルスは、遅延回路(Delay)81、NOR回路82の一方の入力端子、及びAND回路83の一方の入力端子に入力される。NOR回路82は、他方の入力端子の入力に拘らず、直ちにLoのパルスを出力し、このLoパルスがゲート電極31に印加されて、転送ゲートトランジスタ(TR1)3が非導通(OFF)となる。このとき、遅延回路81の出力はまだLoであるため、AND回路83の出力はLoであり、リセットトランジスタ(TR2)4も非導通(OFF)となっている。この結果、フォトダイオード(PD)1と蓄積容量(FD)2が、それぞれ電気的に切り離される。
【0073】
(2)AD変換回路出力(ADC_OUT)がパルスを発生してから、所定時間(ΔT)後に、遅延回路(Delay)81がHiパルスを出力し、NOR回路82の他方の入力端子、及びAND回路83の他方の入力端子に入力される。AND回路83は、AD変換回路出力(ADC_OUT)と遅延回路(Delay)81の出力(D_OUT)のAND演算を行い、Hiのパルスを出力し、このHiパルスがリセットトランジスタ4のゲート電極に印加されて、リセットトランジスタ(TR2)4が導通(ON)する。この結果、蓄積容量(FD)2の電位がリセット電圧VRに等しくなり、リセット状態となる。なお、このとき転送ゲートトランジスタ(TR1)3は非導通(OFF)のままであり、フォトダイオード(PD)1は蓄積容量(FD)2と分離しているから、入射光によりこの期間に光電変換で発生した電荷は、フォトダイオード(PD)1内に保持される。
【0074】
(3)AD変換回路出力(ADC_OUT)の出力がLoレベルに戻ると、AND回路83のパルスもLoレベルとなり、このLoパルスがリセットトランジスタ4のゲート電極に印加されて、リセットトランジスタ(TR2)4が非導通(OFF)となる。このとき転送ゲートトランジスタ(TR1)3は非導通(OFF)のままである。この結果、蓄積容量(FD)2はポテンシャル井戸となり、蓄積容量2はリセット電圧VRが維持される。
【0075】
(4)AD変換回路出力(ADC_OUT)の出力がLoレベルに戻ってから、所定時間(ΔT)後に、遅延回路(Delay)81がLoレベルに戻る。NOR回路82は、AD変換回路出力(ADC_OUT)と遅延回路(Delay)81の出力(D_OUT)のNOR演算を行い、Hiのパルスを出力し、このHiパルスが転送ゲートトランジスタ3のゲート電極に印加されて、転送ゲートトランジスタ(TR1)3が導通する。このとき、リセットトランジスタ(TR2)4は非導通(OFF)である。この状態で、フォトダイオード(PD)1への入射光によりフォトダイオード1内で発生した電荷(電子)は、トランジスタ(TR1)3のチャネルを経て、蓄積容量2に転送される。そして、電荷が蓄積されることにより、蓄積容量2の電位VFDが次第に変化する、蓄積状態となる。
【0076】
(5)蓄積容量2に所定量の電荷が蓄積し、蓄積容量2の電位VFDが比較器5の基準電圧VREFに達すると、比較器5がAD変換回路出力(ADC_OUT)としてのHiのパルスを発生し、(1)の状態に戻る。なお、このとき両トランジスタ(3,4)は非導通であって蓄積容量2はフローティングであり、蓄積容量(FD)2の電圧は基準電圧VREFに維持され、その後リセットトランジスタ(TR2)4が導通したとき、リセット電圧VRとなることは、上述したとおりである。
【0077】
第1の実施例では、AD変換回路出力(ADC_OUT)にパルスが発生した際、転送ゲートトランジスタ(TR1)3がOFFになると同時にリセットトランジスタ(TR2)4がONとなるが、回路の配線による遅延などが原因で、転送ゲートトランジスタ(TR1)3がOFFになっていないにも拘らず、リセットトランジスタ(TR2)4がONとなる時間が発生する恐れがある。もし一瞬でも転送ゲートトランジスタ(TR1)3とリセットトランジスタ(TR2)4が同時にONとなると、フォトダイオード(PD)1がリセット電圧VRにリセットされてしまい、上述のフォトダイオード(PD)1から蓄積容量(FD)2への電荷転送動作が正しく行われなくなってしまう。第3の実施例の回路によれば、転送ゲートトランジスタ(TR1)3のOFF開始からリセットトランジスタ(TR2)4のON開始までの期間、およびリセットトランジスタ(TR2)4のON終了から転送ゲートトランジスタ(TR1)3のOFF終了までの期間を、遅延回路(Delay)81で決まるΔTに確定させることができる。これにより、フォトダイオード(PD)を蓄積容量(FD)から確実に切り離した状態で、蓄積容量(FD)の電位をリセット電圧VRにリセットすることができるため、第1の実施例に比べて、安定した動作が可能となる。
【0078】
なお、本実施例では蓄積容量(FD)2の電位を検出するために比較器(Comp)5を利用したが、第2の実施例と同様に、比較器5に代えてインバータ回路(奇数段のインバータ群)7を用いた回路構成も可能である。
【0079】
また、本発明では信号処理回路を構成するトランジスタをn型として記述したが、p型トランジスタを用いた回路構成も可能である。このときは、パルスのHi/LoとトランジスタのON/OFFの関係が反対となるため、必要に応じて、NOR回路をOR回路に変更し、AND回路をNAND回路に変更する等、回路構成に適宜の変更を行うこととなる。
【0080】
また、本発明では電子を検出する回路を想定して説明したが、同様の回路構成で半導体領域の導電型や電源電圧の符号を変えることで、正孔を検出する回路も可能であることは自明である。
【0081】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明をする。図7に、本発明の第2の実施形態としてのイメージセンサ(撮像素子)100の概念図を示す。
【0082】
図7のイメージセンサ100は、各画素がデジタルデータを出力する画素並列信号処理方式のイメージセンサである。
【0083】
イメージセンサ100のセンサ領域101には、画素103が縦横に配列されている。各画素103は、その内部に信号処理回路を備えており、光電変換素子としてのフォトダイオード(PD)104と、フォトダイオード104からの信号電荷の量をデジタルデータ化するAD変換回路(ADC)105と、AD変換回路出力(ADC_OUT)のパルス数をカウントし、所定のビット数のデータとして出力するカウンタ106とを有している。各画素103の信号処理回路は、第1乃至第3の実施例のいずれかの信号処理回路である。
【0084】
各画素からの出力は、出力処理回路102で処理され、デジタルデータの撮像データとして出力される。この出力処理回路102では、例えば、各画素103からのデータを一度バッファメモリ等に蓄積した後、順次読み出しする処理が行われる。また、図示しない走査回路により、全画素の出力データを順次走査処理して出力することもでき、任意の適切な読み出し処理を行うことができる。
【0085】
本発明のイメージセンサ100は、各画素103が、第1乃至第3の実施例のいずれかの信号処理回路を備えており、従来よりも検出感度を向上させることができる。
【0086】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 フォトダイオード(PD)
2 蓄積容量(FD)
3 転送ゲートトランジスタ(TR1
4 リセットトランジスタ(TR2
5 比較器(Comp)
6 インバータ(Inv)
7 インバータ回路
81 遅延回路(Delay)
82 NOR回路
83 AND回路
100 イメージセンサ
101 センサ領域
102 出力処理回路
103 画素
104 フォトダイオード
105 AD変換回路
106 カウンタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8