【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省、「平成26年度電波資源拡大のための研究開発」における「超高精細度衛星・地上放送の周波数有効利用技術の研究開発」に係わる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記信号切替手段は、前記適応等化部の出力信号における収束状態を監視して、平均二乗誤差量を基準として等化収束を判定する等化収束判定部と、当該等化収束していると判定した際に、当該信号源を切り替える信号選択部とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の受信装置。
前記前置等化部は、当該逆特性に基づく所定の逆特性実装テーブルを保持する伝送路歪逆特性設定部と、前記伝送路歪逆特性設定部から設定される該所定の逆特性実装テーブルを基に等化処理を行う伝送路歪逆特性等化部とを備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の受信装置。
前記伝送路歪逆特性等化部は、当該所定の逆特性実装テーブルを基に等化処理を行う際に、指定された所定の動作点で当該デジタル信号に関する利得調整を行う利得調整手段を有することを特徴とする、請求項4から9のいずれか一項に記載の受信装置。
【背景技術】
【0002】
デジタル伝送方式では、各サービスで利用可能な周波数帯域幅において、より多くの情報が伝送可能となるように、多値変調方式がよく用いられる。周波数利用効率を高めるには、変調信号1シンボル当たりに割り当てるビット数(変調多値数)を高める必要があるが、周波数1Hzあたりに伝送可能な情報速度の上限値と信号対雑音比の関係はシャノン限界で制限される。
【0003】
衛星伝送路を用いた情報の伝送形態の一例として、衛星デジタル放送が挙げられる。例えば、
図20に示すように、送信装置50からの変調波信号は、衛星中継器70を介して受信装置90に伝送される。このような衛星デジタル放送において、衛星中継器70は、主に、入力マルチプレクサ(IMUX)フィルター、進行波管増幅器(TWTA)、及び出力マルチプレクサ(OMUX)フィルターからなり、IMUXフィルターによって1チャンネル分ごとに帯域抽出を行い、TWTAにより利得制御を行って、OMUXフィルターで不要周波数成分を抑圧する。
【0004】
このように、衛星中継器70には、ハードウェア制限上、電力効率のよいTWTAがよく用いられる。また、限られた衛星中継器70のハードウェア制限を最大限生かすため、衛星中継器70の出力が最大となるように飽和領域でTWTAを動作させることが望ましい。12GHz帯放送衛星中継器への搭載を想定したTWTAの入力信号電力対出力信号電力(AM/AM)特性、入力信号電力対出力信号位相(AM/PM)特性を
図21に示す。
図21より、TWTAにおいては、入力信号電力を増大するに従い出力信号電力が飽和する非線形特性を示し、位相遷移量も大きくなることから、飽和領域付近では信号が大きく歪み、伝送信号が劣化する。よって、衛星デジタル放送では、このTWTAで発生する歪で生じる伝送劣化に強い変調方式として、位相変調(PSK)がよく利用される。
【0005】
IMUXフィルター,OMUXフィルターに着目すると、隣接チャンネルからの干渉抑圧のため、通過帯域の端において、IMUXフィルターは急峻な振幅特性、群遅延特性を有する。OMUXフィルターは、TWTAで発生するスペクトル再生成分(リグロース)を抑圧するために、IMUXフィルターより若干緩和された振幅特性、群遅延特性を有する。一例として、12GHz帯放送衛星中継器への搭載を想定したIMUXフィルターの振幅特性・群遅延特性を
図22に、OMUXフィルターの振幅特性・群遅延特性を
図23に示す。
図22及び
図23より、IMUXフィルター、OMUXフィルターともに通過帯域の端において群遅延偏差量が増大し、群遅延歪みが発生する。群遅延歪みは、TWTAで発生する歪みと相まって、さらなる信号劣化を引き起こす。
【0006】
衛星デジタル放送の従来技術として、標準規格ARIB STD−B44に記載の高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(以下、「高度衛星放送方式」と呼ぶ。)が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。この方式では、変調方式として位相変調に加え、16APSKや32APSKといった振幅位相変調(APSK)も利用可能である。
【0007】
APSKは、信号点間距離が従来のPSKと比較して短く、平均電力一定で比較した場合、PAPR(Peak to Average Power Ratio)も増大するため、上記の衛星中継器に伝送する場合、さらなる歪の増大が懸念される。
【0008】
高度衛星放送方式を想定した一般的な受信装置90の構成を
図24に示す。受信装置90は、選局部91、直交復調部92、誤り訂正復号部93により構成される。
【0009】
選局部91は、受信装置90に入力される入力信号に対して、周波数指定・選局部913により別途指定する選局用の中心周波数に設定し、自動利得制御部(AGC)911による増幅、中間周波数(IF)/ベースバンド変換部912による周波数変換、及び、ローパスフィルター(LPF)914によるフィルター処理を行い、同相成分(In-phase)と直交成分(Quadrature-phase)の2つのベースバンド信号からなるベースバンドIQ信号を直交復調部92に出力する。
【0010】
直交復調部92は、選局部91から出力されるベースバンドIQ信号に対して、アナログ/デジタル(A/D)変換部921によるデジタル信号化、シンボルタイミング再生部922によるシンボルタイミング再生信号の生成、同期検波部923による受信対象のデジタル信号の同期検波、及び、ルートロールオフフィルタ924によるフィルター処理を行い、続いて適応等化器925において適応等化処理を行った後、絶対位相化部927により絶対位相化(IQ反転、非反転)を行い、デジタルIQ信号を誤り訂正復号部93に出力する。尚、位相誤差制御部926は、適応等化処理後の信号を監視して、その位相誤差量を同期検波部923に出力する。これにより、同期検波部923による受信対象のデジタル信号の位相同期が確保される。
【0011】
誤り訂正復号部93は、デジタルIQ信号に対して所定の誤り訂正符号により復号処理を行い、復号ビットストリームの出力信号を出力する。
【0012】
特に、直交復調部92においては、前述の衛星中継器70で発生する歪や、宅内配信におけるケーブル反射等を抑圧するために、適応等化器925が用いられる。適応等化器925はデジタルフィルターで構成され、受信信号点の収束が改善するよう最小二乗誤差規範に基づく適応アルゴリズムなどにより、適応等化器925を構成するデジタルフィルターのタップ係数を適応的に更新することで、各受信環境に応じた歪成分の抑圧を行う(例えば、非特許文献2参照)。
【0013】
しかしながら、従来の適応等化器925は、前述の通り、ケーブル反射等の軽微な歪に対処することを想定した構成になっており、特にAPSKのように信号点間距離が小さく、PAPRが大きい変調方式では、衛星中継器で生じる歪の影響が大きいため、十分な等化性能が期待できない。また、衛星放送の場合、降雨によりランダム性の雑音が大きく重畳され、さらなる等化性能の劣化を引き起こす。
【0014】
さらに、近年は欧州の衛星放送方式DVB‐S2X(例えば、非特許文献3参照)や日本の超高精細度テレビジョン放送システムの伝送方式(例えば、非特許文献4参照)などで、ロールオフ率を限界値0.0に近づけることで変調信号波形を矩形に整形し、周波数利用効率を高めるのが主流である。この場合、ロールオフ率低減化に伴い、さらにPAPRが増大するため、特にAPSKにおいては更なる歪の発生が懸念される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述したように、APSKや低ロールオフ率を採用した伝送方式においては、衛星中継器における更なる歪の発生が懸念される。
【0017】
衛星中継器で発生する歪の一例として、
図21〜
図23に示す特性を有する、衛星中継器70を想定したIMUXフィルター、TWTA(OBO=2.2dB)及びOMUXフィルターを縦続接続した系統に、ロールオフ率0.03、シンボルレート33.7561Mbaudの16APSK信号を伝送した際の、受信信号の様子を
図25に示す。
図25より、TWTAの非線形特性及びフィルターの群遅延特性により、信号が大きく劣化していることがわかる。
【0018】
さらに、衛星放送を想定した場合、前述の通り、降雨減衰に伴うランダム性の雑音が重畳されることから、ランダム性雑音への耐性も高める必要がある。
【0019】
また、TWTAの非線形性特性、フィルターの群遅延特性及びランダム雑音の重畳は、IQ信号の振幅及び位相不安定を引き起こすことから、受信装置の同期検波処理における位相誤差量の算出にも影響を与え、同期性能劣化を引き起こすという問題がある。
【0020】
そこで、本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、衛星中継器上で発生する固有の歪成分を十分に抑圧可能とし、且つ高精度で同期検波処理における位相誤差量を検出可能とする、デジタル信号の受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の受信装置は、既存の適応等化部に加えて、その前段に、伝送路で生じる伝送路歪の逆特性を利用して等化処理を行う前置等化部を設け、更に、この縦続等化器の入力信号及び出力信号を適時選択し、同期検波処理における位相誤差量を検出する位相誤差検出制御部を備えるよう構成した。
【0022】
即ち、本発明の受信装置は、デジタル信号を受信する受信装置であって、
衛星伝送路で生じる伝送路歪の逆特性を利用して等化処理を行う前置等化部、及び、該前置等化部の後段で適応等化処理により等化処理を行う後段等化部を有する適応等化部と、前記適応等化部の入力信号と出力信号のいずれかを信号源として、同期検波処理における位相誤差量を検出する位相誤差検出制御部と、を備え
、前記前置等化部は、前記衛星伝送路で生じる伝送路歪の逆特性と、周波数に対して予め定められた線形特性又は一様特性の逆特性とを周波数に応じて選択的に設定されるように、各逆特性に基づく所定の逆特性実装テーブルを保持する手段を有し、前記後段等化部は、受信C/Nに相当する値が所定の変動幅以内ではないときに前記前置等化部に入力される入力信号を前記適応等化処理の入力信号とし、該受信C/Nに相当する値が所定の変動幅以内となったときに前記前置等化部から出力される出力信号を前記適応等化処理の入力信号とするよう切り替える切替手段を有し、前記位相誤差検出制御部は、前記適応等化部の出力信号における収束状態を監視して該収束状態が所定の値を下回ったときに、前記位相誤差量の検出に係る信号源として、初期段階に当該信号源としていた前記適応等化部の入力信号から、前記適応等化部の出力信号に切り替えを行う信号切替手段、及び、当該信号源の信号について変調方式に応じた理想信号点系列の平均電力と等しくなるよう利得調整を行った上で前記位相誤差量を算出する位相誤差算出手段を有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の受信装置において、前記信号切替手段は、前記適応等化部の出力信号における収束状態を監視して、平均二乗誤差量を基準として等化収束を判定する等化収束判定部と、当該等化収束していると判定した際に、当該信号源を切り替える信号選択部とを備えることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の受信装置において、前記前置等化部は、当該逆特性に基づく所定の逆特性実装テーブルを保持する伝送路歪逆特性設定部と、前記伝送路歪逆特性設定部から設定される該所定の逆特性実装テーブルを基に等化処理を行う伝送路歪逆特性等化部とを備えることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の受信装置において、前記伝送路歪逆特性設定部は、
衛星伝送路毎に構成される1以上のフィルター及び1以上の増幅器を個別に指定された当該逆特性に基づく所定の逆特性実装テーブルを保持することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の受信装置において、前記所定の逆特性実装テーブルは、
前記フィルターの逆特性として、
前記フィルターの周波数特性からインパルス応答を算出して生成された第1の逆特性実装テーブルを含むことを特徴とする。
【0029】
また、本発明の受信装置において、前記所定の逆特性実装テーブルは、
前記フィルターの振幅特性と群遅延特性のいずれか一方又は双方に対して、周波数に対して予め定められた一様特性を含む逆特性を基に生成された第2の逆特性実装テーブルを含む複数種の逆特性実装テーブルとして構成され、前記伝送路歪逆特性設定部は、該複数種の逆特性実装テーブルを前記伝送路歪逆特性等化部に対して選択的に設定可能に構成されていることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の受信装置において、前記所定の逆特性実装テーブルは、
前記増幅器の逆特性として、増幅器のAM/AM特性は入出力電力に対して対称となり、AM/PM特性は、入力信号に対して対称となる特性を算出して生成された第3の逆特性実装テーブルを含むことを特徴とする。
【0031】
また、本発明の受信装置において、前記所定の逆特性実装テーブルは、
前記増幅器のAM/AM特性及びAM/PM特性に対して、入力電力に対して線形なAM/AM特性とするか、又は入力電力に対して一様なAM/PM特性とする逆特性を基に生成された第4の逆特性実装テーブルを含む複数種の逆特性実装テーブルとして構成され、前記伝送路歪逆特性設定部は、該複数種の逆特性実装テーブルを前記伝送路歪逆特性等化部に対して選択的に設定可能に構成されていることを特徴とする 。
【0032】
また、本発明の受信装置において、前記伝送路歪逆特性等化部は、前記伝送路歪
逆特性設定部から選択的に設定された当該所定の逆特性実装テーブルを基に、指定された所定の動作点で等化処理を行うことを特徴とする。
【0033】
また、本発明の受信装置において、前記伝送路歪逆特性等化部は、当該所定の逆特性実装テーブルを基に等化処理を行う際に、指定された所定の動作点で当該デジタル信号に関する利得調整を行う利得調整手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、衛星中継器上で発生する固有の歪成分を十分に抑圧し、また、衛星放送を想定した降雨減衰によるランダム性雑音の重畳に対しても耐性を有することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明による一実施形態の受信装置のブロック図を示す図である。
【
図2】本発明による一実施形態の受信装置における適応等化部の詳細構成を示す図である。
【
図3】本発明による一実施形態の受信装置における伝送路歪逆特性設定部に対する事前設定例を示すフローチャートである。
【
図4】IMUXフィルターの逆特性の一例を示す図である。
【
図5】OMUXフィルターの逆特性の一例を示す図である。
【
図7】振幅のみ一様な周波数特性を適用したIMUXフィルターの逆特性の一例を示す図である。
【
図8】振幅のみ一様な周波数特性を適用したOMUXフィルターの逆特性の一例を示す図である。
【
図9】AM/AM特性に線形特性を適用したTWTAの逆特性の一例を示す図である。
【
図10】
図7に対応した複素インパルス応答を示す図である。
【
図11】
図8に対応した複素インパルス応答を示す図である。
【
図12】本発明による一実施形態の受信装置における伝送路歪逆特性設定部から伝送路歪逆特性等化部への設定動作例を示す図である。
【
図13】本発明による一実施形態の受信装置における位相誤差検出制御部の詳細構成を示す図である。
【
図14】(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施形態の受信装置における領域判定閾値テーブルの例を示す図である。
【
図15】本発明による変形例の一実施形態の受信装置を示すブロック図である。
【
図16】本発明による変形例の一実施形態の受信装置における適応等化部の詳細構成を示す図である。
【
図17】本発明による変形例の一実施形態の受信装置における前置等化部により等化した信号のコンスタレーションを示す図である。
【
図18】本発明による変形例の一実施形態の受信装置における適応等化部による縦続等化前のIQ信号と理想信号点との比較、及び平均位相誤差量(計測シンボル数1024シンボル)を示す図である。
【
図19】本発明による変形例の一実施形態の受信装置における適応等化部による縦続等化後のIQ信号と理想信号点との比較、及び平均位相誤差量(計測シンボル数1024シンボル)を示す図である。
【
図20】衛星デジタル放送の伝送形態の一例を示す図である。
【
図21】TWTAのAM/AM特性、AM/PM特性の一例を示す図である。
【
図22】IMUXフィルターの振幅特性・群遅延特性の一例を示す図である。
【
図23】OMUXフィルターの振幅特性・群遅延特性の一例を示す図である。
【
図24】従来技術における高度衛星放送方式を想定した一般的な受信装置の構成を示す図である。
【
図25】
図21〜
図23に示す特性を有する、衛星中継器を想定したIMUXフィルター、TWTA(OBO=2.2dB)及びOMUXフィルターを縦続接続した系統に、ロールオフ率0.03、シンボルレート33.7561Mbaudの16APSK信号を伝送した際の受信信号の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明による一実施形態の受信装置を説明する。
図1は、本発明による一実施形態の受信装置90のブロック図である。前述した
図24に示す従来技術の受信装置90と同様な構成要素には同一の参照番号を付している。尚、実装される受信装置90は、変調波信号に多重された同期信号を検出し誤り訂正符号の先頭を検出する同期検出機能や、伝送多重制御信号から伝送方式の設定等の情報を検出して変調方式や符号化率等の設定を行う制御機能などを有するが、その詳細な図示を省略している。以下、非特許文献1記載の方式に基づく送信信号の受信を想定した受信装置90の構成を基に、本発明の一実施形態を説明する。
【0037】
(受信装置構成)
図1を参照するに、本実施形態の受信装置90は、前方向誤り訂正方式の受信装置であり、選局部91、直交復調部92及び誤り訂正復号部93から構成されるが、特に直交復調部92内の適応等化部94(前置等化部95と後段等化部96で構成される。)が、前述した
図24に示す従来技術の受信装置90における適応等化器925から置き換えられている点、及び、位相誤差検出制御部97が、前述した
図24に示す従来技術の受信装置90における位相誤差制御部926から置き換えられている点で、従来技法と異なる。よって、以後の説明では、適応等化部94及び位相誤差検出制御部97に関して、詳細に機能を説明する。
【0038】
適応等化部94の詳細構成を
図2に示す。適応等化部94は、前置等化部95と後段等化部96の縦続接続で構成される。前置等化部95は、伝送路歪逆特性設定部951と伝送路歪逆特性等化部952で構成される。後段等化部96は、MER計測部961、適応等化設定部962、切替スイッチ(SW)963、及び適応等化器964から構成される。
【0039】
まず、前置等化部95の動作について説明する。前置等化部95は主に、伝送路で生じる歪に対して、特性が既知であることを想定して動作する。このため、伝送路歪逆特性設定部951より、伝送路で用いられるフィルターや増幅器の伝送特性を事前に取得し、さらにその特性を相殺するような特性(逆特性)を伝送路歪逆特性等化部952に設定することで、高精度な等化処理を実現する。
【0040】
伝送路歪逆特性設定部951に対する事前設定の詳細について
図3に示すフローチャートを基に説明する。伝送路歪逆特性設定部951に対する事前設定は、その管理者の操作によって行われる。まず、管理者は、伝送路の定義を行う(ステップS1)。具体的な伝送路として、
図20に示す衛星伝送路を想定した場合、送信装置50においては、地球局送信機内のフィルター特性、増幅器特性、衛星中継器70においては、前述したIMUXフィルター、TWTA,OMUXフィルター、受信装置90においては、受信アンテナに内蔵されるブロックコンバーター増幅器特性などが挙げられる。特に衛星伝送路においては、衛星中継器70で発生する歪が支配的であることから、衛星中継器70を構成するIMUXフィルター、TWTA、OMUXフィルターの縦続構成を、本実施例の代表的な伝送路と定義し、この定義された伝送路で発生する歪を、以下の順で生成・設定する逆歪特性の対象とする。
【0041】
当該定義した伝送路(IMUXフィルター、TWTA及びOMUXフィルター)について、管理者は、例えば汎用コンピューターにより、事前に取得し所定のメモリに保存しておいた特性テーブルを読み込む(ステップS2)。IMUXフィルターやOMUXフィルターの場合、
図22や
図23に示す振幅特性及び群遅延特性がフィルター特性に関する特性テーブルであり、TWTAの場合、
図21に示すAM/AM特性及びAM/PM特性が増幅器特性に関する特性テーブルである。
【0042】
続いて、フィルター特性及び増幅器特性に関する特性テーブルに対する逆特性テーブルを生成する(ステップS3)。より具体的には、当該読み込んだフィルター特性に関する特性テーブルの逆特性として、管理者は、例えば汎用コンピューターにより、周波数軸上で対称となる振幅特性及び群遅延特性を計算する。これにより、フィルターの振幅に関して一定振幅が保たれ、群遅延偏差については偏差量を0に相殺することが可能となる逆特性テーブルを生成する。また、増幅器特性の逆特性として、管理者は、例えば汎用コンピューターにより、元のAM/AM特性に対して入出力電力軸上で対称となるAM/AM特性、及び、入力電力軸上で対称となるAM/PM特性を計算する。これにより、AM/AM特性に関しては利得一定、AM/PM特性に関しては位相遷移量を0に相殺することが可能となる逆特性テーブルを生成する。このようにして事前に生成したIMUXフィルターの特性(
図22)とOMUXフィルターの特性(
図23)の逆特性テーブルを
図4及び
図5に示す。また、事前に生成したTWTAの特性(
図21)の逆特性テーブルを
図6に示す。
【0043】
続いて、当該生成した逆特性テーブルの他、フィルター特性の場合、振幅・群遅延特性のいずれか一方又は双方については一様特性とする逆特性テーブルも生成する(ステップS4)。振幅のみ一様な周波数特性を適用した例を
図7及び
図8に示す。このようにフィルター逆特性の一種として一様特性とする逆特性テーブルを生成することは、各種逆特性を選択的に使用する際に、過度な利得上昇などを防ぐことを可能にするためである。尚、本願明細書中で云う「一様特性」とは、
図7及び
図8に示すような完全な直線状とする場合に限らず、部分的に逆特性を残すなど、直線状の特性の一部に凹凸を有する特性を含む。
【0044】
同様に、増幅器特性の場合、AM/AMについては線形特性、或いはAM/PMについては一様特性とする逆特性テーブルも生成する(ステップS4)。AM/AM特性にのみ線形特性を適用した例を
図9に示す。このように増幅器逆特性の一種として線形特性や一様特性とする逆特性テーブルを生成することは、各種逆特性を選択的に使用する際に、飽和点付近の非線形領域における過度な利得上昇などを防ぐことを可能にするためである。尚、本願明細書中で云う「線形特性」とは、
図9に示すような完全な直線状とする場合に限らず、部分的に逆特性を残すなど、直線状の特性の一部に凹凸を有する特性を含む。
【0045】
続いて、生成した各逆特性テーブルについて、管理者は、例えば汎用コンピューターにより、各逆特性テーブルに対応するそれぞれの逆特性実装テーブルを計算して生成する(ステップS5)。より具体的には、フィルター特性に関する逆特性テーブルに対しては、たとえば、周波数サンプリング法により、振幅及び群遅延偏差量の周波数応答のサンプル値又はサンプル値を補間した値から、逆フーリエ変換処理(IDFT)により、FIR(Finite Impulse Response)フィルターのインパルス応答を算出し逆特性実装テーブルとして生成する。一例として、
図7に対応した複素インパルス応答を
図10に、
図8に対応した複素インパルス応答を
図11に示す。また、増幅器特性に関する逆特性テーブルに対しては、AM/AM特性、及び、AM/PM特性が入出力特性に対応するため、これらの特性を適時補間し入出力特性に対応した利得係数A及び位相遷移量φから構成される複素乗算テーブル(A・exp(jφ))を算出し逆特性実装テーブルとして生成する。
【0046】
続いて、管理者は、例えば汎用コンピューターにより、生成した各逆特性実装テーブルであるフィルターの複素インパルス応答及び複素乗算テーブルを伝送路歪逆特性設定部951が備える所定のメモリに記憶させる。伝送路歪逆特性設定部951は、管理者の操作によって、伝送路歪逆特性設定部951が保持する各逆特性実装テーブルを適時選択して、伝送路歪
逆特性等化部952に設定可能である。尚、伝送路歪逆特性設定部951は、各逆特性実装テーブル以外にも、変更可能な増幅器の動作点情報を当該所定のメモリに記憶しており、管理者の操作によって、伝送路歪逆特性設定部951から伝送路歪
逆特性等化部952に増幅器の動作点情報を設定可能に構成されている。増幅器の動作点情報は、伝送路で動作する増幅器の動作点と同一であり、TWTAにおいては入力バックオフ(IBO)又は出力バックオフ(OBO)で定義される。一例として、
図21に示すAM/AM特性において、無変調波入力時の最大電力に対する変調波信号入力時の出力低下量をOBOと定義し、16APSK、ロールオフ率0.03、シンボルレート33.7561Mbaudの信号を入力した場合、OBO=2.2dBに対応するIBOは4.47dBである。
【0047】
次に、
図12を参照して、本発明による一実施形態の受信装置90における伝送路歪逆特性設定部951から伝送路歪逆特性等化部952への設定動作例を説明する。
図12には、伝送路歪逆特性等化部952の詳細構成例も示してある。伝送路歪逆特性等化部952は、伝送路歪逆特性設定部951から設定可能な逆特性実装テーブルを実装可能とする回路構成を有しており、また、伝送路に対して双対な回路構成となっている。
図12に示す例では、伝送路はIMUXフィルター、TWTA、及びOMUXフィルターの縦続接続であるため、この場合、伝送路歪逆特性等化部952の回路構成は、OMUXフィルター逆特性用FIRフィルター部9521、TWTA逆特性用振幅・位相調整部9522、利得調整部9523、及びIMUXフィルター逆特性用FIRフィルター部9524の順序で接続される。尚、利得調整部9523は、動作点情報によって利得低下が生じる場合に利得補償するために設けられる。
【0048】
OMUXフィルター逆特性用FIRフィルター部9521には、伝送路歪逆特性設定部95で保持されたOMUXフィルター逆特性用複素インパルス応答(
図11に相当)を設定する。同様に、IMUXフィルター逆特性用FIRフィルター部9524には、IMUXフィルター逆特性用複素インパルス応答(
図10に相当)を設定する。
【0049】
TWTA逆特性用振幅・位相調整部9522には、伝送路歪逆特性設定部951で取得したTWTA逆特性複素乗算テーブル(
図9に相当)及び、動作点情報を設定する。衛星中継器70側において、TWTAが動作点としてOBO=2.2dBで運用されている場合、同一の動作点情報(OBO又はOBOに対応するIBO)を指定することで、衛星中継器70で生じる歪と同一動作点で歪を相殺することが可能となる。
【0050】
利得調整部9523はTWTA逆特性用振幅・位相調整部で生じる利得低下を補償する機能を有する。一例として、TWTA逆特性用振幅・位相調整部9522において、OBO=2.2dBを設定し、
図9に示す特性を適用した場合、AM/AM特性に線形特性を適用することから、出力信号はOBO=2.2dB相当の信号レベル低下が生じる。TWTA逆特性用振幅・位相調整部952通過後は、TWTAに起因する歪成分は除去されているため、利得調整部9523で線形利得処理を施しても歪成分の増大は発生しないことから、OBO=2.2dBの利得低下を相殺する利得調整を行うことで、後続する誤り訂正復号部93に適した振幅に調整することが可能となる。尚、利得調整部9523は、上述のIMUXフィルター逆特性用FIRフィルター部9524の後段に設置することも可能である。
【0051】
伝送路歪逆特性設定部951から設定されるIMUX及びOMUXフィルターの逆特性実装テーブルはインパルス応答の形状になっており、TWTAの逆特性実装テーブルは振幅及び位相の情報になっていることから、これらの逆特性実装テーブルの情報は、FPGA等任意のデータを書き換え可能且つ複素乗算機能を有する集積回路によって、容易に実装することが可能である。
【0052】
図2の後段等化部96の詳細動作について説明する。
図2のとおり、適応等化設定部962は、
図24に示す従来の適応等化器925と同様に構成される適応等化器964の動作条件である適応等化器パラメーター(タップ長、忘却係数など)を設定する。適応等化器964は最小二乗誤差規範を代表とする適応アルゴリズムにより動作するよう、逐次係数更新が可能なFIRフィルターで構成することができる。
【0053】
最小二乗誤差規範に基づく適応アルゴリズムをAPSK信号に対して適用した場合、APSKの理想信号点配置を基準信号点とし、適応等化器964に入力される信号と基準信号点候補(16APSKの場合、16点)との誤差ベクトルが最小となるよう、適応等化器964のFIRフィルター係数が逐次更新される。適応等化器964のFIRフィルターをシンボル時間t単位で動作させ、tを離散時間、x(t)を入力シンボル列(複素値)、z(t)を等化器出力(複素値)、w(t)をFIRフィルター係数列(複素値)、e (t)を誤差ベクトル、μを忘却係数と定義した場合、z(t)及びw(t)は以下の式(1)及び式(2)で更新される。尚、Tは行列の転置、*は複素共役を示す。
【0056】
切替スイッチ(SW)963は、前置等化部95の入力信号と出力信号を選択的に切り変える機能を有し、適応等化設定部962から信号切換指示を受けることで動作する。切替SW963により、
図24に示す一般的な受信装置90と同様に動作させる適応等化器964のみで動作する機能と、本実施形態との機能の性能比較等を行うことが可能となる。
【0057】
MER計測部961は、前置等化部95に入力される信号のMER(Modulation Error Ratio)を計測する機能を有し、受信C/N(Carrier/Noise)に相当する値を取得する。上記切替SW963は、MER計測部961の値を基に適応等化設定部962から信号切換指示を得ることで、入力信号の受信品質に応じて、前置等化部95の入力信号と出力信号を選択的に切り変えることが可能となる。
【0058】
切替SW963による切替動作として、本実施形態の受信装置90の受信動作開始直後では、前置等化部95の入力信号を適応等化器964へと入力する状態にすることが想定される。適応等化設定部962は、MER計測部961から受信C/Nに相当する値が得られる度にその値を監視しており、所定の変動幅以内となると、信号切換指示を切替SW963に出力する。このように受信C/Nに相当する値が所定の変動幅以内で安定した状態で、前置等化部95の出力信号が適応等化器964へと入力する状態にされる。受信C/N相当値に基づいて、あらかじめ適応等化器964のみによる受信確認を行うことが可能な機能を有することで、前置等化部95の設定変更等を容易に行うことが可能となり、受信状況の安定性を確認後、さらなる等化性能を向上させることが可能となる。
【0059】
尚、MER計測部961は、前置等化部95の入力信号から受信C/Nに相当する値を取得する構成とする代わりに、前置等化部95の出力信号から受信C/Nに相当する値を取得する構成とすることや、後段等化部96の出力信号から受信C/Nに相当する値を取得する構成とすることもできる。
【0060】
このように、本実施形態の受信装置90では、適応等化部94による縦続等化処理で等化させるよう構成したため、出力されるIQ信号をより理想信号点に近づけることができ、これに伴い、後続する誤り訂正復号部93による誤り率をより低減させることが可能となる。
【0061】
次に、
図1に示す位相誤差検出制御部97について、
図13を参照して詳細に説明する。
図13は、本発明による一実施形態の受信装置90における位相誤差検出制御部97の詳細構成を示す図である。位相誤差検出制御部97は、信号選択部98、位相誤差検出部99及び等化収束判定部100から構成される。更に、位相誤差検出部99は、利得調整部991、領域判定部992、理想信号点テーブル993、位相誤差算出部994、及び領域判定テーブル保持部995から構成される。
【0062】
等化収束判定部100は、等化信号の収束度合いを平均二乗誤差量の判定基準で等化状況を判別し、後続する位相誤差検出部99に対して、等化前のIQ信号と、等化後のIQ信号のいずれかを選択するための切替信号を信号選択部98に出力する。平均二乗誤差量は、等化後のIQ信号と理想信号点に対する最近傍信号点のIQ信号との複素誤差量を所定のシンボル数分にわたり、二乗平均化した値であり、この値が所定の値を下回ることで、等化の収束度合いを判定することが可能である。また、所定の値を下回った場合に、信号選択部98における接続状態を遷移させる切替信号を信号選択部98に出力する。特に、適応等化部94による縦続等化処理の初期段階においては、等化の収束が安定せず、IQ信号の振幅及び位相が不安定になるおそれがある。よって、等化収束判定部100を設けることで、適応等化部94による縦続等化処理の等化状態を監視しつつ、位相誤差検出部99に対して、振幅及び位相をより整わせたIQ信号を出力するよう制御することが可能となる。
【0063】
信号選択部98は、等化収束判定部100から得られる切替信号に基づき、等化前のIQ信号か、又は等化後のIQ信号を位相誤差検出部99に出力する。
【0064】
位相誤差検出部99では、信号選択部98から出力されるIQ信号を利得調整部991に入力し、利得調整部991は、等化前後のIQ信号が、なるべく理想信号点系列の平均電力と等しくなるよう利得調整し、利得調整後のIQ信号を領域判定部992に出力する。このように利得調整を行うことで、領域判定部992及び位相誤差算出部994の各処理において、誤差の少ない計算を行うことが可能となる。
【0065】
領域判定部992は、利得調整部991から出力される利得調整後のIQ信号を入力し、領域判定テーブル保持部995から得られる領域判定テーブルを用いて、当該IQ信号がどの領域に存在するかを判定し、その旨を示す領域判定情報を理想信号点テーブル993に出力する。この判定の後、領域判定部992は、利得調整部991から得られた利得調整後のIQ信号を位相誤差算出部994に出力する。領域判定テーブル保持部995は、各変調方式に対応する領域判定テーブルを保持するメモリとして構成される。一例として、QPSKを例にとる場合、利得調整後のIQ信号は複素平面上の第1〜第4象限のいずれかに含まれることから、領域判定部992は、領域判定テーブル保持部995から、QPSKにおける4つの領域判定テーブル(
図14(a)に示す点線枠)を取得し、仮に当該IQ信号が第1象限に含まれる場合に、第1象限を領域判定情報として理想信号点テーブル993に出力する。
【0066】
また、16QAMのように振幅・位相共に異なる変調信号の場合、領域判定部992は、領域判定テーブル保持部995から、複素平面を理想信号点が等間隔で分割されるよう16領域に分割した領域判定閾値テーブル(
図14(b)に示す点線枠)を取得し、当該IQ信号が含まれる象限を領域判定情報として理想信号点テーブル993に出力する。
【0067】
理想信号点テーブル993は、入力値(領域判定情報)に対して対応する出力値(最近傍信号点)を出力するメモリにより構成され、当該領域判定情報に示される象限に含まれる最近傍信号点を位相誤差算出部994に出力する。
【0068】
位相誤差算出部994は、領域判定部992を経て利得調整部991から出力される利得調整後のIQ信号(Ir,Qr)を入力するとともに、理想信号点テーブル993から出力される、該IQ信号(Ir,Qr)を基に求められた最近傍信号点のIQ信号(It,Qt)を入力し、IQ信号(Ir,Qr)とIQ信号(It,Qt)とを比較して、位相誤差量Δφを算出し、
図1に示す同期検波部923に出力する。Δφは、次式により算出することができる。
【0069】
Δφ=| arctan(Ir/Qr) − arctan(It/Qt)|
【0070】
尚、信号選択部98は、管理者の操作により切り替え動作させるよう構成することも可能であるが、等化収束判定部100と連動して動作するよう構成するのが好適である。これにより、適応等化部94による縦続等化処理に関して、その等化の収束度合いに応じて自動的に等化前のIQ信号か、又は等化後のIQ信号を切り替えるようになるため、適応等化部94による縦続等化処理の状態に関わらず、同期検波部923による安定した検波が保持される。
【0071】
また、前述した実施形態の受信装置90の例では、ルートロールオフフィルタ924の後段に、前置等化部95と後段等化部96で構成される適応等化部94を配置する例を説明したが、例えば
図15及び
図16に示すように、ルートロールオフフィルタ924と前置等化部95の配置を入れ替えた構成としてもよい。
【0072】
或いはまた、
図16において、ルートロールオフフィルタ924を複数用意し、後段等化部96における切替スイッチ(SW)963の各入力段に、それぞれルートロールオフフィルタ924を配置する構成とすることもできる。
【0073】
本実施形態の例の有効性を確認するため、
図15に示す構成のうち、前置等化部95の効果と、位相誤差検出制御部97を設けた適応等化部94の効果を計算機シミュレーションにより確認した。想定する伝送路としては12GHz帯放送衛星用衛星中継器を想定したIMUXフィルター、TWTA及びOMUXフィルターによる縦続構成とし、
図21から
図23に示す特性を適用した。適応等化部94による縦続等化処理では、
図16に示す伝送路歪逆特性設定部951により、OMUXフィルター逆特性用複素インパルス応答(
図11)、IMUXフィルター逆特性用複素インパルス応答(
図10)及びTWTA逆特性複素乗算テーブル(
図9)を伝送路歪逆特性等化部952に設定させた。信号源は16APSK、ロールオフ率0.03、シンボルレート33.7561Mbaudとし、TWTAの動作点はOBO=2.2dB(IBO=4.47dB相当)に設定し、動作点情報も同様にOBO=2.2dBとした。
【0074】
前置等化部95による効果として、前置等化部95により等化した信号のコンスタレーションを
図17に示す。等化前のコンスタレーションは
図25であることから、本発明に係る受信装置90とすることで、信号品質が大きく改善し、適切に等化されていることがわかる。尚、前置等化部95は係数が固定の状態で動作する等化器であることから、降雨減衰等により、ランダム性の雑音が重畳されていても、係数が変わらず安定的な等化処理を継続することが可能となる。また、必要に応じて、管理者の操作により、適宜、一様特性及び線形特性を用いた逆特性テーブルにより生成した逆特性実装テーブルを選択的に前置等化部95で動作するよう設定することができるので、例えば各事業者の要望に応じてチャンネル毎に逆特性実装テーブルの種別を変える場合も容易に設定することが可能となる。
【0075】
図18に、適応等化部94による縦続等化前のIQ信号と理想信号点との比較、及び平均位相誤差量(計測シンボル数1024シンボル)を示す。また、位相誤差検出制御部97を設けた適応等化部94の効果として、
図19に、適応等化部による縦続等化後のIQ信号と理想信号点との比較、及び平均位相誤差量(計測シンボル数1024シンボル)を示す。
図18より、適応等化部94による縦続等化前の場合では、平均位相誤差量は10.67度であるのに対し、
図19より、適応等化部94による縦続等化後の場合では、平均位相誤差量は4.47度となることがわかった。よって、本発明に係る位相誤差検出制御部97と適応等化部94を設けた受信装置90とすることで、より安定した位相誤差検出を行うことが可能となる。
【0076】
上述の実施形態では特定の例を基に説明したが、様々な応用が可能である。例えば、変調方式は16APSKを例に説明したが、他の変調方式にも適用可能である。また、衛星放送、地上放送、移動通信、固定通信などの他の伝送方式にも適用可能であり、伝送路を適切に指定することで、様々な伝送路にも適用可能である。