特許第6535504号(P6535504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535504
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】蓄熱システムおよび蓄熱材
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20190617BHJP
   C09K 5/16 20060101ALI20190617BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20190617BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   F28D20/00 G
   C09K5/16
   F01P3/20 G
   F01N5/02 E
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-87497(P2015-87497)
(22)【出願日】2015年4月22日
(65)【公開番号】特開2015-215155(P2015-215155A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年12月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-87950(P2014-87950)
(32)【優先日】2014年4月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】特許業務法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】外山 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 勝則
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 剛史
(72)【発明者】
【氏名】吉野 弘展
(72)【発明者】
【氏名】河西 容督
(72)【発明者】
【氏名】三ヶ島 巧
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−090786(JP,A)
【文献】 特開昭61−286515(JP,A)
【文献】 特開2010−223575(JP,A)
【文献】 実開昭62−000123(JP,U)
【文献】 特開平07−061971(JP,A)
【文献】 特開2005−220334(JP,A)
【文献】 特開2006−096898(JP,A)
【文献】 特表2003−534441(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/047766(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/025070(WO,A1)
【文献】 特許第5217595(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00 − 20/02
C09K 5/00 − 5/20
F01N 5/02
F01P 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱材および反応媒体を反応させて化合物を生成する際に生じる反応熱により加熱対象(F)を加熱し、前記化合物を前記蓄熱材および前記反応媒体に分離させることによって熱源(E)の有する熱を蓄熱する蓄熱システムであって、
前記蓄熱材を収容する反応器(11)と、
前記反応器(11)に接続されるとともに、前記反応器(11)に大気を導入する導入通路(14)と、
前記反応器(11)に接続されるとともに、前記反応器(11)内の気体を外部に排出する排出通路(15)とを備え、
前記反応媒体は、大気に含まれる成分のうち少なくとも1つの成分であり、
前記蓄熱材は、前記反応媒体との反応が予め定めた温度または圧力を境に発熱反応から吸熱反応に変化する物質であり、
前記蓄熱材は、ホスホン酸化合物金属塩またはカルボン酸化合物金属塩からなり、
前記ホスホン酸化合物金属塩が、一般式(1)で表されるホスホン酸化合物の金属塩であることを特徴とする蓄熱システム。
【化1】
一般式(1)において、R1〜R5は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜11のアルコキシカルボニル基、またはハロゲン原子のいずれかである。
【請求項2】
蓄熱材および反応媒体を反応させて化合物を生成する際に生じる反応熱により加熱対象(F)を加熱し、前記化合物を前記蓄熱材および前記反応媒体に分離させることによって熱源(E)の有する熱を蓄熱する蓄熱システムであって、
前記蓄熱材を収容する反応器(11)と、
前記反応器(11)に接続されるとともに、前記反応器(11)に大気を導入する導入通路(14)と、
前記反応器(11)に接続されるとともに、前記反応器(11)内の気体を外部に排出する排出通路(15)とを備え、
前記反応媒体は、大気に含まれる成分のうち少なくとも1つの成分であり、
前記蓄熱材は、前記反応媒体との反応が予め定めた温度または圧力を境に発熱反応から吸熱反応に変化する物質であり、
前記蓄熱材は、ホスホン酸化合物金属塩またはカルボン酸化合物金属塩からなり、
前記カルボン酸化合物金属塩が、一般式(2)で表されるカルボン酸化合物の金属塩であることを特徴とする蓄熱システム。
【化2】
一般式(2)において、R6〜R10は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、カルボキシ基、炭素原子数2〜11のアルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、またはハロゲン原子のいずれかである。
【請求項3】
前記導入通路(14)および前記排出通路(15)の開度を調整する開度調整手段(141、151)と、
前記熱源(E)または前記加熱対象(F)の温度に基づいて、前記開度調整手段(141、151)の作動を制御する制御手段(7)とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄熱システム。
【請求項4】
前記加熱対象(F)を加熱する加熱モードでは、前記制御手段(7)が前記導入通路(14)の開度を調整する前記開度調整手段(141)を開くとともに、前記排出通路(15)の開度を調整する前記開度調整手段(151)を閉じることによって、大気が前記反応器(11)に導入され、
前記熱源(E)の有する熱を蓄熱する蓄熱モードでは、前記制御手段(7)が前記導入通路(14)の開度を調整する前記開度調整手段(141)を閉じるとともに、前記排出通路(15)の開度を調整する前記開度調整手段(151)を開くことによって、前記化合物が前記熱源(E)の有する熱にて加熱されることによって分離され、この分離された気体状の前記反応媒体が前記反応器(11)から外部に排出されることを特徴とする請求項に記載の蓄熱システム。
【請求項5】
前記反応媒体は水であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の蓄熱システム。
【請求項6】
内燃機関(2)を備える車両に適用され、
前記熱源は、前記内燃機関(2)の排気が有する熱または前記内燃機関(2)の冷却水が有する熱であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の蓄熱システム。
【請求項7】
前記車両は、流体(F)により駆動力の伝達を行う変速機構(3)を備え、
前記加熱対象は、前記流体(F)であることを特徴とする請求項に記載の蓄熱システム。
【請求項8】
前記金属塩の金属種が、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、マンガン、鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、銀およびスズからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の蓄熱システム。
【請求項9】
前記金属塩の金属種が、マグネシウムおよびマンガンからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項に記載の蓄熱システム。
【請求項10】
ホスホン酸化合物金属塩またはカルボン酸化合物金属塩からなり、
前記ホスホン酸化合物金属塩が、一般式(1)で表されるホスホン酸化合物の金属塩であることを特徴とする蓄熱材。
【化1】
一般式(1)において、R1〜R5は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜11のアルコキシカルボニル基、またはハロゲン原子のいずれかである。
【請求項11】
ホスホン酸化合物金属塩またはカルボン酸化合物金属塩からなり、
前記カルボン酸化合物金属塩が、一般式(2)で表されるカルボン酸化合物の金属塩であることを特徴とする蓄熱材。
【化2】
一般式(2)において、R6〜R10は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、カルボキシ基、炭素原子数2〜11のアルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、またはハロゲン原子のいずれかである。
【請求項12】
前記金属塩の金属種が、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、マンガン、鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、銀およびスズからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項10または11に記載の蓄熱材。
【請求項13】
前記金属塩の金属種が、マグネシウムおよびマンガンからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項12に記載の蓄熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸熱反応によりその反応系外にて発生する熱(以下、外部熱ともいう)を蓄熱するとともに、発熱反応により加熱対象を加熱する蓄熱システムおよび蓄熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジンの排気熱により脱水反応を行って蓄熱し水和反応により放熱する化学蓄熱材が収容された反応器を備える蓄熱システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来技術では、車両走行時には、内燃機関の排気熱が反応器に供給され、反応器内では排気熱の供給を受けた化学蓄熱材が脱水され、それに伴い排気熱が化学蓄熱材に蓄熱される。一方、車両始動時には、蒸発器にエンジン冷却水が供給され、エンジン冷却水の有する熱により生じた水蒸気が反応器に供給される。すると、反応器内では、化学蓄熱材の発熱を伴う水和反応が生じ、化学蓄熱材が発熱した熱が加熱対象に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5217595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上記従来技術は、蓄熱材が充填された反応器から脱水反応に伴って放出された水蒸気を凝縮させる凝縮器と、凝縮器で凝縮された水を貯める水タンクと、水タンクから供給された水を蒸発させる蒸発器とを備えている。すなわち、蓄熱材と反応する反応媒体である水を反応器に供給するために、凝縮器、水タンクおよび蒸発器等の水系統部品が必要となる。
【0006】
このため、蓄熱システムの構造が複雑化してしまうとともに、体格が大型化して車両等への搭載性が悪化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、構造の複雑化および体格の大型化を抑制可能な蓄熱システムおよび蓄熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、蓄熱材および反応媒体を反応させて化合物を生成する際に生じる反応熱により加熱対象(F)を加熱し、化合物を蓄熱材および反応媒体に分離させることによって熱源(E)の有する熱を蓄熱する蓄熱システムにおいて、蓄熱材を収容する反応器(11)と、反応器(11)に接続されるとともに、反応器(11)に大気を導入する導入通路(14)と、反応器(11)に接続されるとともに、反応器(11)内の気体を外部に排出する排出通路(15)とを備え、反応媒体は、大気に含まれる成分のうち少なくとも1つの成分であり、蓄熱材は、反応媒体との反応が予め定めた温度または圧力を境に発熱反応から吸熱反応に変化する物質であり、蓄熱材は、ホスホン酸化合物金属塩またはカルボン酸化合物金属塩からなり、ホスホン酸化合物金属塩が、一般式(1)で表されるホスホン酸化合物の金属塩であることを特徴とする。
【化1】
一般式(1)において、R1〜R5は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜11のアルコキシカルボニル基、またはハロゲン原子のいずれかである。
また、請求項2に記載の発明では、蓄熱材は、ホスホン酸化合物金属塩またはカルボン酸化合物金属塩からなり、カルボン酸化合物金属塩が、一般式(2)で表されるカルボン酸化合物の金属塩であることを特徴とする。
【化2】
一般式(2)において、R6〜R10は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、カルボキシ基、炭素原子数2〜11のアルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、またはハロゲン原子のいずれかである。
【0009】
これによれば、大気中に含まれる成分を反応媒体として用いるとともに、反応器(11)に接続された導入通路(14)および排出通路(15)を設けることで、導入通路(14)により反応器(11)に反応媒体を含む大気を導入するとともに、上記化合物から分離された気体状の反応媒体を排出通路(15)により反応器(11)から大気へ放出させることができる。
【0010】
このため、反応媒体を貯蔵するタンクや、化合物を分解する反応に伴って反応器(11)から放出された気体状の反応媒体を凝縮させる凝縮器等を設ける必要がない。したがって、構造の複雑化および体格の大型化を抑制することが可能となる。
【0011】
また、請求項1に記載の発明は、ホスホン酸化合物金属塩またはカルボン酸化合物金属塩からなり、ホスホン酸化合物金属塩が、一般式(1)で表されるホスホン酸化合物の金属塩であることを特徴とする蓄熱材である。
【化1】
一般式(1)において、R1〜R5は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜11のアルコキシカルボニル基、またはハロゲン原子のいずれかである。
また、請求項11に記載の発明は、ホスホン酸化合物金属塩またはカルボン酸化合物金属塩からなり、カルボン酸化合物金属塩が、一般式(2)で表されるカルボン酸化合物の金属塩であることを特徴とする蓄熱材である。
【化2】
一般式(2)において、R6〜R10は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、カルボキシ基、炭素原子数2〜11のアルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、またはハロゲン原子のいずれかである。
ホスホン酸化合物金属塩およびカルボン酸化合物金属塩は、それぞれ、大気中に含まれる成分を反応媒体として用いる蓄熱材として好適に利用することができる。
【0012】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る蓄熱システムを車両に搭載した状態を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る蓄熱システムを示す全体構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る蓄熱システムの加熱モードの制御処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る蓄熱システムの蓄熱モードの制御処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施例2で得られたフェニルホスホン酸マンガン塩のTG−DTAチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態の蓄熱システムは、車両の内燃機関(エンジン)の排気が有する熱を蓄熱して、この熱を自動変速機(AT)の暖機促進に利用するものである。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の蓄熱システム1が搭載される車両は、内燃機関2、およびATF(オートマチックトランスミッションフルード)により駆動力の伝達を行う変速機構としての自動変速機3を備えている。本実施形態のATFが、本発明における駆動力の伝達を行う流体に相当している。
【0016】
内燃機関2は、圧縮着火式の多気筒内燃機関であり、各気筒の排気ポートと連通する排気マニホルド21が接続され、この排気マニホルド21に円筒状の排気管22が接続されている。排気管22には、蓄熱システム1、内燃機関2からの排気を浄化する触媒(三元触媒)23、および消音器24が、排気流れ上流側から順に配置されている。
【0017】
次に、蓄熱システム1の構成について説明する。
【0018】
本実施形態の蓄熱システム1は、反応媒体として大気に含まれる成分である水を用いるとともに、水との反応が予め定めた温度または圧力を境に吸熱反応から発熱反応に変化する蓄熱材を備えている。そして、この蓄熱材および水を反応させて水和物を生成する、すなわち水和の際に生じる水和熱によって加熱対象物Fを加熱する加熱モードと、水和物を蓄熱材と水(水蒸気)とに分離させることによって外部熱(熱源Eから供給される熱)を蓄熱する蓄熱モードとを切替可能に構成されている。
【0019】
ここで、本実施形態では、蓄熱材としてホスホン酸化合物金属塩を採用しており、加熱対象FとしてATFを採用しており、熱源Eとして内燃機関2の排気を採用している。なお、蓄熱材の詳細については後述する。
【0020】
図2に示すように、排気管22の外部には、蓄熱材が充填された反応器11が設けられている。反応器11は、排気管22と熱的に接続されている。このため、反応器11は、排気が有する熱により加熱されるようになっている。本実施形態では、反応器11は、排気管22の外周を一周するように輪状(環状)に形成されているとともに、排気管22の外壁と接触するように配置されている。
【0021】
蓄熱システム1は、蓄熱材の水和の際に生じる水和熱を、熱媒体を介してATFに伝熱するための熱媒体回路12を備えている。熱媒体回路12には、受熱部121、加熱部122および循環ポンプ123が設けられている。
【0022】
受熱部121は、蓄熱材と熱媒体とを熱交換させて熱媒体を加熱する熱交換器である。本実施形態の受熱部121は、反応器11の内部に配置されている。加熱部122は、熱媒体とATFとを熱交換させてATFを加熱する熱交換器である。本実施形態の加熱部122は、ATFが循環するATF循環流路31の外周に、熱媒体が流通する熱媒体配管を螺旋状に巻装することにより構成されている。循環ポンプ123は、受熱部121および加熱部122に熱媒体を循環させるポンプである。
【0023】
反応器11には、外気を反応器11内に導入するための導入通路14、および、反応器11内の気体(本実施形態では水蒸気)を外部に排出するための排出通路15が接続されている。本実施形態では、導入通路14および排出通路15は、それぞれ独立した配管によって構成されている。
【0024】
導入通路14には、当該導入通路14の開度(通路面積)を調整する開度調整手段としての導入側バルブ141が設けられている。排出通路15には、当該排出通路15の開度を調整する開度調整手段としての排出側バルブ151が設けられている。
【0025】
なお、導入通路14にファン(図示せず)を設け、反応器11への外気の導入を促進してもよい。また、排出通路15に気体を圧送するポンプ(図示せず)を設け、水蒸気の外部への排出を促進してもよい。また、導入通路14および排出通路15に逆止弁(図示せず)を設け、それぞれの通路14、15において気体の逆流を防止してもよい。
【0026】
排気管22における反応器11の排気流れ下流側には、排気管22内の排気温度TEを検出する排気温度センサ221が設けられている。また、反応器11には、反応器11内の水蒸気分圧PGを検出する圧力センサ111が設けられている。また、ATF循環流路31の加熱部122の上流側近傍には、加熱部122の上流側のATF温度Toを検出するATF温度センサ32が設けられている。排気温度センサ221、圧力センサ111およびATF温度センサ32の検出信号は、後述する制御部7に入力される。
【0027】
制御部7は、入力信号に基づいて、蓄熱システム1を構成する各種電気式アクチュエータの作動を制御するもので、CPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されている。
【0028】
具体的には、制御部7の入力側には、上述の排気温度センサ221、圧力センサ111およびATF温度センサ32から出力される検出信号が入力される。一方、出力側には、上述の循環ポンプ123、導入側バルブ141および排出側バルブ151等の各種電気式アクチュエータが接続されている。なお、制御部7が、本発明の制御手段に相当している。
【0029】
本実施形態では、蓄熱システム1が排気温度TE、水蒸気分圧PGおよびATF温度Toに基づいて導入側バルブ141および排出側バルブ151の作動を変更して、加熱モードおよび蓄熱モードのそれぞれを実行する。この制御の詳細について、図3および図4のフローチャートにより説明する。
【0030】
加熱モードでは、図3に示すように、まずステップS11で、ATF温度センサ32により検出された加熱部122の上流側のATF温度Toを読み込む。続いて、ステップS12で、ATF温度Toが予め定めた暖機目標温度TW以下になっているか否かを判定する。
【0031】
ステップS12でATF温度Toが暖機目標温度TW以下になっている場合は、ATFを加熱して自動変速機3の暖機を行う必要があると判定し、ステップS13へ進む。ステップS13では、導入側バルブ141を開いて加熱モードを実行し、ステップS11に戻る。本実施形態では、このステップS13において、循環ポンプ123を作動させる。なお、加熱モードの詳細については、後述する。
【0032】
一方、ステップS12でATF温度Toが暖機目標温度TW以下になっていない場合は、自動変速機3の暖機を行う必要がない、すなわちATFを加熱する必要がないと判定し、ステップS14へ進む。ステップS14では、導入側バルブ141を閉じて加熱モードを終了し、その後リターンする。本実施形態では、このステップS13において、循環ポンプ123を停止させる。
【0033】
蓄熱モードでは、図4に示すように、まずステップS21で、排気温度センサ221により検出された排気管22内の排気温度TEを読み込む。続いて、ステップS22で、排気温度TEが予め定めた蓄熱温度TS以上になっているか否かを判定する。
【0034】
ステップS22で排気温度TEが蓄熱温度TS以上になっていない場合は、蓄熱材に蓄熱することができないと判定し、ステップS21に戻る。
【0035】
一方、ステップS22で排気温度TEが蓄熱温度TS以上になっている場合は、蓄熱材に蓄熱可能と判定し、ステップS23へ進む。ステップS23では、排気側バルブ151を開いて蓄熱モードを実行し、ステップS24へ進む。なお、蓄熱モードの詳細については後述する。
【0036】
ステップS24では、圧力センサ111により検出された反応器11内の水蒸気分圧PGを読み込む。続いて、ステップS25で、水蒸気分圧PGが予め定めた蓄熱完了時の水蒸気分圧PS以下になっているか否かを判定する。
【0037】
ステップS25で水蒸気分圧PGが蓄熱完了時の水蒸気分圧PS以下になっていない場合は、蓄熱が完了していないと判断し、ステップS24に戻る。
【0038】
一方、ステップS25で水蒸気分圧PGが蓄熱完了時の水蒸気分圧PS以下になっている場合は、蓄熱が完了したと判断し、ステップS26へ進む。ステップS26では、排気側バルブ151を閉じて蓄熱モードを終了し、その後リターンする。これにより、次に加熱モードを実行する時まで、蓄熱状態が維持される。
【0039】
次に、上述の構成における本実施形態の作動について図2を参照して説明する。まず、加熱モードの作動について説明する。
【0040】
加熱モードでは、導入側バルブ141が全開状態となり、排気側バルブ151が全閉状態となり、循環ポンプ123が作動状態となる。このため、外気(大気)が導入通路14を通過して反応器11へ流入する。そして、反応器11において、外気中に含まれる水および蓄熱材が反応して反応熱が発生する。
【0041】
このとき、受熱部121において、当該反応熱により熱媒体が加熱される。受熱部121で加熱された熱媒体は、熱媒体回路12を循環し、加熱部122に流入する。そして、加熱部122において、受熱部121で加熱された熱媒体によりATFが加熱される。
【0042】
次に、蓄熱モードの作動について説明する。
【0043】
蓄熱モードでは、導入側バルブ141が全閉状態となり、排気側バルブ151が全開状態となり、循環ポンプ123が停止状態となる。また、反応器11は排気が有する熱により加熱される。このため、反応器11において、蓄熱材の水和物が加熱される。これにより、水和物は蓄熱材と水蒸気とに分離し、その際に排気が有する熱を蓄熱する。そして、反応器11内の水蒸気は、排出通路15に流入し、大気中に排出される。
【0044】
続いて、本実施形態において用いられる蓄熱材について説明する。本実施形態では、蓄熱材として、下記の一般式(1)で表されるホスホン酸化合物の金属塩および下記の一般式(2)で表されるカルボン酸化合物の金属塩の少なくとも一方を用いている。
【0045】
【化1】

式中、R1〜R5は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜11のアルコキシカルボニル基、またはハロゲン原子のいずれかを表している。なお、ここで炭素原子数2〜11のアルコキシカルボニル基とは、アルコキシ基の炭素原子数が1〜10であるアルコキシカルボニル基を指している。
【0046】
【化2】

式中、R6〜R10は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、カルボキシ基、炭素原子数2〜11のアルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、またはハロゲン原子のいずれかを表している。なお、ここで炭素原子数2〜11のアルコキシカルボニル基とは、アルコキシ基の炭素原子数が1〜10であるアルコキシカルボニル基を指している。
【0047】
1〜R10が表す炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、tert−アミル基、sec−イソアミル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0048】
1〜R10が表す炭素原子数2〜11のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソアミルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、sec−イソアミルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0049】
1〜R10が表すハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0050】
上記の一般式(1)で表されるホスホン酸化合物の具体例としては、フェニルホスホン酸、p−トリルホスホン酸、(4−エチルフェニル)ホスホン酸、(4−n−プロピルフェニル)ホスホン酸、(4−イソプロピルフェニル)ホスホン酸、(4−n−ブチルフェニル)ホスホン酸、(4−イソブチルフェニル)ホスホン酸、(4−tert−ブチルフェニル)ホスホン酸、(3,5−ビス(メトキシカルボニル)フェニル)ホスホン酸、(3,5−ビス(エトキシカルボニル)フェニル)ホスホン酸、(2,5−ビス(メトキシカルボニル)フェニル)ホスホン酸、(2,5−ビス(エトキシカルボニル)フェニル)ホスホン酸等が挙げられる。これら化合物は、市販品を好適に使用することができる。
【0051】
上記の一般式(2)で表されるカルボン酸化合物の具体例としては、安息香酸、サリチル酸などの安息香酸類;フタル酸、4−メチルフタル酸、4−メトキシカルボニルフタル酸、4−クロロフタル酸、4,5−ジクロロフタル酸などのフタル酸類;イソフタル酸、2−メチルイソフタル酸、5−tert−ブチルイソフタル酸、4−メトキシカルボニルイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、4−フルオロイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、4,6−ジクロロイソフタル酸などのイソフタル酸類;テレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、2−エチルテレフタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、2,6−ジメチルテレフタル酸、2,3,5,6−テトラメチルテレフタル酸、2−ヨードテレフタル酸、2,5−ジブロモテレフタル酸、2−ブロモ−5−フルオロテレフタル酸、2,6−ジクロロテレフタル酸、2,3,5,6−テトラフルオロテレフタル酸、2,5−ジクロロ−3,6−ジブロモテレフタル酸、2−メトキシカルボニルテレフタル酸、2−エトキシカルボニルテレフタル酸、2,3−ビス(メトキシカルボニル)テレフタル酸、2,5−ビス(メトキシカルボニル)テレフタル酸、2,3,5,6−テトラキス(メトキシカルボニル)テレフタル酸などのテレフタル酸類等が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸類が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。これら化合物は、市販品を好適に使用することができる。
【0052】
ホスホン酸化合物の金属塩およびカルボン酸化合物の金属塩を形成する金属としては、1価、2価および3価の金属を使用することができる。また2種以上の金属を混合して使用することもできる。
【0053】
上記金属塩を形成する金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、マンガン、鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、銀、スズ等が挙げられる。これら金属より形成される金属塩の中でも、マグネシウム塩、マンガン塩が好ましい。
【0054】
ホスホン酸化合物金属塩の製造方法は特に制限されないが、一般には、ホスホン酸化合物と、前記金属の塩化物、硫酸塩又は硝酸塩と、水酸化ナトリウム等のアルカリとを水中で混合して反応させることにより、ホスホン酸化合物金属塩を析出させ、ろ過、乾燥することで結晶性粉末として得ることができる。また、ホスホン酸化合物と、前記金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩又は有機酸塩とを、水中又は有機溶媒中で混合反応させ、その後溶媒をろ過または留去、乾燥することにより得ることもできる。
【0055】
得られる粉末の形態は、通常は粒状結晶、板状結晶、短冊状(ストリップ状)結晶、棒状結晶、針状結晶等となり、さらにこれらの結晶が積層した形態になることもある。これらの化合物(結晶性粉末)は、市販されている場合には、市販品を使用することができる。
【0056】
ホスホン酸化合物金属塩の形成に際し、ホスホン酸化合物と金属のモル比は特に制限されないが、一般にはホスホン酸化合物/金属のモル比として、1/100〜2/1又は1/2〜2/1の範囲で使用すると好ましい。
【0057】
次に、ホスホン酸化合物金属塩の製造方法の例を示す。
【0058】
(製造例1:フェニルホスホン酸マグネシウム塩の製造)
撹拌機を備えた300mLのガラス容器に、フェニルホスホン酸7.9g[日産化学工業(株)製](50mmol)および水100gを仕込み、撹拌した。この混合物へ、水酸化ナトリウム[和光純薬工業(株)製]4.2g(105mmol)を加え均一な溶液とした。ここへ、塩化マグネシウム六水和物[和光純薬工業(株)製]10.2g(50mmol)を水100gに溶解させた水溶液を加え、室温(およそ25℃)で1時間反応させた。反応後、析出している固体をろ取し、得られた固体を水200mLに分散しろ取する洗浄工程を2回繰り返した。得られた湿品を110℃で6時間乾燥し、目的とするフェニルホスホン酸マグネシウム塩(PPA−Mg)粉末4.8gを得た。
【0059】
(製造例2:フェニルホスホン酸マンガン塩の製造)
撹拌機を備えた300mLのガラス容器に、フェニルホスホン酸[日産化学工業(株)製]7.9g(50mmol)及び水100gを仕込み、撹拌した。この混合物へ、水酸化ナトリウム[和光純薬工業(株)製]4.2g(105mmol)を加え均一な溶液とした。ここへ、塩化マンガン四水和物[和光純薬工業(株)製]9.9g(50mmol)を水100gに溶解させた水溶液を加え、室温(およそ25℃)で1時間反応させた。反応後、析出している固体をろ取し、得られた固体を水200mLに分散しろ取する洗浄工程を2回繰り返した。得られた湿品を110℃で6時間乾燥し、目的とするフェニルホスホン酸マンガン塩(PPA−Mn)粉末10.8gを得た。
【0060】
(製造例3:テレフタル酸マンガン塩の製造)
攪拌機を備えた300mLのガラス容器に、テレフタル酸[純正化学(株)製]8.4g(51mmol)および水100gを仕込み、撹拌した。この混合物へ、水酸化ナトリウム[関東化学(株)製]4.3g(108mmol)を加え均一な溶液とした。ここへ、塩化マンガン四水和物[純正化学(株)製]10.0g(51mmol)を水50.0gに溶解させた水溶液を加え、室温(およそ25℃)で1時間反応させた。反応後、析出している固体をろ取し、得られた固体を水150mLに分散しろ取する洗浄工程を2回繰り返した。得られた湿品を60℃で3時間乾燥し、目的とするテレフタル酸マンガン塩(TPA−Mn)粉末11.8gを得た。
【0061】
(製造例4:2,5−ジヒドロキシテレフタル酸マグネシウム塩の製造)
攪拌機を備えた10mLのガラス容器に、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸[アルドリッチ製]0.2g(1.0mmol)および水4.0gを仕込み、撹拌した。この混合物へ、水酸化ナトリウム[関東化学(株)製]0.1g(2.5mmol)を加え均一な溶液とした。ここへ、塩化マグネシウム[純正化学(株)製]0.1g(1.1mmol)を水0.5gに溶解させた水溶液を加え、室温(およそ25℃)で1時間反応させた。反応後、析出している固体をろ取し、得られた固体を水1.5mLに分散しろ取する洗浄工程を2回繰り返した。得られた湿品を50℃で1時間乾燥し、目的とする2,5−ジヒドロキシテレフタル酸マグネシウム塩(2,5−DHTPA−Mg)粉末0.07gを得た。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
上記製造例1で得られたPPA−Mgについて、TG−DTA[(株)リガク製 Thermo plus EVO II TG8120]測定により、空気下における蓄熱性能を評価した。評価は、空気雰囲気下、試料を10℃/分で300℃まで昇温し、続けて10℃/分で40℃まで冷却した後、再度10℃/分で300℃まで昇温する際の水の脱離による吸熱量を測定した。この結果を下記の表1に示す。
【0064】
(実施例2)
上記製造例2で得られたPPA−Mnについて、上記実施例1と同様に蓄熱性能を評価した。この結果を下記の表1に示す。また、得られたTG−DTAチャートを図5に示す。
【0065】
(実施例3)
上記製造例3で得られたTPA−Mnについて、上記実施例1と同様に蓄熱性能を評価した。この結果を下記の表1に示す。
【0066】
(実施例4)
上記製造例4で得られた2,5−DHTPA−Mgについて、上記実施例1と同様に蓄熱性能を評価した。この結果を下記の表1に示す。
【0067】
(比較例1)
塩化カルシウム二水和物[和光純薬工業(株)製]について、上記実施例1と同様に蓄熱性能を評価した。この結果を下記の表1に示す。
【0068】
(比較例2)
無水酢酸ナトリウム[純正化学(株)製]について、上記実施例1と同様に蓄熱性能を評価した。この結果を下記の表1に示す。
【0069】
(比較例3)
無水硫酸ナトリウム[純正化学(株)製]について、上記実施例1と同様に蓄熱性能を評価した。この結果を下記の表1に示す。
【0070】
(比較例4)
水酸化カルシウム[醒井工業(株)製]について、昇温温度を500℃に変更した以外は上記実施例1と同様に蓄熱性能を評価した。この結果を下記の表1に示す。
【0071】
【表1】

表1から明らかなように、実施例1〜4は空気中での冷却過程において比較例1〜4と比較してより多くの結晶水を取り込めることがわかる。この結果は、加熱により脱水させた無水物が空気中の水分で水和物となる際に発熱が起こることを示しており、実施例1〜4に示す化合物が蓄熱材として好適に利用できることを意味する。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の蓄熱システム1は、大気中に含まれる成分である水を反応媒体として用いるとともに、反応器11に接続された導入通路14および排出通路15を備えている。これにより、導入通路14により反応器11に反応媒体を含む大気を直接導入するとともに、蓄熱モードにおいて水和物から分離された水蒸気を排出通路15により反応器11から大気へ直接放出させることができる。このため、水を貯蔵するタンクや、脱水反応に伴って反応器11から放出された水蒸気を凝縮させる凝縮器等を設ける必要がない。したがって、構造の複雑化および体格の大型化を抑制することが可能となる。
【0073】
また、内燃機関2を走行用駆動源とする車両に蓄熱システム1を搭載することで、内燃機関2の排気が有する熱を蓄熱し、その熱を暖機促進に利用することができるので、車両の燃費を向上させることができる。
【0074】
ところで、車両の始動時にATFを早期に暖機することで、燃費向上効果がより大きくなる。このため、本実施形態のように、内燃機関2の排気が有する熱を蓄熱し、その熱をATFの暖機に利用することで、より効果的に車両の燃費を向上させることができる。
【0075】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0076】
(1)上述した実施形態では、蓄熱材と反応する反応媒体、すなわち大気中に含まれる成分として、水を採用した例について説明したが、これに限らず、反応媒体として窒素や二酸化炭素等を採用してもよい。
【0077】
(2)上述した実施形態では、ATFを加熱対象物Fとした例について説明したが、これに限らず、エンジン冷却水、触媒23、エンジンオイル、車載バッテリ等を加熱対象物Fとしてもよい。
【0078】
(3)上述した実施形態では、内燃機関2の排気の有する熱を熱源とした例について説明したが、これに限らず、内燃機関2の冷却水の有する熱を熱源としてもよい。
【0079】
(4)上述した実施形態では、反応器11を、排気管22の外周を一周するように輪状に形成するとともに、排気管22の外壁と接触するように配置した例について説明したが、これに限らず、排気と熱的に接触していれば任意の構成にすることができる。
【0080】
(5)上述した実施形態では、導入通路14と排出通路15とを独立した2つの配管によって構成した例を説明したが、これに限らず、1つの配管によって導入通路14および排出通路15を構成してもよい。
【0081】
(6)上述した実施形態では、導入通路14および排出通路15を、反応器11に接続される配管により構成した例について説明したが、これに限らず、導入通路14および排出通路15を、反応器11に形成した貫通孔により構成してもよい。この場合、貫通孔の開度を調整するバルブにより、開度調整手段を構成することができる。
【0082】
(7)上述した実施形態では、反応器11内に単一の蓄熱材を充填した例について説明したが、これに限らず、複数種類の蓄熱材を組み合わせて使用してもよい。
【0083】
(8)上述した実施形態では、蓄熱システム1を、内燃機関2を走行用駆動源とする車両に適用した例について説明したが、蓄熱システム1の適用例はこれに限定されない。例えば、蓄熱システム1を、電動モータを走行用駆動源とする電気自動車や、車両外部の商用電源等を用いて走行用モータに電力を供給するバッテリの充電が可能(プラグイン方式)となっている電気自動車に適用してもよい。また、蓄熱システム1を、住宅用家屋に適用してもよい。
【符号の説明】
【0084】
11 反応器
14 導入通路
15 排出通路
図1
図2
図3
図4
図5