(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点を解決して、汎用性が高く、多品種に適応できるように、分別可能範囲(対象物性)を広くできること、一工程での分別数を多くできること、またそれらによって品種毎の運転条件の変更を省力化できること、コンパクトで場所を取らず、設計の自由度が高いこと、必要な機器構成を少なくして、設置や運転準備に必要な時間やコストが少ないことを、同時に満たす分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、上下方向に延在する主カラムと、前記主カラムの下方に設けられ、前記主カラム内で上向きの流れを形成する気体を導入する第1の開口部と、
前記第1の開口部から送風する送風手段と、前記主カラムの上方に設けられ、対象物が投入される第2の開口部と、
前記主カラムの前記第2の開口部と前記第1の開口部との間に
複数設けられた吸引口
と、前記複数設けられた吸引口のそれぞれに接続する該吸引口から延在する吸引経路と、前記複数設けられた各吸引口に接続される吸引経路を介してそれぞれ設けられた各吸引手段と、前記吸引経路内に設けられ、吸引された前記対象物を回収する固気分離手段と、を備え、対象物に作用する気流より受ける抗力と該対象物に働く重力とが均衡するときの気流の動圧によって特定される性状の異なる複数の対象物のうちの一つの対象物に対して作用する、前記
各吸引口の下方位置における下方からの送風に基づく抗力F1、前記
各吸引口の上方位置における下方からの送風に基づく抗力F3および重力Fgを、F3がFg以下となりかつF1がFgよりも大きくなるように、
前記送風手段によって前記各吸引口における下方からの送風の流速を調整するとともに前記各吸引手段によって前記各吸引口の吸引の気流の流速を調整して前記
各吸引口において
、前記気体を吸引する吸引力
と前記抗力F1とを個別に調整し、前記
各吸引口から
前記一つの対象物を前記吸引力により前記各吸引口の下流に吸引して
前記一つの対象物を選別し、複数の前記吸引口の少なくとも一つは、前記主カラムの流路の内部に下向きに配置され、接続される吸引経路部が前記主カラムの流路内に設けられる、ことを特徴とする。
また、本発明では、縦型の主カラムと、前記主カラムの下方の側壁に設けた送気口と、さらにその側壁上方の高さの異なる少なくとも2カ所以上の複数の位置に設けた吸引口と、前記主カラム上方より対象物を投入して重力落下させる投入口を備え、前記送気口より送風して、主に前記各々の吸引口付近での送風による動圧および吸引口に吸引される気体による動圧の両動圧による前記吸引口に対象物を取り込む能力が、前記少なくとも2カ所の吸引口位置で異なる様に調整可能な選別装置であって、前記主カラム内を落下する対象物の大きさや比重等の物性差によって、前記各々の吸引口付近で、下方からの送風による動圧および吸引口の吸引による動圧らに基づき対象物が吸引口内に取り込まれる方向に作用する力が落下運動する対象物の重力を上回る物性の対象物を前記各々の吸引口より吸引することによって、選別することを特徴とする。
また、送気口からの送風により主カラム内に生ずる気流を吸引口より吸引することによって、主カラム内の流量を吸引口前後で変化させ、これによって主に選別能を決める前記動圧を変化させることを特徴とする。
また、吸引口より吸引される気流の吸気量および速度を調整する吸引部位の内径や、流量調整弁や吸引機等の機構を有し、該吸気量および該気流速度を調整して選別能を決める前記動圧を変化させることを特徴とする。
また、吸引口および該吸引口から吸引される気流および取り込まれる対象物が通る経路(吸引経路)の垂直方向の角度および経路については長さを調整することで、吸引口より取り込まれる対象物の取込速度および選別精度を調整可能とすることを特徴とする。
また、主カラムの管径を部位により変化させる、あるいは絞りを1カ所以上挿入することにより、該主カラムの内径を部位により変化させることにより選別能を決める前記動圧を変化させ、主カラムの任意の部位で異なる動圧になるように調整できることを特徴とする。
また、(吸引口付近での送風による動圧と吸引口による吸引による動圧とを、略等しくすることを基本として、)前記の二つの動圧の比を調整することで、吸引口に取り込まれる対象物の取込速度および選別精度を調整可能とすることを特徴とする。
また、主カラムの送気口からの送気量と、前記複数の吸引口の吸気量の合計が略一致するようにして、主カラム上部の前記投入口から投入された前記対象物が投入口より逆流して排出されないようにしたことを特徴とする。
また、主カラムの送気口からの送風と、前記複数の吸引口から吸気が循環するようにしたことを特徴とする。
また、送気口と送気経路中の送気のためのポンプとの間および吸引口と吸引経路中の吸気のためのポンプとの間に少なくとも1カ所以上に流量調整弁を設け、送気口からの送気量や各吸引口からの吸気量を調整可能にしたことを特徴とする。
また、主カラム内に前記対象物の落下速度を緩和させるための制動機構を設けたことを特徴とする。
さらに、送風および吸引用に1機以上のポンプやブロアー等の機器を有すること、送気量あるいは、吸気量を調整するための弁等の流量調整機構を有すること、吸引口より吸引された気流と取り込まれた対象物を分離する機構と対象物を収集して回収するための機構を有すること等を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、従来の縦型カラムを利用した選別機に比べ、送風による空圧(重力による落下運動に対する抗力、浮力)と吸引力とを各々個別に調整可能で二重の選別機構を短い距離で達成し、またこれら概カラム内に直列に複数組設置可能であり、精度一定で容易に選別段数を増やすことを可能とした。
また、本発明では、選別を多段化しても、カラムへの一系統の送風で動作可能としたことで、送風・吸引(循環)装置一台から運用可能である。主カラムも1本(一系統)を基本とし、段数(選別数)の増設、変更が容易である。さらに、設置後も送吸気量のみでなく、「絞り(幅や長さ)」等で容易に、幅広く調整可能である。
また、本発明では、送風等の動力を必要とする機器を減らすことができるほか、多段化した場合でも対象物の送風による装置内移動距離が少ないため、送風・吸引(循環)装置を小型化、省エネルギー化でき、また運転コストも低くなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の選別装置の一実施例の全体概念図である。
【
図2】
図1の選別装置の循環系において、ポンプおよび流量調整弁の他の配置例を説明した図である。
【
図3】
図1の選別装置の循環系において、ポンプおよび流量調整弁の他の配置例を説明した図である。
【
図4】本発明の選別装置の原理の説明1:吸引経路を水平方向に取り付けた場合の原理を説明する図である。
【
図5】本発明の選別装置の原理の説明1’:吸引経路が水平方向に取り付けられかつ吸引口が下向きに開口している場合の原理を説明する図である。
【
図6】
図5の吸引経路が水平方向に取り付けられかつ吸引口が下向きに開口している場合の、さらに主カラムがジグザグである場合を説明する図である。
【
図7】本発明の選別装置の原理の説明2:吸引経路を経路下流側方向に水平より上向きに取り付けた場合の原理を説明する図である。
【
図8】本発明の流量調整弁による吸引力調整を説明する図である。
【
図9】本発明の動圧の調整例1を説明するための図である。
【
図10】本発明の動圧の調整例2(絞り有り)を説明するための図である。
【
図11】本発明の動圧の調整例3(絞り有り)を説明するための図である。
【
図12】本発明の動圧の調整例2’(絞り有り)を説明するための図である。
【
図13】本発明の動圧の調整例3’(絞り有り)を説明するための図である。
【
図14】本発明の固気分離器の一例を示した図である。
【
図15】減速時間と距離(絞りの必要長さ)を説明するための図である。
【
図16】制動機構(回収促進絞り:その1)を説明するための図である。
【
図17】制動機構(回収促進絞り:その2)を説明するための図である。
【
図18】制動機構(板)を説明するための図である。
【
図19】制動機構(吸引経路が制動機構を兼ねる)を説明するための図である。
【
図20】制動機構(櫛形状、多孔化)を説明するための図である。
【
図21】主カラムの整流機構の一例を説明した図である。
【
図22】本発明の選別装置で模擬試料を用いた選別例(その1)を説明するための図である。
【
図23】本発明の選別装置で模擬試料を用いた選別例(その2)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の選別装置における一実施例の全体概念図を
図1に示す。
図1において、1は主カラムであり、主カラムは、内部に気流が無い場合に、全ての吸引口と同じ高さのカラム内の任意の位置または投入口から対象物(粒子)をカラム内部に落下させた場合に、カラム最低部に設けられている回収槽にまで到達して、該落下時に対象物が捕獲され落下出来なくなる様な凹部、突起部や段差等がなければ、円筒形でなくてもよく、内壁の角度や曲率が一様で無くても、水平や垂直で無くても、上下方向等の位置間で形状が変化していても、傾斜があっても構わない。また運転時に、装置内外で大気の入出が管理できるように設計されている必要がある。側壁の下方に送気口を設け、さらにその側壁上方に対象物(粒子)を投入口と高さの異なる複数の位置に吸引口を各々設けられている。また後述する、気流の整流や質量保存則に従って部分的に内径を細くして流速を高める絞りを1箇所または複数箇所設けても良い。また、該流速等気流制御を行うために、絞りまたは主カラム自体を任意部位で交換又は調節して自由に内径あるいは断面積を変更可能であることが好ましい。内壁は、対象物が捕促されない様に滑らかであることが好ましく、静電的な付着を防止する静電気除去機能や、水分による付着を防止するための除湿、乾燥機能を付与してもよい。
2は選別回収の対象物(粒子)を装置内に供給する投入口であり、投入口は対象物(粒子)を連続的に投入できる様に開口していることが好ましいが、送気口からの気流の流出により、対象物が逆流して該開口部から排出されない様に、送気口からの気流が流出しない機構、構造とする。例えば、投入する対象物と投入に係る機器類一式を装置とを気密性の容器等に入れ、気密性を維持した状態で投入口を該容器とを接続したり、投入口に気流の流出を防ぐロータリー弁を設けて該ロータリー弁を介して対象物を投入口より投入するようにしたり、投入口を全ての吸引口より高い位置に設置して吸引口により送気口からの気流を全て吸引させて投入口から気流が流出しない様にすれば良い。また対象物(粒子)を連続的に投入するベルトコンベアー等の装置の利用が可能な様に該投入口にシュート部を設置するなど自由に形状が選択できるものとする。
【0010】
3a〜3dは選別・回収機構であり、本装置においては、装置内部の各吸引口付近において、後述する原理に基づく選別作用および回収作用を有す。これらの作用は吸引口と同数具備され、各々の位置の選別、回収の各作用に関与する部分の総称として「選別・回収機構」と定義する。本装置は、該選別・回収機構を2つ以上有し、何れかの選別・回収機構で回収されるか、または何れの該機構でも回収されないかで、合計して対象物を最大で(選別・回収機構数+1)に分配する機能を有する。
4a〜4dは固気分離器であり、吸引口より吸引された対象物は、吸引経路を介して固気分離器により気流から分離されて固気分離器に接続された回収槽17a〜17dに回収される。固気分離器としては、サイクロンや、流路の径を大きくするなどして流速を低下させることにより槽内で重力落下させ気流より分離する回収トラップ等が利用でき、またこれらに限ることは無い。なお、主カラム1の底部も回収槽17eとする。さらに回収槽は、後述の循環系に悪影響を及ぼすこと無く、装置動作中(の任意のタイミングで、単発的、断続的あるいは連続的に)対象物を装置外に排出するための排出機構を備えていても、該回収槽自体を該排出機構と置き換えても良い。
送気口8は送気経路9を介して送風機と接続され、1カ所でも、主カラム内の気流の整流を目的とするなどして複数箇所に設けても良く、動圧調整用の補助送気口を吸引口間に設けてもよい。送気経路には流量調整弁5e、流量・流速計7e、大気開放弁18e〜18f、フィルター等を設置しても良い。送風機の出力や弁により送気量が調整できることが好ましい。送風機としては、ポンプ6eやブロアー等が利用でき、またこれらに限ることは無い。
吸引口15a〜15dは吸引経路16a〜16dを介して吸引機と接続される。吸引経路には、前記の固気分離器の他に、流量調整弁5a〜5d、流量・流速計7a〜7d、大気開放弁18a〜18d、フィルター等を設置しても良い。吸引機の出力や弁により吸気量が調整できることが好ましい。吸引機としては、ポンプ6a〜6dやブロアー等が利用でき、またこれらに限ることは無い。
【0011】
送気系統と吸気系統と総称して循環系と定義する。循環系は、上記のとおり送風と吸引で別系統として管理してもよく、また両系統を接続して装置内で気流が循環するようにしてもよい。また送風機と吸引機を兼用可能な装置を用いてよく、従って送風吸引の兼用機一台から運用可能とする。
なお、送気は、送気経路を大気開放として吸引機の吸引力に伴う該開放口からの自然吸気によるものとしても良く、また、吸気は、前記投入口を大気開放せず、送風機からの気流を各吸引口から自然排気することで代替することも可能で、これら大気を介した循環にすることもできる。
各送気口、吸引口の流量、流速等を、送風・吸引機出力、流量調整弁、経路の径や長さ等により各々調整可能な様に設計されている必要がある。
流量・流速計は流用調整に利用されるが特に対象物が通過する部位においては、選別性に悪影響が無い様に設置されるか、選別動作中は影響の無い位置に待避できるよう設計されていることが好ましい(7f〜7i参照)。
また、フィルターは、特に気流を循環させる場合には、負圧を極力小さくするように設計されている方が好ましい。
なお、
図1の装置では、主カラム下方からの送気量と、各吸引口の吸気量の合計が略一致して、カラム上部の投入口からの排気が略ないことにより、投入された対象物が投入口より逆流して排出されない様にA+B+C+D=Eに設計されているが、これに限ることは無い。
なお、
図1では吸引口は4個である場合を示したが、吸引口は2個以上の複数個設けることができる。
【0012】
図2〜3は本発明の循環系のポンプと流量調整弁の他の配置例を説明した図であり、
図2では、
図1における吸気用のポンプを4個省略した構成であり、
図3では、
図1における送気用のポンプを1個省略した構成である。
【0013】
(本発明の原理の説明1:吸引経路を水平方向に取り付けた場合)
主カラム上部の投入口より主カラム内に投入された対象物は、主カラム下部に設置された送気口からの気流と衝突する。
図4は、本発明の選別装置の原理(吸引経路を水平方向に取り付けた場合)を説明した図である。
図4に示すように、吸引経路は主カラムの側壁に水平方向に取り付けられている。主カラムを下方から送風されてきた気体(矢印1)は、一部が吸引口から吸引(矢印2)され残りが主カラム上方へ送気(矢印3)されていく。このとき質量a1[kg]の対象物(図では黒丸で示す)が重力落下した場合に働く重力(Fgで表す)は略
Fg=9.8×a1[N]
となる。一方、重力落下する対象物に作用する送気の気体より受ける主な力の抗力(D)は、
D=ρ×V
2÷2×s×C
D
(ρは流体の密度、Vは対象物との相対速度、sは対象物の代表面積、C
Dは抗力係数)
このとき、
矢印1の送風に基づく動圧をp1[Pa]
矢印2の送風(吸引)に基づく動圧をp2[Pa]
矢印3の送風に基づく動圧をp3[Pa]
とし、気流の動圧が重力に対して該断面積を代表面積、抗力係数を1とすると、対象物に作用する矢印1、矢印3の各位置での送風に基づく力(F1、F3で表す)は該抗力の式における(ρ×V
2÷2)が動圧に一致することから、それぞれ略、
F1=p1×s[N]
F3=p3×s[N]
となり、落下する対象物に作用する矢印2の吸引に基づく力(F2で表す)は、
F2=p2×s[N]
となる。なお、該抗力の他に対象物に作用する力として浮力があるが、例えば気流が空気で、対象物の比重が1程度の場合に、以下のとおり重力に対して著しく小さいことから、実質無視して考えることができる。
(対象物が比重1(密度:1[g/cm
3],1000[kg/m
3])とすると、空気の浮力は、大気圧で20℃(空気密度:1.205[kg/m
3])の時、(浮力/重力)比は1.205/1000と著しく小さい)
そこで、以下の(1)式の条件を考える。
F3≦Fg<F1 …(1)
基本的に(1)式の関係の場合に、対象物は吸引口より回収される。しかしながら、装置内の気流や動圧は、対象物分布等に影響される。局所的な状態は流動的であることから、一定の冗長性を有し、多少の関係のズレが生じた場合でも動作する場合がある。
また、以下の(2)式の関係の場合には、(1)式の関係には無く、以下の(1)’式の関係となる場合に、吸引力が弱い吸引口から遠い位置に落下した場合には回収されない対象物であっても、吸引力の強い吸引口近くを落下した場合に回収される確率が高くなるので好ましくない。
F2>F1 …(2)
Fg≧F1 …(1)’
【0014】
(本発明の原理の説明1’:吸引経路が水平方向に取り付けられかつ吸引口が下向きに開口している場合)
図5、
図6は、上記本発明の原理の説明1(吸引経路が水平方向に取り付けた場合)において、さらに吸引口を下向きに開口させた場合を説明した図である。
吸引口が主カラム中で垂直(
図4参照)または上向きに開口している場合は、対象物が、対象物間やカラム内壁と衝突してカラム内をジグザグに落下する場合や吸引口の近くを落下する場合等に、前記のとおり本来(1)式の関係にならず回収を意図されない相対的に重い(大きい)対象物が直接吸引口内に落下することにより回収される可能性がある(
図5の左図、および
図6の左図参照)。そこで、該吸引口を垂直より下向きに開口するように設置する(
図5の中央図、右図、および
図6の右図参照)ことで、回収を意図されない該重い(大きい)対象物が上記のように何らかの原因により吸引口内に進入して意図せず回収されるのを防止する効果が得られることになる。したがって、吸引口を下向きに開口するように設置することで選別精度が向上する場合がある。
【0015】
(本発明の原理の説明2:吸引経路を経路下流側方向に水平より上向きに取り付けた場合)
図7は、本発明の選別装置の原理(吸引経路を経路下流側方向に水平より上向きに取り付けた場合)を説明した図である。
吸引口から回収機構(固気分離器)までの吸引経路が水平または経路下流側方向に水平より下向きに接続されていると、対象物が、対象物間やカラム内壁と衝突してカラム内をジグザグに落下する場合や吸引口の近くを落下する場合等に、本来(1)式の関係にならず回収を意図されない相対的に重い(大きい)対象物が直接吸引口内に進入して回収される可能性がある。そこで、該吸引経路を経路下流側方向に水平より上向きとすることで、重力による該吸引経路内より主カラム内に引き戻す(落下させる)作用を追加することができる。すなわち、該吸引口と該吸引経路にも選別機能(第2の選別機能)を付与し、回収を意図されない該重い(大きい)対象物が上記のように何らかの原因により吸引口内に進入した場合に、該対象物を選別し意図せず回収されるのを防止する効果を得られることになる。したがって、該吸引経路を回路下流側方向に水平より上向きとすることで選別精度が向上する場合がある。ただし、この場合には、吸引口周辺や該吸引経路内に対象物が滞留しないように上記(1)式、(2)式に加えて以下の(3)式を加えて、
F1≒F2(正確にはF2の垂直方向成分) …(3)
の関係になることが望ましい。なぜならF1>F2の場合に、落下はしないが、吸引されない対象物が発生する可能性があるためである。(なお、F1<F2となると、上記原理の説明1での説明と同様に意図せぬ回収の可能性があり好ましくない。)
【0016】
(吸引力(動圧)の調整機構)
各吸引経路に接続された吸引機(ポンプ)の出力、吸引口や吸引経路の径や長さで吸引される気流の流量や速度(動圧)が調整可能である。また、調整弁を利用すると調整の自由度が高く運用上好ましい。
図8に示すとおり流量調整弁(10a〜10d)を用いれば、吸引経路(16a〜16d)が一定でも、流量調整弁の開度により流量を調整し、吸引口(15a〜15d)での吸引される気流の速度(動圧)が調整可能であり、動作中の微調整も可能である。
【0017】
(動圧の調整)
動圧は以下の式のとおり流速の関数であり、流速によって選別性が調整可能である。
Pv=V
2÷2×ρ
ここで、Pv:動圧[Pa]、V:流速[m/s]、ρ:密度[kg/m
3]である。
また、流速は以下の関係であり、流量一定とすると経路断面積により調整可能である。
Q=VS
ここで、Q:流量[m
3]、S:断面積[m
2]である。
【0018】
(調整例1)
図9は動圧の調整例である調整例1を説明するための図である。
図9の例は絞りがなく、主カラムが円筒形で、構成の等しい縦列する2つの選別・回収機構がある場合に、図示のとおりに下段の流量Q1および断面積S1を規定し、各段の吸引および送気の気流の動圧を等しくすると残りの条件は自動的に決定される。
すなわち、
Q1=Q2+Q3
Q3=Q4+Q5
であり、吸引口(15−2)、(15−4)の内径が同じであるならば、断面積S2、S4も等しく
S2=S4
となる。
下側の選別・回収機構1において、選別・回収機構1の下側での主カラムの流量Q1、流速V1、断面積S1を、
Q1:10、V1:1、S1:10、S2:1
にした場合、
S1=S3=S5
V1=V2、V3=V4(上記(3)式の関係より)
なので、これらの関係からQ1〜Q5、V1〜V5、S1〜S5は以下の表1のようになる。
【0020】
(調整例2)
図10は調整例2を説明するための図であり、
図9の調整例1と異なるところは、各吸引口(15−2)、(15−4)の下に主カラムの内径を細くする絞り(14−1)、(14−3)(いずれも断面積を半分にする絞りで説明する)を導入した点のみであり、その他の構成は
図9の調整例1と同様である。
上記調整例1と同様に
Q1=Q2+Q3
Q3=Q4+Q5
であり、吸引口(15−2)、(15−4)の内径が同じであるならば、断面積S2、S4も等しく
S2=S4
となる。
下側の選別・回収機構1、上側の選別・回収機構2において、同じ絞り(14−1)、(14−3)(いずれも断面積を半分にする絞りで説明する)を設けるとすると、下側の選別・回収機構1において、選別・回収機構1の下側での主カラムの流量Q1、流速V1、断面積S1を、
Q1:10、V1:2、S1:5、S2:1
にした場合、
S1=S3=S5
V1=V2,V3=V4(上記(3)式の関係より)
なので、これらの関係からQ1〜Q5、V1〜V5、S1〜S5は以下の表2のようになる。
【0022】
調整例2では、一定の送気量であっても、絞りを導入することで選別・回収機構における動圧を高め、より運動量の大きい対象物を回収可能となる。また絞り前後での動圧差を大きくして選別性を高める効果もある。
【0023】
(調整例3)
図11は調整例3を説明するための図であり、
図10の調整例2同様に、各吸引口(15−2)、(15−4)の下に主カラムの内径を細くする絞り(14−1)、(14−3)が設けてあるが、絞り(14−1)のみ断面積を半分にする絞りとする。そして調整例3では、上下の選別・回収機構1、2で同じ選別性を持たせるように調整する例を示す。
上記調整例1、2と同様に
Q1=Q2+Q3
Q3=Q4+Q5
であり、吸引口(15−2)、(15−4)の内径が同じであるならば、断面積S2、S4も等しく
S2=S4
となる。
上下の選別・回収機構1、2で同じ選別性を持たせるために流速Vを一定にすることとすると、下側の選別・回収機構1において、選別・回収機構1の下側での主カラムの流量Q1、流速V1、断面積S1を、
Q1:10、V1:2、S1:5、S2:1
にした場合、以下の表3のようになり、上側の選別・回収機構2を設計、調整することが可能である。すなわち、同一径のカラムを用いている選別・回収機構1、2で絞りを適切に調整することにより、同一の対象物を回収することができる。これにより、同一種の選別精度や回収率を向上させることができる。
【0025】
なお、上記調整例2、3では絞りを用いた例を示したが、絞りには整流の効果もあり、動圧を一定にして選別誤差を防ぐ効果もある。
また、絞りを用いた上記調整例2、3においては、絞り部での流量Qと絞り直下の流量Q’は等しいものの断面積Sが異なるので流速Vは異なることとなり、絞り直下での流速を知りたい場合には、調整例2、3と同様にして、以下の調整例2’(
図12、表4)、調整例3’(
図13、表5)に示すとおりに調整・設計することができる。
【0026】
(調整例2’)
図12に示した調整例2’は、上記調整例2と同じ条件であり、絞り部での流量をQ1、Q2、Q3とし、かつ絞り直下での流量を流量Q1’、Q3’、Q5’とすると、調整例2と同様にして以下の表4のとおりになる。
【0028】
(調整例3’)
図13に示した調整例3’は、上記調整例3と同じ条件であり、絞り部での流量をQ1、Q2、Q3とし、かつ絞り直下での流量をQ1’、Q3’、Q5’とすると、調整例3と同様にして以下の表5のとおりになる。
【0030】
図14は、固気分離器の一例を示した図であり、吸引口より吸引された対象物は吸引経路を介して固気分離器で気流から分離され回収槽に回収される。吸引経路は短い方が吸引機の負荷となる負圧を小さくできることから好ましい。固気分離器としては、粒子トラップ、サイクロン等を用いればよい。なお、
図14では対象物を装置外に排出するための排出機構として固体回収弁(ロータリーバルブ等)を採用している。
【0031】
(本発明の選別装置による選別例)
以下の表6に示す6種類混合サンプルについて、
図2に示した5分配構成(回収槽a〜eの5分配)の本発明の選別装置を用いて、基本動作を確認した。サンプルの種類と処理結果は表6に示すとおりである。
【0033】
2種の大きさ(重さ)の異なるプラスチックビーズはほぼ同じ粒子回収槽cで回収された。表6では、比重が決定因子になったと考えられる。なお、紙は盤上の形状が影響していることも考えられる。2種のプラスチックビーズを1種類とみなし、各サンプルの最多数の粒子回収槽を有用画分とすると、個数基準の計算ではあるが、いずれも分離効率は85%以上となった。また、平均径1mm、2mmの2サイズ混合ガラスビーズを処理した場合、上記同様、粒子回収槽dを2mmの有効画分として、重量基準で分離効率78%となり、選別(分級)装置として動作することが確認された。
【0034】
(減速時間と距離:絞りの必要長さ:制動機構)
減速時間と距離、すなわち絞りの必要長さについて、
図15を用いて以下に説明する。
図15に示すようにカラム上部の投入口から落下してきた対象物が絞り部分で落下から上昇に転じて吸引口から吸引される場合を考える。図において、吸引口中央位置付近で落下する対象物に作用する送風源に基づく力F1と重力FgがF1=Fgとなる境界線があり、それ以下ではF1(>Fg)は一定であると仮定すると、前記境界線位置での落下速度をv0とすれば、質量Mの物体が下向きの初速度v0で上向きの等加速度(F1−Fg)を受ける場合の運動方程式を解くことにより対象物の運動が求まるので、速度が0となる(落下から上昇に転じる)迄の時間から、上昇に転じるまでに必要な落下距離を求めることができる。これにより求めた必要な落下距離よりも、絞りが長くないと絞り部分で上昇に転じることができずに絞りを通過して落下してしまうことになる。
【0035】
絞りには、動圧の調整とともに、対象物が回収機構付近において落下速度の減速を加速させる回収動作の省時間、省距離化の効果もある。該効果(制動機構)に特化した絞りをここでは回収促進絞りとし、回収促進絞りのみ(
図16参照)、あるいは通常の絞りと重ねて使用する(
図17参照)ことも可能である。
上記のとおり対象物は(1)式が満たされる場合に吸引口より回収されるが、落下する対象物は(1)式が満たされる領域に到達後は上向きに加速されるが、落下運動の減速に一定の時間を要す。動圧が高い方が減速が早くなるので、選別性への影響が無い範囲で内径が小さい絞りを選択する方が、効果が大きくなる。なお、絞りの長さをこの減速時間を基に算出すれば、F1、F1m(回収促進絞り位置)>Fgとなる対象物だけを回収して、局所的に(1)式の例外のF1<Fg≦F1mとなる対象物は、F1、F1m<Fgの対象物同様に回収されないように調整することが可能である。
【0036】
主カラム内に、落下する対象物を衝突させて、該対象物の落下速度を緩和、あるいは等速化、また、吸引口へと誘導させる制動機構を設置することで、選別精度を向上させ得る場合がある。なお主カラム内まで延伸した吸引経路がこれを兼ねることが可能である。
特に絞りを使用して動圧を高く調整している場合、同じ対象物であっても、内壁との衝突等の外因の有無の差により、主カラムを該外因無しで落下してきた対象物のみが、減速の距離が不足して絞り部を通過して回収されず、結果として選別性の誤差を招く恐れがある。また、既に減速された該絞り部に存在する対象物が、別の高速で落下してきた対象物の衝突により、下方に加速されて同様に絞り部を通過してしまう可能性もある。前記制動機構は、該誤差を防止する効果を有することとなり、これにより選別精度を低下させることなく、短い絞りを有効活用して、より省スペースに、あるいは一定の空間でより多段化することが可能になる。なお、前記制動機構が主カラムの内径を狭める場合は、該制動機構は前述の絞りの効果を有することになるので、選別性に悪影響を及ぼさないような構造、構成とする必要がある。
例えば、前記のとおり減速に資する距離が短くなるように該機構を薄くする、または、構造をメッシュ状、櫛形状、多孔状等として必要な気流の通路を確保する。
また、これら機構により対象物が各装置面や他の対象物と衝突する確率が高まり、それによって対象物間の付着や絡まり等の解消が促進される場合がある。
図18にメッシュ状の板を用いた制動機構を示し、
図19に主カラム内まで延伸した吸引経路が制動機構を兼ねる場合を示し、
図20に櫛形状または多孔化した制動機構を示した。
【0037】
(整流機構)
主カラムは、意図せぬ気流(渦流、乱流、不均一分布等)を防止するための整流機構を有していても良い。
図21に主カラム内壁に設けた整流機構(カラム中心軸方向と平行に設けた整流板)を示す。
【0038】
(模擬試料を用いた選別例)
図22および
図23は、模擬試料を用いた選別の様子を模式的に示したものである。各処理条件および選別状況の詳細を表7および表8に示した。前提条件として、主カラムの最上端からは、気流は排出させず、該最上端から対象物を投下し、対象物は、気流(a:0.5、b:1.5、c:2.5、d:3.5、e:4.5、f:5.5、g:6.5、h:7.5)の各流速のときに、抗力と重力が均衡する性状の計8種類とした。
図22および表7の絞り無し1は、絞りを用いずに、計8箇所の回収槽に均等に回収される条件を、
図22および表7の絞り無し2は、絞りを用いずにかつ吸引口(吸引経路)径を最上段以外等しくなる条件を、
図22および表7の絞り有り1は、絞りを用いて、吸引口(吸引経路)径を全て等しくかつ計8箇所の回収槽に均等に回収される条件を示している。
図23および表8の絞り無し3、絞り無し4、および絞り有り2は、上記
図22および表7の絞り無し1、絞り無し2、および絞り有り1の条件から吸引機構を7箇所から4箇所に減少させた場合を示しているが、同様の結果となる。このように、「絞り」を導入することで、制御方法や装置設計の自由度、選択制を高めることができる。
さらに、
図22および表7の絞り有り1、
図23および表8の絞り有り2のとおり、絞りを用いることでより少ない気流量で、同じ選別性を得ることが可能となり、送風機(吸引機)等の消費エネルギー削減の効果を有することとなる。