【文献】
FUJIWARA, M. et al.,J. Biosci. Bioeng.,2006年,Vol.102, No.3,pp.241-243
【文献】
HIROKAWA, K. et al.,Biochem Biophys. Res. Commun.,2003年,Vol.311,pp.104-111
【文献】
HIROKAWA, K. et al.,Arch. Microbiol.,2003年,Vol.180,pp.227-231
【文献】
FERRI, S. et al.,J. Diabates Sci. Technol.,2009年,Vol.3,pp.585-592
【文献】
LIN, Z. and ZHENG, J.,Appl. Microbiol. Biotechnol.,2010年,Vol.86,pp.1613-1619
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
改変前の親アマドリアーゼと比較して、さらに、当該アマドリアーゼのアミノ酸配列中における、配列番号1に示すアミノ酸配列の以下の(w)、(x)、(y)、(z)、(aa)、(ab)、(ac)、(ad)、(ae)、(af)、(ah)、(ai)、及び(aj)よりなる群から選択される1つまたはそれ以上のアミノ酸に対応する位置のアミノ酸が、以下の(w)、(x)、(y)、(z)、(aa)、(ab)、(ac)、(ad)、(ae)、(af)、(ah)、(ai)、及び(aj)の各々に記載される置換後のアミノ酸残基へと置換されている、請求項4に記載の改変アマドリアーゼ:
(w)当該アマドリアーゼのアミノ酸配列中における、配列番号1に示すアミノ酸配列の125位のヒスチジンに対応する位置のアミノ酸が、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、グルタミン酸、リジン、またはアルギニンに置換されている;
(x)当該アマドリアーゼのアミノ酸配列中における、配列番号1に示すアミノ酸配列の261位のチロシンに対応する位置のアミノ酸が、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、またはリジンに置換されている;
(y)当該アマドリアーゼのアミノ酸配列中における、配列番号1に示すアミノ酸配列の263位のグリシンに対応する位置のアミノ酸が、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸に置換されている;
(z)当該アマドリアーゼのアミノ酸配列中における、配列番号1に示すアミノ酸配列の106位のアスパラギン酸に対応する位置のアミノ酸が、アスパラギン酸よりも分子量の小さいアミノ酸、すなわちグリシン、アラニン、セリン、バリン、スレオニン、システイン、ロイシン、イソロイシン、またはアスパラギンに置換されている;
(aa)当該アマドリアーゼのアミノ酸配列中における、配列番号1に示すアミノ酸配列の103位のグリシンに対応する位置のアミノ酸が、リジン、アルギニン、またはヒスチジンに置換されている;
(ab)当該アマドリアーゼのアミノ酸配列中における、配列番号1に示すアミノ酸配列の355位のアラニンに対応する位置のアミノ酸が、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸に置換されている;
(ac)当該アマドリアーゼのアミノ酸配列中における、配列番号1に示すアミノ酸配列の96位のアスパラギン酸に対応する位置のアミノ酸が、アラニン、アスパラギン、ヒスチジン、またはセリンに置換されている;
(ad)当該アマドリアーゼのアミノ酸配列中における、配列番号1に示すアミノ酸配列の66位のリジンに対応する位置のアミノ酸が、グリシンにまたは/および67位のバリンがプロリンもしくはヒスチジンに置換されている;
(ae)当該アマドリアーゼのアミノ酸配列中における、配列番号1に示すアミノ酸配列の70位のグルタミンに対応する位置のアミノ酸が、プロリンに置換されている;
(af)当該アマドリアーゼのアミノ酸配列中における、配列番号1に示すアミノ酸配列の100位のスレオニンに対応する位置のアミノ酸が、アルギニンに置換されている;
(ah)当該アマドリアーゼのアミノ酸配列中における、配列番号1に示すアミノ酸配列の113位のアラニンに対応する位置のアミノ酸が、グルタミン酸、またはリジンに置換されている;
(ai)当該アマドリアーゼのアミノ酸配列中における、配列番号1に示すアミノ酸配列の114位のロイシンに対応する位置のアミノ酸が、リジン、またはアルギニンに置換されている;
(aj)当該アマドリアーゼのアミノ酸配列中における、配列番号1に示すアミノ酸配列の156位のアスパラギン酸に対応する位置のアミノ酸が、アスパラギンに置換されている。
配列番号172に示すアミノ酸配列、又は配列番号172に示すアミノ酸配列に1〜10個のアミノ酸の欠失、挿入、付加、および/若しくは置換がなされたアミノ酸配列を有し、当該アミノ酸配列においてさらに、配列番号1の263位のグリシンに対応する位置のアミノ酸のリジン若しくはアルギニンへの置換、配列番号1の154位のセリンに対応する位置のアミノ酸のアスパラギンへの置換および配列番号1の259位のバリンに対応する位置のアミノ酸のシステインへの置換を有し、前記置換を行う前の未改変のアマドリアーゼと比較して、α−フルクトシルバリルヒスチジンに対する反応性に対するε−フルクトシルリジンに対する反応性の割合が低減しており、かつ前記置換を行う前の未改変のアマドリアーゼと比較して、α−フルクトシルバリンに対する反応性に対するε−フルクトシルリジンに対する反応性の割合が低減していることを特徴とする改変アマドリアーゼ。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(アマドリアーゼ)
アマドリアーゼは、ケトアミンオキシダーゼ、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ、フルクトシルペプチドオキシダーゼ、フルクトシルアミンオキシダーゼともいい、酸素の存在下で、イミノ2酢酸若しくはその誘導体(アマドリ化合物)を酸化して、グリオキシル酸若しくはα−ケトアルデヒド、アミノ酸若しくはペプチド、および過酸化水素を生成する反応を触媒する酵素のことをいう。アマドリアーゼは、自然界に広く分布しており、微生物や、動物若しくは植物起源の酵素を探索することにより、得ることができる。微生物においては、例えば、糸状菌、酵母、若しくは細菌等から得ることができる。
【0036】
本発明のアマドリアーゼは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するコニオカエタ属由来のアマドリアーゼに基づき作製された、基質特異性が改変されたアマドリアーゼの改変体である。このような変異体の例としては、配列番号1と高い配列同一性(例えば、75%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、最も好ましくは99%以上)を有するアミノ酸配列を有するアマドリアーゼ、および、配列番号1のアミノ酸配列において、1から数個のアミノ酸が改変若しくは変異、または、欠失、置換、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を有するアマドリアーゼを挙げることができる。なお、請求の範囲に記載された、基質特異性および/またはアミノ酸配列に関する条件を満たす限り、例えば、ユーペニシリウム属、アルスリニウム属、カーブラリア属、レプトスフェリア属、ネオコスモスポラ属、オフィオボラス属、プレオスポラ属、ピレノケータ属、アスペルギルス属、クリプトコッカス属、フェオスフェリア属、ウロクラディウム属、若しくはペニシリウム属のような、他の生物種に由来するアマドリアーゼに基づき作製されたものでも良い。
【0037】
基質特異性が改変されたアマドリアーゼの改変体はアマドリアーゼのアミノ酸配列において少なくとも1つのアミノ酸残基を置換することによって得ることができる。
【0038】
基質特異性の改変をもたらすアミノ酸の置換として、配列番号1に示すアミノ酸配列における以下の位置のアミノ酸に対応する位置のアミノ酸の置換が挙げられる。
【0039】
(1) 98位のグルタミン酸の置換、例えば、プロリン以外のアミノ酸、すなわちグルタミン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、システイン、セリン、スレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンへの置換。
【0040】
(2) 259位のバリンの置換、例えば、アラニン、システイン、セリンへの置換。
【0041】
(3) 154位のセリンの置換、例えば、グリシン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、システインへの置換。
【0042】
(4) 125位のヒスチジンの置換、例えば、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、グルタミン酸、リジン、アルギニンへの置換。
【0043】
(5) 261位のチロシンの置換、例えば、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジンへの置換。
【0044】
(6) 263位のグリシンの置換、例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸への置換。
【0045】
(7) 106位のアスパラギン酸の置換、例えば、アスパラギン酸よりも分子量の小さいアミノ酸、すなわちグリシン、アラニン、セリン、バリン、スレオニン、システイン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギンへの置換。
【0046】
(8) 103位のグリシンの置換、例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンへの置換。
【0047】
(9) 355位のアラニンの置換、例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸への置換。
【0048】
(10) 96位のアスパラギン酸への置換、例えば、アラニン、アスパラギン、ヒスチジン、セリンへの置換。
【0049】
(11) 66位のリジンの置換、例えば、グリシンへの置換。
【0050】
(12) 67位のバリンの置換、例えば、プロリンへの置換。
【0051】
(13) 70位のグルタミンの置換、例えば、プロリンへの置換。
【0052】
(14) 100位のスレオニンの置換、例えば、アルギニンへの置換。
【0053】
(15) 110位のグルタミンの置換、例えば、アラニン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、アスパラギン、ヒスチジン、リジン、アルギニンへの置換。
【0054】
(16) 113位のアラニンの置換、例えば、グルタミン酸、リジンへの置換。
【0055】
(17) 114位のロイシンの置換、例えば、リジン、アルギニンへの置換。
【0056】
(18) 156位のアスパラギン酸の置換、例えば、アスパラギンへの置換。
【0057】
基質特異性が改変したアマドリアーゼの変異体は、上記アミノ酸置換を少なくとも1つ有していればよく、複数のアミノ酸置換を有していてもよい。例えば、上記アミノ酸置換の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18を有している。
【0058】
その中でも、以下のアミノ酸の位置に対応するアミノ酸の置換を有している変異体が好ましい。本発明において、例えば、第110位のグルタミン(Q)がアルギニン(R)へ置換された変異をQ110Rと表す。
【0059】
66位のリジンおよび67位のバリンの置換、例えば、K66GおよびV67Pを有する変異体。
【0060】
66位のリジン、67位のバリンおよび98位のグルタミン酸の置換、例えば、K66G、V67PおよびE98Aを有する変異体。
【0061】
66位のリジン、67位のバリンおよび110位のグルタミンの置換、例えば、K66G、V67PおよびQ110Rを有する変異体。
【0062】
98位のグルタミン酸および110位のグルタミンの置換、例えば、E98AおよびQ110Rを有する変異体。
【0063】
110位のグルタミンおよび125位のヒスチジンの置換、例えば、Q110RおよびH125Qを有する変異体。
【0064】
110位のグルタミンおよび154位のセリンの置換、例えば、Q110RおよびS154G若しくはS154Nを有する変異体。
【0065】
110位のグルタミンおよび355位のアラニンの置換、例えばQ110RおよびA355Kを有する変異体。
【0066】
98位のグルタミン酸および103位のグリシンの置換、例えば、E98AおよびG103Rを有する変異体。
【0067】
98位のグルタミン酸および154位のセリンの置換、例えば、E98A若しくはE98RおよびS154Nを有する変異体。
【0068】
110位のグルタミンおよび154位のセリンの置換、例えば、Q110RおよびS154Cを有する変異体。
【0069】
98位のグルタミン酸、106位のアスパラギン酸および154位のセリンの置換、例えば、E98A、D106SおよびS154Nを有する変異体。
【0070】
98位のグルタミン酸、110位のグルタミンおよび154位のセリンの置換、例えば、E98A、Q110RおよびS154Nを有する変異体。
【0071】
110位のグルタミン、125位のヒスチジンおよび154位のセリンの置換、例えば、Q110R、H125QおよびS154Nを有する変異体。
【0072】
98位のグルタミン酸および259位のバリンの置換、例えば、E98QおよびV259A、E98QおよびV259C、E98HおよびV259A、E98HおよびV259C、E98RおよびV259C、E98AおよびV259Cを有する変異体。
【0073】
98位のグルタミン酸および263位のグリシンの置換、例えば、E98AおよびG263Rを有する変異体。
【0074】
110位のグルタミンおよび259位のバリンの置換、例えば、Q110RおよびV259Aを有する変異体。
【0075】
154位のセリンおよび259位のバリンの置換、例えば、S154DおよびV259Aを有する変異体。
【0076】
98位のグルタミン酸、154位のセリンおよび259位のバリンの置換、例えば、E98A、S154NおよびV259Cを有する変異体。
【0077】
110位のグルタミン、154位のセリンおよび259位のバリンの置換、例えば、Q110R、S154NおよびV259Aを有する変異体。
【0078】
これらのアミノ酸置換の組合わせの中でも以下の(ba)〜(be)のいずれかの組み合わせが好ましい。
【0079】
(ba)98位のグルタミン酸に対応する位置のアミノ酸のアラニンへの置換、154位のセリンに対応する位置のアミノ酸のアスパラギンへの置換および259位のバリンに対応する位置のアミノ酸のシステインへの置換。
【0080】
(bb)98位のグルタミン酸に対応する位置のアミノ酸のアルギニンへの置換および154位のセリンに対応する位置のアミノ酸のアスパラギンへの置換。
【0081】
(bc)98位のグルタミン酸に対応する位置のアミノ酸のグルタミンへの置換および259位のバリンに対応する位置のアミノ酸のアラニンへの置換。
【0082】
(bd)98位のグルタミン酸に対応する位置のアミノ酸のアルギニンへの置換および259位のバリンに対応する位置のアミノ酸のシステインへの置換。
【0083】
(be)110位のグルタミンに対応する位置のアミノ酸のアルギニンへの置換、154位のセリンに対応する位置のアミノ酸のアスパラギンへの置換および259位のバリンに対応する位置のアミノ酸のアラニンへの置換。
【0084】
本発明の基質特異性が改変されたアマドリアーゼ変異体は、配列番号1に示すアミノ酸配列において、上記の基質特異性の改変をもたらすアミノ酸の置換を有し、それらの置換アミノ酸以外の位置で、さらに1または数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、特に好ましくは1個)のアミノ酸が欠失、挿入、付加および/または置換されたアミノ酸配列からなり、アマドリアーゼ活性を有し、基質特異性が改変されたアマドリアーゼ変異体を包含する。さらに、上記の基質特異性の改変をもたらすアミノ酸の置換変異、耐熱性を向上させるアミノ酸の置換変異を有し、配列番号1に示すアミノ酸配列の該置換したアミノ酸以外のアミノ酸を除いた部分のアミノ酸配列に対して、90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、アマドリアーゼ活性を有し、基質特異性が改変されたアマドリアーゼ変異体を包含する。
【0085】
上記のアミノ酸置換において、アミノ酸の位置は配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列における位置を表しているが、他の生物種由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列においては、配列番号1に示されるアミノ酸配列における位置に対応する位置のアミノ酸が置換されている。「対応する位置」の意味については後述する。
【0086】
(アマドリアーゼをコードする遺伝子の取得)
これらのアマドリアーゼをコードする本発明の遺伝子(以下、単に「アマドリアーゼ遺伝子」ともいう)を得るには、通常一般的に用いられている遺伝子のクローニング方法が用いられる。例えば、アマドリアーゼ生産能を有する微生物菌体や種々の細胞から常法、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(WILEY Interscience,1989)記載の方法により、染色体DNAまたはmRNAを抽出することができる。さらにmRNAを鋳型としてcDNAを合成することができる。このようにして得られた染色体DNAまたはcDNAを用いて、染色体DNAまたはcDNAのライブラリーを作製することができる。
【0087】
次いで、上記アマドリアーゼのアミノ酸配列に基づき、適当なプローブDNAを合成して、これを用いて染色体DNAまたはcDNAのライブラリーからアマドリアーゼ遺伝子を選抜する方法、あるいは、上記アミノ酸配列に基づき、適当なプライマーDNAを作製して、5’RACE法や3’RACE法などの適当なポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction、PCR法)により、アマドリアーゼをコードする目的の遺伝子断片を含むDNAを増幅させ、これらのDNA断片を連結させて、目的のアマドリアーゼ遺伝子の全長を含むDNAを得ることができる。
【0088】
このようにして得られたアマドリアーゼをコードする遺伝子の好ましい一例として、コニオカエタ属由来のアマドリアーゼ遺伝子(特許文献7)が挙げられる。
【0089】
これらのアマドリアーゼ遺伝子は、常法通り各種ベクターに連結されていることが、取扱い上好ましい。例えば、Coniochaeta sp. NISL 9330株由来のアマドリアーゼ遺伝子をコードするDNAを含む組換え体プラスミドpKK223−3−CFP(特許文献7)から、QIAGEN(キアゲン社製)を用いることにより、アマドリアーゼ遺伝子をコードするDNAを、抽出、精製して得ることができる。
【0090】
(ベクター)
本発明において用いることのできるベクターとしては、上記プラスミドに限定されることなく、それ以外の、例えば、バクテリオファージ、コスミド等の当業者に公知の任意のベクターを用いることができる。具体的には、例えば、pBluescriptII SK+(STRATAGENE社製)等が好ましい。
【0091】
(アマドリアーゼ遺伝子の変異処理)
アマドリアーゼ遺伝子の変異処理は、企図する変異形態に応じた、公知の任意の方法で行うことができる。すなわち、アマドリアーゼ遺伝子あるいは当該遺伝子の組み込まれた組換え体DNAと変異原となる薬剤とを接触・作用させる方法;紫外線照射法;遺伝子工学的手法;または蛋白質工学的手法を駆使する方法等を広く用いることができる。
【0092】
上記変異処理に用いられる変異原となる薬剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、亜硝酸、亜硫酸、ヒドラジン、蟻酸、若しくは5−ブロモウラシル等を挙げることができる。
【0093】
この接触・作用の諸条件は、用いる薬剤の種類等に応じた条件を採ることが可能であり、現実に所望の変異をアマドリアーゼ遺伝子において惹起することができる限り特に限定されない。通常、好ましくは0.5〜12Mの上記薬剤濃度において、20〜80℃の反応温度下で10分間以上、好ましくは10〜180分間接触・作用させることで、所望の変異を惹起可能である。紫外線照射を行う場合においても、上記の通り常法に従い行うことができる(現代化学、024〜30、1989年6月号)。
【0094】
蛋白質工学的手法を駆使する方法としては、一般的に、Site−Specific Mutagenesisとして知られる手法を用いることができる。例えば、Kramer法(Nucleic Acids Res., 12, 9441 (1984): Methods Enzymol., 154, 350 (1987): Gene, 37, 73 (1985))、Eckstein法(Nucleic Acids Res., 13, 8749 (1985): Nucleic Acids Res., 13, 8765 (1985): Nucleic Acids Res, 14, 9679 (1986))、Kunkel法(Proc. Natl. Acid. Sci. U.S.A., 82, 488 (1985): Methods Enzymol., 154, 367 (1987))等が挙げられる。
【0095】
また、一般的なPCR法として知られる手法を用いることもできる(Technique, 1, 11(1989)参照)。なお、上記遺伝子改変法の他に、有機合成法または酵素合成法により、直接所望の改変アマドリアーゼ遺伝子を合成することもできる。
【0096】
上記方法により得られるアマドリアーゼ遺伝子のDNA塩基配列の決定若しくは確認を行う場合には、例えば、マルチキャピラリーDNA解析システムCEQ2000(ベックマン・コールター社製)等を用いることにより行うことができる。
【0097】
(形質転換・形質導入)
上述のように得られたアマドリアーゼ遺伝子を、常法により、バクテリオファージ、コスミド、または原核細胞若しくは真核細胞の形質転換に用いられるプラスミド等のベクターに組み込み、各々のベクターに対応する宿主を常法により、形質転換または形質導入をすることができる。例えば、宿主として、エッシェリシア属に属する微生物、例えば得られた組換え体DNAを用いて、例えば、大腸菌K−12株、好ましくは大腸菌JM109株、大腸菌DH5α株(ともにタカラバイオ社製)等を形質転換またはそれらに形質導入してそれぞれの菌株を得る。
【0098】
(アミノ酸配列の相同性)
アミノ酸配列の相同性は、GENETYX−Mac (Software Development社製)のマキシマムマッチングやサーチホモロジー等のプログラム、またはDNASIS Pro(日立ソフト社製)のマキシマムマッチングやマルチプルアライメント等のプログラムにより計算することができる。
【0099】
(アミノ酸に対応する位置の特定)
「アミノ酸に対応する位置」とは、配列番号1に示すコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列の特定の位置のアミノ酸に対応する他の生物種由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列における位置をいう。
【0100】
「アミノ酸に対応する位置」を特定する方法としては、例えばリップマン−パーソン法等の公知のアルゴリズムを用いてアミノ酸配列を比較し、各アマドリアーゼのアミノ酸配列中に存在する保存アミノ酸残基に最大の相同性を与えることにより行うことができる。アマドリアーゼのアミノ酸配列をこのような方法で整列させることにより、アミノ酸配列中にある挿入、欠失にかかわらず、相同アミノ酸残基の各アマドリアーゼ配列における配列中の位置を決めることが可能である。相同位置は、三次元構造中で同位置に存在すると考えられ、対象となるアマドリアーゼの特異的機能に関して類似した効果を有することが推定できる。
図1に種々の生物種由来のアマドリアーゼの配列のアラインメントを示す。
図1からコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列の特定の位置のアミノ酸に対応する他の生物種由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列における位置を知ることができる。
図1には、コニオカエタ属由来のアマドリアーゼ、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼ、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼ、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼ、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼ、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼ、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼ、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼおよびPenicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼのアミノ酸配列を示してある。
【0101】
なお、本発明において、「配列番号1記載のアミノ酸配列の66位のリジンに対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの66位のリジンに対応するアミノ酸を意味するものである。これにより、上記の「対応する位置のアミノ酸」を特定する方法でアミノ酸配列を整列させて特定することができる。
【0102】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは66位のグリシン、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは66位のリジン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは66位のプロリン、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは66位のリジン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは66位のリジン、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは66位のプロリン、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは66位のプロリン、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは65位のリジン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは66位のリジン、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは66位のグリシンである。
【0103】
また、本発明において、「配列番号1記載のアミノ酸配列の67位のバリンに対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの67位のバリンに対応するアミノ酸を意味するものである。これにより、上記の「対応する位置のアミノ酸」を特定する方法でアミノ酸配列を整列させて特定することができる。
【0104】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは67位のプロリン、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは67位のバリン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは67位のバリン、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは67位のバリン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは67位のバリン、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは67位のバリン、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは67位のバリン、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは66位のプロリン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは67位のバリン、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは67位のプロリンである。
【0105】
また、本発明において、「配列番号1記載のアミノ酸配列の70位のグルタミンに対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの70位のグルタミンに対応するアミノ酸を意味するものである。これにより、上記の「対応する位置のアミノ酸」を特定する方法でアミノ酸配列を整列させて特定することができる。
【0106】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは70位のグルタミン、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは70位のグルタミン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは70位のグルタミン、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは70位のグルタミン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは70位のグルタミン、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは70位のグルタミン、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは70位のグルタミン、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは69位のグルタミン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは70位のグルタミン、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは70位のグルタミンである。
【0107】
また、本発明において、「配列番号1記載のアミノ酸配列の96位のアスパラギン酸に対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの96位のアスパラギン酸に対応するアミノ酸を意味するものである。これにより、上記の「対応する位置のアミノ酸」を特定する方法でアミノ酸配列を整列させて特定することができる。
【0108】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは96位のアスパラギン酸、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは96位のアスパラギン酸、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは96位のアスパラギン酸、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは96位のアスパラギン酸、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは96位のアスパラギン酸、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは96位のアスパラギン酸、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは96位のアスパラギン酸、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは95位のアスパラギン酸、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは96位のアスパラギン酸、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは96位のアスパラギン酸である。
【0109】
また、本発明において、「配列番号1記載のアミノ酸配列の98位のグルタミン酸に対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの98位のグルタミン酸に対応するアミノ酸を意味するものである。これにより、上記の「対応する位置のアミノ酸」を特定する方法でアミノ酸配列を整列させて特定することができる。
【0110】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは98位のセリン、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは98位のアラニン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは98位のグルタミン酸、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは98位のアラニン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは98位のグルタミン酸、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは98位のアラニン、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは98位のアラニン、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは97位のセリン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは98位のアラニン、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは98位のセリンである。
【0111】
また、本発明において、「配列番号1記載のアミノ酸配列の100位のスレオニンに対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの100位のスレオニンに対応するアミノ酸を意味するものである。これにより、上記の「対応する位置のアミノ酸」を特定する方法でアミノ酸配列を整列させて特定することができる。
【0112】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは100位のセリン、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは100位のグリシン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは100位のスレオニン、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは100位のグリシン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは100位のセリン、Cryptococcusneoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは100位のスレオニン、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは100位のグリシン、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは99位のスレオニン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは100位のグリシン、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは100位のセリンである。
【0113】
また、本発明において、「配列番号1記載のアミノ酸配列の103位のグリシンに対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの103位のグリシンに対応するアミノ酸を意味するものである。これにより、上記の「対応する位置のアミノ酸」を特定する方法でアミノ酸配列を整列させて特定することができる。
【0114】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは103位のグリシン、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは103位のグリシン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは103位のグリシン、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは103位のグリシン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは103位のグリシン、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは103位のセリン、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは103位のアスパラギン酸、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは102位のグリシン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは103位のグリシン、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは103位のグリシンである。
【0115】
また、本発明において、「配列番号1記載のアミノ酸配列の106位のアスパラギン酸に対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの106位のアスパラギン酸に対応するアミノ酸を意味するものである。これにより、上記の「対応する位置のアミノ酸」を特定する方法でアミノ酸配列を整列させて特定することができる。
【0116】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは106位のアスパラギン、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは106位のアスパラギン酸、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは106位のアラニン、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは106位のアスパラギン酸、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは106位のグリシン、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは106位のセリン、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは106位のアスパラギン酸、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは105位のグリシン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは106位のアスパラギン酸、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは106位のセリンである。
【0117】
また、本発明において、「配列番号1記載のアミノ酸配列の110位のグルタミンに対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの110位のグルタミンに対応するアミノ酸を意味するものである。これにより、上記の「対応する位置のアミノ酸」を特定する方法でアミノ酸配列を整列させて特定することができる。
【0118】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは110位のリジン、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは110位のアラニン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは110位のグルタミン、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは110位のアラニン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは110位のグルタミン酸、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは110位のセリン、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは110位のグリシン、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは109位のリジン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは110位のアラニン、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは110位のリジンである。
【0119】
また、本発明において、「配列番号1記載のアミノ酸配列の113位のアラニンに対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの113位のアラニンに対応するアミノ酸を意味するものである。これにより、上記の「対応する位置のアミノ酸」を特定する方法でアミノ酸配列を整列させて特定することができる。
【0120】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは113位のスレオニン、Pyrenochaetasp.由来のケトアミンオキシダーゼでは113位のスレオニン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは113位のスレオニン、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは113位のアラニン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは113位のリジン、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは113位のアラニン、Phaeosphaerianodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは113位のアラニン、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは112位のセリン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは113位のアラニン、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは113位のアスパラギン酸である。
【0121】
また、本発明において、「配列番号1記載のアミノ酸配列の114位のロイシンに対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの114位のロイシンに対応するアミノ酸を意味するものである。これにより、上記の「対応する位置のアミノ酸」を特定する方法でアミノ酸配列を整列させて特定することができる。
【0122】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは114位のロイシン、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは114位のロイシン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは114位のロイシン、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは114位のロイシン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは114位のロイシン、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは114位のイソロイシン、Phaeosphaerianodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは114位のロイシン、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは113位のロイシン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは114位のロイシン、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは114位のロイシンである。
【0123】
また、「配列番号1記載のアミノ酸配列の125位のヒスチジンに対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1記載のアミノ酸配列の125位のヒスチジンに対応するアミノ酸を意味するものである。これも上記の方法でアミノ酸配列を整列させることにより特定することができる。
【0124】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは125位のアスパラギン、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは125位のアスパラギン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは125位のスレオニン、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは125位のスレオニン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは125位のヒスチジン、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは125位のヒスチジン、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは123位のアスパラギン、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは124位のアスパラギン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは125位のスレオニン、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは125位のアスパラギンである。
【0125】
さらに、「配列番号1記載のアミノ酸配列の154位のセリンに対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの154位のセリンに対応するアミノ酸を意味するものである。これも上記の方法でアミノ酸配列を整列させることにより特定することができる。
【0126】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは154位のシステイン、Pyrenochaetasp.由来のケトアミンオキシダーゼでは154位のセリン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは154位のセリン、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは154位のセリン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは154位のセリン、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは154位のセリン、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは152位のセリン、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは153位のシステイン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは154位のセリン、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは154位のシステインである。
【0127】
さらに、本発明において、「配列番号1記載のアミノ酸配列の156位のアスパラギン酸に対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの156位のアスパラギン酸に対応するアミノ酸を意味するものである。これにより、上記の「対応する位置のアミノ酸」を特定する方法でアミノ酸配列を整列させて特定することができる。
【0128】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは156位のアスパラギン酸、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは156位のアスパラギン酸、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは156位のアスパラギン酸、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは156位のアスパラギン酸、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは156位のグルタミン酸、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは156位のアスパラギン酸、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは154位のアスパラギン酸、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは155位のアスパラギン酸、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは156位のアスパラギン酸、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは156位のアスパラギン酸である。
【0129】
さらに、「配列番号1記載のアミノ酸配列の259位のバリンに対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの259位のバリンに対応するアミノ酸を意味するものである。これも上記の方法でアミノ酸配列を整列させることにより特定することができる。
【0130】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは259位のバリン、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは257位のバリン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは259位のバリン、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは257位のバリン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは259位のバリン、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは259位のバリン、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは255位のバリン、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは259位のバリン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは257位のバリン、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは259位のバリンである。
【0131】
さらに、「配列番号1記載のアミノ酸配列の261位のチロシンに対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの261位のチロシンに対応するアミノ酸を意味するものである。これも上記の方法でアミノ酸配列を整列させることにより特定することができる。
【0132】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは261位のチロシン、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは259位のチロシン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは261位のチロシン、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは259位のチロシン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは261位のチロシン、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは261位のチロシン、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは257位のチロシン、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは261位のチロシン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは259位のチロシン、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは261位のチロシンである。
【0133】
さらに、本発明において、「配列番号1記載のアミノ酸配列の263位のグリシンに対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの263位のグリシンに対応するアミノ酸を意味するものである。これにより、上記の「対応する位置のアミノ酸」を特定する方法でアミノ酸配列を整列させて特定することができる。
【0134】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは263位のグリシン、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは261位のグリシン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは263位のグリシン、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは261位のグリシン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは263位のグリシン、Cryptococcus neoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは263位のセリン、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは259位のグリシン、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは263位のグリシン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは261位のグリシン、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは263位のグリシンである。
【0135】
さらに、「配列番号1記載のアミノ酸配列の355位のアラニンに対応する位置」とは、確定したアマドリアーゼのアミノ酸配列を、配列番号1に示されるコニオカエタ属由来のアマドリアーゼのアミノ酸配列と比較した場合に、配列番号1のアマドリアーゼの355位のアラニンに対応するアミノ酸を意味するものである。これも上記の方法でアミノ酸配列を整列させることにより特定することができる。
【0136】
すなわち、Eupenicillium terrenum由来のアマドリアーゼでは355位のアラニン、Pyrenochaeta sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは353位のアラニン、Arthrinium sp.由来のケトアミンオキシダーゼでは356位のアラニン、Curvularia clavata由来のケトアミンオキシダーゼでは353位のアラニン、Neocosmospora vasinfecta由来のケトアミンオキシダーゼでは355位のセリン、Cryptococcusneoformans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは355位のアラニン、Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルペプチドオキシダーゼでは351位のアラニン、Aspergillus nidulans由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは355位のアラニン、Ulocladium sp.由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは353位のアラニン、Penicillium janthinellum由来のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼでは355位のアラニンである。
【0137】
(本発明のアマドリアーゼの生産)
上記のようにして得られた基質特異性が改善されたアマドリアーゼの生産能を有する菌株を用いて、当該アマドリアーゼを生産するには、この菌株を通常の固体培養法で培養してもよいが、可能な限り液体培養法を採用して培養するのが好ましい。
【0138】
また、上記菌株を培養する培地としては、例えば、酵母エキス、トリプトン、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカーあるいは大豆若しくは小麦ふすまの浸出液等の1種以上の窒素源に、塩化ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化第2鉄、硫酸第2鉄あるいは硫酸マンガン等の無機塩類の1種以上を添加し、さらに必要により糖質原料、ビタミン等を適宜添加したものが用いられる。
【0139】
なお、培地の初発pHは、pH7〜9に調整するのが適当である。
【0140】
培養は、20〜42℃の培養温度、好ましくは37℃前後の培養温度で4〜24時間、さらに好ましくは37℃前後の培養温度で4〜8時間、通気攪拌深部培養、振盪培養、静置培養等により実施するのが好ましい。
【0141】
培養終了後、該培養物よりアマドリアーゼを採取するには、通常の酵素採取手段を用いて得ることができる。例えば、常法により菌体を、超音波破壊処理、磨砕処理等するか、またはリゾチーム等の溶菌酵素を用いて本酵素を抽出するか、またはトルエン等の存在下で振盪若しくは放置して溶菌を行わせ、本酵素を菌体外に排出させることができる。そして、この溶液を濾過、遠心分離等して固形部分を除去し、必要によりストレプトマイシン硫酸塩、プロタミン硫酸塩、若しくは硫酸マンガン等により核酸を除去したのち、これに硫安、アルコール、アセトン等を添加して分画し、沈澱物を採取し、アマドリアーゼの粗酵素を得る。
【0142】
上記アマドリアーゼの粗酵素よりさらにアマドリアーゼ精製酵素標品を得るには、例えば、セファデックス、スーパーデックス若しくはウルトロゲル等を用いるゲル濾過法;イオン交換体を用いる吸着溶出法;ポリアクリルアミドゲル等を用いる電気泳動法;ヒドロキシアパタイトを用いる吸着溶出法;蔗糖密度勾配遠心法等の沈降法;アフィニティクロマトグラフィー法;分子ふるい膜若しくは中空糸膜等を用いる分画法等を適宜選択し、またはこれらを組み合わせて実施することにより、精製されたアマドリアーゼ酵素標品を得ることができる。このようにして、所望の基質特異性が改善されたアマドリアーゼを得ることができる。
【0143】
(本発明のアマドリアーゼにおけるεFKに対する反応性の低下)
上記のような手段で得られる本発明のアマドリアーゼは、遺伝子改変等により、そのアミノ酸配列に変異を生じた結果、改変前のものと比較して基質特異性が向上していることを特徴とする。具体的には、改変前のものと比較して、「αFVHに対する反応性」に対する「εFKに対する反応性」の割合、あるいは、「αFVに対する反応性」に対する「εFKに対する反応性」の割合が低減していることを特徴とする。または、改変前のものと比較して、「αFVHに対する反応性」に対する「εFKに対する反応性」の割合、および、「αFVに対する反応性」に対する「εFKに対する反応性」の割合がいずれも低減していることを特徴とする。
【0144】
糖化ヘモグロビンの測定において、εFKに対して反応性が高いことは測定誤差の原因となり得るため、εFKに対する反応性の割合は低ければ低いほど好ましい。具体的には、本発明のアマドリアーゼにおける、αFVHに対する反応性に対するεFKに対する反応性の割合を示すεFK/αFVHは、改変前に対して10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上低減していることが好ましい。
【0145】
また、本発明のアマドリアーゼにおける、αFVに対する反応性に対するεFKに対する反応性の割合を示すεFK/αFVは、改変前に対して10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以下低減していることが好ましい。
【0146】
αFVHに対する反応性に対するεFKに対する反応性の割合、あるいは、αFVに対する反応性に対するεFKに対する反応性の割合は、公知のアマドリアーゼの測定法を用いて、任意の条件下で測定し、改変前のものと比較することができる。例えば、pH7.0において、5mMのεFKを添加して測定した活性を、5mMのαFVHを添加して測定した活性で割った比率として求めることにより、αFVHに対する反応性に対するεFKに対する反応性の割合を算出し、これを改変前のものと改変後のもので比較することができる。また、例えば、pH7.0において、5mMのεFKを添加して測定した活性を、5mMのαFVを添加して測定した活性で割った比率として求めることにより、αFVに対する反応性に対するεFKに対する反応性の割合を算出し、これを改変前のものと改変後のもので比較することができる。
【0147】
改変前のものと比較して基質特異性が向上している本発明のアマドリアーゼの一例としては、例えば、大腸菌JM109(pKK223−3−CFP−T7−Y261W)株により生産されるアマドリアーゼが挙げられる。このような基質特異性が改善されたアマドリアーゼは、εFKをノイズとして測り込む度合が良好に低減され、HbA1cのβ鎖アミノ末端由来の糖化アミノ酸であるαFVH、若しくはHbA1cのβ鎖アミノ末端由来の糖化アミノ酸であるαFVのみを測定することが可能となるため、精度の高い測定を行うことができ、産業利用上非常に有利である。
【0148】
(アマドリアーゼ活性の測定方法)
アマドリアーゼの活性の測定方法としては、種々の方法を用いることができるが、一例として、以下に、本発明で用いるアマドリアーゼ活性の測定方法について説明する。
【0149】
本発明におけるアマドリアーゼの酵素活性の測定方法としては、酵素の反応により生成する過酸化水素量を測定する方法や、酵素反応により消費する酸素量を測定する方法などが主な測定方法として挙げられる。以下に、一例として、過酸化水素量を測定する方法について示す。
【0150】
本発明におけるアマドリアーゼの活性測定には、断りの無い限り、αFVH、もしくはεFK、またはαFVを基質として用いる。なお、酵素力価は、αFVH、もしくはεFK、またはαFVを基質として測定した時、1分間に1μmolの過酸化水素を生成する酵素量を1Uと定義する。
【0151】
εFK等の糖化アミノ酸、およびαFVH等の糖化ペプチドは、例えば、阪上らの方法に基づき合成、精製したものを用いることができる(特開2001−95598号公報参照)。
【0152】
A:試薬の調製
(1)試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液
5.0kUのパーオキシダーゼ(キッコーマン社製)、100mgの4−アミノアンチピリン(東京化成社製)を0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0またはpH7.5もしくはpH8.0)に溶解し、1000mlに定容する。
【0153】
(2)試薬2:TOOS溶液
500mgのTOOS(同仁化学研究所製)をイオン交換水に溶解し、100mlに定容する。
【0154】
(3)試薬3:基質溶液(150mM; 終濃度5mM)
αFVH 625mg、もしくはεFK 462mgまたはαFV 419mgをイオン交換水に溶解し、10mlに定容する。
【0155】
B:活性測定法
2.7mlの試薬1、100μlの試薬2、および100μlの酵素液を混和し、37℃で5分間予備加温する。その後、試薬3を100μl加えて良く混ぜた後、分光光度計(U−3010A、日立ハイテクノロジーズ社製)により、555nmにおける吸光度を測定する。測定値は、555nmにおける1分後から2分後の1分間あたりの吸光度変化とする。なお、対照液は、100μlの試薬3の代わりに100μlのイオン交換水を加える以外は前記と同様にしたものである。これを予め作製しておいた過酸化水素の標準溶液を試薬3の代わりに、また酵素液の代わりにイオン交換水を用い、その生成色素量との関係を調べたグラフを用意する。このグラフを用いて、37℃、1分当たりに生成される過酸化水素のマイクロモル数を計算し、この数値を酵素液中の活性単位とする。
【0156】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0157】
(1)組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAの調製
Coniochaeta属由来アマドリアーゼ遺伝子(配列番号2)の組換え体プラスミドを有する大腸菌JM109(pKK223−3−CFP−T7)株(国際公開第2007/125779号参照)を、3mlのLB−amp培地[1%(w/v)バクトトリプトン、0.5%(w/v)ペプトン、0.5%(w/v)NaCl、50μg/ml アンピシリン]に接種して、37℃で16時間振とう培養し、培養物を得た。
【0158】
この培養物を10,000×gで、1分間遠心分離することにより集菌して菌体を得た。この菌体より、GenElute Plasmid Mini−Prep Kit(シグマアルドリッチ社製)を用いて組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7を抽出して精製し、2.5μgの組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを得た。
【0159】
(2)組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAの部位特異的改変操作
得られた組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号3、4の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、以下の条件でPCR反応を行った。
【0160】
すなわち、10×KOD−Plus−緩衝液を5μl、dNTPが各2mMになるよう調製されたdNTPs混合溶液を5μl、25mMのMgSO
4溶液を2μl、鋳型となるpKK223−3−CFP−T7 DNAを50ng、上記合成オリゴヌクレオチドをそれぞれ15pmol、KOD−Plus−を1Unit加えて、滅菌水により全量を50μlとした。調製した反応液をサーマルサイクラー(エッペンドルフ社製)を用いて、94℃で2分間インキュベートし、続いて、「94℃、15秒」−「50℃、30秒」−「68℃、6分」のサイクルを30回繰り返した。
【0161】
反応液の一部を1.0%アガロースゲルで電気泳動し、約6,000bpのDNAが特異的に増幅されていることを確認した。こうして得られたDNAを制限酵素DpnI(New England Biolabs社製)で処理し、残存している鋳型DNAを切断した後、大腸菌JM109を形質転換し、LB−amp寒天培地に展開した。生育したコロニーをLB−amp培地に接種して振とう培養し、上記(1)と同様の方法でプラスミドDNAを単離した。該プラスミド中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列を、マルチキャピラリーDNA解析システムCEQ2000(ベックマン・コールター社製)を用いて決定し、配列番号1記載のアミノ酸配列の66位のリジンがグリシンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−K66G)を得た。
【0162】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の67位のバリンをプロリンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号5、6の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の67位のバリンがプロリンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−V67P)を得た。
【0163】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の66位のリジンをグリシンに、かつ67位のバリンをプロリンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号7、8の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の66位のリジンがグリシンに、かつ67位のバリンがプロリンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−K66GV67P)を得た。
【0164】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の70位のグルタミンをプロリンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号9、10の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の70位のグルタミンがプロリンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−Q70P)を得た。
【0165】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の96位のアスパラギン酸をアラニンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号11、12の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の96位のアスパラギン酸がアラニンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−D96A)を得た。
【0166】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の98位のグルタミン酸をグルタミンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号13、14の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の98位のグルタミン酸がグルタミンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−E98Q)を得た。
【0167】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の100位のスレオニンをアルギニンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号15、16の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の100位のスレオニンがアルギニンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−T100R)を得た。
【0168】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の103位のグリシンをアルギニンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号17、18の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の103位のグリシンがアルギニンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−G103R)を得た。
【0169】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の106位のアスパラギン酸をアラニンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号19、20の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の106位のアスパラギン酸がアラニンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−D106A)を得た。
【0170】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の110位のグルタミンをアラニンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号21、22の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の110位のグルタミンがアラニンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−Q110A)を得た。
【0171】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の113位のアラニンをグルタミン酸に置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号23、24の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の113位のアラニンがグルタミン酸に置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−A113E)を得た。
【0172】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の114位のロイシンをリジンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号25、26の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の114位のロイシンがリジンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−L114K)を得た。
【0173】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の125位のヒスチジンをグルタミン酸に置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号27、28の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の125位のヒスチジンがグルタミン酸に置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−H125E)を得た。
【0174】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の154位のセリンをグルタミン酸に置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号29、30の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の154位のセリンがグルタミン酸に置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−S154E)を得た。
【0175】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の156位のアスパラギン酸をアスパラギンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号31、32の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の156位のアスパラギン酸がアスパラギンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−D156N)を得た。
【0176】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の259位のバリンをアラニンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号33、34の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の259位のバリンがアラニンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFPT7−V259A)を得た。
【0177】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の261位のチロシンをアラニンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号35、36の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の261位のチロシンがアラニンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−Y261A)を得た。
【0178】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の263位のグリシンをアルギニンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号37、38の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の263位のグリシンがアルギニンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−G263R)を得た。
【0179】
続いて、配列番号1記載のアミノ酸配列の355位のアラニンをリジンに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、配列番号39、40の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の355位のアラニンがリジンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T7−A355K)を得た。
【0180】
(3)各種改変型アマドリアーゼの生産
上記の手順により得られた上記組換え体プラスミドを保持するそれぞれの大腸菌JM109株を、0.1mMのIPTGを添加したLB−amp培地3mlにおいて、30℃で16時間培養した。得られた各培養菌体を20mMのHEPES−NaOH緩衝液(pH7.0)で洗浄した後、同緩衝液に懸濁して超音波破砕処理を行い、20,000×gで10分間遠心分離して、基質特異性確認のための酵素液0.6mlを調製した。
【0181】
(4)εFK/αFVH、εFK/αFVの測定
上述の酵素液を用いて、上記のB:活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定した。また、比較のために、大腸菌JM109(pKK223−3−CFP−T7)株から生産した改変前のアマドリアーゼについても、同様の測定を行った。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。
【0182】
その結果、上述の酵素活性測定の結果から得られた大腸菌JM109(pKK223−3−CFP−T7)株によって生産される改変前のアマドリアーゼのεFK/αFVHは0.316であり、εFK/αFVは0.093であった。
【0183】
これに対し、部位特異的変異導入により作製した改変後の各種のアマドリアーゼのεFK/αFVH、εFK/αFV、および改変前のアマドリアーゼのεFK/αFVH、εFK/αFVの値を100%とした時の改変後のアマドリアーゼのεFK/αFVH、εFK/αFVの比率は、表1の通りとなった。
【表1】
【0184】
すなわち、表1に示す通り、これら全ての改変型アマドリアーゼにおいては、基質特異性が改善されていることがわかった。
【実施例2】
【0185】
(96位のアスパラギン酸の点変異試験)
基質特異性の向上に効果の高い配列番号1記載のアミノ酸配列の96位のアスパラギン酸を他のアミノ酸に置換し、基質特異性に優れた改変型アマドリアーゼの探索を試みた。組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、表2に示した合成オリゴヌクレオチド(配列番号41〜46)、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記(2)と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の96位のアスパラギン酸が各種アミノ酸に置換された改変型アマドリアーゼを生産する大腸菌JM109株を得た。
【0186】
上記のようにして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記(3)記載の方法で培養して、各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0187】
このようにして調製した酵素液について上記B:活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表2に示す。
【表2】
【0188】
表2に示したように、配列番号1記載のアミノ酸配列の96位のアスパラギン酸をアラニン、セリン、アスパラギン、ヒスチジンに置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVHはいずれも、改変前の値である0.316より低い値となり、また、εFK/αFVはいずれも、改変前の値である0.093より低い値となった。上記アミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であった。
【実施例3】
【0189】
(98位のグルタミン酸の点変異試験)
基質特異性の向上に効果の高い配列番号1記載のアミノ酸配列の98位のグルタミン酸を他のアミノ酸に置換し、基質特異性に優れた改変型アマドリアーゼの探索を試みた。組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、表3に示した合成オリゴヌクレオチド(配列番号47〜82)、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記(2)と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の98位のグルタミン酸が各種アミノ酸に置換された改変型アマドリアーゼを生産する大腸菌JM109株を得た。
【0190】
上記のようにして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記(3)記載の方法で培養して、各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0191】
このようにして調製した酵素液について上記B:活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表3に示す。
【表3】
【0192】
表3に示したように、配列番号1記載のアミノ酸配列の98位のグルタミン酸をプロリン以外の他のアミノ酸、すなわちグルタミン、ヒスチジン、リジン、アルギニン、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、システイン、セリン、スレオニン、アスパラギン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンに置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVHはいずれも、改変前の値である0.316より低い値となり、また、εFK/αFVはいずれも、改変前の値である0.093より低い値となった。上記アミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であった。なお、配列番号1記載のアミノ酸配列の98位のグルタミン酸をプロリンに置換した場合、酵素の発現が認められなくなった。
【実施例4】
【0193】
(103位のグリシンの点変異試験)
基質特異性の向上に効果の高い配列番号1記載のアミノ酸配列の103位のグリシンを他のアミノ酸に置換し、基質特異性に優れた改変型アマドリアーゼの探索を試みた。組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、表4に示した合成オリゴヌクレオチド(配列番号83、84、255、256)、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記(2)と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の103位のグリシンが各種アミノ酸に置換された改変型アマドリアーゼを生産する大腸菌JM109株を得た。
【0194】
上記のようにして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記(3)記載の方法で培養して、各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0195】
このようにして調製した酵素液について上記B:活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表4に示す。
【表4】
【0196】
表4に示したように、配列番号1記載のアミノ酸配列の103位のグリシンをアルギニン、リジン、ヒスチジンに置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVHはいずれも、改変前の値である0.316より低い値となり、また、εFK/αFVはいずれも、改変前の値である0.093より低い値となった。上記アミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であった。
【実施例5】
【0197】
(106位のアスパラギン酸の点変異試験)
基質特異性の向上に効果の高い配列番号1記載のアミノ酸配列の106位のアスパラギン酸を他のアミノ酸に置換し、基質特異性に優れた改変型アマドリアーゼの探索を試みた。組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、表5に示した合成オリゴヌクレオチド(配列番号85〜100)、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記(2)と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の106位のアスパラギン酸が各種アミノ酸に置換された改変型アマドリアーゼを生産する大腸菌JM109株を得た。
【0198】
上記のようにして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記(3)記載の方法で培養して、各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0199】
このようにして調製した酵素液について上記B:活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表5に示す。
【表5】
【0200】
表5に示したように、配列番号1記載のアミノ酸配列の106位のアスパラギン酸をアスパラギン酸よりも分子量が小さいアミノ酸、すなわちグリシン、アラニン、セリン、バリン、スレオニン、システイン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギンに置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVHはいずれも、改変前の値である0.316より低い値となり、また、εFK/αFVはいずれも、改変前の値である0.093より低い値となった。上記アミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であった。
【実施例6】
【0201】
(110位のグルタミンの点変異試験)
基質特異性の向上に効果の高い配列番号1記載のアミノ酸配列の110位のグルタミンを他のアミノ酸に置換し、基質特異性に優れた改変型アマドリアーゼの探索を試みた。組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、表6に示した合成オリゴヌクレオチド(配列番号101〜118)、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記(2)と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の110位のグルタミンが各種アミノ酸に置換された改変型アマドリアーゼを生産する大腸菌JM109株を得た。
【0202】
上記のようにして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記(3)記載の方法で培養して、各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0203】
このようにして調製した酵素液について上記B:活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表6に示す。
【表6】
【0204】
表6に示す通り、配列番号1記載のアミノ酸配列の110位のグルタミンをアラニン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、アスパラギン、ヒスチジン、リジン、アルギニンに置換した改変型のアマドリアーゼのεFK/αFVHはいずれも、改変前の値である0.316より低い値となり、また、110位のグルタミンをアラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、アスパラギン、ヒスチジン、リジン、アルギニンに置換した改変型のアマドリアーゼのεFK/αFVはいずれも、改変前の値である0.093より低い値となった。上記アミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であることがわかった。一方、配列番号1記載のアミノ酸配列の110位のグルタミンをグルタミン酸に置換した改変型のアマドリアーゼのεFK/αFVH、εFK/αFVはいずれも、改変前の値である0.316、0.093より高くなった。
【実施例7】
【0205】
(113位のアラニンの点変異試験)
基質特異性の向上に効果の高い配列番号1記載のアミノ酸配列の113位のアラニンを他のアミノ酸に置換し、基質特異性に優れた改変型アマドリアーゼの探索を試みた。組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、表7に示した合成オリゴヌクレオチド(配列番号119、120)、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記(2)と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の113位のアラニンがリジンに置換された改変型アマドリアーゼを生産する大腸菌JM109株を得た。
【0206】
こうして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記(3)記載の方法で培養して各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0207】
このようにして調製した酵素液について上記B.活性測定法に示した方法により、αFVHおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表7に示す。
【表7】
【0208】
表7に示すように、配列番号1記載のアミノ酸配列の113位のアラニンをグルタミン酸、リジンに置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVHはいずれも、改変前の値である0.316より低く、上記アミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であった。
【実施例8】
【0209】
(114位のロイシンの点変異試験)
基質特異性の向上に効果の高い配列番号1記載のアミノ酸配列の114位のロイシンを他のアミノ酸に置換し、基質特異性に優れた改変型アマドリアーゼの探索を試みた。組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、表8に示した合成オリゴヌクレオチド(配列番号121〜124)、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記(2)と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の114位のロイシンが各種アミノ酸に置換された改変型アマドリアーゼを生産する大腸菌JM109株を得た。
【0210】
こうして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記(3)記載の方法で培養して各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0211】
このようにして調製した酵素液について上記B.活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表8に示す。
【表8】
【0212】
表8に示したように、配列番号1記載のアミノ酸配列の114位のロイシンをリジン、アルギニンに置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVHはいずれも、改変前の値である0.316より低い値となり、また、εFK/αFVはいずれも、改変前の値である0.093より低い値となった。上記アミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であった。一方、配列番号1記載のアミノ酸配列の114位のロイシンをグルタミン酸に置換した改変型のアマドリアーゼのεFK/αFVHは、改変前の値である0.316より高くなった。
【実施例9】
【0213】
(125位のヒスチジンの点変異試験)
基質特異性の向上に効果の高い配列番号1記載のアミノ酸配列の125位のヒスチジンを他のアミノ酸に置換し、基質特異性に優れた改変型アマドリアーゼの探索を試みた。組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、表9に示した合成オリゴヌクレオチド(配列番号125〜134、257〜260)、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記(2)と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の125位のヒスチジンが各種アミノ酸に置換された改変型アマドリアーゼを生産する大腸菌JM109株を得た。
【0214】
こうして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記(3)記載の方法で培養して各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0215】
このようにして調製した酵素液について上記B.活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表9に示す。
【表9】
【0216】
表9に示したように、配列番号1記載のアミノ酸配列の125位のヒスチジンをグルタミン酸、アスパラギン、リジン、アラニン、グルタミン、アルギニン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシンに置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVHはいずれも、改変前の値である0.316より低い値となり、また、125位のヒスチジンをアスパラギン、リジン、グルタミン、アルギニン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシンに置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVはいずれも、改変前の値である0.093より低い値となった。上記アミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であった。
【実施例10】
【0217】
(154位のセリンの点変異試験)
基質特異性の向上に効果の高い配列番号1記載のアミノ酸配列の154位のセリンを他のアミノ酸に置換し、基質特異性に優れた改変型アマドリアーゼの探索を試みた。組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、表10に示した合成オリゴヌクレオチド(配列番号135〜150)、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記(2)と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の154位のセリンが各種アミノ酸に置換された改変型アマドリアーゼを生産する大腸菌JM109株を得た。
【0218】
こうして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記(3)記載の方法で培養して各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0219】
このようにして調製した酵素液について上記B.活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表10に示す。
【表10】
【0220】
表10に示したように、配列番号1記載のアミノ酸配列の154位のセリンをグルタミン酸、グリシン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、システインに置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVHはいずれも、改変前の値である0.316より低い値となり、また、εFK/αFVはいずれも、改変前の値である0.093より低い値となった。上記アミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であった。一方、配列番号1記載のアミノ酸配列の154位のセリンをアラニンに置換した改変型のアマドリアーゼのεFK/αFVHは、改変前の値である0.316とほぼ同様で、低下が認められなかった。
【実施例11】
【0221】
(259位のバリンの点変異試験)
基質特異性の向上に効果の高い配列番号1記載のアミノ酸配列の259位のバリンを他のアミノ酸に置換し、基質特異性に優れた改変型アマドリアーゼの探索を試みた。組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、表11に示した合成オリゴヌクレオチド(配列番号151〜154)、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記(2)と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の259位のバリンが各種アミノ酸に置換された改変型アマドリアーゼを生産する大腸菌JM109株を得た。
【0222】
上記のようにして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記(3)記載の方法で培養して、各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0223】
このようにして調製した酵素液について上記B:活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表11に示す。
【表11】
【0224】
表11に示したように、配列番号1記載のアミノ酸配列の259位のバリンをアラニン、システイン、セリンに置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVHはいずれも、改変前の値である0.316より低い値となり、また、εFK/αFVはいずれも、改変前の値である0.093より低い値となった。上記アミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であった。
【実施例12】
【0225】
(261位のチロシンの点変異試験)
基質特異性の向上に効果の高い配列番号1記載のアミノ酸配列の261位のチロシンを他のアミノ酸に置換し、基質特異性に優れた改変型アマドリアーゼの探索を試みた。組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、表12に示した合成オリゴヌクレオチド(配列番号155〜162)、KOD −Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記(2)と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の261位のチロシンが各種アミノ酸に置換された改変型アマドリアーゼを生産する大腸菌JM109株を得た。
【0226】
こうして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記(3)記載の方法で培養して各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0227】
このようにして調製した酵素液について上記B.活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表12に示す。
【表12】
【0228】
表12に示したように、配列番号1記載のアミノ酸配列の261位のチロシンをアラニン、ロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジンに置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVHはいずれも、改変前の値である0.316より低い値となり、また、261位のチロシンをフェニルアラニン、トリプトファンに置換した改変型のアマドリアーゼのεFK/αFVはいずれも、改変前の値である0.093より低い値となった。上記アミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であった。
【実施例13】
【0229】
(263位のグリシンの点変異試験)
基質特異性の向上に効果の高い配列番号1記載のアミノ酸配列の263位のグリシンを他のアミノ酸に置換し、基質特異性に優れた改変型アマドリアーゼの探索を試みた。組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、表13に示した合成オリゴヌクレオチド(配列番号163、164、261〜266)、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記(2)と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の263位のグリシンが各種アミノ酸に置換された改変型アマドリアーゼを生産する大腸菌JM109株を得た。
【0230】
上記のようにして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記(3)記載の方法で培養して、各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0231】
このようにして調製した酵素液について上記B:活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表13に示す。
【表13】
【0232】
表13に示したように、配列番号1記載のアミノ酸配列の263位のグリシンをアルギニン、リジン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸に置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVHはいずれも、改変前の値である0.316より低い値となり、また、εFK/αFVはいずれも、改変前の値である0.093より低い値となった。上記アミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であった。
【実施例14】
【0233】
(355位のアラニンの点変異試験)
基質特異性の向上に効果の高い配列番号1記載のアミノ酸配列の355位のアラニンを他のアミノ酸に置換し、基質特異性に優れた改変型アマドリアーゼの探索を試みた。組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T7 DNAを鋳型として、表14に示した合成オリゴヌクレオチド(配列番号165〜168、267〜270)、KOD −Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記(2)と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の355位のアラニンが各種アミノ酸に置換された改変型アマドリアーゼを生産する大腸菌JM109株を得た。
【0234】
こうして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記(3)記載の方法で培養して各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0235】
このようにして調製した酵素液について上記B.活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表14に示した。
【表14】
【0236】
表14に示したように、配列番号1記載のアミノ酸配列の355位のアラニンをリジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸に置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVHはいずれも、改変前の値である0.316より低い値となり、また、355位のアラニンをリジン、アルギニン、グルタミン酸に置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVはいずれも、改変前の値である0.093より低い値となった。上記アミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であった。
【実施例15】
【0237】
(基質特異性改善に有効な変異の蓄積)
表15に示した各種組換え体プラスミドDNAを鋳型として、合成オリゴヌクレオチド(配列番号7、8、17、18、39、40、51、52、55、56、87、88、115、116、131、132、135、136、139、140)、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記(2)と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109株の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列に表15中の「アミノ酸変異」の欄に記載した複数のアミノ酸置換が導入された改変型アマドリアーゼを生産する大腸菌JM109株を得た。
【0238】
上記のようにして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記(3)記載の方法で培養して、各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0239】
このようにして調製した酵素液について上記B:活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表15に示す。
【表15】
【0240】
表15に示した多重アミノ酸置換が導入された改変型アマドリアーゼでは、εFK/αFVH、εFK/αFVはいずれも各アミノ酸置換を単独で導入した場合と比較して低い値となった。故に、配列番号1に示したアマドリアーゼの基質特異性改善に効果的な単一変異を組み合わせることにより、更なる基質特異性の改善が見込めることが明らかとなった。
【実施例16】
【0241】
(基質特異性改善に有効な変異の蓄積)
表16に示した使用プラスミドLおよびSを制限酵素KpnI及びHindIIIで二重消化し、使用プラスミドLから約5.3kbpのDNA断片を、使用プラスミドSから約0.8kbpのDNA断片をそれぞれアガロースゲル電気泳動により分離した後、NucleoSpin Extract II(マシュレ‐ナゲル社製)によりゲルから各DNA断片を抽出、精製した。続いて、両DNA断片をLigation high Ver.2(東洋紡績社製)を用いて連結し、連結したプラスミドDNAを用いて大腸菌JM109株を形質転換し、生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列に表16中の「アミノ酸変異」の欄に記載した複数のアミノ酸置換が導入された改変型アマドリアーゼを生産する大腸菌JM109株を得た。
【0242】
上記のようにして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記(3)記載の方法で培養して、各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0243】
このようにして調製した酵素液について上記B:活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表16に示す。
【表16】
【0244】
表16中の多重アミノ酸置換が導入された改変型アマドリアーゼでは、εFK/αFVH、εFK/αFVはいずれも各アミノ酸置換を単独で導入した場合と比較して低い値となった。故に、配列番号1に示したアマドリアーゼの基質特異性改善に効果的な単一変異を組み合わせることにより、更なる基質特異性の改善が見込めることが明らかとなった。
【実施例17】
【0245】
(改変型アマドリアーゼの生産および精製)
野生型アマドリアーゼ、および上記のようにして得られた改変型アマドリアーゼを生産する形質転換体、大腸菌JM109(pKK223−3−CFP−T7−Q110R)、および大腸菌JM109(pKK223−3−CFP−T7−Q110K)、および大腸菌JM109(pKK223−3−CFP−T7−Y261F)、および大腸菌JM109(pKK223−3−CFP−T7−Y261W)、および大腸菌JM109(pKK223−3−CFP−T7−E98A/V259C)、および大腸菌JM109(pKK223−3−CFP−T7−E98A/S154N/V259C)を、0.1mMのIPTGを添加したLB−amp培地40mlに植菌し、30℃で16時間培養した。得られた各培養菌体を20mMのHEPES−NaOH緩衝液(pH7.0)で洗浄した後、同緩衝液に菌体を懸濁して超音波破砕処理を行い、20,000×gで10分間遠心分離し、粗酵素液8mlを調製した。
【0246】
調製した粗酵素液を20mM HEPES−NaOH緩衝液(pH7.0)で平衡化した4mlのQ Sepharose Fast Flow樹脂(GEヘルスケア社製)に吸着させ、次に80mlの同緩衝液で樹脂を洗浄し、続いて100mM NaClを含む20mM HEPES−NaOH緩衝液(pH7.0)で樹脂に吸着していたタンパク質を溶出させ、アマドリアーゼ活性を示す画分を回収した。
【0247】
得られたアマドリアーゼ活性を示す画分を、Amicon Ultra−15, 30K NMWL(ミリポア社製)で濃縮した。その後、150mM NaClを含む20mM HEPES−NaOH緩衝(pH7.0)で平衡化したHiLoad 26/60 Superdex 200pg(GEヘルスケア社製)にアプライし、同緩衝液で溶出させ、アマドリアーゼ活性を示す画分を回収し、野生型および改変型アマドリアーゼの精製標品を得た。得られた精製標品はSDS−PAGEによる分析により、単一なバンドまで精製されていることを確認した。
【0248】
得られた野生型および改変型アマドリアーゼの精製標品を用いて、αFVH、εFK、αFVを基質とした時の酵素活性を測定した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表17、表18に示す。なお、比活性の算出に用いたタンパク質濃度はBradford法に基づく比色定量法、もしくは280nmにおける吸光度を利用した紫外吸収法により測定した。各定量法により測定したタンパク質濃度から算出した比活性はそれぞれU/mg、U/A
280で表した。
【表17】
【表18】
【0249】
表17に示す通り、配列番号1記載のアミノ酸配列の110位のグルタミンをアルギニン、リジンに置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVHはいずれも、改変前の値である0.310より低い値を示し、また、110位のグルタミンをアルギニンに置換した改変型のアマドリアーゼの、εFK/αFVは改変前の値である0.092より低い値を示した。また、表18に示す通り、配列番号1記載のアミノ酸配列の261位のチロシンをフェニルアラニン、またはトリプトファンに置換した改変型のアマドリアーゼ、配列番号1記載のアミノ酸配列の98位のグルタミン酸をアラニンに、かつ259位のバリンをシステインに置換した改変型のアマドリアーゼ、及び配列番号1記載のアミノ酸配列の98位のグルタミン酸をアラニンに、かつ154位のセリンをアスパラギンに、かつ259位のバリンをシステインに置換した改変型のアマドリアーゼのεFK/αFVHはいずれも、改変前の値である0.310より低い値を示し、また、εFK/αFVは改変前の値である0.092より低い値を示した。上記アミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であった。
【0250】
また、野生型及び各改変型アマドリアーゼの精製標品を用いて酵素活性を測定して算出したεFK/αFVH、εFK/αFVの値は、野生型及び各改変型アマドリアーゼの粗酵素液を用いて酵素活性を測定して算出したεFK/αFVH、εFK/αFVの値との間に大きな乖離は認められなかった。従って、改変型アマドリアーゼの粗酵素液を用いて酵素活性の測定において基質特異性の改善が認められれば、改変型アマドリアーゼの精製酵素標品を用いた酵素活性の測定においても基質特異性の改善が認められると見なすことが可能である。
【実施例18】
【0251】
(改変型アマドリアーゼによるαFVHの定量)
次に、改変型アマドリアーゼを用いてHbA1cのβ鎖アミノ末端よりプロテアーゼ等により遊離されるαFVHを定量する際に、共存するεFKが測定値に与える影響について評価した。
【0252】
C:試薬の調製
(4)試薬4:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液
7.5kUのパーオキシダーゼ(キッコーマン社製)、150mgの4−アミノアンチピリン(東京化成社製)を0.15Mのリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)に溶解し、1000mlに定容する。
【0253】
(5)試薬5:TOOS溶液
500mgのTOOS(同仁化学研究所製)をイオン交換水に溶解し、100mlに定容する。
【0254】
(6)試薬6:アマドリアーゼ溶液
精製した配列番号1記載のアマドリアーゼ、及び配列番号1記載のアマドリアーゼの98位のグルタミン酸をアラニンに、かつ154位のセリンをアスパラギンに、かつ259位のバリンをシステインに置換した改変型のアマドリアーゼ(配列番号271)を0.01Mのリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)で希釈し、それぞれ1.0U/ml、2.3U/mlとなるように調製した。
【0255】
(7)試薬7:αFVH溶液
αFVH 625mgをイオン交換水に溶解し、10mlに定容することにより、150mMのαFVH溶液を調製した。続いて、150mMのαFVH溶液をイオン交換水により希釈することで、90μM、180μM、270μM、360μM、450μMのαFVH溶液を調製した。
【0256】
(8)試薬8:血液モデル試料
εFK 462mgをイオン交換水に溶解し、10mlに定容することで調製した150mMのεFK溶液と、(7)で調製した150mMのαFVH溶液をイオン交換水で希釈し、以下の4種類の血液モデル溶液を調製した。
【0257】
8−1.215μM αFVH
8−2.215μM αFVH、215μM εFK
8−3.215μM αFVH、1075μM εFK
8−4.215μM αFVH、2150μM εFK
なお、ヘモグロビン濃度15g/dL、HbA1c6.1%(JDS値、NGSP値6.5%相当、IFCC値46.5mmol/mol相当)の血液では、ヘモグロビンの分子量を65kDaとすると、HbA1cのβ鎖アミノ末端から遊離されるαFVHの濃度は215μMとなる。
【0258】
(改変型アマドリアーゼによるαFVHの定量性の確認)
1.8mlの試薬4、100μlの試薬5、および100μlの試薬6を混和し、37℃で5分間予備加温する。その後、37℃で5分間予備加温しておいた試薬7を1000μl加えて良く混ぜた後、分光光度計(U−3010A、日立ハイテクノロジーズ社製)により、555nmにおける吸光度を測定し、その1分間あたりの吸光度変化量(ΔA555)を算出した。なお、対照液は、1000μlの試薬7の代わりに1000μlのイオン交換水を加える以外は前記と同様にしたものである。結果を
図2に示した。
図2から明らかなように、αFVH濃度と吸光度変化量(ΔA555)には相関関係が成立した。従って、配列番号1記載のアマドリアーゼ、及び配列番号271記載の改変型アマドリアーゼは共に、90μMから450μMの範囲でαFVHの定量に用いることができることを確認した。
【0259】
(改変型アマドリアーゼによる血液モデル試料の定量)
1.8mlの試薬4、100μlの試薬5、および100μlの試薬6を混和し、37℃で5分間予備加温する。その後、37℃で5分間予備加温しておいた試薬8−1から8−4のいずれかを1000μl加えて良く混ぜた後、分光光度計(U−3010A、日立ハイテクノロジーズ社製)により、555nmにおける吸光度を測定し、その1分間あたりの吸光度変化量(ΔA555)を算出した。なお、対照液は、1000μlの試薬8−1から8−4の代わりに1000μlのイオン交換水を加える以外は前記と同様にしたものである。結果を表19に示した。表19から明らかなように、配列番号1記載のアマドリアーゼを用いた場合、αFVHと同濃度のεFKが共存すると、その測定値は本来の測定値と比較して3%弱の乖離が認められ、αFVHの5倍、10倍濃度のεFKが共存すると、その測定値は本来の測定値と比較して8%、17%の乖離が認められた。それに対し、配列番号271記載の改変型アマドリアーゼを用いた場合にはαFVHの同濃度、5倍濃度のεFKが共存しても、本来の測定値との乖離は1%弱であり、また、αFVHの10倍濃度のεFKが共存しても、本来の測定値との乖離は2%弱である。従って、配列番号271記載の改変型アマドリアーゼを用いれば、εFKが共存している試料でも正確にαFVHのみを定量することが可能である。
【表19】
【実施例19】
【0260】
(アスペルギルス・ニードランス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子のクローニングおよび大腸菌での発現)
(a)アスペルギルス・ニードランスFGSC A26株からの全RNAの抽出
アスペルギルス・ニードランスFGSC A26株を、液体培地(0.4%イーストエキストラクト、1.0%マルツエキストラクト、0.1%トリプトン、0.1%リン酸2水素1カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、2.0%グルコース、pH6.5)において、30℃で24時間培養した。培養後、回収した菌体を液体窒素で粉砕し、ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いて付属のプロトコールに従い全RNAを調製した。また、調製した全RNAをDNaseI(インビトロジェン社製)で処理することにより、DNAの混入を防いだ。
【0261】
(b)アスペルギルス・ニードランス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼcDNAのクローニング
得られた全RNA1μgを用いて、PrimeScript RT−PCR Kit(タカラバイオ社製)により、付属のプロトコールに従ってRT−PCRを行った。このとき、逆転写反応ではKit付属のOligo dT Primerを用い、その後のPCR反応では配列番号169、170 に示した合成オリゴヌクレオチドを用いた。その結果、約1300bpのcDNA断片が特異的に増幅した。次に、この増幅したcDNA断片についてシーケンス解析を行った結果、配列番号171に示した1317bpからなる塩基配列であることがわかった。また、配列番号171より予想されるアミノ酸配列(配列番号172)は
図1のアスペルキルス・ニードランス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼの配列と一致していた。
【0262】
(c)アスペルギルス・ニードランス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼの大腸菌での発現
続いて、アスペルギルス・ニードランス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを大腸菌で発現させるために、以下の手順を行った。まず、上記でクローニングしてきたcDNA断片は配列番号169、170に示した合成ヌクレオチド由来のNdeIサイトとBamHIサイトをそれぞれ5´末端と3´末端に有しているため、クローニングしてきたcDNA断片をNdeIとBamHI(タカラバイオ社製)の2種類の制限酵素で処理し、pET−22b(+)Vector(ノバジェン社製)のNdeI−BamHIサイトに挿入することで、組換え体プラスミドpET22b−AnFX´を取得した。
【0263】
次に、アスペルギルス・ニードランス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼにフルクトシルペプチドオキシダーゼ活性を付与するために、組換え体プラスミドpET22b−AnFX´を鋳型にして、配列番号173、174の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号172記載のアミノ酸配列の59位のセリンがグリシンに置換されたアスペルギルス・ニードランス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−AnFX)を取得した。そして、この得られた組換え体プラスミドpET22b−AnFXを大腸菌BL21(DE3)株(ニッポンジーン社製)に形質転換することで、アスペルギルス・ニードランス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを産生する大腸菌を取得した。
【0264】
上記で得られたアスペルギルス・ニードランス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを産生する大腸菌BL21(DE3)を、Overnight Express Autoinduction System 1(ノバジェン社製)の試薬を加えたLB−amp培地において30℃で18時間振とう培養した。得られた各培養菌体を10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁して超音波破砕処理を行い、20,000×gで10分間遠心分離することで粗酵素液を得た。この粗酵素液を用いて、上記のB:活性測定法により、αFVに対する酵素活性を測定したところ、2.2U/mlであった。ただし、このときの活性測定の試薬1はpH7.5に調整したものを使用した。
【実施例20】
【0265】
(アスペルギルス・ニードランス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子への点変異導入)
基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b―AnFXを鋳型にして、配列番号175、176の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号172記載のアミノ酸配列の153位のシステインがアスパラギン酸に置換されたアスペルギルス・ニードランス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−AnFX−C153D)を得た。
【0266】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b―AnFXを鋳型にして、配列番号177、178及び179、180の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号172記載のアミノ酸配列の259位のバリンがそれぞれアラニン、システインに置換されたアスペルギルス・ニードランス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−AnFX−V259A、pET22b−AnFX−V259C)を得た。
【0267】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b−AnFXを鋳型にして、配列番号181、182及び183、184の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号172記載のアミノ酸配列の263位のグリシンがそれぞれリジン、アルギニンに置換されたアスペルギルス・ニードランス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−AnFX−G263K、pET22b−AnFX−G263R)を得た。
【実施例21】
【0268】
(点変異を導入したアスペルギルス・ニードランス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼの基質特異性改善効果の評価)
上記で得られた組換え体プラスミドpET22b−AnFX、pET22b−AnFX−C153D、pET22b−AnFX−V259A、pET22b−AnFX−V259C、pET22b−AnFX−G263K、pET22b−AnFX−G263Rをそれぞれ保持する大腸菌BL21(DE3)を、Overnight Express Autoinduction System 1(ノバジェン社製)の試薬を加えたLB−amp培地において30℃で18時間振とう培養した。得られた各培養菌体を10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁して超音波破砕処理を行い、20,000×gで10分間遠心分離することで粗酵素液を得た。この粗酵素液を用いて、上記のB:活性測定法により、αFV、αFVH及びεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。ただし、このときの活性測定の試薬1はpH7.5に調整したものを使用した。結果を表20に示す。
【表20】
【0269】
表20に示したように、配列番号172記載のアミノ酸配列の153位のシステインをアスパラギン酸に、259位のバリンをアラニンまたはシステインに、263位のグリシンをリジンまたはアルギニンに置換することにより、アスペルギルス・ニードランス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼのεFK/αFVH及びεFK/αFVはいずれも置換前より低い値となった。よって、これらアミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であることがわかった。
【実施例22】
【0270】
(ペニシリウム・クリソゲナム由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子のクローニングおよび大腸菌での発現)
(a)ペニシリウム・クリソゲナムNBRC9251株からの全RNAの抽出
ペニシリウム・クリソゲナムNBRC9251株を、液体培地(0.4%イーストエキストラクト、1.0%マルツエキストラクト、0.1%トリプトン、0.1%リン酸2水素1カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、2.0%グルコース、pH6.5)において、30℃で24時間培養し、上記と同様の手順で全RNAを調製した。
【0271】
(b)ペニシリウム・クリソゲナム由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼcDNAのクローニング
得られた全RNA1μgを用いて、上記と同様にしてRT−PCRを行った。このとき、逆転写反応ではKit付属のOligo dT Primerを用い、その後のPCR反応では配列番号185、186 に示した合成オリゴヌクレオチドを用いた。その結果、約1300bpのcDNA断片が特異的に増幅した。次に、この増幅したcDNA断片についてシーケンス解析を行った結果、配列番号187に示した1317bpからなる塩基配列であることがわかった。また、配列番号187より予想されるアミノ酸配列(配列番号188)は、
図1で記載したペニシリウム・ヤンシネラムの配列の69番目のロイシンがトリプトファンに、142番目のスレオニンがアラニンに置換されたものと一致していた。
【0272】
(c)ペニシリウム・クリソゲナム由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼの大腸菌での発現
続いて、ペニシリウム・クリソゲナム由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを大腸菌で発現させるために、以下の手順を行った。まず、上記でクローニングしてきたcDNA断片は配列番号185、186に示した合成ヌクレオチド由来のNdeIサイトとBamHIサイトをそれぞれ5´末端と3´末端に有しているため、クローニングしてきたcDNA断片をNdeIとBamHI(タカラバイオ社製)の2種類の制限酵素で処理し、pET−22b(+)Vector(ノバジェン社製)のNdeI−BamHIサイトに挿入することで、組換え体プラスミドpET22b−PcFX´を取得した。
【0273】
次に、ペニシリウム・クリソゲナム由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼにフルクトシルペプチドオキシダーゼ活性を付与するために、組換え体プラスミドpET22b−PcFX´を鋳型にして、配列番号189、190の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号188記載のアミノ酸配列の60位のセリンがグリシンに置換されたペニシリウム・クリソゲナム由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−PcFX)を取得した。そして、この得られた組換え体プラスミドpET22b−PcFXを大腸菌BL21(DE3)に形質転換することで、ペニシリウム・クリソゲナム由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを産生する大腸菌を取得した。
【0274】
上記で得られたペニシリウム・クリソゲナム由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを産生する大腸菌BL21(DE3)を、Overnight Express Autoinduction System 1(ノバジェン社製)の試薬を加えたLB−amp培地において30℃で18時間振とう培養した。得られた各培養菌体をBugBuster Protein Extraction Reagent(ノバジェン社製)を用いて溶菌した後、20,000×gで10分間遠心分離することで粗酵素液を得た。この粗酵素液を用いて、上記のB:活性測定法により、αFVに対する酵素活性を測定したところ、0.090U/mlであった。ただし、このときの活性測定の試薬1はpH7.5に調整したものを使用した。
【実施例23】
【0275】
(ペニシリウム・クリソゲナム由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子への点変異導入)
基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b―PcFXを鋳型にして、配列番号191、192の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号188記載のアミノ酸配列の110位のリジンがアルギニンに置換されたペニシリウム・クリソゲナム由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−PcFX−K110R)を得た。
【0276】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b―PcFXを鋳型にして、配列番号193、194の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号188記載のアミノ酸配列の154位のシステインがアスパラギン酸に置換されたペニシリウム・クリソゲナム由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−PcFX−C154D)を得た。
【0277】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b−PcFXを鋳型にして、配列番号195、196の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号188記載のアミノ酸配列の263位のグリシンがリジンに置換されたペニシリウム・クリソゲナム由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−PcFX−G263K)を得た。
【実施例24】
【0278】
(点変異を導入したペニシリウム・クリソゲナム由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼの特性評価)
上記で得られた組換え体プラスミドpET22b−PcFX、pET22b−PcFX−K110R、pET22b−PcFX−C154D、pET22b−PcFX−G263Kをそれぞれ保持する大腸菌BL21(DE3)を、Overnight Express Autoinduction System 1(ノバジェン社製)の試薬を加えたLB−amp培地において30℃で18時間振とう培養した。得られた各培養菌体をBugBuster Protein Extraction Reagent(ノバジェン社製)を用いて溶菌した後、20,000×gで10分間遠心分離することで粗酵素液を得た。この粗酵素液を用いて、上記のB:活性測定法により、αFV、αFVH及びεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。ただし、このときの活性測定の試薬1はpH7.5に調整したものを使用した。結果を表21に示す。
【表21】
【0279】
表21に示したように、配列番号188記載のアミノ酸配列の110位のリジンをアルギニンに、154位のシステインをアスパラギン酸に置換することにより、ペニシリウム・クリソゲナム由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼのεFK/αFVH及びεFK/αFVはいずれも置換前より低い値となった。また、配列番号188記載のアミノ酸配列の263位のグリシンをリジンに置換することにより、ペニシリウム・クリソゲナム由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼのεFK/αFVHは置換前より低い値となった。よって、これらアミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であることがわかった。
【実施例25】
【0280】
(クリプトコッカス・ネオフォルマンス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼの大腸菌での発現)
既知のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼのアミノ酸配列をもとに、ゲノムデータベース(http://www.genome.jp/tools/blast/)より検索したクリプトコッカス・ネオフォルマンス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(Cryptococcus neoformans B-3501A:
GENE ID: 4934641 CNBB5450 hypothetical protein)について、C末端から34アミノ酸を除いた、配列番号197で示す443アミノ酸を大腸菌で発現させることを試みた。そこで、配列番号197のアミノ酸配列をコードし、且つ大腸菌発現用にコドンを最適化した、配列番号198で示す1332bpの遺伝子(終止コドンTGAを含む)を、定法である遺伝子断片のPCRによる全合成によりcDNAを全合成することで取得した。このとき、配列番号1の5´末端、3´末端にはそれぞれNdeIサイトとBamHIサイトを付加した。また、クローニングした遺伝子配列から予想されるアミノ酸配列は
図1のクリプトコッカス・ネオフォルマンス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼのC末端から34アミノ酸を除いた配列と一致していることを確認した。
【0281】
続いて、取得した配列番号198の遺伝子を大腸菌で発現させるために、以下の手順を行った。まず、上記で全合成した遺伝子をNdeIとBamHI(タカラバイオ社製)の2種類の制限酵素で処理し、pET−22b(+)Vector(ノバジェン社製)のNdeI−BamHIサイトに挿入することで、組換え体プラスミドpET22b−CnFXを取得し、大腸菌BL21(DE3)に形質転換した。次に、組換え体プラスミドpET22b−CnFXを保持する大腸菌BL21(DE3)を、Overnight Express Autoinduction System 1(ノバジェン社製)の試薬を加えたLB−amp培地において30℃で18時間振とう培養した。得られた各培養菌体を10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁して超音波破砕処理を行い、20,000×gで10分間遠心分離することで粗酵素液を得た。この粗酵素液を用いて、上記のB:活性測定法により、αFVに対する酵素活性を測定したところ、それぞれ2.2U/mlであった。ただし、このときの活性測定の試薬1はpH7.5に調整したものを使用した。
【実施例26】
【0282】
(クリプトコッカス・ネオフォルマンス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子への点変異導入)
基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b―CnFXを鋳型にして、配列番号199、200の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号197記載のアミノ酸配列の100位のスレオニンがアルギニンに置換されたクリプトコッカス・ネオフォルマンス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−CnFX−T100R)を得た。
【0283】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b―CnFXを鋳型にして、配列番号201、202の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号197記載のアミノ酸配列の110位のセリンがアルギニンに置換されたクリプトコッカス・ネオフォルマンス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−CnFX−S110R)を得た。
【0284】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b―CnFXを鋳型にして、配列番号203、204の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号197記載のアミノ酸配列の154位のセリンがアスパラギンに置換されたクリプトコッカス・ネオフォルマンス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−CnFX−S154N)を得た。
【0285】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b−CnFXを鋳型にして、配列番号205、206及び207、208の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号197記載のアミノ酸配列の259位のバリンがそれぞれアラニン、システインに置換されたクリプトコッカス・ネオフォルマンス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−CnFX−V259A、pET22b−CnFX−V259C)を得た。
【0286】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b−CnFXを鋳型にして、配列番号209、210及び211、212の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号197記載のアミノ酸配列の263位のセリンがそれぞれリジン、アルギニンに置換されたクリプトコッカス・ネオフォルマンス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−CnFX−S263K、pET22b−CnFX−S263R)を得た。
【実施例27】
【0287】
(点変異を導入したクリプトコッカス・ネオフォルマンス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼの特性評価)
上記で得られた組換え体プラスミドpET22b−CnFX−T100R、pET22b−CnFX−S110R、pET22b−CnFX−S154N、pET22b−CnFX−V259A、pET22b−CnFX−V259C、pET22b−CnFX−S263K、pET22b−CnFX−S263Rをそれぞれ保持する大腸菌BL21(DE3)を、Overnight Express Autoinduction System 1(ノバジェン社製)の試薬を加えたLB−amp培地において30℃で18時間振とう培養した。得られた各培養菌体を10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁して超音波破砕処理を行い、20,000×gで10分間遠心分離することで粗酵素液を得た。この粗酵素液を用いて、上記のB:活性測定法により、αFV、αFVH及びεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。ただし、このときの活性測定の試薬1はpH7.5に調整したものを使用した。結果を表22に示す。
【表22】
【0288】
表22に示したように、配列番号197記載のアミノ酸配列の100位のスレオニンをアルギニンに、110位のセリンをアルギニンに、154位のセリンをアスパラギンに、259位のバリンをアラニンまたはシステインに、263位のセリンをリジンまたはアルギニンに置換することにより、クリプトコッカス・ネオフォルマンス由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼのεFK/αFVH及びεFK/αFVはいずれも置換前より低い値となった。よって、これらアミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であることがわかった。
【実施例28】
【0289】
(ネオコスモスポラ・バシンフェクタ由来ケトアミンオキシダーゼの大腸菌での発現)
ネオコスモスポラ・バシンフェクタ由来ケトアミンオキシダーゼを大腸菌で発現させることを試みた。すでに明らかになっているネオコスモスポラ・バシンフェクタ由来ケトアミンオキシダーゼのアミノ酸配列を配列番号213に示した(特許文献1参照)。この配列番号213で示した441アミノ酸をコードし、且つ大腸菌発現用にコドンを最適化した、配列番号214で示す1326bpの遺伝子(終止コドンTGAを含む)を、定法である遺伝子断片のPCRによる全合成によりcDNAを全合成することで取得した。このとき、配列番号1の5´末端、3´末端にはそれぞれNdeIサイトとBamHIサイトを付加した。また、クローニングした遺伝子配列から予想されるアミノ酸配列全長は
図1のネオコスモスポラ・バシンフェクタ由来ケトアミンオキシダーゼの配列と一致していることを確認した。
【0290】
続いて、取得した配列番号214の遺伝子を大腸菌で発現させるために、以下の手順を行った。まず、上記で全合成した遺伝子をNdeIとBamHI(タカラバイオ社製)の2種類の制限酵素で処理し、pET−22b(+)Vector(ノバジェン社製)のNdeI−BamHIサイトに挿入することで、組換え体プラスミドpET22b−NvFXを取得し、大腸菌BL21(DE3)に形質転換した。次に、この組換え体プラスミドpET22b−NvFXを保持する大腸菌BL21(DE3)を、Overnight Express Autoinduction System 1(ノバジェン社製)の試薬を加えたLB−amp培地において30℃で18時間振とう培養した。得られた各培養菌体を10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁して超音波破砕処理を行い、20,000×gで10分間遠心分離することで粗酵素液を得た。この粗酵素液を用いて、上記のB:活性測定法により、αFVに対する酵素活性を測定したところ、19.3U/mlであった。ただし、このときの活性測定の試薬1はpH7.5に調整したものを使用した。
【実施例29】
【0291】
(ネオコスモスポラ・バシンフェクタ由来ケトアミンオキシダーゼ遺伝子への点変異導入)
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b−NvFXを鋳型にして、配列番号215、216及び217、218及び219、220及び221、222の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号213記載のアミノ酸配列の98位のグルタミン酸がそれぞれグルタミン、ヒスチジン、リジン、アルギニンに置換されたネオコスモスポラ・バシンフェクタ由来ケトアミンオキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−NvFX−E98Q、pET22b−NvFX−E98H、pET22b−NvFX−E98K、pET22b−NvFX−E98R)を得た。
【0292】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b―NvFXを鋳型にして、配列番号223、224の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のケトアミンオキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号213記載のアミノ酸配列の103位のグリシンがアルギニンに置換されたネオコスモスポラ・バシンフェクタ由来ケトアミンオキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−NvFX−G103R)を得た。
【0293】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b―NvFXを鋳型にして、配列番号225、226の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のケトアミンオキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号213記載のアミノ酸配列の110位のグルタミン酸がアルギニンに置換されたネオコスモスポラ・バシンフェクタ由来ケトアミンオキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−NvFX−E110R)を得た。
【0294】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b―NvFXを鋳型にして、配列番号227、228及び229、230の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のケトアミンオキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号213記載のアミノ酸配列の154位のセリンがそれぞれアスパラギン、アスパラギン酸に置換されたネオコスモスポラ・バシンフェクタ由来ケトアミンオキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−NvFX−S154N、pET22b−NvFX−S154D)を得た。
【0295】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b−NvFXを鋳型にして、配列番号231、232及び233、234の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のケトアミンオキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号213記載のアミノ酸配列の259位のバリンがそれぞれアラニン、システインに置換されたネオコスモスポラ・バシンフェクタ由来ケトアミンオキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−NvFX−V259A、pET22b−NvFX−V259C)を得た。
【0296】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b−NvFXを鋳型にして、配列番号235、236及び237、238の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のケトアミンオキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号213記載のアミノ酸配列の263位のグリシンがそれぞれリジン、アルギニンに置換されたネオコスモスポラ・バシンフェクタ由来ケトアミンオキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−NvFX−G263K、pET22b−NvFX−G263R)を得た。
【0297】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpET22b−NvFXを鋳型にして、配列番号239、240の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌BL21(DE3)の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のケトアミンオキシダーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号213記載のアミノ酸配列の66位のリジンがグリシンに、67位のバリンがプロリンに置換されたネオコスモスポラ・バシンフェクタ由来ケトアミンオキシダーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pET22b−NvFX−K66GV67P)を得た。
【実施例30】
【0298】
(点変異を導入したネオコスモスポラ・バシンフェクタ由来ケトアミンオキシダーゼの特性評価)
上記で得られた組換え体プラスミドpET22b−NvFX−E98Q、pET22b−NvFX−E98H、pET22b−NvFX−E98K、pET22b−NvFX−E98R、pET22b−NvFX−E110R、pET22b−NvFX−S154N、pET22b−NvFX−S154D、pET22b−NvFX−V259A、pET22b−NvFX−V259C、pET22b−NvFX−G263K、pET22b−NvFX−G263R、pET22b−NvFX−K66GV67Pをそれぞれ保持する大腸菌BL21(DE3)を、Overnight Express Autoinduction System 1(ノバジェン社製)の試薬を加えたLB−amp培地において30℃で18時間振とう培養した。得られた各培養菌体を10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁して超音波破砕処理を行い、20,000×gで10分間遠心分離することで粗酵素液を得た。この粗酵素液を用いて、上記のB:活性測定法により、αFV、αFVH及びεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。ただし、このときの活性測定の試薬1はpH7.5に調整したものを使用した。結果を表23に示す。
【表23】
【0299】
表23に示したように、配列番号213記載のアミノ酸配列の98位のグルタミン酸をグルタミンまたはヒスチジンまたはリジンまたはアルギニンに、103位のグリシンをアルギニンに、110位のグルタミン酸をアルギニンに、154位のセリンをアスパラギンまたはアスパラギン酸に、259位のバリンをアラニンまたはシステインに、263位のグリシンをリジンまたはアルギニンに置換することにより、ネオコスモスポラ・バシンフェクタ由来フルクトシルアミノ酸オキシダーゼのεFK/αFVH及びεFK/αFVはいずれも置換前より低い値となった。また、66位のリジンをグリシンに、かつ67位のバリンをプロリンに置換することにより、ネオコスモスポラ・バシンフェクタ由来ケトアミンオキシダーゼのεFK/αFVHは置換前より低い値となった。よって、これらアミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であることがわかった。
【実施例31】
【0300】
(ユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼ遺伝子への点変異導入)
配列番号241は熱安定性向上型変異(G184D、N272D、H388Y)を導入したユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼのアミノ酸配列であり、配列番号241のアミノ酸配列をコードする遺伝子(配列番号242)を挿入した組換え体プラスミドpUTE100K´−EFP−T5を大腸菌で発現させることにより、ユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼの活性が確認されている(国際公開第2007/125779号参照)。
【0301】
ユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼに基質特異性向上型変異を導入するために、組換え体プラスミドpUTE100K´−EFP−T5を鋳型にして、配列番号243、244の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌DH5αの形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号241記載のアミノ酸配列の98位のセリンがアラニンに置換されたユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pUTE100K´−EFP−T5−S98A)を得た。
【0302】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpUTE100K´−EFP−T5を鋳型にして、配列番号245、246の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌DH5αの形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号241記載のアミノ酸配列の110位のリジンがアルギニンに置換されたユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pUTE100K´−EFP−T5−K110R)を得た。
【0303】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpUTE100K´−EFP−T5を鋳型にして、配列番号249、250及び251、252の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌DH5αの形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号241記載のアミノ酸配列の259位のバリンがそれぞれアラニン、システインに置換されたユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pUTE100K´−EFP−T5−V259A、pUTE100K´−EFP−T5−V259C)を得た。
【0304】
続いて、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpUTE100K´−EFP−T5を鋳型にして、配列番号253、254の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌DH5αの形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号241記載のアミノ酸配列の263位のグリシンがリジンに置換されたユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pUTE100K´−EFP−T5−G263K)を得た。
【実施例32】
【0305】
(点変異を導入したユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼの基質特異性改善効果の評価)
上記で得られた組換え体プラスミドpUTE100K´−EFP−T5−S98A、pUTE100K´−EFP−T5−K110R、pUTE100K´−EFP−T5−V259A、pUTE100K´−EFP−T5−V259C、pUTE100K´−EFP−T5−G263Kをそれぞれ保持する大腸菌DH5α株を、0.1MのIPTGを添加したLB−amp培地において30℃で18時間振とう培養した。得られた各培養菌体を10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁して超音波破砕処理を行い、20,000×gで10分間遠心分離することで粗酵素液を得た。この粗酵素液を用いて、上記のB:活性測定法により、αFV、αFVH及びεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。ただし、このときの活性測定の試薬1はpH8.0に調整したものを使用した。活性測定結果を表24に示す。
【表24】
【0306】
表24に示したように、配列番号241記載のアミノ酸配列の98位のセリンをアラニンに、110位のリジンをアルギニンに、259位のバリンをアラニンまたはシステインに、263位のグリシンをリジンに置換することにより、ユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼのεFK/αFVH及びεFK/αFVはいずれも置換前より低い値となった。よって、これらアミノ酸置換は基質特異性が改善されたアマドリアーゼの作製に有効な置換であることがわかった。
【実施例33】
【0307】
(ユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼ遺伝子の基質特性向上型多重変異体の作製)
ユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼ遺伝子の基質特異性向上型多重変異体を作製することで、εFKへの反応性を著しく低下させたアマドリアーゼの開発に試みた。
【0308】
組換え体プラスミドpUTE100K´−EFP−T5−V259Cを鋳型にして、配列番号243、244の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌DH5αの形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号241記載のアミノ酸配列の98位のセリンがアラニンに、259位のバリンがシステインに置換されたユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pUTE100K´−EFP−T5−S98A/V259C)を得た。
【0309】
同様にして、基質特異性を向上させるための点変異を導入することを目的として、組換え体プラスミドpUTE100K´−EFP−T5−K110Rを鋳型にして、配列番号247、248の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌DH5αの形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号241記載のアミノ酸配列の110位のリジンがアルギニンに、154位のシステインがアスパラギンに置換されたユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pUTE100K´−EFP−T5−K110R/C154N)を得た。
【0310】
同様にして、組換え体プラスミドpUTE100K´−EFP−T5−V259Cを鋳型にして、配列番号245、246の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌DH5αの形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号241記載のアミノ酸配列の110位のリジンがアルギニンに、259位のバリンがシステインに置換されたユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pUTE100K´−EFP−T5−K110R/V259C)を得た。
【0311】
同様にして、組換え体プラスミドpUTE100K´−EFP−T5−S98A−V259Cを鋳型にして、配列番号245、246の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応、大腸菌DH5αの形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号241記載のアミノ酸配列の98位のセリンがアラニンに、110位のリジンがアルギニンに、259位のバリンがシステインに置換されたユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼ遺伝子をコードする組換え体プラスミド(pUTE100K´−EFP−T5−S98A/K110R/V259C)を得た。
【実施例34】
【0312】
(ユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼ遺伝子への基質特性向上型多重変異の導入による基質特異性改善効果の評価)
上記で得られた組換え体プラスミドpUTE100K´−EFP−T5−S98A/V259C、pUTE100K´−EFP−T5−K110R/C154N、pUTE100K´−EFP−T5−K110R/V259C、pUTE100K´−EFP−T5−S98A/K110R/V259Cをそれぞれ保持する大腸菌DH5α株を、0.1MのIPTGを添加したLB−amp培地において30℃で18時間振とう培養した。得られた各培養菌体を10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁して超音波破砕処理を行い、20,000×gで10分間遠心分離することで粗酵素液を得た。この粗酵素液を用いて、上記のB:活性測定法により、αFV、αFVH及びεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。ただし、このときの活性測定の試薬1はpH8.0に調整したものを使用した。活性測定結果を表25に示す。
【表25】
【0313】
表25に示したように、多重アミノ酸置換が導入されたユウペニシリウム・テレナム由来アマドリアーゼでは、εFK/αFVH、εFK/αFVはいずれも各アミノ酸置換を単独で導入した場合と比較してさらに低い値となり、εFKへの反応性が著しく低下することが明らかとなった。
【実施例35】
【0314】
(組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T9 DNAの調製)
配列番号272は熱安定性向上型変異(G184D、F265L、N272D、H302R、H388Y)を導入したConiochaeta属由来アマドリアーゼのアミノ酸配列であり、配列番号273の遺伝子にコードされている。
【0315】
Coniochaeta属由来アマドリアーゼ遺伝子(配列番号273)の組換え体プラスミドを有する大腸菌JM109(pKK223−3−CFP−T9)株(国際公開第2007/125779号参照)を、[実施例1]記載の方法と同様にして培養し、培養物を10,000×gで、1分間遠心分離することにより集菌して菌体を得た。この菌体より、GenElute Plasmid Mini−Prep Kit(シグマアルドリッチ社製)を用いて組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T9を抽出して精製し、2.5μgの組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T9 DNAを得た。
【0316】
(組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T9 DNAの部位特異的改変操作)
配列番号272記載のアミノ酸配列の98位のグルタミン酸をアラニンに、154位のセリンをアスパラギンに、259位のバリンをシステインに置換するために、組換え体プラスミドpKK223−3−CFP−T9 DNAを鋳型として、配列番号55、56の合成オリゴヌクレオチド、KOD−Plus−(東洋紡績社製)を用い、[実施例1}に述べた条件と同様の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換および生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、98位のグルタミン酸がアラニンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T9−E98A)を得た。
【0317】
上記と同様にして、pKK223−3−CFP−T9−E98A DNAを鋳型とし、配列番号139、140の合成オリゴヌクレオチドを使用して、98位のグルタミン酸がアラニンに、154位のセリンがアスパラギンに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T9−E98A/S154N)を得た。
【0318】
さらに上記と同様にして、pKK223−3−CFP−T9−E98A/S154N DNAを鋳型とし、配列番号151、152の合成オリゴヌクレオチドを使用して、98位のグルタミン酸がアラニンに、154位のセリンがアスパラギンに、259位のバリンがシステインに置換された改変型アマドリアーゼをコードする組換え体プラスミド(pKK223−3−CFP−T9−E98A/S154N/V259C)を得た。
【0319】
上記のようにして得られた改変型アマドリアーゼ生産能を有する大腸菌JM109株を、上記[実施例1](3)記載の方法で培養して、各種改変型アマドリアーゼの粗酵素液0.6mlを調製した。
【0320】
このようにして調製した酵素液について上記B:活性測定法に示した方法により、αFVH、αFVおよびεFKに対する酵素活性を測定し、εFK/αFVHおよびεFK/αFVを算出した。なお、活性測定にはpH7.0に調整した試薬1:パーオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン溶液を用いた。結果を表26に示す。
【表26】
【0321】
表26中の多重アミノ酸置換が導入された改変型アマドリアーゼでは、εFK/αFVH、εFK/αFVはいずれも変異導入以前と比較して極めて低い値となった。故に、配列番号1に示したアマドリアーゼの基質特異性改善に効果的な単一変異を、配列番号272に示したアマドリアーゼに蓄積させることによっても、極めて大きな基質特異性の改善が見込めることが明らかとなった。