【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
出発原料として、平均粒径11μmのフェロシリコン(Fe28%)を9kg(30重量部)、平均粒径2μmのFe
2Oを18kg(60重量部)、平均粒径15μmのマグネタイト粉末(Fe
2O
3−X,X:0.33)を3kg(10重量部)混合し、純水10kg中に分散し、分散剤としてポリエーテル系分散剤を450g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理してスラリーを得た。
このスラリーをスプレードライヤーにて約160℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm〜100μmの造粒物を得た。この造粒物から、粒径100μmを超える粗粒は篩網を用いて除去した。得られた造粒物の平均粒径及び円形度を後述の方法で測定した。
次いで、この造粒物15gを直径2cmの円柱状凹部が形成された金型に入れ、圧力300kg/cm
2で圧縮成型し、厚さ1.5cmの円柱形状の発熱体を得た。目視観察において、得られた発熱体に割れ、欠け、形状の崩れは確認されず、形状保持性は良好であった。発熱体の密度、空隙率、圧壊強度、燃焼後の割れの有無を下記方法で測定及び観察した。結果を表1にまとめて示す。また
図1に、発熱体の断面SEM写真を示す。
【0037】
(実施例2)
平均粒径が27.1μmの造粒物を用いた以外は実施例1と同様にして発熱体を作製した。そして作製した発熱体の形状保持性、密度、空隙率、圧壊強度、燃焼後の割れの有無を実施例1と同様にして測定及び観察した。結果を表1にまとめて示す。
【0038】
(実施例3)
平均粒径が304.1μmの造粒物を用いた以外は実施例1と同様にして発熱体を作製した。そして作製した発熱体の形状保持性、密度、空隙率、圧壊強度、燃焼後の割れの有無を実施例1と同様にして測定及び観察した。結果を表1にまとめて示す。
【0039】
(実施例4)
成型体作製時の成型圧力を500kg/cm
2と得た以外は、実施例1と同様にして発熱体を作製した。そして作製した発熱体の形状保持性、密度、空隙率、圧壊強度、燃焼後の割れの有無を実施例1と同様にして測定及び観察した。結果を表1にまとめて示す。
【0040】
(比較例1)
出発原料として、平均粒径11μmのフェロシリコン(Fe28%)を9kg(30重量部)、平均粒径2μmのFe
2Oを18kg(60重量部)、平均粒径15μmのマグネタイト粉末(Fe
2O
3−X,X:0.33)を3kg(10重量部)ヘンシェルミキサーを用いて混合し、実施例1と同様の条件で圧縮成型して発熱体を作製した。作製した発熱体の形状保持性、密度、空隙率、圧壊強度、燃焼後の割れの有無を実施例1と同様にして測定及び観察した。結果を表1にまとめて示す。また
図2に、発熱体の断面SEM写真を示す。
【0041】
(比較例2)
成型体作製時の成型圧力を100kg/cm
2とした以外は、比較例1と同様にして造粒物、成型体を作製し、特性評価を行った。評価結果を表1に合わせて示す。
【0042】
(造粒物の体積平均径の測定)
造粒物の体積平均径(D
50)をSYMPATEC社製の「HELOS」を用いて測定した。
【0043】
(造粒物の円形度測定)
走査型電子顕微鏡(日本電子製「JSM−6510LA」)を用いて、加速電圧は5kV、スポットサイズは45,倍率は30倍〜150倍(粒径に対応して変化)として、粒子が重ならないように造粒物を分散させて撮影した。そして、その画像情報を、インターフェースを介してメディアサイバネティクス社製「画像解析ソフト(Image−Pro PLUS)」に導入して解析を行い、A(造粒物の投影面積)及びL(造粒物の周囲長)を求め、下記式(1)から造粒物の円形度を算出した。なお、円形度は、100個の造粒物の平均値をその造粒物の円形度とした。
円形度=4π×(A/L
2)・・・・・・(1)
(式中、L:造粒物の周囲長,A:造粒物の投影面積)
【0044】
(発熱体の密度)
発熱体の重量及び体積から密度を算出した。
【0045】
(発熱体の空隙率)
発熱体の密度と、Quantachrome社製のウルトラピクノメータ1000型を用いて測定した造粒物の真密度とから発熱体中の固形分体積を算出し、発熱体の体積から固形分体積より差し引いて空隙体積を求め、発熱体の空隙率を求めた。
【0046】
(発熱体の圧壊強度)
造粒物15gを直径20mmの金型に入れ、300kg/cm
2で圧縮成型した発熱体に軸方向から力を加えて圧壊強度を測定した。
【0047】
(燃焼試験)
発熱体を断熱材の上に載せ、発熱体のほぼ中央部に、鉄粉、フェロシリコン、酸化銅、過酸化バリウムの混合粉末0.2〜0.3gを着火剤としておき、マッチで着火剤に点火した。そして、発熱状態、発熱体が燃焼した後の発熱体に割れなどがあるかどうかを目視にて観察した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1から明らかなように、空隙率及び圧壊強度が本願発明の規定範囲を満足している実施例1〜4の発熱体では、圧縮成型時の割れ・欠け・崩れは見られなかった。また、発熱状態は良好で、発熱体の膨張や燃焼後の割れも見られなかった。
【0050】
これに対して、出発原料を造粒せずに圧縮成型して作製した比較例1の発熱体では空隙率が31.1体積%と低く、密度は2.96g/cm
3と高かった。このため、発熱体の燃焼試験では、燃焼によって生じた気体が発熱体の外部に円滑に抜け出ることができず、発熱体の膨張及び燃焼後に割れが確認された。
【0051】
また、比較例1と比較し小さい成型圧力で作製した比較例2の発熱体では、空隙率が54.5体積%であったが、圧縮強度が73kg/cm
2と低い値を示し、発熱体に欠けが確認された。