【実施例】
【0032】
実施例1
実施の形態1における積層フィルム15に対してJIS K 7127に準拠する引張試験を実施した。この引張試験は、周囲温度23℃、相対湿度50%の環境下において試験片の長さ方向のそれぞれの端部を長さ方向に互いに離れるように引張り、試験片が破断するときの引張強さを測定するものである。
図10は、引張試験のための試験片41を示す平面図である。試験片41は、長さ150mm、幅15mm、厚さ0.075mmの矩形の積層フィルムにより形成され、試験片41の長さ方向の中心付近に、幅方向に延び且つ幅方向の両端にそれぞれ達する開封用溝42が配置されている。
図11(A)に示されるように、開封用溝42として、試験片41を幅方向に横切る1本の直線状の溝を使用した。すなわち、開封用溝42は、試験片41の幅に等しい、15mmの長さを有している。なお、実施の形態1および実施の形態3により近い条件で試験を実施するため、加熱処理により予め熱収縮させた積層フィルムにより試験片41を形成した。
【0033】
実施例2
開封用溝42として、
図11(B)に示されるように、試験片41の幅方向に沿って2つの溝部分に分割することにより溝部分の合計の長さを14mmとした溝を使用する他は、実施例1と同様にして引張試験を行った。
実施例3
開封用溝42として、
図11(C)に示されるように、試験片41の幅方向に沿って3つの溝部分に分割することにより溝部分の合計の長さを13mmとした溝を使用する他は、実施例1と同様にして引張試験を行った。
実施例4
開封用溝42として、
図11(D)に示されるように、試験片41の幅方向に沿って4つの溝部分に分割することにより溝部分の合計の長さを12mmとした溝を使用する他は、実施例1と同様にして引張試験を行った。
実施例5
開封用溝42として、
図11(E)に示されるように、試験片41の幅方向に沿って6つの溝部分に分割することにより溝部分の合計の長さを10mmとした溝を使用する他は、実施例1と同様にして引張試験を行った。
実施例6
開封用溝42として、
図11(F)に示されるように、試験片41の幅方向に沿って8つの溝部分に分割することにより溝部分の合計の長さを7.5mmとした溝を使用する他は、実施例1と同様にして引張試験を行った。
比較例1
開封用溝を一切有しない試験片41を使用する他は、実施例1と同様にして引張試験を行った。
【0034】
図12は、実施例1〜6および比較例1における引張試験の試験結果を示すグラフである。縦軸は試験片41の引張強さを示している。実施例1から比較例1にかけて
図12のグラフの右方へ向かうほど、すなわち、開封用溝42を構成する溝部分の長さの合計が小さくなるほど、試験片41の引張強さの値が高くなる傾向にあるという試験結果が得られた。特に、比較例1の開封用溝を一切有しない試験片41の引張強さの値は、実施例1〜6の開封用溝42を有する試験片41の引張強さの値に対して、顕著に高いという結果になった。
【0035】
さらに、実施例1〜6および比較例1における試験片41の開封用溝の態様を
図1に示した実施の形態1の包装体11あるいは
図8に示した実施の形態2の包装体21に適用して、JIS Z 0200に準拠する輸送試験を実施した。それぞれの包装体は略円柱形状を有しており、長さ方向の長さは500mm、長さ方向に直交する幅方向の長さは160mmである。実施例1〜6における開封用溝を適用した袋体の外表面には、袋体の中心軸方向の中心付近から略円柱形状の周方向に100mmにわたって開封用溝の配置部分が設定されている。
輸送試験の結果、実施例3〜6および比較例1における試験片41の開封用溝の態様を適用した袋体は、輸送に対して十分な強度を有していることがわかった。一方、実施例1および実施例2における試験片41の開封用溝の態様を適用した袋体は、実施例3〜6と比較して、長距離の輸送に対しては強度が不足する面もあるが、同一工場内での輸送など強度があまり必要でない用途で使用すると小さな力で開封できるので好ましい。
【0036】
また、これらの包装体に対して、
図5および
図6で示したような支柱19を利用して開封実験を実施したところ、実施例1〜5における試験片41の開封用溝の態様を適用した包装体は、容易に開封できるという結果が得られた。また、実施例6における試験片41の開封用溝の態様を適用した包装体は、開封するために大きな力を要することがわかった。
一方、開封用溝を一切有しない比較例1に対応する包装体は、支柱19を利用しても、手作業のみで開封することは困難であった。
【0037】
すなわち、
図12のグラフより、開封用溝が配置された部分の積層フィルム15が20〜40N/15mmの引張強さを有するものである場合に、特に、輸送に対して十分な強度を有しながらも刃物を使用することなく手作業のみで開封し易い包装体を形成し得ることが確認された。
実施の形態2のように、熱収縮しない積層フィルムから袋体を形成する場合においても、開封用溝が配置された部分の積層フィルムの引張強さが20〜40N/15mmであれば、輸送に対して十分な強度を有しながらも刃物を使用することなく手作業のみで開封し易い包装体を形成することができる。
【0038】
また、
図13に示されるような外表面に開封用溝を有する略円柱形状の包装体について、開封用溝を構成する複数の溝部分のそれぞれの長さ、包装体の中心軸C方向に直交する周方向Dに対して開封用溝が傾く角度θを変更した複数の包装体を製造した。
実施例7
まず、長さ方向の長さが500mm、長さ方向に直交する幅方向の長さが120mmである略円柱形状の袋体を作製したときに、周方向Dに対して63度の角度θで傾斜する方向に延び且つ周方向Dに100mmの長さの開封用溝になるように、包装フィルムの外表面に溝を形成し、袋体を製造した。このような袋体の内部に被充填物を充填し、さらにこの袋体を密封することで包装体を製造した。なお、複数の溝部分のそれぞれの長さを4mmとし、互いに隣り合うそれぞれの溝部分の間に1mmの未加工部分を設定した。
実施例8
複数の溝部分のそれぞれの長さを2mmとする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例9
角度θを61度とする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例10
角度θを61度、複数の溝部分のそれぞれの長さを2mmとする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例11
角度θを59度とする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例12
角度θを59度、複数の溝部分のそれぞれの長さを2mmとする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例13
角度θを55度とする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例14
角度θを55度、複数の溝部分のそれぞれの長さを2mmとする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例15
角度θを52度とする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例16
角度θを52度、複数の溝部分のそれぞれの長さを2mmとする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例17
角度θを47度とする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例18
角度θを47度、複数の溝部分のそれぞれの長さを2mmとする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例19
角度θを42度とする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例20
角度θを42度、複数の溝部分のそれぞれの長さを2mmとする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例21
角度θを36度とする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例22
角度θを36度、複数の溝部分のそれぞれの長さを2mmとする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例23
角度θを29度とする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
実施例24
角度θを29度、複数の溝部分のそれぞれの長さを2mmとする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
比較例2
角度θを0度とする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
比較例3
角度θを0度、複数の溝部分のそれぞれの長さを2mmとする以外は、実施例7と同様に包装体を製造した。
【0039】
実施例7〜24および比較例2および3の包装体に対して、JIS Z 0200に準拠する輸送試験を行った。また、
図5および
図6で示したような支柱19を利用して実施例7〜24および比較例2および3の包装体の開封し易さを官能評価する開封性評価、および、開封された後の被充填物の取り出し易さを官能評価する取出性評価を行ったところ、表1に示すような結果が得られた。
【0040】
【表1】
【0041】
表1において、輸送試験結果Aは包装体が破袋しなかった場合を示し、輸送試験結果Bは包装体が破袋した場合を示している。また、開封性の評価結果Aは容易に包装体を開封できた場合を示し、評価結果Bは容易ではないものの包装体を開封できた場合を示し、評価結果Cは開封が困難であった場合を示している。さらに、取出性の評価結果Aは容易に包装体から被充填物を取出せた場合を示し、評価結果Bは容易ではないものの包装体から被充填物を取り出せた場合を示し、評価結果Cは被充填物の取出が困難であった場合を示している。
【0042】
表1より、輸送試験の結果、実施例8、10、12〜24、比較例2および3において製造された包装体は、輸送に対して十分な強度を有していることが分かった。一方、実施例7、9および11において製造された包装体は、長距離の輸送に対しては強度が不足する面もあるが、同一工場内での輸送など強度があまり必要ない状況で使用することができると考えられる。
【0043】
また、
図5および6に示したような支柱19を利用してこれらの包装体の開封し易さを官能評価する開封性評価を行ったところ、実施例13、15〜24、比較例2および3の包装体は、支柱19を利用して容易に開封できるという結果が得られた。一方、実施例9、11および14の包装体は、比較的容易に開封することができ、実施例7、8、10および12の包装体は、大きな力を要するものの開封が可能であった。
【0044】
さらに、開封されたこれらの包装体の被充填物の取り出し易さを官能評価する取出性評価を行ったところ、実施例7〜22の包装体から容易に被充填物を取り出せるという結果が得られた。また、実施例23および24の包装体から被充填物を取り出すには、比較的時間がかかることが分かった。
一方、比較例2および3の開封用溝が延びる方向が周方向Dに対して傾斜していない包装体については、被充填物を取り出し難いためにさらに長い時間がかかり、短い時間で被充填物を取り出すのは困難であった。
【0045】
上述した輸送試験、開封性評価および取出性評価の結果より、実施例13〜22の包装体のように、角度θが36〜55度であることが好ましいと考えられる。角度θが36〜55度に設定されることで、それぞれの溝部分の長さが2mmあるいは4mmであっても、輸送に対して十分な強度を有しながらもナイフなどの刃物を用いずに手作業で比較的容易に開封することができ、さらに、開封後の被充填物を容易に取出すことができる包装体が実現される。