(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540270
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体のエピタキシャル成長装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20190628BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20190628BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/42
C23C16/455
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-126930(P2015-126930)
(22)【出願日】2015年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-11183(P2017-11183A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 正美
(72)【発明者】
【氏名】藤林 裕明
(72)【発明者】
【氏名】原 一都
(72)【発明者】
【氏名】土田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 功穂
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】深田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】上東 秀幸
【審査官】
宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−195346(JP,A)
【文献】
特開2014−053411(JP,A)
【文献】
特開2007−100172(JP,A)
【文献】
特開2013−145873(JP,A)
【文献】
特開2009−117399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/42
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有するチャンバー(1)と、
前記チャンバー内に配置され、炭化珪素半導体基板(9)の載置面を構成するサセプタ(2)と、
前記サセプタの周囲を囲むと共に前記炭化珪素半導体基板の上に炭化珪素半導体層(10)をエピタキシャル成長させる成長空間を構成する反応室(3)と、
前記反応室内に炭化珪素の原料ガスを導入する第1ガス導入管(4)と、
前記反応室内にAlを含むp型不純物のドーパントガスを導入する第2ガス導入管(5)と、
前記成長空間から流出したガスを前記チャンバーから排出させるガス排出管(6)と、
前記反応室を加熱する加熱装置(7)と、
前記第2ガス導入管から導入される前記ドーパントガスを冷却する冷却部(13)と、
前記第2ガス導入管に連結され、該第2ガス導入管に450℃以下の冷却ガスを導入する冷却ガス導入管(16)と、を備え、
前記冷却ガス導入管は、H2、Alを除去するエッチングガスもしくは不活性ガスのいずれかを冷却して前記冷却ガスとして前記第2ガス導入管に導入するものであることを特徴とする炭化珪素半導体におけるエピタキシャル成長装置。
【請求項2】
前記冷却部は、前記第2ガス導入管を450℃以下に冷却するものであることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体におけるエピタキシャル成長装置。
【請求項3】
前記冷却部は、前記第2ガス導入管の周囲に冷却水(13a)が流通させられる流水経路を構成するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の炭化珪素半導体におけるエピタキシャル成長装置。
【請求項4】
前記第2ガス導入管は、前記ドーパントガスに加えて、Alを除去するエッチングガスも前記反応室内に導入することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体におけるエピタキシャル成長装置。
【請求項5】
内部空間を有するチャンバー(1)と、
前記チャンバー内に配置され、炭化珪素半導体基板(9)の載置面を構成するサセプタ(2)と、
前記サセプタの周囲を囲むと共に前記炭化珪素半導体基板の上に炭化珪素半導体層(10)をエピタキシャル成長させる成長空間を構成する反応室(3)と、
前記反応室内に炭化珪素の原料ガスを導入する第1ガス導入管(4)と、
前記反応室内にAlを含むp型不純物のドーパントガスを導入する第2ガス導入管(5)と、
前記成長空間から流出したガスを前記チャンバーから排出させるガス排出管(6)と、
前記反応室を加熱する加熱装置(7)と、
前記第2ガス導入管から導入される前記ドーパントガスを冷却する冷却部(13)と、を備え、
前記第2ガス導入管は、前記ドーパントガスに加えて、Alを除去するエッチングガスも前記反応室内に導入することを特徴とする炭化珪素半導体におけるエピタキシャル成長装置。
【請求項6】
前記冷却部は、前記第2ガス導入管を450℃以下に冷却するものであることを特徴とする請求項5に記載の炭化珪素半導体におけるエピタキシャル成長装置。
【請求項7】
前記冷却部は、前記第2ガス導入管の周囲に冷却水(13a)が流通させられる流水経路を構成するものであることを特徴とする請求項5または6に記載の炭化珪素半導体におけるエピタキシャル成長装置。
【請求項8】
前記第2ガス導入管は、前記Alを含むp型不純物のドーパントガスを前記反応室内に導入する内側導入管(5a)と、前記内側導入管の外側に設けられキャリアガスとAlを除去するエッチングガスの少なくとも一方を前記反応室内に導入する外側導入管(5b)とを有する2重構造とされていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体におけるエピタキシャル成長装置。
【請求項9】
前記第2ガス導入管に連結され、該第2ガス導入管に450℃以下の冷却ガスを導入する冷却ガス導入管(16)、を備えていることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体におけるエピタキシャル成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Alをドーパントとする炭化珪素(以下、SiCという)半導体をエピタキシャル成長させることができるエピタキシャル成長装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、p型不純物やn型不純物を共にドープできるSiC半導体のエピタキシャル成長装置が開示されている。このエピタキシャル成長装置では、反応室と、反応室内にSi(シリコン)を含むSi原料ガスを供給する第1の供給路およびC(炭素)を含むC原料ガスを供給する第2の供給路と、n型不純物のドーパントガスを供給する第3の供給路と、p型不純物のドーパントガスを供給する第4の供給路とを有している。これら第1〜第4の供給路が反応室のガス導入管の手前でまとめられ、1つのガス導入管を通じて反応室内に各種ガスが供給される。これにより、反応室内に配置されたSiC半導体基板の上にn型不純物やp型不純物がドープされたSiC半導体がエピタキシャル成長させられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−187113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、p型不純物のドーパントガスとして、TMA(Trimethylaluminium:トリメチルアルミニウム)ガスを用いる場合、TMAに含まれるAlをドーピングする際に、加熱された反応室やSiC半導体基板の輻射熱によってガス導入管が加熱され、ガス導入管の内壁にTMAが熱分解されたAlが付着する。この付着したAlが再蒸発や剥がれによってエピタキシャル成長層中に取り込まれ、エピタキシャル成長層内におけるAlのドーピング濃度を安定させることが困難になるという問題がある。
【0005】
なお、Si原料やC原料を含む原料ガスと共にドーパントガスを導入する導入管を冷却することで導入ガスを冷却し、それらのガスをSiC基板表面に供給することでSiC半導体層を形成する装置もある。しかしながら、この装置では、すべてのガスを冷却しているので、冷却部自身と冷却された大量のガスにより反応室内や基板上での温度分布にバラツキが生じ、エピタキシャル成長膜の品質を基板全面で均一にすることが難しい。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、Alのドーピング濃度を安定化させられるSiC半導体のエピタキシャル成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、内部空間を有するチャンバー(1)と、チャンバー内に配置され、SiC半導体基板(9)の載置面を構成するサセプタ(2)と、サセプタの周囲を囲むと共にSiC半導体基板の上にSiC半導体層(10)をエピタキシャル成長させる成長空間を構成する反応室(3)と、反応室内にSiCの原料ガスを導入する第1ガス導入管(4)と、反応室内にAlを含むp型不純物のドーパントガスを導入する第2ガス導入管(5)と、成長空間から流出したガスをチャンバーから排出させるガス排出管(6)と、反応室を加熱する加熱装置(7)と、第2ガス導入管から導入されるドーパントガスを冷却する冷却部(13)と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
このように、第1ガス導入管と第2ガス導入管を分け、Alが含まれるp型不純物のドーパントガスが導入される第2ガス導入管側に冷却部を設けることで、第2ガス導入管を冷却できるようにする。このため、第2ガス導入管から導入されるドーパントガスの温度をAlが付着する温度の下限値である500℃よりも低い450℃以下に低下させられ、Alの付着を抑制することが可能となる。したがって、付着したAlの再蒸発や剥がれを抑制でき、エピタキシャル成長させられるSiC半導体層中に余分なAlが取り込まれることを抑制できる。これにより、SiC半導体層内におけるAlのドーピング濃度を安定化させることが可能となる。
【0009】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかるSiC半導体のエピタキシャル成長装置の断面構成を示す図である。
【
図2】本発明の第2実施形態にかかるSiC半導体のエピタキシャル成長装置の断面構成を示す図である。
【
図3】本発明の第3実施形態にかかるSiC半導体のエピタキシャル成長装置の断面構成を示す図である。
【
図4】本発明の第4実施形態にかかるSiC半導体のエピタキシャル成長装置の断面構成を示す図である。
【
図5】本発明の第5実施形態にかかるSiC半導体のエピタキシャル成長装置の断面構成を示す図である。
【
図6】反応室3の上壁面3aを下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態にかかるSiC半導体におけるエピタキシャル成長装置について、
図1を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、エピタキシャル成長装置は、チャンバー1、サセプタ2、反応室3、第1、第2ガス導入管4、5、ガス排出管6、第1加熱装置7、断熱材8などを備えた構成とされ、SiC半導体基板9の表面にSiC半導体層10をエピタキシャル成長させる。
【0014】
チャンバー1は、上面1aや底面1bおよび側面1cを有した中空形状とされ、内部空間にサセプタ2や反応室3などが配置されるものである。チャンバー1は、例えばSUS等によって構成されている。
【0015】
サセプタ2は、エピタキシャル成長が行われるSiC半導体基板9を搭載する載置面を構成する。本実施形態の場合、サセプタ2は、チャンバー1の底面の中央位置に配置されており、サセプタ2の上面を載置面としてSiC半導体基板9が搭載されている。サセプタ2は、図示しない回転機構によってエピタキシャル成長中にSiC半導体基板9の表面に対する法線方向を中心軸方向として回転させられるようになっている。例えば、サセプタ2は、黒鉛製もしくは表面をTaC(炭化タンタル)やNbC(炭化ニオブ)などの高融点金属炭化物にてコートした黒鉛もしくは全体が高融点金属炭化物によって構成されている。なお、ここでいう高融点金属炭化物とは、SiC半導体層10の成長に用いられる温度(例えば1600℃程度)でも溶融しない金属炭化物のことを意味している。
【0016】
反応室3は、チャンバー1の内部空間を仕切ってガス導入が行われる部屋を構成する壁部材であり、サセプタ2の周囲を囲むように配置され、エピタキシャル成長が行われる成長空間11を構成する。反応室3は、黒鉛製もしくは表面をTaCやNbCなどの高融点金属炭化物やSiCにてコートした黒鉛もしくは全体が高融点金属炭化物によって構成されている。本実施形態では、反応室3は、上壁面3aと側壁面3bおよびフランジ面3cを有した形状によって構成されている。
【0017】
上壁面3aは、サセプタ2およびSiC半導体基板9の上面に対して対向するように配置されている。上壁面3aには複数個のガス導入孔が設けられており、SiC半導体基板9の上面に対する法線方向から各種ガスを供給できるようにしてある。
【0018】
側壁面3bは、例えば円筒形状のような枠体形状をなしており、サセプタ2の周囲を囲むように配置され、上方端側に上壁面3aが配置されている。側壁面3bと上壁面3aとは一体化されているが、別体とされていても良い。側壁面3bの寸法、例えば円筒形状で構成されている場合の内径寸法は、サセプタ2の寸法よりも大きくされており、側壁面3bとサセプタ2との間に隙間が設けられている。
【0019】
フランジ面3cは、側壁面3bの下方端側の外周面から径方向外方に向かって延設されている。このフランジ面3cがチャンバー1の内周壁に固定されることで、反応室3がチャンバー1内の所望位置に設置されている。
【0020】
このように構成された反応室3により、チャンバー1の内部空間が2部屋に区画される。そして、反応室3の室内が含まれる部屋、つまりSiC半導体基板9が配置される部屋がガス導入が行われてSiC半導体層10をエピタキシャル成長させる成長空間11となり、その周囲が不活性ガスが導入される空間12となる。側壁面3bとサセプタ2との間に設けられた隙間があることから、成長空間11は後述するガス排出管6に繋がっている。
【0021】
第1ガス導入管4は、チャンバー1の上面に形成された複数の開口部のうちの1つを通じて反応室3の上壁面3aに形成されたガス導入孔の1つに繋げられた管状部材であり、例えばSUSや黒鉛等によって構成されている。第1ガス導入管4は、Si原料ガス(例えばSiH
4などのシラン系ガス)、C原料ガス(C
3H
8などのプロパン系ガス)を導入する。ここでは、第1ガス導入管4を通じて、Si原料ガスやC原料ガスと共にキャリアガス(例えばH
2(水素)など)を導入している。
【0022】
第2ガス導入管5も、チャンバー1の上面に形成された複数の開口部のうちの1つを通じて反応室3の上壁面3aに形成されたガス導入孔の1つに繋げられた管状部材であり、例えばSUS等によって構成されている。第2ガス導入管5は、p型不純物を含むドーパントガス(例えばTMAなど)を導入する。ここでは、第2ガス導入管5を通じて、p型不純物のドーパントガスに加えて、キャリアガス(例えばH
2(水素)など)を導入している。
【0023】
ガス排出管6は、チャンバー1内から不要ガスを排出させるものである。本実施形態の場合、ガス排出管6は、チャンバー1の底面に設けられており、成長空間11から流出してきたSi原料ガスやC原料ガスの未反応ガス、キャリアガスなどが排出されるようになっている。
【0024】
加熱装置7は、直接加熱方式もしくは誘導加熱方式いずれの加熱方式による加熱を行うものであっても良いが、本実施形態の場合、加熱装置7として、高周波誘導(RF)加熱による加熱を行うものが適用されている。この加熱装置7によって側壁面3bが加熱され、成長空間11内に導入されるSi原料ガスやC原料ガスを加熱分解し、エピタキシャル成長が行われる雰囲気を形成している。
【0025】
断熱材8は、反応室3を覆うように配置され、成長空間11内の温度がエピタキシャル成長に適した温度を維持できるようにしている。
【0026】
さらに、エピタキシャル成長装置には、第2ガス導入管5を冷却する冷却部13を備えている。本実施形態の場合、冷却部13は、第2ガス導入管5の外周に冷却水13aが流通させられる流水経路を設けることによって構成されている。冷却部13は、第2ガス同入管5の外周を囲むように配置されている。冷却部13は、第2ガス導入管5と別体で構成されていてもよいが、本実施形態の場合はガス導入管5を二重管状構造とし、その内部に冷却水13aを配置することで冷却部13を第2ガス導入管5と一体構造としている。
【0027】
このようにして、本実施形態にかかるSiC半導体におけるエピタキシャル成長装置が構成されている。なお、ここでは図示していないが、チャンバー1内のうち成長空間11と異なる空間12内にAr(アルゴン)などの不活性ガスを導入している。そして、例えばフランジ面3cに開口部を形成し、不活性ガスもガス排出管6を通じて排出させられるように構成している。
【0028】
このように構成されたエピタキシャル成長装置では、SiCエピタキシャル成長する際、加熱装置7の加熱によって反応室3を加熱しSiC基板を例えば1600℃前後に加熱すると、反応室3やSiC半導体基板9などの輻射熱によって第1ガス導入管や第2ガス導入管5が、例えば500〜1200℃の範囲というAlが付着する温度に加熱され得る。
【0029】
このため、第1ガス導入管4と第2ガス導入管5を分け、Alが含まれるp型不純物のドーパントガスが導入される第2ガス導入管5側に冷却部13を設けることで、第2ガス導入管5を冷却できるようにしている。これにより、第2ガス導入管5から導入されるドーパントガスの温度をAlが付着する温度の下限値である500℃よりも低い450℃以下に低下させられ、Alの付着を抑制することが可能となる。
【0030】
したがって、付着したAlの再蒸発や剥がれを抑制でき、エピタキシャル成長させられるSiC半導体層10中に余分なAlが取り込まれることを抑制できる。これにより、SiC半導体層10内におけるAlのドーピング濃度を安定化させることが可能となる。
【0031】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して第2ガス導入管5の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0032】
図2に示すように、本実施形態では、第2ガス導入管5を内側導入管5aとその外側に設けた外側導入管5bとを備えた2重構造としている。そして、内側導入管5aからAlを含むp型不純物のドーパントガス(例えばTMA)やキャリアガス(例えばH
2)を導入し、外側導入管5bからキャリアガス(例えばH
2)を導入する。
【0033】
そして、冷却部13をチャンバー1の外側に配置し、チャンバー1の外側において、第2ガス導入管5を冷却している。
【0034】
このように、Alを含むドーパントガスの周囲にキャリアガスを導入し、そのキャリアガスを冷却することで、第2ガス導入管5から導入されるドーパントガスを冷却し、第2ガス導入管5にAlが付着することを抑制することもできる。なお、本実施形態の場合、内側導入管5aの先端が外側導入管5bの先端よりも内側、つまり突き出ないようにしている。このため、内側導入管5aの先端に的確にキャリアガスが供給さるようにでき、より確実に第1ガス導入管5へのAlの付着を抑制することができる。
【0035】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して第2ガス導入管5の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0036】
図3に示すように、本実施形態では、チャンバー1の上方位置を仕切板14、15で仕切ることによってガス導入経路を構成している。両仕切板14、15の間には、Si原料ガスおよびC原料ガスを導入する原料ガス経路が構成され、第1ガス導入管4がこの原料ガス経路に接続されて、原料ガス経路を通じて導入された各原料ガスが第1ガス導入管4に供給されるようになっている。また、仕切板14とチャンバー1の上面との間には、ドーパントガスが導入されるドーパントガス経路が構成され、第2ガス導入管5がこのドーパントガス経路に接続されて、ドーパントガス経路を通じて導入されたドーパントガスが第2ガス導入管5に供給されるようになっている。
【0037】
そして、チャンバー1の上面の上方に、冷却部13が備えられている。冷却部13は、空冷式もしくは水冷式のいずれであっても良く、空冷式であればファンなどが配置されることでチャンバー1の上面を冷却し、水冷式であればチャンバー1の上面に冷却管などを配置することでチャンバー1の上面を冷却する。
【0038】
このような構成によれば、チャンバー1の上面を冷却することで、ドーパントガス経路を冷却することが可能となる。このため、第1実施形態と同様、第2ガス導入管5から導入されるドーパントガスを冷却でき、第2ガス導入管5にAlが付着することを抑制することができる。
【0039】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態も、第1実施形態に対してAlの付着抑制の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0040】
図4に示すように、本実施形態では、第2ガス導入管5に冷却ガス導入管16を連結し、冷却ガス導入管16の周囲に配置した冷却部13による冷却に基づいて冷却ガス導入管16から冷却ガスが導入されるようにしている。冷却部13は、空冷式もしくは水冷式のいずれであってもよい。冷却ガスは、第2ガス導入管5の内径をAlの付着温度となる500℃以下となる450℃以下の温度に冷却できるガスである。冷却ガスとしては、例えばH
2、He(ヘリウム)などの不活性ガス、HClなどのエッチングガスを用いることができる。TMAガスのようなAlを含むp型不純物ガスについては、ドーパントガスとして用いるのに適した温度があることから、例えば約15℃以下の低温にするのが好ましくない場合がある。したがって、ドーパントガスではないガスを冷却ガスとして用いている。
【0041】
このように、冷却ガス導入管16を第2ガス導入管5に連結し、第2ガス導入管5に冷却ガスが導入されるようにしている。これにより、第2ガス導入管5を冷却でき、第2ガス導入管5から導入されるドーパントガスを冷却できるため、Alの付着する温度以下である450℃以下にできる。したがって、第2ガス導入管5にAlが付着することを抑制することができる。
【0042】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態は、第3実施形態に対して第1ガス導入管4の構成などを変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0043】
図5に示すように、本実施形態でも、チャンバー1の上方位置を仕切板14、15で仕切ることによってガス導入経路を構成している。そして、両仕切板15を反応室3の上面としても用い、
図5および
図6に示すように、仕切板15のうちの成長空間11と対応する位置に複数の穴を形成し、これを第1ガス導入管4として機能させることで、シャワー状に原料ガスが供給されるようにしている。
【0044】
また、
図6に示すように、第2ガス導入管5は、チャンバー1の中心から径方向に沿って延設されている。このように形成されることで、エピタキシャル成長中にサセプタ2を回転させたときに、SiC半導体基板1の表面に均一にガスが吹き付けられるようになっている。そして、第2ガス導入管5の周囲を囲むように冷却部13が設けられている。
【0045】
このような構成によれば、シャワー状に原料ガスを流す際に、第2ガス導入管5より導入されるドーパントガスを冷却することができ、第1実施形態と同様、第2ガス導入管5にAlが付着することを抑制することができる。
【0046】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0047】
例えば、第1〜第4実施形態で説明したチャンバー1、サセプタ2および反応室3などの形状、さらにはガス種などは一例を示したに過ぎず、他の形状やガス種を用いても構わない。また、上記実施形態では、Alを含むp型不純物のドーパントガスを導入するエピタキシャル成長装置を例に挙げたが、これに加えて熱分解温度が低いSiH
4やB
2H
6などのガスやN
2などのn型不純物のドーパントガスも導入できる構造であっても良い。
【0048】
また、上記各実施形態では、チャンバー1内に反応室3を設けた構造とし、これらを別々のものとして構成した場合について説明したが、チャンバー1自体が反応室3を構成する構造であっても良い。すなわち、反応室3がサセプタ2の周囲を囲むようにして成長空間11を構成されるものであれば、反応室3がチャンバー1自体によって構成されていても、チャンバー1と別体のものであっても、いずれであっても構わない。
【0049】
さらに、上記各実施形態において、Alを含むp型不純物のドーパントガスと共にキャリアガスを導入しているが、それに加えてもしくはそれに代えて、第4実施形態で説明したようなHClなどのエッチングガスを導入することもできる。勿論、第4実施形態に関しても、キャリアガスの代わりにエッチングガスのみを導入することもできる。このようなエッチングガスを導入すれば、より第2ガス導入管5にAlが付着することを抑制することができる。
【0050】
また、本発明では、ガス導入管をSiC半導体基板の上方の位置に設置した装置構成であったが、ガス導入管を基板に対して横方向に設置し、Alを含むp型不純物のドーパントガスと共にキャリアガスを基板に対して横方向に流す横型装置構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0051】
1 チャンバー
2 サセプタ
3 反応室
4、5 第1、第2ガス導入管
5a、5b 内側、外側導入管
7 加熱装置
9 SiC半導体基板
10 SiC半導体層
11 成長空間
13 冷却部