特許第6540273号(P6540273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540273
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】組電池の外部接続端子構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/20 20060101AFI20190628BHJP
   H01M 2/30 20060101ALI20190628BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   H01M2/20 A
   H01M2/30 D
   H01M2/10 M
   H01M2/10 E
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-129569(P2015-129569)
(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-16765(P2017-16765A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100186819
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 俊尚
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】酒井 啓行
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 賢二
【審査官】 宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−181765(JP,A)
【文献】 特開2009−187972(JP,A)
【文献】 特開2009−054301(JP,A)
【文献】 実開昭57−073869(JP,U)
【文献】 特開昭62−287566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/20− 2/34
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合って配置される、第1の外部端子を備えた第1の二次電池と第2の外部端子を備えた第2の二次電池を含む組電池における、前記第1の外部端子と前記第2の外部端子とを電気的に接続する組電池の外部端子接続構造であって、
前記第1の外部端子と前記第2の外部端子は、前記第1の二次電池の電槽と前記第2の二次電池の電槽とが隣接して配置された状態で対向する第1の端子部と第2の端子部とをそれぞれ備えており、
前記第1の外部端子が、前記第1の端子部に、第1の貫通孔の内周面に雌ねじが形成された雌ねじ部材がインサートとしてインサート成形された構造を有しており、
前記第2の外部端子が、前記第2の端子部に、前記第1の端子部と前記第2の端子部とが当接した状態で、前記雌ねじ部材の前記第1の貫通孔と整合して連通する第2の貫通孔が形成された構造を備えており、
雄ねじを備えたボルト部材が、前記第2の端子部の前記第2の貫通孔に挿入されて、前記ボルト部材の頭部が前記第2の端子部を前記第1の端子部に押しつける状態になるまで、前記雌ねじ部材の前記雌ねじに前記ボルト部材の前記雄ねじが螺合されていることを特徴とする組電池の外部端子接続構造。
【請求項2】
前記第1の外部端子と前記第2の外部端子は、前記第1の二次電池の電槽と前記第2の二次電池の電槽とが隣接して配置された状態で前記第1の端子部と前記第2の端子部とが接触するように構成されている請求項1に記載の組電池の外部端子接続構造。
【請求項3】
前記雌ねじ部材は、前記第1の外部端子及び前記第2の外部端子を形成する金属よりも導電性及び硬度が高い金属により成形されている請求項1または2に記載の組電池の外部端子接続構造。
【請求項4】
前記第1の外部端子及び前記第2の外部端子を形成する金属が、鉛または鉛合金である請求項3に記載の組電池の外部端子接続構造。
【請求項5】
前記雌ねじ部材が銅または銅合金により形成されている請求項3に記載の組電池の外部端子接続構造。
【請求項6】
前記雌ねじ部材は、フランジ部を備えており、
前記雌ねじ部材が前記第1の外部端子にインサート成形された状態で、前記フランジ部は前記第1の端子部の前記第2の端子部と接触しない側面側に位置している請求項1に記載の組電池の外部端子接続構造。
【請求項7】
前記フランジ部の輪郭形状が多角形である請求項6に記載の組電池の外部端子接続構造。
【請求項8】
前記第1の二次電池及び前記第2の二次電池が、3個以上の鉛蓄電池が組み合わされてなる組電池に含まれて隣り合う二つの前記鉛蓄電池である請求項7に記載の組電池の外部端子接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の二次電池を含む組電池の外部接続端子構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、その信頼性の高さから、様々な分野にて使用されるものであり、必要とされる容量により大きさも様々なものが製造されている。また、二次電池は、その用途毎に最適な大きさの電池を1つの電池にて達成しようとすると、コストが高くなりすぎる。そのため、単電池を複数接続することにより、所望の容量の電池になる組電池として用いられることが多い。
【0003】
特許文献1(特開2012−238492号公報)の図3には、従来の組電池が開示されている。具体的には、図10に示すように、組電池101の一部が二つの単電池(第1の二次電池103及び第2の二次電池105)で構成され、第1の二次電池103の上面には第1の外部端子115が、第2の二次電池105の上面には第2の外部端子125が、それぞれ露出して設けられている。第1及び第2の外部端子115、125は、図11に示すように、一部が電槽107,111内に配置され、ブッシング123,133で固定された極柱117,127に電気的に接続されている。この組電池101では、第1の二次電池103及び第2の二次電池105が並んで配置された状態で、第1の外部端子115と第2の外部端子125とが、接続板120を介して固定されている。
【0004】
なお、第1の二次電池103には、図示しない別の二次電池の第1の外部端子と接続する第2の外部端子125′が設けられている。第1の二次電池103が組電池101の一端に配置される場合は、第2の外部端子125′は、組電池101の正極端子または負極端子を構成する。一方、第2の二次電池105には、図示しないさらに別の二次電池の第2の外部端子と接続する第1の外部端子115′が設けられている。第2の二次電池105が組電池101の他端に配置される場合は、第1の外部端子115′は、組電池101の負極端子または正極端子を構成する。
【0005】
図10図11に示すように、第1の外部端子115には、ボルト147が貫通する貫通孔137が、第2の外部端子125には、ボルト147が貫通する貫通孔143が、それぞれ設けられている。また、接続板120の両端部には、ボルト147が貫通する図示しない貫通孔が設けられている。外部端子115の貫通孔137と接続板120の一方の貫通孔とにボルト147を通し、ボルト147のねじ部149にナット141を螺合すると、外部端子115と接続板120の一方の端部とが接続される。一方、外部端子125の貫通孔143と接続板105の一方の貫通孔とにボルト147を通し、ボルト147のねじ部149にナット141を螺合すると、外部端子125と接続板120の他方の端部とが接続される。接続板125、ボルト147及びナット141は、導電性を有する材質により形成されている。隣り合う二次電池103,105は、外部端子115,125同士を接続する接続板120、ボルト147及びナット141を介して、電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−238492号公報(図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の組電池では、二次電池同士を電気的に接続する場合に、接続板を用いたボルトとナットの締結作業は、部品点数が多い上に、接続箇所が多くなると、作業効率が悪くなるという問題が生じる。特に、小型部品であるナットの取り扱いは、実作業現場において、その位置決め、ナットを螺合させる間、ナットまたはボルトを作業者が指で保持しなければならない等、作業者の負担になることが多い。なお外部端子に雌ねじを直接形成することも考えられるが、雌ねじを直接形成すると、雌ねじにバリが残ったり、ねじ山が変形したり歪んだりすることもあり、ボルトの雄ねじを雌ねじに螺合させることができない事態が発生することもある。
【0008】
本発明の目的は、少ない部品点数で、作業者が容易に且つ確実に接続作業を行うことができる、組電池の外部接続端子構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明が改良の対象とする組電池の外部端子接続構造は、第1の外部端子を備えた第1の二次電池と第2の外部端子を備えた第2の二次電池とを含み、これら第1の二次電池と第2の二次電池が隣り合って配置される組電池において、第1の二次電池に設けられた第1の外部端子と第2の二次電池に設けられた第2の外部端子とを電気的に接続する組電池の外部端子接続構造である。
【0010】
第1の外部端子と第2の外部端子は、それぞれ第1の端子部と第2の端子部を備えている。第1の端子部と第2の端子部とは、第1の二次電池の電槽と第2の二次電池の電槽とが隣接して配置された状態で対向するように構成されている。第1の端子部と第2の端子部とが対向する態様としては、例えば、第1の端子部と第2の端子部の当接面が、第1の二次電池と第2の二次電池の当接面とほぼ同一平面上にある場合、第1の端子部と第2の端子部とが当接した状態で、第1の二次電池と第2の二次電池との間に隙間が生じる場合、第1の端子部と第2の端子部の当接面が、第1の二次電池と第2の二次電池の当接面と交差する場合等がある。
【0011】
第1の外部端子は、第1の貫通孔を有する雌ねじ部材が第1の端子部にインサート成形された構造を有している。この雌ねじ部材は、第1の貫通孔の内周面に雌ねじを備える。
【0012】
第2の外部端子は、第2の端子部に第2の貫通孔が形成された構造を備えている。この第2の端子部は、第1の端子部と第2の端子部とが当接した状態で、雌ねじ部材の第1の貫通孔と整合して連通するように構成されている。
【0013】
第2の端子部の第2の貫通孔には、雄ねじを備えたボルト部材が挿入されて、ボルト部材の頭部が第2の端子部を第1の端子部に押しつける状態になるまで、雌ねじ部材の雌ねじにボルト部材の雄ねじが螺合されている。
【0014】
このような外部端子接続構造を採用することにより、複数の二次電池を組み合わせて組電池を作製する場合に、複数の二次電池を並べたときに、隣り合う二つの二次電池の外部端子が対向する。この状態で両外部端子をボルト部材で締め付けるだけで、外部端子同士が電気的に直接接続され、二次電池同士が固定される。そのため、組電池の組立作業の容易化(組立コストの低減)を図ることができる。特に、雌ねじ部材がインサートとして第1の端子部にインサート成形されているので、接続作業の際に、雌ねじ部材を作業者が指で押さえておく必要はなく、また雌ねじを第1の端子部に直接形成する場合と比べて、雌ねじ部にバリが残ったり、ねじ山が変形したり歪んだりすることがない。そのため、雌ねじの変形によって、ボルト部材の雄ねじが雌ねじ部材の雌ねじと螺合できなくなる事態が発生することがないという利点が得られる。また、外部端子同士を直接接続することができるため、従来の接続板や接続ケーブルが不要となり、部品点数の減数化(部品コストの軽減)、製品の軽量化(運搬コストの軽減)を図ることができる。さらに、第1の外部端子(第1の端子部)にインサートされた雌ねじ部材の第1の貫通孔に、第2の外部端子(第2の端子部)の第2の貫通孔に挿入されたボルト部材が螺合されるため、第1の外部端子の第1の端子部と第2の外部端子の第2の端子部とが押しつけられた状態を維持することができる。そのため、組電池の製品安定性を高めることができる。
【0015】
第1の外部端子と第2の外部端子は、好ましくは、第1の二次電池の電槽と第2の二次電池の電槽とが隣接して配置された状態で第1の端子部と第2の端子部とが接触するように構成する。第1の外部端子と第2の外部端子をこのように構成することにより、複数の二次電池を並べただけで、隣り合う二つの二次電池の外部端子が当接するため、雌ねじ部材とボルト部材との螺合作業が容易になる。また雌ねじ部材とボルト部材とを螺合する際に外部端子が大きく変形したり破損するのを防ぐことができる。
【0016】
第1及び第2の外部端子は、導電性を有する市販の金属材料を用いて形成することができる。その上で、雌ねじ部材は、第1の外部端子及び第2の外部端子を形成する金属よりも導電性及び硬度が高い金属により成形するのが好ましい。雌ねじ部材にこのような導電性の高い金属を用いると、雌ねじ部分を導電体として機能させることができるため、外部端子間の導電性を高めることができる。また、ボルト部材を強く締め付けても、雌ねじ部材が変形することはない。また、隣り合う二次電池間で第1の外部端子と第2の外部端子と間に隙間が生じても、雌ねじ部材を介して外部端子間の電気的な接続を維持することができる。
【0017】
なお、第1の外部端子及び第2の外部端子を形成する金属よりも導電性が高い金属としては、銅または銅合金を用いることができる。
【0018】
第1の外部端子及び第2の外部端子を形成する金属には、鉛または鉛合金を用いるのが好ましい。鉛または鉛合金は塑性変形し易い性質があることから、両外部端子を押しつけた状態で雌ねじ部材にボルト部材を螺合すると、このような塑性変形により両外部端子(両端子部)の接触面積が大きくなって、外部端子間の導電性を高めることができる。
【0019】
なお、雌ねじ部材は、フランジ部を備えている。このフランジ部は、雌ねじ部材が第1の外部端子にインサート成形された状態で、第1の端子部の第2の端子部と接触しない側面側に位置している。雌ねじ部材をこのような形態で配置することにより、第1の二次電池の電槽と第2の二次電池の電槽とを隣接して配置するだけで、ボルト部材を第1の貫通孔に挿入しかつ第2の貫通孔にインサートされた雌ねじ部材に螺合させる作業を確実に実行することができる。
【0020】
フランジ部の形状は任意であるが、フランジ部の輪郭形状を多角形にすると、雌ねじ部材を第1の外部端子にインサート成形した後に、雌ねじ部材が空転することを阻止することができる。このような多角形のフランジ部として、一般に普及している六角柱形状または八角柱形状のフランジを採用することができる。このような雌ねじ部材は、導電性を有する金属材料で構成されているものであれば、特に限定されるものはない。このような金属材料としては、鉄、ステンレス等を用いることができる。特に、ボルト部材との螺合の錆びを防止し、長期間の使用を可能にする観点から、ステンレスを用いることが好ましい。
【0021】
上述の外部端子接続構造は、隣り合って配置される第1の二次電池及び第2の二次電池が、3個以上の鉛蓄電池が組み合わされてなる組電池に含まれる二つの鉛蓄電池を構成する場合にも適用することができる。この外部端子接続構造の用途を鉛蓄電池の組電池に限定した場合でも、組電池における組み立て作業の容易化、部品点数の減数化、製品の軽量化、製品安定化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1の貫通孔を有する雌ねじ部材がインサートとして第1の端子部にインサート成形された構造を有しているので、接続作業の際に雌ねじ部材を作業者が指で雌ねじ部材を保持しておく必要性がない。また、雌ねじを端子部に直接形成する場合のように、雌ねじにバリが残ったり、ねじ山が変形したり歪んだりすることがないので、ボルト部材をインサートとして第1の端子部に螺合する作業を確実に行える。そして雄ねじを備えたボルト部材を第2の端子部の第2の貫通孔に挿入したときに、該ボルト部材の頭部が第2の端子部を第1の端子部に押しつける状態になるまで、雌ねじ部材の雌ねじにボルト部材の雄ねじが螺合されるため、複数の二次電池を並べた状態で隣り合う二次電池の外部端子同士をボルト部材で締め付けるだけで、両外部端子が電気的に直接接合され、二次電池同士が固定される。その結果、組電池における組み立て作業の容易化、製品の軽量化、製品安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る組電池の外部端子接続構造の一例を示す斜視図である。
図2】(A)は図1に示す外部端子接続構造の一部(第1の外部端子)を拡大した平面図であり、(B)は(A)のIIB−IIB線断面図である。
図3】(A)は図1に示す外部端子接続構造の一部(第1の端子部)を拡大した右側面図であり、(B)は(A)のIIIB−IIIB線断面図であり、(C)は図1に示す外部端子接続構造の一部(第1の端子部)を拡大した左側面図である。
図4】(A)及び(B)は、図1に示す外部端子接続構造の一部(第2の端子部)を拡大した右側面図及び左側面図であり、(C)は(A)のIVC−IVC線断面図である。
図5図1に示す外部端子接続構造の一部(ボルト部材)を拡大した図である。
図6】第1の外部端子と第2の外部端子との接続態様の一例を示す拡大断面図である。
図7】第1の外部端子と第2の外部端子との接続態様の他の一例を示す拡大断面図である。
図8】第1の外部端子と第2の外部端子との接続態様のさらに他の一例を示す拡大断面図である。
図9】3つの二次電池(単電池)を並べて構成した組電池を示す斜視図である。
図10】従来の組電池で用いられている外部端子接続構造を示す斜視図である。
図11図10に示す従来の外部端子接続構造の一部(外部端子と極柱)拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の外部端子接続構造を備える組電池の一例を示す図である。図1の組電池1は、第1の二次電池3と第2の二次電池5を含んで構成されている。図1の組電池1では、第1の二次電池3と第2の二次電池5が隣り合って配置されている。第1の二次電池3及び第2の二次電池5は、いずれも鉛蓄電池の単電池で構成されている。第1の二次電池3は、電槽7内に図示しない極板群が収納された状態で、この電槽7の開口部7aが蓋部9で密封されて構成されている。第2の二次電池5は、電槽11内に図示しない極板群が収納された状態で、この電槽11の開口部11aが蓋部13で密封されて構成されている。
【0025】
なお、極板群は、正極板と負極板とがセパレータ(リテーナ)を介して積層されて構成されている。極板群を構成する複数枚の正極板及び複数枚の負極板は、それぞれ極板耳と呼ばれる極板の集電部分を溶接して構成されたストラップにより電気的に接続されている。ストラップには、さらにセル間の接続導体や後述の極柱17,27が溶接されている。このように構成された集合体を単一のセルとして、電槽7,11内にそれぞれ挿入し、電槽7,11と蓋部9,13とを溶着する。そして、第1及び第2の外部端子15,25が蓋部9,13上に突出するように第1及び第2の外部端子15,25を極柱17,27に溶接し、さらに蓋部9,13に予め埋め込み加工したブッシング23,33を溶接して、電槽7,11を密閉する。電槽7,11に希硫酸電解液を注入して化成することにより、第1及び第2の二次電池3,5が得られる。
【0026】
第1の二次電池3の蓋部9上には、電槽7内に収納された極板群と電気的に接続する第1の外部端子15が設けられている。第1の外部端子15は、一対の外部端子15A,15Bで構成されている。一対の外部端子15A,15Bは、いずれも、図2(A)及び図2(B)に示すように、極板群の極柱17を挿入する挿入孔19aを有しかつ蓋部9に固定される第1のベース部19と後述する第2の外部端子25(第2の端子部31)と電気的に接続する第1の端子部21とを備える。極柱17は、電槽7内で鉛合金製のブッシング23に固定されている。
【0027】
一方、第2の二次電池5の蓋部13上には、電槽11内に収納された極板群と電気的に接続する第2の外部端子25が設けられている。第2の外部端子25は、一対の外部端子25A,25Bで構成されている。一対の外部端子25A,25Bも、一対の外部端子15A,15Bと同様に、極板群の極柱27を挿入する挿入孔29aを有しかつ蓋部13に固定される第2のベース部29と第1の外部端子15(第1の端子部21)と電気的に接続する第2の端子部31とを備える。極柱27は、電槽11内で鉛合金製のブッシング33に固定されている。
【0028】
なお、図1に示すように、第1の二次電池3の蓋部9上には、図示しない別の二次電池の第1の外部端子と接続する第2の外部端子25′(一対の外部端子25′A,25′B)がさらに設けられている。第2の外部端子25′は、第1の二次電池3が組電池1の一端に配置される場合は、組電池1の正極端子または負極端子を構成する。一方、第2の二次電池5の蓋部13上には、図示しないさらに別の二次電池の第2の外部端子と接続する第1の外部端子15′(一対の外部端子15′A,15′B)がさらに設けられている。第1の外部端子15′は、第2の二次電池5が組電池1の他端に配置される場合は、組電池1の負極端子または正極端子を構成する。
【0029】
本例では、第1及び第2の外部端子15,25は、第1及び第2の貫通孔37,43の中心軸と各挿入孔19a,29aの中心軸とが互いに直交するL字形状を有する。なお「直交」とは、厳密な90度の角度を意味するものではなく、第1及び第2のベース部19,29と極柱17,27との溶接を行うことができ、かつ第1の端子部21と第2の端子部31とが後述のボルト部材で接続できる略90度の角度を意味する。
【0030】
なお、第1及び第2の外部端子15,25は、導電性及び端子強度を付与する観点から、スズが添加された鉛合金で形成されている。
【0031】
第1の二次電池3と極柱17との接続および第2の二次電池5と極柱27との接続は、溶接により行われる。具体的には、図2に示すように、極柱17,27とブッシング23,33と第1及び第2の外部端子15,25との隙間に、第1及び第2の外部端子15,25の挿入孔19a,29aから、鉛合金を溶かした足し鉛を流し込んで、該隙間を埋めることにより溶接する。
【0032】
なお、極柱17は、一端が上述のとおり第1及び第2の外部端子15,25(第1及び第2のベース部19,29)に接続され、他端が図示しないストラップを介して極板群に接続されている。また、極柱17の材質としては、例えば、純鉛、スズ添加の鉛合金を用いることができる。本例では、極柱の強度及び導電性向上の観点から、スズが添加された鉛合金が用いられている。
【0033】
第1の外部端子15の第1の端子部21と第2の外部端子25の第2の端子部31とは、第1の二次電池3の電槽7と第2の二次電池5の電槽11とが隣接して配置された状態で対向するように構成されている。具体的には、図1のように、第1の二次電池3の電槽7と第2の二次電池5の電槽11とが隣接して配置された状態で、外部端子15Aと外部端子25Aとが対向し、外部端子15Bと外部端子25Bとが対向する。
【0034】
第1の外部端子15(一対の外部端子15A,15B)は、図3(A)及び図3(B)に示すように、雌ねじ部材35がインサートとして第1の端子部21にインサート成形された構造を有している。この雌ねじ部材35は、第1の貫通孔37を有し、さらに第1の貫通孔37の内周面には雌ねじ39が形成されている。
【0035】
雌ねじ部材35は、図3(B)及び図3(C)に示すように、フランジ部41を一体に備えている。フランジ部41は、雌ねじ部材35が第1の外部端子15(第1の端子部21)にインサート成形された状態で、第1の端子部21の第2の端子部31と接触しない側面側に位置している。
【0036】
本例では、第1の外部端子15にインサート成形された雌ねじ部材35が空転することを阻止するため、フランジ部41は六角柱形状の外周形状を有するナットで構成されている。なお図3では、フランジ部41は第1の端子部21内に埋設されていないように図示されているが、実際には一部が第1の端子部21内に埋設された状態になっている。また雌ねじ部材35は、一般に入手可能なステンレスにより形成されている。
【0037】
第2の外部端子25(一対の外部端子25A,25B)は、図4(A)〜図4(C)に示すように、第2の端子部31に第2の貫通孔43が形成された構造を備えている。この第2の端子部31は、第1の端子部21と第2の端子部31とが当接した状態で、雌ねじ部材35の第1の貫通孔37と整合して連通するように構成されている。なお本例では、第2の貫通孔43はボルト部材47が貫通する構造になっているが、第2の貫通孔43の内周面にボルト部材47の雄ねじ49と螺合する雌ねじを形成してもよい。
【0038】
第2の端子部31の第2の貫通孔43には、図1に示すように、ボルト部材47が挿入されている。ボルト部材47は、図5に示すように、雄ねじ49を備えている。ボルト部材47の雄ねじ49は、まず第2の貫通孔43を通過し、さらにボルト部材47の頭部47aが第2の端子部31を第1の端子部21に押しつける状態になるまで、ボルト部材47の雄ねじ49が雌ねじ部材35の雌ねじ39に螺合される。このようにして、本例の外部端子接続構造51が構成される。
【0039】
このような外部端子接続構造51を採用すると、第1の二次電池3と第2の二次電池5を並べたときに、第1の外部端子15(一対の外部端子15A,15B)と第2の外部端子25(一対の外部端子25A,25B)とが対向する。この状態で第1の外部端子15と第2の外部端子25とをボルト部材47で締め付けることにより、第1の外部端子15と第2の外部端子25とが電気的に直接接続され、第1の二次電池3と第2の二次電池5とが固定される。さらに、第1の外部端子15(第1の端子部21)にインサートとして埋設された雌ねじ部材35の第1の貫通孔37に、第2の外部端子25(第2の端子部31)の第2の貫通孔43に挿入されたボルト部材47が螺合されると、第1の外部端子15の第1の端子部21と第2の外部端子25の第2の端子部31とが押しつけられた状態が維持される。
【0040】
さらに本例では、第1の外部端子15と第2の外部端子25とは、第1の二次電池3の電槽7と第2の二次電池5の電槽11とが隣接して配置された状態で第1の端子部21と第2の端子部31とが接触するように構成されている。すなわち、第1の二次電池3と第2の二次電池5とを並べただけで、第1の外部端子15と第2の外部端子とが当接する。そのため、雌ねじ部材35とボルト部材47との螺合作業が容易であり、また雌ねじ部材35とボルト部材47とを螺合する際の外部端子の大きな変形や破損が生じ難い。
【0041】
本例では、第1の外部端子15及び第2の外部端子25は、いずれも鉛合金で成形されている。鉛合金は塑性変形し易いため、第1の外部端子15と第2の外部端子25とを押しつけた状態で雌ねじ部材35(雌ねじ39)にボルト部材47(雄ねじ49)を螺合すると、第1の端子部21と第2の端子部31との接触面積が大きくなって、第1の外部端子15と第2の外部端子25との間の導電性を高めることができる。
【0042】
また、雌ねじ部材35は、第1の外部端子15及び第2の外部端子25を形成する金属(鉛合金)よりも硬度が高く且つ導電性が高い金属により成形されている。このような金属として、本例では、市場で入手が容易な銅合金(JIS H 3250の黄銅芯)が用いられている。このような導電性の高い金属で成形した雌ねじ部材35は、導電体として機能して、第1の外部端子15と第2の外部端子25との間の導電性を高める。また雌ねじ部材35は、鉛合金と比べて硬度が高く、変形しない。そのため、ボルト部材47を雌ねじ部材35に強く締め付けても、雌ねじ部材37が変形することはない。また、第1の外部端子15と第2の外部端子25と間に隙間が生じても、雌ねじ部材35を介して第1の外部端子15と第2の外部端子25との間の電気的な接続が維持される。
【0043】
ここで、第1の外部端子15の製造方法について簡単に説明する。まず、L字形状の鋳型に、第1の外部電極15の雌ねじ部材35を構成する黄銅芯(JIS H 3250)を固定する。黄銅芯を固定した鋳型に、溶解させた鉛合金(6%のスズが混合)を流し込み、L字形状のインサート成形体(第1の外部端子15)を得る。
【0044】
得られた第1の外部端子15は、図2に示すように、挿入孔19aを形成するリング状のリング部20を備える第1のベース部19と黄銅芯(雌ねじ部材35)がインサートされた第1の端子部21とで構成されている。第1の外部端子15の寸法は、図2を参照して、第1のベース部19の長さ寸法:61.5mm、第1の端子部21の幅寸法:30mm、第1の端子部21の高さ寸法:42mm、第1のベース部19及び第1の端子部21の厚み寸法:10mmである。
【0045】
リング部20は、挿入孔19aの中心が、図2(A)を参照して、図の左端から第1のベース部19の長手方向に17.5mm離れた、第1のベース部19の幅方向の中心に位置するように配置されている。なお、リング部20は、インサート成形体の成形後の取り出しを容易にするために、リング部20の外周及び内周は傾斜している。具体的には、リング部20の上部20aの内径が17mmで、下部20bの内径が17.5mm、上部20aの外径が28mm、下部20bの外径が26mmになっている。
【0046】
また、黄銅芯(雌ねじ部材35)は、黄銅芯(雌ねじ部材35)の中心軸が、図2(B)を参照して、図の上端から下方に向かって15mm離れた、第1の外部端子15の幅方向の中心に位置するように、配置されている。
【0047】
さらに、黄銅芯は、図3を参照して、第1の貫通孔37に雌ねじ39が形成されてなる雌ねじ部材35と外部に露出したフランジ部41(ナット)に分けられる。雌ねじ部材35は、外径寸法が15mm、長さ寸法が10mmになっている。また、フランジ部41(ナット)は、外径寸法が20mmで、厚み寸法が5mmに定められている。
【0048】
なお、第2の外部端子25は、第1の外部端子15の黄銅芯(インサート)が存在せず、第2の貫通孔43の寸法が第1の貫通孔37と略同じ寸法になっている。
【0049】
図2図3図6に示すように、第1の端子部21のフランジ部41(ナット)が露出していない面を第2の端子部31に接触させて、第1の外部端子15と第2の外部端子25が接触するように第1の二次電池3及び第2の二次電池5を配置した後、第2の外部端子25の第2の貫通孔37にボルト部材47を通して仮止めを行う。その後、トルクレンチを用いて、必要なトルクを持たせて、完全にボルトを固定させると外部端子接続構造51が完成する。
【0050】
なお、第1の外部端子15の第1の端子部21と第2の外部端子25の第2の端子部31とが接続するケースとしては、図1及び図6に示すように、第1の端子部21と第2の端子部31の当接面が、電槽7と電槽11の当接面とほぼ同一平面上にある場合、図7に示すように、第1の端子部21と第2の端子部31とが当接した状態で、電槽7と電槽11との間に隙間gが生じる場合、図8に示すように、第1の接触部21と第2の接触部31との当接面が、電槽7と電槽11の当接面と直交する場合等がある。これらの接続構造により、従来必要であった接続板が不要となり、ボルトのみで二つの二次電池(単電池)を電気的に接続することが可能となる。特に、図7に示す接続構造を用いることにより、電槽の膨らみが発生することが予想される液式鉛蓄電池にも対応することができる。また、図8に示す接続構造を用いることによりボルト部材の締め付け作業がさらに容易になる。
【0051】
図9は、第1の二次電池3及び第2の二次電池5に加え第3の二次電池53からなる3個の鉛蓄電池が組み合わされてなる組電池に、二つの外部端子接続構造(外部端子接続構造51と外部端子接続構造55)を用いた例を示す。このように、組電池を構成する二次電池(単電池)の数が増えても、組電池を容易に組み立てることができるため、容量に応じた組電池の提供が容易である。
【0052】
本例の外部端子接続構造51を用いると、第1の二次電池3と第2の二次電池5を並べたときに、第1の外部端子15と第2の外部端子25が対向する。この状態で、第1及び第2の外部端子15,25をボルト部材47で締め付けると、第1の外部端子15と第2の外部端子25とが電気的に直接接続され、第1の二次電池3と第2の二次電池5とが固定される。その結果、組電池の組立作業が容易になり、組立コストが低減される。また、従来の接続板や接続ケーブルが不要となるため、組電池の部品点数を減らすことができ、組電池の軽量化が可能になる。さらに、第2の外部端子25(第2の端子部31)の第2の貫通孔43(雌ねじ45)に挿入(螺合)されたボルト部材47が、さらに第1の外部端子15(第1の端子部21)にインサートされた第1の貫通孔37(雌ねじ39)に螺合されると、第1の外部端子15の第1の端子部21と第2の外部端子25の第2の端子部31とが押しつけられた状態が維持され、組電池1の製品安定性が高まる。
【0053】
なお、6個の単電池からなる組電池を、本例の外部端子接続構造51を用いて組み立てた場合は、従来の接続板を用いて外部端子を接続して組み立てた場合に比べて、作業時間が約40%短縮し、組電池の総質量が約50%軽減した。
【符号の説明】
【0054】
1 組電池
3 第1の二次電池(単電池)
5 第2の二次電池(単電池)
7,9 電槽
11,13 蓋部
15 第1の外部端子
17,27 極柱
19 第1のベース部
19a 挿入孔
20 リング部
20a 上部
20b 下部
21 第1の端子部
23,33 ブッシング
25 第2の外部端子
29 第2のベース部
29a 挿入孔
31 第2の端子部
35 雌ねじ部材
37 第1の貫通孔
39 雌ねじ
41 フランジ部(ナット)
43 第2の貫通孔
45 雌ねじ
47 ボルト部材
47a 頭部
49 雄ねじ
51 外部端子接続構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11