特許第6540858号(P6540858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6540858アンダーフィル材及び該アンダーフィル材により封止する電子部品とその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540858
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】アンダーフィル材及び該アンダーフィル材により封止する電子部品とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20190628BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20190628BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20190628BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   C08L63/00 C
   C08K3/013
   H01L23/30 R
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-87594(P2018-87594)
(22)【出願日】2018年4月27日
(62)【分割の表示】特願2014-67564(P2014-67564)の分割
【原出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-123340(P2018-123340A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2018年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出口 央視
(72)【発明者】
【氏名】赤城 清一
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 貴一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直也
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−210901(JP,A)
【文献】 特開2003−221224(JP,A)
【文献】 特開2005−119929(JP,A)
【文献】 特開2012−140612(JP,A)
【文献】 特開2013−028659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−201/14
C08K 3/00− 13/08
C08G59/00− 59/72
H01L23/28− 23/30
H01L21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材を含み、前記(C)無機充填材の含有量が、アンダーフィル材全体の67質量%以上85質量%未満であり、前記(C)無機充填材の粒度分布は、0.1〜1μmと1〜2μmとにそれぞれピークを有し、かつ110℃における粘度が0.2Pa・s以下であり、溶剤を含まないか又は溶剤量がアンダーフィル材全体の7質量%以下である、アンダーフィル材。
【請求項2】
さらに、90〜120℃における粘度が0.2Pa・s以下である、請求項1に記載のアンダーフィル材。
【請求項3】
前記(C)無機充填材の含有量が70〜80質量%である、請求項1又は2に記載のアンダーフィル材。
【請求項4】
前記(A)エポキシ樹脂は、(D)25℃における粘度が60mPa・s以下のエポキシ樹脂を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアンダーフィル材。
【請求項5】
前記(D)25℃における粘度が60mPa・s以下のエポキシ樹脂として、アルキレン基又はエーテル基を含有する2官能性以上の脂肪族エポキシ樹脂を含む、請求項4に記載のアンダーフィル材。
【請求項6】
前記(B)硬化剤が液状の芳香族アミン系硬化剤である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアンダーフィル材。
【請求項7】
前記(C)成分の平均粒径が1.6μm未満である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアンダーフィル材。
【請求項8】
前記アンダーフィル材は、前記アンダーフィル材の硬化条件に従って、所定の温度で所定の時間で放置した後の重量減少率が、熱重量測定装置(TGA)で測定したときに5%以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアンダーフィル材。
【請求項9】
求項1〜のいずれか1項に記載のアンダーフィル材により封止する電子部品。
【請求項10】
求項1〜のいずれか一項に記載のアンダーフィル材をディスペンス方式、注型方式又は印刷方式にて電子部品を封止する、電子部品の製造方法。
【請求項11】
半導体素子と配線基板との間隙(ギャップ)が50μm以下である電子部品の製造方法であって、前記アンダーフィル材をディスペンス方式にて前記間隙に充填して前記電子部品を封止する、請求項10に記載の電子部品の製造方法。
【請求項12】
半導体素子と配線基板との間隙(ギャップ)が25μm以下である電子部品の製造方法であって、前記アンダーフィル材をディスペンス方式にて前記間隙に充填して前記電子部品を封止する、請求項11に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリップチップ型半導体装置用に特に好適なアンダーフィル材、及びこの組成物で封止されたフリップチップ型半導体装置等の電子部品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC等の電子部品装置の素子封止の分野では生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂組成物が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が作業性、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性にバランスがとれているためである。COB(Chip on Board)、COG(Chip on Glass)、TCP(Tape Carrier Package)等のベアチップ実装した半導体装置においては電子部品用液状樹脂組成物が封止材として広く使用されている。また、半導体素子をセラミック、ガラス/エポキシ樹脂、ガラス/イミド樹脂またはポリイミドフィルム等を基板とする配線基板上に直接バンプ接続してなる半導体装置(フリップチップ)では、バンプ接続した半導体素子と配線基板の間隙(ギャップ)を充填するアンダーフィル材として電子部品用液状樹脂組成物が使用されている。これらの電子部品用液状樹脂組成物は電子部品を温湿度や機械的な外力から保護するために重要な役割を果たしている。
【0003】
フリップチップ実装を行なう場合、素子と基板はそれぞれ熱膨張係数が異なるため、接合部に熱応力が発生し接続信頼性の確保が重要な課題である。また、ベアチップは回路形成面が十分に保護されていないため、水分やイオン性不純物が浸入し易く耐湿信頼性の確保も重要な課題である。また、チップ保護のために、チップ側面にフィレットを形成するが、アンダーフィル材とチップとの熱膨張差に起因した熱応力によって、樹脂がクラックを生じ結果として最悪の場合チップを破壊する恐れがある。アンダーフィル材の選定によっては温度サイクル試験などで繰り返し熱衝撃を受ける場合に接続部の保護が不十分なため、低サイクルで接合部が疲労破壊することがある。また、アンダーフィル材中にボイドが存在すると、バンプの保護が不十分なため、同様に低サイクルで接合部が疲労破壊することがある。
【0004】
耐湿接着力、低応力性に優れた封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれにより封止された素子を備えた信頼性(耐湿性、耐熱衝撃性)の高い電子部品装置を提供するため、(A)エポキシ樹脂、(B)アミン系硬化剤、(C)フィラー、(D)コアシェルゴム、(E)反応性希釈剤を含有してなる半導体樹脂封止材、及びこの半導体樹脂封止材により封止された素子を備えた電子部品装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
上記の技術課題の一つである熱応力の低減に対しては、アンダーフィル材に無機充填材を多量に配合することで、アンダーフィル材と半導体チップ、基板及びバンプと線膨張整数を近づけることが有効である。しかしながら、このような無機充填材を高充填したアンダーフィル材においては、上記のような応力特性において優れるものの、無機充填材の高充填化により粘度が高くなり、半導体チップと基板の隙間に侵入する(浸透)速度が著しく低下し、生産性が非常に悪くなる傾向にある。また、アンダーフィル材を充填する際の粘度が高くなることでボイドが発生するといった問題点が懸念される。
【0006】
一方、樹脂組成物の粘度を下げるには、希釈剤の使用が有効な方法である。このような目的で用いられる希釈剤は、非反応性のものと反応性のものとに分けることができる。非反応性の希釈剤としては、トルエン、メチルエチルケトンなどの有機溶剤が用いられるが、これらの有機溶剤は沸点が低い。そのため、非反応性の希釈剤を用いてアンダーフィル材の粘度を下げようとすると、ボイド発生の原因となるおそれがある。
【0007】
また反応性の希釈剤は分子内に反応基、例えば、エポキシ基を持つことにより、硬化剤と反応し硬化物の一部となるため、上記のようなボイド発生といった問題は起こらず、物性低下は比較的少ないものが多い。反応性希釈剤の代表的なものとしては、各種のモノエポキシ化合物や多価アルコールのグリシジルエーテル化合物があり、前記特許文献1にも例示されている。
【0008】
しかしながら、これらの反応性希釈剤を使用した場合、アンダーフィル材の硬化物のガラス転移温度(Tg)や靱性が低下する傾向にあり、単に前記の反応性希釈剤を使用するだけでは、この問題点を解決することが困難であり、その改善が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−162585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
最近の半導体チップの高集積化、多機能化に伴いチップサイズが大きくなってきている一方、多ピン化によってバンプの小型化、狭ピッチ化、狭ギャップ化が進んでいる。狭ギャップ、例えば、50μm以下のギャップをアンダーフィルする場合には、ボイドが発生しやすくなっている。また、搭載機器の小型化に伴いチップ厚の薄型化が行われており、チップ厚の薄型化によって半導体装置の高い信頼性(耐湿性、耐温度サイクル性)を確保することがますます難しくなってきている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、狭ギャップ(例えば、50μm以下のギャップ)での流動性が良好であり、さらに、浸透速度が速く、また、成形時のボイドの発生を抑制できるアンダーフィル材、及びこれにより封止された信頼性(耐湿性、耐温度サイクル性)の高いフリップチップ型半導体装置を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、電子部品に用いられるアンダーフィル材であって、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材を含み、前記(C)無機充填材の平均粒径及び含有量が、それぞれ5μm未満及びアンダーフィル材全体の67質量%以上85質量%未満であり、かつ110℃における粘度が0.2Pa・s以下である、アンダーフィル材に関する。無機充填材をアンダーフィル材全体の67質量%以上85質量%未満の配合量とすることで、信頼性(耐湿性、耐温度サイクル性)の高い電子部品を得ることができる。無機充填材を上記範囲とすることにより、アンダーフィル材の線膨張係数を半導体チップ等の周辺部材のそれと同程度に下げることができ、その結果、応力を緩和させることができると考えられる。さらに、110℃における粘度を0.2Pa・s以下とすることで、半導体素子と配線基板との間隙が50μm以下と狭くなっても浸透速度を速くすることができるため、浸透時間を短くすることができ、かつ、ボイドの発生を抑制することができる。
また、本発明は、さらに、90〜120℃における粘度が0.2Pa・s以下である前記アンダーフィル材に関する。90〜120℃における粘度が0.2Pa・s以下とすることにより、浸透時間をより短くし、かつ、ボイドの発生を十分に抑制することができるだけでなく、充填作業の温度範囲についてプロセスウィンドウ(窓)を広くすることができる。 また、本発明は、(C)無機充填材の含有量が70〜80質量%とすることで、アンダーフィル材の線膨張係数の低減による応力緩和、浸透時間の短縮化及びボイド発生の低減を同時に達成することが容易になる。
また、本発明は、アンダーフィル材の低粘度化及びアンダーフィル材を用いて封止する半導体装置の高信頼性化に関して、25℃における粘度が60mPa・s以下の反応性エポキシ樹脂を含み、さらに、エポキシ樹脂の硬化剤として液状の芳香族アミン系硬化剤を用いても良い。
また、本発明は、前記(C)成分の粒度分布が0.1〜1μmと1〜2μmの間にそれぞれピークがある無機充填材の何れか、又は両者を同時に含む前記アンダーフィル材に関する。この粒度分布を有する無機充填材を用いることで、無機充填材の量に起因する粘度の増加を十分に抑制することができ、半導体素子と配線基板とのギャップが25μm以下と非常に狭い場合でもボイドの発生が抑制された低粘度のアンダーフィル材とすることができる。
また、本発明は、前記(C)成分の平均粒径が1.6μm未満である前記アンダーフィル材に関する。これにより、狭ギャップへの充填性に優れ、ボイドの発生を抑制したアンダーフィル材とすることができる。
また、本発明は、前記アンダーフィル材を熱重量測定装置(TGA)にて測定する際に、前記アンダーフィル材の硬化条件に従って、所定の温度で所定の時間で放置した後の重量減少率が5%以下である前記アンダーフィル材に関する。これにより、ボイドの発生をより十分に抑制することができる。
また、本発明は、前記アンダーフィル材により封止する電子部品に関する。
また、本発明は、前記アンダーフィル材をディスペンス方式、注型方式又は印刷方式にて電子部品を封止する、電子部品の製造方法、特に、狭ギャップを有するフリップチップ型半導体装置において、ディスペンス方式で封止する電子部品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、狭ギャップ(例えば、50μm以下のギャップ)での流動性が良好であり、さらに、浸透速度が速く、また、成形時のボイドの発生を抑制したアンダーフィル材、及びこれにより封止された信頼性(耐湿性、耐温度サイクル性)の高いフリップチップ型半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、電子部品に用いられるアンダーフィル材であって、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材を含み、前記(C)無機充填材の平均粒径及び含有量が、それぞれ5μm未満及びアンダーフィル材全体の67質量%以上85質量%未満であり、かつ110℃における粘度が0.2Pa・s以下である、アンダーフィル材に関する。上記構成を採ることにより、信頼性(耐湿性、耐温度サイクル性)に優れ、浸透時間が短く、かつボイドの発生がないアンダーフィル材および半導体素子と配線基板との間隙(ギャップ)が50μm以下である高信頼性のフリップチップ型半導体装置を提供できる。その理由として、本願発明者らは以下のように考える。
【0015】
本発明のアンダーフィル材は、多量のシリカを含有することで熱膨張係数を小さくでき、半導体チップ、配線基板及び両者を接合するためのバンプに線膨張係数を近づけることによって応力緩和を図ることができるため、信頼性(耐湿性、耐温度サイクル性)の高い電子部品を得ることができる。半導体チップ、配線基板及びバンプの線膨張係数は、汎用的にはそれぞれ6ppm/℃、7〜20ppm/℃及び15〜24ppm/℃の範囲であり、一律には決まらないが、アンダーフィル材の線膨張係数を25ppm/℃未満にすることによって半導体装置の高信頼性化を図ることができる。この線膨張係数を実現するには、無機充填材をアンダーフィル材全体の67質量%以上を含むことが必要である。さらに、半導体装置の信頼性は、アンダーフィル材の線膨張係数を20ppm/℃以下にすることによって一層の向上が図られるため、無機充填材の含有量はアンダーフィル材全体の70質量%以上であることが好ましい。
【0016】
一方、アンダーフィル材として本発明は、110℃の粘度が0.2Pa・s以下である。これにより、狭ギャップへの浸透性及び流動性が向上し、浸透速度を速くすることができるため、浸透時間を短くすることができ、かつ、ボイドの発生を抑制することができる。ここで、浸透速度を速くして含浸時間の短縮化を行うという観点からは、110℃の粘度は0.15Pa・s以下であることが好ましい。さらに、アンダーフィル材の含浸時間を短縮化(例えば、110℃において100秒以下)して作業性を向上させることを重点的に考える場合は、110℃の粘度は0.10Pa・s以下であることがより好ましい。下限値として、ボイド発生の抑制の観点から、0.05Pa・s以上であることが好ましく、ボイド発生の抑制効果を高めるために0.08Pa・s以上であることがより好ましい。
【0017】
また、110℃の粘度だけでなく、90〜120℃における粘度にも着目することによってアンダーフィル材を浸透・充填させるときの作業温度範囲が広がり作業がしやすくなるため、90〜120℃の粘度が0.2Pa・s以下であることが好ましい。これにより、浸透時間をより短くすることができ、かつ、ボイドの発生を十分に抑制することができる。110℃の場合と同じように、浸透速度を速くして含浸時間の短縮化を行うという観点から、90〜120℃の粘度は0.15Pa・s以下であることがより好ましく、0.10Pa・s以下であることが特に好ましい。粘度の下限値も、ボイド発生の抑制の観点から、90〜120℃において0.05Pa・s以上であることが好ましい。
【0018】
本発明のアンダーフィル材は、110℃のときの粘度、又は、プロセスウィンドウを広げるために90〜120℃の範囲における粘度を、本発明における電子部品用液状樹脂組成物の浸透性及び流動性の目安として用いる。110℃、好ましくは90〜120℃の粘度に着目するのは、フリップチップ半導体装置の製造において、これらの温度範囲が液状樹脂組成物を微細間隙に注入するときに実用的に採用できる最高の温度範囲であり、半導体素子と基板との間隙が100μm以下、特に、より狭い間隙である50μm以下、さらに狭い25μm以下を有する電子部品において、ボイドを十分に抑制した上で迅速に、且つ確実に充填できるアンダーフィル材の浸透性及び流動性を最も反映する物性値であるためである。フリップ半導体装置は、半導体素子と配線基板との狭ギャップ化が益々進展しており、50μm以下の狭ギャップ化に対して使用できるアンダーフィル材が強く求められている。本発明は、この要求に十分に応えるために、アンダーフィル材の流動性を反映する物性値に着目すると共に、その物性値を規定したことに特徴を有する。
【0019】
上記で規定する粘度は、温度90〜120℃においてレオメータAR2000(TAインスツルメント)を用い、40mmパラレルプレート、せん断速度32.5(1/s)の条件のもとに各温度で測定する。
【0020】
また、本発明においては、レオメータによる粘度測定方法の他にも、E型回転粘度計を所定の温度で1分間、所定の回転数(rpm、1/60sec−1)で回転させた時の測定値に、所定の換算係数を乗じた値を粘度として定義して規定しても良い。測定値は、所定の温度±1℃に保たれた液体について、コーン角度3゜、コーン半径10mmのコーンロータを装着したE型回転粘度計を用いて得られる。前記回転数及び換算係数は、測定対象の液体の粘度によって異なる。具体的には、測定対象の液体の粘度を予め大まかに推定し、推定値に応じて回転数及び換算係数を決定する。測定対象の液体の粘度の推定値が0〜1.25Pa・sの場合は回転数を100rpm、換算係数を0.0125とし、粘度の推定値が1.25〜2.5Pa・sの場合は回転数を50rpm、換算係数を0.025とし、粘度の推定値が2.5〜6.25Pa・sの場合は回転数を20rpm、換算係数を0.0625とし、粘度の推定値が6.25〜12.5Pa・sの場合は回転数を10rpm、換算係数を0.125とする。ここで、E型回転粘度計によって測定される粘度は、前記のレオメータによる粘度とは絶対値が同じでないため、前記のレオメータによる粘度に換算することによって、本発明によるアンダーフィル材の粘度を規定することができる。
【0021】
本発明のアンダーフィル材は、110℃の粘度、好ましくは90〜120℃の粘度を上記の0.2Pa・s以下にすることによって浸透速度を速くするとともに、浸透時にボイド発生を抑えるために、(C)無機充填材として、平均粒径が5μm未満であり、その含有量を85質量%未満にする必要がある。平均粒径が5μm以上であると、ボイド発生が顕著になるだけでなく、無機充填材の凝集等によって50μm以下の狭ギャップへアンダーフィル材を完全に浸透させることが難しくなる。また、アンダーフィル材全体に対して、平均粒径が5μm未満の無機充填材を85質量%以上含むと、無機充填材の粒径の最適化を行っても、温度90〜120℃の粘度を0.2Pa・s以下にすることができず、アンダーフィル材の浸透性の大幅な低下を招く。特に、50μm以下の狭ギャップを有する半導体装置では、浸透時間に関係なく、半導体素子の末端までアンダーフィル材を充填して封止することができないという問題が生じる。さらに、平均粒径が5μm未満の無機充填材の含有量は、アンダーフィル材を浸透させたときに半導体素子の周辺端部に均一なフィレットを形成して半導体装置の一層の高信頼性化を図るという観点から、80質量%以下であることが好ましい。
【0022】
本発明のアンダーフィル材は、50μm以下のギャップを有する半導体装置へ適用できるが、さらに、ギャップが25μm以下と狭い半導体装置に対しては、(C)無機充填材の平均粒径は2μm以下が好ましく、1.6μm未満であることがより好ましい。しかしながら、アンダーフィル材の粘度は、無機充填材の平均粒径が数ミクロン以下と小さくなるに伴い、粘度が上昇してアンダーフィル材の流動性と浸透性が低下する傾向にある。
【0023】
そこで、無機充填材の平均粒径を1.6μm未満と小さくしつつ、アンダーフィル材の流動性と浸透性を向上できる組成について最適化の検討を行った。その結果、粒度分布において0.1〜1μmと1〜2μmの間にそれぞれピークがある無機充填材の少なくともどちらか一方を使用することが好ましく、さらに、両者を含むことによって、25μm以下の狭ギャップを有する半導体装置にも適用可能なアンダーフィル材が得られることが分かった。なお、平均粒径及び含有量の範囲については、本発明で好適に使用する無機充填材の種類とともに、後程、詳細に述べる。
【0024】
本発明においては、アンダーフィル材の低粘度化を図るための処方として、エポキシ樹脂組成物に含まれる組成として、低粘度のエポキシ樹脂、具体的には25℃における粘度が60mPa・s以下の液状のエポキシ樹脂を希釈剤として含むことが好ましい。ここで含まれる低粘度の液状エポキシ樹脂としては、アンダーフィル材のガラス転移温度の低下を抑えるとともに、加熱重量減少を小さくして耐熱性を保持させるため、アルキレン基又はエーテル基を含有する2官能性以上の脂肪族エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0025】
アンダーフィル材の低粘度化を図る別の手法としては、未反応性の溶剤を使用する場合もある。しかしながら、溶剤の含有量が多い場合には、50μm以下、特に25μm以下のギャップを有する半導体装置の封止を行うと、ボイドの発生が顕著になり、半導体装置の信頼性低下が大きな問題となった。この問題は、溶剤だけに限らず、樹脂組成物にすでに含まれている揮発性の低分子量不純物成分やアンダーフィル材の熱硬化時に生まれる揮発性の分解生成物が存在する場合でも、同様に起きる。この考えに基づいて検討を行った結果、アンダーフィル材の硬化条件に従って、所定の温度で所定の時間で放置した後の重量減少率は、アンダーフィル材によって充填した封止部分に発生するボイドの程度と相関性を有することが分かった。そこで、本発明においては、ボイド発生を予測できる物理量としてアンダーフィル材の加熱重量減少率を規定する。本発明のアンダーフィル材を25μm以下の狭ギャップを有する半導体装置に適用する場合、アンダーフィル材の重量減少率は、熱重量測定装置(TGA)で測定したときに5%以下であることが好ましい。
【0026】
本発明のアンダーフィル材に含まれる各成分について以下に説明する。
【0027】
[(A)エポキシ樹脂]
前記アンダーフィル材は(A)エポキシ樹脂を含む。前記(A)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましく、一般に使用されているエポキシ樹脂を特に制限なく用いることができる。
【0028】
前記エポキシ樹脂は、アンダーフィル材が全体として常温で液体であれば、エポキシ樹脂自体が常温で固形、液体のどちらか一方であってもよく、両者を併用してもよい。中でも、アンダーフィル材の低粘度化の観点からは常温で液体のエポキシ樹脂が好ましい。本明細書において「常温で液体」とは25℃で流動性を示す状態であることを意味する。さらに本明細書において「液体」とは流動性と粘性を示し、かつ粘性を示す尺度である粘度が25℃において0.0001Pa・s〜10Pa・sである物質を意味する。
【0029】
本発明で使用できるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、水添ビスフェノールA等のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を代表とするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、p―アミノフェノール、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のアミン化合物とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸により酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。それらの中では、粘度、使用実績及び材料価格の観点から、ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂であることが好ましく、中でも、流動性の観点からは液状のビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、耐熱性、接着性及び流動性の観点から液状のグリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0030】
上記した2種のエポキシ樹脂はいずれか1種を単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよいが、その配合量は、その性能を発揮するために液状エポキシ樹脂全量に対して合わせて20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上とすることがさらに好ましい。上限値としては、特に制限はなく、粘度、ガラス転移温度及び耐熱性等の観点から所望の性状及び特性が得られる範囲で決めることができる。
【0031】
また、本発明のアンダーフィル材には、本発明の効果が達成される範囲内であれば固形エポキシ樹脂を併用することもできるが、成形時の流動性の観点から併用する固形エポキシ樹脂はエポキシ樹脂全量に対して20重量%以下とすることが好ましい。さらに、これらのエポキシ樹脂の純度、特に加水分解性塩素量はICなど素子上のアルミ配線腐食に係わるため少ない方が好ましく、耐湿性の優れたアンダーフィル材を得るためには500ppm以下であることが好ましい。ここで、加水分解性塩素量とは試料のエポキシ樹脂1gをジオキサン30mlに溶解し、1N−KOHメタノール溶液5mlを添加して30分間リフラックス後、電位差滴定により求めた値を尺度としたものである。
【0032】
[(B)硬化剤]
本発明に用いられる(B)成分の硬化剤は、一般に使用されているエポキシ樹脂の硬化剤を特に制限なく用いることができる。中でも、耐温度サイクル性及び耐湿性等に優れ、半導体装置の信頼性を向上できるという観点から芳香族アミンであることが好ましく、常温で液状の芳香族アミンであることがより好ましい。常温で液状の芳香環を有するアミンとしては、ジエチルトルエンジアミン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン等が挙げられる。これらの液状芳香族アミン化合物は、市販品として、JERキュアW(ジャパンエポキシレジン株式会社、商品名)、カヤハードA−A、カヤハードA−B、カヤハードA−S(日本化薬株式会社、商品名)、トートアミンHM−205(東都化成株式会社、商品名)、アデカハードナーEH−101(株式会社ADEKA、商品名)、エポミックQ−640、エポミックQ−643(三井化学株式会社、商品名)、DETDA80(Lonza社、商品名)等が入手可能で、これらは単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
そのなかでも保存安定性の観点から、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、エチルトルエンジアミンおよびジメチルチオトルエンジアミンが好ましく、硬化剤はこれらのいずれか又はこれらの混合物を主成分とすることが好ましい。ジエチルトルエンジアミンとしては、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン及び3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミンが挙げられ、これらを単独で用いても混合物を用いてもよいが、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミンを60重量%以上含むものが好ましい。
【0034】
また、本発明のアンダーフィル材には、上記の液状芳香族アミンを含むアミン系硬化剤以外に、フェノール性硬化剤、酸無水物等の一般に使用されている硬化剤を併用することができ、固形硬化剤も併用することもできる。それらの中で、液状芳香族アミン化合物を含むアミン系硬化剤が半導体装置の高信頼性化に対して最も優れた効果を有する。
【0035】
硬化剤の配合量は(A)成分を含むエポキシ樹脂と(B)成分を含む硬化剤との当量比は特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために、エポキシ樹脂に対して硬化剤を0.7当量以上1.6当量以下の範囲に設定することが好ましく、0.8当量以上1.4当量以下がより好ましく、0.9当量以上1.2当量以下がさらに好ましい。
【0036】
[(C)無機充填材]
また本発明で用いられる(C)成分の無機充填材としては、球状シリカ、結晶シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、クレー、酸化アルミナ等のアルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミ、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填材としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。これらの無機充填材は単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、入手のし易さ、化学的安定性及び材料コストの観点からシリカが好ましく、アンダーフィル材の微細間隙への流動性・浸透性の観点から、球状シリカが特に好ましく用いられる。球状シリカとしては、例えば、爆燃法によって得られるシリカや溶融シリカが挙げられる。また、本発明における無機充填材は表面が表面処理されていてもよく、後述のシランカップリング剤を用いて表面処理されていてもよい。
【0037】
本発明における無機充填材の平均粒子径は、上記で概説したように、5μm未満であることが好ましい。これにより、狭ギャップへの充填性に優れるアンダーフィル材とすることができる。中でも、ギャップが50μm以下と狭い半導体装置に対しては、無機充填材の平均粒径は2μm以下が好ましく、特に、ギャップが25μm以下とさらに狭い半導体装置においては、平均粒径は1.6μm未満であることがより好ましい。
【0038】
本発明において、無機充填材の「平均粒子径」とは、下記の方法を用いて粒子径を階級、体積を度数とし、度数の累積で表記された積算分布において、積算分布が50%となる粒子径(体積平均粒子径)を意味する。無機充填材の粒子径を測定する方法としては、例えば、レーザー回折、動的光散乱、小角X線散乱等の装置を用い、同時に多数の粒子を測定する方法、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等を用いて画像化し、粒子1つ1つの粒子径を測定する方法などがあげられる。液相遠心沈降、フィールドフロー分別、粒子径排除クロマトグラフィ、流体力学クロマトグラフィ等の方法を用い、粒子を測定する前に100μm以上の粒子を分離する前処理を行ってもよい。また測定試料がアンダーフィル材の硬化物である場合は、例えば、マッフル炉等で800℃以上の高温で処理した後に残渣として得られる灰分を上記の方法で測定することができる。
【0039】
本発明における無機充填材の配合量は、アンダーフィル材全体の67質量%以上85質量%未満である。これにより、充填して硬化後のアンダーフィル材のボイド発生を低減できるだけでなく、線膨張係数を半導体チップ等の周辺部材のそれと同程度に下げることができ、応力を緩和させることができるため、信頼性(耐湿性、耐温度サイクル性)の高い電子部品を得ることができる。中でも、アンダーフィル材を浸透させたときに半導体素子の周辺端部に均一なフィレットを形成して半導体装置の一層の高信頼性化を図るという観点から、アンダーフィル材の浸透性を高めるために平均粒径が5μm未満の無機充填材の含有量が80質量%以下であることが好ましい。また、半導体装置の高信頼性化は、アンダーフィル材の線膨張係数をより低減することによって一層の向上が図られるため、無機充填材の含有量はアンダーフィル材全体の70質量%以上であることが好ましい。
【0040】
また、本発明における(C)無機充填材は、上記で述べたように、2μm以下が好ましく、1.6μm未満であることがより好ましく、それを実現するために、粒度分布が0.1〜1μmの間にピークがある無機充填材及び1〜2μmの間にピークがある無機充填材の少なくともいずれかを含むことが好ましい。上記構成を採ることにより、無機充填材の凝集を抑制できるため狭ギャップを有する半導体装置の充填封止を容易に行うことができ、また、無機充填材によるアンダーフィル材の粘度の上昇を抑制することができるため、狭ギャップを有する半導体装置への良好な浸透性を実現することができる。
【0041】
さらに、無機充填材の平均粒径を1.6μm未満と小さくしつつ、アンダーフィル材の流動性と浸透性を向上するには、粒度分布において0.1〜1μmと1〜2μmの間にそれぞれピークを有する無機充填材の両者を含むことによって、25μm以下の狭ギャップを有する半導体装置にも適用できるアンダーフィル材が得られる。両者の無機充填材を併用するときは、(0.1〜1μmにピークを有する無機充填材)/(1〜2μmにピークを有する無機充填材)=1/99〜30/70の範囲にある配合比率が好ましい。両者の配合比率が1/99以上30/70以下とすることにより、良好な粘度の低減効果を得ることができる。
【0042】
以上のように、本発明においては、0.1〜1μmと1〜2μmの間にそれぞれピークがある無機充填材の少なくともどちらかを使用すること、より好ましくは両者を併用することにより、無機充填材の量に起因する粘度の増加を十分に抑制することができ、低粘度のアンダーフィル材とすることができる。
【0043】
[(D)25℃における粘度が60mPa・s以下のエポキシ樹脂]
本発明で用いられる(D)25℃における粘度が60mPa・s以下のエポキシ樹脂は、通常、液状エポキシ樹脂組成物の粘度を低減するために使用される反応性希釈剤と同じ作用を有する。ここで、25℃の粘度は、上記で示したように、E型粘度計で測定した値である。(D)エポキシ樹脂としては、分子内にエポキシ基を持つことにより、硬化剤と反応してアンダーフィル硬化物の構造内に組込まれるものであり、例えば、アルキルモノグリシジルエーテルやアルキルフェノールモノクリシジルエーテル等のモノエポキシ化合物や多価アルコールのグリシジルエーテル化合物が使用できる。25℃における粘度が60mPa・s以下である場合、アンダーフィル材の低粘度化の効果を期待することができ、また、ガラス転移温度の低下や樹脂硬化物の靭性の低下等の問題も発生しにくい。
【0044】
本発明では、(D)25℃における粘度が60mPa・s以下のエポキシ樹脂の中でも、アルキレン基又はエーテル基を含有する2官能性以上の脂肪族エポキシ樹脂を使用することが好ましい。これらのエポキシ樹脂は、1分子中に2以上のグリシジルエーテル基を含むため、硬化時に三次元的に架橋を形成し、ガラス転移温度の低下を抑えるだけでなく、樹脂硬化物を強靱化できるという利点を有する。アルキレン基又はエーテル基を含有する2官能性以上の脂肪族エポキシ樹脂としては、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルやポリプロピレンジグリシジルエーテル等のアルキルジグリシジルエーテル及び1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の多価アルコールのジグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、他のエポキシ樹脂と同様に、加水分解性塩素量が500ppm以下である高純度のものが、半導体装置の耐湿信頼性の向上の観点から好ましい。
【0045】
これら(D)25℃における粘度が60mPa・s以下のエポキシ樹脂の配合量は、エポキシ樹脂全量100質量部としたときに、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。配合量を5質量%以上とすることにより、アンダーフィル材の低粘度化を期待することができ、また、40質量%以下とすることにより、ガラス転移温度及び樹脂硬化物の靭性の低下の問題も発生しにくい。
【0046】
[その他成分]
本発明のアンダーフィル材には耐熱衝撃性向上、半導体素子への応力低減などの観点から各種可撓剤を配合することができる。可撓剤としては、特に制限は無いがゴム粒子が好ましく、それらを例示すればスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム(UR)、アクリルゴム(AR)等のゴム粒子が挙げられる。なかでも耐熱性、耐湿性の観点からアクリルゴムからなるゴム粒子が好ましく、コアシェル型アクリル系重合体、すなわちコアシェル型アクリルゴム粒子がより好ましい。
【0047】
また、上記以外のゴム粒子としてシリコーンゴム粒子も好適に用いることができ、それらを例示すれば、直鎖状のポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等のポリオルガノシロキサンを架橋したシリコーンゴム粒子、シリコーンゴム粒子の表面をシリコーンレジンで被覆したもの、乳化重合等で得られる固形シリコーン粒子のコアとアクリル樹脂等の有機重合体のシェルからなるコア−シェル重合体粒子などが挙げられる。これらのシリコーン重合体粒子の形状は無定形であっても球形であっても使用することができるが、アンダーフィル材の成形性に関わる粘度を低く抑えるためには球形のものを用いることが好ましい。これらのシリコーン重合体粒子は東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、信越化学株式会社等から市販品が入手可能である。
【0048】
また、界面活性剤としてシリコーン変性エポキシ樹脂を添加することができる。シリコーン変性エポキシ樹脂はエポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンとエポキシ樹脂との反応物として得ることができるが、常温で液状であることが好ましい。ここでエポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンを例示すれば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、フェノール性水酸基、メルカプト基等を1分子中に1個以上有するジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン等が挙げられる。該オルガノシロキサンの重量平均分子量としては500以上5000以下の範囲が好ましい。この理由としては500未満では樹脂系との相溶性が良くなり過ぎて添加剤としての効果が発揮されず、5000を超えると樹脂系に非相溶となるためシリコーン変性エポキシ樹脂が成形時に分離・しみ出しを発生し、接着性や外観を損なうためである。シリコーン変性エポキシ樹脂を得るためのエポキシ樹脂としてはアンダーフィル材の樹脂系に相溶するものであれば特に制限は無く、電子部品用液状樹脂組成物に一般に使用されているエポキシ樹脂を用いることができ、たとえば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールA等とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類とを縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、常温液状のものが好ましい。
【0049】
界面活性剤の添加量はアンダーフィル材全体に対して、0.01重量%以上1.5重量%以下が好ましく、0.05重量%以上1重量%以下がより好ましい。0.01重量%より少ないと十分な添加効果が得られず、1.5重量%より多いと硬化時に硬化物表面からの染み出しが発生して接着力が低下する傾向がある。
【0050】
本発明のアンダーフィル材には、必要に応じて(A)成分の液状エポキシ樹脂と(B)成分を含む硬化剤の反応を促進する硬化促進剤を用いることができる。硬化促進剤には特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、これらを例示すれば1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン、5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジルー2−フェニルイミダゾール、1−ベンジルー2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリブチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン等のジアルキルアリールホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等のアルキルジアリールホスフィン、トリフェニルホスフィン、アルキル基置換トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、及びこれらの誘導体などが挙げられ、さらには2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のフェニルボロン塩等などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組合わせて用いてもよい。また、潜在性を有する硬化促進剤として、常温固体のアミノ基を有する化合物をコアとして、常温固体のエポキシ化合物のシェルを被覆してなるコア−シェル粒子が挙げられ、市販品としてアミキュア(味の素株式会社、商品名)や、マイクロカプセル化されたアミンをビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に分散させたノバキュア(旭化成ケミカルズ株式会社、商品名)などが使用できる。
【0051】
硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限されるものではないが、(A)液状エポキシ樹脂に対して0.1重量%以上40重量%以下が好ましく、より好ましくは1重量%以上20重量%以下である。0.1重量%未満では短時間での硬化性に劣る傾向があり、40重量%を超えると硬化速度が速すぎて制御が困難になったりポットライフ、シェルライフ等の保存安定性が劣ったりする傾向がある。
【0052】
本発明のアンダーフィル材には必要に応じて、樹脂と無機充填材或いは樹脂と電子部品の構成部材との界面接着を強固にする目的でカップリング剤を使用することができる。これらのカップリング剤には特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、たとえば、1級及び/又は2級及び/又は3級アミノ基を有するシラン化合物、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等が挙げられる。これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
また、本発明のアンダーフィル材には、必要に応じて下記組成式(V)(VI)で表されるイオントラップ剤をIC等の半導体素子の耐マイグレーション性、耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から含有することができる。
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO ・・・(V)
(0<X≦0.5、mは正の数)
BiO(OH)(NO ・・・(VI)
(0.9≦x≦1.1、 0.6≦y≦0.8、 0.2≦z≦0.4)
【0054】
これらイオントラップ剤の添加量としては0.1重量%以上3.0重量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.3重量%以上1.5重量%以下である。イオントラップ剤の平均粒径は0.1μm以上3.0μm以下が好ましく、最大粒径は10μm以下が好ましい。なお、上記式(V)の化合物は市販品として協和化学工業株式会社の商品名DHT−4Aとして入手可能である。また、上記式(VI)の化合物は市販品としてIXE500(東亞合成株式会社、商品名)として入手可能である。また必要に応じてその他の陰イオン交換体を添加することもできる。陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。たとえば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、アンチモン等から選ばれる元素の含水酸化物などが挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
本発明のアンダーフィル材には、その他の添加剤として、染料、カーボンブラック等の着色剤、溶剤等の希釈剤、レベリング剤、消泡剤などを必要に応じて配合することができる。
【0056】
本発明のアンダーフィル材に含まれる上記の各種添加剤は、硬化時に揮発成分を発生すると、50μm以下、特に25μm以下の狭ギャップを有する半導体装置の封止のときにボイドの発生が顕著になり、半導体装置の信頼性低下が大きな問題となる。特に、アンダーフィル材の低粘度化を行うために配合する溶剤は、揮発性が高く、ボイド発生の主な要因の一つである。したがって、上記で述べたように、ボイド発生を予測できる物理量としてアンダーフィル材の加熱重量減少率に着目し、アンダーフィル材の重量減少率を、50μm以下、特に25μm以下の狭ギャップを有する半導体装置に適用する場合には、熱重量測定装置(TGA)で測定したときに5%以下であることが好ましい。ここで、熱重量測定装置(TGA)によって測定する重量減少率は、アンダーフィル材の硬化条件に従って、所定の温度で所定の時間で放置した後の値である。本発明においては、アンダーフィル材の硬化条件として、下記の実施例に示すように、例えば150℃2時間を採用する場合は、その条件で測定したときの値を重量減少率として規定する。
【0057】
本発明のアンダーフィル材は、上記各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の成分を秤量し、らいかい機、ミキシングロール、プラネタリミキサ等を用いて混合、混練し、必要に応じて脱泡することによって得ることができる。
【0058】
本発明のアンダーフィル材を用いて素子を封止する方法としては、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等が挙げられる。
【実施例】
【0059】
次に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
実施例および比較例において行った特性試験の試験方法を以下にまとめて示す。なお、使用したアンダーフィル材の諸特性及び含浸時間、ボイドの観察、各種信頼性の評価は以下の方法及び条件で行った。信頼性の評価に使用した半導体装置の諸元は、チップサイズ20×20×0.55tmm(回路:アルミのデイジーチェーン接続、パッシベーション:ポリイミド膜HD4000,日立化成デュポンマイクロシステムズ製商品名)、バンプ:はんだボール(Sn−Ag−Cu、Φ80μm、 7,744pin、)、バンプピッチ:190μm、基板:FR−5(ソルダーレジストSR7200,日立化成株式会社の商品名、60×60×0.8tmm)、チップ/基板間のギャップ:50μmである。また、チップ/基板間のギャップが50μmよりもさらに狭い25μmについても試験を行った。25μmのギャップは、半導体素子の配線部分に銅(Cu)ピラーを形成し、それと配線基板とをはんだ又は金−金による接合を行ったものである。
【0061】
半導体装置は、アンダーフィル材をディスペンス方式でアンダーフィルし、150℃の硬化温度で、2時間硬化することで作製した。また、各種試験片の硬化条件も同様な条件で行った。
(1)粘度
アンダーフィル材の25℃における粘度は、E型粘度計(コーン角度3°、回転数5rpm)を用いて測定した。またアンダーフィル材の30−140℃における粘度は、AR2000(TAインスツルメント)を用い、40mmパラレルプレート、せん断速度32.5(1/s)で各温度における粘度を測定した。
(2)重量減少率
アンダーフィル材の約10mgを熱重量測定装置であるTA−2950型熱天秤(TAインスツルメント)の試料容器内に装着した後、150℃2時間放置後の重量減少率を測定した。この重量減少率は、初期重量に対する重量減少の比率として%で表示した。
(3)含浸時間
半導体装置を110℃に加熱したホットプレート上に置き、デイスペンサーを用いてアンダーフィル材の所定量をチップの側面(1辺)に滴下し、樹脂組成物が対向する側面に浸透するまでの時間を測定した。
(4)ボイド観察
アンダーフィル材をアンダーフィルして作製した半導体装置の内部を超音波探傷装置AT−5500(日立建機株式会社)で観察し、ボイドの有無を調べた。
(5)耐温度サイクル性
アンダーフィル材をアンダーフィルして作製した半導体装置を−55℃〜125℃、各30分のヒートサイクルで2000サイクル処理し、1000サイクルごとに導通試験を行いアルミ配線及びパッドの断線不良を調べ、不良パッケージ数/評価パッケージ数で評価した。
(6)耐湿信頼性
アンダーフィル材をアンダーフィルして作製した半導体装置を130℃、85%RHのHAST条件下で200h処理後、アルミ配線及びパッドの断線有無を導通試験より確認し、不良パッケージ数/評価パッケージ数で評価した。
(7)平均粒径の測定
無機充填材の平均粒子径は以下のように測定した。
(7−1)試料の調製
溶媒(水)に、無機充填材を5質量%で添加し、超音波ホモジナイザーで30分振動し、分散させ、試料を調製した。
(7−2)測定
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(株式会社堀場製作所、商品名)にて測定した。測定条件は、分散媒の屈折率を1.00(水の場合)、無機充填材の屈折率を1.47(シリカ粒子の場合)として、測定した。
(7−3)平均粒径の算出
粒度分布における積算値50%(体積基準)での粒径を平均粒子径とした。
(8)シリカのピークの測定
アンダーフィル材に使用するシリカを配合と同じ割合で混合し、LA−920型 レーザー回/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA)を用いて粒度分布を測定した。なお粒度分布のピークとは頂点のことを示す。
【0062】
(実施例1〜16、比較例1〜6)
液状エポキシ樹脂として、ビスフェノールFをエポキシ化して得られるエポキシ当量160の液状ジエポキシ樹脂(液状エポキシ1)、アミノフェノールをエポキシ化して得られるエポキシ当量95の3官能液状エポキシ樹脂(液状エポキシ2)、エポキシ当量120のエポキシ樹脂3(三菱化学株式会社の商品名YED216D、25℃の粘度:10〜16mPa・s)、硬化剤として活性水素当量45のジエチルトルエンジアミン(液状アミン1)、活性水素当量63のジエチル−ジアミノ−ジフェニルメタン(液状アミン2)、活性水素117の酸無水物(三菱化学株式会社の商品名YH306)、活性水素140のフェノール系硬化剤(明和化成株式会社の商品名MEH8000H)、無機充填材1として平均粒径1.6μm、比表面積3.5m/gの球状シリカ、無機充填材2として平均粒径0.6μm、比表面積6.0m/gの球状シリカ、無機充填材3として平均粒径3.0μm、比表面積1.0m/gの球状シリカ、無機充填材4として、平均粒径5μm、比表面積が約0.5m/gの球状シリカを使用した。
【0063】
その他に、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチル−ヒドロキシイミダゾール、溶剤としてエチレングリコールエチルエーテル、可撓化剤としてジメチル型固形シリコーンゴム粒子の表面がエポキシ基で修飾された、平均粒径2μmの球状のシリコーン粒子、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、着色剤としてカーボンブラック(三菱化学株式会社の商品名MA‐100)、イオントラップ剤としてビスマス系イオントラップ剤(東亞合成株式会社の商品名IXE−500)を用意した。なお、溶剤の配合量は、溶剤を含むアンダーフィル材全体を100質量部としたときの質量%で表している。
【0064】
下記の表1、表2及び表3に示す組成で配合し、三本ロール及び真空擂潰機にて混練分散した後、実施例1〜16及び比較例1〜6の電子部品用液状樹脂組成物を作製した。なお表中の配合単位は重量部であり、空欄は配合無しを表す。また、表中の無機充填材において、0.1−1μmのピーク又は1−2μmのピークを有するものを(○)で、有しないものを(×)で示している。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
上記の表1、表2及び表3に示す組成で作製した各アンダーフィル材について、粘度、重量減少率及び半導体装置による評価結果を、それぞれ下記の表4、表5及び表6に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
表4及び表5に示すように、実施例1〜16は、半導体素子と配線基板とのギャップが50μmにおいて成形時のボイド発生がなく、各種信頼性に優れている。一方、表6に示すように、無機充填材を65質量%含有する比較例1〜3では、成形時のボイド発生が見られるだけでなく、信頼性が著しく低下している。また、無機充填材の含有量が85質量%である比較例4では110℃における粘度が高く、チップと基板との間にアンダーフィル材を充填できなかった。無機充填材の含有量が75質量%であっても、110℃における粘度が0.36Pa・sである比較例5も、同様に110℃における粘度が高いためにチップと基板との間にアンダーフィル材の充填ができなかった。さらに、平均粒径が5μmである無機充填材を含有する比較例6は、無機充填材の含有量が70質量%であるものの、粒径が大きいため、成形時にボイドが発生しており、半導体装置の各種信頼性もやや低下した。
【0073】
このように、本発明のアンダーフィル材は、無機充填材の含有量を67質量%以上85質量%未満に規定する必要がある。さらに、表4(実施例2〜8)及び表5に示すように、無機充填材の含有量を70〜80質量%の範囲にすることによって、浸透性及び半導体装置の各種信頼性の両者をバランス良く向上させることができる。また、本発明のアンダーフィル材は、110℃における粘度を0、2Pa・s以下に低減する必要があり、その方法の一つとして反応性希釈剤として作用する低粘度の液状エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0074】
本発明の実施例において、実施例1〜8は、粒度分布が0.1〜1μmと1〜2μmの間にそれぞれピークがある無機充填材の両者を含むため、半導体素子と配線基板とのギャップが50μm及び25μmの両者において、成形時のボイド発生が観測されなかった。それに対して、0.1〜1μmと1〜2μmの間にそれぞれピークがある無機充填材の両者を同時に含まないアンダーフィル材は、50μmのギャップにおいてはボイド発生を抑制できるものの、それより狭い25μmのギャップではボイド発生が観測された(実施例9〜16)。その中で、実施例11〜13は、0.1〜1μm又は1〜2μmの間にそれぞれピークがある無機充填材のどちらかを単独で含むアンダーフィル材であり、平均粒径が1.6μm以下と小さいものの、25μmの狭ギャップではボイド発生の抑制効果が十分に現れてこなかった。この原因の詳細は不明であるが、流動分布が狭くなると無機充填材の粒子径が揃って粒子間に存在する樹脂の量が増えるようになるため、無機充填材と樹脂とが一体化して流動するという機能が発現されにくくなり、ボイドの発生確率が高くなったのではないかと考えている。
【0075】
また、実施例4と実施例15、16を対比すると、熱天秤による重量減少率が5質量%を超えると、アンダーフィル材の各成分の種類と配合量を最適化しても、揮発量が多いために25μmの狭ギャップではボイド発生は抑制されず、半導体装置の信頼性も低下する傾向にあることが分かる。したがって、本発明のアンダーフィル材は、硬化条件に従って、所定の温度で所定の時間で放置した後の重量減少率が5%以下であることが好ましい。
【0076】
さらに、表4において実施例4、5と実施例6、7を対比すると、エポキシ樹脂系アンダーフィル材に使用する硬化剤は、液状の芳香族アミン化合物が、酸無水物又はファノール樹脂の硬化剤よりも、半導体装置の耐温度サイクル信頼性を向上できることが分かる。したがって、本発明において半導体装置の高信頼性化を優先的に考える場合には、液状の芳香族アミン硬化剤を使用することが好ましい。
【0077】
以上のように、本発明のアンダーフィル材は、狭ギャップでの流動性が良好であり、また、さらに、浸透速度が速く、また、成形時のボイドの発生を抑制できる。さらに、本発明のアンダーフィル材により封止されたフリップチップ型半導体装置は、耐湿性、耐温度サイクル性等の各種の信頼性の向上を図ることができる。また、本発明のアンダーフィル材は、フリップチップ型半導体装置だけなく、その以外の半導体装置のアンダーフィル材又は封止材としての適用が可能であるため、その有用性は極めて高い。