(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、有機溶媒が、アミド系、アルコール系、ケトン系、エーテル系、及び、エステル系からなる群より選択される少なくとも1つの溶媒である請求項1に記載の未硬化エポキシ樹脂複合材料の溶解方法。
請求項1〜5の何れか一項において、未硬化エポキシ樹脂複合材料が、有機繊維又は無機繊維と、エポキシ樹脂とを含有し、前記エポキシ樹脂が半硬化状態である、未硬化エポキシ樹脂複合材料の溶解方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維強化プラスチック(以下、「FRP」という。)は、軽量、かつ、高強度の材料として開発され、浴槽、小型船舶、自動車、鉄道車両などに幅広く利用されている。また、近年では、炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPという)が、更なる軽量化及び高強度化を目的として開発されており、航空機、自動車などに利用されている。
【0003】
CFRPの製造方法としては、例えば、あらかじめ炭素繊維基材にエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグ(未硬化エポキシ樹脂複合材料)という中間基材を複数枚積層し、オートクレーブとよばれる耐圧容器内で加圧及び加熱することでCFRPを得る方法がある。この方法の場合、プリプレグとしては、連続した炭素繊維束を織って作製したクロス材にエポキシ樹脂を含浸したクロスプリプレグや、連続した炭素繊維束を一方向に配列したUD(Uni−Direction)材にエポキシ樹脂を含浸したUDプリプレグを用いることが多い。このようなプリプレグを用いて製造されたCFRPは高強度を有するため、航空機の部品などに用いられている。
【0004】
繊維強化プラスチックが廃材として排出された際、それに含まれる有機繊維又は無機繊維を再利用するために取り出す方法としては、燃焼法(例えば、特許文献1参照)により樹脂を除去する方法や、有機溶媒及びアルカリ金属化合物を用いて樹脂を溶解する方法(例えば、特許文献2参照)がある。より有機繊維又は無機繊維への損傷が少なく、樹脂の残存などが少ないという観点からは、有機溶媒及びアルカリ金属化合物を用いて処理する方法が好ましい。
【0005】
一方、未硬化エポキシ樹脂複合材料を特許文献2に記載のような方法で処理した場合、処理液中で一定の温度で作用させても、樹脂がなかなか溶解せず、完全に樹脂が溶解するまでに長時間要するという課題があった。時間を短縮することを狙い、高温(例えば100℃以上)で処理液と作用させた場合、半硬化状態であった未硬化エポキシ樹脂複合材料の硬化がより進んでしまい、逆に完全に樹脂が溶解するまでに長い処理時間が必要となってしまった。また、低温(例えば100℃未満の温度)で処理液と作用させた場合、溶解は進むが溶解率は低く、溶解した樹脂と繊維を分離回収することは困難である。そのため短時間で未硬化エポキシ樹脂複合材料の樹脂を溶解することは困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、従来技術では解決できなかった、短時間で未硬化エポキシ樹脂複合材料の樹脂を溶解する方法を提供することを目的とする。また、樹脂を溶解した後、有機繊維又は無機繊維を取り出すことによる、有機繊維又は無機繊維を再生する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のものに関する。
(1) 以下の工程による、未硬化エポキシ樹脂複合材料の溶解方法。
(a)有機溶媒と、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物とを含む100℃未満の処理液中に、未硬化エポキシ樹脂複合材料を浸漬させる第1の工程。
(b)第1の工程の後に、100℃以上で、有機溶媒の沸点温度以下の処理液中に、未硬化エポキシ樹脂複合材料を浸漬させる第2の工程。
(2) 項(1)において、有機溶媒が、アミド系、アルコール系、ケトン系、エーテル系、及び、エステル系からなる群より選択される少なくとも1つの溶媒である未硬化エポキシ樹脂複合材料の溶解方法。
(3) 項(1)又は(2)において、アルカリ金属化合物が、アルカリ金属塩である未硬化エポキシ樹脂複合材料の溶解方法。
(4) 項(1)〜(3)の何れか一項において、カールフィッシャー滴定法で測定した処理液の水分量を、2質量%以下とする、未硬化エポキシ樹脂複合材料の溶解方法。
(5) 項(1)〜(4)の何れか一項において、第2の工程における処理液の温度が、100℃以上であり、200℃以下である、未硬化エポキシ樹脂複合材料の溶解方法。
(6) 項(1)〜(5)の何れか一項において、未硬化エポキシ樹脂複合材料が、有機繊維又は無機繊維と、エポキシ樹脂とを含有し、前記エポキシ樹脂が半硬化状態である、未硬化エポキシ樹脂複合材料の溶解方法。
(7) 項(1)〜(6)の何れか一項において、更に、(c)有機繊維又は無機繊維を取り出す、第3の工程を含む、未硬化エポキシ樹脂複合材料の溶解方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、100℃未満の処理液に浸漬させることで未硬化エポキシ樹脂の硬化を促進させることなく溶解させ、その後100℃以上の処理液に浸漬させることで、より素早い未硬化エポキシ樹脂の溶解を行うので、全体として溶解時間を大幅に短縮することができる。
有機溶媒が、アミド系、アルコール系、ケトン系、エーテル系、及び、エステル系からなる群より選択される場合は、未硬化エポキシ樹脂を、更に効率よく溶解することができる。
アルカリ金属化合物が、アルカリ金属塩である場合は、有害性が少ないことから、環境にも優しく好ましい。
処理液が、その水分量を、カールフィッシャー滴定法で2質量%以下とする場合は、未硬化エポキシ樹脂を、特に効率よく溶解することができる。
第2の工程における処理液の温度が、100℃以上であり、200℃以下である場合は、有機溶媒が分解せず、未硬化エポキシ樹脂を効率よく溶解することができる。
有機繊維又は無機繊維を取り出す工程を有するので、それらを再利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、未硬化エポキシ樹脂複合材料とは、基材にエポキシ樹脂が含浸されて、半硬化状態であるものである。具体的には、基材に含浸させたエポキシ樹脂と硬化剤とを反応させることで得ることができる。また、必要に応じて、エポキシ樹脂、硬化剤以外に架橋剤、硬化促進剤、触媒、エラストマ、難燃剤、基材以外の非相溶性材料等含有してもよい。
一般的には、未硬化エポキシ樹脂複合材料は、エポキシ樹脂、硬化剤、架橋剤、硬化促進剤、触媒、エラストマ、難燃剤、非相溶性材料等を、溶剤を用いて溶解、分散したワニスを基材に含浸させ、溶剤を乾燥除去したものであり、乾燥時に若干硬化が進行したものである。プレポリマーを用いて予め反応を進めたものもある。
本発明の未硬化エポキシ樹脂の未硬化とは、硬化の程度を示すAステージ又はBステージの状態である。硬化の程度は、Aステージ、Bステージ、Cステージで表され、Aステージは、ほぼ未硬化でゲル化していない状態であり、全硬化発熱量の0〜20%の発熱を終えた状態である。Bステージとは、若干硬化、ゲル化が進んだ状態であり、全硬化発熱量の20〜60%の発熱を終えた状態である。Cステージとは、かなり硬化が進み、ゲル化した状態であり、全硬化発熱量の60〜100%の発熱を終えた状態である。全硬化発熱量や発熱量は、示差走査熱分析(DSC)を用いて測定される。
基材としては、有機繊維又は無機繊維(炭素繊維、ガラス繊維等)が挙げられる。未硬化エポキシ樹脂複合材料としては、例えば東レ株式会社製のトレカ(登録商標、ポリアクリロニトル(PAN)を原料にした炭素繊維)プリプレグ等が挙げられる。
【0012】
エポキシ樹脂としては、分子内にエポキシ基を有するものであればどのようなものでもよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジリエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジリエーテル化物、フェノール類のジグリシジリエーテル化物、アルコール類のジグリシジリエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物等がある。これらは併用しても良く、エポキシ樹脂以外の成分が不純物として含まれていてもよい。
【0013】
硬化剤としては、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、フェノール系化合物等が挙げられる。
アミンの例としては、脂肪族或いは芳香族の第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩及び脂肪族環状アミン類、グアニジン類、尿素誘導体等が挙げられる。これらの化合物の一例としては、N,N−ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N´−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.4.0]−5−ノネン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン、ピコリン、ピペリジン、ピロリジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジフェニルアミン、N−メチルアニリン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリフェニルアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジシアンジアミド、トリルビグアニド、グアニル尿素、ジメチル尿素等が挙げられる。
【0014】
酸無水物の例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、グリセロールトリストリメリテート、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、無水トリメリット酸等がある。これらの酸無水物系硬化剤は、単独、或いは、組み合わせて用いることもできる。
【0015】
フェノール系化合物の例としては、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、トリスフェノールノボラック樹脂、テトラキスフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。
【0016】
硬化促進剤としては、第三級アミン、イミダゾール類、第四級アンモニウム塩、有機リン化合物等があるが、これに限定されるものではない。
【0017】
上記アルカリ金属又はアルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属を含む化合物であればどのようなものでもよく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の水素化物、水酸化物、ホウ水素化物、アミド化合物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩、アルコラート、フェノラート等がある。中でもアルカリ金属塩は、有害性が少ないことから好ましい。更に、アルカリ金属リン酸塩は、酸無水物硬化エポキシ樹脂等を分解し、溶解する作用が強い上に、取り扱いが容易でかつ安全であるためより好ましい。これらの化合物は単独で使用しても、数種類を混合して使用してもよい。また、アルカリ金属化合物以外に、どのようなものを併用してもよく、不純物が含まれていてもかまわない。
【0018】
本発明で用いる処理液は、その水分量を、カールフィッシャー滴定法で2質量%以下とすることが好ましい。2質量%以下であることで、樹脂をより効率よく溶解することができる。1.5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
なお、処理液の水分量をカールフィッシャー滴定法で2質量%以下とするために、水分を除去したアルカリ金属化合物を用いることが好ましい。「水分を除去したアルカリ金属化合物」とは、アルカリ金属化合物の水和物を乾燥することによりその水分を除去したもの、若しくはアルカリ金属化合物の無水物を意味する。
【0019】
アルカリ金属化合物の水分を除去する方法は、アルカリ金属化合物が分解若しくは酸化等の変質をしない条件下における方法であればよく、加熱による乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、乾燥剤を利用する乾燥などがある。
加熱による乾燥の場合、加熱温度の範囲は、100℃以上であり、アルカリ金属化合物の熱分解温度以下であることが好ましい。100℃以上、熱分解温度以下であれば、効率よく水分を除去して乾燥させることができ、加熱後の塩を処理液に添加することで、エポキシ樹脂の分解又は溶解をより確実に行うことができる。
【0020】
100℃以上の加熱で分解等が生じる塩は、減圧下で乾燥してもよい。減圧の範囲は、真空から大気圧以下であれば良く、100℃以下に加熱してもよい。
【0021】
加熱を行わない場合は、乾燥剤を用いて乾燥しても良い。底部に、塩化カルシウム、濃硫酸、五酸化リンなどの乾燥剤を入れたデシケーター内での乾燥が好ましい。更にデシケーター内を上記と同様に減圧してもよい。
【0022】
本発明で用いる有機溶媒としては、例えば、アミド系、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系等が挙げられるが、特に制限されない。これらは単独で使用しても、数種類を混合して使用してもよい。また、これらの有機溶媒以外に、水以外であればどのようなものを併用してもよく、不純物が含まれていてもかまわない。
【0023】
上記アミド系溶媒としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N,N´,N´−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、カプロラクタム、カルバミド酸エステルが使用できる。
【0024】
上記アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、iso−ペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200〜400)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ベンジルアルコール、が使用できる。
【0025】
上記ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ホロン、イソホロンアセチルアセトン、アセトフェノン、が使用できる。
【0026】
上記エーテル系溶媒としては、例えば、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセタール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセタール、が使用できる。
【0027】
上記エステル系溶媒としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセタート、2−エチルブチルアセタート、2−エチルヘキシルアセタート、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソペンチル、イソ酪酸イソブチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸イソペンチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、γ−ブチロラクトン、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジエチル、サリチル酸メチル、エチレングリコールジアセタート、ホウ酸トリブチル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、が使用できる。
【0028】
上記の各種溶媒の中で、アルコール系溶媒はエステル交換反応による分解作用が著しく、酸無水物硬化エポキシ樹脂等の溶解性がより高いため、好ましい。更には、水酸基を1個持つモノアルコール系溶媒は、分解生成物の副反応が少なく、好ましい。
【0029】
本発明で用いる処理液は、有機溶媒に対し、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物を、0.001〜50質量%の濃度で調整することが好ましい。0.001〜50質量%の濃度であれば、未硬化エポキシ樹脂の分解又は溶解速度が速く、処理液の調整も容易になると共に、未硬化エポキシ樹脂の処理量も期待できる。
より好ましい濃度は、0.01〜30質量%であり、更に好ましい濃度は、0.1〜20質量%である。なお、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物は、必ずしもすべてが溶媒に溶解する必要はなく、すべてが溶解していない飽和溶液においても、溶質は平衡状態にあり、アルカリ金属化合物が失活した場合にはそれを補うことができる。
【0030】
本発明で用いる処理液を調整する際の温度は、どのような温度でもよいが、常圧下で樹脂を溶解する場合には、使用する溶媒の融点以上、沸点以下であることが好ましい。また、処理液を調整する際の雰囲気は、大気中でも不活性気体中でもよく、常圧下、減圧下、加圧下のいずれでもよい。
【0031】
このようにして得られた処理液には、更に界面活性剤等の添加剤を添加してもよい。
【0032】
本発明の溶解方法は、上記した処理液を用いて未硬化エポキシ樹脂複合材料の樹脂を分解又は溶解する。
【0033】
処理液の使用時並びに保存時の雰囲気は、大気中でも、窒素、アルゴン又は二酸化炭素等の不活性気体中でもよく、常圧下、減圧下又は加圧下のいずれでもよい。安全性や作業性、経済性に優れる点で、常圧下に処理液を使用・保存することが好ましい。したがって、特定の気体雰囲気や特定の気圧を設定するための装置などを必ずしも必要としない。
【0034】
処理液の加熱方法は、どのようなものでもよく、処理液を直接ヒーターで加熱することもできるし、処理液の入った容器をヒーターで間接的に加熱することもできる。また、オイル、水、蒸気のような熱媒を用いて加熱してもよい。
【0035】
処理する際には、処理液を撹拌してもよい。撹拌方法はどのようなものでもよいが、撹拌羽根による方法、噴流を起こす方法、容器を揺動する方法、不活性気体の気泡を用いる方法、超音波による方法等がある。
処理する際のエポキシ樹脂複合材料の大きさは、特に限定されず、処理装置の規模に合わせて処理可能な大きさであればよい。また、硬化物を切断したのちに処理してもよいが、特に微小にする必要はない。
【0036】
本発明は、有機溶媒と、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物とを含む処理液中にて100℃未満の温度で、未硬化エポキシ樹脂複合材料を浸漬させる工程(第1の工程)と、第1の工程の後に前記処理液中にて、100℃以上で、有機溶媒の沸点以下の温度で、前記未硬化エポキシ樹脂複合材料を浸漬させる工程(第2の工程)とを含む、樹脂の溶解方法である。この方法により、従来技術では解決できなかった、短時間で未硬化エポキシ樹脂複合材料の樹脂を溶解する方法を提供することができる。
これは、未硬化エポキシ樹脂複合材料中の半硬化状態である樹脂が、100℃未満の温度で処理する第1の工程で、硬化を促進することなく、処理液により、程よく柔らかくなり、ついで100℃以上で、有機溶媒の沸点以下の温度で処理する第2の工程により樹脂を分解することができるためだと考えられる。
図1に本発明の溶解方法の時間(横軸)と温度(縦軸)の模式図を示す。本発明の溶解方法は、例えば、
図1のように、100℃未満の一定の温度で適切な時間第1の工程を行った後、昇温過程を経て、100℃以上で有機溶媒の沸点以下の一定の温度で第2の工程を行う(一定温度でなくてもよく、昇温、昇温と降温の繰り返し等)。
第1の工程は、100℃未満の温度である。100℃以上の温度だと、樹脂の硬化が進んでしまうため、溶解に長い時間がかかってしまう。第1の工程は、98℃未満であることがより好ましく、95℃未満であることが更に好ましい。また第1の工程は、樹脂を程よく、柔らかくできる観点から、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。また第1の工程は、樹脂を程よく柔らかくできる観点から2時間以上であることが好ましい。
二次加熱工程である第2の工程は、100℃以上で有機溶媒の沸点以下の温度である。有機溶媒の沸点以下の温度であれば、有機溶媒が分解せず、効率よく溶解することができる。第2の工程は、200℃以下であることが好ましい。第2の工程は、120℃以上の温度であることがより好ましく、150℃以上の温度であることが更に好ましい。100℃以上であれば、第2の工程において樹脂を効率的に短時間で溶解することができる。第2の工程は、樹脂を十分に溶解する観点から、30分以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましい。
本発明は更に、必要に応じて、第1の工程と第2の工程の他に、更に何段階かの加熱工程を設けてもよい。また、短時間で処理する観点から、第1の工程と第2の工程の二段階の加熱工程であることが好ましい。
【0037】
本発明は、処理液にてエポキシ樹脂複合材料を処理した後、更に有機繊維又は無機繊維を取り出す工程(第3の工程)を含むことができ、有機繊維又は無機繊維を再生する。有機繊維又は無機繊維を取り出す工程は、どのような方法でもよいが、例えば、ろ過、沈殿分離、遠心分離或いはそれらの操作の併用によって分離される。分離された有機繊維又は無機繊維は、水、有機溶媒等の溶剤によって洗浄し、乾燥してもよい。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
〔未硬化エポキシ樹脂複合材料の溶解試験〕
〔実施例1〜3〕
試験片は、T300の炭素繊維を用いたトレカ(登録商標)プリプレグ(東レ株式会社製)を用いた。
試験片は100℃で30分間加熱し、粘着性の抑制処理を行った後、縦20mm、横20mmの大きさに切断した。
次に処理液を準備した。処理液は溶媒にベンジルアルコール(BZA、沸点205°)、アルカリ金属化合物(触媒)にリン酸三カリウムを用いた。BZAは、カールフィッシャー滴定法による水分量0.1質量%以下のものを使用し、アルカリ金属化合物は、300℃で1.0時間乾燥したものを使用した。内径35mmのステンレス試験管にアルカリ金属化合物を3.65g、試験片10gを垂直に挿入した後、溶媒52gを加えた。試料を挿入した状態を上から見た写真を
図2に示した(溶媒を加える前)。
大気圧下で、表1に記載の第1の工程処理温度に昇温し、表1に記載の温度で2.0時間加熱処理を実施した。その後、第2の工程を表1に記載の温度及び時間で実施した。
第2の工程後、フィルター付き漏斗で固液分離を行い、漏斗上の炭素繊維は漏斗上にてBZAで2回洗浄、水で2回洗浄をした。この炭素繊維を乾燥機に入れ210℃で2時間乾燥処理して炭素繊維を回収した。このときの質量の減少を処理前の質量で除した値を溶解率とし、その測定値を表1に示した。ここで、溶解率の算出式を以下に示す。なお、今回の試験片の場合、溶解率が42質量%を超えていれば、樹脂が十分に溶解しているといえる。
【0040】
【数1】
また、実施例1で得られた炭素繊維の表面状態の電子顕微鏡写真(SEM写真)を
図3に示した。
【0041】
〔比較例1〜3〕
実施例1〜3と同様の方法で、表1に記載の時間及び温度にて溶解処理を行い、結果を表1に示した(比較例3により処理した後の試料(炭素繊維)の顕微鏡写真を
図4に示した。)。
【0042】
〔比較例4〜12〕
第1の工程を行わなかったこと以外、実施例1〜3と同様の方法で、表1に記載の時間及び温度にて溶解処理を行い、結果を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例1〜3では溶解率は42質量%を超え、また溶解処理時間も3時間と短時間で樹脂を溶解することができた(
図3では樹脂が完全に除去され繊維のみ観察される)。比較例1〜3は、第1の工程を100℃の温度で実施したが、溶解率が低かった。第2の工程における温度を伸ばしても(比較例3)、樹脂は十分溶解しなかった(
図4では樹脂膜が見られる)。これば、第1の工程での温度が高いため、樹脂の硬化が促進されてしまうからだと考えられる。比較例4〜12では、いずれも第1の工程なしで、つまり一段階の温度のみの加熱で溶解処理を行った。比較例4〜7は溶解率が低かった。比較例8では、溶解率は低いわけではないが、溶解に至るまでの時間が5時間と長くなってしまった。比較例9〜12では、低温で溶解処理を行ったが、いずれも溶解率が低かった。