【実施例】
【0069】
以下に、実施例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
【0070】
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムカルシウムニッケルマンガン複合酸化物(組成式:Li
1.23Ca
0.01Ni
0.19Mn
0.56O
2))
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、塩化カルシウム(CaCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Ca:Ni:Mn=1.8:0.02:0.25:0.75となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0071】
上記により得られたリチウムカルシウムニッケルマンガン複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名RINT2550V)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、リチウム過剰組成に特徴的な単斜晶系に属する層状岩塩型構造が主相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図2に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。また、最小自乗法により、平均構造である六方晶系として格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。
a=2.8531ű0.0002Å
c=14.242ű0.002Å
V=100.40±0.01Å
3
さらに、リートベルト法による結晶構造解析(プログラムRIETAN−FP使用)を行い、空間群C2/mを仮定して格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。
a=4.9427ű0.0008Å
b=8.5561ű0.0009Å
c=5.0280ű0.0004Å
β=109.274°±0.009°
V=200.72±0.04Å
3【0072】
また、走査型電子顕微鏡(JEOL製、商品名JCM−6000)により化学組成を調べたところ、粉体粒子が、カルシウム、ニッケル、マンガンを含有していることを確認され、粉体試料全体の組成比として、Ca:Ni:Mn=0.02:0.25:0.75(m=0.25)であることが判明した。このときのSEM−EDSスペクトルを
図3に示す。
さらに、ICP分析(HITACHI製、商品名P−4010)により化学分析を行い、モル比は、Li:Ca:Ni:Mn=1.64:0.02:0.25:0.75であることが判明した。この値を、一般式(Li
1+x−2yM
y)(Co
zNi
mTi
nMn
1−m−n−z)
1−xO
2(M:Ca及び/又はMg、ただし式中、0<x≦0.33、0<y<0.13、0≦z<0.2、0<m<0.5、0≦n≦0.25)で表記し直すと、x=0.25、y=0.01、z=0、m=0.25、n=0となることが確認された。また、るつぼ材由来のアルミニウム、ケイ素などは検出されなかった。
【0073】
(リチウム二次電池)
このようにして得られたリチウムカルシウムニッケルマンガン複合酸化物を活物質とし、導電剤としてアセチレンブラック、結着剤としてテトラフルオロエチレンを、重量比で45:45:10となるように配合し電極を作製した。
【0074】
この電極を作用極(正極)、対極(負極)にリチウム金属を用いて、6フッ化リン酸リチウムをエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(体積比1:1)に溶解させた1M溶液を電解液とする、
図1に示す構造のリチウム二次電池(コイン型セル)を作製し、その充放電特性を測定した。電池の作製は、公知のセルの構成・組み立て方法に従って行った。
前記リチウム二次電池(コイン型セル)のより具体的な構造は、前記正極6、前記電解液を含むポリプロピレン製の微多孔製膜のセパレータ4、金属リチウムを使用した負極3及びSUS製の負極端子2をこの順で積層して積層体とし、前記積層体が、前記正極6をSUS製の正極缶7の内底部に接し、かつ前記負極端子2の少なくとも一部を前記正極缶7の外部に露出するようにして前記正極缶7に収容されている。前記正極缶7内で前記積層体の周囲はポリプロピレン製の絶縁パッキング5で被覆されて、コイン型セルを有するリチウム二次電池が形成されている。前記コイン型セルを平面に載置したとき、前記コイン型セルの鉛直方向の厚さは3.2mmであり、直径は20mmである。また、正極缶7、前記正極6、前記電解液を含むポリプロピレン製の微多孔製膜のセパレータ4、金属リチウムを使用した負極3及びSUS製の負極端子2の鉛直方向の厚さは、それぞれ、0.25mm、0.3mm、0.02mm、0.2mm、及び0.25mmであり、残部のスペースをいずれもSUS製のウェーブワッシャー1.4mmとスペーサー1.0mmで充填したものである。
【0075】
作製されたリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位5.0V−2.0Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に容量が増大していき、10サイクル目で容量が最大となり、10サイクル目の充電容量270mAh/g、放電容量263mAh/gという高容量が得られることが判明した。本明細書において、「リチウム基準の電位」とは、金属リチウムの溶解・析出反応の電位を基準(0V)とした場合の電池の電圧を意味する。また、10サイクル目の放電のエネルギー密度は913Wh/kgであることから、10サイクル目の平均放電電位は、放電のエネルギー密度(913Wh/kg)を放電容量(263mAh/g)で除算することで、(913÷263=3.47)Vであることが明らかとなった。10サイクル目の充放電曲線を
図4に示す。さらに、14サイクル目の放電曲線では、容量の低下は認められず、また、放電エネルギー密度を放電容量で割り算した平均放電電位は3.44Vであり、放電電位の減少はわずかであることが確認された。以上から、本発明のリチウムカルシウムニッケルマンガン複合酸化物活物質が、高容量のリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
また、同条件で作製したリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位4.8−2.5Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に充放電の容量が増大していき、32サイクル目で容量が最大となった。この充放電試験の1サイクル目の充電曲線を
図5に示す。リチウム過剰層状岩塩型構造のリチウムニッケルマンガン複合酸化物、或いはリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物に特徴的な約4.5Vでの電圧平坦部は認められず、単調に電位が増大していく充電曲線であることが確認でき、本発明のリチウムカルシウムニッケルマンガン複合酸化物活物質が、酸素脱離反応を起こさず、酸素原子の配列を維持したままで高容量のリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
また、同条件で作製したリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位4.6−2.5Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に充放電の容量が増大していき、39サイクル目で容量が最大となった。この時の39サイクル目の充電曲線を
図6に示す。39サイクル目で放電容量は、253mAh/gであり、その後の75サイクル目の放電容量が39サイクル目の放電容量に対して98%程度の容量維持率を示すことが確認された。このことから、本発明のリチウムカルシウムニッケルマンガン複合酸化物活物質が、高容量のリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
【0076】
<実施例2>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムカルシウムニッケルマンガン複合酸化物)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、塩化カルシウム(CaCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Ca:Ni:Mn=1.8:0.2:0.25:0.75となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0077】
上記により得られたリチウムカルシウムニッケルマンガン複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名RINT2550V)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、リチウム過剰組成に特徴的な単斜晶系に属する層状岩塩型構造が主相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図7に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。一方、副相として、酸化カルシウムに帰属されるピーク(図中*印)が観測され、この仕込み組成がカルシウムの固溶限界であることが明らかになった。したがって、カルシウム単独での置換の場合、置換量yは0.13未満であることが確認できた。
【0078】
<実施例3>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムカルシウムニッケルチタンマンガン複合酸化物の合成)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、塩化カルシウム(CaCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、二酸化チタン(TiO
2、テイカ製AMT−100、含有量93%)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Ca:Ni:Ti:Mn=1.8:0.02:0.125:0.125:0.75となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0079】
上記により得られたリチウムカルシウムニッケルチタンマンガン複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名RINT2550V)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、単斜晶系に属する層状岩塩型構造が主相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図8に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。また、最小自乗法により、平均構造である六方晶系として格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。特に、チタンの置換に伴い、実施例1の格子定数と比べて、a軸、c軸長共に顕著に長くなっていることが確認された。
a=2.8558ű0.0004Å
c=14.260ű0.003Å
V=100.72±0.02Å
3
さらに、リートベルト法による結晶構造解析(プログラムRIETAN−FP使用)を行い、空間群C2/mを仮定して格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。
a=4.9434ű0.0010Å
b=8.5551ű0.0010Å
c=5.0302ű0.0005Å
β=109.216°±0.012°
V=200.88±0.05Å
3【0080】
また、走査型電子顕微鏡(JEOL製、商品名JCM−6000)により化学組成を調べたところ、粉体粒子が、カルシウム、ニッケル、チタン、マンガンを含有していることを確認され、粉体試料全体の組成比として、Ca:Ni:Ti:Mn=0.02:0.125:0.125:0.75(m=0.125、n=0.125)であることが判明した。このときのSEM−EDSスペクトルを
図9に示す。
【0081】
(リチウム二次電池)
このようにして得られたリチウムカルシウムニッケルチタンマンガン複合酸化物を活物質とし、実施例1と同じ構成要素・構造のリチウム二次電池(コイン型セル)を作製した。
【0082】
作製されたリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位5.0V−2.0Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に充放電の容量が増大していき、10サイクル目で容量が最大となった。10サイクル目の充電容量259mAh/g、放電容量252mAh/gという高容量が得られることが判明した。また、10サイクル目の放電のエネルギー密度は913Wh/kgであることから、10サイクル目の平均放電電位は、放電のエネルギー密度(839Wh/kg)を放電容量(252mAh/g)で除算することで、(839÷252=3.33)Vであることが明らかとなった。10サイクル目の充放電曲線を
図10に示す。さらに、14サイクル目の放電曲線では、容量の低下は認められず、また、放電エネルギー密度を放電容量で割り算した平均放電電位は3.30Vであり、放電電位の減少はわずかであることが確認された。また、実施例1のリチウムカルシウムニッケルマンガン複合酸化物と比べて、チタンを置換することで、平均放電電位はやや低下するものの、同等の高容量が得られることが明らかとなった。以上から、本発明のリチウムカルシウムニッケルチタンマンガン複合酸化物活物質が、高容量のリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
【0083】
<実施例4>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムマグネシウムニッケルマンガン複合酸化物(組成式:Li
1.24Mg
0.01Ni
0.19Mn
0.56O
2)の合成)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、塩化マグネシウム(MgCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Mg:Ni:Mn=1.8:0.02:0.25:0.75となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0084】
上記により得られた複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名RINT2550V)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、単斜晶系に属する層状岩塩型構造の単一相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図11に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。また、最小自乗法により、平均構造である六方晶系として格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。
a=2.8527ű0.0004Å
c=14.242ű0.002Å
V=100.37±0.01Å
3
さらに、リートベルト法による結晶構造解析(プログラムRIETAN−FP使用)を行い、空間群C2/mを仮定して格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。
a=4.9438ű0.0009Å
b=8.5594ű0.0011Å
c=5.0291ű0.0004Å
β=109.306°±0.011°
V=200.84±0.05Å
3【0085】
また、走査型電子顕微鏡(JEOL製、商品名JCM−6000)により化学組成を調べたところ、粉体粒子が、マグネシウム、ニッケル、マンガンを含有していることを確認され、粉体試料全体の組成比として、Mg:Ni:Mn=0.02:0.25:0.75(m=0.25)であることが判明した。このときのSEM−EDSスペクトルを
図12に示す。
さらに、ICP分析(HITACHI製、商品名P−4010)により化学分析を行い、モル比は、Li:Mg:Ni:Mn=1.68:0.02:0.25:0.75であることが判明した。この値を、一般式(Li
1+x−2yM
y)(Co
zNi
mTi
nMn
1−m−n−z)
1−xO
2(式中、M、x、y、z、m及びnは、それぞれ、前記の意味を有する)で表記し直すと、x=0.26、y=0.01、z=0、m=0.25、n=0となることが確認された。また、るつぼ材由来のアルミニウム、ケイ素などは検出されなかった。
【0086】
(リチウム二次電池)
このようにして得られたリチウムマグネシウムニッケルマンガン複合酸化物を活物質とし、実施例1と同じ構成要素・構造のリチウム二次電池(コイン型セル)を作製した。
【0087】
作製されたリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位5.0V−2.0Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に容量が増大していき、10サイクル目で容量が最大となり、10サイクル目の充電容量270mAh/g、放電容量261mAh/gという高容量が得られることが判明した。また、10サイクル目の放電のエネルギー密度は908Wh/kgであることから、10サイクル目の平均放電電位は、放電のエネルギー密度(908Wh/kg)を放電容量(261mAh/g)で除算することで、(908÷261=3.48)Vであることが明らかとなった。10サイクル目の充放電曲線を
図13に示す。さらに、14サイクル目の放電曲線では、容量の低下は認められず、また、放電エネルギー密度を放電容量で割り算した平均放電電位は3.45Vであり、放電電位の減少はわずかであることが確認された。また、実施例1のリチウムカルシウムニッケルマンガン複合酸化物と比べて、マグネシウム置換でも、カルシウムと同等の効果が得られることが明らかとなった。以上から、本発明のリチウムマグネシウムニッケルマンガン複合酸化物活物質が、高容量のリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
また、同条件で作製したリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位4.8−2.5Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に充放電の容量が増大していき、30サイクル目で容量が最大となった。この充放電試験の1サイクル目の充電曲線を
図14に示す。リチウム過剰層状岩塩型構造のリチウムニッケルマンガン複合酸化物、或いはリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物に特徴的な約4.5Vでの電圧平坦部は認められず、単調に電位が増大していく充電曲線であることが確認でき、本発明のリチウムマグネシウムニッケルマンガン複合酸化物活物質が、酸素脱離反応を起こず、酸素原子の配列を維持したままで高容量のリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
また、同条件で作製したリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位4.6−2.5Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に充放電の容量が増大していき、30サイクル目で容量が最大となった。この時の30サイクル目の充電曲線を
図15に示す。30サイクル目で放電容量は、251mAh/gであり、その後の76サイクル目の放電容量が30サイクル目の放電容量に対して95%程度の容量維持率を示すことが確認された。このことから、本発明のリチウムマグネシウムニッケルマンガン複合酸化物活物質が、高容量のリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
【0088】
<実施例5>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムマグネシウムニッケルマンガン複合酸化物の合成)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、塩化マグネシウム(MgCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Mg:Ni:Mn=1.8:0.2:0.25:0.75となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0089】
上記により得られた複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名RINT2550V)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、リチウム過剰組成に特徴的な単斜晶系に属する層状岩塩型構造が主相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図16に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。一方、副相として、リチウムマグネシウムマンガン酸化物に帰属されるピーク(図中*印)が観測され、この仕込み組成がマグネシウムの固溶限界であることが明らかになった。したがって、マグネシウム単独での置換の場合、置換量yは0.13未満であることが確認できた。
【0090】
<実施例6>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムマグネシウムニッケルチタンマンガン複合酸化物の合成)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、塩化マグネシウム(MgCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、二酸化チタン(TiO
2、テイカ製AMT−100、含有量93%)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Mg:Ni:Ti:Mn=1.8:0.02:0.125:0.125:0.75となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0091】
上記により得られた複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名RINT2550V)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、単斜晶系に属する層状岩塩型構造の単一相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図17に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。また、最小自乗法により、平均構造である六方晶系として格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。特に、チタンの置換に伴い、実施例3の格子定数と比べて、a軸、c軸長共に顕著に長くなっていることが確認された。
a=2.8569ű0.0006Å
c=14.264ű0.004Å
V=100.40±0.01Å
3
さらに、リートベルト法による結晶構造解析(プログラムRIETAN−FP使用)を行い、空間群C2/mを仮定して格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。
a=4.9492ű0.0014Å
b=8.5699ű0.0017Å
c=5.0346ű0.0007Å
β=109.203°±0.018°
V=201.66±0.08Å
3【0092】
また、走査型電子顕微鏡(JEOL製、商品名JCM−6000)により化学組成を調べたところ、粉体粒子が、マグネシウム、ニッケル、チタン、マンガンを含有していることを確認され、粉体試料全体の組成比として、Mg:Ni:Ti:Mn=0.02:0.125:0.125:0.75(m=0.125、n=0.125)であることが判明した。このときのSEM−EDSスペクトルを
図18に示す。
【0093】
(リチウム二次電池)
このようにして得られたリチウムマグネシウムニッケルチタンマンガン複合酸化物を活物質とし、実施例1と同じ構成要素・構造のリチウム二次電池(コイン型セル)を作製し、その充放電特性を測定した。
【0094】
作製されたリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位5.0V−2.0Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に充放電の容量が増大していった。10サイクル目の充電容量255mAh/g、放電容量247mAh/gという高容量が得られることが判明した。また、10サイクル目の放電のエネルギー密度は828Wh/kgであることから、10サイクル目の平均放電電位は、放電のエネルギー密度(828Wh/kg)を放電容量(247mAh/g)で除算することで、(828÷247=3.35)Vであることが明らかとなった。10サイクル目の充放電曲線を
図19に示す。さらに、14サイクル目の放電曲線では、容量の低下は認められず、また、放電エネルギー密度を放電容量で割り算した平均放電電位は3.33Vであり、放電電位の減少はわずかであることが確認された。また、実施例4のリチウムマグネシウムニッケルマンガン複合酸化物と比べて、チタンを置換することで、平均放電電位はやや低下するものの、同等の高容量が得られることが明らかとなった。以上から、本発明のリチウムマグネシウムニッケルチタンマンガン複合酸化物活物質が、高容量のリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
【0095】
<実施例7>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムカルシウムマグネシウムニッケルマンガン複合酸化物(組成式:Li
1.22Ca
0.005Mg
0.005Ni
0.19Mn
0.57O
2)の合成)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、塩化カルシウム(CaCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、塩化マグネシウム(MgCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Ca:Mg:Ni:Mn=1.8:0.01:0.01:0.25:0.75となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0096】
上記により得られた複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名RINT2550V)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、単斜晶系に属する層状岩塩型構造の単一相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図20に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。また、最小自乗法により、平均構造である六方晶系として格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。特に、カルシウムとマグネシウムの両方の置換に伴い、実施例1及び実施例3の格子定数と比べて、ほぼ同等であることが確認された。
a=2.8544ű0.0002Å
c=14.245ű0.001Å
V=100.51±0.01Å
3
さらに、リートベルト法による結晶構造解析(プログラムRIETAN−FP使用)を行い、空間群C2/mを仮定して格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。
a=4.9457ű0.0010Å
b=8.5639ű0.0012Å
c=5.0292ű0.0004Å
β=109.287°±0.012°
V=201.06±0.05Å
3
さらに、ICP分析(HITACHI製、商品名P−4010)により化学分析を行い、モル比は、Li:Ca:Mg:Ni:Mn=1.62:0.01:0.01:0.25:0.75であることが判明した。この値を、一般式(Li
1+x−2yM
y)(Co
zNi
mTi
nMn
1−m−n−z)
1−xO
2(式中、M、x、y、z、m及びnは、それぞれ、前記の意味を有する)で表記し直すと、x=0.24、y=0.01、z=0、m=0.25、n=0となることが確認された。また、るつぼ材由来のアルミニウム、ケイ素などは検出されなかった。
【0097】
(リチウム二次電池)
このようにして得られたリチウムカルシウムマグネシウムニッケルマンガン複合酸化物を活物質とし、実施例1と同じ構成要素・構造のリチウム二次電池(コイン型セル)を作製した。
【0098】
作製されたリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位5.0V−2.0Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に充放電の容量が増大していった。12サイクル目の充電容量292mAh/g、放電容量264mAh/gという高容量が得られることが判明した。また、12サイクル目の放電のエネルギー密度は914Wh/kgであることから、12サイクル目の平均放電電位は、放電のエネルギー密度(914Wh/kg)を放電容量(264mAh/g)で除算することで、(914÷264=3.46)Vであることが明らかとなった。12サイクル目の充放電曲線を
図21に示す。さらに、16サイクル目の放電曲線では、容量の低下は認められず、また、放電エネルギー密度を放電容量で割り算した平均放電電位は3.44Vであり、放電電位の減少はわずかであることが確認された。また、実施例1のリチウムカルシウムニッケルマンガン複合酸化物、及び実施例4のリチウムマグネシウムニッケルマンガン複合酸化物と比べて、カルシウムとマグネシウムの両方を置換した場合も、高容量が得られることが明らかとなった。以上から、本発明のリチウムカルシウムマグネシウムニッケルマンガン複合酸化物活物質が、高容量のリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
また、同条件で作製したリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位4.8−2.5Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に充放電の容量が増大していき、28サイクル目で容量が最大となった。この充放電試験の1サイクル目の充電曲線を
図22に示す。リチウム過剰層状岩塩型構造のリチウムニッケルマンガン複合酸化物、或いはリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物に特徴的な約4.5Vでの電圧平坦部は認められず、単調に電位が増大していく充電曲線であることが確認でき、本発明のリチウムカルシウムニッケルマンガン複合酸化物活物質が、酸素脱離反応を起こず、酸素原子の配列を維持したままで高容量のリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
また、同条件で作製したリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位4.6−2.5Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に充放電の容量が増大していき、24サイクル目で容量が最大となった。この時の24サイクル目の充電曲線を
図23に示す。24サイクル目で放電容量は、253mAh/gであり、その後の74サイクル目の放電容量が24サイクル目の放電容量に対して95%程度の容量維持率を示すことが確認された。また、実施例1のリチウムカルシウムニッケルマンガン複合酸化物、及び実施例4のリチウムマグネシウムニッケルマンガン複合酸化物と比べて、ほぼ同等の高容量が得られることが明らかとなった。このことから、本発明のリチウムカルシウムマグネシウムニッケルマンガン複合酸化物活物質が、高容量のリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
【0099】
<実施例8>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムカルシウムマグネシウムニッケルマンガン複合酸化物の合成)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、塩化カルシウム(CaCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、塩化マグネシウム(MgCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Ca:Mg:Ni:Mn=1.8:0.03:0.03:0.25:0.75となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0100】
上記により得られたリチウムカルシウムニッケルマンガン複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名SmartLab)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、リチウム過剰組成に特徴的な単斜晶系に属する層状岩塩型構造が主相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図24に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。一方、副相として、リチウムニッケルマンガン酸化物に帰属されるピーク(図中*印)が観測され、この仕込み組成がマグネシウムとカルシウムが1:1で両方固溶する場合の固溶限界であることが明らかになった。
【0101】
<実施例9>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムカルシウムマグネシウムニッケルチタンマンガン複合酸化物の合成)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、塩化カルシウム(CaCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、塩化マグネシウム(MgCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、二酸化チタン(TiO
2、テイカ製AMT−100、含有量93%)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Ca:Mg:Ni:Ti:Mn=1.8:0.01:0.01:0.125:0.125:0.75となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0102】
上記により得られた複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名RINT2550V)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、単斜晶系に属する層状岩塩型構造の単一相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図25に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。また、最小自乗法により、平均構造である六方晶系として格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。特に、チタンの置換に伴い、実施例5の格子定数と比べて、a軸、c軸長共に顕著に長くなっていることが確認され、またカルシウムとマグネシウムの両方の置換で、実施例2及び実施例4に近い値であった。
a=2.8560ű0.0004Å
c=14.264ű0.004Å
V=100.76±0.02Å
3
さらに、リートベルト法による結晶構造解析(プログラムRIETAN−FP使用)を行い、空間群C2/mを仮定して格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。
a=4.9508ű0.0018Å
b=8.5700ű0.0019Å
c=5.0360ű0.0008Å
β=109.24°±0.02°
V=201.73±0.09Å
3
そして、以上のような確認からみて、実施例6の複合酸化物についても実施例2や実施例4と同様の、高容量が可能で、かつ、サイクルの進行に伴う放電曲線の変化が小さいという性能が期待できると言える。
【0103】
<実施例10>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムカルシウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物(組成式:Li
1.23Ca
0.01Co
0.14Ni
0.13Mn
0.49O
2)の合成)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、塩化カルシウム(CaCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、酢酸コバルト四水和物((CH
3COO)
2Co・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Ca:Mg:Ni:Mn=1.8:0.02:0.17:0.17:0.66となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0104】
上記により得られた複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名SmartLab)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、単斜晶系に属する層状岩塩型構造の単一相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図26に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。また、リートベルト法による結晶構造解析(プログラムRIETAN−FP使用)を行い、空間群C2/mを仮定して格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。
a=4.9328ű0.0002Å
b=8.5402ű0.0003Å
c=5.0233ű0.0001Å
β=109.260°±0.002°
V=199.775±0.012Å
3
さらに、ICP分析(HITACHI製、商品名P−4010)により化学分析を行い、モル比は、Li:Ca:Co:Ni:Mn=1.63:0.02:0.18:0.17:0.65であることが判明した。この値を、一般式(Li
1+x−2yM
y)(Co
zNi
mTi
nMn
1−m−n−z)
1−xO
2(式中、M、x、y、z、m及びnは、それぞれ、前記の意味を有する)で表記し直すと、x=0.25、y=0.01、z=0.18、m=0.17、n=0となることが確認された。また、るつぼ材由来のアルミニウム、ケイ素などは検出されなかった。
【0105】
(リチウム二次電池)
このようにして得られたリチウムカルシウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物を活物質とし、実施例1と同じ構成要素・構造のリチウム二次電池(コイン型セル)を作製した。
【0106】
作製されたリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位4.8V−2.0Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に充放電の容量が増大していった。7サイクル目の充電容量249mAh/g、放電容量242mAh/gという高容量が得られることが判明した。また、7サイクル目の放電のエネルギー密度は840Wh/kgであることから、10サイクル目の平均放電電位は、放電のエネルギー密度(840Wh/kg)を放電容量(242mAh/g)で除算することで、(840÷242=3.47)Vであることが明らかとなった。7サイクル目の充放電曲線を
図27に示す。さらに、11サイクル目の放電曲線では、容量の低下は認められず、また、放電エネルギー密度を放電容量で割り算した平均放電電位は3.44Vであり、放電電位の減少はわずかであることが確認された。以上から、本発明のリチウムカルシウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物活物質が、高容量のリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
【0107】
<実施例11>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムマグネシウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物(組成式:Li
1.22Mg
0.01Co
0.14Ni
0.12Mn
0.50O
2)の合成)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、塩化マグネシウム(MgCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、酢酸コバルト四水和物((CH
3COO)
2Co・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Mg:Co:Ni:Mn=1.8:0.02:0.17:0.17:0.66となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0108】
上記により得られた複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名SmartLab)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、単斜晶系に属する層状岩塩型構造の単一相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図28に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。また、リートベルト法による結晶構造解析(プログラムRIETAN−FP使用)を行い、空間群C2/mを仮定して格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。また、実施例10のカルシウム置換体の格子体積と比べると、マグネシウムイオンがカルシウムイオンよりも小さいことを反映して、やや格子体積が小さいことが確認され、マグネシウムが構造中に置換されていることが確認できた。
a=4.9304ű0.0002Å
b=8.5362ű0.0003Å
c=5.0210ű0.0001Å
β=109.270°±0.002°
V=199.478±0.012Å
3
さらに、ICP分析(HITACHI製、商品名P−4010)により化学分析を行い、モル比は、Li:Mg:Co:Ni:Mn=1.62:0.02:0.18:0.16:0.66であることが判明した。この値を、一般式(Li
1+x−2yM
y)(Co
zNi
mTi
nMn
1−m−n−z)
1−xO
2(式中、M、x、y、z、m及びnは、それぞれ、前記の意味を有する)で表記し直すと、x=0.24、y=0.01、z=0.18、m=0.16、n=0となることが確認された。また、るつぼ材由来のアルミニウム、ケイ素などは検出されなかった。
【0109】
(リチウム二次電池)
このようにして得られたリチウムマグネシウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物を活物質とし、実施例1と同じ構成要素・構造のリチウム二次電池(コイン型セル)を作製した。
【0110】
作製されたリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位4.8V−2.0Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に充放電の容量が増大していった。15サイクル目の充電容量237mAh/g、放電容量229mAh/gという高容量が得られることが判明した。また、15サイクル目の放電のエネルギー密度は783Wh/kgであることから、15サイクル目の平均放電電位は、放電のエネルギー密度(783Wh/kg)を放電容量(229mAh/g)で除算することで、(783÷229=3.42)Vであることが明らかとなった。15サイクル目の充放電曲線を
図29に示す。さらに、19サイクル目の放電曲線では、容量の低下は認められず、また、放電エネルギー密度を放電容量で割り算した平均放電電位は3.39Vであり、放電電位の減少はわずかであることが確認された。以上から、本発明のリチウムマグネシウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物活物質が、高容量のリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
【0111】
<実施例12>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムカルシウムマグネシウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物(組成式:Li
1.22Ca
0.005Mg
0.005Co
0.14Ni
0.13Mn
0.49O
2)の合成)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、塩化カルシウム(CaCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、塩化マグネシウム(MgCl
2、高純度化学研究所製、純度99.9%以上)、酢酸コバルト四水和物((CH
3COO)
2Co・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Ca:Mg:Co:Ni:Mn=1.8:0.01:0.01:0.17:0.17:0.66となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0112】
上記により得られた複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名SmartLab)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、単斜晶系に属する層状岩塩型構造の単一相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図30に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。また、リートベルト法による結晶構造解析(プログラムRIETAN−FP使用)を行い、空間群C2/mを仮定して格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。実施例10及び実施例11のカルシウム置換体、及びマグネシウム置換体の格子体積と比較すると、両者の間の大きさであることが確認され、カルシウムとマグネシウムの両方が置換した効果であることが確認された。
a=4.9308ű0.0002Å
b=8.5361ű0.0003Å
c=5.0203ű0.0001Å
β=109.258°±0.002°
V=199.478±0.012Å
3
さらに、ICP分析(HITACHI製、商品名P−4010)により化学分析を行い、モル比は、Li:Ca:Mg:Co:Ni:Mn=1.62:0.01:0.01:0.18:0.17:0.65であることが判明した。この値を、一般式(Li
1+x−2yM
y)(Co
zNi
mTi
nMn
1−m−n−z)
1−xO
2(式中、M、x、y、z、m及びnは、それぞれ、前記の意味を有する)で表記し直すと、x=0.24、y=0.01、z=0.18、m=0.17、n=0となることが確認された。また、るつぼ材由来のアルミニウム、ケイ素などは検出されなかった。
【0113】
(リチウム二次電池)
このようにして得られたリチウムカルシウムマグネシウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物を活物質とし、実施例1と同じ構成要素・構造のリチウム二次電池(コイン型セル)を作製した。
【0114】
作製されたリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位4.8V−2.0Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に充放電の容量が増大していった。7サイクル目の充電容量252mAh/g、放電容量244mAh/gという高容量が得られることが判明した。また、7サイクル目の放電のエネルギー密度は844Wh/kgであることから、10サイクル目の平均放電電位は、放電のエネルギー密度(844Wh/kg)を放電容量(244mAh/g)で除算することで、(844÷244=3.46)Vであることが明らかとなった。7サイクル目の充放電曲線を
図31に示す。さらに、11サイクル目の放電曲線では、容量の低下は認められず、また、放電エネルギー密度を放電容量で割り算した平均放電電位は3.44Vであり、放電電位の減少はわずかであることが確認された。また、実施例10のリチウムカルシウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物、及び実施例11のリチウムマグネシウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物と比べて、カルシウムとマグネシウムの両方を置換した場合が、最も高容量かつ高エネルギー密度が得られることが明らかとなった。以上から、本発明のリチウムカルシウムマグネシウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物活物質が、高容量のリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
【0115】
<比較例1>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物の合成)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Ni:Mn=2.0:0.25:0.75となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0116】
上記により得られた複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名RINT2550V)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、単斜晶系に属する層状岩塩型構造が主相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図32に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。また、最小自乗法により、平均構造である六方晶系として格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。この値は、公知のリチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物の報告と良く一致していた。一方、実施例1のカルシウム置換体、実施例4のマグネシウム置換体の格子定数と比べると、a軸、c軸長共に最も短く、無置換体のものは、格子体積が小さいことが確認できた。
a=2.8516ű0.0004Å
c=14.238ű0.003Å
V=100.27±0.02Å
3
さらに、リートベルト法による結晶構造解析(プログラムRIETAN−FP使用)を行い、空間群C2/mを仮定して格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。
a=4.9351ű0.0008Å
b=8.5454ű0.0004Å
c=5.0218ű0.0002Å
β=109.233°±0.005°
V=199.96±0.02Å
3【0117】
また、走査型電子顕微鏡(JEOL製、商品名JCM−6000)により化学組成を調べたところ、粉体粒子が、ニッケル、マンガンを含有していることを確認され、粉体試料全体の組成比として、Ni:Mn=0.25:0.75(m=0.25)であることが判明した。このときのSEM−EDSスペクトルを
図33に示す。
さらに、ICP分析(HITACHI製、商品名P−4010)により化学分析を行い、モル比は、Li:Ni:Mn=1.75:0.25:0.75であることが判明した。この値を、一般式(Li
1+x−2yM
y)(Co
zNi
mTi
nMn
1−m−n−z)
1−xO
2(式中、M、x、y、z、m及びnは、それぞれ、前記の意味を有する)で表記し直すと、x=0.27、y=0、z=0、m=0.25、n=0となることが確認された。また、るつぼ材由来のアルミニウム、ケイ素などは検出されなかった。
【0118】
(リチウム二次電池)
このようにして得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を活物質とし、実施例1と同じ構成要素・構造のリチウム二次電池(コイン型セル)を作製し、その充放電特性を測定した。
【0119】
作製されたリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位5.0V−2.0Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、10サイクル目の充電容量253mAh/g、放電容量243mAh/gという高容量が得られることが判明した。また、10サイクル目の放電のエネルギー密度は840Wh/kgであることから、10サイクル目の平均放電電位は、放電のエネルギー密度(840Wh/kg)を放電容量(243mAh/g)で除算することで、(840÷243=3.46)Vであることが明らかとなった。10サイクル目の充放電曲線を
図34に示す。一方、14サイクル目の放電曲線では、容量の低下は認められないものの、放電エネルギーを放電容量で割り算した平均放電電位は3.33Vであり、放電電位の減少が顕著であることが確認された。また、実施例1、実施例3のカルシウム、マグネシウムを置換したリチウムニッケルマンガン複合酸化物と比べて、容量も低く、アルカリ土類金属元素を置換していない複合酸化物系では実用上問題があることが確認された。
また、同条件で作製したリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位4.6−2.5Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に充放電の容量が増大していき、40サイクル目で容量が最大となった。この時の40サイクル目の充電曲線を
図35に示す。40サイクル目で放電容量は、239mAh/gであり、その後の82サイクル目の放電容量が40サイクル目の放電容量に対して94%程度の容量維持率を示すことが確認された。このことから、実施例1、実施例4、或いは実施例7に示す本発明の活物質が、高容量かつ容量維持率が高いリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
<比較例2>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物の合成)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Ni:Mn=1.8:0.25:0.75となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0120】
上記により得られた複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名SmartLab)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、単斜晶系に属する層状岩塩型構造が主相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図36に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。
【0121】
また、走査型電子顕微鏡(JEOL製、商品名JCM−6000)により化学組成を調べたところ、粉体粒子が、ニッケル、マンガンを含有していることを確認され、また、粉体形状は、高い結晶性を有する、1−2ミクロン程度の一次粒子から形成されていることが確認された。
【0122】
(リチウム二次電池)
このようにして得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を活物質とし、実施例1と同じ構成要素・構造のリチウム二次電池(コイン型セル)を作製し、その充放電特性を測定した。
【0123】
作製されたリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位4.8−2.0Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に充放電の容量が増大していき、13サイクル目で容量が最大となった。この時の13サイクル目の充電曲線を
図37に示す。13サイクル目で放電容量は、241mAh/gであることが確認された。このことから、実施例1、実施例4、或いは実施例7に示す本発明の活物質と比較すると、仕込みのリチウム量が同じ1.8であっても、本発明の活物質の方が高容量であり、リチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
<比較例3>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物の合成)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、酢酸コバルト四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Co:Ni:Mn=2.0:0.17:0.17:0.66となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0124】
上記により得られた複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名SmartLab)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、単斜晶系に属する層状岩塩型構造が主相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図38に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。また、リートベルト法による結晶構造解析(プログラムRIETAN−FP使用)を行い、空間群C2/mを仮定して格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。また、実施例10、実施例11、実施例12のカルシウムやマグネシウムを置換した場合の格子体積と比べると、最も小さく、本発明の化合物が、構造中にカルシウム、マグネシウムが置換されていることが確認された。
a=4.9262ű0.0002Å
b=8.5276ű0.0002Å
c=5.0182ű0.0001Å
β=109.262°±0.002°
V=199.004±0.010Å
3【0125】
また、走査型電子顕微鏡(JEOL製、商品名JCM−6000)により化学組成を調べたところ、粉体粒子が、ニッケル、マンガンを含有していることを確認され、粉体試料全体の組成比として、Co:Ni:Mn=0.17:0.17:0.66(m=0.17)であることが判明した。
さらに、ICP分析(HITACHI製、商品名P−4010)により化学分析を行い、モル比は、Li:Co:Ni:Mn=1.75:0.18:0.17:0.65であることが判明した。この値を、一般式(Li
1+x−2yM
y)(Co
zNi
mTi
nMn
1−m−n−z)
1−xO
2(式中、M、x、y、z、m及びnは、それぞれ、前記の意味を有する)で表記し直すと、x=0.27、y=0、z=0.18、m=0.17、n=0となることが確認された。また、るつぼ材由来のアルミニウム、ケイ素などは検出されなかった。
【0126】
(リチウム二次電池)
このようにして得られたリチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物を活物質とし、実施例1と同じ構成要素・構造のリチウム二次電池(コイン型セル)を作製し、その充放電特性を測定した。
【0127】
作製されたリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位4.8−2.0Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、サイクル毎に充放電の容量が増大していき、16サイクル目で容量が最大となった。この時の16サイクル目の充電曲線を
図39に示す。16サイクル目で放電容量は、224mAh/gであり、その後の24サイクルでは容量維持率98%程度を示すことが確認された。このことから、実施例10、実施例11、或いは実施例12に示す本発明の活物質が、高容量なリチウム二次電池材料として有用であることが明らかとなった。
【0128】
<比較例4>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物の合成)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、酢酸コバルト四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Co:Ni:Mn=1.8:0.17:0.17:0.66となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0129】
上記により得られた複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名SmartLab)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、単斜晶系に属する層状岩塩型構造が主相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図40に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。
【0130】
また、走査型電子顕微鏡(JEOL製、商品名JCM−6000)により化学組成を調べたところ、粉体粒子が、ニッケル、コバルト、マンガンを含有していることを確認され、また、粉体形状は、高い結晶性を有する、1−2ミクロン程度の一次粒子から形成されていることが確認された。
【0131】
(リチウム二次電池)
このようにして得られたリチウムコバルトニッケルマンガン複合酸化物を活物質とし、実施例1と同じ構成要素・構造のリチウム二次電池(コイン型セル)を作製し、その充放電特性を測定した。
【0132】
作製されたリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位4.8−2.0Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。この時の6サイクル目の充電曲線を
図41に示す。放電容量は、238mAh/gであり、本発明のカルシウム及び/又はマグネシウム置換体と比べると容量が明らかに低下していた。この結果から、実施例10、実施例11、実施例12と仕込みのリチウム量が同じ場合であっても、カルシウム又はマグネシウムが置換していないと容量が低下することを示しており、本発明のカルシウム及び/又はマグネシウム置換による効果が確認できた。
【0133】
<比較例5>
(リチウム過剰層状岩塩型構造を有するリチウムニッケルチタンマンガン複合酸化物の合成)
炭酸リチウム(Li
2CO
3、レアメタリック製、純度99.99%)、酢酸ニッケル四水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O、和光純薬製、和光特級)、二酸化チタン(TiO
2、テイカ製AMT−100、含有量93%)、炭酸マンガン(MnCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の各粉末を、原子比でLi:Ni:Ti:Mn=2.0:0.125:0.125:0.75となるように秤量した。これらを乳鉢中で、エタノールを媒体として湿式混合したのち、ニッカトー製、グレードSSA−S、型番C3のアルミナるつぼに充填し、蓋をしたのち、マッフル炉(ヤマト科学製、FP310)を用いて、はじめに空気中300℃で3時間加熱した。その後、電気炉中で自然放冷し、その後、エタノールを用いた湿式粉砕を行い、さらに600℃12時間、800℃12時間、900℃12時間、再度900℃12時間加熱を行い、試料を得た。
【0134】
上記により得られた複合酸化物について、粉末X線回折装置(リガク製、商品名RINT2550V)により結晶構造を調べたところ、良好な結晶性を有する、単斜晶系に属する層状岩塩型構造が主相であることが明らかとなった。この時の粉末X線回折図形を
図42に示す。単斜晶系に帰属されるピークが20°から35°にかけて観測され、リチウム過剰組成であることが確認された。また、最小自乗法により、平均構造である六方晶系として格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。この値は、比較例1のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の値と比べ、a軸、c軸長共に顕著に長く、一方、実施例2のカルシウム置換体、実施例4のマグネシウム置換体の格子定数よりも、さらに長いことが明らかとなった。このことから、実施例2、実施例4のリチウム層へのカルシウム、マグネシウムの置換が、格子定数の顕著な差異により確認することができた。
a=2.8596ű0.0002Å
c=14.273ű0.001Å
V=101.08±0.01Å
3
さらに、リートベルト法による結晶構造解析(プログラムRIETAN−FP使用)を行い、空間群C2/mを仮定して格子定数の精密化を行ったところ、以下の値となり、格子定数からもリチウム過剰組成を有する層状岩塩型構造であることが確認された。
a=4.9511ű0.0006Å
b=8.5667ű0.0006Å
c=5.0366ű0.0003Å
β=109.182°±0.008°
V=201.77±0.03Å
3【0135】
また、走査型電子顕微鏡(JEOL製、商品名JCM−6000)により化学組成を調べたところ、粉体粒子が、ニッケル、チタン、マンガンを含有していることを確認され、粉体試料全体の組成比として、Ni:Ti:Mn=0.125:0.125:0.75(m=0.125、n=0.125)であることが判明した。このときのSEM−EDSスペクトルを
図43に示す。また、粉末X線回折データを用いて、リートベルト法(プログラムRIETAN−FP使用)による結晶構造解析を行った結果、化学式Li
1+x(Ni
mTi
nMn
1−m−n)
1−xO
2におけるリチウム量x=0.30であることが確認された。
【0136】
(リチウム二次電池)
このようにして得られたリチウムニッケルチタンマンガン複合酸化物を活物質とし、実施例1と同じ構成要素・構造のリチウム二次電池(コイン型セル)を作製し、その充放電特性を測定した。
【0137】
作製されたリチウム二次電池について、25℃の温度条件下で、電流密度10mA/g、リチウム基準の電位5.0V−2.0Vのカットオフ電位で定電流充放電試験を行った。その結果、10サイクル目の充電容量261mAh/g、放電容量256mAh/gという高容量が得られることが判明した。また、10サイクル目の放電のエネルギー密度は855Wh/kgであることから、10サイクル目の平均放電電位は、放電のエネルギー密度(855Wh/kg)を放電容量(256mAh/g)で除算することで、(855÷256=3.34)Vであることが明らかとなった。10サイクル目の充放電曲線を
図44に示す。一方、14サイクル目の放電曲線では、容量の低下は認められないものの、放電エネルギー密度を放電容量で割り算した平均放電電位は3.21Vであり、放電電位の減少が顕著であることが確認された。以上から、アルカリ土類金属元素を置換していない複合酸化物系ではサイクルに伴って遷移金属原子の配列が維持できず、次第にスピネル化が進行しており、実用上問題があることが確認された。