(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コンピュータは、前記画像を得る際の前記荷電粒子ビームの走査方向を、前記試料片移設手段によって保持された前記試料片の姿勢に応じた回転角度で回転させるように前記荷電粒子ビーム照射光学系を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
前記コンピュータは、前記荷電粒子ビームの走査方向を前記回転角度に回転して得られる前記画像において、前記試料片の前記端部のエッジを認識し、該エッジに基づいて前記整形加工領域を設定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の荷電粒子ビーム装置。
前記コンピュータは、前記整形加工領域に前記荷電粒子ビームを照射して前記試料片を整形加工した後に、前記試料片の観察面に前記荷電粒子ビームを照射して前記観察面を加工するように前記荷電粒子ビーム照射光学系を制御する、ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
前記コンピュータは、前記試料片移設手段によって保持された前記試料片の表面に露出したパターンを認識し、該パターンに干渉しないように前記整形加工領域を設定する、ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る自動で試料片を作製可能な荷電粒子ビーム装置について添付図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10の構成図である。本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10は、
図1に示すように、内部を真空状態に維持可能な試料室11と、試料室11の内部において試料Sおよび試料片ホルダPを固定可能なステージ12と、ステージ12を駆動するステージ駆動機構13と、を備えている。荷電粒子ビーム装置10は、試料室11の内部における所定の照射領域(つまり走査範囲)内の照射対象に集束イオンビーム(FIB)を照射する集束イオンビーム照射光学系14を備えている。荷電粒子ビーム装置10は、試料室11の内部における所定の照射領域内の照射対象に電子ビーム(EB)を照射する電子ビーム照射光学系15を備えている。荷電粒子ビーム装置10は、集束イオンビームまたは電子ビームの照射によって照射対象から発生する二次荷電粒子(二次電子、二次イオン)Rを検出する検出器16を備えている。荷電粒子ビーム装置10は、照射対象の表面にガスGを供給するガス供給部17を備えている。ガス供給部17は具体的には外径200μm程度のノズル17aなどである。荷電粒子ビーム装置10は、ステージ12に固定された試料Sから微小な試料片Qを取り出し、試料片Qを保持して試料片ホルダPに移設するニードル18と、ニードル18を駆動して試料片Qを搬送するニードル駆動機構19と、ニードル18に流入する荷電粒子ビームの流入電流(吸収電流とも言う)を検出し、流入電流信号はコンピュータに送り画像化する吸収電流検出器20と、を備えている。
このニードル18とニードル駆動機構19を合わせて試料片移設手段と呼ぶこともある。荷電粒子ビーム装置10は、検出器16によって検出された二次荷電粒子Rに基づく画像データなどを表示する表示装置21と、コンピュータ22と、入力デバイス23と、を備えている。
なお、集束イオンビーム照射光学系14および電子ビーム照射光学系15の照射対象は、ステージ12に固定された試料S、試料片Q、および照射領域内に存在するニードル18や試料片ホルダPなどである。
【0017】
この実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10は、照射対象の表面に集束イオンビームを走査しながら照射することによって、被照射部の画像化やスパッタリングによる各種の加工(掘削、トリミング加工など)と、デポジション膜の形成などが実行可能である。荷電粒子ビーム装置10は、試料Sから透過電子顕微鏡による透過観察用の試料片Q(例えば、薄片試料、針状試料など)や電子ビーム利用の分析試料片を形成する加工を実行可能である。荷電粒子ビーム装置10は、試料片ホルダPに移設された試料片Qを、透過電子顕微鏡による透過観察に適した所望の厚さ(例えば、5〜100nmなど)の薄膜とする加工が実行可能である。荷電粒子ビーム装置10は、試料片Qおよびニードル18などの照射対象の表面に集束イオンビームまたは電子ビームを走査しながら照射することによって、照射対象の表面の観察を実行可能である。
吸収電流検出器20は、プリアンプを備え、ニードルの流入電流を増幅し、コンピュータ22に送る。吸収電流検出器20により検出されるニードル流入電流と荷電粒子ビームの走査と同期した信号により、表示装置21にニードル形状の吸収電流画像を表示でき、ニードル形状や先端位置特定が行える。
【0018】
図2は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10において、集束イオンビームを試料S表面(斜線部)に照射して形成された、試料Sから摘出される前の試料片Qを示す平面図である。符号Fは集束イオンビームによる加工枠、つまり、集束イオンビームの走査範囲を示し、その内側(白色部)が集束イオンビーム照射によってスパッタ加工されて掘削された加工領域Hを示している。符号Refは、試料片Qを形成する(掘削しないで残す)位置を示すレファレンスマーク(基準点)であり、例えば、後述するデポジション膜(例えば、一辺1μmの正方形)に集束イオンビームによって例えば直径30nmの微細穴を設けた形状などであり、集束イオンビームや電子ビームによる画像ではコントラスト良く認識することができる。試料片Qの概略の位置に知るにはデポジション膜を利用し、精密な位置合わせには微細穴を利用する。試料Sにおいて試料片Qは、試料Sに接続される支持部Qaを残して側部側および底部側の周辺部が削り込まれて除去されるようにエッチング加工されており、支持部Qaによって試料Sに片持ち支持されている。試料片Qの長手方向の寸法は、例えば、10μm、15μm、20μm程度で、幅(厚さ)は、例えば、500nm、1μm、2μm、3μm程度の微小な試料片である。
【0019】
試料室11は、排気装置(図示略)によって内部を所望の真空状態になるまで排気可能であるとともに、所望の真空状態を維持可能に構成されている。
ステージ12は、試料Sを保持する。ステージ12は、試料片ホルダPを保持するホルダ固定台12aを備えている。このホルダ固定台12aは複数の試料片ホルダPを搭載できる構造であってもよい。
図3は試料片ホルダPの平面図であり、
図4は側面図である。試料片ホルダPは、切欠き部31を有する略半円形板状の基部32と、切欠き部31に固定される試料台33とを備えている。基部32は、例えば金属によって直径3mmおよび厚さ50μmなどの円形板状から形成されている。試料台33は、例えばシリコンウェハから半導体製造プロセスによって形成され、導電性の接着剤によって切欠き部31に貼着されている。試料台33は櫛歯形状であり、離間配置されて突出する複数(例えば、5本、10本、15本、20本など)で、試料片Qが移設される柱状部(以下、ピラーとも言う)34を備えている。
各柱状部34の幅を違えておくことにより、各柱状部34に移設した試料片Qと柱状部34の画像を対応付けて、さらに対応する試料片ホルダPと対応付けてコンピュータ22に記憶させておくことにより、1個の試料Sから多数個の試料片Qを作製した場合であっても間違わずに認識でき、後続する透過電子顕微鏡等の分析を該当する試料片Qと試料S上の摘出箇所との対応付けも間違いなく行なえる。各柱状部34は、例えば先端部の厚さは10μm以下、5μm以下などに形成され、先端部に取り付けられる試料片Qを保持する。
なお、基部32は、上記のような直径3mmおよび厚さ50μmなどの円形板状に限定されることはなく、例えば長さ5mm、高さ2mm、厚さ50μmなどの矩形板状であってもよい。要するに、基部32の形状は、後続する透過電子顕微鏡に導入するステージ12に搭載できる形状であるとともに、試料台33に搭載した試料片Qの全てがステージ12の可動範囲内に位置するような形状であればよい。このような形状の基部32によれば、試料台33に搭載した全ての試料片Qを透過電子顕微鏡で観察することができる。
【0020】
ステージ駆動機構13は、ステージ12に接続された状態で試料室11の内部に収容されており、コンピュータ22から出力される制御信号に応じてステージ12を所定軸に対して変位させる。ステージ駆動機構13は、少なくとも水平面に平行かつ互いに直交するX軸およびY軸と、X軸およびY軸に直交する鉛直方向のZ軸とに沿って平行にステージ12を移動させる移動機構13aを備えている。ステージ駆動機構13は、ステージ12をX軸またはY軸周りに傾斜させる傾斜機構13bと、ステージ12をZ軸周りに回転させる回転機構13cと、を備えている。
【0021】
集束イオンビーム照射光学系14は、試料室11の内部においてビーム出射部(図示略)を、照射領域内のステージ12の鉛直方向上方の位置でステージ12に臨ませるとともに、光軸を鉛直方向に平行にして、試料室11に固定されている。これによって、ステージ12に載置された試料S、試料片Q、および照射領域内に存在するニードル18などの照射対象に鉛直方向上方から下方に向かい集束イオンビームを照射可能である。また、荷電粒子ビーム装置10は、上記のような集束イオンビーム照射光学系14の代わりに他のイオンビーム照射光学系を備えてもよい。イオンビーム照射光学系は、上記のような集束ビームを形成する光学系に限定されない。イオンビーム照射光学系は、例えば、光学系内に定型の開口を有するステンシルマスクを設置して、ステンシルマスクの開口形状の成形ビームを形成するプロジェクション型のイオンビーム照射光学系であってもよい。このようなプロジェクション型のイオンビーム照射光学系によれば、試料片Qの周辺の加工領域に相当する形状の成形ビームを精度良く形成でき、加工時間が短縮される。
集束イオンビーム照射光学系14は、イオンを発生させるイオン源14aと、イオン源14aから引き出されたイオンを集束および偏向させるイオン光学系14bと、を備えている。イオン源14aおよびイオン光学系14bは、コンピュータ22から出力される制御信号に応じて制御され、集束イオンビームの照射位置および照射条件などがコンピュータ22によって制御される。イオン源14aは、例えば、液体ガリウムなどを用いた液体金属イオン源やプラズマ型イオン源、ガス電界電離型イオン源などである。イオン光学系14bは、例えば、コンデンサレンズなどの第1静電レンズと、静電偏向器と、対物レンズなどの第2静電レンズと、などを備えている。イオン源14aとして、プラズマ型イオン源を用いた場合、大電流ビームによる高速な加工が実現でき、大きな試料Sの摘出に好適である。
【0022】
電子ビーム照射光学系15は、試料室11の内部においてビーム出射部(図示略)を、照射領域内のステージ12の鉛直方向に対して所定角度(例えば60°)傾斜した傾斜方向でステージ12に臨ませるとともに、光軸を傾斜方向に平行にして、試料室11に固定されている。これによって、ステージ12に固定された試料S、試料片Q、および照射領域内に存在するニードル18などの照射対象に傾斜方向の上方から下方に向かい電子ビームを照射可能である。
電子ビーム照射光学系15は、電子を発生させる電子源15aと、電子源15aから射出された電子を集束および偏向させる電子光学系15bと、を備えている。電子源15aおよび電子光学系15bは、コンピュータ22から出力される制御信号に応じて制御され、電子ビームの照射位置および照射条件などがコンピュータ22によって制御される。電子光学系15bは、例えば、電磁レンズや偏向器などを備えている。
【0023】
なお、電子ビーム照射光学系15と集束イオンビーム照射光学系14の配置を入れ替えて、電子ビーム照射光学系15を鉛直方向に、集束イオンビーム照射光学系14を鉛直方向に所定角度傾斜した傾斜方向に配置してもよい。
【0024】
検出器16は、試料Sおよびニードル18などの照射対象に集束イオンビームや電子ビームが照射された時に照射対象から放射される二次荷電粒子(二次電子および二次イオン)Rの強度(つまり、二次荷電粒子の量)を検出し、二次荷電粒子Rの検出量の情報を出力する。検出器16は、試料室11の内部において二次荷電粒子Rの量を検出可能な位置、例えば照射領域内の試料Sなどの照射対象に対して斜め上方の位置などに配置され、試料室11に固定されている。
【0025】
ガス供給部17は試料室11に固定されており、試料室11の内部においてガス噴射部(ノズルとも言う)を有し、ステージ12に臨ませて配置されている。ガス供給部17は、集束イオンビームによる試料Sのエッチングを試料Sの材質に応じて選択的に促進するためのエッチング用ガスと、試料Sの表面に金属または絶縁体などの堆積物によるデポジション膜を形成するためのデポジション用ガスなどを試料Sに供給可能である。例えば、シリコン系の試料Sに対するフッ化キセノンと、有機系の試料Sに対する水と、などのエッチング用ガスを、集束イオンビームの照射と共に試料Sに供給することによって、エッチングを材料選択的に促進させる。また、例えば、プラチナ、カーボン、またはタングステンなどを含有したデポジション用ガスを、集束イオンビームの照射と共に試料Sに供給することによって、デポジション用ガスから分解された固体成分を試料Sの表面に堆積(デポジション)できる。デポジション用ガスの具体例として、カーボンを含むガスとしてフェナントレンやナフタレンやピレンなど、プラチナを含むガスとしてトリメチル・エチルシクロペンタジエニル・プラチナなど、また、タングステンを含むガスとしてタングステンヘキサカルボニルなどがある。また、供給ガスによっては、電子ビームを照射することでも、エッチングやデポジションを行なうことができる。但し、本発明の荷電粒子ビーム装置10におけるデポジション用ガスは、デポジション速度、試料片Qとニードル18間のデポジション膜の確実な付着の観点からカーボンを含むデポジション用ガス、例えばフェナントレンやナフタレン、ピレンなどが最適であり、これらのうちいずれかを用いる。
【0026】
ニードル駆動機構19は、ニードル18が接続された状態で試料室11の内部に収容されており、コンピュータ22から出力される制御信号に応じてニードル18を変位させる。ニードル駆動機構19は、ステージ12と一体に設けられており、例えばステージ12が傾斜機構13bによって傾斜軸(つまり、X軸またはY軸)周りに回転すると、ステージ12と一体に移動する。ニードル駆動機構19は、3次元座標軸の各々に沿って平行にニードル18を移動させる移動機構(図示略)と、ニードル18の中心軸周りにニードル18を回転させる回転機構(図示略)と、を備えている。なお、この3次元座標軸は、試料ステージの直交3軸座標系とは独立しており、ステージ12の表面に平行な2次元座標軸とする直交3軸座標系で、ステージ12の表面が傾斜状態、回転状態にある場合、この座標系は傾斜し、回転する。
【0027】
コンピュータ22は、少なくともステージ駆動機構13と、集束イオンビーム照射光学系14と、電子ビーム照射光学系15と、ガス供給部17と、ニードル駆動機構19を制御する。
コンピュータ22は、試料室11の外部に配置され、表示装置21と、操作者の入力操作に応じた信号を出力するマウスやキーボードなどの入力デバイス23とが接続されている。
コンピュータ22は、入力デバイス23から出力される信号または予め設定された自動運転制御処理によって生成される信号などによって、荷電粒子ビーム装置10の動作を統合的に制御する。
【0028】
コンピュータ22は、荷電粒子ビームの照射位置を走査しながら検出器16によって検出される二次荷電粒子Rの検出量を、照射位置に対応付けた輝度信号に変換して、二次荷電粒子Rの検出量の2次元位置分布によって照射対象の形状を示す画像データを生成する。吸収電流画像モードでは、コンピュータ22は、荷電粒子ビームの照射位置を走査しながらニードル18に流れる吸収電流を検出することによって、吸収電流の2次元位置分布(吸収電流画像)によってニードル18の形状を示す吸収電流画像データを生成する。コンピュータ22は、生成した各画像データとともに、各画像データの拡大、縮小、移動、および回転などの操作を実行するための画面を、表示装置21に表示させる。コンピュータ22は、自動的なシーケンス制御におけるモード選択および加工設定などの各種の設定を行なうための画面を、表示装置21に表示させる。
【0029】
本発明の実施形態による荷電粒子ビーム装置10は上記構成を備えており、次に、この荷電粒子ビーム装置10の動作について説明する。
【0030】
以下、コンピュータ22が実行する自動サンプリングの動作、つまり荷電粒子ビーム(集束イオンビーム)による試料Sの加工によって形成された試料片Qを自動的に試料片ホルダPに移設させる動作について、初期設定工程、試料片ピックアップ工程、試料片マウント工程に大別して、順次説明する。
【0031】
<初期設定工程>
図5は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10による自動サンプリングの動作のうち初期設定工程の流れを示すフローチャートである。先ず、コンピュータ22は、自動シーケンスの開始時に操作者の入力に応じて後述する姿勢制御モードの有無等のモード選択、テンプレートマッチング用の観察条件、および加工条件設定(加工位置、寸法、個数等の設定)、ニードル先端形状の確認などを行なう(ステップS010)。
【0032】
次に、コンピュータ22は、柱状部34のテンプレートを作成する(ステップS020からステップS027)。このテンプレート作成において、先ず、コンピュータ22は、操作者によってステージ12のホルダ固定台12aに設置される試料片ホルダPの位置登録処理を行なう(ステップS020)。コンピュータ22は、サンプリングプロセスの最初に柱状部34のテンプレートを作成する。コンピュータ22は、柱状部34毎にテンプレートを作成する。コンピュータ22は、各柱状部34のステージ座標取得とテンプレート作成を行ない、これらをセットで記憶し、後にテンプレートマッチング(テンプレートと画像の重ね合わせ)で柱状部34の形状を判定する際に用いる。コンピュータ22は、テンプレートマッチングに用いる柱状部34のテンプレートとして、例えば、画像そのもの、画像から抽出したエッジ情報などを予め記憶する。コンピュータ22は、後のプロセスで、ステージ12の移動後にテンプレートマッチングを行い、テンプレートマッチングのスコアによって柱状部34の形状を判定することにより、柱状部34の正確な位置を認識することができる。なお、テンプレートマッチング用の観察条件として、テンプレート作成用と同じコントラスト、倍率などの観察条件を用いると、正確なテンプレートマッチングを実施することができるので望ましい。
ホルダ固定台12aに複数の試料片ホルダPが設置され、各試料片ホルダPに複数の柱状部34が設けられている場合、各試料片ホルダPに固有の認識コードと、該当試料片ホルダPの各柱状部34に固有の認識コードとを予め定めておき、これら認識コードと各柱状部34の座標およびテンプレート情報とを対応付けてコンピュータ22が記憶してもよい。
また、コンピュータ22は、上記認識コード、各柱状部34の座標、およびテンプレート情報と共に、試料Sにおける試料片Qが摘出される部位(摘出部)の座標、および周辺の試料面の画像情報をセットで記憶してもよい。
また、例えば岩石、鉱物、および生体試料などの不定形な試料の場合、コンピュータ22は、低倍率の広視野画像、摘出部の位置座標、および画像などをセットにして、これらの情報を認識情報として記憶してもよい。この認識情報を、薄片化した試料Sと関連付けし、または、透過電子顕微鏡像と試料Sの摘出位置と関連付けして記録してもよい。
【0033】
コンピュータ22は、試料片ホルダPの位置登録処理を、後述する試料片Qの移動に先立って行なっておくことによって、実際に適正な形状の試料台33が存在することを予め確認しておくことができる。
この位置登録処理において、先ず、コンピュータ22は、粗調整の動作として、ステージ駆動機構13によってステージ12を移動し、試料片ホルダPにおいて試料台33が取り付けられた位置に照射領域を位置合わせする。次に、コンピュータ22は、微調整の動作として、荷電粒子ビーム(集束イオンビームおよび電子ビームの各々)の照射により生成する各画像データから、事前に試料台33の設計形状(CAD情報)から作成したテンプレートを用いて試料台33を構成する複数の柱状部34の位置を抽出する。そして、コンピュータ22は、抽出した各柱状部34の位置座標と画像を、試料片Qの取り付け位置として登録処理(記憶)する(ステップS023)。この時、各柱状部34の画像が、予め準備しておいた柱状部の設計図、CAD図、または柱状部34の標準品の画像と比較して、各柱状部34の変形や欠け、欠落等の有無を確認し、もし、不良であればその柱状部の座標位置と画像と共に不良品であることもコンピュータ22は記憶する。
次に、現在登録処理の実行中の試料片ホルダPに登録すべき柱状部34が無いか否かを判定する(ステップS025)。この判定結果が「NO」の場合、つまり登録すべき柱状部34の残数mが1以上の場合には、処理を上述したステップS023に戻し、柱状部34の残数mが無くなるまでステップS023とS025を繰り返す。一方、この判定結果が「YES」の場合、つまり登録すべき柱状部34の残数mがゼロの場合には、処理をステップS027に進める。
【0034】
ホルダ固定台12aに複数個の試料片ホルダPが設置されている場合、各試料片ホルダPの位置座標、該当試料片ホルダPの画像データを各試料片ホルダPに対するコード番号などと共に記録し、さらに、各試料片ホルダPの各柱状部34の位置座標と対応するコード番号と画像データを記憶(登録処理)する。コンピュータ22は、この位置登録処理を、自動サンプリングを実施する試料片Qの数の分だけ、順次、実施してもよい。
そして、コンピュータ22は、登録すべき試料片ホルダPが無いか否かを判定する(ステップS027)。この判定結果が「NO」の場合、つまり登録すべき試料片ホルダPの残数nが1以上の場合には、処理を上述したステップS020に戻し、試料片ホルダPの残数nが無くなるまでステップS020からS027を繰り返す。一方、この判定結果が「YES」の場合、つまり登録すべき試料片ホルダPの残数nがゼロの場合には、処理をステップS030に進める。
これにより、1個の試料Sから数10個の試料片Qを自動作製する場合、ホルダ固定台12aに複数の試料片ホルダPが位置登録され、そのそれぞれの柱状部34の位置が画像登録されているため、数10個の試料片Qを取り付けるべき特定の試料片ホルダPと、さらに、特定の柱状部34を即座に荷電粒子ビームの視野内に呼び出すことができる。
なお、この位置登録処理(ステップS020、S023)において、万一、試料片ホルダP自体、もしくは、柱状部34が変形や破損していて、試料片Qが取り付けられる状態に無い場合は、上記の位置座標、画像データ、コード番号と共に、対応させて『使用不可』(試料片Qが取り付けられないことを示す表記)などとも登録しておく。これによって、コンピュータ22は、後述する試料片Qの移設の際に、『使用不可』の試料片ホルダP、もしくは柱状部34はスキップされ、次の正常な試料片ホルダP、もしくは柱状部34を観察視野内に移動させることができる。
【0035】
次に、コンピュータ22は、ニードル18のテンプレートを作成する(ステップS030からS050)。テンプレートは、後述するニードルを試料片に正確に接近させる際の画像マッチングに用いる。
このテンプレート作成工程において、先ず、コンピュータ22は、ステージ駆動機構13によってステージ12を一旦移動させる。続いて、コンピュータ22は、ニードル駆動機構19によってニードル18を初期設定位置に移動させる(ステップS030)。初期設定位置は、集束イオンビームと電子ビームがほぼ同一点に照射でき、両ビームの焦点が合う点(コインシデンスポイント)であって、直前に行ったステージ移動によって、ニードル18の背景には試料Sなどニードル18と誤認するような複雑な構造が無い、予め定めた位置である。このコインシデンスポイントは、集束イオンビーム照射と電子ビーム照射によって同じ対象物を異なった角度から観察することができる位置である。
【0036】
次に、コンピュータ22は、電子ビーム照射による吸収画像モードによって、ニードル18の位置を認識する(ステップS040)。
コンピュータ22は、電子ビームを走査しながらニードル18に照射することによってニードル18に流入する吸収電流を検出し、吸収電流画像データを生成する。この時、吸収電流画像には、ニードル18と誤認する背景が無いため、背景画像に影響されずにニードル18を認識できる。コンピュータ22は、電子ビームの照射によって吸収電流画像データを取得する。吸収電流像を用いてテンプレートを作成するのは、ニードルが試料片に近づくと、試料片の加工形状や試料表面のパターンなど、ニードルの背景にはニードルと誤認する形状が存在することが多いため、二次電子像では誤認するおそれが高く、誤認防止するため背景に影響を受けない吸収電流像を用いる。二次電子像は背景像に影響を受けやすく、誤認のおそれが高いのでテンプレート画像としては適さない。このように、吸収電流画像ではニードル先端のカーボンデポジション膜を認識できないので、真のニードル先端を知ることはできないが、テンプレートとのパターンマッチングの観点から吸収電流像が適している。
【0037】
ここで、コンピュータ22は、ニードル18の形状を判定する(ステップS042)。
万一、ニードル18の先端形状が変形や破損等により、試料片Qを取り付けられる状態に無い場合(ステップS042;NG)には、ステップS043から、
図38のステップS280のNO側に飛び、ステップS050以降の全ステップは実行せずに自動サンプリングの動作を終了させる。つまり、ニードル先端形状が不良の場合、これ以上の作業が実行できず、装置操作者によるニードル交換の作業に入る。ステップS042におけるニードル形状の判断は、例えば、1辺200μmの観察視野で、ニードル先端位置が所定の位置から100μm以上ずれている場合は不良品と判断する。なお、ステップS042において、ニードル形状が不良と判断した場合、表示装置21に『ニードル不良』等と表示して(ステップS043)、装置の操作者に警告する。不良品と判断したニードル18は新たなニードル18に交換するか、軽微な不良であればニードル先端を集束イオンビーム照射によって成形してもよい。
ステップS042において、ニードル18が予め定めた正常な形状であれば次のステップS044に進む。
【0038】
ここで、ニードル先端の状態を説明しておく。
図6(A)は、ニードル18(タングステンニードル)の先端にカーボンデポジション膜DMの残渣が付着している状態を説明するためにニードル先端部を拡大した模式図である。ニードル18は、その先端が集束イオンビーム照射によって切除されて変形しないようにしてサンプリング操作を複数回繰返して用いるため、ニードル18先端には試料片Qを保持していたカーボンデポジション膜DMの残渣が付着する。繰返してサンプリングすることで、このカーボンデポジション膜DMの残渣は徐々に大きくなり、タングステンニードルの先端位置より少し突き出した形状になる。従って、ニードル18の真の先端座標は、もともとのニードル18を構成するタングステンの先端Wではなく、カーボンデポジション膜DMの残渣の先端Cとなる。吸収電流像を用いてテンプレートを作成するのは、ニードル18が試料片Qに近づくと、試料片Qの加工形状や試料表面のパターンなど、ニードル18の背景にはニードル18と誤認する形状が存在することが多いため、二次電子像では誤認するおそれが高く、誤認防止するため背景に影響を受けない吸収電流像を用いる。二次電子像は背景像に影響を受けやすく、誤認のおそれが高いのでテンプレート画像としては適さない。このように、吸収電流画像ではニードル先端のカーボンデポジション膜DMを認識できないので、真のニードル先端を知ることはできないが、テンプレートとのパターンマッチングの観点から吸収電流像が適している。
【0039】
図6(B)は、カーボンデポジション膜DMが付着したニードル先端部の吸収電流像の模式図である。背景に複雑なパターンがあっても背景形状に影響されずに、ニードル18は明確に認識できる。背景に照射される電子ビーム信号は画像に反映されないため、背景はノイズレベルの一様なグレートーンで示される。一方、カーボンデポジション膜DMは背景のグレートーンより若干暗く見え、吸収電流像ではカーボンデポジション膜DMの先端が明確に確認できないことが分かった。吸収電流像では、カーボンデポジション膜DMを含めた真のニードル位置を認識できないため、吸収電流像だけを頼りにニードル18を移動させると、ニードル先端が試料片Qに衝突するおそれが高い。
このため、以下のようにして、カーボンデポジション膜DMの先端座標Cからニードル18の真の先端座標を求める。なお、ここで、
図6(B)の画像を第1画像と呼ぶことにする。
ニードル18の吸収電流像(第1画像)を取得する工程がステップS044である。
次に、
図6(B)の第1画像を画像処理して、背景より明るい領域を抽出する(ステップS045)。
【0040】
図7(A)は、
図6(B)の第1画像を画像処理して、背景より明るい領域を抽出した模式図である。背景とニードル18の明度の差が小さいときには、画像コントラストを高めて、背景とニードルの明度の差を大きくしても良い。このようにして、背景より明るい領域(ニードル18の一部)を強調した画像が得られ、この画像をここでは第2画像と言う。この第2画像をコンピュータに記憶する。
次に、
図6(B)の第1画像において、背景の明度より暗い領域を抽出する(ステップS046)。
【0041】
図7(B)は、
図6(B)の第1画像を画像処理して、背景より暗い領域を抽出した模式図である。ニードル先端のカーボンデポジション膜DMのみが抽出されて表示される。背景とカーボンデポジション膜DMの明度の差が小さい時には画像コントラストを高めて、画像データ上、背景とカーボンデポジション膜DMの明度の差を大きくしても良い。このようにして、背景より暗い領域を顕在化させた画像が得られる。ここで、この画像を第3画像と言い、第3画像をコンピュータ22に記憶する。
次に、コンピュータ22に記憶した第2画像と第3画像を合成する(ステップS047)。
【0042】
図8は合成後の表示画像の模式図である。但し、画像上、見やすくするために、第2画像でのニードル18の領域、第3画像におけるカーボンデポジション膜DMの部分の輪郭のみを線表示して、背景やニードル18、カーボンデポジション膜DMの外周以外は透明表示にしてもよいし、背景のみの透明にして、ニードル18とカーボンデポジション膜DMを同じ色や同じトーンで表示してもよい。このように、第2画像と第3画像はもともと第1画像を基にしているので、第2画像や第3画像の一方のみを拡大縮小や回転など変形しない限り、合成して得られる画像は第1画像を反映させた形状である。ここで、合成した画像を第4画像と呼び、この第4画像をコンピュータに記憶する。第4画像は、第1画像を基に、コントラストを調整し、輪郭を強調する処理を施しているため、第1画像と第4画像におけるニードル形状は全く同じで、輪郭が明確になっており、第1画像に比べてカーボンデポジション膜DMの先端が明確になる。
次に、第4画像から、カーボンデポジション膜DMの先端、つまり、カーボンデポジション膜DMが堆積したニードル18の真の先端座標を求める(ステップS048)。
コンピュータ22から第4画像を取り出し表示し、ニードル18の真の先端座標を求める。ニードル18の軸方向で最も突き出た箇所Cが真のニードル先端であり、画像認識により自動的に判断させ、先端座標をコンピュータ22に記憶する。
次に、テンプレートマッチングの精度を更に高めるために、ステップS044時と同じ観察視野でのニードル先端の吸収電流画像をレファレンス画像として、テンプレート画像はレファレンス画像データのうち、ステップS048で得たニードル先端座標を基準として、ニードル先端を含む一部のみを抽出したものとし、このテンプレート画像をステップS048で得たニードル先端の基準座標(ニードル先端座標)とを対応付けてコンピュータ22に登録する(ステップS050)。
【0043】
次に、コンピュータ22は、ニードル18を試料片Qに接近させる処理として、以下の処理を行なう。
なお、ステップS050においては、ステップS044時と同じ観察視野と限定したが、これに限ることはなく、ビーム走査の基準が管理できていれば同一視野に限定されることはない。また、上記ステップS050の説明ではテンプレートを、ニードル先端部を含むとしたが、基準座標とさえ座標が対応付けられていれば先端を含まない領域をテンプレートとしても構わない。
【0044】
コンピュータ22は、ニードル18を移動させる事前に実際に取得する画像データをレファレンス画像データとするので、個々のニードル18の形状の相違によらずに、精度の高いパターンマッチングを行うことができる。さらに、コンピュータ22は、背景に複雑な構造物が無い状態で各画像データを取得するので、正確な真のニードル先端座標を求めることができる。また、背景の影響を排除したニードル18の形状が明確に把握できるテンプレートを取得することができる。
【0045】
なお、コンピュータ22は、各画像データを取得する際に、対象物の認識精度を増大させるために予め記憶した好適な倍率、輝度、コントラスト等の画像取得条件を用いる。
また、上記の柱状部34のテンプレートを作成する工程(S020からS027)と、ニードル18のテンプレートを作成する工程(S030からS050)が逆であってもよい。但し、ニードル18のテンプレートを作成する工程(S030からS050)が先行する場合、後述のステップS280から戻るフロー(E)も連動する。
【0046】
<試料片ピックアップ工程>
図9は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10による自動サンプリングの動作のうち、試料片Qを試料Sからピックアップする工程の流れを示すフローチャートである。ここで、ピックアップとは、集束イオンビームによる加工やニードルによって、試料片Qを試料Sから分離、摘出することを言う。
まず、コンピュータ22は、対象とする試料片Qを荷電粒子ビームの視野に入れるためにステージ駆動機構13によってステージ12を移動させる。目的とするレファレンスマークRefの位置座標を用いてステージ駆動機構13を動作させてもよい。
次に、コンピュータ22は、荷電粒子ビームの画像データを用いて、予め試料Sに形成されたレファレンスマークRefを認識する。コンピュータ22は、認識したレファレンスマークRefを用いて、既知であるレファレンスマークRefと試料片Qとの相対位置関係から試料片Qの位置を認識して、試料片Qの位置を観察視野に入るようにステージ移動する(ステップS060)。
次に、コンピュータ22は、ステージ駆動機構13によってステージ12を駆動し、試料片Qの姿勢が所定姿勢(例えば、ニードル18による取出しに適した姿勢など)になるように、姿勢制御モードに対応した角度分だけステージ12をZ軸周りに回転させる(ステップS070)。
次に、コンピュータ22は、荷電粒子ビームの画像データを用いてレファレンスマークRefを認識し、既知であるレファレンスマークRefと試料片Qとの相対位置関係から試料片Qの位置を認識して、試料片Qの位置合わせを行なう(ステップS080)。次に、コンピュータ22は、ニードル18を試料片Qに接近させる処理として、以下の処理を行う。
【0047】
コンピュータ22は、ニードル駆動機構19によってニードル18を移動させるニードル移動(粗調整)を実行する(ステップS090)。コンピュータ22は、試料Sに対する集束イオンビームおよび電子ビームによる各画像データを用いて、レファレンスマークRef(上述した
図2参照)を認識する。コンピュータ22は、認識したレファレンスマークRefを用いてニードル18の移動目標位置APを設定する。
ここで、移動目標位置APは、試料片Qに近い位置とする。移動目標位置APは、例えば、試料片Qの支持部Qaの反対側の側部に近接した位置とする。コンピュータ22は、移動目標位置APを、試料片Qの形成時の加工枠Fに対して所定の位置関係を対応付けている。コンピュータ22は、集束イオンビームの照射によって試料Sに試料片Qを形成する際の加工枠FとレファレンスマークRefとの相対的な位置関係の情報を記憶している。コンピュータ22は、認識したレファレンスマークRefを用いて、レファレンスマークRefと加工枠Fと移動目標位置AP(
図2参照)との相対的な位置関係を用いて、ニードル18の先端位置を移動目標位置APに向かい3次元空間内で移動させる。コンピュータ22は、ニードル18を3次元的に移動させる際に、例えば、先ずX方向およびY方向で移動させ、次にZ方向に移動させる。
コンピュータ22は、ニードル18を移動させる際に、試料片Qを形成する自動加工の実行時に試料Sに形成されたレファレンスマークRefを用いて、電子ビームと集束イオンビームによる異なった方向からの観察よって、ニードル18と試料片Qとの3次元的な位置関係が精度良く把握することができ、適正に移動させることができる。
【0048】
なお、上述の処理では、コンピュータ22は、レファレンスマークRefを用いて、レファレンスマークRefと加工枠Fと移動目標位置APとの相対的な位置関係を用いて、ニードル18の先端位置を移動目標位置APに向かい3次元空間内で移動させるとしたが、これに限定されない。コンピュータ22は、加工枠Fを用いること無しに、レファレンスマークRefと移動目標位置APとの相対的な位置関係を用いて、ニードル18の先端位置を移動目標位置APに向かい3次元空間内で移動させてもよい。
【0049】
次に、コンピュータ22は、ニードル駆動機構19によってニードル18を移動させるニードル移動(微調整)を実行する(ステップS100)。コンピュータ22は、ステップS050で作成したテンプレートを用いたパターンマッチングを繰り返して、また、SEM画像内のニードル18の先端位置としてはステップS047で得たニードル先端座標を用いて、移動目標位置APを含む照射領域に荷電粒子ビームを照射した状態でニードル18を移動目標位置APから接続加工位置に3次元空間内で移動させる。
【0050】
次に、コンピュータ22は、ニードル18の移動を停止させる処理を行なう(ステップS110)。
図10は、ニードルを試料片に接続させる際の位置関係を説明するための図で、試料片Qの端部を拡大した図である。
図10において、ニードル18を接続すべき試料片Qの端部(断面)をSIM画像中心35に配置し、SIM画像中心35から所定距離L1を隔て、例えば、試料片Qの幅の中央の位置を接続加工位置36とする。接続加工位置は、試料片Qの端面の延長上(
図10の符号36a)の位置であってもよい。この場合、デポジション膜が付き易い位置となって都合がよい。コンピュータ22は、所定距離L1の上限を1μmとし、好ましくは、所定距離L1を100nm以上かつ400nm以下とする。所定距離L1が100nm未満であると、後の工程で、ニードル18と試料片Qを分離する際に接続したデポジション膜のみを切断できず、ニードル18まで切除するリスクが高い。ニードル18の切除はニードル18を短小化させ、ニードル先端が太く変形してしまい、これを繰返すと、ニードル18を交換せざるを得ず、本発明の目的である繰返し自動でサンプリングを行うことに反する。また、逆に、所定距離L1が400nmを超えるとデポジション膜による接続が不十分となり、試料片Qの摘出に失敗するリスクが高くなり、繰返しサンプリングすることを妨げる。
また、
図10からは深さ方向の位置が見えないが、例えば、試料片Qの幅の1/2の位置と予め定める。但し、この深さ方向もこの位置に限定されることはない。この接続加工位置36の3次元座標をコンピュータ22に記憶しておく。
コンピュータ22は、予め設定されている接続加工位置36を指定する。コンピュータ22は、同じSIM画像またはSEM画像内にあるニードル18先端と接続加工位置36の三次元座標を基に、ニードル駆動機構19を動作させ、ニードル18を所定の接続加工位置36に移動する。コンピュータ22は、ニードル先端が接続加工位置36と一致した時に、ニードル駆動機構19を停止させる。
図11および
図12は、ニードル18が試料片Qに接近する様子を示しており、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10の集束イオンビームにより得られる画像を示す図(
図11)、および、電子ビームにより得られる画像を示す図(
図12)である。
図12はニードルの微調整前後の様子を示しており、
図12におけるニードル18aは、移動目標位置にあるニードル18を示し、ニードル18bはニードル18の微調整後、接続加工位置36に移動したニードル18を示していて、同一のニードル18である。なお、
図11および
図12は、集束イオンビームと電子ビームで観察方向が異なることに加え、観察倍率が異なっているが、観察対象とニードル18は同一である。
このようなニードル18の移動方法によって、ニードル18を試料片Q近傍の接続加工位置に精度良く、迅速に接続加工位置36に接近させる、停止させることができる。
【0051】
次に、コンピュータ22は、ニードル18を試料片Qに接続する処理を行なう(ステップS120)。コンピュータ22は、所定のデポジション時間に亘って、試料片Qおよびニードル18の先端表面にガス供給部17によってデポジション用ガスであるカーボン系ガスを供給しつつ、接続加工位置36に設定した加工枠R1を含む照射領域に集束イオンビームを照射する。これによりコンピュータ22は、試料片Qおよびニードル18をデポジション膜により接続する。
このステップS120では、コンピュータ22は、ニードル18を試料片Qに直接接触させずに間隔を開けた位置でデポジション膜により接続するので、後の工程でニードル18と試料片Qとが集束イオンビーム照射による切断により分離される際にニードル18が切断されない。また、ニードル18の試料片Qへの直接接触に起因する損傷などの不具合が発生することを防止できる利点を有している。さらに、たとえニードル18が振動しても、この振動が試料片Qに伝達されることを抑制できる。さらに、試料Sのクリープ現象による試料片Qの移動が発生する場合であっても、ニードル18と試料片Qとの間に過剰なひずみが生じることを抑制できる。
図13は、この様子を示しており、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおける、ニードル18および試料片Qの接続加工位置を含む加工枠R1(デポジション膜形成領域)を示す図であり、
図14は
図13の拡大説明図であり、ニードル18と試料片Q、デポジション膜形成領域(例えば、加工枠R1)の位置関係を分かり易くしている。ニードル18は試料片Qから所定距離L1の間隔を有した位置を接続加工位置として接近し、停止する。ニードル18と試料片Q、デポジション膜形成領域(例えば、加工枠R1)は、ニードル18と試料片Qを跨ぐように設定する。デポジション膜は所定距離L1の間隔にも形成され、ニードル18と試料片Qはデポジション膜で接続される。
【0052】
コンピュータ22は、ニードル18を試料片Qに接続する際には、後にニードル18に接続された試料片Qを試料片ホルダPに移設するときに事前にステップS010で選択された各アプローチモードに応じた接続姿勢をとる。コンピュータ22は、後述する複数(例えば、3つ)の異なるアプローチモードの各々に対応して、ニードル18と試料片Qとの相対的な接続姿勢をとる。
【0053】
なお、コンピュータ22は、ニードル18の吸収電流の変化を検出することによって、デポジション膜による接続状態を判定してもよい。コンピュータ22は、ニードル18の吸収電流が予め定めた電流値に達した時に試料片Qおよびニードル18がデポジション膜により接続されたと判定し、所定のデポジション時間の経過有無にかかわらずに、デポジション膜の形成を停止してもよい。
【0054】
次に、コンピュータ22は、試料片Qと試料Sとの間の支持部Qaを切断する処理を行なう(ステップS130)。コンピュータ22は、試料Sに形成されているレファレンスマークRefを用いて、予め設定されている支持部Qaの切断加工位置T1を指定する。
コンピュータ22は、所定の切断加工時間に亘って、切断加工位置T1に集束イオンビームを照射することによって、試料片Qを試料Sから分離する。
図15は、この様子を示しており、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおける試料Sおよび試料片Qの支持部Qaの切断加工位置T1を示す図である。
コンピュータ22は、試料Sとニードル18との導通を検知することによって、試料片Qが試料Sから切り離されたか否かを判定する(ステップS133)。
コンピュータ22は、試料Sとニードル18との導通を検知しない場合には、試料片Qが試料Sから切り離された(OK)と判定し、これ以降の処理(つまり、ステップS140以降の処理)の実行を継続する。一方、コンピュータ22は、切断加工の終了後、つまり切断加工位置T1での試料片Qと試料Sとの間の支持部Qaの切断が完了した後に、試料Sとニードル18との導通を検知した場合には、試料片Qが試料Sから切り離されていない(NG)と判定する。コンピュータ22は、試料片Qが試料Sから切り離されていない(NG)と判定した場合には、この試料片Qと試料Sとの分離が完了していないことを表示装置21への表示または警告音などにより報知する(ステップS136)。そして、これ以降の処理の実行を停止する。この場合、コンピュータ22は、試料片Qとニードル18を繋ぐデポジション膜(後述するデポジション膜DM2)を集束イオンビーム照射によって切断し、試料片Qとニードル18を分離して、ニードル18を初期位置(ステップS060)に戻るようにしてもよい。初期位置に戻ったニードル18は。次の試料片Qのサンプリングを実施する。
【0055】
次に、コンピュータ22は、ニードル退避の処理を行なう(ステップS140)。コンピュータ22は、ニードル駆動機構19によってニードル18を所定距離(例えば、5μmなど)だけ鉛直方向上方(つまりZ方向の正方向)に上昇させる。
図16は、この様子を示しており、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10の電子ビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18を退避させた状態を示す図である。
次に、コンピュータ22は、ステージ退避の処理を行なう(ステップS150)。コンピュータ22は、
図17に示すように、ステージ駆動機構13によってステージ12を、所定距離を移動させる。例えば、1mm、3mm、5mmだけ鉛直方向下方(つまりZ方向の負方向)に下降させる。コンピュータ22は、ステージ12を所定距離だけ下降させた後に、ガス供給部17のノズル17aをステージ12から遠ざける。例えば、鉛直方向上方の待機位置に上昇させる。
図17は、この様子を示しており、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10の電子ビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18に対してステージ12を退避させた状態を示す図である。
【0056】
次に、コンピュータ22は、試料片Qの姿勢制御の処理を行なう(ステップS153)。コンピュータ22は、ニードル駆動機構19によってニードル18を軸回転させることができるので、必要に応じて試料片Qの姿勢を制御することができる。コンピュータ22は、ニードル18に接続された試料片Qをニードル18の軸周りに回転させ、試料片ホルダPに対して試料片Qの上下または左右を変更する。例えば、コンピュータ22は、試料片Qにおける元の試料Sの表面が柱状部34の端面に垂直関係にあるか平行関係になるように試料片Qの姿勢を設定する。これによりコンピュータ22は、例えば後に実行する整形加工および仕上げ加工に適した試料片Qの姿勢を確保するとともに、試料片Qの薄片化仕上げ加工時に生じるカーテン効果の影響などを低減することができる。カーテン効果は、集束イオンビーム照射方向に生じる加工縞模様であって、完成後の試料片Qを電子顕微鏡で観察した場合、誤った解釈を与えてしまうので、試料片Qの適正な姿勢を確保することによって、観察の信頼性を向上させることができる。なお、コンピュータ22は、ニードル18を軸回転させる際には偏心補正を行なうことによって、試料片Qが実視野から外れないように回転を補正する。
【0057】
この姿勢制御において、先ず、コンピュータ22は、ニードル駆動機構19によってニードル18を駆動し、試料片Qの姿勢がアプローチモードに対応した所定姿勢になるように、アプローチモードに対応した姿勢制御モードの回転角度分だけニードル18を軸回転させる。ここでアプローチモードに対応した姿勢制御モードとは、試料片Qの姿勢を試料片ホルダPに対してアプローチモードに対応した所定姿勢に制御するモードである。この姿勢制御モードにおいてコンピュータ22は、上述した試料片ピックアップ工程において試料片Qに対し所定の角度で接近して試料片Qが接続されたニードル18を、所定の回転角度に軸回転することにより試料片Qの姿勢を制御する。アプローチモードは、姿勢制御モードによって所定姿勢に制御された試料片Qを試料片ホルダPにアプローチするモードである。コンピュータ22は、ニードル18を軸回転させる際には偏心補正を行なう。
図18〜
図23は、この様子を示しており、複数(例えば、3つ)の異なるアプローチモードの各々において、試料片Qが接続されたニードル18の状態を示す図である。
【0058】
図18および
図19は、ニードル18の回転角度0°でのアプローチモードにおいて、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18の状態(
図18)と、電子ビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18の状態(
図19)とを示す図である。コンピュータ22は、ニードル18の回転角度0°でのアプローチモードにおいては、ニードル18を回転させずに試料片Qを試料片ホルダPに移設するために適した姿勢状態を設定している。
図20および
図21は、ニードル18の回転角度90°でのアプローチモードにおいて、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18を90°回転させた状態(
図20)と、電子ビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18を90°回転させた状態(
図21)とを示す図である。コンピュータ22は、ニードル18の回転角度90°でのアプローチモードにおいては、ニードル18を90°だけ回転させた状態で試料片Qを試料片ホルダPに移設するために適した姿勢状態を設定している。
図22および
図23は、ニードル18の回転角度180°でのアプローチモードにおいて、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18を180°回転させた状態(
図22)と、電子ビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18を180°回転させた状態(
図23)とを示す図である。コンピュータ22は、ニードル18の回転角度180°でのアプローチモードにおいては、ニードル18を180°だけ回転させた状態で試料片Qを試料片ホルダPに移設するために適した姿勢状態を設定している。
なお、ニードル18と試料片Qとの相対的な接続姿勢は、予め上述した試料片ピックアップ工程において、試料片Qに対し所定の角度でニードル18をアプローチしてニードル18を試料片Qに接続する際に、各姿勢制御モードに適した接続姿勢に設定されている。
【0059】
次に、コンピュータ22は、試料片Qの整形加工の処理を行なう(ステップS155)。この整形加工の処理において、先ず、コンピュータ22は、必要に応じて集束イオンビームの走査方向を回転させるスキャンローテーションを行なう。コンピュータ22は、スキャンローテーションによって、試料片Qにおける所定方向と集束イオンビームの走査方向とが平行になるような回転角度で走査方向を回転させることにより、集束イオンビームによる観察視野の中心に対して走査領域を回転させる。コンピュータ22は、後の処理において試料片Qの所定方向におけるエッジを抽出することに対応して、試料片Qにおける所定方向と集束イオンビームの走査方向とを平行にすることによって、画像データにおける試料片Qに対するエッジ抽出の精度を向上させる。
【0060】
本実施形態において、コンピュータ22は、例えば、ニードル18が接続される試料片Qの表面Q1に対して試料片Qの厚さ方向における反対側の部位(つまり、試料片Qの底部Q2)を、後の処理において試料片ホルダPの柱状部34に接続する場合、試料片Qの底部Q2においてエッジを抽出する。なお、試料片Qの厚さ方向は、元の試料Sの加工時の深さ方向に対応している。この場合、コンピュータ22は、スキャンローテーションによって、集束イオンビームにより得られる画像データにおける試料片Qの厚さ方向(つまり、元の試料Sの加工時の深さ方向)と平行になるように集束イオンビームの走査方向を回転させる。これにより、コンピュータ22は、後に実行する試料片Qの底部Q2におけるエッジ抽出および試料片Qの底部Q2に対する整形加工の加工枠設定の精度を向上させる。例えば、
図24は、ニードル18の回転角度90°でのアプローチモードにおいて、集束イオンビームの走査方向を、−68°だけ回転させるスキャンローテーションにより得られる画像データにおいて、試料片Qが接続されたニードル18の状態を示す図である。
図24においては、試料片Qの厚さ方向(つまり、元の試料Sの加工時の深さ方向)が画像データのX軸方向と平行になり、試料片Qの底部Q2におけるエッジ抽出が容易になっている。
【0061】
次に、コンピュータ22は、必要に応じて実行するスキャンローテーションにより得られる画像データ、またはスキャンローテーションの実行無しに集束イオンビームにより得られる画像データにおいて、試料片Qの所定方向におけるエッジを抽出する。例えば、
図25は、
図24の画像データに基づき試料片Qの厚さ方向の底部Q2において抽出された2つのエッジE1,E2の一例を示す図である。
次に、コンピュータ22は、画像データにおいて、試料片Qの所定方向において抽出したエッジに基づいて、試料片Qにおける整形加工領域を画定する加工枠Taを設定する。この加工枠Taに基づく整形後の試料片Qは、柱状部34に接する端面が、柱状部34の接続面とほぼ平行になるように整形されることが望ましい。例えば、コンピュータ22は、試料片Qの整形加工によって試料片ホルダPの柱状部34の接続面(例えば、側面などの端面)と平行な端面を試料片Qに形成するための加工枠Taを設定する。例えば、
図26は、
図25の画像データにおける2つのエッジE1,E2に基づいて試料片Qの底部Q2を含むように設定された加工枠Taの一例を示す図である。
次に、コンピュータ22は、画像データに基づいて設定した加工枠Taによる整形加工領域に集束イオンビームを照射することによって、試料片Qの整形加工を行なう。例えば、コンピュータ22は、試料片Qの底部Q2を含む加工枠Taによって試料片Qをエッチング加工して、試料片ホルダPの柱状部34の接続面と平行な端面を形成する。例えば、
図27は、集束イオンビームを用いた整形加工によって試料片ホルダPの柱状部34の接続面34A(例えば、側面など)と平行な端面QAを有する試料片Qの一例を示す図である。
【0062】
なお、コンピュータ22は、整形加工の処理において、整形後の試料片Qの大きさ又は試料片Qにおける整形加工位置などの加工枠の設定に関する指示がユーザから入力される場合、この指示に応じて試料片Qを整形加工する。例えば、コンピュータ22は、試料片Qにおける整形加工の加工位置を設定するための基準となる試料片Qの表面からの距離Lbの入力を受け付ける。そして、コンピュータ22は、試料片Qの所定方向(例えば、元の試料Sの加工時の深さ方向に対応する厚さ方向など)における試料片Qの表面(例えば、ニードル18が接続される表面Q1など)からの距離Lbの位置に加工枠Tbを設定する。例えば、
図28は、
図24に示す画像データにおいてユーザによって指示される試料片Qの表面Q1からの距離Lbを基準として試料片Qに設定される加工枠Tbの一例を示す図である。
図28に示す加工枠Tbは、試料片Qの表面Q1から厚さ方向の底部Q2側に距離Lbの位置以降の部位を含む。なお、距離Lbの指示は、例えば、試料片Qの観察方向(
図28に示すY軸方向)における表面(観察面)Q3側に観察対象が含まれていることが事前に把握され、試料片Qの厚さ方向(
図28に示すX軸方向)における適宜の部位が不要とされる場合などにおいて、ユーザから入力される。
図29は、
図28に示す加工枠Tbに集束イオンビームを照射することによって試料片Qの底部Q2側の部位を除去する整形加工の実行後に試料片ホルダPの柱状部34の接続面34A(例えば、側面など)と平行な端面QAを有する試料片Qの一例を示す図である。これによりコンピュータ22は、後述するテンプレートからのエッジ抽出を容易にするとともに、後に実行する仕上げ加工に適した試料片Qの形状を確保する。
また、コンピュータ22は、整形加工の実行後、整形加工により生じたスパッタ粒子が試料片Qの観察面Q3に付着して形成されるリデポジションを除去するために、クリーニング加工を実行してもよい。コンピュータ22は、例えば、
図29に示すように観察面Q3を含むクリーニング用加工枠Tcを設定して、クリーニング用加工枠Tcによる加工領域に集束イオンビームを照射することによってクリーニング加工を実行する。
【0063】
また、コンピュータ22は、整形加工の処理において、荷電粒子ビームによる試料片Qの観察像によって認識される試料片Qのデバイス構造などのパターンに基づいて加工枠Taを設定してもよい。例えば、
図30は、ニードル18の回転角度180°でのアプローチモードにおいて、集束イオンビームにより得られる画像データにおける試料片Qが接続されたニードル18を180°回転させた状態を示す図である。
図30に示す試料片Qは、デバイス構造DSが露出する表面(例えば、元の試料Sから形成された断面Q4)を備えている。
コンピュータ22は、整形加工の処理において、先ず、集束イオンビームの走査方向を回転させるスキャンローテーションを行なう。例えば、
図31は、ニードル18の回転角度180°でのアプローチモードにおいて、集束イオンビームの走査方向を、22°だけ回転させるスキャンローテーションにより得られる画像データにおいて、試料片Qが接続されたニードル18の状態を示す図である。次に、コンピュータ22は、
図31に示す画像データに基づき、試料片Qの断面Q4に露出するデバイス構造DSを、予め把握されているパターンなどを用いたパターンマッチングにより認識する。コンピュータ22は、試料片Qにおいてデバイス構造DSに干渉しないように、デバイス構造DSが存在しない部位に加工枠Taを設定する。例えば、
図32は、
図31の画像データに基づいて試料片Qのデバイス構造DSが存在しない部位を除去するために設定された加工枠Taの一例を示す図である。
図32に示す加工枠Taは、ニードル18が接続される試料片Qの表面Q1から厚さ方向における底部Q2側の部位を含む。次に、コンピュータ22は、
図32に示す画像データに基づいて設定した加工枠Taによる整形加工領域に集束イオンビームを照射することによって試料片Qをエッチング加工して、試料片Qを整形する。
【0064】
また、試料片Qの底面QB(底部Q2の表面)の形状は、元の試料Sからの切り出し加工により、厚さ方向の直交方向に対して斜めになっているため、コンピュータ22は、整形加工の処理によって底面QBを平らに(つまり厚さ方向に直交するように)整形する。例えば、
図33は、試料片Qの底面が柱状部34の上端面と同じ向きになるように試料片Qを柱状部34に固定した状態の一例を示す図である。
図34は、集束イオンビームを用いて
図33に示す試料片Qに仕上げ加工を行なう状態の一例を示す図である。
図33および
図34においては、試料片Qの底面QBが柱状部34の上端面34Bと同じ向きになるように(つまり試料片Qの表面Q1が柱状部34の付け根側に、試料片Qの底面QBが柱状部34の上端側に配置されるように)試料片Qが柱状部34に固定され、その後、集束イオンビームFBにより試料片Qを薄片化する仕上げ加工が実施される。この場合、集束イオンビームFBが入射される側である底面QBが平らになっていないと、底面QBと各断面(元の試料Sからの切り出し加工において形成される断面)QC,QDとのなす角度が表側断面QCと裏側断面QDで異なる。このため、底部Q2の2つのエッジE1,E2に起因するエッジ効果により試料片Qの表側断面QCと裏側断面QDの加工速度が異なってしまい、試料片Qの表側と裏側を均一速度で加工することができないという問題が生じる。このような問題に対して、試料片Qの底面QBを平らにする整形加工を施すことにより、上記のなす角度がいずれも90°となり、試料片Qの両面を均一速度で削る仕上げ加工を行うことができる。
また、試料片Qの底部Q2を整形加工することによりエッジE1,E2の画像が鮮明になり、画像認識しやすくなる。これにより、後述する試料片マウント工程におけるテンプレートマッチングで試料片Qの位置を正確に認識することができる。
また、コンピュータ22は、試料片Qの底部Q2を整形加工することにより、柱状部34の上端面34Bと試料片Qの底面QBが同一面になるように固定することができる。例えば、
図35は、集束イオンビームにより得られる画像において、柱状部34のドリフト補正マークMと試料片Qの加工枠Tdとの一例を示す図である。これにより、固定後に仕上げ加工を行う場合において、ドリフト補正マークMを柱状部34の上端面34Bに形成し、当該マークMを用いて試料片Qの底面QBに加工枠Tdを設定して仕上げ加工を行うと、ドリフト補正マークMと加工枠Tdが同一面内にあるため位置ずれを軽減することができる。特に仕上げ加工においてステージチルトにより試料片Qを斜め方向から加工する場合では、ドリフト補正マークMがある柱状部34の上端面34Bと試料片Qの底面QBとの間に段差があると、ドリフト補正マークMと加工枠Tdとの位置関係にずれが生じてしまい、正確な位置に加工することができない問題があった。この問題に対して、ドリフト補正マークMと加工枠Tdが同一面になるように試料片Qを固定することで、ステージチルトしても段差が生じることが無く、加工位置ずれをより軽減することができる。
【0065】
整形加工の処理の実行後、コンピュータ22は、相互に接続されたニードル18および試料片Qの背景に構造物がない状態になるように、ステージ駆動機構13を動作させる。これは後続する処理(ステップ170)でニードル18および試料片Qのテンプレートを作成する際、集束イオンビームおよび電子ビームの各々により得られる試料片Qの画像データからニードル18および試料片Qのエッジ(輪郭)を確実に認識するためである。コンピュータ22は、ステージ12を所定距離だけ移動させる。試料片Qの背景を判断(ステップS160)し、背景が問題にならなければ、次のステップS170に進み、背景に問題があればステージ12を所定量だけ再移動させて(ステップS165)、背景の判断(ステップS160)に戻り、背景に問題が無くなるまで繰り返す。
【0066】
コンピュータ22は、ニードル18および試料片Qのテンプレート作成を実行する(ステップS170)。コンピュータ22は、試料片Qが固定されたニードル18を必要に応じて回転させた姿勢状態(つまり、試料台33の柱状部34に試料片Qを接続する姿勢)のニードル18および試料片Qのテンプレートを作成する。これによりコンピュータ22は、ニードル18の回転に応じて、集束イオンビームおよび電子ビームの各々により得られる画像データから3次元的にニードル18および試料片Qのエッジ(輪郭)を認識する。なお、コンピュータ22は、ニードル18の回転角度0°でのアプローチモードにおいては、電子ビームを必要とせずに、集束イオンビームにより得られる画像データからニードル18および試料片Qのエッジ(輪郭)を認識してもよい。
コンピュータ22は、ニードル18および試料片Qの背景に構造物がない位置にステージ12を移動させることをステージ駆動機構13またはニードル駆動機構19に指示した際に、実際に指示した場所にニードル18が到達していない場合には、観察倍率を低倍率にしてニードル18を探し、見つからない場合にはニードル18の位置座標を初期化して、ニードル18を初期位置に移動させる。
【0067】
このテンプレート作成(ステップS170)において、先ず、コンピュータ22は、試料片Qおよび試料片Qが接続されたニードル18の先端形状に対するテンプレートマッチング用のテンプレート(レファレンス画像データ)を取得する。コンピュータ22は、照射位置を走査しながらニードル18に荷電粒子ビーム(集束イオンビームおよび電子ビームの各々)を照射する。コンピュータ22は、荷電粒子ビームの照射によってニードル18から放出される二次荷電粒子R(二次電子など)の複数の異なる方向からの各画像データを取得する。コンピュータ22は、集束イオンビーム照射と、電子ビーム照射によって各画像データを取得する。コンピュータ22は、2つの異なる方向から取得した各画像データをテンプレート(レファレンス画像データ)として記憶する。
コンピュータ22は、集束イオンビームにより実際に加工された試料片Qおよび試料片Qが接続されたニードル18に対して実際に取得する画像データをレファレンス画像データとするので、試料片Qおよびニードル18の形状によらずに、精度の高いパターンマッチングを行うことができる。
なお、コンピュータ22は、各画像データを取得する際に、試料片Qおよび試料片Qが接続されたニードル18の形状の認識精度を増大させるために予め記憶した好適な倍率、輝度、コントラスト等の画像取得条件を用いる。
【0068】
次に、コンピュータ22は、ニードル退避の処理を行なう(ステップS180)。これは後続するステージ移動の際に、ステージ12と意図しない接触を防ぐためである。コンピュータ22は、ニードル駆動機構19によってニードル18を所定距離だけ移動させる。例えば、鉛直方向上方(つまりZ方向の正方向)に上昇させる。逆に、ニードル18はその場に停止させておき、ステージ12を所定距離だけ移動させる。例えば、鉛直方向下方(つまりZ方向の負方向)に降下させてもよい。ニードル退避方向は、上述の鉛直方向に限らず、ニードル軸方向であっても、その他の所定退避位置でもよく、ニードル先端に付いている試料片Qが、試料室内の構造物への接触や、集束イオンビームによる照射を受けない、予め定められた位置で有ればよい。
【0069】
次に、コンピュータ22は、上述のステップS020において登録した特定の試料片ホルダPが、荷電粒子ビームによる観察視野領域内に入るようにステージ駆動機構13によってステージ12を移動させる(ステップS190)。
図36および
図37はこの様子を示しており、特に
図36は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10の集束イオンビームにより得られる画像の模式図であって、柱状部34の試料片Qの取り付け位置Uを示す図であり、
図37は、電子ビームにより得られる画像の模式図であって、柱状部34の試料片Qの取り付け位置Uを示す図である。
ここで、所望の試料片ホルダPの柱状部34が観察視野領域内に入るか否かを判定し(ステップS195)、所望の柱状部34が観察視野領域内に入れば、次のステップS200に進む。もし、所望の柱状部34が観察視野領域内に入らなければ、つまり、指定座標に対してステージ駆動が正しく動作しない場合は、直前に指定したステージ座標を初期化して、ステージ12が有する原点位置に戻る(ステップS197)。そして、再度、事前登録した所望の柱状部34の座標を指定して、ステージ12を駆動させ(ステップS190)て、柱状部34が観察視野領域内に入るまで繰り返す。
【0070】
次に、コンピュータ22は、ステージ駆動機構13によってステージ12を移動させて試料片ホルダPの水平位置を調整するとともに、試料片ホルダPの姿勢が所定姿勢になるように、姿勢制御モードに対応した角度分だけステージ12を回転と傾斜させる(ステップS200)。
このステップS200によって、元の試料S表面端面を柱状部34の端面に対して平行または垂直の関係に、試料片Qと試料片ホルダPの姿勢調整することができる。特に、柱状部34に固定した試料片Qを集束イオンビームで薄片化加工を行なうことを想定して、元の試料Sの表面端面と集束イオンビーム照射軸が垂直関係となるように試料片Qと試料片ホルダPの姿勢調整することが好ましい。また、柱状部34に固定する試料片Qが、元の試料Sの表面端面が柱状部34に垂直で、集束イオンビームの入射方向に下流側になるように試料片Qと試料片ホルダPの姿勢調整するのも好ましい。
ここで、試料片ホルダPのうち柱状部34の形状の良否を判定する(ステップS205)。ステップS023で柱状部34の画像を登録したものの、その後の工程で、予期せぬ接触等によって指定した柱状部34が変形、破損、欠落などしていないかを、柱状部34の形状の良否を判定するのがこのステップS205である。このステップS205で、該当柱状部34の形状に問題無く良好と判断できれば次のステップS210に進み、不良と判断すれば、次の柱状部34を観察視野領域内に入るようにステージ移動させるステップS190に戻る。
なお、コンピュータ22は、指定した柱状部34を観察視野領域内に入れるためにステージ12の移動をステージ駆動機構13に指示した際に、実際には指定された柱状部34が観察視野領域内に入らない場合には、ステージ12の位置座標を初期化して、ステージ12を初期位置に移動させる。
そしてコンピュータ22は、ガス供給部17のノズル17aを、集束イオンビーム照射位置近くに移動させる。例えば、ステージ12の鉛直方向上方の待機位置から加工位置に向かい下降させる。
【0071】
<試料片マウント工程>
ここで言う「試料片マウント工程」とは、摘出した試料片Qを試料片ホルダPに移設する工程のことである。
図38は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10による自動サンプリングの動作のうち、試料片Qを所定の試料片ホルダPのうちの所定の柱状部34にマウント(移設)する工程の流れを示すフローチャートである。
コンピュータ22は、集束イオンビームおよび電子ビーム照射により得られる各画像データを用いて、上述したステップS020において記憶した試料片Qの移設位置を認識する(ステップS210)。コンピュータ22は、柱状部34のテンプレートマッチングを実行する。コンピュータ22は、櫛歯形状の試料台33の複数の柱状部34のうち、観察視野領域内に現れた柱状部34が予め指定した柱状部34であることを確認するために、テンプレートマッチングを実施する。コンピュータ22は、予め柱状部34のテンプレートを作成する工程(ステップS020)において作成した柱状部34毎のテンプレートを用いて、集束イオンビームおよび電子ビームの各々の照射により得られる各画像データとテンプレートマッチングを実施する。
【0072】
また、コンピュータ22は、ステージ12を移動した後に実施する柱状部34毎のテンプレートマッチングにおいて、柱状部34に欠落など問題が認められるか否かを判定する(ステップS215)。柱状部34の形状に問題が認められた場合(NG)には、試料片Qを移設する柱状部34を、問題が認められた柱状部34の隣の柱状部34に変更し、その柱状部34についてもテンプレートマッチングを行ない移設する柱状部34を決定する。柱状部34の形状に問題が無ければ次のステップS220に移る。
また、コンピュータ22は、所定領域(少なくとも柱状部34を含む領域)の画像データからエッジ(輪郭)を抽出して、このエッジパターンをテンプレートとしてもよい。また、コンピュータ22は、所定領域(少なくとも柱状部34を含む領域)の画像データからエッジ(輪郭)を抽出することができない場合には、画像データを再度取得する。抽出したエッジを表示装置21に表示し、観察視野領域内の集束イオンビームによる画像または電子ビームによる画像とテンプレートマッチングしてもよい。
【0073】
コンピュータ22は、電子ビームの照射により認識した取り付け位置と集束イオンビームの照射により認識した取り付け位置とが一致するように、ステージ駆動機構13によってステージ12を駆動する。コンピュータ22は、試料片Qの取り付け位置Uが視野領域の視野中心(加工位置)に一致するように、ステージ駆動機構13によってステージ12を駆動する。
【0074】
次に、コンピュータ22は、ニードル18に接続された試料片Qを試料片ホルダPに接触させる処理として、以下のステップS220〜ステップS250の処理を行なう。
先ず、コンピュータ22は、ニードル18の位置を認識する(ステップS220)。コンピュータ22は、ニードル18に荷電粒子ビームを照射することによってニードル18に流入する吸収電流を検出し、吸収電流画像データを生成する。コンピュータ22は、集束イオンビーム照射と、電子ビーム照射によって各吸収電流画像データを取得する。コンピュータ22は、2つの異なる方向からの各吸収電流画像データを用いて3次元空間でのニードル18の先端位置を検出する。
なお、コンピュータ22は、検出したニードル18の先端位置を用いて、ステージ駆動機構13によってステージ12を駆動して、ニードル18の先端位置を予め設定されている視野領域の中心位置(視野中心)に設定してもよい。
【0075】
次に、コンピュータ22は、試料片マウント工程を実行する。先ず、コンピュータ22は、ニードル18に接続された試料片Qの位置を正確に認識するために、テンプレートマッチングを実施する。コンピュータ22は、予めニードル18および試料片Qのテンプレート作成工程(ステップS170)において作成した相互に接続されたニードル18および試料片Qのテンプレートを用いて、集束イオンビームおよび電子ビームの各々の照射により得られる各画像データにおいてテンプレートマッチングを実施する。
なお、コンピュータ22は、このテンプレートマッチングにおいて画像データの所定の領域(少なくともニードル18および試料片Qを含む領域)からエッジ(輪郭)を抽出する際には、抽出したエッジを表示装置21に表示する。また、コンピュータ22は、テンプレートマッチングにおいて画像データの所定の領域(少なくともニードル18および試料片Qを含む領域)からエッジ(輪郭)を抽出することができない場合には、画像データを再度取得する。
そして、コンピュータ22は、集束イオンビームおよび電子ビームの各々の照射により得られる各画像データにおいて、相互に接続されたニードル18および試料片Qのテンプレートと、試料片Qの取付け対象である柱状部34のテンプレートとを用いたテンプレートマッチングに基づき、試料片Qと柱状部34との距離を計測する。
そして、コンピュータ22は、最終的にステージ12に平行な平面内での移動のみによって試料片Qを、試料片Qの取付け対象である柱状部34に移設する。
【0076】
この試料片マウント工程において、先ず、コンピュータ22は、ニードル駆動機構19によってニードル18を移動させるニードル移動を実行する(ステップS230)。コンピュータ22は、集束イオンビームおよび電子ビームの各々の照射により得られる各画像データにおいて、ニードル18および試料片Qのテンプレートと、柱状部34のテンプレートとを用いたテンプレートマッチングに基づき、試料片Qと柱状部34との距離を計測する。コンピュータ22は、計測した距離に応じてニードル18を試料片Qの取付け位置に向かうように3次元空間内で移動させる。
【0077】
次に、コンピュータ22は、柱状部34と試料片Qとの間に予め定めた空隙L2を空けてニードル18を停止させる(ステップS240)。コンピュータ22は、この空隙L2を1μm以下とし、好ましくは、空隙L2を100nm以上かつ500nm以下とする。
この空隙L2が500nm以上の場合であっても接続できるが、デポジション膜による柱状部34と試料片Qとの接続に要する時間が所定値以上に長くなり、1μmは好ましくない。この空隙L2が小さくなるほど、デポジション膜による柱状部34と試料片Qとの接続に要する時間が短くなるが、接触させないことが肝要である。
なお、コンピュータ22は、この空隙L2を設ける際に、柱状部34およびニードル18の吸収電流画像を検知することによって両者の空隙を設けてもよい。
コンピュータ22は、柱状部34とニードル18との間の導通、または柱状部34およびニードル18の吸収電流画像を検知することによって、柱状部34に試料片Qを移設した後において、試料片Qとニードル18との切り離しの有無を検知する。
なお、コンピュータ22は、柱状部34とニードル18との間の導通を検知することができない場合には、柱状部34およびニードル18の吸収電流画像を検知するように処理を切り替える。
また、コンピュータ22は、柱状部34とニードル18との間の導通を検知することができない場合には、この試料片Qの移設を停止し、この試料片Qをニードル18から切り離し、後述するニードルトリミング工程を実行してもよい。
【0078】
次に、コンピュータ22は、ニードル18に接続された試料片Qを柱状部34に接続する処理を行なう(ステップS250)。
図39、
図40は、それぞれ
図36、
図37での観察倍率を高めた画像の模式図である。コンピュータ22は、
図39のように試料片Qの一辺と柱状部34の一辺が一直線になるように、かつ、
図40のように試料片Qの上端面と柱状部34の上端面が同一面になるように接近させ、空隙L2が所定の値になった時にニードル駆動機構19を停止させる。コンピュータ22は、空隙L2を有して試料片Qの取り付け位置に停止した状況で、
図39の集束イオンビームによる画像において、柱状部34の端部を含むようにデポジション用の加工枠R2を設定する。コンピュータ22は、試料片Qおよび柱状部34の表面にガス供給部17によってガスを供給しつつ、所定時間に亘って、加工枠R2を含む照射領域に集束イオンビームを照射する。この操作によっては集束イオンビーム照射部にデポジション膜が形成され、空隙L2が埋まり試料片Qは柱状部34に接続される。コンピュータ22は、柱状部34に試料片Qをデポジションにより固定する工程において、柱状部34とニードル18と間の導通を検知した場合にデポジションを終了する。
【0079】
コンピュータ22は、試料片Qと柱状部34との接続が完了したことの判定を行なう(ステップS255)。ステップS255は、例えば以下のように行なう。予めニードル18とステージ12の間に抵抗計を設置しておき、両者の導通を検出する。両者が離間している(空隙L2がある)時には電気抵抗は無限大であるが、両者が導電性のデポジション膜で覆われて、空隙L2が埋まっていくにつれて両者間の電気抵抗値は徐々に低下し、予め定めた抵抗値以下になったことを確認して電気的に接続されたと判断する。また、事前の検討から、両者間の抵抗値が予め定めた抵抗値に達した時にはデポジション膜は力学的に十分な強度を有し、試料片Qは柱状部34に十分に接続されたと判定できる。
なお、検知するのは上述の電気抵抗に限らず、電流や電圧など柱状部と試料片Qの間の電気特性が計測できればよい。また、コンピュータ22は、予め定めた時間内に予め定めた電気特性(電気抵抗値、電流値、電位など)を満足しなければ、デポジション膜の形成時間を延長する。また、コンピュータ22は、柱状部34と試料片Qの空隙L2、照射ビーム条件、デポジション膜用のガス種について最適なデポジション膜を形成できる時間を予め求めておき、このデポジション形成時間を記憶しておき、所定の時間でデポジション膜の形成を停止することできる。
コンピュータ22は、試料片Qと柱状部34との接続が確認された時点で、ガス供給と集束イオンビーム照射を停止させる。
図41は、この様子を示しており、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10の集束イオンビームによる画像データで、ニードル18に接続された試料片Qを柱状部34に接続するデポジション膜DM1を示す図である。
【0080】
なお、ステップS255においては、コンピュータ22は、ニードル18の吸収電流の変化を検出することによって、デポジション膜DM1による接続状態を判定してもよい。
コンピュータ22は、ニードル18の吸収電流の変化に応じて試料片Qおよび柱状部34がデポジション膜DM1により接続されたと判定した場合に、所定時間の経過有無にかかわらずに、デポジション膜DM1の形成を停止してもよい。接続完了が確認できれば次のステップS260に移り、もし、接続完了しなければ、予め定めた時間で集束イオンビーム照射とガス供給を停止して、集束イオンビームによって試料片Qとニードル18を繋ぐデポジション膜DM2を切断し、ニードル先端の試料片Qは破棄する。ニードルを退避させる動作に移る(ステップS270)。
【0081】
次に、コンピュータ22は、ニードル18と試料片Qとを接続するデポジション膜DM2を切断して、試料片Qとニードル18を分離する処理を行なう(ステップS260)。
上記
図41は、この様子を示しており、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10の集束イオンビームにより得られる画像データにおけるニードル18と試料片Qとを接続するデポジション膜DM2を切断するための切断加工位置T2を示す図である。コンピュータ22は、柱状部34の側面から所定距離(つまり、柱状部34の側面から試料片Qまでの空隙L2と、試料片Qの大きさL3との和)Lと、ニードル18と試料片Qの空隙の所定距離L1(
図41参照)の半分との和(L+L1/2)だけ離れた位置を切断加工位置T2に設定する。また、切断加工位置T2を、所定距離Lとニードル18と試料片Qの空隙の所定距離L1の和(L+L1)だけ離れた位置としてもよい。この場合、ニードル先端に残存するデポジション膜DM2(カーボンデポジション膜)が小さくなって、ニードル18のクリーニング(後述)作業の機会が少なくなって、連続自動サンプリングにとって好ましい。
コンピュータ22は、所定時間に亘って、切断加工位置T2に集束イオンビームを照射することによって、ニードル18を試料片Qから分離できる。コンピュータ22は、所定時間に亘って、切断加工位置T2に集束イオンビームを照射することによって、デポジション膜DM2のみを切断して、ニードル18を切断することなくニードル18を試料片Qから分離する。ステップS260においては、デポジション膜DM2のみを切断することが重要である。これにより、1度セットしたニードル18は長期間、交換せずに繰り返し使用できるため、無人で連続して自動サンプリングを繰返すことができる。
図42は、この様子を示しており、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10における集束イオンビームの画像データによるニードル18が試料片Qから切り離された状態を示す図である。ニードル先端にはデポジション膜DM2の残渣が付いている。
【0082】
コンピュータ22は、試料片ホルダPとニードル18との導通を検出することによって、ニードル18が試料片Qから切り離されたか否かを判定する(ステップS265)。コンピュータ22は、切断加工の終了後、つまり切断加工位置T2でのニードル18と試料片Qとの間のデポジション膜DM2を切断するために、集束イオンビーム照射を所定時間行なった後であっても、試料片ホルダPとニードル18との導通を検出した場合には、ニードル18が試料台33から切り離されていないと判定する。コンピュータ22は、ニードル18が試料片ホルダPから切り離されていないと判定した場合には、このニードル18と試料片Qとの分離が完了していないことを表示装置21に表示するか、または警報音により操作者に報知する。そして、これ以降の処理の実行を停止する。一方、コンピュータ22は、試料片ホルダPとニードル18との導通を検出しない場合には、ニードル18が試料片Qから切り離されたと判定し、これ以降の処理の実行を継続する。
【0083】
次に、コンピュータ22は、ニードル退避の処理を行なう(ステップS270)。コンピュータ22は、ニードル駆動機構19によってニードル18を試料片Qから所定距離だけ遠ざける。例えば、2mm、3mmなど鉛直方向上方、つまりZ方向の正方向に上昇させる。
図43および
図44は、この様子を示しており、それぞれ、ニードル18を試料片Qから上方に退避させた状態を、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10の集束イオンビームによる画像の模式図(
図43)であり、電子ビームによる画像の模式図(
図44)である。
【0084】
次に、引き続いて同じ試料Sの異なる場所からサンプリングを継続するか否かの判断を下す(ステップS280)。サンプリングすべき個数の設定は、ステップS010で事前に登録しているため、コンピュータ22はこのデータを確認して次のステップを判断する。継続してサンプリングする場合は、ステップS030に戻り、上述のように後続する処理を続けサンプリング作業を実行し、サンプリングを継続しない場合は、一連のフローを終了する。
【0085】
なお、ステップS050のニードルのテンプレート作成は、ステップS280の直後に行ってもよい。これにより、次のサンプリングに備えてのステップで、次のサンプリングの際にステップS050で行う必要がなくなり、工程が簡略化できる。
【0086】
以上により、一連の自動サンプリング動作が終了する。
なお、上述したスタートからエンドまでのフローは一例にすぎず、全体の流れに支障が出なければ、ステップの入れ替えやスキップを行なってもよい。
コンピュータ22は、上述したスタートからエンドまでを連続動作させることで、無人でサンプリング動作を実行させることができる。上述の方法により、ニードル18を交換することなく繰り返し試料サンプリングすることができるため、同一のニードル18を用いて多数個の試料片Qを連続してサンプリングすることができる。
これにより荷電粒子ビーム装置10は、試料Sから試料片Qを分離および摘出する際に同じニードル18の成形することなく、さらにはニードル18自体を交換することなく繰り返し使用でき、一個の試料Sから多数個の試料片Qを自動で作製することができる。従来のような操作者の手動操作を施すことなくサンプリングが実行できる。
【0087】
上述したように、本発明の実施形態による荷電粒子ビーム装置10によれば、ニードル18により保持した試料片Qを試料片ホルダPに移設することに先立って、試料片Qの底部Q2を含む加工枠Ta(または加工枠Tb)に基づく整形加工を行なうので、試料片Qを所望の形状に整形加工してから試料片ホルダPに適正に固定することができる。これにより、集束イオンビームによる試料Sの加工によって形成された試料片Qを摘出して試料片ホルダPに移設させるサンプリング動作を自動で連続して実行することができる。
さらに、コンピュータ22は、スキャンローテーションによって、試料片Qにおける所定方向と集束イオンビームの走査方向とが平行になるような回転角度で走査方向を回転させるので、集束イオンビームによる観察視野の中心に対して走査領域を回転させることができる。これにより集束イオンビームにより得られる画像データにおいて、試料片Qにおける所定方向(例えば、元の試料Sの加工時の深さ方向に対応する厚さ方向など)と画像データの座標軸方向とを平行にすることができ、試料片Qの所定方向におけるエッジ抽出の精度を向上させることができる。試料片Qのエッジ抽出の精度を向上させることによって、抽出したエッジに基づく加工枠Taの設定精度を向上させることができる。
さらに、コンピュータ22は、集束イオンビームにより得られる画像データにおいて認識した試料片Qのエッジに基づいて加工枠Taを設定するので、試料片Qの底部Q2を含む適正な整形加工領域を自動的に設定することができ、整形加工を容易に行うことができる。
さらに、コンピュータ22は、ニードル18により試料片Qを保持した後に、試料片Qの整形加工に先立って、ニードル18の軸回転によって試料片ホルダPに対する試料片Qの姿勢を制御するので、試料片Qを試料片ホルダPに移設するために適した姿勢状態を自動的に設定することができる。
さらに、コンピュータ22は、整形加工の実行後、整形加工により生じたスパッタ粒子が試料片Qの観察面Q3に付着して形成されるリデポジションを除去するために、クリーニング加工を実行するので、観察面Q3の観察精度を向上させることができる。
さらに、コンピュータ22は、試料片Qの表面に露出するデバイス構造などのパターンをパターンマッチングにより認識して、パターンに干渉しないように、パターンが存在しない部位に加工枠Taを設定するので、試料片Qに適正な整形加工領域を自動的に設定することができ、整形加工を容易に行うことができる。
【0088】
さらに、コンピュータ22は、少なくとも試料片ホルダP、ニードル18、および試料片Qから直接取得したテンプレートを基にして、集束イオンビーム照射光学系14、電子ビーム照射光学系15、ステージ駆動機構13、ニードル駆動機構19、およびガス供給部17を制御するので、試料片Qを試料片ホルダPに移設する動作を適正に自動化することができる。
さらに、少なくとも試料片ホルダP、ニードル18、および試料片Qの背景に構造物が無い状態で荷電粒子ビームの照射によって取得した二次電子画像、または吸収電流画像からテンプレートを作成するので、テンプレートの信頼性を向上させることができる。これにより、テンプレートを用いたテンプレートマッチングの精度を向上させることができ、テンプレートマッチングによって得られる位置情報を基にして試料片Qを精度良く試料片ホルダPに移設することができる。
【0089】
さらに、少なくとも試料片ホルダP、ニードル18、および試料片Qの背景に構造物が無い状態となるように指示した際に、実際には指示通りになっていない場合には、少なくとも試料片ホルダP、ニードル18、および試料片Qの位置を初期化するので、各駆動機構13、19を正常状態に復帰させることができる。
さらに、試料片Qを試料片ホルダPに移設する際の姿勢に応じたテンプレートを作成するので、移設時の位置精度を向上させることができる。
さらに、少なくとも試料片ホルダP、ニードル18、および試料片Qのテンプレートを用いたテンプレートマッチングに基づき相互間の距離を計測するので、移設時の位置精度を、より一層、向上させることができる。
さらに、少なくとも試料片ホルダP、ニードル18、および試料片Qの各々の画像データにおける所定領域に対してエッジを抽出することができない場合に、画像データを再度取得するので、テンプレートを的確に作成することができる。
さらに、最終的にステージ12に平行な平面内での移動のみによって試料片Qを予め定めた試料片ホルダPの位置に移設するので、試料片Qの移設を適正に実施することができる。
さらに、テンプレートの作成前にニードル18に保持した試料片Qを整形加工するので、テンプレート作成時のエッジ抽出の精度を向上させることができるとともに、後に実行する仕上げ加工に適した試料片Qの形状を確保することができる。さらに、整形加工の位置をニードル18からの距離に応じて設定するので、精度良く整形加工を実施することができる。
さらに、試料片Qを保持するニードル18が所定姿勢になるように回転させる際に、偏芯補正によってニードル18の位置ずれを補正することができる。
【0090】
また、本発明の実施形態による荷電粒子ビーム装置10によれば、コンピュータ22は、試料片Qが形成される際のレファレンスマークRefに対するニードル18の相対位置を検出することによって、試料片Qに対するニードル18の相対位置関係を把握することができる。コンピュータ22は、試料片Qの位置に対するニードル18の相対位置を逐次検出することによって、ニードル18を3次元空間内で適切に(つまり、他の部材や機器などに接触することなしに)駆動することができる。
さらに、コンピュータ22は、少なくとも2つの異なる方向から取得した画像データを用いることによって、ニードル18の3次元空間内の位置を精度良く把握することができる。これによりコンピュータ22は、ニードル18を3次元的に適切に駆動することができる。
【0091】
さらに、コンピュータ22は、予めニードル18を移動させる直前に実際に生成される画像データをテンプレート(レファレンス画像データ)とするので、ニードル18の形状によらずにマッチング精度の高いテンプレートマッチングを行なうことができる。これによりコンピュータ22は、ニードル18の3次元空間内の位置を精度良く把握することができ、ニードル18を3次元空間内で適切に駆動することができる。さらに、コンピュータ22は、ステージ12を退避させ、ニードル18の背景に複雑な構造物がない状態で各画像データ、または吸収電流画像データを取得するので、バックグラウンド(背景)の影響を排除してニードル18の形状が明確に把握できるテンプレートを取得することができる。
【0092】
さらに、コンピュータ22は、ニードル18と試料片Qとを接触させずにデポジション膜により接続するので、後の工程でニードル18と試料片Qとが分離される際にニードル18が切断されてしまうことを防止することができる。さらに、ニードル18の振動が発生する場合であっても、この振動が試料片Qに伝達されることを抑制することができる。さらに、試料Sのクリープ現象による試料片Qの移動が発生する場合であっても、ニードル18と試料片Qとの間に過剰なひずみが生じることを抑制することができる。
【0093】
さらに、コンピュータ22は、集束イオンビーム照射によるスパッタ加工によって試料Sと試料片Qとの接続を切断した場合に、実際に切断が完了しているか否かを、試料Sとニードル18との間の導通有無を検出することによって確認することができる。
さらに、コンピュータ22は、試料Sと試料片Qとの実際の分離が完了していないことを報知するので、この工程に続いて自動的に実行される一連の工程の実行が中断される場合であっても、この中断の原因を装置の操作者に容易に認識させることができる。
さらに、コンピュータ22は、試料Sとニードル18との間の導通が検出された場合には、試料Sと試料片Qとの接続切断が実際には完了していないと判断して、この工程に続くニードル18の退避などの駆動に備えて、試料片Qとニードル18との接続を切断する。これによりコンピュータ22は、ニードル18の駆動に伴う試料Sの位置ずれまたはニードル18の破損などの不具合の発生を防止することができる。
さらに、コンピュータ22は、試料片Qとニードル18との間の導通有無を検出して、試料Sと試料片Qとの接続切断が実際に完了していることを確認してからニードル18を駆動することができる。これによりコンピュータ22は、ニードル18の駆動に伴う試料片Qの位置ずれまたはニードル18や試料片Qの破損などの不具合の発生を防止することができる。
【0094】
さらに、コンピュータ22は、試料片Qが接続されたニードル18に対して、実際の画像データをテンプレートとするので、試料片Qと接続されたニードル18の形状によらずにマッチング精度の高いテンプレートマッチングを行なうことができる。これによりコンピュータ22は、試料片Qと接続されたニードル18の3次元空間内の位置を精度良く把握することができ、ニードル18および試料片Qを3次元空間内で適切に駆動することができる。
【0095】
さらに、コンピュータ22は、既知である試料台33のテンプレートを用いて試料台33を構成する複数の柱状部34の位置を抽出するので、適正な状態の試料台33が存在するか否かを、ニードル18の駆動に先立って確認することができる。
さらに、コンピュータ22は、試料片Qが接続されたニードル18が照射領域内に到達する前後における吸収電流の変化に応じて、ニードル18および試料片Qが移動目標位置の近傍に到達したことを間接的に精度良く把握することができる。これによりコンピュータ22は、ニードル18および試料片Qを移動目標位置に存在する試料台33などの他の部材に接触させること無しに停止させることができ、接触に起因する損傷などの不具合が発生することを防止することができる。
【0096】
さらに、コンピュータ22は、試料片Qおよび試料台33をデポジション膜により接続する場合に試料台33とニードル18との間の導通有無を検出するので、実際に試料片Qおよび試料台33の接続が完了したか否かを精度良く確認することができる。
さらに、コンピュータ22は、試料台33とニードル18との間の導通有無を検出して、試料台33と試料片Qとの接続が実際に完了していることを確認してから試料片Qとニードル18との接続を切断することができる。
【0097】
さらに、コンピュータ22は、実際のニードル18の形状を理想的なレファレンス形状に一致させることにより、ニードル18を3次元空間内で駆動する際などにおいて、パターンマッチングによってニードル18を容易に認識することができ、ニードル18の3次元空間内の位置を精度良く検出することができる。
【0098】
以下、上述した実施形態の第1の変形例について説明する。
上述した実施形態において、ニードル18は集束イオンビーム照射を受けず縮小化や変形されないので、ニードル先端の成形やニードル18の交換はしないとしたが、コンピュータ22は、自動サンプリングの動作が繰り返し実行される場合の適宜のタイミング、例えば繰り返し実行の回数が予め定めた回数ごと、などにおいて、ニードル先端のカーボンデポジション膜の除去加工(本明細書ではニードル18のクリーニングと呼ぶ)を実行してもよい。例えば、自動サンプリング10回に1度クリーニングを行なう。以下、このニードル18のクリーニングを施す判断方法について説明する。
【0099】
第1の方法として、まず、自動サンプリングを実施する直前、もしくは、定期的に、背景に複雑な構造のない位置で、電子ビーム照射によるニードル先端の二次電子画像を取得する。二次電子画像はニードル先端に付着したカーボンデポジション膜まで明瞭に確認できる。この二次電子画像をコンピュータ22に記憶する。
次に、ニードル18を動かさずに、同じ視野、同じ観察倍率で、ニードル18の吸収電流画像を取得する。吸収電流画像ではカーボンデポジション膜は確認できす、ニードル18の形状のみが認識できる。この吸収電流画像もコンピュータ22に記憶する。
ここで、二次電子画像から吸収電流画像を減算処理することで、ニードル18が消去され、ニードル先端から突き出したカーボンデポジション膜の形状が顕在化する。この顕在化したカーボンデポジション膜の面積が、予め定めた面積を超えた時、ニードル18を切削しないように、カーボンデポジション膜を集束イオンビーム照射によってクリーニングする。この時、カーボンデポジション膜は、上記の予め定めた面積以下であれば残っていてもよい。
【0100】
次に、第2の方法として、上記顕在化したカーボンデポジション膜の面積ではなく、ニードル18の軸方向(長手方向)におけるカーボンデポジション膜の長さが、予め定めた長さを超えた時をニードル18のクリーニング時期と判断してもよい。
さらに、第3の方法として、上記のコンピュータに記憶した二次電子画像におけるカーボンデポジション膜先端の、画像上の座標を記録する。また、上記のコンピュータ22に記憶した吸収電流画像におけるニードル先端の画像上の座標を記憶する。ここで、カーボンデポジション膜の先端座標と、ニードル18の先端座標からカーボンデポデポジション膜の長さが算出できる。この長さが予め定めた値を超えた時を、ニードル18のクリーニング時期と判断してもよい。
さらに、第4の方法として、予め最適と思われるカーボンデポジション膜を含めたニードル先端形状のテンプレートを作成しておき、サンプリングを複数回繰り返して行なった後のニードル先端の二次電子画像に重ね合わせ、このテンプレートからはみ出した部分を集束イオンビームで削除するようにしてもよい。
さらに、第5の方法として、上記顕在化したカーボンデポジション膜の面積ではなく、ニードル18の先端のカーボンデポジション膜の厚さが、予め定めた厚さを超えた時をニードル18のクリーニング時期と判断してもよい。
これらのクリーニング方法は、例えば、
図38におけるステップS280の直後で行えばよい。
なお、クリーニングは上述した方法などによって実施するが、クリーニングによっても予め定めた形状にならない場合、予め定めた時間内にクリーニングができない場合、または、予め定めた期間ごとにおいて、ニードル18を交換してもよい。ニードル18を交換した後も、上述の処理フローは変更されず、上述同様に、ニードル先端形状を保存するなどのステップを実行する。
【0101】
以下、上述した実施形態の第2の変形例について説明する。
上述した実施形態において、ニードル駆動機構19はステージ12と一体に設けられるとしたが、これに限定されない。ニードル駆動機構19は、ステージ12と独立に設けられてもよい。ニードル駆動機構19は、例えば試料室11などに固定されることによって、ステージ12の傾斜駆動などから独立して設けられてもよい。
【0102】
以下、上述した実施形態の第3の変形例について説明する。
上述した実施形態において、集束イオンビーム照射光学系14は光軸を鉛直方向とし、電子ビーム照射光学系15は光軸を鉛直に対して傾斜した方向としたが、これに限定されない。例えば、集束イオンビーム照射光学系14は光軸を鉛直に対して傾斜した方向とし、電子ビーム照射光学系15は光軸を鉛直方向としてもよい。
【0103】
以下、上述した実施形態の第4の変形例について説明する。
上述した実施形態において、荷電粒子ビーム照射光学系として集束イオンビーム照射光学系14と電子ビーム照射光学系15の2種のビームが照射できる構成としたが、これに限定されない。例えば、電子ビーム照射光学系15が無く、鉛直方向に設置した集束イオンビーム照射光学系14のみの構成としてもよい。この場合に用いるイオンは、負電荷のイオンとする。
上述した実施形態では、上述のいくつかのステップにおいて、試料片ホルダP、ニードル18、試料片Q等に対して電子ビームと集束イオンビームを異なる方向から照射して、電子ビームによる画像と集束イオンビームによる画像を取得し、試料片ホルダP、ニードル18、試料片Q等の位置や位置関係を把握していたが、集束イオンビーム照射光学系14のみを搭載し、集束イオンビームの画像のみで行なってもよい。以下、この実施例について説明する。
例えば、ステップS220において、試料片ホルダPと試料片Qとの位置関係を把握する場合には、ステージ12の傾斜が水平の場合と、或る特定の傾斜角で水平から傾斜する場合とにおいて、試料片ホルダPと試料片Qの両者が同一視野に入るように集束イオンビームによる画像を取得し、それら両画像から、試料片ホルダPと試料片Qの三次元的な位置関係が把握できる。上述したように、ニードル駆動機構19はステージ12と一体で水平垂直移動、傾斜ができるため、ステージ12が水平、傾斜に関わらず、試料片ホルダPと試料片Qの相対位置関係は保持される。そのため、荷電粒子ビーム照射光学系が集束イオンビーム照射光学系14の1本だけであっても、試料片Qを異なる2方向から観察、加工することができる。
同様に、ステップS020における試料片ホルダPの画像データの登録、ステップS040におけるニードル位置の認識、ステップS050におけるニードルのテンプレート(レファレンス画像)の取得、ステップS170における試料片Qが接続したニードル18のレファレンス画像の取得、ステップS210における試料片Qの取り付け位置の認識、ステップS250におけるニードル移動停止においても同様に行なえばよい。
また、ステップS250における試料片Qと試料片ホルダPとの接続おいても、ステージ12が水平状態において試料片ホルダPと試料片Qの上端面からデポジション膜を形成して接続し、さらに、ステージ12を傾斜させて異なる方向からデポジション膜が形成でき、確実な接続ができる。
【0104】
以下、上述した実施形態の第5の変形例について説明する。
上述した実施形態において、コンピュータ22は、自動サンプリングの動作として、ステップS010からステップS280の一連の処理を自動的に実行するとしたが、これに限定されない。コンピュータ22は、ステップS010からステップS280のうちの少なくとも何れか1つの処理を、操作者の手動操作によって実行するように切り替えてもよい。
また、コンピュータ22は、複数の試料片Qを自動サンプリングの動作を実行する場合に、試料Sに複数の摘出直前の試料片Qの何れか1つが形成される毎に、この1つの摘出直前の試料片Qに対して自動サンプリングの動作を実行してもよい。また、コンピュータ22は、試料Sに複数の摘出直前の試料片Qの全てが形成された後に、複数の摘出直前の試料片Qの各々に対して連続して自動サンプリングの動作を実行してもよい。
【0105】
以下、上述した実施形態の第6の変形例について説明する。
上述した実施形態において、コンピュータ22は、既知である柱状部34のテンプレートを用いて柱状部34の位置を抽出するとしたが、このテンプレートとして、予め実際の柱状部34の画像データから作成するレファレンスパターンを用いてもよい。また、コンピュータ22は、試料台33を形成する自動加工の実行時に作成したパターンを、テンプレートとしてもよい。
また、上述した実施形態において、コンピュータ22は、柱状部34の作成時に荷電粒子ビームの照射によって形成されるレファレンスマークRefを用いて、試料台33の位置に対するニードル18の位置の相対関係を把握してもよい。コンピュータ22は、試料台33の位置に対するニードル18の相対位置を逐次検出することによって、ニードル18を3次元空間内で適切に(つまり、他の部材や機器などに接触することなしに)駆動することができる。
【0106】
以下、上述した実施形態の第7の変形例について説明する。
上述した実施形態において、試料片Qを試料片ホルダPに接続させるステップS220からステップS250までの処理を次のように行なってもよい。つまり、試料片ホルダPの柱状部34と試料片Qと画像から、それらの位置関係(互いの距離)を求め、それらの距離が目的の値となるようにニードル駆動機構19を動作させる処理である。
ステップS220において、コンピュータ22は、電子ビーム及び集束イオンビームによるニードル18、試料片Q、柱状部34の二次粒子画像データまたは吸収電流画像データからそれらの位置関係を認識する。
図45および
図46は、柱状部34と試料片Qの位置関係を模式的に示した図であり、
図45は集束イオンビーム照射によって、
図46は電子ビーム照射によって得た画像を基にしている。これらの図から柱状部34と試料片Qの相対位置関係を計測する。
図45のように柱状部34の一角を原点34aとして直交3軸座標(ステージ12の3軸座標とは異なる座標)を定め、柱状部34の原点34aと試料片Qの基準点Qcの距離として、
図45から距離DX、DYが測定される。
一方、
図46からは距離DZが求まる。但し、電子ビーム光学軸と集束イオンビーム軸(鉛直)に対して角度θ(但し、0°<θ≦90°)だけ傾斜しているとすると、柱状部34と試料片QのZ軸方向の実際の距離はDZ/sinθとなる。
次に、柱状部34に対する試料片Qの移動停止位置関係を
図45、
図46で説明する。
柱状部34の上端面(端面)34bと試料片Qの上端面Qbを同一面とし、かつ、柱状部34の側面と試料片Qの断面が同一面となり、しかも、柱状部34と試料片Qとの間には約0.5μmの空隙がある位置関係とする。つまり、DX=0、DY=0.5μm、DZ=0となるように、ニードル駆動機構19を動作させることで、目標とする停止位置に試料片Qを到達させることができる。
なお、電子ビーム光学軸と集束イオンビーム光学軸が垂直(θ=90°)関係にある構成では、電子ビームによって計測された柱状部34と試料片Qの距離DZは、測定値が実際の両者の距離となる。
【0107】
以下、上述した実施形態の第8の変形例について説明する。
上述した実施形態におけるステップS230では、ニードル18を画像から計測した柱状部34と試料片Qの間隔が目標の値となるようにニードル駆動機構19を動作させた。
上述した実施形態において、試料片Qを試料片ホルダPに接続させるステップS220からステップS250までの処理を次のように行なってもよい。つまり、試料片ホルダPの柱状部34への試料片Qの取り付け位置をテンプレートとして予め定めておき、その位置に試料片Qの画像をパターンマッチングさせて、ニードル駆動機構19を動作させる処理である。
柱状部34に対する試料片Qの移動停止位置関係を示すテンプレートを説明する。柱状部34の上端面34bと試料片Qの上端面Qbを同一面とし、かつ、柱状部34の側面と試料片Qの断面が同一面となり、しかも、柱状部34と試料片Qとの間には約0.5μmの空隙がある位置関係である。このようなテンプレートは、実際の試料片ホルダPや試料片Qを固着したニードル18の二次粒子画像や吸収電流画像データから輪郭(エッジ)部を抽出して線画を作成してもよいし、設計図面、CAD図面から線画として作成してもよい。
作成したテンプレートのうち柱状部34をリアルタイムでの電子ビーム及び集束イオンビームによる柱状部34の画像に重ねて表示し、ニードル駆動機構19に動作の指示を出すことで、試料片Qはテンプレート上の試料片Qの停止位置に向かって移動する(ステップS230)。リアルタイムでの電子ビーム及び集束イオンビームによる画像が、予め定めたテンプレート上の試料片Qの停止位置に重なったことを確認して、ニードル駆動機構19の停止処理を行なう(ステップS240)。このようにして、試料片Qを予め定めた柱状部34に対する停止位置関係に正確に移動させることができる。
【0108】
また、上述のステップS230からステップS250の処理の別の形態として、次のようにしてもよい。二次粒子画像や吸収電流画像データから抽出するエッジ部の線画は、両者の位置合わせに最低限必要な部分のみに限定する。
図47は、その一例を示しており、柱状部34と試料片Qと輪郭線(点線表示)と、抽出したエッジ(太実線表示)が示されている。柱状部34と試料片Qの注目するエッジは、それぞれが向い合うエッジ34s、Qs、及び、柱状部34と試料片Qの各上端面34b、Qbのエッジ34t、Qtの一部である。柱状部34については線分35aと35bで、試料片Qについては線分36aと36bで、各線分は各エッジの一部で十分である。このような各線分から、例えばT字形状のテンプレートとする。ステージ駆動機構13やニードル駆動機構19を動作させることで対応するテンプレートが移動する。これらのテンプレート35a、35b及び36a、36bは、相互の位置関係から、柱状部34と試料片Qの間隔、平行度、両者の高さが把握でき、両者を容易に合わせることができる。
図48は予め定めた柱状部34と試料片Qの位置関係に対応するテンプレートの位置関係であり、線分35aと36aは予め定めた間隔の平行で、かつ、線分35bと36bが一直線上にある位置関係にある。少なくともステージ駆動機構13、ニードル駆動機構19のいずれかを動作させて、テンプレートが
図48の位置関係になった時に動作させている駆動機構が停止する。
このように、試料片Qが所定の柱状部34に接近していることを確認した後に、精密な位置合わせに用いることができる。
【0109】
次に、上述した実施形態の第9の変形例として、上述のステップS220からS250における、別の形態例について説明する。
上述した実施形態におけるステップS230ではニードル18を移動させた。もし、ステップS230を終えた試料片Qが、目的位置から大きくずれた位置関係にある場合、次の動作を行なってもよい。
ステップS220において、移動前の試料片Qの位置は、各柱状部34の原点とした直交3軸座標系において、Y>0、Z>0の領域に在ることが望ましい。これは、ニードル18の移動中に試料片Qが柱状部34への衝突の危険性が極めて少ないためで、ニードル駆動機構19のX、Y、Z駆動部を同時に動作させて、安全に迅速に目的位置に到達できる。一方、移動前の試料片Qの位置がY<0の領域にある場合、試料片Qを停止位置に向けてニードル駆動機構19のX、Y、Z駆動部を同時に動作させると、柱状部34に衝突する危険性が大きい。このため、ステップS220で試料片QがY<0の領域にある場合、ニードル18は柱状部34を避けた経路で目標位置に到達させる。具体的には、まず、試料片Qをニードル駆動機構19のY軸のみを駆動させ、Y>0の領域まで移動させて所定の位置(例えば注目している柱状部34の幅の2倍、3倍、5倍、10倍などの位置)まで移動させ、次に、X、Y、Z駆動部の同時動作によって最終的な停止位置に向けて移動する。このようなステップによって、試料片Qを柱状部34に衝突することなく、安全に迅速に移動させることができる。また、万一、試料片Qと柱状部34のX座標が同じで、Z座標が柱状部上端より低い位置にある(Z<0)ことが、電子ビーム画像、又は/及び、集束イオンビーム画像から確認された場合、まず、試料片QをZ>0領域(例えば、Z=2μm、3μm、5μm、10μmの位置)に移動させ、次に、Y>0の領域の所定の位置まで移動させ、次に、X、Y、Z駆動部の同時動作によって最終的な停止位置に向けて移動する。このように移動することで、試料片Qと柱状部34は衝突すること無く、試料片Qを目的位置に到達することができる。
【0110】
次に、上述した実施形態の第10の変形例を説明する。
第10の変形例では、荷電粒子ビーム装置10において、ニードル18がニードル駆動機構19によって軸回転することができることを利用して、平面試料を作製する実施形態を説明する。
平面試料は、試料内部にあって試料表面に平行な面を観察するために、分離摘出した試料片Qを元の試料表面に平行になるように薄片化した試料片Qを指す。
図49は、分離摘出された試料片Qがニードル18の先端に固定された状態を示した図であり、電子ビームによる像を模式的に示している。ニードル18の試料片Qへの固定には、
図10から
図14に示した方法で固定されている。ニードル18の回転軸が(
図1のXY面)に対して45°傾斜した位置に設定されている場合、ニードル18を90°回転させることによって、分離摘出された試料片Qの上端面Qbは、水平面(
図1のXY面)からXY面に垂直な面に姿勢制御される。
図50は、ニードル18の先端に固定された試料片Qが試料片ホルダPの柱状部34に接するように移動した状態を示す図である。柱状部34の側面34dは、最終的に透過電子顕微鏡で観察するとき、電子ビームの照射方向に垂直な位置関係となる面であり、一方の側面(端面)34eは電子ビームの照射方向に平行な位置関係となる面である。なお、柱状部34の側面(上端面34f)は、
図1において、集束イオンビームの照射方向に垂直な位置関係にある面で、柱状部34の上端面である。
本実施例では、ニードル18により姿勢制御された試料片Qの上端面Qbが、試料片ホルダPの柱状部34の側面34dに平行になるよう、望ましくは同一面になるように移動させ、試料片Qの断面を試料片ホルダPに面接触させる。試料片Qが試料片ホルダPに接触したことを確認した後、柱状部34の上端面34fで、試料片Qと試料片ホルダPの接触部に、試料片Qと試料片ホルダPに掛かるようにデポジション膜を形成する。
図51は、試料片ホルダPに固定された試料片Qに対して集束イオンビームを照射して、平面試料37を作製した状態を示す模式図である。試料表面から予め定めた試料深さにある平面試料37は、試料片Qの上端面Qbからの距離で求まり、試料片Qの上端面Qbに平行に、予め定めた厚さとなるよう集束イオンビームを照射することで、平面試料37が作製できる。このような平面試料37によって、試料表面に平行で、試料内部の構造や組成分布を知ることができる。
平面試料37の作製方法はこれに限らず、試料片ホルダPが0〜90°の範囲で傾斜可能な機構に搭載されているならは、ステージ12の回転と、試料片ホルダPの傾斜によって、プローブを回転することなく作製できる。また、ニードル18の傾斜角が45°以外の0°から90°の範囲にある場合は、試料片ホルダPの傾斜角を適正に定めることでも平面試料37を作製することができる。
このようにして平面試料37が作製でき、試料表面に平行で所定深さにある面を電子顕微鏡観察することができる。
なお、本実施例では、摘出分離した試料片Qを、柱状部34の側面34dに固定した。柱状部34の上端部に固定することも考えられるが、集束イオンビームによる試料Sの薄片加工時に、集束イオンビームが柱状部34の上端部を叩き、その場から発生したスパッタ粒子が薄片部に付着して顕微鏡観察に相応しくない試料片Qにしてしまうため、側面34dに固定することが望ましい。
【0111】
以下、他の実施形態について説明する。
(a1)荷電粒子ビーム装置は、
試料から試料片を自動的に作製する荷電粒子ビーム装置であって、
少なくとも、
荷電粒子ビームを照射する複数の荷電粒子ビーム照射光学系(ビーム照射光学系)と、
前記試料を載置して移動する試料ステージと、
前記試料から分離および摘出する前記試料片に接続するニードルを有して、前記試料片を搬送する試料片移設手段と、
前記試料片が移設される柱状部を有する試料片ホルダを保持するホルダ固定台と、
前記荷電粒子ビームの照射によってデポジション膜を形成するガスを供給するガス供給部と、
前記試料片と前記柱状部との間の電気特性を計測し、前記柱状部に空隙を設けて静止させた前記試料片と前記柱状部を跨いで前記デポジション膜を予め定めた電気特性値に達するまで形成するように、少なくとも前記荷電粒子ビーム照射光学系と前記試料片移設手段、前記ガス供給部を制御するコンピュータと、
を備える。
【0112】
(a2)荷電粒子ビーム装置は、
試料から試料片を自動的に作製する荷電粒子ビーム装置であって、
少なくとも、
荷電粒子ビームを照射する複数の荷電粒子ビーム照射光学系(ビーム照射光学系)と、
前記試料を載置して移動する試料ステージと、
前記試料から分離および摘出する前記試料片に接続するニードルを有して、前記試料片を搬送する試料片移設手段と、
前記試料片が移設される柱状部を有する試料片ホルダを保持するホルダ固定台と、
前記荷電粒子ビームの照射によってデポジション膜を形成するガスを供給するガス供給部と、
前記試料片と前記柱状部との間の電気特性を計測し、予め定めた時間、前記柱状部に空隙を設けて静止させた前記試料片と前記柱状部を跨いで前記デポジション膜を形成するように、少なくとも前記荷電粒子ビーム照射光学系と前記試料片移設手段、前記ガス供給部を制御するコンピュータと、
を備える。
【0113】
(a3)荷電粒子ビーム装置は、
試料から試料片を自動的に作製する荷電粒子ビーム装置であって、
少なくとも、
集束イオンビームを照射する集束イオンビーム照射光学系(ビーム照射光学系)と、
前記試料を載置して移動する試料ステージと、
前記試料から分離および摘出する前記試料片に接続するニードルを有して、前記試料片を搬送する試料片移設手段と、
前記試料片が移設される柱状部を有する試料片ホルダを保持するホルダ固定台と、
前記集束イオンビームの照射によってデポジション膜を形成するガスを供給するガス供給部と、
前記試料片と前記柱状部との間の電気特性を計測し、前記柱状部に空隙を設けて静止させた前記試料片と前記柱状部を跨いで前記デポジション膜を予め定めた電気特性値に達するまで形成するように、少なくとも前記集束イオンビーム照射光学系と前記試料片移設手段、前記ガス供給部を制御するコンピュータと、
を備える。
【0114】
(a4)荷電粒子ビーム装置は、
試料から試料片を自動的に作製する荷電粒子ビーム装置であって、
少なくとも、
集束イオンビームを照射する集束イオンビーム照射光学系(ビーム照射光学系)と、
前記試料を載置して移動する試料ステージと、
前記試料から分離および摘出する前記試料片に接続するニードルを有して、前記試料片を搬送する試料片移設手段と、
前記試料片が移設される柱状部を有する試料片ホルダを保持するホルダ固定台と、
前記集束イオンビームの照射によってデポジション膜を形成するガスを供給するガス供給部と、
前記試料片と前記柱状部との間の電気特性を計測し、予め定めた時間、前記柱状部に空隙を設けて静止させた前記試料片と前記柱状部を跨いで前記デポジション膜を形成するように、少なくとも前記集束イオンビーム照射光学系と前記試料片移設手段、前記ガス供給部を制御するコンピュータと、
を備える。
【0115】
(a5)上記(a1)または(a2)に記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記荷電粒子ビームは、
少なくとも集束イオンビーム及び電子ビームを含む。
【0116】
(a6)上記(a1)から(a4)の何れか1つに記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記電気特性は、電気抵抗、電流、電位のうちの少なくともいずれかである。
【0117】
(a7)上記(a1)から(a6)の何れか1つに記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記コンピュータは、前記試料片と前記柱状部との間の電気特性が、予め定めた前記デポジション膜の形成時間内に、予め定めた電気特性値を満足しない場合、前記柱状部と前記試料片の前記空隙がさらに小さくなるように前記試料片を移動し、静止させた前記試料片と前記柱状部を跨いで前記デポジション膜を形成するように、少なくとも前記ビーム照射光学系と前記試料片移設手段、前記ガス供給部を制御する。
【0118】
(a8)上記(a1)から(a6)の何れか1つに記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記コンピュータは、前記試料片と前記柱状部との間の電気特性が、予め定めた前記デポジション膜の形成時間内に、予め定めた電気特性値を満足した場合、前記デポジション膜の形成を停止させるように、少なくとも前記ビーム照射光学系と前記ガス供給部を制御する。
【0119】
(a9)上記(a1)または(a3)に記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記空隙は1μm以下である。
【0120】
(a10)上記(a9)に記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記空隙は100nm以上、200nm以下である。
【0121】
(b1)荷電粒子ビーム装置は、
試料から試料片を自動的に作製する荷電粒子ビーム装置であって、
荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射光学系と、
前記試料を載置して移動する試料ステージと、
前記試料から分離および摘出した前記試料片を保持して搬送する試料片移設手段と、
前記試料片が移設される柱状部を有する試料片ホルダを保持するホルダ固定台と、
前記荷電粒子ビームの照射によって取得した前記柱状部の画像を基にして、前記柱状部のテンプレートを作成し、前記テンプレートを用いたテンプレートマッチングによって得られる位置情報を基にして、前記試料片を前記柱状部に移設するよう前記荷電粒子ビーム照射光学系と前記試料片移設手段とを制御するコンピュータと、を備える。
【0122】
(b2)上記(b1)に記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記試料片ホルダは、離間配置される複数の前記柱状部を備え、前記コンピュータは、前記複数の前記柱状部の各々の画像を基にして、前記複数の前記柱状部の各々のテンプレートを作成する。
【0123】
(b3)上記(b2)に記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記コンピュータは、前記複数の前記柱状部の各々のテンプレートを用いたテンプレートマッチングによって、前記複数の前記柱状部のうち対象とする前記柱状部の形状が予め登録した所定形状に一致するか否かを判定する判定処理を行ない、前記対象とする前記柱状部の形状が前記所定形状に一致しない場合、前記対象とする前記柱状部を新たに他の前記柱状部に切り替えて前記判定処理を行ない、前記対象とする前記柱状部の形状が前記所定形状に一致する場合、該柱状部に前記試料片を移設するよう前記荷電粒子ビーム照射光学系と前記試料片移設手段または前記試料ステージの移動とを制御する。
【0124】
(b4)上記(b2)または(b3)の何れか1つに記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記コンピュータは、前記複数の前記柱状部のうち対象とする前記柱状部を所定位置に配置するように前記試料ステージの移動を制御する際に、前記対象とする前記柱状部が前記所定位置に配置されない場合、前記試料ステージの位置を初期化する。
【0125】
(b5)上記(b4)に記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記コンピュータは、前記複数の前記柱状部のうち対象とする前記柱状部を所定位置に配置するように前記試料ステージの移動を制御する際に、前記試料ステージの移動後に前記対象とする前記柱状部の形状に問題があるか否かを判定する形状判定処理を行ない、前記対象とする前記柱状部の形状に問題がある場合、前記対象とする前記柱状部を新たに他の前記柱状部に切り替えて、該柱状部を前記所定位置に配置するように前記試料ステージの移動を制御するとともに前記形状判定処理を行なう。
【0126】
(b6)上記(b1)から(b5)の何れか1つに記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記コンピュータは、前記試料から前記試料片を分離および摘出することに先立って前記柱状部のテンプレートを作成する。
【0127】
(b7)上記(b3)に記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記コンピュータは、前記複数の前記柱状部の各々の画像、該画像から抽出するエッジ情報、または前記複数の前記柱状部の各々の設計情報を前記テンプレートとして記憶し、該テンプレートを用いたテンプレートマッチングのスコアによって前記対象とする前記柱状部の形状が前記所定形状に一致するか否かを判定する。
【0128】
(b8)上記(b1)から(b7)の何れか1つに記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記コンピュータは、前記試料片が移設された前記柱状部に対する前記荷電粒子ビームの照射によって取得する画像と、前記試料片が移設された前記柱状部の位置情報とを記憶する。
【0129】
(c1)荷電粒子ビーム装置は、
試料から試料片を自動的に作製する荷電粒子ビーム装置であって、
荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射光学系と、
前記試料を載置して移動する試料ステージと、
前記試料から分離および摘出した前記試料片を保持して搬送する試料片移設手段と、
前記試料片が移設される柱状部を有する試料片ホルダを保持するホルダ固定台と、
前記荷電粒子ビームの照射によってデポジション膜を形成するガスを供給するガス供給部と、
前記試料片移設手段を前記試料片から分離した後に、前記試料片移設手段に付着している前記デポジション膜に前記荷電粒子ビームを照射するよう前記荷電粒子ビーム照射光学系と前記試料片移設手段を制御するコンピュータと、を備える。
【0130】
(c2)上記(c1)に記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記試料片移設手段は、複数回に亘って繰り返して前記試料から分離および摘出した前記試料片を保持して搬送する。
【0131】
(c3)上記(c1)または(c2)に記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記コンピュータは、
前記試料片移設手段を前記試料片から分離するたびごとのタイミングを少なくとも含む所定タイミングで繰り返して、前記試料片移設手段に付着している前記デポジション膜に前記荷電粒子ビームを照射するよう前記荷電粒子ビーム照射光学系と前記試料片移設手段を制御する。
【0132】
(c4)上記(c1)から(c3)の何れか1つに記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記コンピュータは、前記試料片から分離した前記試料片移設手段を所定位置に配置するように前記試料片移設手段の移動を制御する際に、前記試料片移設手段が前記所定位置に配置されない場合、前記試料片移設手段の位置を初期化する。
【0133】
(c5)上記(c4)に記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記コンピュータは、前記試料片移設手段の位置を初期化した後に前記試料片移設手段の移動を制御したとしても前記試料片移設手段が前記所定位置に配置されない場合、該試料片移設手段に対する制御を停止する。
【0134】
(c6)上記(c1)から(c5)の何れか1つに記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記コンピュータは、前記試料片に接続する前の前記試料片移設手段に対する前記荷電粒子ビームの照射によって取得した画像を基にして、前記試料片移設手段のテンプレートを作成し、前記テンプレートを用いたテンプレートマッチングによって得られる輪郭情報を基にして、前記試料片移設手段に付着している前記デポジション膜に前記荷電粒子ビームを照射するよう前記荷電粒子ビーム照射光学系と前記試料片移設手段を制御する。
【0135】
(c7)上記(c6)に記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記輪郭情報を表示する表示装置を備える。
【0136】
(c8)上記(c1)から(c7)の何れか1つに記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記コンピュータは、前記試料片移設手段が所定姿勢になるように前記試料片移設手段を中心軸周りに回転させる際に、偏心補正を行なう。
【0137】
(c9)上記(c1)から(c8)の何れか1つに記載の荷電粒子ビーム装置では、
前記試料片移設手段は、前記試料片に接続するニードルまたはピンセットを備える。
【0138】
なお、上述した実施形態では、コンピュータ22は、ソフトウェア機能部、またはLSIなどのハードウェア機能部も含む。
また、上述した実施形態では、ニードル18は先鋭化された針状部材を一例として説明したが、先端が平たがね状などの形状であってもよい。
【0139】
また、本発明では、少なくとも摘出する試料片Qがカーボンから構成されている場合にも適用できる。本発明によるテンプレートと先端位置座標を用いて所望の位置に移動させることができる。つまり、摘出した試料片Qをニードル18の先端に固定された状態で、試料片ホルダPに移設する際に、試料片Q付きのニードル18を荷電粒子ビーム照射による二次電子画像から取得した真の先端座標(試料片の先端座標)と、試料片Q付きのニードル18の吸収電流画像から形成したニードル18のテンプレートを用いて、試料片Qを試料片ホルダPに所定の空隙を有して接近し、停止するよう制御することができる。
【0140】
また、本発明は、他の装置でも適用できる。例えば、微小部の電気特性を、探針を接触させて計測する荷電粒子ビーム装置、特に、荷電粒子ビームのうち電子ビームによる走査電子顕微鏡の試料室内に金属探針を装備した装置で、微細領域の導電部に接触させるために、タングステン探針の先端にカーボンナノチューブを備えた探針を用いて計測する荷電粒子ビーム装置において、通常の二次電子像では、配線パターン等の背景のためにタングステン探針先端が認識できない。そこで、吸収電流画像によってタングステン探針を認識し易くできるが、カーボンナノチューブの先端が認識できす、肝心の測定点にカーボンナノチューブを接触させることができない。そこで、本発明のうち、二次電子画像によってニードル18の真の先端座標を特定し、吸収電流画像によってテンプレートを作成する方法を用いることで、カーボンナノチューブ付きの探針を特定の測定位置に移動させ、接触させることができる。
【0141】
なお、上述の本発明による荷電粒子ビーム装置10によって作製された試料片Qは、別の集束イオンビーム装置に導入して、透過電子顕微鏡解析に相応しい薄さまで、装置操作者が慎重に操作し、加工してもよい。このように本発明による荷電粒子ビーム装置10と集束イオンビーム装置とを連携することによって、夜間に無人で多数個の試料片Qを試料片ホルダPに固定しておき、昼間に装置操作者が慎重に超薄の透過電子顕微鏡用試料に仕上げることができる。このため、従来、試料摘出から薄片加工までの一連作業を、一台の装置で装置操作者の操作に頼っていたことに比べて、装置操作者への心身の負担は大幅に軽減され、作業効率が向上する。
【0142】
なお、上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、本発明による荷電粒子ビーム装置10では、試料片Qを摘出する手段としてニードル18について説明をしたが、これに限定されることは無く、微細に動作するピンセットであってもよい。ピンセットを用いることで、デポジションを行なうことなく試料片Qを摘出でき、先端の損耗などの心配もない。ニードル18を使った場合であっても、試料片Qとの接続はデポジションに限定されることは無く、ニードル18に静電気力を付加した状態で試料片Qに接触させ、静電吸着して試料片Qとニードル18の接続を行なってもよい。