(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電性フィラーが、樹枝状の金属微粒子であり、前記金属微粒子が、銀微粒子、銅微粒子、銀コート銅微粒子からなる群から選択した1種以上であり、前記難燃性接着剤と、前記架橋剤の不揮発分との合計体積VAを100(VOL%)としたとき、前記導電性フィラーの体積VCが、15〜60(VOL%)の範囲であり、かつ、前記導電性フィラーと、前記アンチブロッキング剤との合計体積VBが、15(VOL%)超過70(VOL%)以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のFPC用導電性接着シート。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、タブレット端末などの携帯用の電子機器においては、筐体の外形寸法を小さく抑えて持ち運び易くするために、プリント基板の上に電子部品を集積させている。さらに、筐体の外形寸法を小さくするため、プリント基板を複数に分割し、その分割されたプリント基板間を、可撓性を有するFPCを使用して接続配線することにより、プリント基板を折畳む、あるいは、スライドさせることが行われている。
また、近年では、電子機器の外部から受信する電磁波のノイズ、あるいは電子機器の内部に配設された電子部品の相互間で受信する電磁波のノイズの影響を受けて、電子機器が誤動作するのを防止するため、重要な電子部品やFPCを電磁波シールド材で被覆することが行われている。
【0003】
従来、このような電磁波遮蔽の目的で使用される電磁波シールド材としては、圧延銅箔、軟質アルミニウム箔等の、金属箔の表面に粘着剤層を設けたものが用いられていた。このような金属箔からなる電磁波シールド材を用いて、遮蔽対象物を覆うことが行われていた(例えば、特許文献1を参照)。
具体的には、重要な電子部品を電磁波から遮蔽するために、金属箔や金属板を用いて密閉箱状にして、覆い被せることが行われていた。また、屈曲するFPCの配線を電磁波から遮蔽するには、金属箔の片面に粘着剤層を設けたものを使用し、粘着剤層を介して貼り合わせることが行われていた。
【0004】
そうすると、携帯電話に使用されているFPC、及びFPCを被覆して電磁波遮蔽しているFPC用電磁波シールド材は、従来の携帯式の電子機器の常識を超える頻度で屈曲動作を繰り返して受けている。このため、FPCの電磁波遮蔽の役割を果たしているFPC用電磁波シールド材が、過酷な繰り返し応力を受けている。その繰り返し応力に耐えられなくなると、最終的には、FPC用電磁波シールド材を構成している支持体、及び金属箔などのシールド材が破断、あるいは剥離などの損傷を受け、FPC用電磁波シールド材としての機能が低下、あるいは消失してしまうことが懸念される。
そのため、このような繰り返しの屈曲動作を受けることに対処した、電磁波シールド材も知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
また、近年では、身辺に携帯する電子機器として、携帯電話、タブレット端末などが急速に普及している。携帯電話においては、使用しないでポケットやカバンなどに収納する時には全体の寸法をなるべく小さくし、使用する時には、全体の寸法を拡大できることが好ましい。そこで、携帯電話を小型化・薄型化することと、操作性の改善を図ることが求められている。
また、電子機器に組み込まれるFPCには、部品を実装した側に対向する側面やコネクタで接続されるFPCの端末などに、プラスチック板の補強板が貼り付けられていたが、近年では、薄型化のためにステンレス等からなる薄板の金属補強板が貼り付けることが提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に開示されている、圧延銅箔、軟質アルミニウム箔等の金属箔の表面に粘着剤層を設けた電磁波シールド材においては、屈曲動作の回数が少なく、使用される期間が短い場合においては、シールド性能に支障は無い。
しかし、最近の携帯電話では、筐体の外形寸法の厚みを0.1mm単位で削減し、可能な限り薄型にすることが求められていて、適用できない。
【0008】
また、特許文献2の実施例に記載されている電磁波シールド材は、厚さが12μmの樹脂フィルムに、厚み0.5μmの導電性塗料の塗布膜、及び厚みが30μmの導電性接着剤層を積層しており、電磁波シールド材の全体の厚みが40μmを超えるものである。
上記のとおり、携帯電話の筐体の外形寸法を可能な限り薄くするため、FPC用電磁波シールド材は、全体の厚みを30μm以下に薄くすることが求められている。つまり、従来のFPC用電磁波シールド材に比較すると、全体の厚みがより薄く、かつ、より厳しい屈曲試験に耐える丈夫なFPC用電磁波シールド材が求められている。
【0009】
また、特許文献3に記載の、金属補強板を備えたフレキシブルプリント配線板は、FPCのグランド回路と、金属補強板とを、導電性接着剤を介して接着している。ところが、所定の寸法に断裁された金属補強板と、導電性接着剤との積層体を積み重ねた場合には、ブロッキング現象を起こして、剥がすのが困難になるという問題があった。
このため、金属補強板に貼合したFPC用導電性接着シートを、積み重ねた状態において、導電性接着剤層と、金属補強板とがブロッキングを起こさないで、容易に剥離できる易剥離性を備え、かつ、FPCに強固に固着するFPC用導電性接着シートが必要とされている。
【0010】
本発明の課題は、上記の状況に鑑み、金属補強板に貼合したFPC用導電性接着シートを、積み重ねた状態において、導電性接着剤層と、金属補強板とがブロッキングを起こさないで、容易に剥離できる易剥離性を備え、かつ、FPCに強固に固着するFPC用導電性接着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のFPC用導電性接着シートは、導電性接着剤層と、金属補強板とがブロッキングを起こさないで、容易に剥離できる易剥離性を備え、かつ、FPCに強固に固着させることができるという、相反する物性を持たせる必要がある。
このため、難燃性樹脂と架橋剤の不揮発分との合計体積に対して、導電性フィラーとアンチブロッキング剤との合計体積、又は、導電性フィラーの体積を、所定の範囲にすることにより、この相反する物性を両立させることを技術思想としている。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、FPCに使用されるFPC用導電性接着シートであって、支持体フィルムの片面に、難燃性
接着剤と、架橋剤と、導電性フィラーと、アンチブロッキング剤と、を含む接着性組成物を塗布して導電性接着剤層が積層されてな
り、前記難燃性接着剤と、前記架橋剤の不揮発分との合計体積VAを100(VOL%)としたとき、前記アンチブロッキング剤の体積VDが、0(VOL%)超過15(VOL%)以下の範囲であり、かつ、前記導電性フィラーと、前記アンチブロッキング剤との合計体積VBが、15〜70(VOL%)の範囲であり、前記FPC用導電性接着シートの前記導電性接着剤層の一方の面を、被着体である金属補強板に熱ラミネートにより貼り合わせ、前記導電性接着剤層のもう一方の面から、前記支持体フィルムを取り除いた状態にした複数の金属補強板付きFPC用導電性接着シートを、順次、積み重ねて保管しても、前記金属補強板付きFPC用導電性接着シートの前記導電性接着剤層の前記もう一方の面と、別の前記金属補強板付きFPC用導電性接着シートの前記金属補強板とがブロッキングを起こさないことを特徴とするFPC用導電性接着シートを提供する。
【0013】
また、前記アンチブロッキング剤が、疎水性シリカ粉であり、前記難燃性樹脂と、前記架橋剤の不揮発分との合計体積V
Aを100(VOL%)としたとき、前記導電性フィラーと、前記アンチブロッキング剤との合計体積V
Bが、15〜70(VOL%)の範囲であることが好ましい。
【0014】
また、前記難燃性樹脂が、リン含有ポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0015】
また、前記導電性フィラーが、樹枝状の金属微粒子であり、前記金属微粒子が、銀微粒子、銅微粒子、銀コート銅微粒子からなる群から選択した1種以上であり、前記難燃性樹脂と、前記架橋剤の不揮発分との合計体積V
Aを100(VOL%)としたとき、前記導電性フィラーの体積V
Cが、15〜60(VOL%)の範囲であることが好ましい。
【0016】
また、前記難燃性樹脂と、前記架橋剤の不揮発分との合計体積V
Aを100(VOL%)としたとき、前記アンチブロッキング剤の体積V
Dが、0(VOL%)超過15(VOL%)以下の範囲であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、上記のFPC用導電性接着シートが、FPCの表面に金属補強板を貼り合わせるために使用されているFPCを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のFPC用導電性接着シートによれば、支持体フィルムの片面に、難燃性樹脂と、架橋剤と、導電性フィラーと、を含む接着性組成物、又は、難燃性樹脂と、架橋剤と、導電性フィラーと、アンチブロッキング剤と、を含む接着性組成物を塗布して導電性接着剤層が積層されてなることで、金属補強板に貼合したFPC用導電性接着シートを、積み重ねた状態において、導電性接着剤層と、金属補強板とがブロッキングを起こさないで、容易に剥離できる易剥離性を備え、かつ、FPCに強固に固着させることができる。
このため、本発明のFPC用導電性接着シートは、導電性接着剤層を介して金属補強板に積層された後、所定の寸法に切断され、金属補強板付き導電性接着シートとして、支持体フィルムを取り除いた状態で積み重ねて保管されるが、ブロッキング現象を起こすことが避けられ、容易に剥がすことができる。従って、本発明のFPC用導電性接着シートは、FPCに、金属補強板付き導電性接着シート(金属補強板と導電性接着剤層との積層体)を貼合する作業工程の効率向上を図ることができ、生産性の向上に寄与することができ、産業上の利用価値が大である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
本発明のFPC用導電性接着シートは、導電性接着剤層の一方の面を、被着体である金属補強板などに貼り合わせ、導電性接着剤層のもう一方の面から支持体フィルムを取り除いて得られた積層体である、被着体付き導電性接着シートを重ね合わせて保管する間に、導電性接着剤層のもう一方の面と、被着体(金属補強板など)の外表面とがブロッキングを起こさないで、被着体付き導電性接着シートを一つずつ、容易に剥離でき、且つ、FPCに強固に接着できるよう、難燃性樹脂と架橋剤の不揮発分との合計体積に対して、導電性フィラーとアンチブロッキング剤との合計体積を、所定範囲に設定している。
【0021】
図1は、本発明に係わるFPC用導電性接着シートの一例を示す、概略断面図である。
図1に示した、本発明のFPC用導電性接着シート5は、片面が剥離処理された支持体フィルム1の剥離処理面に、導電性接着剤層13を積層してなる。また、
図3に示したように、FPC用導電性接着シート5は、導電性接着剤層13を介して金属補強板6に積層された後、所定の寸法に切断され、金属補強板付き導電性接着シート30として、支持体フィルム1を取り除いた状態で積み重ねて保管される。この金属補強板付き導電性接着シート30は、金属補強板6と導電性接着剤層13との積層体であり、
図2の態様にて、FPC用電磁波シールド性補強板として使用することができる。
図2において、FPC20は、基板フィルム8上に実装部品7とアース回路9を有し、絶縁フィルム11上に絶縁性接着剤層10を設けたカバーレイ12により、アース回路9が保護された構成である。カバーレイ12にはスルーホール14が設けられ、金属補強板付き導電性接着シート30の導電性接着剤層13が、スルーホール14を通じてアース回路9と接触することにより、金属補強板6が電磁波シールド材として機能する。
【0022】
(支持体フィルム)
本発明に使用する支持体フィルム1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
支持体フィルム1が、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどであって、支持体フィルム自体に、ある程度の剥離性を有している場合には、支持体フィルム1の上に、剥離処理を施さなくて、直接に、導電性接着剤層13を積層してもよい。また、支持体フィルム1から、導電性接着剤層13を、より剥離し易くするための剥離処理を、支持体フィルム1の表面に施してもよい。
また、上記の支持体フィルム1として用いる樹脂フィルムが、剥離性を有していない場合には、アミノアルキッド樹脂やシリコーン樹脂等の剥離剤を塗布した後、加熱乾燥することにより、剥離処理が施される。本発明のFPC用導電性接着シート5は、FPCに貼り合わされるので、この剥離剤には、シリコーン樹脂を使用しないことが望ましい。なぜなら、シリコーン樹脂を剥離剤として用いると、支持体フィルム1の表面に接触した導電性接着剤層13の表面に、シリコーン樹脂の一部が移行し、さらに導電性接着剤層13の内部を通じて導電性接着剤層13のもう一方の面へと移行する恐れがあるためである。この導電性接着剤層13の表面に移行したシリコーン樹脂が、金属補強板6に対する導電性接着剤層13の接着力を弱める恐れがある。
本発明に使用される支持体フィルム1の厚みは、FPCに貼着して使用する際の、導電性接着剤層13の厚みからは除外されるので、特に限定されないが、通常12〜150μm程度である。
【0023】
(導電性接着剤層)
本発明に係わるFPC用導電性接着シート5は、支持体フィルム1の一方の面に、導電性接着剤層13が積層されている。導電性接着剤層13は、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤などの接着剤群から選択された接着剤に難燃性を付与した難燃性樹脂(難燃性接着剤)と、架橋剤とで構成される樹脂成分に、銀、銅、銀コート銅等の導電性の微粒子から選択された1種以上の導電性フィラーを混ぜて導電性を持たせた接着性組成物から構成される。この接着性組成物には、さらに、シリカ等の無機微粒子粉やアクリル、スチレン等からなる有機フィラーから1種以上選択されるアンチブロッキング剤を使用することもできるが、特に限定されない。
導電性接着剤層13は、常温で感圧接着性を示す粘着剤層ではなく、加熱加圧による接着剤層であると、耐熱性が低下し難くなり好ましい。
図1〜3に示す導電性接着剤層13は、樹脂成分の難燃性樹脂及び架橋剤2と、導電性フィラー3と、アンチブロッキング剤4とを含有する。
図1〜3では、粒子相互の接触による導電性を表現するため、導電性フィラー3を樹枝状で説明したが、粒子形状は特に限定されず、球状、フレーク状などの他の形状でもよい。また、導電性フィラー3と区別するため、アンチブロッキング剤4を球状にしたが、粒子形状は特に限定されず、柱状、破砕状などの他の形状でもよい。導電性接着剤層13の樹脂成分は、難燃性樹脂及び架橋剤以外の成分(添加剤等)を含んでもよい。
【0024】
導電性接着剤層13に配合する難燃性樹脂(難燃性接着剤)は、特に限定されず、従来から公知のものを適用できる。難燃性樹脂は、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもよい。樹脂の添加物として、リン系、ハロゲン系、アンチモン系、金属水酸化物等の難燃剤を、配合してもよい。また、高分子の樹脂自体が、樹脂と同一分子中に、リン系、ハロゲン系等の難燃性成分となる官能基を有してもよい。
また、難燃性樹脂は、架橋剤と架橋し易いように、酸価が高い方が好ましい。難燃性樹脂の酸価は、5以上が好ましく、10以上であることがより好ましい。難燃性樹脂の酸価が、前述の下限値未満、例えば5未満の場合には、架橋が十分に行われず、十分な耐熱性が得られない場合がある。
導電性接着剤層13に配合する架橋剤としては、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましい。そのようなエポキシ樹脂には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型などが挙げられる。その中でも多官能エポキシ樹脂が耐熱性の観点で好ましい。そのような多官能エポキシ樹脂としては、例えばjER(登録商標)154、jER157、jER1031、jER1032(三菱化学(株))、EPICLON(登録商標) N−740、EPICLON N−770(DIC(株))、YDPN−638、YDCN−700、YH−434(新日鉄住金化学(株))、TETRAD(登録商標)―X、TETRAD―C(三菱瓦斯化学(株))などが挙げられるが、特に限定されない。
【0025】
また、導電性接着剤層13の樹脂中の、難燃性樹脂の配合比は、難燃成分の濃度によって決まり、例えばリン系難燃剤を導入した難燃性樹脂では、全樹脂分中のリン濃度が、1.0重量%以上であることが好ましい。全樹脂分中のリン濃度が、1.0重量%未満である場合には、十分な難燃性が得られない場合がある。
【0026】
導電性接着剤層13に配合する導電性フィラー3は、特に限定されず、従来から公知のものを適用できる。例えば、カーボンブラックや、銀、ニッケル、銅、アルミニウムなどの金属からなる、樹枝状の金属微粒子、及びそれらの金属微粒子の表面に他の金属を被覆した複合金属微粒子が挙げられ、これらの1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
また、上記のFPC用導電性接着シート5においては、優れた導電性を得るために、導電性フィラー粒子相互の接触、および導電性フィラーと被着体であるFPCとの接触が良くなるように、導電性フィラー3を多量に含有させると、導電性接着剤層13の接着力が低下する。一方、接着力を高めるために導電性フィラー3の含有量を低減すると、導電性フィラー3と被着体であるFPCとの接触が不十分となって、導電性が低下するという、相反する問題がある。このため、導電性フィラーの配合量は、難燃性樹脂と、架橋剤の不揮発分との合計体積V
Aを100(VOL%)としたとき、導電性フィラーの体積V
Cが、15〜60(VOL%)の範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜30(VOL%)の範囲である。
【0027】
導電性接着剤層13に配合するアンチブロッキング剤4は、特に限定されず、従来から公知のものを適用できる。例えば、シリカや炭酸カルシウムなどの無機フィラー、アクリル、スチレンなどからなる有機フィラー等が挙げられ、これらのうち1種または2種を適宜選択して使用できる。
また、上記のFPC用導電性接着シート5においては、耐ブロッキング性を得るために多量のアンチブロッキング剤4を含有させると接着力が低下する。一方、接着力を高めるためにアンチブロッキング剤4の含有量を低減させると、FPC用導電性接着シートが金属補強板とブロッキングしてしまい、作業性が悪くなる場合があるという、相反する問題がある。このため、アンチブロッキング剤の配合量は、難燃性樹脂と、架橋剤の不揮発分との合計体積V
Aを100(VOL%)としたとき、アンチブロッキング剤の体積V
Dが、0〜15(VOL%)の範囲であることが好ましい。導電性接着剤層13がアンチブロッキング剤4を含有する場合、V
Aを100(VOL%)としたとき、V
Dが、0.01(VOL%)以上であることが好ましい。
また、導電性フィラー3も耐ブロッキング性を有するため、導電性接着剤層13にアンチブロッキング剤4を配合しなくてもよい。導電性フィラーと、アンチブロッキング剤の配合量は、難燃性樹脂と、架橋剤の不揮発分との合計体積V
Aを100(VOL%)としたとき、導電性フィラーと、前記アンチブロッキング剤との合計体積V
Bが、15〜70(VOL%)の範囲であることが好ましい。
【0028】
導電性接着剤層13の接着力は、特に制限を受けないが、その測定方法はJIS C 6471の8.1.1の方法Aに記載の試験方法に準ずる。被着体表面に対する接着力が、剥離角度90°ピール、剥離速度50mm/分の条件下で、15〜30N/cmの範囲が好適である。接着力が15N/cm未満では、例えば、FPCに貼り合わせた電磁波シールド材が剥がれたり浮いたりする場合がある。
FPCに対するFPC用導電性接着シートの加熱加圧接着の条件は、特に限定されるものではないが、例えば温度を160℃、加圧力を4.5MPaとして60分間熱プレスすることが好ましい。
【0029】
(剥離フィルム)
図1に示した本発明に係わるFPC用導電性接着シート5は、支持体フィルム1の一方の面に、導電性接着剤層13が積層されている。また、本発明に係わるFPC用導電性接着シート5は、支持体フィルム1の一方の面に、導電性接着剤層13が積層され、基材の片面に剥離剤層を積層した剥離フィルムが、該剥離剤層を介して導電性接着剤層13に貼り合わされている構成であっても良い。
剥離フィルムの基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。これらの樹脂フィルムに、アミノアルキッド樹脂やシリコーン樹脂等の剥離剤を塗布した後、加熱乾燥することにより、剥離処理が施される。本発明のFPC用導電性接着シートは、FPCに貼り合わされるので、この剥離剤には、シリコーン樹脂を使用しないことが望ましい。なぜならシリコーン樹脂を剥離剤として用いると、剥離フィルムの表面に接触した導電性接着剤層の表面に、シリコーン樹脂の一部が移行し、さらにFPC用導電性接着シートの内部を通じて導電性接着剤層から支持体フィルム1へと移行する恐れがあるためである。この導電性接着剤層の表面に移行したシリコーン樹脂が導電性接着剤層の接着力を弱める恐れがある。本発明に使用される剥離フィルムの厚みは、特に限定されないが、通常12〜150μm程度である。
【0030】
本発明のFPC用導電性接着シートは、所定の寸法に断裁された金属補強板6と導電性接着剤層13との積層体である、金属補強板付き導電性接着シート30を積み重ねた場合には、ブロッキング現象を起こすことが避けられ、一つ一つの金属補強板付き導電性接着シート30を、容易に剥がすことができ、ロボットハンドなどを用いた自動化ラインに使用することができる。このため、本発明のFPC用導電性接着シートは、FPCに、金属補強板付き導電性接着シートを貼合する作業工程の効率向上を図ることができ、生産性の向上に寄与することができ、産業上の利用価値が大である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例により何ら制限されるものではない。
【0032】
(実施例1)
片面に剥離処理を施した、厚みが50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを、支持体フィルム1として用いた。
別途、難燃性樹脂の40%溶液(A−1)250重量部(樹脂分は100重量部)に対して、架橋剤70%溶液(B−1)を8.3重量部(樹脂分は5.8重量部)、アンチブロッキング剤(平均粒子径16nmの疎水性シリカ)を11.2重量部、平均粒径17μmの銀コート銅(戸田工業(株)製、品名:RM−D1)を167重量部加え、メチルエチルケトン及びトルエンで希釈し、撹拌混練して導電性接着剤溶液を得た。
この導電性接着剤溶液において、難燃性樹脂の40%溶液(A−1)及び架橋剤70%溶液(B−1)のうち固形分の合計量(すなわち全樹脂分)100VOL%に対して、アンチブロッキング剤の体積比は5.8VOL%であった。また、銀コート銅の量は、樹脂及びアンチブロッキング剤を合わせた固形分(117重量部)の143重量%であった。
得られた導電性接着剤溶液を、上述の支持体フィルム1の剥離処理面の上に、乾燥後の厚みがダイヤルゲージで測定して40μmになるように塗布し、150℃、3分間加熱乾燥して、半硬化させ、実施例1のFPC用導電性接着シートを得た。
【0033】
(実施例2〜3)
導電性フィラーの配合割合を表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2〜3のFPC用導電性接着シートを得た。
(実施例4〜5)
導電性フィラーの配合割合を表1の通り変更し、且つ、アンチブロッキング剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4〜5のFPC用導電性接着シートを得た。
(実施例6)
導電性フィラーを後述のD−2とし、配合割合を表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例6のFPC用導電性接着シートを得た。
【0034】
(比較例1〜6)
導電性フィラー及びアンチブロッキング剤の量を表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1〜6のFPC用導電性接着シートを得た。
【0035】
(接着力の測定方法)
厚さ30μmのSUS箔(日新製鋼(株)製、材質:SUS304)からなる金属補強板に、FPC用導電性接着シートの導電性接着剤層13側を対向させて重ね、140℃、1m/分の条件で熱ラミネートした後、支持体フィルム1を剥離し、FPC用導電性接着シートを50mm×120mmの寸法に裁断した。裁断した金属補強板付き導電性接着シートの導電性接着剤層側と対向させて、厚さ50μmのポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製、品番:200H)を重ね、160℃、2.5MPaで60分間熱プレスして試験片を得た。JIS−C−6471「フレキシブルプリント配線板用銅張積層板試験方法」の8.1.1の方法A(90°方向引きはがし)に準じて、厚さ30μmのSUS箔側を支持金具に固定し、後から接着した厚さ50μmのポリイミドフィルムを引き剥がして剥離力(N/cm)を測定した。
【0036】
(耐ブロッキング性の評価方法)
厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製、品番:100H)に、FPC用導電性接着シートの導電性接着剤層13側を対向させて重ね、140℃、1m/分の条件で熱ラミネートした後、支持体フィルム1を剥離し、90mm×140mmの寸法に裁断した。裁断したポリイミドフィルム付き導電性接着シートをSUS板に固定し5kgの重しを載せて、常温で1時間放置しサンプルを作成した。JIS−C−6471「フレキシブルプリント配線板用銅張積層板試験方法」の8.1.1の方法B(180°方向引きはがし)に準じて、SUS板からポリイミドフィルム付き導電性接着シートを引き剥がして剥離力(mN/50mm)を測定した。剥離力が100mN/50mm未満のサンプルを○とし、それ以上を×とした。
この評価方法は、2つの金属補強板付き導電性接着シートを積み重ねたときに引き起こされる、ブロッキング現象のモデルとして、1つの金属補強板付き導電性接着シート(導電性接着剤層の側)を、ポリイミドフィルム付き導電性接着シートで代用し、もう1つの金属補強板付き導電性接着シート(金属補強板の側)を、SUS板で代用したものである。
【0037】
(導電性の評価方法)
厚さ30μmのSUS箔(日新製鋼(株)製、材質:SUS304)からなる金属補強板6の片面に、FPC用導電性接着シート5の導電性接着剤層13側を対向させて重ね、140℃、1m/分の条件で熱ラミネートした後、幅15mm×長さ100mmの寸法に裁断してから支持体フィルム1を剥離し、金属補強板付き導電性接着シート30を得た。次に、
図4に示したように、ポリイミドフィルムからなる基板フィルム8上に、幅5mm×長さ50mmの短冊状の銅箔片9を、30mmのピッチ間隔で一列に並べて、複数の銅箔片を配置して、模擬的なフレキシブル基板を作成した。
次に、
図5に示したように、その模擬的なフレキシブル基板の短冊状の銅箔片9の一部分を、直径1.5mmのスルーホール14を有するカバーレイフィルム12で覆い、さらに、スルーホール14を覆うように、導電性接着剤層13を介して金属補強板付き導電性接着シート30を仮固定し、160℃、2.5MPaで60分間熱プレスして、導電性の評価用試験片を得た。次に、前記模擬的なフレキシブル基板の銅箔片9が露出した部分と、金属補強板付き導電性接着シート30の金属補強板6との間の電気抵抗を、デジタルマルチメーター(株式会社TFFケースレーインスツルメンツ社製、型式:2100/100)で測定し、電気抵抗が0.5Ω未満のサンプルを(○)、0.5Ω以上〜1.0Ω未満のサンプルを(△)、1.0Ω以上のサンプルを(×)とした。
【0038】
(試験結果)
実施例1〜6、及び比較例1〜6について、上記の試験方法にて、導電性ペースト層の接着試験を行い、得られた試験結果を表1〜2に示した。表1〜2における略号は、以下のものを示す。
・難燃性樹脂の40%溶液(A−1):東洋紡(株)製、商品名「UR−3575」(難燃性ポリウレタン樹脂、リン含有濃度:2.5%、酸価:10KOHmg/g)
・架橋剤70%溶液(B−1):東洋紡製、商品名「HY−30」
・アンチブロッキング剤(C−1):日本アエロジル(株)製、商品名「R972」(疎水性フュームドシリカ)
・導電性フィラー(D−1):戸田工業(株)製、商品名「RM−D1」(平均粒径17μmの10%銀ハイブリッド銅粉)
・導電性フィラー(D−2):福田金属箔粉工業(株)製、商品名「FCC−TBX」(平均粒径8μmの10%銀コート銅粉)
【0039】
また、表1〜2において、「A−1」、「B−1」、「C−1」、「D−1」、「D−2」の欄に示す数値は、実施例1に説明したように、各成分の重量部(溶液の場合は固形分のみ)を示す。また、「C−1」、「D−1」、「D−2」欄の()内に示す数値は、難燃性樹脂と架橋剤の不揮発分との合計体積V
Aを100としたときの各成分の体積比(VOL%)を示す。「―」は当該成分を含まないことを意味する。
また、難燃性樹脂と架橋剤の不揮発分との合計体積V
Aに対する、アンチブロッキング剤の体積V
Dとの比(V
D/V
A×100%)、及び、導電性フィラーの体積V
Cとの比(V
C/V
A×100%)は、難燃性樹脂及び架橋剤の密度を1.2g/cm
3、アンチブロッキング剤(疎水性シリカ)の密度を2.2g/cm
3、導電性フィラー(10%銀コート銅粉)の密度を9.1g/cm
3として算出した。ここで、粉体の密度は、粉体の隙間を体積から除外した、物質自体の密度(真の密度)である。また、表1の「フィラー体積比」欄は、アンチブロッキング剤の体積比と、導電性フィラーの体積比との合計値(V
B/V
A×100%)を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
表1、2の試験結果によれば、難燃性樹脂と、架橋剤の不揮発分との合計体積V
Aを100(VOL%)としたとき、導電性フィラーと、アンチブロッキング剤との合計体積V
Bが、15〜70(VOL%)の範囲である実施例1〜6では、耐ブロッキング性と接着力を両立できている。しかし、比較例1〜2のように導電性フィラーの配合量が少なくなると耐ブロッキング性が悪くなる。また、比較例4〜6のように、アンチブロッキング剤の配合量が多くなると、耐ブロッキング性は優れるが、接着力が低下する。また、比較例1〜4のように、導電性フィラーの配合量が少ない場合は、導電性能が低下する。そのうち、比較例1〜2は、接着力は十分であるものの、耐ブロッキング性が劣り、導電性能も低下している。
よって、難燃性樹脂と架橋剤の不揮発分との合計体積に対して、導電性フィラーとアンチブロッキング剤との合計体積を、所定の範囲にすることにより、耐ブロッキング性、接着力、導電性を兼ね備えた、作業性が良好なFPC用導電性接着シートを得ることができた。