特許第6541374号(P6541374)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6541374
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20190628BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20190628BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   H01L21/302 201A
   H01L21/302 101G
   C23C16/44 B
【請求項の数】20
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-39883(P2015-39883)
(22)【出願日】2015年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-29700(P2016-29700A)
(43)【公開日】2016年3月3日
【審査請求日】2017年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-151121(P2014-151121)
(32)【優先日】2014年7月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】浅川 雄二
(72)【発明者】
【氏名】緑川 洋平
(72)【発明者】
【氏名】戸田 聡
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 宏幸
【審査官】 早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−012663(JP,A)
【文献】 特表2004−529272(JP,A)
【文献】 特表2010−534952(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/187192(WO,A1)
【文献】 特開2000−091320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306−21/308
H01L 21/465−21/467
H01L 21/205
H01L 21/365
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空雰囲気下で被処理基板に処理ガスにより所定の処理を施す基板処理装置であって、
真空雰囲気に保持され、被処理基板が収容されるチャンバーと、
前記チャンバー内で被処理基板を載置する基板載置台と、
前記チャンバー内に処理ガスを含むガスを導入するガス導入部材と、
前記チャンバー内に昇降可能に設けられ、前記基板載置台の上方の被処理基板を含む領域に処理空間を規定する隔壁を形成するための隔壁部材と、
前記隔壁部材を昇降させる昇降機構とを備え、
前記隔壁部材は、処理空間を規定するための筒状部と、筒状部の上部に鍔状に設けられたフランジ部と、前記フランジ部内に設けられたヒーターを有し、前記ヒーターの熱により前記処理空間の均熱性を高めることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記ヒーターは、前記フランジ部内の大気圧に保持された空間に設けられていることを特徴とする請求項に記載の基板処理装置。
【請求項3】
真空雰囲気下で複数の被処理基板に処理ガスにより所定の処理を施す基板処理装置であって、
真空雰囲気に保持され、複数の被処理基板が収容されるチャンバーと、
前記チャンバー内でそれぞれ被処理基板を載置する複数の基板載置台と、
前記チャンバー内に処理ガスを含むガスを導入するガス導入部材と、
前記チャンバー内に昇降可能に設けられ、前記複数の基板載置台の上方の被処理基板を含む領域にそれぞれ処理空間を規定する隔壁を形成するための隔壁部材と、
前記隔壁部材を昇降させる昇降機構とを備え、
前記隔壁部材は、各処理空間を規定するための複数の筒状部と、前記複数の筒状部の上部に共通して鍔状に設けられたフランジ部と、前記フランジ部内に設けられたヒーターを有し、前記ヒーターの熱により前記処理空間の均熱性を高めることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
前記隔壁部材は、複数の処理空間を規定する隔壁を一括して形成することを特徴とする請求項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記ガス導入部材は、前記処理空間に対応して複数設けられ、前記各ガス導入部材から対応する前記処理空間に処理ガスが導入されることを特徴とする請求項または請求項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記ヒーターは、前記フランジ部内の大気圧に保持された空間に設けられていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記ガス導入部材は、前記基板載置台に対向して設けられ、前記処理空間を形成する際に前記隔壁部材と前記ガス導入部材との間をシールする第1のシール部材をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第1のシール部材は、本体部と、本体部から斜めに突出し、シール部を構成するリップ部とを有するリップシールであり、前記隔壁部材と前記ガス導入部材との間のクリアランスが1.6〜3.6mmの範囲になるようにシールすることを特徴とする請求項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板載置台の周囲に間隔をあけて設けられたスリットを有するインナーウォールと、前記処理空間を形成する際に前記隔壁部材と前記インナーウォールとの間をシールする第2のシール部材とをさらに備え、前記処理空間からの排気は、前記基板載置台とインナーウォールの間の空間から前記スリットを介して行われることを特徴とする請求項または請求項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第2のシール部材は、本体部と、本体部から斜めに突出し、シール部を構成するリップ部とを有するリップシールであり、前記隔壁部材と前記インナーウォールとの間のクリアランスが1.6〜3.6mmの範囲になるようにシールすることを特徴とする請求項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記隔壁部材の内側と外側の差圧が300Torr以下であることを特徴とする請求項または請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記昇降機構は、前記隔壁部材を昇降動可能なアクチュエータと、アクチュエータから延び、先端が前記隔壁部材に取り付けられた駆動軸と、先端が前記隔壁部材に取り付けられ、前記チャンバーの外部に延びる複数のガイド軸とを有し、前記ガイド軸は、真空状態に保持された前記チャンバーの内部と大気圧空間である前記チャンバーの外部との差圧による押し上げ力により上昇して前記隔壁部材を上昇させることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記ガイド軸は、前記隔壁部材に接続された上部軸と、前記上部軸に接続された下部軸とを有し、前記上部軸と前記下部軸とは、これらとの間で滑りを生じる滑り部材を介して、滑りを許容した状態で結合され、熱膨張差を吸収可能に構成されていることを特徴とする請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記ガス導入部材は、前記基板載置台に対向して設けられ、下面に多数のガス吐出孔を有し、前記処理空間にシャワー状に処理ガスを吐出することを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記ガス導入部材からのガス導入を制御する制御部をさらに有し、前記制御部は、前記隔壁部材を昇降させる際に、前記チャンバー内にパーティクルが排気側に導かれるガスの流れを形成して、被処理基板へのパーティクルの付着を抑制するように前記ガス導入部材からガスを導入させることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記隔壁部材を昇降させる際に、前記ガスのガス流量が500〜1000sccm、前記チャンバー内の圧力が1000mTorr以上となるように前記ガス導入部材からのガスの導入を制御することを特徴とする請求項15に記載の基板処理装置。
【請求項17】
真空雰囲気下で被処理基板に処理ガスにより所定の処理を施す基板処理装置であって、
真空雰囲気に保持され、被処理基板が収容されるチャンバーと、
前記チャンバー内で被処理基板を載置する基板載置台と、
前記チャンバー内に処理ガスを含むガスを導入するガス導入部材と、
前記チャンバー内に昇降可能に設けられ、前記基板載置台の上方の被処理基板を含む領域に処理空間を規定する隔壁を形成するための隔壁部材と、
前記隔壁部材を昇降させる昇降機構とを備え、
前記ガス導入部材は、前記基板載置台に対向して設けられ、前記処理空間を形成する際に前記隔壁部材と前記ガス導入部材との間をシールする第1のシール部材をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項18】
真空雰囲気下で被処理基板に処理ガスにより所定の処理を施す基板処理装置であって、
真空雰囲気に保持され、被処理基板が収容されるチャンバーと、
前記チャンバー内で被処理基板を載置する基板載置台と、
前記チャンバー内に処理ガスを含むガスを導入するガス導入部材と、
前記チャンバー内に昇降可能に設けられ、前記基板載置台の上方の被処理基板を含む領域に処理空間を規定する隔壁を形成するための隔壁部材と、
前記隔壁部材を昇降させる昇降機構とを備え、
前記昇降機構は、前記隔壁部材を昇降動可能なアクチュエータと、アクチュエータから延び、先端が前記隔壁部材に取り付けられた駆動軸と、先端が前記隔壁部材に取り付けられ、前記チャンバーの外部に延びる複数のガイド軸とを有し、前記ガイド軸は、真空状態に保持された前記チャンバーの内部と大気圧空間である前記チャンバーの外部との差圧による押し上げ力により上昇して前記隔壁部材を上昇させることを特徴とする基板処理装置。
【請求項19】
真空雰囲気下で複数の被処理基板に処理ガスにより所定の処理を施す基板処理装置であって、
真空雰囲気に保持され、複数の被処理基板が収容されるチャンバーと、
前記チャンバー内でそれぞれ被処理基板を載置する複数の基板載置台と、
前記チャンバー内に処理ガスを含むガスを導入するガス導入部材と、
前記チャンバー内に昇降可能に設けられ、前記複数の基板載置台の上方の被処理基板を含む領域にそれぞれ処理空間を規定する隔壁を形成するための隔壁部材と、
前記隔壁部材を昇降させる昇降機構とを備え、
前記ガス導入部材は、前記基板載置台に対向して設けられ、前記処理空間を形成する際に前記隔壁部材と前記ガス導入部材との間をシールする第1のシール部材をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項20】
真空雰囲気下で複数の被処理基板に処理ガスにより所定の処理を施す基板処理装置であって、
真空雰囲気に保持され、複数の被処理基板が収容されるチャンバーと、
前記チャンバー内でそれぞれ被処理基板を載置する複数の基板載置台と、
前記チャンバー内に処理ガスを含むガスを導入するガス導入部材と、
前記チャンバー内に昇降可能に設けられ、前記複数の基板載置台の上方の被処理基板を含む領域にそれぞれ処理空間を規定する隔壁を形成するための隔壁部材と、
前記隔壁部材を昇降させる昇降機構とを備え、
前記昇降機構は、前記隔壁部材を昇降動可能なアクチュエータと、アクチュエータから延び、先端が前記隔壁部材に取り付けられた駆動軸と、先端が前記隔壁部材に取り付けられ、前記チャンバーの外部に延びる複数のガイド軸とを有し、前記ガイド軸は、真空状態に保持された前記チャンバーの内部と大気圧空間である前記チャンバーの外部との差圧による押し上げ力により上昇して前記隔壁部材を上昇させることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に処理を施す基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造においては、基板である半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)にエッチング処理や成膜処理等の各種の処理を繰り返し行って所望のデバイスを製造する。
【0003】
従来、このような基板処理としては、基板を一枚ずつ処理する枚葉式の処理装置が多用されている。また、このような処理装置はスループットを向上させることが求められており、枚葉式のプラットフォームを維持したまま一度に2枚以上の基板を処理する処理装置も提案されている(例えば特許文献1、2)。
【0004】
特許文献1、2に開示された基板処理装置は、チャンバー内に一つの基板載置台を設け、基板載置台の上方に対向して一つのシャワー状をなすガス分散プレートを設け、基板載置台に複数(2枚)の基板を載置し、チャンバー内を真空に保持するとともに、ガス分散プレートから処理ガスを供給し、基板に所定の処理を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−520649号公報
【特許文献2】特開2012−015285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、エッチング処理等の基板処理においては、基板の大型化にともなって処理の均一性が確保し難くなっていることに加え、処理の均一性の要求はますます高まっており、上記特許文献1、2の技術では、所望の処理均一性を得ることが困難となりつつある。すなわち、上記特許文献1、2の技術では、複数の基板の干渉等により温度の不均一やガス供給の不均一が生じ、十分な処理の均一性を得難くなっている。さらに、通常の枚葉式の処理装置においてさえ、十分な処理の均一性を確保することができない場合も生じている。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、載置台上へ被処理基板を載せて処理ガスにより基板処理を行う際に、さらなる処理の均一性を確保することができる基板処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、真空雰囲気下で被処理基板に処理ガスにより所定の処理を施す基板処理装置であって、真空雰囲気に保持され、被処理基板が収容されるチャンバーと、前記チャンバー内で被処理基板を載置する基板載置台と、前記チャンバー内に処理ガスを含むガスを導入するガス導入部材と、前記チャンバー内に昇降可能に設けられ、前記基板載置台の上方の被処理基板を含む領域に処理空間を規定する隔壁を形成するための隔壁部材と、前記隔壁部材を昇降させる昇降機構とを備え、前記隔壁部材は、処理空間を規定するための筒状部と、筒状部の上部に鍔状に設けられたフランジ部と、前記フランジ部内に設けられたヒーターを有し、前記ヒーターの熱により前記処理空間の均熱性を高めることを特徴とする基板処理装置を提供する。
【0009】
上記第1の観点において、前記ヒーターは、前記フランジ部内の大気圧に保持された空間に設けられることが好ましい。
【0010】
本発明の第2の観点は、真空雰囲気下で複数の被処理基板に処理ガスにより所定の処理を施す基板処理装置であって、真空雰囲気に保持され、複数の被処理基板が収容されるチャンバーと、前記チャンバー内でそれぞれ被処理基板を載置する複数の基板載置台と、前記チャンバー内に処理ガスを含むガスを導入するガス導入部材と、前記チャンバー内に昇降可能に設けられ、前記複数の基板載置台の上方の被処理基板を含む領域にそれぞれ処理空間を規定する隔壁を形成するための隔壁部材と、前記隔壁部材を昇降させる昇降機構とを備え、前記隔壁部材は、各処理空間を規定するための複数の筒状部と、前記複数の筒状部の上部に共通して鍔状に設けられたフランジ部と、前記フランジ部内に設けられたヒーターを有し、前記ヒーターの熱により前記処理空間の均熱性を高めることを特徴とする基板処理装置を提供する。
【0011】
上記第2の観点において、前記隔壁部材は、複数の処理空間を規定する隔壁を一括して形成するものとすることができる。
【0012】
上記第2の観点において、前記ガス導入部材は、前記処理空間に対応して複数設けられ、前記各ガス導入部材から対応する前記処理空間に処理ガスが導入される構成とすることができる。
【0013】
上記第2の観点において、前記ヒーターは、前記フランジ部内の大気圧に保持された空間に設けられることが好ましい。
【0014】
上記第1および第2の観点において、前記ガス導入部材は、前記基板載置台に対向して設けられ、前記処理空間を形成する際に前記隔壁部材と前記ガス導入部材との間をシールする第1のシール部材をさらに備える構成とすることができる。また、前記基板載置台の周囲に間隔をあけて設けられたスリットを有するインナーウォールと、前記処理空間を形成する際に前記隔壁部材と前記インナーウォールとの間をシールする第2のシール部材とをさらに備え、前記処理空間からの排気は、前記基板載置台とインナーウォールの間の空間から前記スリットを介して行われる構成とすることもできる。前記第1のシール部材は、本体部と、本体部から斜めに突出し、シール部を構成するリップ部とを有するリップシールであり、前記隔壁部材と前記ガス導入部材との間のクリアランスが1.6〜3.6mmの範囲になるようにシールすることが好ましく、前記第2のシール部材は、本体部と、本体部から斜めに突出し、シール部を構成するリップ部とを有するリップシールであり、前記隔壁部材と前記インナーウォールとの間のクリアランスが1.6〜3.6mmの範囲になるようにシールすることが好ましい。このとき、前記隔壁部材の内側と外側の差圧が300Torr以下であることが好ましい。
【0015】
上記第1および第2の観点において、前記昇降機構は、前記隔壁部材を昇降動可能なアクチュエータと、アクチュエータから延び、先端が前記隔壁部材に取り付けられた駆動軸と、先端が前記隔壁部材に取り付けられ、前記チャンバーの外部に延びる複数のガイド軸とを有し、前記ガイド軸は、真空状態に保持された前記チャンバーの内部と大気圧空間である前記チャンバーの外部との差圧による押し上げ力により上昇して前記隔壁部材を上昇させる構成とすることができる。
【0016】
この場合に、前記ガイド軸は、前記隔壁部材に接続された上部軸と、前記上部軸に接続された下部軸とを有し、前記上部軸と前記下部軸とは、これらとの間で滑りを生じる滑り部材を介して、滑りを許容した状態で結合され、熱膨張差を吸収可能に構成されている形態が好ましい。
【0017】
さらに、上記第1および第2の観点において、前記ガス導入部材は、前記基板載置台に対向して設けられ、下面に多数のガス吐出孔を有し、前記処理空間にシャワー状に処理ガスを吐出する構成とすることができる。
【0018】
さらにまた、上記第1および第2の観点において、前記ガス導入部材からのガス導入を制御する制御部をさらに有し、前記制御部は、前記隔壁部材を昇降させる際に、前記チャンバー内にパーティクルが排気側に導かれるガスの流れを形成して、被処理基板へのパーティクルの付着を抑制するように前記ガス導入部材からガスを導入させるようにしてもよい。このとき、前記制御部は、前記隔壁部材を昇降させる際に、前記ガスのガス流量が500〜1000sccm、前記チャンバー内の圧力が1000mTorr以上となるように前記ガス導入部材を制御することが好ましい。
【0019】
本発明の第3の観点は、真空雰囲気下で被処理基板に処理ガスにより所定の処理を施す基板処理装置であって、真空雰囲気に保持され、被処理基板が収容されるチャンバーと、前記チャンバー内で被処理基板を載置する基板載置台と、前記チャンバー内に処理ガスを含むガスを導入するガス導入部材と、前記チャンバー内に昇降可能に設けられ、前記基板載置台の上方の被処理基板を含む領域に処理空間を規定する隔壁を形成するための隔壁部材と、前記隔壁部材を昇降させる昇降機構とを備え、前記ガス導入部材は、前記基板載置台に対向して設けられ、前記処理空間を形成する際に前記隔壁部材と前記ガス導入部材との間をシールする第1のシール部材をさらに備えることを特徴とする基板処理装置を提供する。
本発明の第4の観点は、真空雰囲気下で被処理基板に処理ガスにより所定の処理を施す基板処理装置であって、真空雰囲気に保持され、被処理基板が収容されるチャンバーと、前記チャンバー内で被処理基板を載置する基板載置台と、前記チャンバー内に処理ガスを含むガスを導入するガス導入部材と、前記チャンバー内に昇降可能に設けられ、前記基板載置台の上方の被処理基板を含む領域に処理空間を規定する隔壁を形成するための隔壁部材と、前記隔壁部材を昇降させる昇降機構とを備え、前記昇降機構は、前記隔壁部材を昇降動可能なアクチュエータと、アクチュエータから延び、先端が前記隔壁部材に取り付けられた駆動軸と、先端が前記隔壁部材に取り付けられ、前記チャンバーの外部に延びる複数のガイド軸とを有し、前記ガイド軸は、真空状態に保持された前記チャンバーの内部と大気圧空間である前記チャンバーの外部との差圧による押し上げ力により上昇して前記隔壁部材を上昇させることを特徴とする基板処理装置を提供する。
【0020】
本発明の第5の観点は、真空雰囲気下で複数の被処理基板に処理ガスにより所定の処理を施す基板処理装置であって、真空雰囲気に保持され、複数の被処理基板が収容されるチャンバーと、前記チャンバー内でそれぞれ被処理基板を載置する複数の基板載置台と、前記チャンバー内に処理ガスを含むガスを導入するガス導入部材と、前記チャンバー内に昇降可能に設けられ、前記複数の基板載置台の上方の被処理基板を含む領域にそれぞれ処理空間を規定する隔壁を形成するための隔壁部材と、前記隔壁部材を昇降させる昇降機構とを備え、前記ガス導入部材は、前記基板載置台に対向して設けられ、前記処理空間を形成する際に前記隔壁部材と前記ガス導入部材との間をシールする第1のシール部材をさらに備えることを特徴とする基板処理装置を提供する。
本発明の第6の観点は、真空雰囲気下で複数の被処理基板に処理ガスにより所定の処理を施す基板処理装置であって、真空雰囲気に保持され、複数の被処理基板が収容されるチャンバーと、前記チャンバー内でそれぞれ被処理基板を載置する複数の基板載置台と、前記チャンバー内に処理ガスを含むガスを導入するガス導入部材と、前記チャンバー内に昇降可能に設けられ、前記複数の基板載置台の上方の被処理基板を含む領域にそれぞれ処理空間を規定する隔壁を形成するための隔壁部材と、前記隔壁部材を昇降させる昇降機構とを備え、前記昇降機構は、前記隔壁部材を昇降動可能なアクチュエータと、アクチュエータから延び、先端が前記隔壁部材に取り付けられた駆動軸と、先端が前記隔壁部材に取り付けられ、前記チャンバーの外部に延びる複数のガイド軸とを有し、前記ガイド軸は、真空状態に保持された前記チャンバーの内部と大気圧空間である前記チャンバーの外部との差圧による押し上げ力により上昇して前記隔壁部材を上昇させることを特徴とする基板処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、チャンバー内に、基板載置台の上方の被処理基板を含む領域に処理空間を規定する隔壁を形成するための隔壁部材を昇降可能に設け、隔壁部材により処理空間を規定した状態で基板の処理を行うので、極めて高い処理の均一性を確保することができる。また、隔壁部材で囲まれた狭い空間内で処理するので、ガス使用量が減少して省エネルギー効果が得られるとともに、圧力調整時間の短縮によるスループット向上効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置であるCOR処理装置を備えた処理システムを示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係るCOR処理装置を示す断面図であり、隔壁部材を上昇させた状態を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るCOR処理装置を示す断面図であり、隔壁部材を下降させた状態を示す図である。
図4】隔壁部材を示す斜視図である。
図5】フランジ部を断面で示した隔壁部材の側面図である。
図6】COR処理装置の駆動軸設置部分とガイド軸設置部分を示す断面図である。
図7】ガイド軸の上部軸と下部軸との接合部分を示す断面図である。
図8】隔壁部材を駆動させた際に条件を変化させてガス流を形成したときのウエハに付着したパーティクルの個数を評価した結果を示す図である。
図9】隔壁部材を設けない従来の装置でCOR処理を行った場合と、隔壁部材を設け、図2の状態にしてCOR処理を行った場合の処理分布を比較した結果を示す図である。
図10】本発明の他の実施形態に係るCOR処理装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
<COR処理装置を備えた処理システム>
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置である化学的酸化物除去(Chemical Oxide Removal;COR)処理を行うCOR処理装置を備えた処理システムを示す概略構成図である。この処理システム1は、被処理基板である半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)Wを搬入出する搬入出部2と、搬入出部2に隣接させて設けられた2つのロードロック室(L/L)3と、各ロードロック室3にそれぞれ隣接して設けられた、ウエハWに対してPHT(Post Heat Treatment)処理を行なうPHT処理装置4と、各PHT処理装置4にそれぞれ隣接して設けられた、ウエハWに対してCOR処理を行なうCOR処理装置5とを備えている。ロードロック室3、PHT処理装置4およびCOR処理装置5は、この順に一直線上に並べて設けられている。PHT処理装置4およびCOR処理装置5はウエハWを2枚ずつ処理するようになっている。
【0025】
搬入出部2は、ウエハWを搬送する第1ウエハ搬送機構11が内部に設けられた搬送室(L/M)12を有している。第1ウエハ搬送機構11は、ウエハWを略水平に保持する2つの搬送アーム11a,11bを有している。搬送室12の長手方向の側部には、載置台13が設けられており、この載置台13には、ウエハWを複数枚並べて収容可能なキャリアCが例えば3つ接続できるようになっている。また、搬送室12に隣接して、ウエハWを回転させて偏心量を光学的に求めて位置合わせを行なうオリエンタ14が設置されている。
【0026】
搬入出部2において、ウエハWは、搬送アーム11a,11bによって保持され、第1ウエハ搬送機構11の駆動により略水平面内で直進移動され、また昇降させられることにより、所望の位置に搬送させられる。そして、載置台13上のキャリアC、オリエンタ14、ロードロック室3に対してそれぞれ搬送アーム11a,11bが進退することにより、搬入出させられるようになっている。
【0027】
各ロードロック室3は、搬送室12との間にそれぞれゲートバルブ16が介在された状態で、搬送室12にそれぞれ連結されている。各ロードロック室3内には、ウエハWを搬送する第2ウエハ搬送機構17が設けられている。また、ロードロック室3は、所定の真空度まで真空引き可能に構成されている。
【0028】
第2ウエハ搬送機構17は、多関節アーム構造を有しており、ウエハWを略水平に保持するピックを有している。この第2のウエハ搬送機構17においては、多関節アームを縮めた状態でピックがロードロック室3内に位置し、多関節アームを伸ばすことにより、ピックがPHT処理装置4に到達し、さらに伸ばすことによりCOR処理装置5に到達することが可能となっており、ウエハWをロードロック室3、PHT処理装置4、およびCOR処理装置5間で搬送することが可能となっている。
【0029】
PHT処理装置4は、真空引き可能なチャンバー20と、その中で被処理基板であるウエハWを2枚、水平状態で載置する基板載置台23を有し、基板載置台23にはヒーターが埋設されており、このヒーターによりCOR処理が施された後のウエハWを加熱してCOR処理により生成した後述する反応生成物を気化(昇華)させるPHT処理を行なう。PHT処理の際には、チャンバー20内にNガス等の不活性ガスが導入される。チャンバー20のロードロック室3側にはゲートバルブ22が設けられており、チャンバー20のCOR処理装置5側にはゲートバルブ54が設けられている。
【0030】
本実施形態に係るCOR処理装置5は、チャンバー40内でウエハW表面の酸化膜に対しHFガスおよびNHガスによりCOR処理を行うものであり、その詳細な構成は後述する。
【0031】
制御部6は、処理システム1の各構成部を制御するマイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたプロセスコントローラ91を有している。プロセスコントローラ91には、オペレータが処理システム1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、処理システム1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を有するユーザーインターフェース92が接続されている。また、プロセスコントローラ91には、処理システム1で実行される各種処理、例えば後述するCOR処理装置5における処理ガスの供給やチャンバー内の排気などをプロセスコントローラの制御にて実現するための制御プログラムや処理条件に応じて処理システム1の各構成部に所定の処理を実行させるための制御プログラムである処理レシピや、各種データベース等が格納された記憶部93が接続されている。レシピは記憶部93の中の適宜の記憶媒体(図示せず)に記憶されている。そして、必要に応じて、任意のレシピを記憶部93から呼び出してプロセスコントローラ91に実行させることで、プロセスコントローラ91の制御下で、処理システム1での所望の処理が行われる。
【0032】
次に、このような処理システム1における処理動作について説明する。
まず、被処理基板である表面にシリコン酸化膜を有するウエハWをキャリアC内に収納し、処理システム1に搬送する。処理システム1においては、大気側のゲートバルブ16を開いた状態で搬入出部2のキャリアCから第1ウエハ搬送機構11の搬送アーム11a、11bのいずれかによりウエハWを1枚ロードロック室3に搬送し、ロードロック室3内の第2ウエハ搬送機構17のピックに受け渡す。
【0033】
その後、大気側のゲートバルブ16を閉じてロードロック室3内を真空排気し、次いでゲートバルブ54を開いて、ピックをCOR処理装置5まで伸ばしてウエハWをCOR処理装置5へ搬送する。
【0034】
その後、ピックをロードロック室3に戻し、ゲートバルブ54を閉じ、COR処理装置5において後述するようにしてCOR処理を行う。
【0035】
COR処理が終了した後、ゲートバルブ22、54を開き、第2ウエハ搬送機構17のピックにより処理後のウエハWを受け取り、PHT処理装置4のチャンバー20内の載置台23上に載置する。そして、ピックをロードロック室3に退避させ、ゲートバルブ22、54を閉じ、PHT処理装置4のチャンバー20内でウエハWを加熱してPHT処理を行う。これにより、上記COR処理によって生じた反応生成物が加熱されて気化し、除去される。
【0036】
PHT処理装置4における熱処理が終了した後、ゲートバルブ22を開き、第2ウエハ搬送機構17のピックにより載置台23上のエッチング処理後のウエハWをロードロック室3に退避させ、第1ウエハ搬送機構11の搬送アーム11a、11bのいずれかによりキャリアCに戻す。これにより、一枚のウエハの処理が完了する。このような一連の処理をキャリアC内に収容されたウエハWの数だけ繰り返す。
【0037】
<COR処理装置の構成>
次に、本発明の一実施形態に係るCOR処理装置について説明する。
図2および図3は、本発明の一実施形態に係るCOR処理装置を示す断面図であり、図2は隔壁部材を上昇させた状態を示し、図3は隔壁部材を下降させた状態を示す。
【0038】
これらの図に示すように、COR処理装置5は、密閉構造のチャンバー40を備え、また、チャンバー40の内部に、被処理基板であるウエハWを1枚ずつ水平状態で載置するための2つの基板載置台41と、これら基板載置台41の上方にそれぞれ対向するように、処理ガスをチャンバー40内に導入するための2つのガス導入部材42と、2つの基板載置台41の下部の周囲にそれぞれ設けられた2つのインナーウォール43と、各基板載置台41と対応するガス導入部材42との間のウエハWを含む領域に、それぞれ密閉された処理空間Sを規定する隔壁を形成するための昇降可能な隔壁部材44と、隔壁部材44を昇降する昇降機構45と、HFガスおよびNHガス等を供給するガス供給機構46と、チャンバー40内を排気する排気機構47を備えている。
【0039】
チャンバー40は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、チャンバー本体51と蓋部52とによって構成されている。チャンバー本体51は、側壁部51aと底部51bとを有し、上部は開口となっており、この開口が蓋部52で閉止される。側壁部51aと蓋部52とは、シール部材51cにより封止されて、チャンバー40内の気密性が確保される。蓋部52の内側には、上述した2つのガス導入部材42が嵌め込まれている。チャンバー本体51の側壁部51aには、PHT処理装置4のチャンバーとの間でウエハWを搬送するための搬入出口(図示せず)が設けられており、この搬入出口は、上述したゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0040】
基板載置台41は、略円柱状をなしており、ウエハWの載置面を有する載置プレート61と、チャンバー本体51の底部51bに固定され、載置プレートを支持するベースブロック62とを有する。載置プレート61の内部にはウエハWを温調する温度調節機63が設けられている。温度調節器63は、例えば温度調節用媒体(例えば水など)が循環する管路を備えており、このような管路内を流れる温度調節用媒体と熱交換が行なわれることにより、ウエハWの温度制御がなされる。また、基板載置台41には、ウエハWを搬送する際に用いる複数の昇降ピン(図示せず)がウエハの載置面に対して突没可能に設けられている。
【0041】
インナーウォール43は、円筒状をなし、基板載置台41のベースブロック62の周囲に間隔をあけて設けられており、ベースブロック62との間は円環状をなす排気空間68となっている。インナーウォール43の上部にはフランジ67が形成されている。インナーウォール43にはスリット(図示せず)が形成されており、処理空間Sから円環状の排気空間68に至った排ガスがインナーウォール43のスリットを介してインナーウォール43の外側空間に均一に排出され、後述する排気機構47により排気されるようになっている。
【0042】
ガス供給機構46は、HFガス、NHガス、およびArガスやNガス等の希釈ガスをガス導入部材42に供給するものであり、各ガスの供給源、供給配管、バルブ、およびマスフローコントローラ等の流量制御器を有している。
【0043】
ガス導入部材42は、ガス供給機構46から供給されたガスをチャンバー40内に導入するためのものであり、内部にガス拡散空間64を有し、全体形状が円筒状をなしている。ガス導入部材42の上面にはチャンバー40の上壁からつながるガス導入孔65が形成され、底面にガス拡散空間64につながる多数のガス吐出孔66を有している。そして、ガス供給機構46から供給されたHFガス、NHガス等のガスが、ガス導入孔65を経てガス拡散空間64に至り、ガス拡散空間64で拡散され、ガス吐出孔66から均一にシャワー状に吐出される。すなわち、ガス導入部材42は、ガスを分散して吐出するガス分散ヘッド(シャワーヘッド)として機能する。なお、ガス導入部材42は、HFガスとNHガスとを別個の流路で吐出するポストミックスタイプであってもよい。
【0044】
隔壁部材44は、2つの基板載置台41に対応する2つの処理空間を規定する隔壁を一括して形成するものであり、図4の斜視図にも示すように、各処理空間を形成するための2つの円筒部(筒状部)71と、円筒部71の上部に鍔状に設けられたフランジ部72とを有している。また、円筒部71の底部には内フランジ部73が形成されている(図2参照)。
【0045】
隔壁部材44には、フランジ部72の上面に各処理空間Sに対応して二つのシール部材74が設けられている。また、図3に示すように、インナーウォール43のフランジ67の下面にはそれぞれシール部材75が設けられている。そして、図2に示すように、隔壁部材44を上昇させた状態で、シール部材74がガス導入部材42の上面に当接して、隔壁部材44とガス導入部材42との間が密着され、シール部材75が隔壁部材44の内フランジ部73の上面に当接して、隔壁部材44とインナーウォール43との間が密着されて、略密閉された空間である処理空間Sが形成される。
【0046】
シール部材74,75としては、本体部と、本体部から斜めに突出するリップ部とを有するリップシールを好適に用いることができる。リップシールはリップ部がシール部を構成するため、シール部材74,75をリップシールとすることにより、隔壁部材44とガス導入部材42、および隔壁部材44とインナーウォール43が直接接触することなくクリアランスを保った状態でシールすることができる。このため、隔壁部材44とガス導入部材42、および隔壁部材44とインナーウォール43が接触することによるパーティクルの発生を防止することができる。また、リップシールはクリアランスをリップ部で調整するのでクリアランス調整の自由度が高い。隔壁部材44とガス導入部材42、および隔壁部材44とインナーウォール43の接触を防止しつつ所望のシール性を得るためには、これらの間のクリアランスが1.6〜3.6mmの範囲になるようにシールすることが好ましい。
【0047】
また、後述するように、隔壁部材44の上昇には真空状態のチャンバー40内部と大気空間であるチャンバー40外部との差圧を利用しており、駆動力が小さいため、シール部材74,75としては極力反力が小さい状態で均一にシールできるものが要求される。これに対して、リップシールは、シール状態において、反力がほぼ0に近く一定であるため、このように駆動力が小さくても十分シールが可能である。
【0048】
ただし、リップシールは、真空と真空または大気と大気等の差圧の小さい環境下でのシールに適しているものであり、シール部材74,75としてリップシールを用いた場合には、隔壁部材44の内側と外側の差圧が小さい状態である必要があり、これらの差圧が300Torr以下であることが好ましい。
【0049】
リップシールは、リップ部が圧力の高い方に向いている必要があるため、シール部材74にリップシールを適用する場合には、圧力がより高い処理空間S側、すなわち内側にリップ部が向いているリップシールを用いる。また、シール部材75にリップシールを適用する場合には、圧力がより高い処理空間S側、すなわち外側にリップ部が向いているリップシールを用いる。
【0050】
なお、シール部材75は、インナーウォール43のフランジ67の下面に設けられているが、隔壁部材44の内フランジ部73の上面に設けてもよい。
【0051】
図5に示すように、隔壁部材44のフランジ部72は、周回する溝部76を有する本体部72aを有し、溝部76の内部には、溝部76に沿って周回するようにヒーター77が設けられている。本体部72aの上部には蓋部72bが溶接されており、溝部76が密閉された空間となっている。ヒーター77は、チャンバー40外部のヒーター電源(図示せず)につながっており、ヒーター77に給電することによりヒーター77が発熱し、その熱が隔壁部材44の上部から下部へ速やかに拡散し、処理空間S内を例えば30〜150℃に加熱することができ、処理空間S内を均熱性の高い状態に保持することが可能となっている。溝部76は、後述するように、昇降機構45のガイド軸を介して大気と繋がっており、大気空間となっている。このため、過昇温等が起こり難く、ヒーター77の制御性が良好である。
【0052】
隔壁部材44を昇降する昇降機構45は、チャンバー40の外部に配置され、隔壁部材44を昇降動可能なアクチュエータ81と、アクチュエータ81から延びてチャンバー40内に侵入し、先端が隔壁部材44のフランジ部72に取り付けられた駆動軸82と、先端が隔壁部材44に取り付けられ、他端がチャンバー40外に延びる中空の複数のガイド軸83とを有する。ガイド軸83は2本あれば駆動軸82とともに3軸支持となり安定した支持が可能であり、隔壁部材44を安定して昇降させることができる。ガイド軸83を2本より多くし、例えば4本にすると隔壁部材44をより均一に上昇させることができるようになるが、本数が増えるとコスト性やメンテナンス性が低下する。したがって、そのような点を考慮してガイド軸83の本数を決定すればよい。
【0053】
図6に示すように、駆動軸82は、上部軸82aと下部軸82bとにより構成され、上部軸82aの下端には、伸縮可能なベローズ84の一端が取り付けられている。下部軸82bはチャンバー40外で上部軸82aに連続するように上部軸82aに取り付けられ、ボールスプラインのスプライン軸として構成される。ベローズ84は、駆動軸82の上部軸82aの周囲に設けられ、他端はチャンバー40の底部に取り付けられている。これにより、駆動軸82が昇降した際に、それに対応してベローズ84が伸縮し、チャンバー40内の真空状態が保持されるようになっている。チャンバー40の底部には、ベローズ84の外側を覆うように、駆動軸82を収容するケース85が取り付けられている。ケース85の下部軸82bに対応する部分の内側にはボールスプラインのスリーブ86が取り付けられている。
【0054】
また、図6に示すように、ガイド軸83は、上部軸83aと下部軸83bとにより構成され、上部軸83aの下端には、伸縮可能なベローズ87の一端が取り付けられている。下部軸83bはチャンバー40外で上部軸83aに連続するように上部軸83aに取り付けられ、ガイドブッシュ89にガイドされるようになっている。ベローズ87は、ガイド軸83の上部軸83aの周囲に設けられ、他端はチャンバー40の底部に取り付けられている。これにより、ガイド軸83が昇降した際に、それに対応してベローズ87が伸縮し、チャンバー40内の真空状態が保持されるようになっている。チャンバー40の底部には、ベローズ87の外側を覆うように、ガイド軸83を収容するケース88が取り付けられている。ケース88の下部軸83bに対応する部分の内側にガイドブッシュ89が取り付けられている。
【0055】
ガイド軸83は下端がチャンバー40の外部の大気圧空間に設けられていることから、チャンバー40の内部が真空に保持された状態では、これらの差圧により、ガイド軸83にはその断面積に比例したに押上げ力が作用する。ガイド軸83には、ベローズ87のばね反力およびガイド軸83の自重等の下向きに作用する力が存在するが、ガイド軸83の内径等を適宜設定することにより、押上げ力のほうを大きくすることができる。これにより適切な圧力で隔壁部材44を押し上げることができる。このため、隔壁部材44を複数のガイド軸83によりガイドして安定して駆動させることができるとともに、隔壁部材44を均等に上昇させて確実なシール性を確保することができる。
【0056】
隔壁部材44を下降させる際には、このような差圧による隔壁部材44を押し上げる力に抗してアクチュエータ81により駆動軸82を介して隔壁部材44を下降させればよい。アクチュエータ81は隔壁部材44の下降の際のみに用いればよいので、アクチュエータ81および駆動軸82の負担が軽減される。隔壁部材44を下降させて、図3に示すように、隔壁部材44が基板載置台41の載置面の下方に位置させることにより、ウエハWの搬送が可能となる。
【0057】
なお、図6は、COR処理装置5の断面を示すが、左側は駆動軸82の存在領域の断面を示し、右側はガイド軸の存在領域の断面を示すものであり、二点鎖線を挟んで左右異なる部分の断面をとっている。
【0058】
図7はガイド軸83の上部軸83aと下部軸83bとの接合部分を示す断面図であるが、上部軸83aの下端はベローズ87を支持するフランジ91となっており、下部軸83bの上端はフランジ91に対応するフランジ92となっている。フランジ92の上面にはPTFE等の滑りの良い樹脂材料で形成された滑り部材93が設けられ、フランジ91と滑り部材93との間で滑りが生じるようになっている。そして、滑り部材93とフランジ91との滑りを許容した状態で、フランジ91とフランジ92とがネジ90により結合されている。ガイド軸83の上部軸83aは、ヒーター77による加熱等により温度が高くなることがあり、それによって比較的大きく熱膨張するが、下部軸83bは加熱の影響が小さい。そのため、その熱膨張差によりガイド軸83が変形して昇降に支障をきたすおそれがある。これに対して、滑り部材93を設けることにより、上部軸83aが滑り部材93上を滑ることにより、熱膨張差を吸収することができる。
【0059】
排気機構47は、チャンバー40の底部51bに形成された排気口(図示せず)に繋がる排気配管101を有しており、さらに、排気配管101に設けられた、チャンバー40内の圧力を制御するための自動圧力制御弁(APC)102およびチャンバー40内を排気するための真空ポンプ103を有している。
【0060】
チャンバー40内の2つの処理空間Sの圧力をそれぞれ計測するため、チャンバーの底面から各処理空間Sに対応する排気空間68へ挿入されるように、圧力計として高圧力用のキャパシタンスマノメータ105aおよび低圧力用のキャパシタンスマノメータ105bがそれぞれ設けられている。キャパシタンスマノメータ105aまたは105bにより検出された圧力に基づいて自動圧力制御弁(APC)102の開度が制御される。
【0061】
<COR処理装置による処理動作>
次に、このように構成されたCOR処理装置による処理動作について説明する。
【0062】
最初に、アクチュエータ81により駆動軸82を介して隔壁部材44を下降させた図3の状態で、ゲートバルブ54を開けて、図示しない搬入出口からチャンバー40内に2枚のウエハWを搬入し、各基板載置台41上に載置する。
【0063】
次いで、アクチュエータ81の動作を停止し、真空状態のチャンバー40の内部と大気圧空間であるチャンバー40の外部との差圧による押し上げ力によりガイド軸83を上昇させ、隔壁部材44を押し上げて図2の状態とする。すなわち、シール部材74をガス導入部材42の上面に当接させて、隔壁部材44とガス導入部材42との間を密着し、シール部材75を隔壁部材44の内フランジ部73の上面に当接させて、隔壁部材44とインナーウォール43との間を密着させることにより、略密閉された空間である処理空間Sを形成する。
【0064】
次いで、ガス供給機構46から、HFガス、NHガスおよびNガスやArガス等の不活性ガスをガス導入部材42の多数のガス吐出孔66からシャワー状に分散して吐出し、ウエハW表面のSiO膜に対してCOR処理を施す。COR処理は、HFガスおよびNHガスとウエハW表面に形成されたSiO膜とを反応させて、熱により分解除去可能なフルオロケイ酸アンモニウム(AFS)を生成させる。
【0065】
COR処理が終了後、昇降機構45のアクチュエータ81により隔壁部材44を下降させて図3の状態とし、ゲートバルブ54を開けて、図示しない搬入出口から処理済の2枚のウエハWを搬出する。
【0066】
以上の処理動作において、隔壁部材44は昇降駆動されるため、その駆動により隔壁部材44に付着している付着物が脱離してパーティクルが発生することがある。また、隔壁部材44が上昇してガス導入部材42に接触した際には、その接触部からパーティクルが発生することがある。このようなパーティクルがウエハWに付着するとウエハWに欠陥が生じる。
【0067】
そこで、隔壁部材44を昇降する際に、パーティクルが排気側に導かれるガスの流れを形成して、ウエハWへのパーティクルの付着を抑制するようにガス導入部材42からガスを導入する。このときのガスはウエハWの処理に寄与せずかつ悪影響を及ぼさないガスであればよく、不活性ガスであることが好ましい。本例では、NガスおよびArガスのいずれかまたは両方を用いることができる。このときのガスの流量および圧力は、ウエハWにパーティクルが付着しないような流れが形成されるように制御される。ガス流量が少なすぎると有効な流れが形成されず、ガス流量が多すぎるとパーティクルが舞い上がってかえってパーティクルがウエハWに付着しやすくなる。また、圧力が低すぎるとガスが分子流となり排気側に向かうガス流が形成しにくい。このような観点から、ガス流量は500〜1000sccm(mL/min)、チャンバー内の圧力は1000mTorr(133.3Pa)以上が好ましい。適切なガス流を形成する観点からは圧力の上限は存在しないが、処理の都合上、3000mTorr(400Pa)以下であることが好ましい。
【0068】
実際に、隔壁部材44を昇降させる際に、条件を変化させてガス流を形成したときのウエハに付着したパーティクルの個数を評価した。その結果を図8に示す。ここでは、ガスとしてNガスを用い、隔壁部材44駆動時にガスを流さない場合を基準として、ガスの流量を750sccm、2000sccmの2水準、圧力を750mTorr、2000mTorrの2水準で変化させた場合の付着パーティクルの個数を3回ずつカウントした。その結果、流量が750sccmで圧力が2000mTorrでガスを流さない場合に比較してパーティクルが半分程度まで低減された。これに対して他の条件では効果が見られなかった。この結果から、ガス流量および圧力を適切に調整することにより、パーティクルがウエハWに付着しないようなガス流が形成できることが確認された。
【0069】
このようにガス流を形成しながら隔壁部材44を上昇させる場合は、隔壁部材44がガス導入部材42に接触して処理空間Sが形成された後、処理空間S内の圧力を調整し、COR処理を施す。また、ガス流を形成しながら隔壁部材44を下降させる場合には、隔壁部材44の下降が終了した後、ガスを停止し、ウエハWを搬出する。
【0070】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、隔壁部材44を上昇させることにより、ウエハW1枚ずつの処理空間Sが形成されるので、他のウエハの干渉等がない条件で、均一にCOR処理を行うことができる。また、各処理空間Sに対し、ウエハWに対向してガス導入部材42からシャワー状に処理ガスを供給するので、ガス分布を均一にすることができ、処理分布をより均一にすることができる。しかも、処理済のガスを基板載置台41とインナーウォール43との間の円環状の排気空間68からインナーウォール43のスリットを介して排出するので、均一に排気することができ、処理空間Sにおけるガスの分布を一層均一にすることができる。また、隔壁部材44で囲まれた狭い空間内で処理するので、ガス使用量が減少して省エネルギー効果が得られるとともに、圧力調整時間の短縮によるスループット向上効果を得ることができる。
【0071】
また、このとき、隔壁部材44の上部のフランジ部72に設けられたヒーター77により、隔壁部材44のフランジ部72を例えば30〜150℃に加熱する。これにより、熱伝導性が高いアルミニウムまたはアルミニウム合金製の隔壁部材44の上部から下部へ速やかに拡散し、処理空間S内を極めて均熱性の高い状態に温度制御することができ、処理の均一性をさらに一層高めることができる。また、ヒーター77を設けた溝部76は、昇降機構45のガイド軸83を介して大気と繋がっており、大気空間となっている。このため、過昇温等が起こり難く、ヒーター77の制御性が良好である。
【0072】
実際に、隔壁部材44を設けない従来の装置でCOR処理を行った場合と、隔壁部材44を設け、図2の状態にしてCOR処理を行った場合の処理分布を比較した。その結果を図9に示す。従来の装置の場合には、図9(a)に示すように、いずれのウエハも他のウエハと干渉により処理が不均一であったが、隔壁部材44を設けた本実施形態の場合には、図9(b)に示すように、処理分布が同心円状をなし、処理の均一性が向上したことが確認された。
【0073】
また、上述のように、ガイド軸83の上部軸83aは、ヒーター77による隔壁部材44の加熱等により温度が高くなることがあり、それによって比較的大きく熱膨張するが、下部軸83bは加熱の影響が小さいため、その熱膨張差によりガイド軸が変形して昇降に支障をきたすおそれがある。これに対して、本実施形態では、ガイド軸83の上部軸83aの下端のフランジ91と、下部軸83bの上端のフランジ92の間にPTFE等の滑りの良い樹脂材料で形成された滑り部材93を設け、フランジ91と滑り部材93との間で滑りが生じるようにし、滑り部材93とフランジ91との滑りを許容した状態で、フランジ91とフランジ92とをネジ90により結合したので、上部軸83aが滑り部材93上を滑ることにより、熱膨張差を吸収することができる。
【0074】
さらに、真空状態のチャンバー40の内部と大気圧空間であるチャンバー40の外部との差圧により押し上げ力が作用するガイド軸83を複数設け、これら複数のガイド軸83を介して隔壁部材44を上昇させるので、複数のガイド軸83により安定した駆動を行うことができるとともに、隔壁部材44を均等に上昇させて、シール面の平面安定化を実現することができ、確実なシール性を確保することができる。また、アクチュエータ81は、隔壁部材44を下降させるときのみ用いればよいので、アクチュエータ81や駆動軸82の負担を軽減することができる。
【0075】
さらに、隔壁部材44を上昇させて処理空間Sを形成する際に、ガス導入部材42との間のシール部材74と、インナーウォール43との間のシール部材75とにより、上下でシールするので、密閉性の良好な処理空間を形成することができる。
【0076】
さらに、一つの隔壁部材44により、2つの処理空間を一括して形成することが可能であるので、昇降機構の複雑化を回避することができる。
【0077】
さらにまた、隔壁部材44を駆動させているときに、パーティクルが排気側に導かれるガスの流れが形成されるようにすることにより、隔壁部材44の駆動時に発生するパーティクルがウエハWに付着することを有効に抑制することができる。
【0078】
<他の適用>
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、COR処理装置に本発明を適用した例を示したが、これに限らず、ガスによる処理であれば、例えば化学蒸着法(CVD法)による成膜処理等の他の処理にも適用することができる。また、プラズマを利用した処理であってもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、基板載置台に対向して設けられたガス導入部材からシャワー状にガスを吐出した場合について示したが、これに限らず、ノズルからガスを吐出する等、他のガス吐出態様であってもよい。
【0080】
さらに、上記実施形態では、基板載置台とインナーウォールとの間の排気空間からインナーウォールのスリットを介してガスを排出する例を示したが、これに限らず、ガス導入部材側等、他の部分から排気するようにしてもよい。
【0081】
さらにまた、上記実施形態では、被処理体を2枚ずつ処理する例について示したが、これに限らず、1枚ずつ処理する枚葉式のものであっても、3枚以上ずつ処理するものであってもよい。
【0082】
枚葉式のCOR処理装置の例を図10に示す。このCOR処理装置5′は、チャンバー40′を有し、その中に図2、3のCOR処理装置5と同じ構造の基板載置台41、ガス導入部材42、およびインナーウォール43が一つずつ配置されている。また、基板載置台41とガス導入部材42との間に一つの略密閉状態の処理空間Sを形成するための隔壁部材44′が、図2、3のCOR処理装置5とほぼ同じ構造の昇降機構45′により昇降可能に設けられている。また、COR処理装置5と同じガス供給機構46と排気機構47を有している。
【0083】
このような枚葉式の処理装置であっても、隔壁部材が存在しない場合には、ガスの流れや温度の均一性が保てない場合があり、必ずしも均一な処理を行えないが、このように隔壁部材44′を設けることにより、処理の均一性を高めることができる。また、隔壁部材44′で囲まれた狭い空間内で処理するので、ガス使用量が減少して省エネルギー効果が得られるとともに、圧力調整時間の短縮によるスループット向上効果を得ることもできる。
【0084】
さらにまた、上記実施形態では、被処理基板として半導体ウエハを例にとって説明したが、本発明の原理からして被処理基板は半導体ウエハに限るものではないことは明らかであり、他の種々の基板の処理に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0085】
1;処理システム
2;搬入出部
3;ロードロック室
4;PHT処理装置
5;COR処理装置
6;制御部
40;チャンバー
41;基板載置台
42;ガス導入部材
43;インナーウォール
44、44′;隔壁部材
45、45′;昇降機構
46;ガス供給機構
47;排気機構
68;排気空間
77;ヒーター
74,75;シール部材
81;アクチュエータ
82;駆動軸
83;ガイド軸
93;滑り部材
S;処理空間
W;半導体ウエハ(被処理基板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10