(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第1の成膜条件を調整すると判定した場合、前記レシピ記憶部に記憶された前記第1の成膜条件及び前記第2の成膜条件により成膜された前記第1の膜と前記第2の膜とを含む前記積層膜の特性の測定値と、前記モデル記憶部に記憶された前記第1のプロセスモデルと、に基づいて、前記積層膜の特性の予測値が前記積層膜の特性の目標値と一致するように前記第1の成膜条件を調整する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の制御装置。
前記制御部は、前記第1の成膜条件を調整すると判定した場合、調整された前記第1の成膜条件と調整された前記第2の成膜条件とにより、前記積層膜を形成するように前記基板処理装置の動作を制御する、
請求項4に記載の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0013】
(基板処理装置)
本実施形態の基板処理装置について説明する。本実施形態の基板処理装置は、基板の一例としての半導体ウエハ(以下「ウエハ」という。)が垂直方向に所定の間隔をおいて多数枚保持した基板保持具を処理容器に収容し、多数枚のウエハに対して同時に膜を成膜することが可能なバッチ式の装置である。
【0014】
図1は、本実施形態の基板処理装置の一例を示す概略構成図である。
【0015】
図1に示されるように、基板処理装置は、長手方向が垂直方向である略円筒形の処理容器4を有する。処理容器4は、円筒体の内筒6と、内筒6の外側に同心的に配置された天井を有する外筒8とを備える2重管構造を有する。内筒6及び外筒8は、例えば石英等の耐熱性材料により形成されている。
【0016】
内筒6及び外筒8は、ステンレス鋼等により形成されるマニホールド10によって、その下端部が保持されている。マニホールド10は、例えば図示しないベースプレートに固定されている。なお、マニホールド10は、内筒6及び外筒8と共に略円筒形の内部空間を形成しているため、処理容器4の一部を形成しているものとする。即ち、処理容器4は、例えば石英等の耐熱性材料により形成される内筒6及び外筒8と、ステンレス鋼等により形成されるマニホールド10とを備え、マニホールド10は、内筒6及び外筒8を下方から保持するように処理容器4の側面下部に設けられている。
【0017】
マニホールド10は、処理容器4内に、成膜処理に用いられる成膜ガス、添加ガス等の処理ガス、パージ処理に用いられるパージガス等の各種ガスを導入するガス導入部20を有する。
図1では、ガス導入部20が1つ設けられる形態を示しているが、これに限定されず、使用するガスの種類等に応じて、ガス導入部20が複数設けられていてもよい。
【0018】
処理ガスの種類としては、特に限定されず、成膜する膜の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、リン(P)を添加したポリシリコン膜(以下「D−poly膜」という。)を成膜する場合、成膜ガスとしてモノシランガス(SiH
4ガス)、添加ガスとしてホスフィンガス(PH
3ガス)を用いることができる。また、例えばアモルファスシリコン膜(以下「a−Si膜」という。)を成膜する場合、成膜ガスとしてSiH
4ガスを用いることができる。
【0019】
パージガスの種類としては特に限定されず、例えば窒素(N
2)ガス等の不活性ガスを用いることができる。
【0020】
ガス導入部20には、各種ガスを処理容器4内に導入するための導入配管22が接続される。なお、導入配管22には、ガス流量を調整するためのマスフローコントローラ等の流量調整部24や図示しないバルブ等が介設されている。
【0021】
また、マニホールド10は、処理容器4内を排気するガス排気部30を有する。ガス排気部30には、処理容器4内を減圧制御可能な真空ポンプ32、開度可変弁34等を含む排気配管36が接続されている。
【0022】
マニホールド10の下端部には、炉口40が形成されており、炉口40には、例えばステンレス鋼等により形成される円盤状の蓋体42が設けられている。蓋体42は、例えばボートエレベータとして機能する昇降機構44により昇降可能に設けられており、炉口40を気密に封止可能に構成されている。
【0023】
蓋体42の上には、例えば石英製の保温筒46が設置されている。保温筒46の上には、例えば50枚から175枚程度のウエハWを水平状態で所定の間隔で多段に保持する、例えば石英製のウエハボート48が載置されている。
【0024】
ウエハボート48は、昇降機構44を用いて蓋体42を上昇させることで処理容器4内へとロード(搬入)され、ウエハボート48内に保持されたウエハWに対して各種の成膜処理が行われる。各種の成膜処理が行われた後には、昇降機構44を用いて蓋体42を下降させることで、ウエハボート48は処理容器4内から下方のローディングエリアへとアンロード(搬出)される。
【0025】
処理容器4の外周側には、処理容器4を所定の温度に加熱制御可能な、例えば円筒形状のヒータ60が設けられている。
【0026】
ヒータ60は、複数のゾーンに分割されており、鉛直方向上側から下側に向かって、ヒータ60a〜60gが設けられている。ヒータ60a〜60gは、それぞれ電力制御機62a〜62gによって独立して発熱量を制御できるように構成される。また、内筒6の内壁及び/又は外筒8の外壁には、ヒータ60a〜60gに対応して、図示しない温度センサが設置されている。以下、ヒータ60a〜60gが設けられているゾーンを、それぞれゾーン1〜7と称する。なお、
図1では、ヒータ60が7つのゾーンに分割されている形態を示しているが、これに限定されず、例えば鉛直方向上側から下側に向かって、6つ以下のゾーンに分割されていてもよく、8つ以上のゾーンに分割されていてもよい。また、ヒータ60は、複数のゾーンに分割されていなくてもよい。
【0027】
ウエハボート48に載置された多数枚のウエハWは、1つのバッチを構成し、1つのバッチ単位で各種の成膜処理が行われる。また、ウエハボート48に載置されるウエハWの少なくとも1枚以上は、モニタウエハであることが好ましい。また、モニタウエハは分割されるヒータ60a〜60gのそれぞれに対応して配置されることが好ましい。
【0028】
また、本実施形態の基板処理装置は、装置全体の動作を制御するためのコンピュータ等の制御装置100を有する。制御装置100は、有線又は無線等の通信手段によって、ホストコンピュータに接続され、基板処理装置は基板処理システムを構成している。
【0029】
(制御装置)
本実施形態の制御装置100について、
図2に基づき説明する。
図2は、本実施形態の制御装置の一例を示す概略構成図である。
【0030】
図2に示されるように、制御装置100は、モデル記憶部102と、レシピ記憶部104と、ROM106と、RAM108と、I/Oポート110と、CPU112と、これらを相互に接続するバス114とを有する。
【0031】
モデル記憶部102には、例えばプロセスモデル、熱モデルが記憶されている。
【0032】
プロセスモデルは、膜厚等の成膜条件が成膜結果に与える影響を表すモデルであり、例えば温度−膜厚モデル、時間−膜厚モデル、圧力−膜厚モデル、ガス流量−膜厚モデルが挙げられる。温度−膜厚モデルは、ウエハWの温度が成膜された膜の膜厚に与える影響を表すモデルである。時間−膜厚モデルは、成膜時間が成膜された膜の膜厚に与える影響を表すモデルである。圧力−膜厚モデルは、処理容器4内の圧力が成膜された膜の膜厚に与える影響を表すモデルである。ガス流量−膜厚モデルは、成膜ガスの流量が成膜された膜の膜厚に与える影響を表すモデルである。
【0033】
また、他のプロセスモデルとしては、例えばウエハWの温度、成膜時間、処理容器4内の圧力、成膜ガスの流量等の成膜条件が、成膜された膜の不純物濃度、シート抵抗、反射率等の膜質に与える影響を表すモデルが挙げられる。
【0034】
プロセスモデルは、膜の種類ごとに用意される。
【0035】
なお、モデル記憶部102には、前述したプロセスモデルのうちの一部が記憶されていてもよく、すべてが記憶されていてもよい。
【0036】
前述のプロセスモデルのほか、モデル記憶部102は熱モデルを記憶する。
【0037】
熱モデルは、ウエハWの温度とヒータ60の設定温度との関係を表すモデルであり、ウエハWの温度が、温度−膜厚モデル等のプロセスモデルにより算出されるウエハWの温度となるように、ヒータ60の設定温度を決定する際に参照されるモデルである。
【0038】
また、これらのモデルは、成膜条件や基板処理装置の状態によってデフォルト(既定)値が最適ではない場合も考えられるため、ソフトウェアに拡張カルマンフィルタ等を付加して学習機能を搭載することにより、モデルの学習を行うものであってもよい。
【0039】
レシピ記憶部104には、基板処理装置で行われる成膜処理の種類に応じて制御手順を定めるプロセス用レシピが記憶されている。プロセス用レシピは、オペレータ(操作者)が実際に行う成膜処理ごとに用意されるレシピである。プロセス用レシピは、例えば基板処理装置へのウエハWの搬入から、処理済みのウエハWの搬出までの、温度変化、圧力変化、各種ガスの供給の開始及び停止のタイミング、各種ガスの供給量等の成膜条件を規定するものである。
【0040】
ROM106は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、ハードディスク等により構成され、CPU112の動作プログラム等を記憶する記憶媒体である。
【0041】
RAM108は、CPU112のワークエリア等として機能する。
【0042】
I/Oポート110は、温度、圧力、ガス流量等の成膜条件に関する測定信号をCPU112に供給する。また、I/Oポート110は、CPU112が出力する制御信号を各部(電力制御機62、開度可変弁34の図示しないコントローラ、流量調整部24等)へ出力する。また、I/Oポート110には、操作者が基板処理装置を操作する操作パネル116が接続されている。
【0043】
CPU112は、ROM106に記憶された動作プログラムを実行し、操作パネル116からの指示に従って、レシピ記憶部104に記憶されているプロセス用レシピに沿って、基板処理装置の動作を制御する。
【0044】
また、CPU112は、モデル記憶部102に記憶されているプロセスモデルに基づいて、最適な成膜条件を算出する。この際、線形計画法や2次計画法等の最適化アルゴリズムを利用して、読み出したプロセス用レシピに記憶された所定の膜厚、膜質、エッチング量等に基づき、ウエハWの面内均一性、ウエハW間の面間均一性を満たすような成膜条件を算出する。
【0045】
また、CPU112は、モデル記憶部102に記憶されている熱モデルに基づいて、プロセスモデルにより算出されるウエハWの温度となるように、ヒータ60の設定温度を決定する。
【0046】
バス114は、各部の間で情報を伝達する。
【0047】
ところで、半導体装置の製造においては、同一の処理容器内で、成膜ガスの種類等の成膜条件を異ならせて連続成膜することで、複数の膜を積層した積層膜をウエハWに形成する場合がある。このような積層膜の中には、積層膜を構成するそれぞれの膜の特性(例えば、屈折率)の違いが小さいため、積層された状態でそれぞれの膜の特性(例えば、膜厚)を測定することが困難なものがある。
【0048】
例えば、第1の膜の上に、第1の膜と同一の元素を含む第2の膜を成膜した積層膜では、第1の膜と第2の膜の特性の違いが小さい。このため、積層された状態で第1の膜の特性と第2の膜の特性とを分離して測定することが困難である。
【0049】
また、例えば第1の膜を成膜した後、エッチング処理等の所定の処理を行った後、処理された第1の膜の上に第1の膜を成膜した条件と同一の条件で第2の膜を成膜した積層膜では、第1の膜と第2の膜の特性の違いがない。このため、積層された状態で第1の膜の特性と第2の膜の特性とを分離して測定することが困難である。
【0050】
このような積層膜において最適な成膜条件を算出する場合、まず、基板の上に第1の膜を成膜し、成膜された第1の膜の特性の測定値を用いて第1の膜の成膜条件(以下「第1の成膜条件」という。)を調整する。次いで、第1の膜の上に第2の膜を成膜し、形成された積層膜の特性の測定値を用いて第2の膜の成膜条件(以下「第2の成膜条件」という。)を調整する。このように、積層膜の成膜条件を調整する手順は複雑であり、積層膜の成膜条件を調整することは容易ではない。
【0051】
また、第1の膜の成膜条件の調整が十分に行われることなく、第1の膜の上に第2の膜を成膜した場合、第2の膜の成膜条件をいくら調整しても目標とする所定の特性を有する積層膜が得られない場合がある。また、積層膜を形成する前に、どの程度の特性が得られるまで第1の膜の成膜条件を調整しておくのがよいかを判断することは容易ではない。
【0052】
そこで、本実施形態では、制御装置100が、まず、第1の膜の上に第2の膜が成膜された積層膜の特性の測定値と、モデル記憶部102に記憶された第2の成膜条件が第2の膜の特性に与える影響を表すプロセスモデルと、に基づいて、第2の成膜条件を調整する。次いで、制御装置100が、調整された第2の成膜条件を用いて積層膜を形成する場合に予測される積層膜の特性の予測値に基づいて、第1の成膜条件を調整するか否かを判定する。これにより、半導体製造装置や半導体プロセスに関する知識や経験が少ない操作者であっても、積層膜の成膜条件を容易に調整することができる。
【0053】
次に、本実施形態の制御装置100の動作(調整処理)について説明する。以下では、ウエハWにD−poly膜を成膜した後にa−Si膜を成膜して積層膜を形成する場合を例に挙げて説明する。D−poly膜は第1の膜の一例であり、a−Si膜は第2の膜の一例である。
【0054】
図3は、本実施形態の基板処理システムの動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0055】
本実施形態の調整処理は、成膜処理を行う前のセットアップの段階で行ってもよく、成膜処理と同時に行ってもよい。また、調整処理においては、操作者は、操作パネル116を操作して、プロセス種別(例えば、D−poly膜とa−Si膜との積層膜の形成)を選択すると共に、形成する積層膜の膜厚の目標値(目標膜厚)をゾーンごとに入力する。
【0056】
プロセス種別等の必要な情報が入力され、開始指令を受信すると、CPU112は、入力されたプロセス種別に対応するプロセス用レシピをレシピ記憶部104から読み出す(ステップS1)。
【0057】
次に、ウエハWにD−poly膜とa−Si膜との積層膜を形成する(ステップS2:成膜工程)。具体的には、CPU112は、蓋体42を下降させ、少なくとも各ゾーンにウエハWを搭載したウエハボート48を蓋体42上に配置する。続いて、CPU112は、蓋体42を上昇させ、ウエハボート48を処理容器4内に搬入する。続いて、CPU112は、レシピ記憶部104から読み出したプロセス用レシピに従って、流量調整部24、開度可変弁34、電力制御機62a〜62g等を制御して、ウエハWにD−poly膜とa−Si膜とがこの順に積層された積層膜を形成させる。D−poly膜は、ウエハWにSiH
4ガスとPH
3ガスとの混合ガスを供給し、気相での化学反応により膜を堆積させることにより成膜される。a−Si膜は、D−poly膜が成膜されたウエハWにSiH
4ガスを供給し、気相での化学反応により膜を堆積させることにより成膜される。なお、D−poly膜の成膜後、D−poly膜に対してエッチング処理等の所定の処理を行った後、a−Si膜を成膜してもよい。
【0058】
積層膜が形成された後、CPU112は、蓋体42を下降させ、積層膜が形成されたウエハWを搬出させる。ホストコンピュータは、搬出されたウエハWを図示しない膜厚測定器に搬送させ、積層膜の膜厚を測定させる(ステップS3:測定工程)。膜厚測定器は、積層膜の膜厚を測定すると、測定した膜厚を、ホストコンピュータを介してCPU112に送信する。なお、操作者が操作パネル116を操作して、膜厚測定器で測定された膜厚を入力してもよい。
【0059】
測定された積層膜の膜厚をCPU112が受信すると(ステップS4)、CPU112は、積層膜の膜厚が積層膜の目標膜厚の許容範囲内の膜厚であるか否かを判定する(ステップS5)。許容範囲内とは、入力された積層膜の目標膜厚から許容可能な所定の範囲内に含まれていることを意味し、例えば入力された積層膜の目標膜厚から±1%以内の場合をいう。
【0060】
CPU112は、ステップS5において積層膜の膜厚が積層膜の目標膜厚の許容範囲内の膜厚であると判定した場合、調整処理を終了する。CPU112は、ステップS5において積層膜の膜厚が積層膜の目標膜厚の許容範囲内の膜厚ではないと判定した場合、a−Si膜のレシピ最適化計算を実行する(ステップS6:調整工程)。レシピ最適化計算では、ステップS4で受信した積層膜の膜厚と、モデル記憶部102に記憶されたa−Si膜の成膜条件がa−Si膜の特性に与える影響を表すプロセスモデルと、に基づいて、ウエハWの温度、成膜時間等のa−Si膜の成膜条件を最適化する。その際、線形計画法や2次計画法等の最適化アルゴリズムを利用して、積層膜の膜厚が目標膜厚となるような各ゾーンにおけるウエハWの温度、成膜時間等のa−Si膜の成膜条件を算出する。また、モデル記憶部102に記憶されている熱モデルに基づいて、a−Si膜の成膜条件がa−Si膜の特性に与える影響を表すプロセスモデルにより算出されるウエハWの温度となるように、ヒータ60a〜60gの設定温度を算出する。また、a−Si膜のレシピ最適化計算においては、D−poly膜単体の膜厚を少なくとも1回測定し、測定したD−poly膜単体の膜厚の状態を把握し、計算に使用することがより好ましい。なお、a−Si膜の成膜条件は第2の成膜条件の一例であり、a−Si膜の成膜条件がa−Si膜の特性に与える影響を表すプロセスモデルは第2のプロセスモデルの一例である。
【0061】
続いて、CPU112は、レシピ記憶部104に記憶されたD−poly膜の成膜条件及びステップS6で算出されたa−Si膜の成膜条件により積層膜を形成する場合に予測される膜厚(以下「予測膜厚」という。)が積層膜の目標膜厚の許容範囲内の膜厚であるか否かを判定する(ステップS7:判定工程)。このとき、積層膜の予測膜厚を多数枚のウエハWに対して算出している場合、少なくとも1枚のウエハWにおける積層膜の予測膜厚が積層膜の目標膜厚の許容範囲内の膜厚であるか否かに基づいて判定することができる。また、多数枚のウエハWにおける積層膜の予測膜厚のばらつき(面間均一性)が積層膜の目標膜厚の許容範囲内の膜厚であるか否かに基づいて判定してもよい。なお、D−poly膜の成膜条件は、第1の成膜条件の一例である。
【0062】
図4は、積層膜の予測膜厚と積層膜の目標膜厚との関係を説明するための図である。
図4では、ゾーンごとの積層膜の予測膜厚と積層膜の目標膜厚との関係を示しており、
図4中、積層膜の予測膜厚を太い破線で示し、積層膜の目標膜厚を細い点線で示している。
【0063】
図4の例では、すべてのゾーン(ゾーン1〜7)において、積層膜の予測膜厚が積層膜の目標膜厚(100nm)の許容範囲(±1nm)内の膜厚ではないため、CPU112は、積層膜の予測膜厚が積層膜の目標膜厚の許容範囲内の膜厚ではないと判定する。
【0064】
一方、
図4の例とは異なり、CPU112がステップS7において積層膜の予測膜厚が目標膜厚の許容範囲内の膜厚であると判定した場合、ステップS1で読み出したプロセス用レシピを更新する(ステップS8)。具体的には、CPU112は、ステップS1で読み出したプロセス用レシピのa−Si膜の成膜条件を、ステップS6で算出した成膜条件に更新する。プロセス用レシピを更新した後、ステップS2へ戻る。プロセス用レシピの更新は、既存のプロセス用レシピを上書きするものであってもよく、既存のプロセス用レシピとは別に新たなプロセス用レシピを作成するものであってもよい。
【0065】
CPU112は、ステップS7において積層膜の予測膜厚が目標膜厚の許容範囲内の膜厚ではないと判定した場合、D−poly膜の成膜条件の調整が必要であることを報知する(ステップS9)。例えば、CPU112は、D−poly膜の成膜条件の調整が必要であることを操作パネル116に表示する。
【0066】
続いて、CPU112は、D−poly膜のレシピ最適化計算を実行する際に用いられるD−poly膜の目標膜厚を算出する(ステップS10)。D−poly膜の目標膜厚の算出では、積層膜の予測膜厚が積層膜の目標膜厚と一致するようにD−poly膜の目標膜厚を算出する。具体的には、D−poly膜の目標膜厚は下記の式(1)及び式(2)により算出できる。
(D−poly膜の目標膜厚)=(D−poly膜の膜厚の測定値)+(膜厚調整量)(1)
(膜厚調整量)=(積層膜の目標膜厚)−(積層膜の予測膜厚)(2)
図5は、D−poly膜の目標膜厚を算出する方法を説明するための図である。
図5では、ゾーンごとの積層膜の予測膜厚、積層膜の目標膜厚、D−poly膜の膜厚の測定値及びD−poly膜の目標膜厚を示している。
図5中、積層膜の予測膜厚を太い破線で示し、積層膜の目標膜厚を細い点線で示し、D−poly膜の膜厚の測定値を細い実線で示し、D−poly膜の目標膜厚を細い破線で示している。
【0067】
図5に示されるように、例えばゾーン1における積層膜の予測膜厚(102nm)は、積層膜の目標膜厚(100nm)よりも2nmだけ厚い膜厚となっている。即ち、膜厚調整量は、式(2)により−2nmとなる。よって、D−poly膜の目標膜厚は、式(1)により、D−poly膜の膜厚の測定値(86nm)に膜厚調整量(−2nm)を加算して、84nmと算出できる。
【0068】
続いて、CPU112は、D−poly膜のレシピ最適化計算を実行する(ステップS11)。レシピ最適化計算では、ステップS4で受信した積層膜の膜厚と、モデル記憶部102に記憶されたD−poly膜の成膜条件が成膜結果に与える影響を表すプロセスモデルと、に基づいて、D−poly膜の成膜条件を最適化する。その際、線形計画法や2次計画法等の最適化アルゴリズムを利用して、D−poly膜の膜厚がステップS10で算出したD−poly膜の目標膜厚となるような各ゾーンにおけるウエハWの温度、成膜時間等のD−poly膜の成膜条件を算出する。なお、調整処理の前にレシピ記憶部104に記憶されたD−poly膜の成膜条件でD−poly膜(単膜)を成膜し、成膜したD−poly膜の膜厚を測定している場合には、ステップS4で受信した積層膜の膜厚に代えて、D−poly膜の膜厚を用いてもよい。なお、D−poly膜の成膜条件が成膜結果に与える影響を表すプロセスモデルは、第1のプロセスモデルの一例である。
【0069】
続いて、CPU112は、ステップS1で読み出したプロセス用レシピを更新する(ステップS8)。具体的には、CPU112は、ステップS1で読み出したプロセス用レシピのD−poly膜の成膜条件を、ステップS11で算出したD−poly膜の成膜条件に更新する。また、CPU112は、ステップS1で読み出したプロセス用レシピのa−Si膜の成膜条件を、ステップS6で算出したa−Si膜の成膜条件に更新する。プロセス用レシピを更新した後、ステップS2へ戻る。プロセス用レシピの更新は、既存のプロセス用レシピを上書きするものであってもよく、既存のプロセス用レシピとは別に新たなプロセス用レシピを作成するものであってもよい。
【0070】
以上により、積層膜の成膜条件を調整することができる。なお、この調整処理は一例であり、例えばCPU112がステップS7において積層膜の予測膜厚が目標膜厚の許容範囲内の膜厚ではないと判定した場合、ステップS9を行うことなく、ステップS10及びステップS11を行ってもよい。また、例えばCPU112がステップS7において積層膜の予測膜厚が目標膜厚の許容範囲内の膜厚ではないと判定した場合、ステップS9においてD−poly膜の成膜条件の調整が必要であることを報知するだけでもよい。この場合、操作者により処理を続行する操作がされるまで処理を中断してもよい。
【0071】
以上に説明したように、本実施形態では、制御装置100が、まず、D−poly膜の上にa−Si膜が成膜された積層膜の特性の測定値と、モデル記憶部102に記憶されたa−Si膜の成膜条件がa−Si膜の特性に与える影響を表すプロセスモデルと、に基づいてa−Si膜の成膜条件を調整する。次いで、制御装置100が、調整されたa−Si膜の成膜条件を用いて積層膜を形成する場合に予測される積層膜の特性の予測値に基づいて、D−poly膜の成膜条件を調整するか否かを判定する。これにより、半導体製造装置や半導体プロセスに関する知識や経験が少ない操作者であっても、積層膜の成膜条件を容易に調整することができる。また、積層膜の最適な成膜条件を算出するまでに要する時間を短縮することができる。
【0072】
以上、制御装置、基板処理システム、基板処理方法及びプログラムを上記実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【0073】
本実施形態では、SiH
4ガスとPH
3ガスとの混合ガスを用いてリンを添加したポリシリコン膜を成膜する場合を例に挙げて説明したが、成膜ガスはSiH
4ガスに限定されず、例えばジシランガス(Si
2H
6ガス)であってもよい。また、添加する不純物はリンに限定されず、例えばボロン(B)であってもよい。
【0074】
また、本実施形態では、SiH
4ガスを用いてa−Si膜を成膜する場合を例に挙げて説明したが、成膜ガスはSiH
4ガスに限定されず、a−Si膜を成膜することが可能な他の成膜ガスであってもよい。
【0075】
また、本実施形態では、D−poly膜とa−Si膜との積層膜を形成する場合を例に挙げて説明したが、積層膜はこれに限定されない。積層膜としては、積層された状態でそれぞれの膜の特性を測定することが困難な膜であることが好ましく、例えば同一の元素を含む膜により形成される積層膜が挙げられる。具体的には、積層膜は、成膜条件の異なる2つのポリシリコン膜であってもよく、成膜条件の異なる2つのa−Si膜であってもよい。また、積層膜を形成する方法は、特に限定されず、例えば化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)であってもよく、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)であってもよい。
【0076】
また、本実施形態では、2つの膜により形成される積層膜を例に挙げて説明したが、積層膜はこれに限定されない。積層膜としては、3つ以上の膜により形成される膜であってもよい。
【0077】
また、本実施形態では、レシピ最適化計算によりヒータ60の設定温度及び成膜時間を調整する場合を例に挙げて説明したが、ヒータ60の設定温度のみを調整してもよく、成膜時間のみを調整してもよい。また、その他の成膜条件、例えば成膜ガスの流量、成膜ガスの供給時間、処理容器4内の圧力、パージガスの供給時間、ウエハボート48の回転数(回転速度)から選択される一つの成膜条件を調整してもよい。さらに、これらの成膜条件から選択される複数の成膜条件を同時に調整してもよい。
【0078】
また、本実施形態では、所定の膜厚を有する積層膜を形成する場合を例に挙げて説明したが、積層膜の特性はこれに限定されず、例えば積層膜の不純物濃度、シート抵抗、反射率、エッチング耐性等の他の特性であってもよい。この場合、ウエハWの温度、成膜時間、処理容器4内の圧力、成膜ガスの流量等の成膜条件が、成膜された膜の不純物濃度、シート抵抗、反射率等の膜質に与える影響を表すプロセスモデルを使用すればよい。
【0079】
また、本実施形態では、ウエハボートに載置された多数枚のウエハWによりに1つのバッチを構成し、1つのバッチ単位で成膜処理を行うバッチ式の装置を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えばホルダ上に載置した多数枚のウエハWに対して一括して成膜処理を行うセミバッチ式の装置であってもよく、一枚ずつ成膜処理を行う枚葉式の装置であってもよい。
【0080】
また、本実施形態では、基板処理装置の動作を制御する制御装置100が調整処理を行う場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えば複数の装置を一元管理する制御装置(群コントローラ)やホストコンピュータで行ってもよい。