(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)重量平均分子量が23万以上であるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂、ならびに溶媒を少なくとも含有するワニスを支持体上に塗布し、乾燥させ、塗膜を形成させる工程、
(b)支持体から塗膜を剥離する工程、及び
(c)剥離した塗膜を加熱し、フィルムを得る工程、
を少なくとも含む、請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
【0013】
本発明の光学フィルムは、重量平均分子量が23万以上であるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含む光学フィルムであって、該光学フィルムを用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像において互いに直交する方向h及び方向vにおけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh及びvとし、前記投影法において前記光学フィルムを用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において互いに直交する方向h’及び方向v’におけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh’及びv’とし、ラインプロファイルhからラインプロファイルh’を引いて得たラインプロファイル(h−h’)の最大強度をY
mhとし、最大強度Y
mhを示す周波数をX
mhとし、ラインプロファイルvからラインプロファイルv’を引いて得たラインプロファイル(v−v’)の最大強度をY
mvとし、最大強度Y
mvを示す周波数をX
mvとすると、Y
mh及びY
mvはいずれも30以下であり、Y
mh、Y
mv、X
mh及びX
mvは、次の関係:
【数2】
を満たし、前記光学フィルムの380nmにおける光線透過率が20%以下であり、かつ、420nmにおける光線透過率が75%以上である、光学フィルムである。ここで、方向h及び方向h’は互いに対応する方向であり、方向v及び方向v’は互いに対応する方向である。これら方向が対応するとは、方位角が同じであることを意味する。上記特徴を満たす本発明の光学フィルムは、優れた光学的均質性を有し、特に画像表示装置における光学フィルムとして好ましく使用される。ここで、光学フィルムの光学的均質性は、フィルムの面状ムラ、厚みムラ、配向ムラなどと密接に関係し、これらのムラが生じると光学的均質性が低下する。そのため、優れた光学的均質性を有する本発明の光学フィルムは、面状ムラ、厚みムラ、配向ムラ等のムラが低減されたフィルムであるといえる。なお、本明細書において、本発明の光学フィルムを単に「フィルム」とも称する。
【0014】
本発明の光学フィルムを用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像、及び、前記投影法において前記フィルムを用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像とは、それぞれ、投影画像及び背景画像からフーリエ変換により得たものである限り特に限定されないが、例えば、
(1)光源からの光をフィルムに照射し、フィルムを透過した光を投影面に投影する投影法により投影画像を得る工程、
(2)工程(1)の投影法においてフィルムを用いずに、光源からの光を投影面に投影して、背景画像を得る工程、
及び、
(3)工程(1)で得た投影画像及び工程(2)で得た背景画像をそれぞれグレースケール化により数値化し、数値化された画像データをフーリエ変換して逆空間像(フィルム逆空間像及び背景逆空間像)を得る工程、により得ることができる。上記逆空間像を用いて光学フィルムの面品質を評価することにより、ムラの濃淡と周期を解析することができる。
【0015】
フィルムの投影法による投影画像からフーリエ変換により逆空間像を得る方法は、特に限定されないが、例えば、評価工程について後述する方法を用いてよい。
【0016】
次に、(4)投影画像の逆空間像において直交する2方向の各ラインプロファイルから、背景画像の逆空間像において直交する前記2方向の各ラインプロファイルをそれぞれ引いて、ブランク補正されたラインプロファイルを得る工程、及び、(5)工程(4)で得たブランク補正されたラインプロファイルの最大強度Y
max(それぞれ、Y
mh及びY
mv)、ならびに各ラインプロファイルにおいて最大強度Y
max(Y
mh及びY
mv)を示す周波数X
max(X
mh及びX
mv)を測定する。例えば、逆空間像の中心を通る水平方向(h1方向)及び垂直方向(v1方向)のそれぞれの方向についてラインプロファイルを作成する場合について以下に説明する。ラインプロファイルは、例えば
図3に示されるような、X軸に周波数、Y軸に強度を表すグラフとして示される。そして、水平方向(h1方向)のラインプロファイルにおける最大強度Y
maxをY
mh1とし、最大強度Y
mh1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値X
cenを引いた値X
maxをX
mh1とする。また、垂直方向(v1方向)のラインプロファイルにおける最大強度Y
maxをY
mv1とし、最大強度Y
mv1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値X
cenを引いた値X
maxをX
mv1とする。なお、上記例においては、空間像の中心を通る水平方向(h1方向)及び垂直方向(v1方向)を直交する2方向として選択したが、該2方向(h方向及びv方向)は互いに直交していれば特に限定されず、中心を通らない二方向であってもよいし、水平方向及び垂直方向でなくてもよい。なお、本明細書において、「ブランク補正されたラインプロファイル」とは、投影画像の逆空間像において直交する2方向の各ラインプロファイルから、背景画像の逆空間像において直交する前記2方向の各ラインプロファイルをそれぞれ引いて得たラインプロファイルを意味する。上記の操作により、投影画像の逆空間像におけるラインプロファイルのベースラインを補正することができる。
【0017】
本発明の光学フィルムにおいて、上記Y
mh及びY
mvはいずれも30以下である。Y
mh又はY
mvが30を超える場合、フィルムの光学的均質性が画像表示装置における光学フィルムとして使用するに十分であるとはいえず、画像の歪み等を十分に低減することができない。光学フィルムの光学的均質性を高めやすく、画像表示装置において画像の視認性を向上しやすい観点から、Y
mh及びY
mvは、好ましくは28以下、より好ましくは26以下である。Y
mh及びY
mvは小さければ小さいほどよく、その下限値は特に限定されず0以上であればよく、通常は1以上である。
【0018】
本発明の光学フィルムにおいて、上記のようにして得たY
mh、Y
mv、X
mh及びX
mvは、次の関係:
【数3】
を満たす。(Y
mh+Y
mv)/(X
mh+X
mv)
1/2の値が30を超えると、光学的均質性が十分でないために画面の歪み等が生じる。(Y
mh+Y
mv)/(X
mh+X
mv)
1/2の値の上限は、フィルムの光学的均質性をより高める観点から、好ましくは25以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは20以下、さらにより好ましくは19.5以下、とりわけ好ましくは19以下、とりわけより好ましくは18以下、とりわけさらに好ましくは17以下、ことさら好ましくは16以下、ことさらより好ましくは13以下、特に好ましくは9以下である。(Y
mh+Y
mv)/(X
mh+X
mv)
1/2の値は小さければ小さいほどよく、その下限値は特に限定されず0以上であればよく、通常は0.5以上である。
【0019】
本発明の光学フィルムにおいて、上記のようにして得たブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値をX
cenとする。例えば
図3に示されるラインプロファイルにおいては、全周波数が90cm
−1であり、その中央値である45cm
−1がX
cenとなる。ここで、X
cenと上記のようにして得たX
mh及びX
mvとが、次の関係:
【数4】
を満たすことが好ましい。なお、上記の式中、X
mはX
mh又はX
mvを表し、X
mh及びX
mvのいずれもが上記式を満たすことが好ましい。|X
m−X
cen|の下限は、より好ましくは0.5cm
−1以上、さらに好ましくは1.0cm
−1以上である。また、|X
m−X
cen|の上限は、より好ましくは8.0cm
−1以下、さらに好ましくは6.0cm
−1以下である。ムラとして視認されない光学的均質性を備えることと、生産性とを考慮すると、X
mh及びX
mvが上記関係を満たすフィルムであることが好ましい。
【0020】
本発明の光学フィルムにおいて、光学フィルムの380nmにおける光線透過率が20%以下であり、かつ、420nmにおける光線透過率が75%以上である。Y
mh等に関する上記特徴及び光線透過率に関する上記特徴を有する本発明の光学フィルムは、光学的均質性が高いことに加えて、透明性が高く、黄色度が低いために、非常に優れた視認性を有する。さらに、光学フィルムがフレキシブル表示装置等において長期間にわたり使用されると、特に紫外線等の光によって光学フィルムが劣化し、光学特性が損なわれ、視認性が低下する場合がある。上記特徴を有する本発明の光学フィルムは、高い光学特性を有すると共に、特に紫外線等による光学特性の低下が生じにくい。なお、本明細書において、光学フィルムの光学的均質性、透明性及び黄色度を総じて、光学フィルムの光学特性と称する。そして、光学フィルムが光学特性に優れるとは、光学的均質性が高いこと、透明性が高いこと、及び、黄色度が低いことを意味する。
【0021】
本発明の光学フィルムにおいて、光学フィルムの380nmにおける光線透過率は20%以下であり、420nmにおける光線透過率は75%以上である。380nmにおける光線透過率が20%を越える場合、特に紫外線による光学特性の低下(特に黄色度の上昇)を抑制することができず、視認性が低下する。光学フィルムの380nmにおける光線透過率は、好ましくは16%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1.5%以下である。380nmにおける光線透過率が上記の上限以下である場合、光学特性の経時的な低下を抑制しやすく、光学フィルムの高い視認性を維持しやすい。380nmにおける光線透過率の下限は特に限定されず、0%以上であればよい。420nmにおける光線透過率が75%より低い場合、光学フィルムの透明性を十分に高めることができず、光学フィルムを画像表示装置等において使用した場合に視認性が不十分となる。光学フィルムの420nmにおける光線透過率は、光学フィルムの透明性を高めやすい観点から、好ましくは78%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは82%以上である。420nmにおける光線透過率の上限は特に限定されず、100%以下であればよい。なお、380nm及び420nmにおける光線透過率は、分光測色計を用いて測定することができる。
【0022】
光学フィルムの380nm及び420nmにおける光線透過率を上記範囲に調整する方法は何ら限定されないが、例えば380nm付近に吸収波長を有するが420nm付近の吸収が小さく、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂に対する溶解性が高い少なくとも1種の紫外線吸収剤を、該樹脂に所望の量で添加して光学フィルムを製造することにより、光線透過率を上記の範囲に調整することができる。
【0023】
光学フィルムの380nm及び420nmにおける光線透過率を上記範囲に調整しやすい紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール誘導体(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)、シアノアクリレート誘導体(シアノアクリレート系紫外線吸収剤)、1,3,5−トリフェニルトリアジン誘導体等のトリアジン誘導体(トリアジン系紫外線吸収剤)、ベンゾフェノン誘導体(ベンゾフェノン系紫外線吸収剤)、及びサリシレート誘導体(サリシレート系紫外線吸収剤)が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。光学フィルムの光線透過率を上記範囲に調整しやすい観点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート誘導体(シアノアクリレート系紫外線吸収剤)及びトリアジン系紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート誘導体(シアノアクリレート系紫外線吸収剤)からなる群から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0024】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、式(X):
【化1】
[式(X)中、Tは水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基であり、R
a及びR
bは互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R
a又はR
bのうち少なくともいずれか一方は炭素数1〜20の炭化水素基である]
で表される化合物が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0025】
Tにおける炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチル−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチル−プロピル基等が挙げられる。
Tにおける炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2−メチル−ブトキシ基、3−メチルブトキシ基、2−エチル−プロポキシ基等が挙げられる。
Tは、好ましくは水素原子、フッ素原子、塩素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子、フッ素原子又は塩素原子である。
【0026】
R
a及びR
bはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R
a及びR
bのうち少なくともいずれか一方は炭化水素基である。R
a及びR
bは、それぞれ炭化水素基である場合、好ましくは炭素数1〜12の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基である。具体的にはメチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基及びtert−オクチル基が例示される。
【0027】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、(2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、(2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0028】
市販されているベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、住化ケムテックス(株)製の商品名:Sumisorb(登録商標) 200(2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、分子量225)、Sumisorb 250(2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メトジイル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、分子量389)、Sumisorb 300(2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、分子量316)、Sumisorb 340(2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、分子量323)、Sumisorb 350(2−(2−ヒドロキシ3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、分子量352)が挙げられる。
【0029】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、2’−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3−(3’,4’−メチレンジオキシフェニル)−アクリレートが挙げられる。市販されているシアノアクリレート系紫外線吸収剤の具体例としては、BASF製のUvinul(登録商標)3035、Uvinul3039、Uvinul3030が挙げられる。
【0030】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,6−ジフェニル−4−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−N-オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(2−(2−エチルヘキサノイロキシ)エトキシ)フェノールが挙げられる。
【0031】
ベンゾフェノン系UV吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノンが挙げられる。
【0032】
ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,6−ジ−tert−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート及びn−オクタデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
【0033】
紫外線吸収剤の分子量又は重量平均分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは320以上、さらに好ましくは350以上である。紫外線吸収剤の分子量が上記の下限以上である場合、光学フィルムを製造する際の加熱等による紫外線吸収剤の揮発を抑制しやすい。紫外線吸収剤の分子量又は重量平均分子量は、好ましくは2,000以下、より好ましくは1,700以下、さらに好ましくは1,400以下、さらに好ましくは1,200以下、特に好ましくは1,000以下である。紫外線吸収剤の分子量が上記の上限以下である場合、樹脂への溶解性を高めやすく、光学フィルムの透明性を向上させやすい。
【0034】
紫外線吸収剤の含有量は、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の質量に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.5〜8質量部、さらに好ましくは1〜7質量部である。紫外線吸収剤の含有量が上記の下限以上であると、紫外線吸収性を高めやすい。紫外線吸収剤の含有量が上記の上限以下であると、基材製造時の熱による紫外線吸収剤の分解を抑制でき、光学特性を向上しやすく、例えばヘイズを低減しやすい。
【0035】
本発明の光学フィルムの黄色度(YI値)は、好ましくは3以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2以下である。光学フィルムの黄色度が上記の上限以下であると透明性を向上させやすく、例えば表示装置の前面板に使用した場合に視認性を高めやすい。黄色度は、通常−5以上、好ましくは−2以上より好ましくは0以上、さらに好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.7以上である。黄色度(YI)は、JIS K 7373:2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計を用いて300〜800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求め、YI=100×(1.2769X−1.0592Z)/Yの式に基づいて算出できる。
【0036】
本発明の光学フィルムの黄色度(YI値)は、紫外線照射等による視認性の低下を抑制する観点から、例えば実施例に記載するようなUV耐久試験の前後での黄色度の変化率(ΔYI)が小さいことが好ましい。上記黄色度の変化率は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.6以下、特に好ましくは1.3以下、最も好ましくは1.2以下である。黄色度の変化率が上記の上限以下であると、例えば表示装置の前面板に使用した場合に、優れた視認性を長期にわたり維持しやすい。黄色度の変化率は小さければ小さいほどよい。
【0037】
本発明の光学フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上である。全光線透過率が上記の下限以上であると、光学フィルムを画像表示装置に組み込んだ際に視認性を高めやすい。本発明の光学フィルムは、光学的均質性が高く、高い透過率を示すので、例えば、透過率の低いフィルムを用いた場合と比べて、一定の明るさを得るため必要な表示素子等の発光強度を抑えることが可能となる。このため、消費電力を削減することができる。例えば、本発明の光学フィルムを表示装置に組みこむ場合、バックライトの光量を減らしても明るい表示を得られる傾向があり、エネルギーの節約に貢献できる。全光線透過率の上限は、通常100%以下である。なお、全光線透過率は、例えばJIS K7361−1:1997に準拠してヘイズコンピュータを用いて測定できる。全光線透過率は、後述する光学フィルムの膜厚の範囲における全光線透過率であってよい。
【0038】
本発明の光学フィルムのヘイズは、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.3%以下である。光学フィルムのヘイズが上記の上限以下であると透明性が良好となり、例えば画像表示装置の前面板に使用した場合に、画像の視認性を高めやすい。またヘイズの下限は通常0.01%以上である。なお、ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠してヘイズコンピュータを用いて測定できる。
【0039】
本発明の光学フィルムの膜厚は、用途に応じて適宜調整してよいが、好ましくは25μm以上、より好ましくは27μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは85μm以下である。光学フィルムの膜厚は、膜厚計などで測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0040】
本発明の光学フィルムは、重量平均分子量が23万以上であるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含む光学フィルムである。Y
mh等に関する上記特徴を有する均質性の高い光学フィルムを製造しやすい観点からは、本発明の光学フィルムは、好ましくはキャストフィルムである。本明細書において、キャストフィルムとは、例えば、上記樹脂を含む溶液、分散液、又は溶融物を、適当な支持体上に流延、塗布等し、加熱、冷却、乾燥等により塗膜化させて、必要に応じて該塗膜を該支持体から剥離して得られるフィルムを表す。このようにして得たフィルムはポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を少なくとも含有し、場合によりさらに微量の溶媒を含有する。
【0041】
本発明の光学フィルムは、重量平均分子量が23万以上であるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含む。本発明の光学フィルムは1種類のポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂を含有してもよいし、2種以上のポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含有してもよい。
【0042】
<ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂>
本発明の光学フィルムは、重量平均分子量が23万以上であるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含む。ポリイミド系樹脂とは、イミド基を含む繰返し構造単位を含有する樹脂(以下、ポリイミド樹脂ということがある)、並びにイミド基及びアミド基の両方を含む繰返し構造単位を含有する樹脂(以下、ポリアミドイミド樹脂ということがある)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を示す。また、ポリアミド系樹脂とは、アミド基を含む繰り返し構造単位を含有する樹脂を示す。
【0043】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、式(1)で表される構成単位を有するポリイミド樹脂であるか、又は、式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。また、ポリアミド系樹脂は、式(2)で表される構成単位を有するポリアミド樹脂であることが好ましい。以下において式(1)及び式(2)について説明するが、式(1)についての説明は、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂の両方に関し、式(2)についての説明は、ポリアミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂の両方に関する。
【化2】
【0044】
式(1)で表される構成単位は、テトラカルボン酸化合物とジアミン化合物とが反応して形成される構成単位であり、式(2)で表される構成単位は、ジカルボン酸化合物とジアミン化合物とが反応して形成される構成単位である。
【0045】
式(2)において、Zは、互いに独立に、2価の有機基であり、好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基又はフッ素置換された炭素数1〜8の炭化水素基で置換されていてもよい、炭素数4〜40の有機基であり、より好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基又はフッ素置換された炭素数1〜8の炭化水素基で置換されていてもよい、環状構造を有する炭素数4〜40の2価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。Zの有機基として、後述する式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基の結合手のうち、隣接しない2つが水素原子に置き換わった基及び炭素数6以下の2価の鎖式炭化水素基が例示され、Zのヘテロ環構造としてはチオフェン環骨格を有する基が例示される。得られる光学フィルムの黄色度を抑制(YI値を低減)しやすい観点から、式(20)〜式(27)で表される基、及び、チオフェン環骨格を有する基が好ましい。
【0046】
本発明の一実施形態において、ポリアミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂は、複数種のZを含み得、複数種のZは、互いに同一であっても異なっていてもよい。特に、光学フィルムの高い表面硬度及び優れた光学特性を発現しやすい観点から、Zの少なくとも一部が、式(3)
【化3】
[式(3)中、R
1〜R
8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R
1〜R
8に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Aは、互いに独立に、単結合、−O−、−CH
2−、−CH
2−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−SO
2−、−S−、−CO−又は−N(R
9)−を表し、R
9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、
mは0〜4の整数であり、
*は結合手を表す]
で表されることが好ましい。
【0047】
式(3)において、Aは、互いに独立に、単結合、−O−、−CH
2−、−CH
2−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−SO
2−、−S−、−CO−又は−N(R
9)−を表し、光学フィルムの耐屈曲性の観点から、好ましくは−O−又は−S−を表し、より好ましくは−O−を表す。
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表す。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチル−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチル−プロピル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。光学フィルムの表面硬度及び柔軟性の観点から、R
1〜R
8は、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。ここで、R
1〜R
8に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
R
9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチル−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチル−プロピル基、n−ヘキシル、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられ、これらはハロゲン原子で置換されていてもよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0048】
式(3)において、mは、0〜4の範囲の整数であり、mがこの範囲内であると、光学フィルムの耐屈曲性や弾性率が良好になりやすい。また、式(3)において、mは、好ましくは0〜3の範囲の整数、より好ましくは0〜2、さらに好ましくは0又は1、特に好ましくは0である。mがこの範囲内であると、光学フィルムの耐屈曲性や弾性率を向上させやすい。また、Zは、式(3)で表される構成単位を1種又は2種類以上含んでいてもよく、光学フィルムの弾性率及び耐屈曲性の向上、黄色度(YI値)低減の観点から、特にmの値が異なる2種類以上の構成単位、好ましくはmの値の異なる2種類の構成単位を含んでいてもよい。その場合、光学フィルムの高い弾性率や耐屈曲性及び低い黄色度(YI値)を発現しやすい観点から、樹脂がZにおいて、mが0である式(3)で表される構成単位を含有することが好ましく、該構成単位に加えてmが1である式(3)で表される構成単位をさらに含有することがより好ましい。
【0049】
本発明の好ましい一実施形態において、樹脂は、式(3)で表される構成単位として、m=0であり、かつR
5〜R
8が水素原子である構成単位を有する。より好ましい本発明の一実施形態において、樹脂は、式(3)で表される構成単位として、m=0であり、かつR
5〜R
8が水素原子である構成単位と、式(3’):
【化4】
で表される構成単位を有する。この場合、光学フィルムの表面硬度及び耐屈曲性を向上させやすく、黄色度を低減しやすい。
【0050】
光学フィルムがポリアミドイミド樹脂を含む本発明の好ましい一実施形態において、式(3)で表される構成単位の割合は、ポリアミドイミド樹脂の式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位の合計に対して、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上、最も好ましくは60モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。式(3)で表される構成単位の割合が上記の下限以上であると、光学フィルムの表面硬度を高めやすく、かつ耐屈曲性や弾性率を高めやすい。式(3)で表される構成単位の割合が上記の上限以下であると、式(3)由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。
【0051】
また、ポリアミドイミド樹脂がm=1〜4である式(3)の構成単位を有する場合、mが1〜4である式(3)の構成単位の割合は、ポリアミドイミド樹脂の式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位の合計に対して、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは7モル%以上、特に好ましくは9モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下、特に好ましくは30モル%以下である。mが1〜4である式(3)の構成単位の割合が上記の下限以上であると、光学フィルムの表面硬度及び耐屈曲性を高めやすい。mが1〜4である式(3)の構成単位の割合が上記の上限以下であると、式(3)由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。なお、式(1)、式(2)又は式(3)で表される構成単位の含有量は、例えば
1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
【0052】
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリアミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂中のZの、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは45モル%以上、特に好ましくは50モル%以上が、mが0〜4である式(3)で表される構成単位である。Zの上記の下限以上が、mが0〜4である式(3)で表される構成単位であると、光学フィルムの表面硬度を高めやすいと共に、耐屈曲性及び弾性率も高めやすい。また、ポリアミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂中のZの100モル%以下が、mが0〜4である式(3)で表される構成単位であればよい。なお、樹脂中の、mが0〜4である式(3)で表される構成単位の割合は、例えば
1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
【0053】
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリアミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂中のZの、好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上、特に好ましくは12モル%以上が、mが1〜4である式(3)で表される。ポリアミドイミド樹脂のZの上記の下限以上が、mが1〜4である式(3)で表されると、光学フィルムの表面硬度を高めやすく、かつ耐屈曲性及び弾性率を高めやすい。また、Zの、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下、特に好ましくは30モル%以下が、mが1〜4である式(3)で表されることが好ましい。Zの上記の上限以下が、mが1〜4である式(3)で表されると、mが1〜4である式(3)由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。なお樹脂中のmが1〜4である式(3)で表される構成単位の割合は、例えば
1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
【0054】
式(1)及び式(2)において、Xは、互いに独立に、2価の有機基を表し、好ましくは炭素数4〜40の2価の有機基、より好ましくは環状構造を有する炭素数4〜40の2価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基及びフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜8である。本発明の一実施形態において、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂は、複数種のXを含み得、複数種のXは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。Xとしては、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)及び式(18)で表される基;それらの式(10)〜式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
【0056】
式(10)〜式(18)中、*は結合手を表し、
V
1、V
2及びV
3は、互いに独立に、単結合、−O−、−S−、−CH
2−、−CH
2−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−SO
2−、−CO−又は−N(Q)−を表す。ここで、Qはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1〜12の1価の炭化水素基としては、R
9について上記に述べた基が挙げられる。
1つの例は、V
1及びV
3が単結合、−O−又は−S−であり、かつ、V
2が−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−又は−SO
2−である。V
1とV
2との各環に対する結合位置、及び、V
2とV
3との各環に対する結合位置は、互いに独立に、好ましくは各環に対してメタ位又はパラ位であり、より好ましくはパラ位である。
【0057】
式(10)〜式(18)で表される基の中でも、光学フィルムの表面硬度及び耐屈曲性を高めやすい観点から、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)及び式(17)で表される基が好ましく、式(14)、式(15)及び式(16)で表される基がより好ましい。また、V
1、V
2及びV
3は、光学フィルムの表面硬度及び柔軟性を高めやすい観点から、互いに独立に、単結合、−O−又は−S−であることが好ましく、単結合又は−O−であることがより好ましい。
【0058】
本発明の好ましい一実施形態において、式(1)及び式(2)中の複数のXの少なくとも一部は、式(4):
【化6】
[式(4)中、R
10〜R
17は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R
10〜R
17に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、*は結合手を表す]
で表される構成単位である。式(1)及び式(2)中の複数のXの少なくとも一部が式(4)で表される基であると、光学フィルムの表面硬度及び透明性を高めやすい。
【0059】
式(4)において、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表す。炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基としては、式(3)における炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基として例示のものが挙げられる。R
10〜R
17は、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、ここで、R
10〜R
17に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R
10〜R
17は、互いに独立に、光学フィルムの表面硬度、透明性及び耐屈曲性の観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、とりわけ好ましくはR
10、R
12、R
13、R
14、R
15、及びR
16が水素原子、R
11及びR
17が水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、特に好ましくはR
11及びR
17がメチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0060】
本発明の好ましい一実施形態において、式(4)で表される構成単位は式(4’):
【化7】
で表される構成単位であり、すなわち、複数のXの少なくとも一部は、式(4’)で表される構成単位である。この場合、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、該ワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。
【0061】
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂中のXの、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が式(4)、特に式(4’)で表される。ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂における上記範囲内のXが式(4)、特に式(4’)で表されると、得られる光学フィルムは、フッ素元素を含有する骨格により樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、該ワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性も向上しやすい。なお、好ましくは、上記ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂中のXの100モル%以下が式(4)、特に式(4’)で表される。上記ポリアミドイミド樹脂中のXは式(4)、特に式(4’)であってもよい。上記樹脂中のXの式(4)で表される構成単位の割合は、例えば
1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
【0062】
式(1)において、Yは、4価の有機基を表し、好ましくは炭素数4〜40の4価の有機基を表し、より好ましくは環状構造を有する炭素数4〜40の4価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基であり、その場合、炭化水素基及びフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜8である。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。Yとしては、以下の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基;それらの式(20)〜式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
【0064】
式(20)〜式(29)中、
*は結合手を表し、
W
1は、単結合、−O−、−CH
2−、−CH
2−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−Ar−、−SO
2−、−CO−、−O−Ar−O−、−Ar−O−Ar−、−Ar−CH
2−Ar−、−Ar−C(CH
3)
2−Ar−又は−Ar−SO
2−Ar−を表す。Arは、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリーレン基を表し、具体例としてはフェニレン基が挙げられる。
【0065】
式(20)〜式(29)で表される基の中でも、光学フィルムの表面硬度及び耐屈曲性の観点から、式(26)、式(28)又は式(29)で表される基が好ましく、式(26)で表される基がより好ましい。また、W
1は、光学フィルムの表面硬度及び耐屈曲性を高めやすく、黄色度を低減しやすい観点から、互いに独立に、単結合、−O−、−CH
2−、−CH
2−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−又は−C(CF
3)
2−であることが好ましく、単結合、−O−、−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−又は−C(CF
3)
2−であることがより好ましく、単結合、−C(CH
3)
2−又は−C(CF
3)
2−であることがさらに好ましい。
【0066】
本発明の好ましい一実施形態において、式(1)中の複数のYの少なくとも一部は、式(5):
【化9】
[式(5)中、R
18〜R
25は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R
18〜R
25に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
*は結合手を表す]
で表される構成単位である。式(1)中の複数のYの少なくとも一部が式(5)で表される基であると、ポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、ポリイミド系樹脂を含有するワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。
【0067】
式(5)において、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表す。炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基としては、式(3)における炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜12のアリール基として上記に例示のものが挙げられる。R
18〜R
25は、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、ここで、R
18〜R
25に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R
18〜R
25は、互いに独立に、光学フィルムの表面硬度、耐屈曲性及び透明性を向上しやすい観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、よりさらに好ましくはR
18、R
19、R
20、R
23、R
24、及びR
25が水素原子、R
21及びR
22が水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、とりわけ好ましくはR
21及びR
22がメチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0068】
本発明の好ましい一実施形態においては、式(5)で表される構成単位は、式(5’):
【化10】
で表される基であり、すなわち、複数のYの少なくとも一部は、式(5’)で表される構成単位である。この場合、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、該ワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。
【0069】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂中のYの、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が、式(5)、特に式(5’)で表される。ポリイミド系樹脂における上記範囲内のYが式(5)、特に式(5’)で表されると、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。なお、好ましくは、上記ポリイミド系樹脂中のYの100モル%以下が式(5)、特に式(5’)で表される。ポリイミド系樹脂中のYは式(5)、特に式(5’)であってもよい。ポリイミド系樹脂中のYの式(5)で表される構成単位の割合は、例えば
1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
【0070】
ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂は、式(1)及び式(2)で表される構成単位の他に、式(30)で表される構成単位及び/又は式(31)で表される構成単位を含むことができる。
【化11】
【0071】
式(30)において、Y
1は4価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Y
1としては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基、それらの式(20)〜式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基、並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂は、複数種のY
1を含み得、複数種のY
1は、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
【0072】
式(31)において、Y
2は3価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Y
2としては、上記の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基の結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基、及び3価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂は、複数種のY
2を含み得、複数種のY
2は、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
【0073】
式(30)及び式(31)において、X
1及びX
2は、互いに独立に、2価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。X
1及びX
2としては、上記の式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)、及び式(18)で表される基;それら式(10)〜式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
【0074】
本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂は、式(1)及び/又は式(2)で表される構成単位、並びに場合により式(30)及び/又は式(31)で表される構成単位からなる。また、光学フィルムの光学特性、表面硬度及び耐屈曲性の観点から、上記ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂において、式(1)及び式(2)で表される構成単位は、式(1)及び式(2)、並びに場合により式(30)及び式(31)で表される全構成単位に基づいて、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。なお、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂において、式(1)及び式(2)で表される構成単位は、式(1)及び式(2)、並びに場合により式(30)及び/又は式(31)で表される全構成単位に基づいて、通常100%以下である。なお、上記割合は、例えば、
1H−NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
【0075】
ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、標準ポリスチレン換算で、23万以上である。重量平均分子量が23万より低い場合、光学フィルムの十分な耐屈曲性を得ることができない。光学フィルムの表面硬度及び耐屈曲性を高めやすい観点から、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは230,000以上、より好ましくは250,000以上、さらに好ましくは270,000以上、特に好ましくは300,000以上である。また、ポリアミド系樹脂又はポリイミド系樹の溶媒に対する溶解性を向上しやすいと共に、光学フィルムの延伸性及び加工性を向上しやすい観点から、該樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下、さらに好ましくは700,000以下、特に好ましくは500,000以下である。重量平均分子量は、例えばGPC測定を行い、標準ポリスチレン換算によって求めることができ、例えば実施例に記載の方法により算出してよい。
【0076】
ポリアミドイミド樹脂において、式(2)で表される構成単位の含有量は、式(1)で表される構成単位1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.5モル以上、さらに好ましくは1.0モル以上、特に好ましくは1.5モル以上であり、好ましくは6.0モル以下、より好ましくは5.0モル以下、さらに好ましくは4.5モル以下である。式(2)で表される構成単位の含有量が上記の下限以上であると、光学フィルムの表面硬度を高めやすい。また、式(2)で表される構成単位の含有量が上記の上限以下であると、式(2)中のアミド結合間の水素結合による増粘を抑制し、光学フィルムの加工性を向上させやすい。
【0077】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明の光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂は、例えば上記の含フッ素置換基等によって導入することができる、フッ素原子等のハロゲン原子を含んでよい。ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂がハロゲン原子を含む場合、光学フィルムの弾性率を向上させ、かつ黄色度(YI値)を低減させやすい。光学フィルムの弾性率が高いと、該フィルムにおけるキズ及びシワ等の発生を抑制しやすく、また、光学フィルムの黄色度が低いと、該フィルムの透明性及び視認性を向上させやすくなる。ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子である。ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂にフッ素原子を含有させるために好ましい含フッ素置換基としては、例えばフルオロ基及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
【0078】
ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂におけるハロゲン原子の含有量は、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の質量を基準として、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%である。ハロゲン原子の含有量が上記の下限以上であると、光学フィルムの弾性率をより向上させ、吸水率を下げ、黄色度をより低減し、透明性及び視認性をより向上させやすい。ハロゲン原子の含有量が上記の上限以下であると、合成がしやすくなる。
【0079】
ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂のイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは96%以上である。光学フィルムの光学的均質性を高めやすい観点から、イミド化率が上記の下限以上であることが好ましい。また、イミド化率の上限は100%以下である。イミド化率は、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値に対する、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。なお、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂がトリカルボン酸化合物を含む場合には、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値と、トリカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量との合計に対する、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。また、イミド化率は、IR法、NMR法などにより求めることができ、例えば、NMR法においては、実施例に記載の方法により測定できる。
【0080】
ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂は、市販品を使用してもよい。ポリイミド樹脂の市販品としては、例えば三菱瓦斯化学(株)製ネオプリム(登録商標)、河村産業(株)製KPI−MX300F等が挙げられる。
【0081】
<樹脂の製造方法>
ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸化合物及びジアミン化合物を主な原料として製造でき、ポリアミドイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物及びジアミン化合物を主な原料として製造でき、ポリアミド樹脂は、例えば、ジカルボン酸化合物及びジアミン化合物を主な原料として製造できる。ここで、ジカルボン酸化合物は少なくとも式(3”)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化12】
[式(3”)中、R
1〜R
8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は炭素数6〜12のアリール基を表し、R
1〜R
8に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Aは、単結合、−O−、−CH
2−、−CH
2−CH
2−、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−SO
2−、−S−、−CO−又は−N(R
9)−を表し、
R
9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の1価の炭化水素基を表し、
mは0〜4の整数であり、
R
31及びR
32は、互いに独立に、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基又は塩素原子を表す。]
【0082】
本発明の好ましい一実施形態において、ジカルボン酸化合物は、mが0である、式(3”)で表される化合物である。ジカルボン酸化合物として、mが0である式(3”)で表される化合物に加えて、Aが酸素原子である式(3”)で表される化合物を使用することがより好ましい。また、別の好ましい一実施形態においては、ジカルボン酸化合物は、R
31、R
32が塩素原子である、式(3”)で表される化合物である。また、ジアミン化合物に代えて、ジイソシアネート化合物を用いてもよい。
【0083】
樹脂の製造に使用されるジアミン化合物としては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン及びこれらの混合物が挙げられる。なお、本実施形態において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基又はその他の置換基を含んでいてもよい。この芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環及びフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環である。また「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基が脂肪族基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香環やその他の置換基を含んでいてもよい。
【0084】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン等の非環式脂肪族ジアミン、並びに1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミン及び4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の環式脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0085】
芳香族ジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン等の、芳香環を1つ有する芳香族ジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMBと記載することがある)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン等の、芳香環を2つ以上有する芳香族ジアミンが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
【0086】
芳香族ジアミンは、好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルであり、より好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルである。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
【0087】
上記ジアミン化合物の中でも、光学フィルムの高表面硬度、高透明性、高柔軟性、高屈曲耐性及び低着色性の観点からは、ビフェニル構造を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上を用いることがより好ましく、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)を用いることがよりさらに好ましい。
【0088】
樹脂の製造に用いられるテトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物;及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。テトラカルボン酸化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。テトラカルボン酸化合物は、二無水物の他、酸クロリド化合物等のテトラカルボン酸化合物類縁体であってもよい。
【0089】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物及び縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDAと記載することがある)、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。また、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が挙げられ、縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0090】
これらの中でも、好ましくは4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物及び4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられ、より好ましくは4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物及び4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
【0091】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、環式又は非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物であり、その具体例としては、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等のシクロアルカンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル3,3’−4,4’−テトラカルボン酸二無水物及びこれらの位置異性体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。また、環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物を組合せて用いてもよい。
【0092】
上記テトラカルボン酸二無水物の中でも、光学フィルムの高表面硬度、高透明性、高柔軟性、高屈曲耐性、及び低着色性の観点から、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、並びにこれらの混合物が好ましく、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、並びにこれらの混合物がより好ましく、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)がさらに好ましい。
【0093】
樹脂の製造に用いられるジカルボン酸化合物としては、好ましくはテレフタル酸、4,4’−オキシビス安息香酸又はそれらの酸クロリド化合物が用いられる。テレフタル酸や4,4’−オキシビス安息香酸又はそれらの酸クロリド化合物に加えて、他のジカルボン酸化合物が用いられてもよい。他のジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、イソフタル酸;ナフタレンジカルボン酸;4,4’−ビフェニルジカルボン酸;3,3’−ビフェニルジカルボン酸;炭素数8以下である鎖式炭化水素、のジカルボン酸化合物及び2つの安息香酸が単結合、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−SO
2−若しくはフェニレン基で連結された化合物並びに、それらの酸クロリド化合物が挙げられる。具体例としては、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)、テレフタロイルクロリドが好ましく、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)とテレフタロイルクロリドとを組合せて用いることがさらに好ましい。
【0094】
なお、上記ポリイミド系樹脂は、光学フィルムの各種物性を損なわない範囲で、上記テトラカルボン酸化合物に加えて、テトラカルボン酸及びトリカルボン酸並びにそれらの無水物及び誘導体をさらに反応させたものであってもよい。
【0095】
テトラカルボン酸としては、上記テトラカルボン酸化合物の無水物の水付加体が挙げられる。
【0096】
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸の無水物;2,3,6−ナフタレントリカルボン酸−2,3−無水物;フタル酸無水物と安息香酸とが単結合、−O−、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−SO
2−若しくはフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。
【0097】
樹脂の製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物及び/又はジカルボン酸化合物の使用量は、所望とするポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂の各構成単位の比率に応じて適宜選択できる。
【0098】
樹脂の製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物及びジカルボン酸化合物の反応温度は、特に限定されないが、例えば20〜200℃、好ましくは25〜100℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば30分〜10時間程度である。必要に応じて、不活性雰囲気又は減圧の条件下において反応を行ってよい。好ましい態様では、反応は、常圧及び/又は不活性ガス雰囲気下、撹拌しながら行う。また、反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、反応に影響を与えない限り特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;及びそれらの組合せ(混合溶媒)などが挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、アミド系溶媒を好適に使用できる。
【0099】
ポリイミド系樹脂の製造におけるイミド化工程では、イミド化触媒の存在下で、イミド化することができる。イミド化触媒としては、例えばトリプロピルアミン、ジブチルプロピルアミン、エチルジブチルアミン等の脂肪族アミン;N−エチルピペリジン、N−プロピルピペリジン、N−ブチルピロリジン、N−ブチルピペリジン、及びN−プロピルヘキサヒドロアゼピン等の脂環式アミン(単環式);アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びアザビシクロ[3.2.2]ノナン等の脂環式アミン(多環式);並びにピリジン、2−メチルピリジン(2−ピコリン)、3−メチルピリジン(3−ピコリン)、4−メチルピリジン(4−ピコリン)、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3,4−シクロペンテノピリジン、5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン、及びイソキノリン等の芳香族アミンが挙げられる。また、イミド化反応を促進しやすい観点から、イミド化触媒とともに、酸無水物を用いることが好ましい。酸無水物は、イミド化反応に用いられる慣用の酸無水物等が挙げられ、その具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸等の芳香族酸無水物などが挙げられる。
【0100】
ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組合せた分離手段により単離(分離精製)してもよく、好ましい態様では、透明ポリアミドイミド樹脂を含む反応液に、多量のメタノール等のアルコールを加え、樹脂を析出させ、濃縮、濾過、乾燥等を行うことにより単離することができる。
【0101】
<フィラー>
本発明の光学フィルムは、平均一次粒子径が5〜35nmの少なくとも1種のフィラーをさらに含んでもよい。かかる光学フィルムは、高い光学特性を有することに加えて、高い引張弾性率も有する。光学フィルムの引張弾性率は、好ましくは4,000MPa以上、より好ましくは5,000MPa以上、さらに好ましくは5,500MPa以上、特に好ましくは6,000MPa以上である。引張弾性率が上記の下限以上であると、光学フィルムに凹み等の欠陥が生じにくくなると共に、光学フィルムの強度を高めやすく、耐久性を向上させやすい。引張弾性率は、好ましくは10,000MPa以下、より好ましくは9,000MPa以下である。引張弾性率が上記の上限以下であると、光学フィルムの耐屈曲性を向上させやすい。なお、光学フィルムの引張弾性率は、JIS K7127に準拠して、室温で、引張試験機を用いて測定でき、例えば実施例の記載の方法により測定できる。光学フィルムの均質性、透明性、弾性率及び強度を高めやすい観点からは、フィラーの平均一次粒子径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20nm以上である。また、光学フィルムの透明性を高めやすい観点から、フィラーの平均一次粒子径は、好ましくは30nm以下である。
【0102】
フィラーの平均一次粒子径は、BET法により測定できる。具体的には、BET法(窒素吸着BET法)により測定した比表面積(BET比表面積)を、平均一次粒子径に換算して算出することができる。ここで、平均一次粒子径をd(nm)とし、フィラーの密度をρ(g/cm
3)とし、BET比表面積をS(m
2/g)とすると、これらの間には、d=6000/(S×ρ)の関係が成り立つ。例えばフィラーがシリカである場合、d=2070/Sの式より、BET比表面積から平均一次粒子径を算出することができる。なお、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)の画像解析により、一次粒子径(平均一次粒子径)を測定してもよい。光学フィルムに含まれるフィラーの平均一次粒子径は、原料として用いるフィラーの平均一次粒子径であってもよいし、光学フィルムから測定した平均一次粒子径であってもよい。光学フィルムからフィラーの平均一次粒子径を測定する場合、フィルムを測定試料として透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡の画像解析により、光学フィルム中のフィラーの平均一次粒子径を測定してもよいし、フィルムを必要に応じて粉砕し、破砕したフィルムを、フィルム中の樹脂を溶解可能な溶媒(例えばγ−ブチロラクトン)に溶解させた状態で、分散された粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して測定してもよいし、フィルムからフィラーを取り出し、乾燥させて、上記と同様にしてBET比表面積から平均一次粒子径を算出してもよい。平均一次粒子を例えば電子顕微鏡の画像解析により測定する場合、一定面積内に存在する100個の粒子のそれぞれについて一次粒子径を測定した結果の平均値を、平均一次粒子径としてよい。
【0103】
フィラーとしては、例えば有機粒子、無機粒子などが挙げられ、好ましくは無機粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物粒子、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物粒子などが挙げられ、これらの中でも、得られる光学フィルムの弾性率及び/又は引裂き強度を高め、耐衝撃性を向上しやすい観点から、好ましくはシリカ粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子が挙げられ、より好ましくはシリカ粒子が挙げられる。これらのフィラーは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
【0104】
平均一次粒子径が5〜35nmのフィラーの含有量は、光学フィルムの質量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、特に好ましくは30質量%以上である。フィラーの含有量が上記の下限以上であると、光学フィルムの耐衝撃性及び耐久性を向上させやすい。平均一次粒子径が5〜35nmのフィラーの含有量は、光学フィルムの質量に対して、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。フィラーの含有量が上記の上限以下であると、光学フィルムのヘイズや黄色度を低減しやすく、透明性及び光学特性を向上させやすいと共に、耐屈曲性を向上させやすい。
【0105】
<他の添加剤>
本発明の光学フィルムは、フィラー、紫外線吸収剤以外の他の添加剤をさらに含有していてもよい。他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤、難燃剤、pH調整剤、シリカ分散剤、滑剤、増粘剤、及びレベリング剤等が挙げられる。他の添加剤を含有する場合、その含有量は、光学フィルムの質量に対して、好ましくは0.005〜20質量部、より好ましくは0.01〜15質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部であってよい。
【0106】
<光学フィルムの製造方法>
上記特徴を有する本発明の光学フィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、次の工程:
(a)重量平均分子量が23万以上であるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂、ならびに溶媒を少なくとも含有するワニスを支持体上に塗布し、乾燥させ、塗膜を形成させる工程、
(b)支持体から塗膜を剥離する工程、及び
(c)剥離した塗膜を加熱し、フィルムを得る工程
を少なくとも含む製造方法により製造することができる。本発明は、上記の工程を少なくとも含む、光学フィルムの製造方法も提供する。
【0107】
本発明の光学フィルムの製造方法は、工程(c)の後、
(d)得られたフィルムを用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像において互いに直交する方向h及び方向vにおけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh及びラインプロファイルvとし、前記投影法において前記フィルムを用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において互いに直交する方向h’及び方向v’におけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh’及びラインプロファイルv’とし、ラインプロファイルhからラインプロファイルh’を引いて得たラインプロファイル(h−h’)の最大強度をY
mhとし、最大強度Y
mhを示す周波数をX
mhとし、ラインプロファイルvからラインプロファイルv’を引いて得たラインプロファイル(v−v’)の最大強度をY
mvとし、最大強度Y
mvを示す周波数をX
mvとしたときの、Y
mh及びY
mvの値、並びに、Y
mh、Y
mv、X
mh及びX
mvから算出される(Y
mh+Y
mv)/(X
mh+X
mv)
1/2の値に基づいて、フィルムを評価する工程
をさらに含んでもよい。
【0108】
上記の工程(a)で使用するワニスは、重量平均分子量が23万以上であるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂及び溶媒を少なくとも含有する。ここで、ワニスの粘度(cps)とワニスの固形分濃度(質量%)は、次の関係:
【数5】
を満たすことが好ましい。
【0109】
まず、ワニスを支持体上に塗布し、乾燥させ、塗膜を形成させる工程(a)について説明する。ワニスに含有される樹脂としては、本発明の光学フィルムに含まれる樹脂として上記に記載した樹脂が挙げられる。また、ワニスには、上記に述べた紫外線吸収剤、フィラー、その他の添加剤が含有されていてもよい。
【0110】
ワニスに含有される溶媒は、上記樹脂を溶解可能であれば特に限定されない。かかる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;及びそれらの組合せ(混合溶媒)が挙げられる。これらの中でも、光学フィルムの光学的均質性を高めやすい観点から、アミド系溶媒又はラクトン系溶媒が好ましい。これらの溶媒は単独又は二種以上組合せて使用できる。また、ワニスには水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、非環状エステル系溶媒、エーテル系溶媒などが含まれてもよい。ワニスの固形分濃度は、好ましくは1〜25質量%、より好ましくは5〜20質量%である。
【0111】
ワニスは、上記樹脂、溶媒及び必要に応じて用いられる紫外線吸収剤、フィラー及びその他の添加剤を混合し、撹拌することにより調製することができる。例えば、上記のジカルボン酸化合物、テトラカルボン酸化合物、及び/又はジアミン化合物、ならびに上記のその他の原料を反応させて得た、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の反応液を、溶媒及び場合により他の添加剤と共に混合し、撹拌することにより、ワニスを調製してよい。反応液からポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂を単離して、溶媒等と混合することにより、ワニスを調製してもよいし、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の溶液や固体を購入し、必要に応じて溶媒等と混合することにより、ワニスを調製してもよい。また、フィラーとしてシリカを用いる場合、シリカを含むシリカゾルの分散液を、前記樹脂が溶解可能な溶媒、例えば下記のワニスの調製に用いられる溶媒で置換したシリカゾルを用いてワニスを調製してもよい。
【0112】
上記のようにして調製したワニスの粘度(cps)と、ワニスの固形分濃度(質量%)は特に限定されないが、優れた均質性を有する本発明のフィルムを得やすい観点からは、これらが次の関係:
【数6】
を満たすことが好ましい。ここで、ワニスの粘度(cps)は、JIS K8803:2011に従い、E型粘度計を用いて、25℃で測定される。また、ワニスの固形分濃度は、ワニスに含有される樹脂、フィラー及び添加剤等の濃度(質量%)を表し、ワニスの全質量に基づくワニスに含有される固形分の質量から算出される。上記式で表されるワニスの粘度とワニスの固形分濃度との積は、フィルムの光学的均質性を高めやすい観点から、好ましくは3,000以上、より好ましくは3,500以上である。上記式で表されるワニスの粘度とワニスの固形分濃度との積の上限は特に限定されないが、ワニスのハンドリングの観点からは、好ましくは10,000以下、より好ましくは7,000以下である。
【0113】
ワニスの粘度は、好ましくは5,000〜60,000cps、より好ましくは10,000〜50,000cps、さらに好ましくは15,000〜45,000cpsである。ワニスの粘度が上記の下限以上であると、本発明の効果を得られやすく、上記の上限以下であることが、ワニスのハンドリングしやすさの観点から好ましい。
【0114】
ワニスの固形分濃度は、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは10〜23質量%、さらに好ましくは14〜20質量%である。ワニスの固形分濃度が上記の下限以上であることが、厚い膜厚を得る観点から好ましく、上記の上限以下であることが、ワニスのハンドリングしやすさの観点から好ましい。
【0115】
支持体としては、例えば樹脂基材、ステンテレス鋼ベルト、ガラス基材等が挙げられる。支持体として、樹脂フィルム基材を使用することが好ましい。樹脂フィルム基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、シクロオレフィン系(COP)フィルム、アクリル系フィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム等が挙げられる。中でも、平滑性、耐熱性に優れる観点から、PETフィルム、COPフィルム等が好ましく、さらに光学フィルムとの密着性及びコストの観点から、PETフィルムがより好ましい。
【0116】
支持体の膜厚は、特に制限されないが、好ましくは50〜250μm、より好ましくは100〜200μm、さらに好ましくは150〜200μmである。支持体の膜厚が上記の上限以下である場合、フィルムの製造コストを抑え易いため好ましい。また、支持体の膜厚が上記の下限以上であることが、溶媒の少なくとも一部を除去する工程で生じ得るフィルムのカールを抑制しやすいため好ましい。ここで、支持体の膜厚は、接触式の膜厚計などにより測定される。フィルムの面品質を向上し、本発明の光学フィルムを製造しやすい観点から、支持体の膜厚分布は、好ましくは±3μm以下、より好ましくは±2.5μm以下、さらに好ましくは±2μm以下である。支持体の膜厚分布は、上記膜厚の測定方法に従い、フィルムの少なくとも20箇所において膜厚を測定し、20箇所の平均膜厚を算出し、各箇所における膜厚と平均膜厚との差から算出する。
【0117】
ワニスを支持体上に塗布する際、公知の塗布方法により支持体への塗布を行ってよい。公知の塗布方法としては、例えばワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法、流涎成形法等が挙げられる。
【0118】
次に、支持体上に塗布したワニスの塗膜を乾燥させることにより、塗膜を形成させることができる。乾燥は、ワニスの塗膜から少なくとも一部の溶媒を除去することにより行われ、乾燥方法は特に限定されない。例えば支持体上に塗布したワニスの塗膜を加熱することにより乾燥を行ってよい。以下において、工程(a)における乾燥を「第1乾燥」とも称し、乾燥後に支持体上に形成された塗膜を、「乾燥塗膜」とも称する。乾燥塗膜は、ワニスに含まれていた溶媒が全て乾燥された塗膜であってもよいし、一部の溶媒が乾燥された半乾燥状態の塗膜であってもよい。第1乾燥は、必要に応じて、不活性雰囲気又は減圧の条件下において実施してもよい。第1乾燥は比較的低温で時間をかけて行うことが好ましい。比較的低温で時間をかけて第1乾燥を行うと、上記の式におけるY
mh及びY
mvの値を低下させやすく、(Y
mh+Y
mv)/(X
mh+X
mv)
1/2の値を低下させやすく、光学フィルムの光学的均質性を高めやすい。加熱により乾燥を行う場合、第1乾燥の際の加熱温度は、好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜130℃、さらに好ましくは70〜120℃である。第1乾燥の時間は好ましくは5〜60分、より好ましくは10〜40分である。第1乾燥は、1段階又は多段階の条件下で実施してもよい。多段階の条件下で乾燥を行う場合、好ましくは、それぞれの段階において、同一又は異なる温度条件及び/又は乾燥時間で乾燥を実施することができ、例えば2〜10段階、好ましくは3〜8段階の条件下で乾燥を行ってもよい。第1乾燥を多段階の条件で実施すると、光学フィルムの光学的均質性を高めやすい。3段階以上の多段階の条件下で第1乾燥を行う本発明の好ましい一実施形態では、第1乾燥の温度プロファイルが昇温及び降温を含むことが好ましい。このような温度プロファイルとして、4段階の場合を例に挙げると、第1乾燥の温度は、順に70〜90℃(第1の温度)、90〜120℃(第2の温度)、80〜120℃(第3の温度)及び80〜100℃(第4の温度)である。この例では、第1乾燥の温度は、第1の温度から第2の温度へ昇温し、次いで第2の温度から第3の温度へ降温し、さらに第3の温度から第4の温度に降温する。ここで第1乾燥の時間は各段階において、例えば、5〜15分である。乾燥塗膜の溶媒残存量が、乾燥塗膜の質量に対して、好ましくは5〜15質量%、より好ましくは6〜12質量%となるように、第1乾燥を実施することが好ましい。溶媒残存量が上記の範囲であると、光学フィルムの上記の式におけるY
mh及びY
mvの値を低下させやすく、(Y
mh+Y
mv)/(X
mh+X
mv)
1/2の値を低下させやすい。また、続く工程(b)において、支持体から塗膜を剥離する際の剥離性を高めやすい。その結果、光学フィルムの均質性を高めやすい。溶媒の残存量は、各工程の乾燥温度を高くすること及び乾燥時間を長くすることによって、低下する。そのため、所望の範囲の溶媒残存量となるように、乾燥温度や乾燥時間を調整し、光学フィルムの均質性を高めることができる。
【0119】
次に、工程(b)において、支持体から乾燥させた塗膜を剥離する。剥離方法は特に限定されず、支持体を固定させた状態で塗膜を移動させて剥離を行ってもよいし、塗膜を固定させた状態で支持体を移動させて剥離を行ってもよいし、塗膜及び支持体の両方を移動させることにより剥離を行ってもよい。
【0120】
次に、工程(c)において、工程(b)で剥離した塗膜を加熱することにより、本発明のフィルムを得ることができる。工程(c)における加熱工程を、以下において、「第2乾燥」又は「ポストベーク」とも称し、工程(b)で剥離した塗膜を、以下において、「剥離塗膜」とも称する。工程(c)において、剥離塗膜を面内方向に伸張させた状態で、ポストベークを実施することが好ましい。第2乾燥の際の加熱温度は、好ましくは150〜300℃、より好ましくは180〜250℃、さらに好ましくは180〜230℃である。第2乾燥における加熱時間は、好ましくは10〜60分、より好ましくは30〜50分である。乾燥塗膜を面内方向に均一に伸長させた状態でポストベーク処理を実施すると、光学フィルムの上記の式におけるY
mh及びY
mvの値を低下させやすく、(Y
mh+Y
mv)/(X
mh+X
mv)
1/2の値を低下させやすい。
【0121】
工程(3)において塗膜を加熱する際、塗膜に張力をかけて、塗膜を面内方向に伸張させた状態で加熱を行うことが好ましい。張力をかけながら加熱することにより、乾燥による塗膜の収縮により得られる光学フィルムの光学的均質性の低下を抑制しやすく、その結果、光学フィルムの上記の式におけるY
mh及びY
mvの値を低下させやすく、(Y
mh+Y
mv)/(X
mh+X
mv)
1/2の値を低下させやすく、光学的均質性を高めやすい。
【0122】
本発明の一実施形態において、ロール・ツー・ロール方式で光学フィルムを製造する場合、剥離塗膜を搬送方向に伸長させた状態で乾燥させてよい。また、枚葉式に光学フィルムを製造する場合、面内方向に均一に伸長させた状態で乾燥させてもよい。ロール・ツー・ロール方式における搬送速度は、得られる光学フィルムの光学的均質性を高めやすい観点から、好ましくは0.1〜5m/分、より好ましくは0.5〜3m/分、更に好ましくは0.7〜1.5m/分である。
【0123】
例えばロール・ツー・ロール方式により光学フィルムを製造する場合、所定の幅を有する長尺帯状の塗膜を搬送しながら加熱することにより、本発明の光学フィルムを得ることができる。ここで、塗膜に張力をかけながら加熱を行う場合、その方法は何ら限定されないが、例えば搬送される長尺帯状のフィルムの両端部をそれぞれ把持し、把持されたフィルムを搬送しつつ、把持されたフィルムの幅を所定の距離として、例えば乾燥機内を搬送しつつ、熱処理を行う。このときに、熱処理前のフィルムの幅(ただし、把持部を幅に含めない)に対する熱処理後のフィルムの幅(ただし、把持部を幅に含めない)の比を1.1以下とし、そして、乾燥機から出た樹脂フィルムの把持を解除することにより、工程(3)を行うことが好ましい。
【0124】
熱処理前のフィルムの幅(ただし、把持部を幅に含めない)に対する熱処理後のフィルムの幅(ただし、把持部を幅に含めない)の比(以下、延伸倍率ということがある)は、好ましくは0.70〜1.10であり、より好ましくは0.80〜1.05であり、さらに好ましくは、0.85〜1.00である。
【0125】
フィルムの把持は、例えば、複数のクリップを用いることによって行われる。
該複数のクリップは、搬送装置の大きさに応じて、所定の長さのエンドレスチェーンに固定されることができ、該チェーンがフィルムと同じ速度で動き、該チェーンの適切な位置に、クリップが設置されており、乾燥機に入る前に透明樹脂フィルムを把持し、乾燥機を出た時点で把持が解除される。
【0126】
フィルムの一方端に設置される複数のクリップは、その隣接するクリップ間の空間が例えば、1〜50mm、好ましくは3〜25mm、より好ましくは5〜10mmmとなるように、設置される。
【0127】
また、フィルム搬送軸に直交する直線を、フィルムの一方端の任意のクリップの把持部中央に合わせたとき、該直線とフィルムの他端との交点と、該交点に最も近いクリップの把持部中央との距離が、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下となるようにできる。該距離が前記の範囲にあることにより、光学フィルムの特に左右での均質性を高めやすい。
【0128】
熱処理前のフィルムの幅に対する熱処理後のフィルムの幅の比が前記の範囲にあると、フィルム外観が良好となる傾向がある。
【0129】
熱処理後のフィルム中の溶媒量は、フィルムの質量を基準として、好ましくは0.001〜3質量%、より好ましくは0.001〜2質量%、さらに好ましくは0.001〜1.5質量%、とりわけ好ましくは0.001〜1.3質量%である。熱処理後のフィルム中の溶媒量が前記の範囲にあると、光学フィルムの外観が良好となる傾向がある。
熱処理が終わり、乾燥機からフィルムが出るとフィルムの把持が解除され、好ましくはすぐに、フィルム端部をスリットされる。スリットを行うことにより、フィルム端部における、把持部と把持されていなかった部分との間で生じやすい割れをフィルムから除去することにより、その後フィルムが搬送されてその温度が低下することによるフィルムの割れの広がりをあらかじめ防止できる。
【0130】
フィルムが乾燥機を出ると、フィルムが急冷されて収縮し、割れが生じることがある。そのため、乾燥機出口からフィルムの把持が解放される位置までに一定割合のフィルムを弛緩する工程があることが好ましい。その割合は、乾燥機から出てきたフィルムの幅(但し、把持された幅を除く)(W)と乾燥機出口からフィルムを開放するまでに把持部が弛緩される距離(F)が、好ましくは1.7≦F/W×100≦6.9、よりこのましくは1.8≦F/W×100≦6.8、さらに好ましくは、1.9≦F/W×100≦6.7、さらにより好ましくは、2.0≦F/W×100≦6.7である。
フィルムの搬送方向に対して一方端側の弛緩される距離をFa、他方端側の弛緩される距離をFbとし、それらを合わせて弛緩される距離Fとする。
乾燥機出口からフィルムの把持が解放されるまでの距離は、好ましくは200〜1,000mm、より好ましくは300〜900mm、さらに好ましくは300〜800mmである。該距離が前記の範囲にあると、フィルムに割れが生じにくく、また垂水など外観不良が生じにくい傾向にある。
【0131】
なお、本発明の製造方法においては、上記特徴を有する光学フィルムを製造しやすい観点から、工程(b)において支持体から塗膜を剥離した後、工程(c)において剥離した塗膜を加熱することにより、フィルムを製造している。しかし、本発明の光学フィルムは、上記Y
mh等に関する特徴を有する限り、いずれの製造方法により製造されたフィルムであってもよい。例えば、支持体から塗膜を剥離する前に塗膜をポストベークし、ポストベーク後のフィルムを支持体から剥離して製造したものであってもよい。
【0132】
本発明の製造方法は、上記工程(a)〜(c)の後に、後述するフィルムを評価する工程(d)をさらに含んでいてもよい。工程(d)は、得られたフィルムを用いて投影法により得た投影画像をフーリエ変換して得たフィルム逆空間像において互いに直交する方向h及び方向vにおけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh及びラインプロファイルvとし、前記投影法において前記フィルムを用いずに得た背景画像をフーリエ変換して得た背景逆空間像において互いに直交する方向h’及び方向v’におけるラインプロファイルをそれぞれラインプロファイルh’及びラインプロファイルv’とし、ラインプロファイルhからラインプロファイルh’を引いて得たラインプロファイル(h−h’)の最大強度をY
mhとし、最大強度Y
mhを示す周波数をX
mhとし、ラインプロファイルvからラインプロファイルv’を引いて得たラインプロファイル(v−v’)の最大強度をY
mvとし、最大強度Y
mvを示す周波数をX
mvとしたときの、Y
mh及びY
mvの値、並びに、Y
mh、Y
mv、X
mh及びX
mvから算出される(Y
mh+Y
mv)/(X
mh+X
mv)
1/2の値に基づいて、フィルムを評価する工程である。
【0133】
工程(d)において、Y
mh及びY
mvの値、並びに(Y
mh+Y
mv)/(X
mh+X
mv)
1/2の値に基づいて、フィルムの均質性、特に光学的均質性を評価することができる。例えば、求める均質性に応じて所定の値を設定し、該値と、フィルムについて得た結果とを比較することにより、フィルムの良否を判断し、フィルムを分別することにより、Y
mh及びY
mvの値、並びに(Y
mh+Y
mv)/(X
mh+X
mv)
1/2の値が、所定の値以下である、優れた均質性を有する光学フィルムを製造することができる。また、上記値を評価しながら、乾燥条件等を調整し、上記特徴を有する本願発明のフィルムを製造することもできる。
【0134】
フィルムを評価する工程(d)において、上記本発明の評価方法により測定された最大強度Y
mh及びY
mvに基づいて、フィルムの均質性を評価し、フィルムの品質の良否を判断することが、均質性に優れたフィルムを効率的に製造することができる観点から好ましい。フィルムの品質の良否の判断基準は、製造したフィルムの用途や、フィルムに求められる光学的均質性に応じて適宜設定してよく、特に限定されない。光学フィルム等において好適に使用される、優れた均質性を有するフィルムを得ることを目的にフィルムの品質の良否判断を行う場合には、本発明のフィルムについて上記に記載した特性を有するか否かを基準として、フィルムの良否の判断を行うことが好ましい。
【0135】
上記評価工程によれば、従来の評価方法と比べてより高い精度でフィルムの均質性、特に光学的均質性を評価することが可能となる。具体的には、当該評価工程によれば、従来の評価方法では十分な精度で評価できなかったTD方向及びMD方向の両方向のムラや幅の広さが異なるムラなどに起因して生じる、光学的性質のばらつきを評価することができ、ムラの種類によらず精度よくフィルムの均質性を評価することが可能である。また、当該評価工程により、フィルムの均質性を定量することも可能である。工程(d)における評価工程は、具体的には、次の工程(1)〜(5):
(1)光源からの光をフィルムに照射し、フィルムを透過した光を投影面に投影する投影法により投影画像を得る工程、
(2)工程(1)の投影法においてフィルムを用いずに、光源からの光を投影面に投影して、背景画像を得る工程、
(3)工程(1)で得た投影画像及び工程(2)で得た背景画像をそれぞれグレースケール化により数値化し、数値化された画像データをフーリエ変換して逆空間像(フィルム逆空間像及び背景逆空間像)を得る工程、
(4)投影画像の逆空間像において直交する2方向の各ラインプロファイルから、背景画像の逆空間像において直交する前記2方向の各ラインプロファイルをそれぞれ引いて、ブランク補正されたラインプロファイルを得る工程、
及び、
(5)工程(4)で得たブランク補正されたラインプロファイルの最大強度(Y
mh及びY
mv)を測定する工程
を少なくとも含む。
【0136】
工程(1)において、光源からの光をフィルムに照射し、フィルムを透過した光を投影面に投影して投影画像を得る。工程(1)において、例えば
図1に示されるように、フィルム、投影面等を配置してよい。具体的には、光源1、フィルム2及び投影面3を配置し、投影面3に投影された投影画像4をカメラ6にて撮影し、投影画像を得る。光源1から出力された光5は、フィルム2を透過し、透過した光が投影面3に投影画像4として投影される。光5がフィルム2を透過する際、フィルム2が均質であれば、光5は均質にフィルム2を透過し投影面3に達するが、フィルム2が均質でなく、面状ムラ、厚みムラ、配向ムラ等がある場合には、光5がフィルム2を透過する際に反射及び/又は屈折等を生じ、光源から出力された状態と比較して歪んだ状態の光が投影面3に達する。このようにして得られる投影画像4を後述する方法で評価することにより、フィルムの光学的均質性を高い精度で評価又は定量化することができる。鮮明な投影画像を得やすい観点から、暗室内で、光源からの光のみをフィルムに透過させて撮影を行うことが好ましい。光源の種類は特に限定されず、例えばLED光源やハロゲンランプ等を使用してよい。点光源に近い光源が好ましく、発光部は1cm径以下であることが好ましい。フィルターやレンズなどを通過すると投影像が不鮮明になりやすい傾向があるので、フィルターやレンズを通過させない光が好ましい。投影面としては、フィルムの投影画像が視認される限り特に限定されないが、例えばアクリル板、塩化ビニル板、ポリエチレン板、映画用のスクリーン等を使用してよい。投影面に投影された画像の撮影方法は特に限定されないが、例えば
図1に示されるように、投影面3とフィルム2と光源1とを一直線上に配置し、投影面3に投影された投影画像4を斜めから撮影する位置にカメラ6を固定し撮影してよい。撮影モードは適宜設定してよく、例えば実施例に記載されるような設定を使用してよい。このようにして投影画像が得られる。
【0137】
工程(2)において、工程(1)の投影法においてフィルムを用いずに、光源からの光を投影面に投影して投影画像を得る。具体的には、例えば
図1において、フィルム2のみを取り除いた状態で撮影を行い、背景画像を得る。
【0138】
工程(3)において、工程(1)で得た投影画像及び工程(2)で得た背景画像をそれぞれグレースケール化により数値化し、数値化された画像データをフーリエ変換して逆空間像を得る。グレースケール化は、画像解析ソフト(例えばアメリカ国立衛生研究所製「Image−J」)を用いて、例えば8−bitのグレースケール化することにより行うことができる。グレースケール化により、投影画像及び背景画像を数値化することができる。次に、数値化された画像データをフーリエ変換して逆空間像(フィルム逆空間像及び背景逆空間像)を得る。数値化された画像データをフーリエ変換することにより、画像の濃淡の周期と振幅を得ることができる。フーリエ変換の方法としては、例えば画像解析ソフト(Image−J)のフーリエ変換機能を用いるなどが挙げられる。
【0139】
工程(4)において、投影画像の逆空間像において直交する2方向の各ラインプロファイルから、背景画像の逆空間像において直交する前記2方向の各ラインプロファイルをそれぞれ引いて、ブランク補正されたラインプロファイルを得る。
【0140】
工程(5)において、工程(4)で得たブランク補正されたラインプロファイルの最大強度Y
max(それぞれ、Y
mh及びY
mv)を測定する。Y
mh及びY
mvの測定方法は、上記において本発明のフィルムについて記載した通りであり、例えば、逆空間像の中心を通る水平方向(h1方向)及び垂直方向(v1方向)のそれぞれの方向についてラインプロファイルを作成する場合、例えば
図3に示されるような、X軸に周波数、Y軸に強度を表すグラフとして示される。そして、水平方向(h1方向)のラインプロファイルにおける最大強度Y
maxをY
mh1とし、最大強度Y
mh1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値X
cenを引いた値であるX
maxをX
mh1とする。また、垂直方向(v1方向)のラインプロファイルにおける最大強度Y
maxをY
mv1とし、最大強度Y
mv1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値X
cenを引いた値であるX
maxをX
mv1とする。なお、該2方向は互いに直交していれば特に限定されず、中心を通らない二方向であってもよいし、水平方向及び垂直方向でなくてもよい。
【0141】
上記Y
mh及びY
mvを測定することにより、フィルムの2次元方向で均質性を評価することができる。フィルムの光学的均質性を低下させる一因となる面状ムラには、例えば縞状のムラ等のように、一次元の評価では十分に検出できない種類のムラがある。本発明の評価方法によれば、二次元方向で光学的均質性を評価することができるため、フィルムのムラの種類によらず高い精度で評価を行うことができる。また、上記Y
mh及びY
mvを測定して値を得ることにより、フィルムの均質性を定量することも可能である。
【0142】
さらに、上記最大強度Y
mh及びY
mvに加えて、これらの最大強度を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値X
cenを引いた値であるX
mh及びX
mvを用いて評価を行うことで、フィルムの光学的均質性に影響する一因となる面状ムラが生じる周期を検出することもできる。
【0143】
なお、本発明の光学フィルムが多層構造を有する場合、本発明の製造方法は、上記工程(c)及び(d)の間に、工程(c)で得たフィルムに少なくとも1種の機能層等を積層させる工程を含んでいてもよいし、上記工程(d)の後に、フィルムに少なくとも1種の機能層等を積層させる工程を含んでいてもよい。
【0144】
<層構成>
本発明の光学フィルム及び本発明の製造方法により製造された光学フィルムは、重量平均分子量が23万以上であるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含み、Y
mh及びY
mvの値、ならびに(Y
mh+Y
mv)/(X
mh+X
mv)
1/2の値が上記所定の範囲内であり、380nmにおける光線透過率が20%以下であり、かつ、420nmにおける光線透過率が75%以上である限り、単層であっても、多層の積層体であってもよい。本発明の光学フィルムは、上記樹脂を少なくとも含む単層の状態で、Y
mh等の値並びに380nm及び420nmにおける光線透過率が上記所定の範囲内であってもよいし、上記樹脂を含む層を少なくとも1層有し、該層に少なくとも1層の機能層等を積層させた多層構成を有する積層体の状態で、Y
mh等の値並びに380nm及び420nmにおける光線透過率が上記所定の範囲内であってもよい。なお、以下において本発明の光学フィルムに、少なくとも1層の機能層等の他の層を積層させた多層構造を有する本発明の光学フィルムを、「光学積層体」とも称する。また、本発明の光学フィルムが多層構成を有し、紫外線吸収剤を含有する層を少なくとも1層有する場合、該紫外線吸収剤はポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂と同一の層に含有されていてもよいし、別々の層に含有されていてもよい。光学フィルムの光学的性質の劣化を抑制しやすい観点から、紫外線吸収剤は、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂と同一の層に含有されているか、又は、光学フィルムをフレキシブル表示装置等において使用する際に、ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂を含有する層よりも視認側(前面側)に位置する層に含有されていることが好ましい。
【0145】
<光学積層体>
本発明の光学フィルムは、上記樹脂を含む層を少なくとも1層有し、該層の少なくとも一方の面に1以上の機能層を積層させた多層構造を有する光学積層体であってもよい。機能層としては、例えば紫外線吸収層、ハードコート層、粘着層、色相調整層、屈折率調整層、プライマー層、ガスバリア層などが挙げられる。機能層は単独又は二種以上組合せて使用できる。なお、各種物性を測定する際には、光学積層体よりも、本発明の光学フィルム単独で(単層の状態で)測定することが好ましい。
【0146】
紫外線吸収層は、紫外線吸収の機能を有する層であり、例えば、紫外線硬化型の透明樹脂、電子線硬化型の透明樹脂、及び熱硬化型の透明樹脂から選ばれる主材と、この主材に分散した紫外線吸収剤とから構成される。
【0147】
粘着層は、粘着性の機能を有する層であり、光学フィルムを他の部材に接着させる機能を有する。粘着層の形成材料としては、通常知られたものを用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物を用いることができる。この場合、事後的にエネルギーを供給することで熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物を高分子化し硬化させることができる。
【0148】
粘着層は、感圧型接着剤(Pressure Sensitive Adhesive、PSA)と呼ばれる、押圧により対象物に貼着される層であってもよい。感圧型接着剤は、「常温で粘着性を有し、軽い圧力で被着材に接着する物質」(JIS K6800)である粘着剤であってもよく、「特定成分を保護被膜(マイクロカプセル)に内容し、適当な手段(圧力、熱等)によって被膜を破壊するまでは安定性を保持できる接着剤」(JIS K6800)であるカプセル型接着剤であってもよい。
【0149】
色相調整層は、色相調整の機能を有する層であり、光学積層体を目的の色相に調整することができる層である。色相調整層は、例えば、樹脂及び着色剤を含有する層である。この着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、弁柄、チタニウムオキサイド系焼成顔料、群青、アルミン酸コバルト、及びカーボンブラック等の無機顔料;アゾ系化合物、キナクリドン系化合物、アンスラキノン系化合物、ペリレン系化合物、イソインドリノン系化合物、フタロシアニン系化合物、キノフタロン系化合物、スレン系化合物、及びジケトピロロピロール系化合物等の有機顔料;硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等の体質顔料;並びに塩基性染料、酸性染料、及び媒染染料等の染料を挙げることができる。
【0150】
屈折率調整層は、屈折率調整の機能を有する層であり、例えば上記樹脂を含む層とは異なる屈折率を有し、光学積層体に所定の屈折率を付与することができる層である。屈折率調整層は、例えば、適宜選択された樹脂、及び場合によりさらに顔料を含有する樹脂層であってもよいし、金属の薄膜であってもよい。屈折率を調整する顔料としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化タンタルが挙げられる。該顔料の平均一次粒子径は、0.1μm以下であってもよい。顔料の平均一次粒子径を0.1μm以下とすることにより、屈折率調整層を透過する光の乱反射を防止し、透明度の低下を防止することができる。屈折率調整層に用いられる金属としては、例えば、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ケイ素、酸化インジウム、酸窒化チタン、窒化チタン、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素等の金属酸化物又は金属窒化物が挙げられる。
【0151】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明の光学フィルムは、上記樹脂を含む層の少なくとも一方の面(片面又は両面)にハードコート層を有する。両面にハードコート層を有する場合、2つのハードコート層は、含まれる成分が互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0152】
ハードコート層としては、例えばアクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ベンジルクロライド系、ビニル系等の公知のハードコート層が挙げられる。これらの中でも光学フィルムの広角方向の視認性の低下を抑制し、かつ耐屈曲性を向上させる観点から、アクリル系、ウレタン系、及びそれらの組合せのハードコート層を好ましく用いることができる。ハードコート層は、硬化性化合物を含む硬化性組成物の硬化物であることが好ましく、活性エネルギー線の照射により、該硬化性化合物を重合して形成される。硬化性化合物としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート系化合物が挙げられる。多官能(メタ)アクリレート系化合物とは、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
【0153】
多官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、;ホスファゼン化合物のホスファゼン環に(メタ)アクリロイル基が導入されたホスファゼン系(メタ)アクリレート化合物;分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物;分子中に少なくとも2個のカルボン酸ハロゲン化物と少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有するポリオール化合物との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレート化合物;ならびに、上記各化合物の2量体、3量体などのようなオリゴマーなどである。これらの化合物はそれぞれ単独又は2種以上を混合して用いられる。
【0154】
硬化性化合物には、上記の多官能(メタ)アクリレート系化合物の他に、単官能(メタ)アクリレート系化合物を含んでよい。単官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの化合物は単独又は2種類以上を混合して用いられる。単官能(メタ)アクリレート系化合物の含有量は、硬化性組成物に含まれる化合物の固形分を100質量%としたとき、好ましくは10質量%以下である。なお、本明細書において、固形分とは、硬化性組成物に含まれる溶媒を除く、全ての成分を意味する。
【0155】
また、硬化性化合物は、重合性オリゴマーを含有していてもよい。重合性オリゴマーを含有させることにより、ハードコート層の硬度を調整することができる。重合性オリゴマーとしては、末端(メタ)アクリレートポリメチルメタクリレート、末端スチリルポリ(メタ)アクリレート、末端(メタ)アクリレートポリスチレン、末端(メタ)アクリレートポリエチレングリコール、末端(メタ)アクリレートアクリロニトリル−スチレン共重合体、末端(メタ)アクリレートスチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体などのマクロモノマーを挙げることができる。重合性オリゴマーの含有量は、硬化性組成物に含まれる化合物の固形分を100質量%としたとき、好ましくは5〜50質量%である。
【0156】
ハードコート層を形成する硬化性組成物は、多官能(メタ)アクリレート系化合物及び重合性オリゴマーの他に、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、重合開始剤、シリカ、レベリング剤、溶媒等が挙げられる。溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0157】
ハードコート層の膜厚は、光学フィルムの硬度、耐屈曲性及び視認性を向上させる観点から、好ましくは3〜30μm、より好ましくは5〜25μm、更に好ましくは5〜20μmである。
【0158】
<保護フィルム>
本発明の光学フィルムには、保護フィルムが積層されていてもよい。保護フィルムは、光学フィルムの片面又は両面に積層されていてよい。本発明の光学フィルムが、上記樹脂を含む層の片面に機能層を有する場合には、保護フィルムは、上記樹脂を含む層側の表面又は機能層側の表面に積層されていてもよく、これら両方の表面に積層されていてもよい。光学フィルムが、上記樹脂を含む層の両面に機能層を有する場合には、保護フィルムは、片方の機能層側の表面に積層されていてもよく、両方の機能層側の表面に積層されていてもよい。保護フィルムは、光学フィルム又は機能層の表面を一時的に保護するためのフィルムであり、光学フィルム又は機能層の表面を保護できる剥離可能なフィルムである限り特に限定されない。保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレン、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム等が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム及びアクリル系樹脂フィルムからなる群から選択されることが好ましい。本発明の光学フィルムに、保護フィルムが2つ積層される場合、各保護フィルムは同一又は異なっていてもよい。
【0159】
保護フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、通常、10〜120μm、好ましくは15〜110μm、より好ましくは20〜100μmである。本発明の光学フィルムに、保護フィルムが2つ積層される場合、各保護フィルムの厚みは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0160】
<フレキシブル表示装置>
本発明は、前記光学フィルムを備える、フレキシブル表示装置も提供する。本発明の光学フィルムは、好ましくはフレキシブル表示装置において前面板として用いられ、該前面板はウインドウフィルムと称されることがある。該フレキシブル表示装置は、フレキシブル表示装置用積層体と、有機EL表示パネルとからなり、有機EL表示パネルに対して視認側にフレキシブル表示装置用積層体が配置され、折り曲げ可能に構成されている。フレキシブル表示装置用積層体としては、さらに偏光板、好ましくは円偏光板、タッチセンサを含有していてもよく、それらの積層順は任意であるが、視認側からウインドウフィルム、偏光板、タッチセンサ又はウインドウフィルム、タッチセンサ、偏光板の順に積層されていることが好ましい。タッチセンサよりも視認側に偏光板が存在すると、タッチセンサのパターンが視認されにくくなり表示画像の視認性が良くなるので好ましい。それぞれの部材は接着剤、粘着剤等を用いて積層することができる。また、前記ウインドウフィルム、偏光板、タッチセンサのいずれかの層の少なくとも一面に形成された遮光パターンを具備することができる。
【0161】
<円偏光板>
本発明のフレキシブル表示装置は、上記の通り、偏光板、中でも円偏光板を備えることが好ましい。円偏光板は、直線偏光板にλ/4位相差板を積層することにより、右若しくは左円偏光成分のみを透過させる機能を有する機能層である。たとえば外光を右円偏光に変換して有機ELパネルで反射されて左円偏光となった外光を遮断し、有機ELの発光成分のみを透過させることで反射光の影響を抑制して画像を見やすくするために用いられる。円偏光機能を達成するためには、直線偏光板の吸収軸とλ/4位相差板の遅相軸は理論上45°である必要があるが、実用的には45±10°である。直線偏光板とλ/4位相差板は必ずしも隣接して積層される必要はなく、吸収軸と遅相軸の関係が前述の範囲を満足していればよい。全波長において完全な円偏光を達成することが好ましいが実用上は必ずしもその必要はないので本発明における円偏光板は楕円偏光板をも包含する。直線偏光板の視認側にさらにλ/4位相差フィルムを積層して、出射光を円偏光とすることで偏光サングラスをかけた状態での視認性を向上させることも好ましい。
【0162】
直線偏光板は、透過軸方向に振動している光は通すが、それとは垂直な振動成分の偏光を遮断する機能を有する機能層である。前記直線偏光板は、直線偏光子単独又は直線偏光子及びその少なくとも一面に貼り付けられた保護フィルムを備えた構成であってもよい。前記直線偏光板の膜厚は、200μm以下であってもよく、好ましくは、0.5〜100μmである。直線偏光板の膜厚が前記の範囲にあると直線偏光板の柔軟性が低下し難い傾向にある。
【0163】
前記直線偏光子は、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略すことがある)系フィルムを染色、延伸することで製造されるフィルム型偏光子であってもよい。延伸によって配向したPVA系フィルムに、ヨウ素等の二色性色素が吸着、又はPVAに吸着した状態で延伸されることで二色性色素が配向し、偏光性能を発揮する。前記フィルム型偏光子の製造においては、他に膨潤、ホウ酸による架橋、水溶液による洗浄、乾燥等の工程を有していてもよい。延伸や染色工程はPVA系フィルム単独で行ってもよいし、ポリエチレンテレフタレートのような他のフィルムと積層された状態で行うこともできる。用いられるPVA系フィルムの膜厚は好ましくは10〜100μmであり、前記延伸倍率は好ましくは2〜10倍である。
さらに前記偏光子の他の一例としては、液晶偏光組成物を塗布して形成する液晶塗布型偏光子が挙げられる。前記液晶偏光組成物は、液晶性化合物及び二色性色素化合物を含むことができる。前記液晶性化合物は、液晶状態を示す性質を有していればよく、特にスメクチック相等の高次の配向状態を有していると高い偏光性能を発揮することができるため好ましい。また、液晶性化合物は、重合性官能基を有することが好ましい。
前記二色性色素化合物は、前記液晶化合物とともに配向して二色性を示す色素であって、重合性官能基を有していてもよく、また、二色性色素自身が液晶性を有していてもよい。
液晶偏光組成物に含まれる化合物のいずれかは重合性官能基を有する。前記液晶偏光組成物はさらに開始剤、溶剤、分散剤、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、架橋剤、シランカップリング剤などを含むことができる。
前記液晶偏光層は、配向膜上に液晶偏光組成物を塗布して液晶偏光層を形成することにより製造される。液晶偏光層は、フィルム型偏光子に比べて厚さを薄く形成することができ、その厚さは好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜5μmである。
【0164】
前記配向膜は、例えば基材上に配向膜形成組成物を塗布し、ラビング、偏光照射等により配向性を付与することにより製造される。前記配向膜形成組成物は、配向剤を含み、さらに溶剤、架橋剤、開始剤、分散剤、レベリング剤、シランカップリング剤等を含んでいてもよい。前記配向剤としては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリアクリレート類、ポリアミック酸類、ポリイミド類が挙げられる。偏光照射により配向性を付与する配向剤を用いる場合、シンナメート基を含む配向剤を使用することが好ましい。前記配向剤として使用される高分子の重量平均分子量は、例えば、10,000〜1,000,000程度である。前記配向膜の膜厚は、好ましくは5〜10,000nmであり、配向規制力が十分に発現される点で、より好ましくは10〜500nmである。
前記液晶偏光層は基材から剥離して転写して積層することもできるし、前記基材をそのまま積層することもできる。前記基材が、保護フィルムや位相差板、ウインドウフィルムの透明基材としての役割を担うことも好ましい。
【0165】
前記保護フィルムとしては、透明な高分子フィルムであればよく前記ウインドウフィルムの透明基材に使用される材料や添加剤と同じものが使用できる。また、エポキシ樹脂等のカチオン硬化組成物やアクリレート等のラジカル硬化組成物を塗布して硬化して得られるコーティング型の保護フィルムであってもよい。該保護フィルムは、必要により可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料や染料のような着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤等を含んでいてもよい。該保護フィルムの厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは1〜100μmである。保護フィルムの厚さが前記の範囲にあると、該フィルムの柔軟性が低下し難い傾向にある。
【0166】
前記λ/4位相差板は、入射光の進行方向に直行する方向(フィルムの面内方向)にλ/4の位相差を与えるフィルムである。前記λ/4位相差板は、セルロース系フィルム、オレフィン系フィルム、ポリカーボネート系フィルム等の高分子フィルムを延伸することで製造される延伸型位相差板であってもよい。前記λ/4位相差板は、必要により位相差調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料や染料のような着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤等を含んでいてもよい。
前記延伸型位相差板の厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは1〜100μmである。延伸型位相差板の厚さが前記の範囲にあると、該延伸型位相差板の柔軟性が低下し難い傾向にある。
さらに前記λ/4位相差板の他の一例としては、液晶組成物を塗布して形成する液晶塗布型位相差板が挙げられる。
前記液晶組成物は、ネマチック、コレステリック、スメクチック等の液晶状態を示す液晶性化合物を含む。前記液晶性化合物は、重合性官能基を有する。
前記液晶組成物は、さらに開始剤、溶剤、分散剤、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、架橋剤、シランカップリング剤などを含むことができる。
前記液晶塗布型位相差板は、前記液晶偏光層と同様に、液晶組成物を下地上に塗布、硬化して液晶位相差層を形成することで製造することができる。液晶塗布型位相差板は、延伸型位相差板に比べて厚さを薄く形成することができる。前記液晶偏光層の厚さは、好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは1〜5μmである。
前記液晶塗布型位相差板は基材から剥離して転写して積層することもできるし、前記基材をそのまま積層することもできる。前記基材が、保護フィルムや位相差板、ウインドウフィルムの透明基材としての役割を担うことも好ましい。
【0167】
一般的には、短波長ほど複屈折が大きく長波長になるほど小さな複屈折を示す材料が多い。この場合には全可視光領域でλ/4の位相差を達成することはできないので、視感度の高い560nm付近に対してλ/4となるように、面内位相差は、好ましくは100〜180nm、より好ましくは130〜150nmとなるように設計される。通常とは逆の複屈折率波長分散特性を有する材料を用いた逆分散λ/4位相差板は、視認性が良好となる点で好ましい。このような材料としては、例えば延伸型位相差板は特開2007‐232873号公報等に、液晶塗布型位相差板は特開2010‐30979号公報等に記載されているものを用いることができる。
また、他の方法としてはλ/2位相差板と組合せることで広帯域λ/4位相差板を得る技術も知られている(例えば、特開平10−90521号公報など)。λ/2位相差板もλ/4位相差板と同様の材料方法で製造される。延伸型位相差板と液晶塗布型位相差板の組合せは任意であるが、どちらも液晶塗布型位相差板を用いることにより膜厚を薄くすることができる。
前記円偏光板には斜め方向の視認性を高めるために、正のCプレートを積層する方法が知られている(例えば、特開2014‐224837号公報など)。正のCプレートは、液晶塗布型位相差板であっても延伸型位相差板であってもよい。該位相差板の厚み方向の位相差は、好ましくは−200〜−20nm、より好ましくは−140〜−40nmである。
【0168】
<タッチセンサ>
本発明のフレキシブル表示装置は、上記の通り、タッチセンサを備えることが好ましい。タッチセンサは入力手段として用いられる。タッチセンサとしては、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式等様々な様式が挙げられ、好ましくは静電容量方式が挙げられる。
静電容量方式タッチセンサは活性領域及び前記活性領域の外郭部に位置する非活性領域に区分される。活性領域は表示パネルで画面が表示される領域(表示部)に対応する領域であって、使用者のタッチが感知される領域であり、非活性領域は表示装置で画面が表示されない領域(非表示部)に対応する領域である。タッチセンサはフレキシブルな特性を有する基板と、前記基板の活性領域に形成された感知パターンと、前記基板の非活性領域に形成され、前記感知パターンとパッド部を介して外部の駆動回路と接続するための各センシングラインを含むことができる。フレキシブルな特性を有する基板としては、前記ウインドウフィルムの透明基板と同様の材料が使用できる。
【0169】
前記感知パターンは、第1方向に形成された第1パターン及び第2方向に形成された第2パターンを備えることができる。第1パターンと第2パターンとは互いに異なる方向に配置される。第1パターン及び第2パターンは、同一層に形成され、タッチされる地点を感知するためには、それぞれのパターンが電気的に接続されなければならない。第1パターンは複数の単位パターンが継ぎ手を介して互いに接続された形態であるが、第2パターンは複数の単位パターンがアイランド形態に互いに分離された構造になっているので、第2パターンを電気的に接続するためには別途のブリッジ電極が必要である。第2パターンの接続のための電極には、周知の透明電極を適用することができる。該透明電極の素材としては、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、亜鉛酸化物(ZnO)、インジウム亜鉛スズ酸化物(IZTO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、カドミウムスズ酸化物(CTO)、PEDOT(poly(3,4―ethylenedioxythiophene))、炭素ナノチューブ(CNT)、グラフェン、金属ワイヤなどが挙げられ、好ましくはITOが挙げられる。これらは単独又は2種以上混合して使用できる。金属ワイヤに使用される金属は特に限定されず、例えば、銀、金、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、チタン、テレニウム、クロムなどが挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
ブリッジ電極は感知パターン上部に絶縁層を介して前記絶縁層上部に形成されることができ、基板上にブリッジ電極が形成されており、その上に絶縁層及び感知パターンを形成することができる。前記ブリッジ電極は感知パターンと同じ素材で形成することもでき、モリブデン、銀、アルミニウム、銅、パラジウム、金、白金、亜鉛、スズ、チタン又はこれらのうちの2種以上の合金で形成することもできる。
第1パターンと第2パターンは電気的に絶縁されなければならないので、感知パターンとブリッジ電極の間には絶縁層が形成される。該絶縁層は、第1パターンの継ぎ手とブリッジ電極との間にのみ形成することや、感知パターン全体を覆う層として形成することもできる。感知パターン全体を覆う層の場合、ブリッジ電極は絶縁層に形成されたコンタクトホールを介して第2パターンを接続することができる。
【0170】
前記タッチセンサは、感知パターンが形成されたパターン領域と、感知パターンが形成されていない非パターン領域との間の透過率の差、具体的には、これらの領域における屈折率の差によって誘発される光透過率の差を適切に補償するための手段として基板と電極の間に光学調節層をさらに含むことができる。該光学調節層は、無機絶縁物質又は有機絶縁物質を含むことができる。光学調節層は光硬化性有機バインダー及び溶剤を含む光硬化組成物を基板上にコーティングして形成することができる。前記光硬化組成物は無機粒子をさらに含むことができる。前記無機粒子によって光学調節層の屈折率を高くすることができる。
前記光硬化性有機バインダーは、本発明の効果を損ねない範囲で、例えば、アクリレート系単量体、スチレン系単量体、カルボン酸系単量体などの各単量体の共重合体を含むことができる。前記光硬化性有機バインダーは、例えば、エポキシ基含有繰り返し単位、アクリレート繰り返し単位、カルボン酸繰り返し単位などの互いに異なる各繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。
前記無機粒子としては、例えば、ジルコニア粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子などが挙げられる。
前記光硬化組成物は、光重合開始剤、重合性モノマー、硬化補助剤などの各添加剤をさらに含むこともできる。
【0171】
<接着層>
前記フレキシブル画像表示装置用積層体を形成する各層(ウインドウフィルム、円偏光板、タッチセンサ)並びに各層を構成するフィルム部材(直線偏光板、λ/4位相差板等)は接着剤によって接合することができる。該接着剤としては、水系接着剤、有機溶剤系、無溶剤系接着剤、固体接着剤、溶剤揮散型接着剤、湿気硬化型接着剤、加熱硬化型接着剤、嫌気硬化型、活性エネルギー線硬化型接着剤、硬化剤混合型接着剤、熱溶融型接着剤、感圧型接着剤(粘着剤)、再湿型接着剤等、通常使用されている接着剤等が使用でき、好ましくは水系溶剤揮散型接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤、粘着剤を使用できる。接着剤層の厚さは、求められる接着力等に応じて適宜調節することができ、好ましくは0.01〜500μm、より好ましくは0.1〜300μmである。前記フレキシブル画像表示装置用積層体には、複数の接着層が存在するが、それぞれの厚みや種類は、同じであっても異なっていてもよい。
【0172】
前記水系水系溶剤揮散型接着剤としては、ポリビニルアルコール系ポリマー、でんぷん等の水溶性ポリマー、エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン、スチレン−ブタジエン系エマルジョン等水分散状態のポリマーを主剤ポリマーとして使用することができる。前記主剤ポリマーと水とに加えて、架橋剤、シラン系化合物、イオン性化合物、架橋触媒、酸化防止剤、染料、顔料、無機フィラー、有機溶剤等を配合してもよい。前記水系水系溶剤揮散型接着剤によって接着する場合、前記水系水系溶剤揮散型接着剤を被接着層間に注入して被着層を貼合した後、乾燥させることで接着性を付与することができる。前記水系水系溶剤揮散型接着剤を用いる場合、その接着層の厚さは、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜1μmである。前記水系水系溶剤揮散型接着剤を複数層に用いる場合、それぞれの層の厚みや種類は同じであっても異なっていてもよい。
【0173】
前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、活性エネルギー線を照射して接着剤層を形成する反応性材料を含む活性エネルギー線硬化組成物の硬化により形成することができる。前記活性エネルギー線硬化組成物は、ハードコート組成物に含まれるものと同様のラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有することができる。前記ラジカル重合性化合物は、ハードコート組成物におけるラジカル重合性化合物と同じ化合物を用いることができる。
前記カチオン重合性化合物は、ハードコート組成物におけるカチオン重合性化合物と同じ化合物を用いることができる。
活性エネルギー線硬化組成物に用いられるカチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物が特に好ましい。接着剤組成物としての粘度を下げるために単官能の化合物を反応性希釈剤として含むことも好ましい。
【0174】
活性エネルギー線組成物は、粘度を低下させるために、単官能の化合物を含むことができる。該単官能の化合物としては、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系単量体や、1分子中に1個のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
活性エネルギー線組成物は、さらに重合開始剤を含むことができる。該重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等が挙げられ、これらは適宜選択して用いられる。これらの重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。ハードコート組成物の記載の中で活性エネルギー線照射によりラジカル重合又はカチオン重合の内の少なくともいずれか開始することができる開始剤を使用することができる。
前記活性エネルギー線硬化組成物はさらに、イオン捕捉剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、密着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動粘度調整剤、可塑剤、消泡剤溶剤、添加剤、溶剤を含むことができる。前記活性エネルギー線硬化型接着剤によって2つの被接着層を接着する場合、前記活性エネルギー線硬化組成物を被接着層のいずれか一方又は両方に塗布後、貼合し、いずれかの被着層又は両方の被接着層に活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、で接着することができる。前記活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合、その接着層の厚さは、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは0.1〜10μmである。前記活性エネルギー線硬化型接着剤を複数の接着層形成に用いる場合、それぞれの層の厚みや種類は同じであっても異なっていてもよい。
【0175】
前記粘着剤としては、主剤ポリマーに応じて、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等に分類され何れを使用することもできる。粘着剤には主剤ポリマーに加えて、架橋剤、シラン系化合物、イオン性化合物、架橋触媒、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、染料、顔料、無機フィラー等を配合してもよい。前記粘着剤を構成する各成分を溶剤に溶解・分散させて粘着剤組成物を得て、該粘着剤組成物を基材上に塗布した後に乾燥させることで、粘着剤層接着層が形成される。粘着層は直接形成されてもよいし、別途基材に形成したものを転写することもできる。接着前の粘着面をカバーするためには離型フィルムを使用することも好ましい。前記活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合、その接着層の厚さは、好ましくは0.1〜500μm、より好ましくは1〜300μmである。前記粘着剤を複数層用いる場合には、それぞれの層の厚み種類は同じであっても異なっていてもよい。
【0176】
<遮光パターン>
前記遮光パターンは、前記フレキシブル画像表示装置のベゼル又はハウジングの少なくとも一部として適用することができる。遮光パターンによって前記フレキシブル画像表示装置の辺縁部に配置される配線が隠されて視認されにくくすることで、画像の視認性が向上する。前記遮光パターンは単層又は複層の形態であってもよい。遮光パターンのカラーは特に制限されることはなく、黒色、白色、金属色などの多様なカラーであってもよい。遮光パターンはカラーを具現するための顔料と、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーンなどの高分子で形成することができる。これらの単独又は2種類以上の混合物で使用することもできる。前記遮光パターンは、印刷、リソグラフィ、インクジェットなど各種の方法にて形成することができる。遮光パターンの厚さは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜50μmである。また、遮光パターンの厚み方向に傾斜等の形状を付与することも好ましい。
【実施例】
【0177】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部を意味する。まず始めに物性値の測定方法を説明する。
【0178】
<重量平均分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定
(1)前処理方法
試料をγ−ブチロラクトン(GBL)に溶解させて20質量%溶液とした後、DMF溶離液にて100倍に希釈し、0.45μmメンブレンフィルターろ過したものを測定溶液とした。
(2)測定条件
カラム:TSKgel SuperAWM−H×2+SuperAW2500×1(6.0mm I.D.×150mm×3本)
溶離液:DMF(10mMの臭化リチウム添加)
流量:0.6mL/min.
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:20μL
分子量標準:標準ポリスチレン
【0179】
<イミド化率>
イミド化率は、
1H−NMR測定により以下のようにして求めた。
(1)前処理方法
試料を重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d
6)に溶解させて2質量%溶液としたものを測定溶液とした。
(2)測定条件
測定装置:JEOL製 400MHz NMR装置 JNM−ECZ400S/L1
標準物質:DMSO−d
6(2.5ppm)
試料温度:室温
積算回数:256回
緩和時間:5秒
(3)イミド化率解析方法
得られた
1H−NMRスペクトルにおいて、ベンゼンプロトンが7.0〜9.0ppmに観測され、このうちイミド化前後で変化しない構造に由来するベンゼンプロトンAの積分比をInt
Aとした。また、ポリイミド中に残存するアミック酸構造のアミドプロトンが10.5〜11.5ppmに観測され、この積分比をInt
Bとした。これらの積分比から以下の式によりイミド化率を求めた。
【数7】
上記式において、αはポリアミド酸(イミド化率0%)の場合におけるアミドプロトン1個に対するベンゼンプロトンAの個数割合である。
【0180】
<平均一次粒子径>
シリカゾルを300℃で乾燥させた粉末の比表面積をユアサアイオクニス(株)社製、比表面積測定装置モノソーブMS−16を用いて測定し、測定された比表面積S(m
2/g)を用いてD(nm)=2720/Sの式で平均一次粒子径を算出した。
【0181】
<ワニスの粘度>
JIS K8803:2011に準拠して、ブルックフィールド社製E型粘度計DV−II+Proを用いて測定した。測定温度は25℃とした。
【0182】
<支持体の膜厚及び膜厚分布>
(株)ミツトヨ製ID−C112XBSを用いて、支持体の幅方向に20点以上の膜厚を測定し、その平均値と各データの差を算出し、膜厚分布を得た。
【0183】
<フィルムの膜厚>
(株)ミツトヨ製ID−C112XBSを用いて、10点以上のフィルム膜厚を測定し、その平均値を算出した。
【0184】
<フィルムの全光線透過率、Haze、380nmの光線透過率及び420nmの光線透過率>
上記光学特性値を、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM-3700Aを用いて測定した。
【0185】
<フィルムの黄色度>
光学フィルムの黄色度(Yellow Index:YI値)を、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM-3700Aを用いて測定した。具体的には、サンプルがない状態でバックグランド測定を行った後、光学フィルムをサンプルホルダーにセットして、300〜800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求め、下記式に基づいてYI値を算出した。
YI=100×(1.2769X−1.0592Z)/Y
【0186】
<フィルムの黄色度の変化率(UV耐久試験)>
アトラス社製UVtest(UV2000)を用いて、紫外線蛍光ランプUVB−313により、光学フィルムに対して72時間、紫外線を照射した。光学フィルムの照射前後の黄色度を測定し、照射後の黄色度から照射前の黄色度を除して、黄色度の変化率(ΔYI)を算出した。
【0187】
<フィルムの耐屈曲性>
JIS P8115に準拠して、MIT耐折疲労試験機D型((株)東洋精機製作所)を用いて、破断するまでの回数を測定した。曲率半径Rは1で測定を行った。
【0188】
<フィルムの引張弾性率>
フィルムを100×10mmのダンベル状に切り出し、JIS K7127に準拠して、電気機械式万能試験機(インストロン社製)を用いて、試験速度5m/分及びロードセル5kNで引っ張り試験を行い、光学フィルムの引張弾性率を測定した。
【0189】
<フィルムの光学的均質性の評価方法>
1.投影画像及び背景画像の撮影
暗室中に、
図2に示すように、光源1、フィルム2、投影面3及びカメラ6を配置し、投影画像4の撮影を行った。光源1とフィルム2との距離は250cmであり、フィルム2と投影面3との距離は30cmであり、フィルム2と投影面3とは平行に配置され、カメラ6は光源1からスクリーンへの法線の真下に設置しており、カメラ6と投影面3(スクリーン)との距離は30cmであり、カメラ角度7(カメラをスクリーンに対して垂直となるように向けた状態から、上側に傾斜させる角度)は25°であった。また、背景画像の撮影は、
図2においてフィルム2を取り除いたこと以外は投影画像の撮影と同様にして行った。測定条件及び撮影条件の詳細を以下に示す。
光源:LED光源(林時計工業(株)製「LA−HDF15T」)
フィルム:以下の実施例及び比較例で製造したフィルムを200mm×300mmに切り出したフィルムを測定試料とした。
投影面:白色の市販の映画観賞用のスクリーン((株)シアターハウス製、「BTP600FHD−SH1000」)
カメラ:(株)ニコン製「COOLPIX(登録商標) P600」
カメラの詳細設定:撮影モード マニュアル撮影
画像サイズ 2M
フォーカス マニュアルフォーカス(距離0.3m)
シャッタースピード 1/2秒
絞り値(F値) 4.2
フラッシュ OFF
【0190】
2.フーリエ変換
本実施例ではカメラを上記カメラ角度の位置に設置しているため、投影画像に傾斜が生じている。そのため、まず投影画像の傾斜を補正するために、傾斜補正条件を決定した。
なお、投影像のゆがみがない場合には補正は不要である。
(傾斜補正条件の決定)
透明なフィルムに10cm×10cmの正方形を書き、上記1の条件にて基準投影画像を撮影した。得られた基準投影画像をAdobe Systems社製のPhotoshop(登録商標) CS4にて読み込み、レンズ補正のゆがみ補正機能を用いて、カメラとスクリーンとのが90°に相当するように補正し、TIFF形式で保存した。このときの条件を傾斜補正条件とした。傾斜補正後の基準投影画像から、縦、横それぞれのピクセルあたりの長さを計算した(縦:816pixel=10cm、横:906pixel=10cm)。
(フーリエ変換)
実施例及び比較例のフィルムについて上記のようにして得た投影画像について、上記のようにして決定した傾斜補正条件で補正を行い、補正後の画像をTIFF形式で保存した。得られた傾斜補正後の投影画像を、画像解析ソフト「Image−J、ver.1.48」を用いて8−bitのグレースケールへ変換することにより数値化した。なお、傾斜補正後の基準投影画像から得た、縦、横それぞれのピクセルあたりの長さを、Set Scaleとして使用した。グレースケール画像中10.2cm×11.2cm(縦×横)のサイズの矩形の範囲を選択し、該選択された範囲の画像を、Imag撹拌e−Jを用いてフーリエ変換し、逆空間像を得た。フーリエ変換後の逆空間像について、Set Scaleに正しい値(水平方向:1pixel=11.3cm
−1、垂直方向:1pixel=12.55cm
−1)を入力した。
【0191】
3.ブランク補正したラインプロファイルの最大強度(Y
mh1及びY
mv1)の測定
上記のようにして得た逆空間像において、逆空間像の中心を通る水平方向(h1方向)及び垂直方向(v1方向)のそれぞれの方向についてラインプロファイルを作成した。
ライン幅は10ピクセルとした。得られたラインプロファイルをtext形式で保存した。次に、該text形式のデータをMicrosoft社のExcel(ver.14.0)で読み込み、次のようにしてラインプロファイルを規格化して、水平方向(h1方向)及び垂直方向(v1方向)のそれぞれの方向について、Y”のラインプロファイルを得て、各ラインプロファイルにおいて最大強度Y
maxをY
mh1及びY
mv1とし、最大強度Y
mh1及びY
mv1を示す周波数からブランク補正されたラインプロファイルにおける全周波数の中央値X
cenを引いた値であるX
maxをそれぞれX
mh1及びX
mv1とした。規格化方法を実施例1で得た水平方向(h1方向)のラインプロファイルを例として用いて説明する。
(規格化方法)
Yの値が最大となる周波数をXの中心(X
cen)とし、その時のYの値をY
cenとする。次に、X
cenを中心とし、両端50ピクセル分ずつの合計100ピクセルの領域について、Yの平均値を求め、該平均値をベースライン(Y
base)とする。そして、Y
cen=100、Y
base=0となるように、次の式に従いデータYを補正しY’を得る。
【数8】
図4に示される実施例1で得たラインプロファイル(データY)について、上記補正を行うことにより、
図5に示されるようなラインプロファイルA(データY’)が得られる。
次に、1で得た背景画像についても同様の操作を行い、背景画像のラインプロファイルを得た。具体的には、
図6に示されるようなラインプロファイルBが得られた。
次いで、上記のプロファイルAから、バックグラウンドのプロファイルBをExcelにより引いて、ブランク補正を行った。実施例1では、
図5に示されるラインプロファイルAのデータY’から、
図6に示されるようなラインプロファイルBのデータを引いて、
図7に示されるようなブランク補正されたラインプロファイルA−Bを得た。
このようにして得たラインプロファイルをスムージングして、Y”のプロファイルを得、これをラインプロファイルの最大強度(Y
mh1及びY
mv1)の測定に使用した。グラフのスムージングは、次の式に従い、21個のデータの平均値であるy
iを算出して行った。
【数9】
【0192】
(視認性の官能評価)
50〜100ルクスに調光した室内環境にて、仰角80°の角度より、作製したフィルムを目視検査し、映り込む背景の歪みより視認性を評価した。その結果を表2に示す。なお、視認性の評価基準は以下の通りである。
◎:背景に歪みは全く確認されない。
〇:背景に歪みはほぼ確認されない。
△:背景に非常に僅かな歪みが確認されるが、問題のないレベル。
×:背景に明確な歪みが確認される。
【0193】
<残溶媒量>
TG−DTA(SII(株)製 EXSTAR6000 TG/DTA6300)を用いて、実施例1及び2並びに比較例及び2で得られた透明樹脂フィルムを30℃から120℃まで昇温し、120℃で5分間保持し、その後5℃/分の昇温速度で400℃まで昇温した。120℃におけるフィルムの質量に対する120℃から250℃でのフィルムの質量減少の比を、溶媒の含有量(残溶媒量と称する)として算出した。
【0194】
以下の製造例及び実施例において使用する略称は、次のとおりである。
TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物
TPC:テレフタロイルクロリド
OBBC:4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)
DMAc:N,N−ジメチルアセトアミド
GBL:γ−ブチロラクトン
PET:ポリエチレンテレフタレート
【0195】
<製造例>
製造例1:ポリイミド樹脂1の製造
セパラブルフラスコにシリカゲル管、撹拌装置及び温度計を取り付けた反応器と、オイルバスとを準備した。このフラスコ内に、6FDA75.52部と、TFMB54.44部とを投入した。これを400rpmで攪拌しながらDMAc519.84部を加え、フラスコの内容物が均一な溶液になるまで撹拌を続けた。続いて、オイルバスを用いて容器内温度が20〜30℃の範囲になるように調整しながらさらに20時間撹拌を続け、反応させてポリアミック酸を生成させた。30分後、撹拌速度を100rpmに変更した。20時間撹拌後、反応系温度を室温に戻し、DMAc649.8部を加えてポリマー濃度が10質量%となるように調整した。さらに、ピリジン32.27部、無水酢酸41.65部を加え、室温で10時間撹拌してイミド化を行った。反応容器からポリイミドワニスを取り出した。得られたポリイミドワニスをメタノール中に滴下して再沈殿を行い、得られた粉体を加熱乾燥して溶媒を除去し、固形分としてポリイミド系樹脂1を得た。得られたポリイミド系樹脂1について、GPC測定を行ったところ、重量平均分子量は320,000であった。また、ポリイミドのイミド化率は98.6%であった。
【0196】
製造例2:ポリイミド樹脂2の製造
20〜30℃での撹拌時間を30時間に変更したこと以外、製造例1と同様にして、重量平均分子量430,000、イミド化率98.3%のポリイミド樹脂2を製造した。
【0197】
製造例3:ポリアミドイミド樹脂1の製造
窒素ガス雰囲気下、セパラブルフラスコに撹拌翼を備えた反応容器と、オイルバスとを準備した。オイルバスに設置した反応容器に、TFMB45部と、DMAc768.55部とを投入した。反応容器内の内容物を室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させた。次に、反応容器内に6FDA19.01部を更に投入し、反応容器内の内容物を室温で3時間撹拌した。その後、OBBC4.21部、次いでTPC17.30部を反応容器に投入し、反応容器内の内容物を室温で1時間撹拌した。次いで、反応容器内に4−メチルピリジン4.63部と無水酢酸13.04部とを更に投入し、反応容器内の内容物を室温で30分間撹拌した。撹拌した後、オイルバスを用いて容器内温度を70℃に昇温し、70℃に維持してさらに3時間撹拌し、反応液を得た。
得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、沈殿物を析出させた。析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄した。次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、ポリアミドイミド樹脂1を得た。得られたポリアミドイミド樹脂1の重量平均分子量は370,000、イミド化率は98.9%であった。
【0198】
製造例4:ポリアミドイミド樹脂2の製造
窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに、TFMB50部及びDMAc642.07部を加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させた。次に、フラスコに6FDA20.84部を添加し、室温で3時間撹拌した。その後、OBBC9.23部、次いでTPC15.87部をフラスコに加え、室温で1時間撹拌した。次いで、フラスコに4−メチルピリジン9.89部と無水酢酸14.37部とを加え、室温で30分間撹拌後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得た。得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄した。次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、ポリアミドイミド樹脂2を得た。得られたポリアミドイミド樹脂2の重量平均分子量は420,000、イミド化率は99.0%であった。
【0199】
製造例5:シリカゾル1の調製
ゾル−ゲル法により作製された平均一次粒子径(BET法で測定された平均一次粒子径)27nmのアモルファスシリカゾルを原料とし、溶媒置換により、GBL置換シリカゾルを調製した。得られたゾルを目開き10μmのメンブレンフィルターでろ過し、GBL置換シリカゾル1を得た。得られたGBL置換シリカゾル1中、シリカ粒子の含有量は30〜32質量%であった。
【0200】
製造例6:ワニス(1)の調製
製造例1で得たポリイミド樹脂1、及び、該ポリイミド樹脂に対して2.0phrの紫外線吸収剤「Sumisorb 250」(分子量389、住化ケムテックス(株)製、表1中「UV1」と記載する)を、GBL:DMAc=1:9の混合溶剤中に16.5質量%の濃度で溶解させてワニス(1)を得た。ワニス(1)の固形分は16.5%であり、25℃における粘度は36,800cpsであった。
【0201】
製造例7:ワニス(2)の調製
製造例2で得たポリイミド樹脂2、及び、該ポリイミド樹脂に対して3.5phrの紫外線吸収剤「Uvinul 3030」(重量平均分子量1060、BASF製、表1中「UV2」と記載する)を、GBL:DMAc=1:9の混合溶剤中に15.0質量%の濃度で溶解させてワニス(2)を得た。ワニス(1)の固形分は15.0%であり、25℃における粘度は35,400cpsであった。
【0202】
製造例8:ワニス(3)の調製
製造例3で得たポリアミドイミド樹脂1、及び、製造例5で得たシリカゾルを、GBL溶媒中でのポリアミドイミド樹脂:シリカ粒子の組成比が60:40になるように混合した。得られた混合液に、ポリアミドイミド樹脂とシリカ粒子の合計質量に対して2.0phrのUV−A紫外線吸収剤「Sumisorb 250」(分子量389、住化ケムテックス(株)製)及びポリアミドイミド樹脂とシリカ粒子の合計質量に対して35ppmのブルーイング剤「Sumiplast(登録商標) Violet B」(住化ケムテックス(株)製、表1中「BA」と記載する)を添加し、均一になるまで撹拌し、ワニス(3)を得た。ワニス(3)の固形分は11.0%であり、25℃における粘度は38,500cpsであった。
【0203】
製造例9:ワニス(4)の調製
製造例4で得たポリアミドイミド樹脂2、及び、製造例5で得たシリカゾルを、GBL溶媒中でのポリアミドイミド樹脂:シリカ粒子の組成比が60:40になるように混合した。得られた混合液に、ポリアミドイミド樹脂とシリカ粒子の合計質量に対して3.5phrのUV−A紫外線吸収剤「Uvinul 3030」(重量平均分子量1060g/mol、BASF製)及びポリアミドイミド樹脂とシリカ粒子の合計質量に対して35ppmのブルーイング剤「Sumiplast Violet B」(住化ケムテックス(株)製)を添加し、均一になるまで撹拌し、ワニス(4)を得た。ワニス(4)の固形分は9.9%であり、25℃における粘度は38,000cpsであった。
【0204】
製造例10:ワニス(5)の調製
製造例
1で得たポ
リイミド樹脂1をGBL:DMAc=1:9の混合溶剤中に16.5質量%の濃度で溶解させてワニス(5)を得た。ワニス(5)の固形分は16.5%であり、25℃における粘度は37,000cpsであった。
【0205】
製造例11:ワニス(6)の調製
製造例3で得たポリアミドイミド樹脂1、及び、製造例5で得たシリカゾルを、GBL溶媒中でのポリアミドイミド樹脂:シリカ粒子の組成比が60:40になるように混合し、均一になるまで撹拌し、ワニス(6)を得た。ワニス(6)の固形分は11.0%であり、25℃における粘度は38,500cpsであった。
【0206】
実施例1
ワニス(1)を、PETフィルム(東洋紡(株)「コスモシャイン(登録商標)A4100」、膜厚188μm、膜厚分布±2μm)上に塗布し、流涎成形し、ワニスの塗膜を成形した。この時、線速は0.4m/分であった。ワニスの塗膜を、70℃で7.5分加熱した後、120℃で7.5分加熱し、次いで70℃で7.5分加熱し、最後に75℃で7.5分加熱するという乾燥条件で乾燥させ、乾燥塗膜を形成させた。その後、PETフィルムから塗膜を剥離し、膜厚89μm、幅700mmの原料フィルム1を得た。原料フィルム1中の残存溶媒量は9.5質量%であった。次いで、原料フィルム1をフィルム横延伸装置(テンター)にて200℃で25分、延伸倍率1.00倍の条件で加熱することにより、膜厚77μmのポリイミドフィルム1を得た。ポリイミドフィルム1中の残溶媒量は1.0質量%であった。
【0207】
実施例2
ワニス(1)に代えてワニス(2)を用い、乾燥条件を75℃で7.5分加熱した後、120℃で7.5分加熱し、次いで70℃で7.5分加熱し、最後に80℃で7.5分加熱する条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、膜厚89μm、幅700mmの原料フィルム2を得た。原料フィルム2中の残存溶媒量は9.6質量%であった。次いで、原料フィルム1に代えて原料フィルム2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、膜厚77μmのポリイミドフィルム2を得た。ポリイミドフィルム2中の残存溶媒量は1.1質量%であった。
【0208】
実施例3
ワニス(3)を、PETフィルム(東洋紡(株)「コスモシャインA4100」、膜厚188μm、膜厚分布±2μm)上に塗布し、流涎成形し、ワニスの塗膜を成形した。この時、線速は0.8m/分であった。ワニスの塗膜を、80℃で10分加熱した後、100℃で10分加熱し、次いで90℃で10分加熱し、最後に80℃で10分加熱するという乾燥条件で乾燥させ、乾燥塗膜を形成させた。その後、PETフィルムから塗膜を剥離し、膜厚58μm、幅700mmの原料フィルム3を得た。原料フィルム3中の残存溶媒量は9.7質量%であった。次いで、原料フィルム3をフィルム横延伸装置(テンター)にて200℃で25分、延伸倍率0.98倍の条件で加熱することにより、膜厚50μmのポリアミドイミドフィルム1を得た。ポリアミドイミドフィルム1中の残存溶媒量は0.8質量%であった。
【0209】
実施例4
乾燥条件を80℃で10分加熱した後、100℃で10分加熱し、次いで90℃で10分加熱し、最後に85℃で10分加熱する条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、膜厚89μm、幅700mmの原料フィルム4を得た。次いで、原料フィルム1に代えて原料フィルム4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、膜厚77μmのポリアミドイミドフィルム2を得た。ポリアミドイミドフィルム2中の残存溶媒量は1.1質量%であった。
【0210】
比較例1
ワニス(5)を用いて、乾燥条件を100℃で7.5分加熱した後、120℃で7.5分加熱し、次いで60℃で7.5分加熱し、最後に60℃で7.5分加熱する条件に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、膜厚89μm、幅700mmの原料フィルム5を得た。原料フィルム5中の残存溶媒量は9.9質量%であった。次いで、原料フィルム1に代えて原料フィルム5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、膜厚77μmのポリイミドフィルム3を得た。ポリイミドフィルム3中の残存溶媒量は1.0質量%であった。
【0211】
比較例2
ワニス(6)を用いて、乾燥条件を70℃で10分加熱した後、80℃で10分加熱し、次いで100℃で10分加熱し、最後に100℃で10分加熱する条件に変更したこと以外、実施例3と同様の方法で、膜厚58μm、幅700mmの原料フィルム6を得た。原料フィルム6中の残存溶媒量は10.0質量%であった。次いで、原料フィルム3に代えて原料フィルム6を用いたこと以外は実施例3と同様にして、膜厚50μmのポリアミドイミドフィルム3を得た。ポリアミドイミドフィルム3中の残存溶媒量は0.7質量%であった。
【0212】
参考例1
DMAcの仕込量を1650部とした以外は製造例3と同様にして、ポリアミドイミド樹脂3を得た。得られたポリアミドイミド樹脂3の重量平均分子量は180,000であった。ポリアミドイミド樹脂1に代えてポリアミドイミド樹脂3を用いたこと以外は製造例8と同様にしてワニスを調製し、該ワニスを用いて実施例3と同様にして参考用の膜厚50μmのフィルムを作成した。
【0213】
実施例及び比較例のフィルムの製造に使用したワニスの組成及び物性値を表1に、乾燥条件を表2示す。なお、表1中、ポリイミド樹脂をPIと記載し、ポリアミドイミド樹脂をPAIと記載する。また、実施例及び比較例で得たフィルムについて、上記測定方法に従い各種物性値を測定した結果を、表3及び表4に示す。なお、実施例及び比較例のフィルムのHazeはいずれも0.2であった。また、参考例1に示すフィルムについて耐屈曲性試験を行った結果、耐屈曲回数は0.3万回以下であった。
【0214】
【表1】
【0215】
【表2】
【0216】
【表3】
【0217】
【表4】
【0218】
実施例1〜4の光学フィルムは、380nmにおける光線透過率が20%以下であり、耐久試験前後でYI値の変化が少なく、耐久試験後も高い光学特性を有していた。これに対し、380nmにおける光線透過率が20%を越える比較例1及び2の場合、耐久試験後にYI値が著しく上昇し、十分な光学特性を有するものでなかった。さらに、実施例1〜4の光学フィルムはY
mh及びY
mvが30未満であり、A/Bが30未満であり、視認性の評価はいずれも◎、○又は△と良好であった。これに対し、比較例1の光学フィルムはA/Bが30以上であり、視認性の評価結果は×であった。さらに、重量平均分子量が23万未満である樹脂を含有する参考例1のフィルムは、十分な耐屈曲性を有するものではなかった。
【課題】光学的均質性に優れると共に、耐久性試験後も高い光学特性を示す光学フィルム、該光学フィルムを備えるフレキシブル表示装置、及び該フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】重量平均分子量が23万以上であるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を含む光学フィルムであって、光学フィルムを用いて得た投影画像をフーリエ変換して得た互いに直交する方向におけるラインプロファイルをh及びvとし、光学フィルムを用いずに得た背景画像から得た互いに直交する方向におけるラインプロファイルをh’及びv’とし、ラインプロファイル(h−h’)の最大強度をY