(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記糊化膨潤抑制澱粉が、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉及び非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の酸性フラワーペースト類。
【背景技術】
【0002】
フラワーペーストや、カスタード等の澱粉の糊化によるボディーを有するフラワーペースト類は、パン類や菓子類のトッピング、フィリングとして広く利用されてきた。このフラワーペースト類は、一般的に、小麦粉や穀物澱粉等の澱粉類、ミルク、砂糖、卵、水等を混合した後、加熱して糊化させることによって得られるもので、一般に粘弾性に富んだ物性と食感を示す。
【0003】
しかし、最近では、シート状のフラワーペースト類をベーカリー生地と同時に伸展させるロールイン用途等にも多く用いられるようになり、従来の粘弾性に富んだ物性ではなく、スプレッド性や伸展性に富んだ物性が求められることが多くなってきている。この場合、一般的には油脂を添加することで、スプレッド性や伸展性を付与するが、この方法では、特に冷蔵保存時に澱粉類の老化等により乳化が破壊されて、油脂分離や水分分離を起こす等、乳化安定性が問題となっていた。
【0004】
ところで最近は、柑橘果汁・ヨーグルト・コーヒー等の酸性素材を配合した酸性フラワーペースト類も多く見られるようになってきた。このような酸味素材を多く配合すると、フラワーペースト製造時に澱粉ゲルが破壊されボディー感が弱くなってしまうことに加え、包材剥離性が悪化する問題がある。また乳化安定性も極端に低下してしまうため、保存時に離水する問題もある。
【0005】
また製菓製パン用途では、フラワーペースト類に酸性食品素材を使用する場合であっても通常は甘味を付与するために8〜30質量%程度の糖類を配合することが多いためとくに問題にならないが、ピザ・マヨネーズ・チーズ・トマトなどの酸味を主体とし甘味を含まないフラワーペースト類を製造する場合は上記問題に加え、糖類を使用できないために保存性が悪化する問題があった。
【0006】
そのため、酸味を主体とし甘味を含まないフラワーペースト類においては、保存料に頼らずに保存性を向上させるために、酢酸、乳酸やクエン酸などの酸をさらに添加することも行われる。この場合はpHが更に低下するため上記問題がさらに顕著に発生してしまう。
【0007】
そのため、上記のような酸性フラワーペースト類において、通常はゲル物性強化と乳化安定性の向上を目的とし、たんぱく質や増粘安定剤の配合量を増やすことが行われるが、この方法では、スプレッド性や伸展性が極端に悪化してしまう。
この物性の改善を目的に油脂を加配することも行われるが、十分なスプレッド性や伸展性を得るためには多量の油脂の添加を必要とし、結果として上記のような乳化安定性の問題が生じてしまう。
【0008】
ここで乳化安定性の向上を目的として、合成乳化剤を添加することも考えられるが、フラワーペーストの呈味成分の風味発現性が悪化してしまうおそれがある。
このように酸性フラワーペーストにおいては、十分なスプレッド性や伸展性と、十分な乳化安定性を両立させ、さらに良好な包材剥離性を得ることは困難であった。
【0009】
この問題に対処するため、酸性可溶大豆蛋白質を使用する方法(たとえば特許文献1参照)が提案された。しかしながら、この方法は、連続製パン法に適したフラワーペーストを得るための発明であり、デポジッター等による押出しせん断加工を経てはじめて良好なスプレッド性や伸展性が得られるものであり、耐熱性や機械耐性を重視するあまり蛋白を多く使用しているため極めて粘弾性が強い物性と食感となっていることに加え、デポジッター等による押出しせん断加工を行なわずそのまま使用した場合、包材剥離性が悪く、スプレッド性や伸展性は不良であり、ロールイン用途に使用した場合、生地との密着性が悪く、さらには焼成時の乳化安定性が悪いという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の酸性フラワーペースト類について詳述する。
フラワーペースト類とは、澱粉類が糊化した糊化澱粉によるボディーを有するものであり、例えば、フラワーペースト、カスタード等が挙げられる。
フラワーペースト類は、一般的には上記糊化澱粉として、小麦粉やコーンスターチ等の非ワキシースターチ由来の非化工の澱粉を糊化した糊化澱粉を使用している。これらの非化工の澱粉は、加熱糊化した際に澱粉粒子の膨潤により澱粉粒形は消失し、一様な澱粉ゲルを形成し、この澱粉ゲルがフラワーペースト類のボディーを形成するためである。
【0018】
本発明の酸性フラワーペースト類においては、上記非ワキシースターチ由来の非化工の澱粉を糊化した糊化澱粉のみを使用したものであってもよいが、通常のフラワーペースト類に比べ耐酸性が要求されることから、これとは全く逆に、澱粉粒子の膨潤を抑制する加工を施した化工澱粉(糊化膨潤抑制澱粉)を使用することが好ましく、より好ましくは、その由来となる澱粉について、ワキシースターチと非ワキシースターチの2種の澱粉を併用する。
【0019】
ここでまず、糊化膨潤抑制澱粉について述べる。
本発明に使用する糊化膨潤抑制澱粉とは、澱粉を加熱糊化した際に澱粉粒子の膨潤が抑制されて澱粉粒形を残存させるように何らかの方法で加工した化工澱粉を、さらに糊化して得られるものである。
すなわち、この糊化膨潤抑制澱粉は、糊化澱粉であるにもかかわらず澱粉粒形を存置している点に特徴がある。そのため、この糊化膨潤抑制澱粉を使用することで、本発明の、乳化安定性が良好で、包材剥離性や伸展性も良好である酸性フラワーペースト類が得られるのである。
上記糊化膨潤抑制澱粉としては、具体的には、糊化架橋澱粉、糊化老化澱粉、糊化湿熱処理澱粉、糊化乳化剤処理澱粉等が挙げられるが、本発明では、好ましくは糊化架橋澱粉、特に好ましくは糊化リン酸架橋澱粉を使用する。
【0020】
また、上記糊化膨潤抑制澱粉の原料澱粉としては、一般に食品に使用される澱粉、例えば馬鈴薯澱粉、甘薯澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、うるち米澱粉、餅米澱粉等を挙げることができるが、本発明では、タピオカ澱粉、ワキシーコーンスターチ、餅米澱粉等のアミロペクチン含有量の高い原料澱粉(ワキシースターチ)と、馬鈴薯澱粉、甘薯澱粉、サゴ澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、うるち米澱粉等のアミロペクチン含有量の低い原料澱粉(非ワキシースターチ)とを併用することが好ましい。尚、本発明においては、アミロペクチン含有量が85質量%以上であるものをワキシースターチとし、アミロペクチン含有量が85質量%未満であるものを非ワキシースターチとする。
【0021】
本発明の酸性フラワーペースト類においては、タピオカ澱粉、ワキシーコーンスターチ及び餅米澱粉から選択される1種又は2種以上のワキシースターチ由来の糊化リン酸架橋澱粉と、馬鈴薯澱粉、サゴ澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉及びうるち米澱粉から選択される1種又は2種以上の非ワキシースターチ由来の糊化リン酸架橋澱粉とを併用することが特に好ましい。
ここで、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉と非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉との質量比(前者:後者)は、好ましくは20:80〜60:40、より好ましくは25:75〜50:50である。ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉の割合が両者の合計の20質量%未満であると、経日的に老化が進みやすく、伸展性が悪くなるおそれがあり、60質量%超であると、包材剥離性が悪くなるおそれがある。
【0022】
なお、本発明の酸性フラワーペースト類では、上記澱粉類として、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉と非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉に加え、一般の酸性フラワーペースト類で使用する非化工の糊化澱粉を併用してもよい。
本発明の酸性フラワーペースト類における、非化工の糊化澱粉の含有量は、好ましくは澱粉類中の50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは含有しないことが好ましい。
【0023】
非化工の糊化澱粉の原料澱粉としては、一般に食品に使用される澱粉類、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、モチ米澱粉等の澱粉や、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉、ライ麦粉、大麦粉、米粉等の穀粉類を特に制限なく使用することができる。
【0024】
本発明の酸性フラワーペースト類では、全ての澱粉類の合計含有量、即ち、非化工の糊化澱粉、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉、及び非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉を併せた含有量が4〜12質量%、好ましくは5〜10質量%となる量である。尚、非化工の糊化澱粉の原料澱粉として上記に挙げた穀粉類には、澱粉以外の成分(例えばたんぱく質)を含むものもあるが、本発明においては、斯かる穀粉類については、澱粉以外の成分も含めて澱粉類としてみなして澱粉類の含有量を計算する。
【0025】
本発明の酸性フラワーペースト類は少なくとも酸性であることが必要であるが、そのpHが好ましくは1〜5.5、より好ましくは1〜5.3、さらに好ましくは3.0〜5.3とする。
ここで、pHが5.5超であると保存性が十分に保てなくなるおそれがあり、pHが1未満であると酸味が強すぎることに加え、十分な乳化安定性が得られないおそれがある。
【0026】
本発明の酸性フラワーペーストを上記pHとするために使用する酸性素材としては、たとえば酸性の果汁、酸味料が挙げられる。
酸性の果汁としては、ストロベリー、カシス、ブルーベリー、ゆず、アセロラ、あんず、梅、みかん、オレンジ、キウイフルーツ、グァバ、グレープフルーツ、さくらんぼ、シークワーサー、すいか、洋梨、なつみかん、パインアップル、ハスカップ、パッションフルーツ、パパイア、びわ、ぶどう、マンゴー、日向夏、へべす、キンカン、カボス、甘夏、はっさく、メロン、マンゴスチン、黄桃、白桃、ライチ、ラズベリー、りんご、レモンなどの果汁、その水分含量を減じたピューレ、ペースト、ジャムなどの加工品が挙げられる。
また、酸味料としては、具体的には、アジピン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、炭素、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、フィチン酸及びこれらの塩のうちの、1種または2種以上を用いることができる。
なお、果汁、酸味料以外の酸性食品素材として、チーズ、発酵乳、発酵果汁、ワインなどの発酵食品や、コーヒーなどが挙げられる。
【0027】
また、本発明の酸性フラワーペースト類に用いられる上記油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。これらの油脂は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて用いることもできる。これらの中でも、パーム分別軟部油をエステル交換したエステル交換油脂、及び、ハイエルシンナタネ極度硬化油を併用することが好ましい。この場合、パーム分別軟部油をエステル交換したエステル交換油脂を全油脂中の50〜99.8質量%、特に70〜99.6質量%使用することが好ましく、ハイエルシンナタネ極度硬化油を全油脂中の0.2〜2質量%、特に0.4〜1質量%併用することが好ましい。
【0028】
本発明の酸性フラワーペースト類中、油脂の含有量は、4〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは5〜25質量%である。該油脂の含有量が4質量%未満であると、良好なスプレッド性や伸展性を有する酸性フラワーペースト類が得られない。また、40質量%を超えると、乳化安定性が悪化し、べとつきやすく、油分が分離しやすくなることに加え、酸性フラワーペースト類の口溶けがワキシーになる等の問題、さらには酸性フラワーペースト類及びベーカリー生地を複合させた複合生地を焼成する際に激しい油分離が発生する。
なお、本発明の酸性フラワーペースト類に、油脂を含有する副原料を使用した場合は、上記油脂の含有量には、それらの副原料に含まれる油脂分も含めるものとする。
【0029】
なお、本発明の酸性フラワーペースト類には糖類を使用することができる。
上記糖類としては、上記澱粉類のような高分子の糖類以外の単糖類、二糖類、オリゴ糖等の低分子の糖類であれば特に限定されず、例えば、上白糖、グラニュー糖、粉糖、液糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。これらの糖類は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0030】
上記糖類の含有量は、本発明の酸性フラワーペースト類中、固形分として0〜40質量%の範囲でとくに制限されることなく使用可能であるが、酸性風味素材の風味発現性の面から、また、本発明においては糖類を使用せずとも酸によりある程度の保存性を有するため、上記糖類の含有量は、本発明のフラワーペースト類中、固形分として10質量%以下であることが好ましい。
【0031】
また、本発明の酸性フラワーペースト類は、実質的にトランス酸を含まないことが好ましい。水素添加は、油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、水素添加油脂は、完全水素添加油脂を除いて、通常、構成脂肪酸中にトランス酸が10〜50質量%程度含まれている。
一方、天然油脂中にはトランス酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものも要求されている。
ここでいう「実質的にトランス酸を含まない」とは、油脂の全構成脂肪酸中、トランス酸の含有量が好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは1質量%以下であることを意味する。
【0032】
本発明の酸性フラワーペースト類は寒天を0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%、より好ましくは0.1〜0.5質量%含有する。寒天をこのように少量含有させることにより、酸性フラワーペースト類の良好なスプレッド性や伸展性を保ちながら包材剥離性を飛躍的に改善させることができる。また、乳化安定性が向上することから、製造時やベーカリー生地への複合作業時等における乳化破壊を防止することによる物性改良効果や、保水性を向上させることによる離水防止効果や食感向上効果を得ることも可能となる。
【0033】
本発明の上記効果は数ある増粘安定剤の中でも寒天のみで得られるものであり、例えばより強力なゲル化剤であるジェランガムを使用すると包材剥離性は改善されるが乳化安定性は不十分で冷蔵保管で離水してしまうし、より増粘効果の高いグアーガムを使用すると乳化安定性はある程度改善されるが包材剥離性は不良である。このように寒天は増粘安定剤の中では耐酸性は低いために通常は酸性食品には使用されないにもかかわらずなぜ本発明の効果が得られるのかその理由は明らかではないが、中性域では寒天のみが糊状感のない「サクッ」とした食感のゲルを実現できることから、酸性域であっても何らかの近似の効果を示しているものと思われる。
【0034】
本発明で使用できる寒天としては特に制限されないが、従来から食品用に使用されているものであればよく、例えば、主に紅藻類のテングサ、オゴノリ等から抽出して得られた寒天が挙げられる。この寒天には、糸寒天、棒寒天、フレーク寒天、粉末寒天などが含まれる。また、なんらかの方法で物性を改変した寒天も使用することができる。なお、物性を改変した寒天としては、ゲル強度を高めたもの、ゲル強度を弱めたもの、粘弾性を高めたもの、粘弾性を低減したもの、高融点化したもの、低融点化したものなどが挙げられる。本発明ではこれらのうちの1種または2種以上をとくに限定することなく使用することができる。
【0035】
なお、本発明で使用する寒天としては、質量平均分子量が30,000〜1,000,000であることが好ましく、200,000〜400,000であることがより好ましい。また、1.5質量%における日寒水式のゲル強度が10〜1,200g/cm
2であることが好ましく、500〜800g/cm
2であることがより好ましい。本発明ではこの範囲の寒天を使用することにより、より少ない添加量で、上記の十分の効果を得ることができる。
【0036】
また、本発明の酸性フラワーペースト類は、寒天に加え、ローカストビーンガム及びキサンタンガムを含有するものであると、乳化安定性が向上することができる点で特に好ましい。本発明の酸性フラワーペースト類におけるローカストビーンガム及びキサンタンガムの含有量は、酸性フラワーペースト類中、ローカストビーンガム及びキサンタンガムの合計で0.01〜2質量%、特に0.1〜1質量%であることが好ましい。また、ローカストビーンガムとキサンタンガムの質量比は特に限定されないが、前者:後者で、好ましくは30〜70:70〜30、更に好ましくは40〜60:60〜40である。
【0037】
また、本発明の酸性フラワーペースト類は、本発明の効果に影響のない範囲内で上記寒天、ローカストビーンガム及びキサンタンガム以外のその他の増粘安定剤を含有することができる。
上記その他の増粘安定剤としては、ジェランガム、グアーガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、グルコマンナン、ゼラチン等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記その他の増粘安定剤の含有量は、本発明の酸性フラワーペースト類中、好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下である。
【0038】
また、本発明の酸性フラワーペースト類は、風味発現性を良好なものとすることが可能である点で、合成乳化剤を含有しないことが好ましい。
上記の合成乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等が挙げられる。
【0039】
本発明の酸性フラワーペースト類には、上記合成乳化剤でない乳化剤を用いることができる。該乳化剤としては、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、乳脂肪球皮膜蛋白質が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0040】
本発明のフラワーペースト類には、通常フラワーペースト類の原料として使用し得るその他の食品素材や食品添加物を使用することが可能であり、例えば、水、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、牛乳・練乳・脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・バター・クリーム等の乳や乳製品、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β−カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、ホエー蛋白濃縮物・トータルミルクプロテイン等の乳蛋白や動物蛋白、全卵・卵黄・卵白粉末等の卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、食品保存料、日持ち向上剤、酵素、上記酸性素材以外の果実や果汁、ナッツペースト、香辛料、香辛料抽出物、カカオマス、ココアパウダー、野菜類、肉類、魚介類等が挙げられる。
【0041】
尚、これらの食品素材や食品添加物のうち、水並びに牛乳及び卵等の水分を含有する成分は、本発明の酸性フラワーペースト類中の水分含有量が30〜70質量%となるように使用することが好ましい。
【0042】
次に、本発明の酸性フラワーペースト類の製造方法について述べる。
本発明の酸性フラワーペースト類は、澱粉類4〜12質量%、油脂4〜40質量%、寒天を0.01〜1質量%、及び酸性素材を含有するフラワーペースト原料を、均質化処理した後、加熱し、冷却することによって得ることができる。
【0043】
なお、ここで上記澱粉類として糊化膨潤抑制澱粉を使用する場合は、該膨潤抑制澱粉は、糊化済みのものであっても非糊化のものであってもよいが、下記の予備乳化組成物の粘度を抑え、製造が容易で安定した生産が可能である点で、非糊化のものを使用することが好ましい。
【0044】
以下、ワキシースターチ由来の膨潤抑制澱粉及び非ワキシースターチ由来の膨潤抑制澱粉を使用した場合の、本発明の酸性フラワーペースト類の好ましい製造方法について述べる。
具体的には、先ず、澱粉類4〜12質量%(該澱粉類は上記ワキシースターチ由来の膨潤抑制澱粉及び非ワキシースターチ由来の膨潤抑制澱粉を含む)、油脂4〜40質量%、及び水、牛乳、卵等の水性原料、並びに酸性の果汁、酸味料等の酸性素材、必要に応じ糖類、ローカストビーンガム及びキサンタンガム、その他の原料を含有する酸性フラワーペースト原料を、加熱溶解、乳化混合して予備乳化組成物を作成する。その際、水相と油相との比率(前者:後者、質量基準)は、90:10〜65:35とすることが好ましい。なお、増粘安定剤を添加する場合は、作業性の点から、油相に添加するのが好ましい。
【0045】
次いで、得られた上記予備乳化組成物を、バルブ式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の均質化装置により、好ましくは圧力0〜80MPaの範囲で均質化した後、加熱する。加熱は、インジェクション式、インフージョン式等の直接加熱方式、あるいはプレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT、HTST、バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌若しくは加熱殺菌処理、あるいは直火等を用いた加熱調理により行なうことができる。加熱温度は60〜130℃が好ましく、加熱時間は0.05〜30分が好ましい。また、加熱後には必要により再度均質化してもよい。
【0046】
なお、この加熱操作により、非糊化澱粉は膨潤糊化するが、本発明で使用する糊化膨潤抑制澱粉は、この段階でも膨潤が抑制されているため、得られた酸性フラワーペースト類中でもその澱粉形状を保持している。また、糊化膨潤抑制澱粉を使用した場合は、この段階でもさらに膨潤することなく澱粉の形状を保持している。
【0047】
次いで、加熱した上記予備乳化組成物を冷却する。冷却は急速冷却、徐冷却等のいずれでもよく、冷却の前、又は後にエージングを行ってもよい。更に、得られた本発明の酸性フラワーペースト類は、必要により、冷蔵状態又は冷凍状態で保存してもよい。
【0048】
更に、本発明の酸性フラワーペースト類は、その形状を、シート状、ブロック状、円柱状、ダイス状等としてもよい。各々の形状についての好ましいサイズは、シート状:縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ1〜50mm、ブロック状:縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ50〜500mm、円柱状:直径1〜25mm、長さ5〜100mm、ダイス状:縦5〜50mm、横5〜50mm、厚さ5〜50mmである。
【0049】
このようにして得られた本発明の酸性フラワーペースト類は、フィリング、トッピング、練り込み用、折り込み(ロールイン)用として、クッキー、パイ、シュー、サブレ、スポンジケーキ、バターケーキ、ケーキドーナツ等の菓子類、食パン、フランスパン、デニッシュ、スイートロール、イーストドーナツ等のパン類等に広く用いることができる。なかでも、本発明のフラワーペースト類は、折り込み(ロールイン)用として特に好ましく用いることができる。
【0050】
次に、本発明の複合生地について述べる。
本発明の複合生地は、本発明の酸性フラワーペースト類をベーカリー生地にフィリング、トッピング、練り込み、折り込み、包餡等の方法で複合させたものである。
【0051】
上記のベーカリー生地としては、例えば、クッキー生地、パイ生地、シュー生地、サブレ生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、ケーキドーナツ生地、食パン生地、菓子パン生地、フランスパン生地、デニッシュ生地、スイートロール生地、イーストドーナツ生地等の菓子生地やパン生地が挙げられる。
【0052】
上記の複合生地としては、例えば、ベーカリー生地にペースト状の酸性フラワーペースト類を包餡した包餡生地、ベーカリー生地にペースト状の酸性フラワーペースト類をトッピング又はサンドした積層生地、ベーカリー生地にシート状の酸性フラワーペースト類をロールインした積層生地、製パン連続ラインにおいて、ブロック状の酸性フラワーペースト類を、ファットポンプ等を使用して薄板状に押し出し、ベーカリー生地にロールインした積層生地、円柱状やダイス状の酸性フラワーペースト類をベーカリー生地中に分散させた混合生地等が挙げられる。
【0053】
本発明の複合生地における本発明の酸性フラワーペースト類の使用量は、ベーカリー生地の種類により異なるが、一般的には、ベーカリー生地100質量部に対し、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは20〜70質量部である。
【0054】
次に、本発明のベーカリー食品について述べる。
本発明のベーカリー食品は、上記複合生地を、必要に応じ圧延、成形、ホイロ、ラックタイムをとった後、加熱して得られたものである。
【0055】
上記加熱方法としては、焼成、フライ、蒸しが挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上の処理を行うことができる。
上記複合生地を焼成する場合の焼成条件は、通常のベーカリー食品と同様、好ましくは160〜250℃、特に170〜220℃で行なうのが好ましい。160℃未満であると、火通りが悪くなりやすく、また良好な食感が得られにくい。また、250℃を超えると、酸性フラワーペースト類の水分が飛びすぎて色艶が悪化しやすい上、焦げを生じて食味が悪くなりやすい。
【0056】
上記複合生地をフライする場合、ラックタイムは特に有効である。ラックタイムをとることにより、ベーカリー生地の水分を飛ばし、表面を固化させることができ、結果として、ベーカリー生地の水分を減少させること及びフライ操作時の吸油を減少させることができる点で、ラックタイムをとることが望ましく、時間にして10〜40分、相対湿度50%以下の環境中で静置することにより好ましい効果が得られる。
上記複合生地のフライ操作は、通常のドーナツ等と同様、好ましくは160〜250℃、特に170〜220℃で行なうのが好ましい。160℃未満であると吸油が多く、良好な食感が得られにくい。250℃を超えると、焦げを生じて食味が悪くなりやすい。
【0057】
上記複合生地を蒸す場合の蒸し条件は、通常の蒸しケーキ等と同様、好ましくは80〜120℃、特に90〜100℃、湿度は好ましくは90〜100%、さらに好ましくは95〜100%で行うのが好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により何等制限されるものではない。
【0059】
〔実施例1〕
ヨウ素価65のパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂19.94質量%及びハイエルシンナタネ極度硬化油(ヨウ素価1未満)0.06質量%に、寒天(質量平均分子量300,000、1.5質量%における日寒水式のゲル強度が700g/cm
2)0.3質量%、キサンタンガム0.2質量%及びローカストビーンガム0.2質量%を添加し油相とした。水56.3質量%、ワキシーコーン由来のリン酸架橋澱粉2.1質量%、コーン由来のリン酸架橋澱粉4.9質量%、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(糖分75質量%)10質量%、食塩2質量%、タンパク質濃縮ホエイパウダー3質量%、乾燥卵白0.2質量%、乳酸0.3質量%及びトマト香料0.5質量%を混合し水相とした。この油相と水相とを加熱溶解、混合、乳化、均質化し、加熱殺菌し、厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填後、22℃まで冷却し、長さ400mm、幅200mm、厚さ8mmのシート状であり、合成乳化剤無添加であるトマト風味の酸性フラワーペーストを得た。
この酸性フラワーペーストのpHは4.5、澱粉含有量は7質量%、油脂含有量は20質量%、寒天の含有量は0.3質量%、糖類含有量は固形分として7.5質量%、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉と非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉の質量比が30:70、澱粉中の糊化膨潤抑制澱粉の含有量は100質量%、トランス酸含有量は1質量%以下であった。
得られた酸性フラワーペーストは、後述の包材剥離性試験、乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験に供した。
【0060】
〔実施例2〕
実施例1における寒天0.3質量%を0.8質量%とし、水56.3質量%を55.8質量%に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のトマト風味の酸性フラワーペーストを得た。
この酸性フラワーペーストのpHは4.5、澱粉含有量は7質量%、油脂含有量は20質量%、寒天の含有量は0.8質量%、糖類含有量は固形分として7.5質量%、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉と非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉の質量比が30:70、澱粉中の糊化膨潤抑制澱粉の含有量は100質量%、トランス酸含有量は1質量%以下であった。
得られた酸性フラワーペーストは、後述の包材剥離性試験、乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験に供した。
【0061】
〔実施例3〕
実施例1における寒天0.3質量%を0.15質量%とし、水56.3質量%を56.45質量%に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のトマト風味の酸性フラワーペーストを得た。
この酸性フラワーペーストのpHは4.5、澱粉含有量は7質量%、油脂含有量は20質量%、寒天の含有量は0.15質量%、糖類含有量は固形分として7.5質量%、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉と非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉の質量比が30:70、澱粉中の糊化膨潤抑制澱粉の含有量は100質量%、トランス酸含有量は1質量%以下であった。
得られた酸性フラワーペーストは、後述の包材剥離性試験、乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験に供した。
【0062】
〔実施例4〕
実施例1において、加熱殺菌後に乳酸を使用してpH3.5となるように調整した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のトマト風味の酸性フラワーペーストを得た。
この酸性フラワーペーストのpHは3.5、澱粉含有量は7質量%、油脂含有量は20質量%、寒天の含有量は0.3質量%、糖類含有量は固形分として7.5質量%、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉と非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉の質量比が30:70、澱粉中の糊化膨潤抑制澱粉の含有量は100質量%、トランス酸含有量は1質量%以下であった。
得られた酸性フラワーペーストは、後述の包材剥離性試験、乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験に供した。
【0063】
〔比較例1〕
実施例1における寒天0.3質量%を2質量%とし、水56.3質量%を54.6質量%に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のトマト風味の酸性フラワーペーストを得た。
この酸性フラワーペーストのpHは4.5、澱粉含有量は7質量%、油脂含有量は20質量%、寒天の含有量は2質量%、糖類含有量は固形分として7.5質量%、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉と非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉の質量比が30:70、澱粉中の糊化膨潤抑制澱粉の含有量は100質量%、トランス酸含有量は1質量%以下であった。
得られた酸性フラワーペーストは、後述の包材剥離性試験、乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験に供した。
【0064】
〔比較例2〕
実施例1における寒天0.3質量%を無添加とし、水56.3質量%を56.6質量%に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のトマト風味の酸性フラワーペーストを得た。
この酸性フラワーペーストのpHは4.5、澱粉含有量は7質量%、油脂含有量は20質量%、寒天の含有量は0質量%、糖類含有量は固形分として7.5質量%、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉と非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉の質量比が30:70、澱粉中の糊化膨潤抑制澱粉の含有量は100質量%、トランス酸含有量は1質量%以下であった。
得られた酸性フラワーペーストは、後述の包材剥離性試験、乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験に供した。
【0065】
〔比較例3〕
実施例1における寒天0.3質量%に代えてゼラチン1質量%を使用し、水56.3質量%を55.6質量%に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のトマト風味の酸性フラワーペーストを得た。
この酸性フラワーペーストのpHは4.5、澱粉含有量は7質量%、油脂含有量は20質量%、寒天の含有量は0質量%、糖類含有量は固形分として7.5質量%、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉と非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉の質量比が30:70、澱粉中の糊化膨潤抑制澱粉の含有量は100質量%、トランス酸含有量は1質量%以下であった。
得られた酸性フラワーペーストは、後述の包材剥離性試験、乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験に供した。
【0066】
〔比較例4〕
実施例1における寒天0.3質量%に代えてジェランガム0.1質量%を使用し、水56.3質量%を56.5質量%に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のトマト風味の酸性フラワーペーストを得た。
この酸性フラワーペーストのpHは4.5、澱粉含有量は7質量%、油脂含有量は20質量%、寒天の含有量は0質量%、糖類含有量は固形分として7.5質量%、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉と非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉の質量比が30:70、澱粉中の糊化膨潤抑制澱粉の含有量は100質量%、トランス酸含有量は1質量%以下であった。
得られた酸性フラワーペーストは、後述の包材剥離性試験、乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験に供した。
【0067】
〔比較例5〕
実施例1における寒天0.3質量%をHMペクチン0.3質量%に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のトマト風味の酸性フラワーペーストを得た。
この酸性フラワーペーストのpHは4.5、澱粉含有量は7質量%、油脂含有量は20質量%、寒天の含有量は0質量%、糖類含有量は固形分として7.5質量%、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉と非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉の質量比が30:70、澱粉中の糊化膨潤抑制澱粉の含有量は100質量%、トランス酸含有量は1質量%以下であった。
得られた酸性フラワーペーストは、後述の包材剥離性試験、乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験に供した。
【0068】
〔比較例6〕
実施例1における寒天を無添加とし、キサンタンガム0.2質量%を0.4質量%に変更し、水56.3質量%を56.4質量%に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のトマト風味の酸性フラワーペーストを得た。
この酸性フラワーペーストのpHは4.5、澱粉含有量は7質量%、油脂含有量は20質量%、寒天の含有量は0質量%、糖類含有量は固形分として7.5質量%、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉と非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉の質量比が30:70、澱粉中の糊化膨潤抑制澱粉の含有量は100質量%、トランス酸含有量は1質量%以下であった。
得られた酸性フラワーペーストは、後述の包材剥離性試験、乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験に供した。
【0069】
〔比較例7〕
実施例1における寒天を無添加とし、ローカストビーンガム0.2質量%を0.4質量%に変更し、水56.3質量%を56.4質量%に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のトマト風味の酸性フラワーペーストを得た。
この酸性フラワーペーストのpHは4.5、澱粉含有量は7質量%、油脂含有量は20質量%、寒天の含有量は0質量%、糖類含有量は固形分として7.5質量%、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉と非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉の質量比が30:70、澱粉中の糊化膨潤抑制澱粉の含有量は100質量%、トランス酸含有量は1質量%以下であった。
得られた酸性フラワーペーストは、後述の包材剥離性試験、乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験に供した。
【0070】
〔比較例8〕
実施例1における寒天を無添加とし、タンパク質濃縮ホエイパウダー3質量%を6質量%に変更し、水56.3質量%を53.6質量%に変更した以外は、実施例1と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のトマト風味の酸性フラワーペーストを得た。
この酸性フラワーペーストのpHは4.5、澱粉含有量は7質量%、油脂含有量は20質量%、寒天の含有量は0質量%、糖類含有量は固形分として7.5質量%、ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉と非ワキシースターチ由来の糊化膨潤抑制澱粉の質量比が30:70、澱粉中の糊化膨潤抑制澱粉の含有量は100質量%、トランス酸含有量は1質量%以下であった。
得られた酸性フラワーペーストは、後述の包材剥離性試験、乳化安定性試験、及び、後述のベーカリー試験に供した。
【0071】
<包材剥離性試験>
上記実施例1〜7及び比較例1〜8で得られた酸性フラワーペーストを、5℃で24時間冷蔵保存した後、包材剥離性を以下の評価基準に従って、評価を行ない、その結果を表1に記した。
・包材剥離性評価基準
◎:包材への付着が全く見られなかった。
○:包材への付着が全く見られなかったが、やや艶がなかった。
△:わずかに包材への付着が見られた。
×:はっきりした包材への付着が見られた。
【0072】
【表1】
【0073】
<乳化安定性試験>
上記実施例1〜7及び比較例1〜8で得られた酸性フラワーペーストを、−20℃で3週間冷凍保存した後、10℃の恒温器で一晩解凍し、乳化状態を以下の評価基準に従って、評価を行ない、その結果を表2に記した。
・乳化安定性評価基準
◎:水分分離、油分分離とも全く見られなかった。
○:水分分離、油分分離とも見られなかったがやや艶がなかった。
△:若干の水分分離が見られた。
×:若干の油分分離が見られた。
××:はっきりした水分分離が見られた。
×××:はっきりした油分分離が見られた。
【0074】
【表2】
【0075】
<ベーカリー試験>
実施例1〜7及び比較例1〜8で得られたシート状の酸性フラワーペーストを使用し、下記配合・製法により、フラワーペースト折り込みデニッシュをそれぞれ製造した。
得られた酸性フラワーペースト折り込みデニッシュについて、以下の評価基準に従って、ロールイン時の作業性、及び、酸性フラワーペースト部分の口溶けの評価をそれぞれ行なった。それらの結果を表3に記した。
【0076】
(デニッシュ生地の配合)
強力粉50質量部、薄力粉50質量部、脱脂粉乳3質量部、食塩1.5質量部、全卵(正味)8質量部、イースト3質量部、イーストフード0.1質量部、練込用マーガリン10質量部、冷水48質量部、チップ状マーガリン70質量部。
【0077】
(デニッシュ生地の製法)
強力粉、薄力粉、脱脂粉乳、イーストフード、練込用マーガリンをミキサーボールに入れ、たて型ミキサーを用い、低速で各材料が均一になるまで3分混合した後、冷凍しておいたチップ状マーガリンを入れ、さらに低速で1分混合した。さらに、撹拌しながらイーストと食塩を溶いた冷水、全卵を加え、低速で2分混合し、捏ね上げ温度を20℃とした。次いで、20分フロアタイムを取った後、−20℃の冷凍庫にて60分生地を冷却し、リバースシーターにて3つ折りを3回行ない、27層のデニッシュ生地を得た。
【0078】
(酸性フラワーペースト折り込みデニッシュの製法)
上記デニッシュ生地を厚さ6mmに圧延し、デニッシュ生地100質量部に対し、シート状の酸性フラワーペースト50質量部を積置後、包み込み、リバースシーターで3つ折り2回のロールイン操作を行ない、243層(酸性フラワーペースト層は9層)の積層生地である複合生地を得た。この複合生地を2℃で4時間冷却した後、厚さ10mmまで圧延し、幅30mm、長さ150mmにカットして中央に1本切り込みを入れ、端部を3回くぐらせた蒟蒻成型とし、これを天板に並べ、温度34℃、相対湿度80%のホイロで50分醗酵させた後、上火200℃、下火180℃に設定した固定窯で14分焼成した。
【0079】
・ロールイン時作業性(伸展性と生地との密着性)評価基準
◎ :適度な硬さであり、伸展性も良好であり、切れも見られない。
○+:やや硬いが、伸展性は良好である。
○−:やや軟らかいが、伸展性は良好である。
△+:硬すぎて伸展性が悪く、やや切れが見られる。
△−:べたつきがあり、やや生地の滑りが見られる。
×+:硬すぎて伸展性が極めて悪く、切れが多い。
×−:べたつきが激しく、生地からのはみ出し、生地の滑りが見られる。
・口溶け評価基準
◎:極めて良好な口溶けである。
○:良好な口溶けである。
△:ややワキシーであるか、又は、ややべとつきがあり、やや不良である。
×:ワキシーな食感であるか、又は、べとつきが激しく、不良である。
【0080】
【表3】