(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リガンドが、ピコリン酸、イソニコチン酸、ニコチン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチルアミド、アニリンスルホン酸、アミノ安息香酸、ピペコリン酸、2−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン、2−ヒドロキシキノリン、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の化学−機械研磨組成物。
前記リガンドが、ピコリン酸、イソニコチン酸、ニコチン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチルアミド、アニリンスルホン酸、アミノ安息香酸、ピペコリン酸、2−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン、2−ヒドロキシキノリン、またはこれらの組み合わせである、請求項13に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、(a)セリア、ジルコニア、シリカ、アルミナ、または、これらの組み合わせを含む研磨粒子、(b)ルイス酸である金属イオン、(c)芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ−置換N−複素環であるリガンド、および、(d)水性担体を含む、化学−機械研磨組成物であって、当該化学−機械研磨組成物のpHが、1〜4の範囲内にある化学−機械研磨組成物を提供する。
【0011】
研磨粒子は、好適な濃度であれば、いずれの濃度でも研磨組成物に取り込むことができる。望ましくは、研磨組成物は、研磨粒子を低含有量で(すなわち、低固形分含量で)含む。低固形分含量とすることで、研磨をしている基板の望ましい有効除去速度を実現しながらも、高濃度の(例えば、2重量%を超える)研削材を用いて得た場合に基板で認められた不都合や、その他の構成成分に対する過剰な除去速度を最小限にできる。例えば、研磨粒子は、0.01重量%以上、例えば、0.02重量%以上、0.025重量%以上、0.03重量%以上、0.04重量%以上、0.05重量%以上、0.075重量%以上、0.1重量%以上、0.25重量%以上、0.5重量%以上、または、0.75重量%以上の濃度で研磨組成物に取り込むことができる。あるいは、または、これに加えて、研磨粒子は、2重量%以下、例えば、1.75重量%以下、1.5重量%以下、1.25重量%以下、または、1重量%以下の濃度で研磨組成物に取り込むことができる。好ましくは、研磨粒子は、0.01重量%〜1重量%、または、0.01重量%〜0.05重量%の濃度で研磨組成物に取り込まれる。さらに好ましくは、研磨粒子は、0.05重量%の濃度で研磨組成物に取り込まれる。
【0012】
研磨粒子は、好適な研磨粒子であれば、どのようなものでも使用できる。好ましくは、このような研磨粒子としては、セリア(例えば、酸化セリウム)、ジルコニア(例えば、酸化ジルコニウム)、シリカ(例えば、二酸化ケイ素)、アルミナの酸化物(例えば、酸化アルミニウム)、チタニア(例えば、二酸化チタニウム)、ゲルマニア(例えば、二酸化ゲルマニウム、酸化ゲルマニウム)、マグネシア(例えば、酸化マグネシウム)からなる酸化物研磨粒子、これらの共生成物、または、これらの組み合わせなどがある。さらに好ましくは、研磨粒子は、セリア、ジルコニア、シリカ、アルミナ、または、これらの組み合わせを含み、これらから実質的になり、または、これらからなる。それ以上に好ましくは、研磨粒子は、セリアを含む。最も好ましくは、研磨粒子は、セリアからなり、そして、化学−機械研磨組成物は、その他の研磨粒子を含まない。
【0013】
金属酸化物粒子は、好適なものであれば、どのようなタイプの金属酸化物粒子でも使用でき、例えば、フュームド金属酸化物粒子、沈降金属酸化物粒子、または、縮重合金属酸化物粒子(例えば、コロイド金属酸化物粒子)などが使用できる。好ましくは、金属酸化物粒子、特に、セリア粒子とは、湿式粒子(例えば、縮重合粒子または沈降粒子)であって、焼成粒子ではない。
【0014】
金属酸化物粒子、特に、セリア粒子、ジルコニア粒子、シリカ粒子、および、アルミナ粒子は、好適なものであれば、どのような粒径の粒子でもよい。粒子の粒径とは、当該粒子を包囲する最も小さな球体の直径である。金属酸化物粒子には、10nm以上の平均粒径のもの、例えば、15nm以上、20nm以上、25nm以上、35nm以上、45nm以上、50nm以上、55nm以上、60nm以上、75nm以上、または、100nm以上の平均粒径のものがある。あるいは、または、これに加えて、金属酸化物粒子には、250nm以下の平均粒径のもの、例えば、225nm以下、200nm以下、175nm以下、160nm以下、150nm以下、125nm以下、115nm以下、100nm以下、90nm以下、または、80nm以下の平均粒径のものがある。例えば、セリア粒子、ジルコニア粒子、シリカ粒子、および、アルミナ粒子では、25nm〜250nmの平均粒径のもの、例えば、35nm〜200nm、45nm〜150nm、50nm〜125nm、55nm〜120nm、または、60nm〜115nmの平均粒径のものがある。
【0015】
研磨粒子を、望ましくは、研磨組成物に懸濁させ、さらに具体的には、研磨組成物の水性担体に懸濁させる。研磨粒子を研磨組成物に懸濁すると、研磨粒子は、好ましくは、コロイド状で安定となる。「コロイド」とは、水性担体に研磨粒子を懸濁させることを指す用語である。コロイド安定性とは、長期間にわたって、かような懸濁が維持されることを指す。本発明に照らすと、研磨粒子を100mlのメスシリンダーにとり、そして、攪拌をせずに、2時間、静置した場合に、メスシリンダーの底部側の50mlに含まれる粒子の濃度([B]、単位はg/ml)とメスシリンダーの頂部側の50mlに含まれる粒子の濃度([T]、単位はg/ml)との差異を、研削材組成物に含まれる粒子の当初の濃度([C]、単位はg/ml)で割って得た数値が、0.5未満または0.5と等しければ(すなわち、{[B]−[T]}/[C]≦0.5であれば)、その研磨粒子は、コロイド状に安定であると考えられる。[B]−[T]/[C]の数値は、望ましくは、0.3未満または0.3と等しく、そして、好ましくは、0.1未満または0.1と等しい。
【0016】
研磨組成物は、ルイス酸である金属イオンを含む。特に、研磨組成物は、ルイス酸である一つ以上の金属イオンを含む。「ルイス酸である金属イオン」とは、電子を受け入れて、還元状態に移行する能力を金属イオンが有している、ことを意味するものである。換言すれば、ルイス酸である金属イオンとは、電子親和力を有しているものとも言える。例えば、ルイス酸である金属イオンとしては、Fe
3+、Al
3+、Cu
2+、Zn
2+、または、これらの組み合わせがある。ルイス酸である金属イオンとしては、Fe
3+、Al
3+、または、これらの組み合わせが好ましい。
【0017】
ルイス酸である金属イオンは、好適なものであれば、どのような濃度で研磨組成物に含まれていてもよく、また、好適なものであれば、どのような形状のものでもよい。例えば、ルイス酸である金属イオン(すなわち、ルイス酸であるすべての金属イオンを合計したもの)は、0.05mM以上の濃度、例えば、0.075mM以上、0.1mM以上、0.15mM以上、0.2mM以上、0.3mM以上、0.4mM以上、0.5mM以上、0.75mM以上、1mM以上、2mM以上、3mM以上、4mM以上、または、5mM以上の濃度で研磨組成物に含有することができる。あるいは、または、これに加えて、ルイス酸である金属イオン(すなわち、ルイス酸であるすべての金属イオンを合計したもの)は、50mM以下の濃度、例えば、45mM以下、40mM以下、35mM以下、30mM以下、25mM以下、20mM以下、15mM以下、10mM以下、5mM以下、4mM以下、3mM以下、または、2.5mM以下の濃度で研磨組成物に含有することができる。好ましくは、ルイス酸である金属イオン(すなわち、ルイス酸であるすべての金属イオンを合計したもの)は、0.05mM〜50mMの濃度、例えば、1mM〜45mM、2mM〜35mM、3mM〜25mM、4mM〜15mM、または、5mM〜10mMの濃度で研磨組成物に含有される。
【0018】
研磨組成物は、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンドをさらに含む。特に、研磨組成物は、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環である一つ以上のリガンドを含む。リガンドは、除去対象となっている基板層の除去速度を高めるものであれば、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環のいずれのものでもよい。リガンドを、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、または、芳香族酸アミドとする場合には、好ましくは、リガンドの酸官能基は、リガンドの芳香族環に直接に結合される。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、酸官能基が、芳香族環に直接に結合される場合には、リガンドの活性レベルは増大し、それにより、研磨を受ける基板の除去速度も増すものと考えられる。
【0019】
例えば、リガンドには、ピコリン酸(例えば、2−ピコリン酸)、イソニコチン酸、ニコチン酸、ピリジンジカルボン酸(例えば、2,6−ピリジンジカルボン酸)、ピリジンスルホン酸(例えば、2−ピリジンスルホン酸)、p−トルエンスルホン酸、サリチルアミド、アニリンスルホン酸、メチルグリシン、フェニルグリシン(例えば、2−フェニルグリシン)、ジメチルグリシン(例えば、N,N−ジメチルグリシンまたは2−ジメチルグリシン)、アミノ安息香酸(例えば、4−アミノ安息香酸)、ピペコリン酸、プロリン、2−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン、2−ヒドロキシキノリン、または、これらの組み合わせなどがある。好ましくは、リガンドは、ピコリン酸である。当然のことながら、本発明における使用に適したリガンドであれば、本明細書に開示した実施例に限定されない。例えば、本明細書に開示したヒドロキシ置換N−複素環の結合定数に類似する結合定数を示す他の複素環化合物(すなわち、2−ヒドロキシキノリン、8−ヒドロキシキノリン、および、2−ヒドロキシピリジンに類似する結合定数を示す複素環化合物)も、本発明における使用に適している。
【0020】
芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンドは、好適なものであれば、どのような濃度で研磨組成物に含まれていてもよい。例えば、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンド(すなわち、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるすべてのリガンドを合計したもの)は、0.1mM以上の濃度、例えば、0.5mM以上、1mM以上、1.5mM以上、2mM以上、2.5mM以上、3mM以上、4mM以上、5mM以上、7.5mM以上、または、10mM以上の濃度で研磨組成物に含有することができる。あるいは、または、これに加えて、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンド(すなわち、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるすべてのリガンドを合計したもの)は、100mM以下の濃度、例えば、90mM以下、80mM以下、75mM以下、65mM以下、50mM以下、40mM以下、35mM以下、25mM以下、20mM以下、または、15mM以下の濃度で研磨組成物に含有することができる。好ましくは、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンド(すなわち、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるすべてのリガンドを合計したもの)は、0.1mM〜100mMの濃度、例えば、0.5mM〜75mM、1mM〜50mM、5mM〜25mM、10mM〜20mM、または、10mM〜15mMの濃度で研磨組成物に含有される。
【0021】
望ましくは、ルイス酸である金属イオン(すなわち、ルイス酸であるすべての金属イオンを合計したもの)と芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンド(すなわち、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるすべてのリガンドを合計したもの)とのモル濃度比は、1:2と1:0.5との間にある。換言すれば、ルイス酸である金属イオン(すなわち、ルイス酸であるすべての金属イオンを合計したもの)と芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンド(すなわち、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるすべてのリガンドを合計したもの)とのモル濃度比は、1:2、1:1.5、1:1、または、1:0.5とすることができる。好ましくは、ルイス酸である金属イオン(すなわち、ルイス酸であるすべての金属イオンを合計したもの)と芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンド(すなわち、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるすべてのリガンドを合計したもの)とのモル濃度比は、1:2である。
【0022】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、ルイス酸である金属イオンと芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンドとは、CMPプロセスが進行している間に、高分子フィルムの表面に相互作用し、そして、高分子フィルムの除去速度を高める酸化プロセスを開始する弱い金属錯体を形成するものと考えられる。具体的には、金属イオン、リガンド、および、高分子フィルムの間での相互作用は、次のように表されるものと考えられる。
【化1】
【0023】
上記の説明図において、M
(n+1)+は、電子を受け取る以前の金属イオンを表しており、また、M
n+は、電子を受け取った後に還元状態にある金属イオンを表している。ポリマー−金属複合体は、共有結合、配位結合、錯体結合、イオン結合、および、p結合の一つ以上を含むことができる。上記した反応スキームにしたがって形成された酸化されたポリマー−金属複合体は、化学−機械研磨による除去が非常に容易であり、固形含量が小さくとも、除去速度を高めることに成功している。
【0024】
上記の説明図から明らかなように、金属錯体それ自体は、高分子フィルムの研磨を行っている間は酸化剤として機能するものと考えられる。したがって、研磨組成物にさらに別の酸化剤(例えば、過酸化物タイプの酸化剤)を任意に含ませることはできるが、望ましくは、本発明では、研磨組成物に他の酸化剤(例えば、過酸化物タイプの酸化剤)を必要とすることが無いようにしたい。過酸化物タイプの酸化剤とは、少なくとも一つのペルオキシ(−O−O−)基を有する酸化剤である。例えば、過酸化物タイプの酸化剤として、有機過酸化物、無機過酸化物、または、これらの組み合わせなどがある。少なくとも一つのペルオキシ基を含む化合物の例として、過酸化水素とその付加体、例えば、過酸化尿素、そして、過炭酸塩(例えば、過炭酸ナトリウム)、有機過酸化物、例えば、過酸化ベンゾイル、過酢酸、過ホウ酸、それに、ジ−tert−ブチルペルオキシド、一過硫酸塩(SO
52-)、二過硫酸塩(S
2O
82-)、および、過酸化ナトリウムなどがあるが、これらに限定されない。好ましくは、化学−機械研磨組成物は、過酸化物タイプの酸化剤を含まない。
【0025】
研磨組成物は、水性担体を含む。水性担体は、水(例えば、脱イオン水)を含んでおり、また、一種以上の水−混和性の有機溶媒を含むこともできる。使用可能な有機溶媒の例として、アルコール類、例えば、プロペニルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、1−プロパノール、メタノール、1−ヘキサノールなど、アルデヒド類、例えば、アセチルアルデヒドなど、ケトン類、アセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトンなど、エステル類、例えば、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、乳酸エチルなど、スルホキシドを含むエーテル類、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグリムなど、アミド類、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドンなど、多価アルコール類およびその誘導体、例えば、エチレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなど、および、窒素含有有機化合物、例えば、アセトニトリル、アミルアミン、イソプロピルアミン、イミダゾール、ジメチルアミンなどがある。好ましくは、水性担体は、水のみとし、すなわち、有機溶媒が存在しないようにする。
【0026】
研磨組成物は、好適なpHであれば、どのようなpHを示していてもよい。通常、研磨組成物は、1またはそれを超えるpHを示す。通常、研磨組成物のpHは、4以下である。好ましくは、pHは、1〜4の範囲であって、例えば、1.5のpH、2のpH、2.5のpH、3のpH、3.5のpH、または、これらのpH値のいずれか二つによって定義された範囲のpHとする。
【0027】
好ましくは、リガンドが、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、または、ヒドロキシ置換N−複素環である場合には、研磨組成物のpHは、2〜3の範囲にある(例えば、研磨組成物のpHは2.3であり、または、研磨組成物のpHは2.5である)。好ましくは、リガンドが、アミノ酸である場合には、研磨組成物のpHは、2〜3の範囲にあり(例えば、研磨組成物のpHは、2.3、2.5、2.6、または、2.7であり)、または、2.5〜3.5の範囲にある。さらに好ましくは、リガンドが、アミノ酸である場合には、研磨組成物のpHは、3〜3.5の範囲にある。
【0028】
研磨組成物のpHは、好適な手段であれば、どのような手段を用いて到達および/または維持してもよい。具体的には、研磨組成物は、pH調整剤、pH緩衝剤、または、これらの組み合わせをさらに含むことができる。pH調整剤は、好適なものであれば、どのようなpH調整化合物でもよい。例えば、pH調整剤を、酸とすることができる。この酸は、好適なものであれば、どのような酸でもよい。通常、酸は、酢酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、および、これらの組み合わせである。好ましくは、酸は、硝酸である。あるいは、pH調整剤を、塩基とすることができる。この塩基は、好適なものであれば、どのような塩基でもよい。通常、塩基は、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、および、これらの組み合わせである。好ましくは、塩基は、水酸化アンモニウムである。pH緩衝剤は、好適なものであれば、どのような緩衝剤でもよい。例えば、pH緩衝剤を、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、アンモニウム塩などとすることができる。研磨組成物は、本明細書に記載したpH範囲内に研磨組成物のpHを到達および/または維持する上で好適な量であれば、どのような量のpH調整剤および/またはpH緩衝剤でも含むことができる。
【0029】
研磨組成物は、一つ以上の防錆剤(すなわち、造膜剤)をさらに任意に含むことができる。この防錆剤は、基板のいずれの成分に対して好適なものであれば、どのような防錆剤であってもよい。好ましくは、防錆剤は、銅−防錆剤である。本発明の目的に関して、防錆剤は、研磨される表面の少なくとも一部に保護層(すなわち、崩壊阻止層)の形成を促す化合物、または、かような化合物の混合物である。好適な防錆剤として、リジン、および、アゾール化合物、例えば、ベンゾトリアゾール(BTA)、メチル−ベンゾトリアゾール(m−BTA)、および、1,2,4−トリアゾール(TAZ)などがあるが、これらに限定されない。好ましくは、防錆剤は、BTAまたはリジンである。
【0030】
研磨組成物は、好適な量であれば、いかなる量の防錆剤でも含むことができる。一般的に、研磨組成物は、0.005重量%〜1重量%(例えば、0.01〜0.5重量%、または、0.02〜0.2重量%)の防錆剤を含む。
【0031】
研磨組成物は、一つ以上のその他の添加物をさらに任意に含む。研磨組成物は、界面活性剤、および/または、レオロジー調整剤、例えば、増粘剤ならびに凝固剤(例えば、高分子レオロジー調整剤、例えば、ウレタンポリマー)、分散剤、殺生物剤(例えば、KATHON(商標)LX)などを含むことができる。好ましい界面活性剤として、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、アニオン性高分子電解質、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素化界面活性剤、これらの混合物などがある。
【0032】
研磨組成物は、大半が当業者に周知ではある好適な方法であれば、いずれの方法によっても調製することができる。研磨組成物は、バッチプロセス、または、連続プロセスのいずれでも調製することができる。一般的に、研磨組成物は、本明細書に記載した成分を、順序を問わずに、組み合わせることによって調製することができる。本明細書で用いる「成分」の用語は、個々の成分(例えば、研磨粒子、ルイス酸である金属イオン、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、または、アミノ酸であるリガンドなど)ならびに、成分(例えば、研磨粒子、ルイス酸である金属イオン、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、または、アミノ酸であるリガンドなど)の組み合わせ、も含めた意味で使用されている。
【0033】
例えば、ルイス酸である金属イオン、および、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンドは、所望の濃度で、水中で混合することができる。次いで、pHを、(必要に応じて)1〜4の範囲内に調整することができ、そして、研磨組成物を形成するために、得られた混合物に対して、所望の濃度になるように研磨粒子(例えば、セリア、ジルコニア、シリカ、アルミナ、または、これらの組み合わせ)を加えることができる。研磨組成物を、使用前に調製することができ、例えば、使用直前(例えば、使用前の1分以内、または、使用前の1時間以内、または、使用前の7日以内)に、一つ以上の成分を研磨組成物に加えて調製することができる。研磨組成物は、研磨作業を行っている間に基板の表面で、これらの成分を混合して調製することも可能である。
【0034】
本発明の研磨組成物は、使用前に適量の水性担体、特に、水で希釈することが意図された濃縮物として提供することもできる。このような実施態様において、濃縮した研磨組成物は、研磨粒子、ルイス酸である金属イオン、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンド、および、水を含むことができ、研磨組成物のこれら成分は、適量の水で濃縮物が希釈され次第に、各成分に関して前述した適切な範囲内の量に収まるような量で含まれる。さらに、当業者であれば理解できる事項であるが、最終産物である研磨組成物に、ごく少量の水を含ませて、濃縮物に対して、その他の成分を、少なくとも部分的に、あるいは、完全に溶解させることもできる。
【0035】
研磨組成物は、使用に先駆けて余裕をもって調製することは勿論、使用の直前に調製することも可能ではあるが、研磨組成物は、使用場所において、または、使用場所の近くで、研磨組成物の成分を混合することによって製造することも可能である。本明細書で使用する「使用場所」の用語は、研磨組成物を、基板表面(例えば、研磨パッド、または、基板表面それ自体)に対して塗布する場所を指す。研磨組成物が、使用場所で混合して製造される場合、研磨組成物を構成する成分は、二つ以上の貯留槽で別々に貯蔵される。
【0036】
貯留槽に収容された成分を混合して、使用場所において、または、使用場所の近くで、研磨組成物を製造するために、貯留槽は、通常は、各貯留槽から研磨組成物の使用場所(例えば、プラテン、研磨パッド、または、基板表面)にまで至る一つ以上の流動経路を具備している。「流動経路」という用語は、各貯蔵容器から当該貯蔵容器に貯蔵された成分の使用場所にまで至る移動の経路を指す。一つ以上の流動経路が、使用場所にまで直接に案内することができ、または、二つ以上の流動経路が使用される状況下では、いずれの箇所であっても、二つ以上の流動経路を、使用場所にまで案内する単一の流動経路に合流させることができる。さらに、一つ以上の流動経路(例えば、各々の流動経路、または、合流した流動経路)のいずれもが、成分を、その使用場所に送る以前に、まずは、一つ以上のその他の機器(例えば、ポンプ装置、計測装置、混合装置など)に案内することができる。
【0037】
研磨組成物の成分を、別々に、使用場所へと送る(例えば、研磨プロセスが行われている間に成分が混合され次第に、成分を基板表面へ送る)ことが可能であり、あるいは、成分が使用場所に送られる直前に成分を混合することが可能である。成分が使用場所に到達する10秒未満以内、好ましくは、成分が使用場所に到達する5秒未満以内、さらに好ましくは、成分が使用場所に到達する1秒未満以内、あるいは、使用場所に成分が送られるのと同時(例えば、成分が、ディスペンサーで混合される場合)であっても、成分が「使用場所に送られる直前に」成分は混合される。成分が使用場所から5m以内、例えば、使用場所から1m以内、または、使用場所からほんの10cm以内(例えば、使用場所から1cm以内)で混合される場合でも、成分が「使用場所に送られる直前に」成分は混合されることとなる。
【0038】
成分が使用場所に到達する以前に、研磨組成物の二つ以上の成分を混合する場合、それら成分は、混合装置を用いずに、流動経路で混合されて、そのまま使用場所へと送られる。あるいは、二つ以上の成分の混合を促すために、一つ以上の流動経路を混合装置へと案内することもできる。好適なものであれば、いずれの混合装置でも使用できる。例えば、二つ以上の成分が流し込まれるノズルまたはジェット(例えば、高圧ノズルまたはジェット)を混合装置とすることができる。あるいは、研磨組成物の二つ以上の成分を混合機へと案内する一つ以上の取込口と、混合した成分を排出して直接に使用場所へと案内するか、または、装置のその他の要素(例えば、一つ以上の流動経路)を介して使用場所へと案内する少なくとも一つの排出口を含む容器型混合装置を混合装置とすることができる。さらに、それら混合装置は、二つ以上のチャンバーを含むことができ、各々のチャンバーは、少なくとも一つの取込口と少なくとも一つの排出口とを有しており、各チャンバーにおいて、二つ以上の成分が混合される。容器型混合装置を使用する場合にあっては、混合装置は、好ましくは、成分の混合をさらに円滑にするための混合機構を含む。混合機構とは、当該技術分野において一般的に公知のものであって、撹拌機、混合器、撹拌器、パドル翼邪魔板、ガススパージャーシステム、振動機などを含む。
【0039】
また、本発明は、本明細書に記載の研磨組成物を用いて基板を研磨する方法も提供する。基板を研磨する当該方法は、(i)基板を準備し、(ii)研磨パッドを準備し、(iii)前述した化学−機械研磨組成物を準備し、(iv)当該基板を、当該研磨パッドおよび当該化学−機械研磨組成物と接触せしめ、および、(v)当該基板を研磨するために、当該基板の少なくとも一部を摩耗させるために、当該研磨パッドおよび当該化学−機械研磨組成物を、当該基板に対して移動させる、ことを含む。
【0040】
具体的には、本発明は、基板を化学的−機械的に研磨する方法であって、(i)基板を準備し、(ii)研磨パッドを準備し、(iii)化学−機械研磨組成物、すなわち、(a)セリア、ジルコニア、シリカ、アルミナ、または、これらの組み合わせを含む研磨粒子、(b)ルイス酸である金属イオン、(c)芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ−置換N−複素環であるリガンド、および、(d)水性担体を含み、当該化学−機械研磨組成物のpHが、1〜4の範囲内にある、化学−機械研磨組成物を準備し、(iv)当該基板を、当該研磨パッドおよび当該化学−機械研磨組成物と接触せしめ、および、(v)当該基板を研磨するために、当該基板の少なくとも一部を摩耗させるために、当該研磨パッドおよび当該化学−機械研磨組成物を、当該基板に対して移動させる、ことを含む基板を化学的−機械的に研磨する方法も提供する。
【0041】
本発明の研磨組成物は、どのような基板の研磨においても有用である。特に、本発明の研磨組成物は、高分子フィルムを含む基板の研磨に適している。好適な基板として、半導体、層間誘電(ILD)層、微小電気機械システム(MEMS)、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)やNANDメモリなどの記憶素子、光波長板、および、反射防止膜(ARC)を含む基板などがある。好適な高分子フィルムとして、例えば、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、スピン−オンカーボン(SoC)ポリマー、ポリアリーレンおよびポリアリーレンエーテル(Dow Chemical社のSiLK(商標)、Allied Signal社のFLARE(商標)、Schumacher社のVELOX(商標)など)、ポリベンゾキサゾール(PBO)、ポリベンゾシクロブテン、ジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテン(DVS−BCB)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリシロキサン、ポリナフチレンエーテル、ポリキノリン、パラリン(Parylene AF4、脂肪族テトラフッ素化ポリ−p−キシリレンなど)などのポリマー、これらのコポリマー、および、これらの組み合わせを含むことができる。
【0042】
基板は、高分子フィルム層と当該高分子フィルム層とは異なる一つ以上の別の層を含むことができる。この一つ以上の別の層は、一般的には、酸化物(例えば、二酸化ケイ素(SiO
2))、テトラエトキシシラン(TEOS)、窒化ケイ素、銅、タンタル、タングステン、チタン、白金、ルテニウム、イリジウム、アルミニウム、ニッケル、または、これらの組み合わせ、あるいは、その他の高−または低−κ誘電材料を含む。望ましくは、本発明の研磨組成物は、高分子フィルム層については有効な除去速度を示す一方で、単一または複数の二酸化ケイ素層、TEOS層、および、窒化ケイ素層のような基板のその他の層の除去速度を最小限に止める。特に、高分子フィルム層が、層間誘電体(ILD)に蒸着されている場合には、本発明の研磨組成物は、望ましくは、高分子フィルム層を研磨する一方で、酸化物層、TEOS層、または、窒化ケイ素層の研磨を最小限に止める(または、研磨をしない)。
【0043】
本発明に基づいて、本明細書に記載の研磨組成物を用いて、適切な技術によって、基板を平坦化することができる。本発明の研磨方法は、とりわけ、化学−機械研磨(CMP)装置との併用に適している。通常、このCMP装置は、使用時に作動し、そして、軌道運動、直線運動、または、円運動によって速度を得るプラテン、このプラテンと連絡し、そして、作動時に、このプラテンによって駆動をする研磨パッド、および、この研磨パッドの表面に対して接触および移動することによって、研磨される基板を保持する支持手段を含む。基板の研磨は、本発明の研磨組成物、一般的には、研磨パッドと接触状態にある基板を用いて行われるものであって、次いで、基板の表面の少なくとも一部分、例えば、高分子フィルム、または、本明細書に記載の一つ以上の基板材料が、基板を研磨するための研磨組成物、通常は、研磨パッドを用いて研削される。好適な研磨条件であれば、どのような条件であっても、本発明にしたがって基板を研磨するために利用することができる。望ましくは、本発明は、侵攻的な研磨条件を用いずとも、高度なポリマー除去速度の実現を可能にする。好ましくは、押圧力、すなわち、研磨組成物を染み込ませた研磨パッドが基板に接触して作用する力を6.89kPa(1psi)〜41.37kPa(6psi)とし、プラテンの速度を15rpm〜120rpmとし、ヘッド速度を10rpm〜115rpmとし、そして、研磨組成物の流量を100ml/分〜400ml/分とすることができる。
【0044】
化学−機械研磨組成物と共に好適な(例えば、表面を研磨する)研磨パッドを用いて、基板の平坦化または研磨を行うことができる。好適な研磨パッドとして、例えば、織物の研磨パッドまたは不織の研磨パッドがある。加えて、好適な研磨パッドは、様々な密度、硬度、厚み、圧縮率、押圧時の復元性、および、圧縮係数を備えた好適なポリマーを含むことができる。好適なポリマーとして、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、これらの共生成物、および、これらの混合物などがある。
【0045】
望ましくは、CMP装置は、その実体が概ね当該技術分野において公知であるin situ研磨終点検出システムをさらに含む。加工対象物の表面から反射した光線またはその他の放射物を解析することによって、研磨プロセスを検査および監視する技術は、当該技術分野において公知である。そのような方法は、例えば、米国特許第5,196,353号、米国特許第5,433,651号、米国特許第5,609,511号、米国特許第5,643,046号、米国特許第5,658,183号、米国特許第5,730,642号、米国特許第5,838,447号、米国特許第5,872,633号、米国特許第5,893,796号、米国特許第5,949,927号、および、米国特許第5,964,643号に開示されている。望ましくは、加工対象物に関する研磨プロセスの進捗具合の検査または監視は、研磨終点の決定、すなわち、特定の加工対象物に関する研磨プロセスを終了する時点の決定を可能にする。
【実施例】
【0046】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するものでしかなく、当然のことながら、本発明の範囲に対していかなる限定も加えるものではない。
【0047】
(実施例1)
この実施例は、高分子フィルムの除去速度に関する、ルイス酸である金属イオンと、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンドとの組み合わせの有効性を実証する。
【0048】
スピン−オンカーボン(SoC)ポリマーウエハーを、従来のCMP装置を用いて、異なる研磨組成物で研磨をした。これらのウエハーを、7個の研磨組成物(研磨組成物1A〜1G)で研磨した。各研磨組成物には、以下の表1に示したように、金属イオンのみ、リガンドのみ、または、金属イオンとリガンドの双方が含まれている。
【0049】
研磨組成物1A〜1Gの各々には、水性担体に0.05重量%のセリア粒子が含まれており、また、必要に応じて、水酸化アンモニウムでpH2.3に調整がされた。研磨組成物1Aと1Bは、5mM Al
3+を含んでおり、研磨組成物1Cと1Dは、5mM Fe
3+を含んでおり、そして、研磨組成物1Eと1Fは、5mM Cu
2+を含んでいた。研磨組成物1B、1D、1Fおよび1Gは、10mMピコリン酸を含んでいた。
【0050】
基板を、EPIC(商標)D200パッド(Cabot Microelectronics社、Aurora、イリノイ州)を装着したLogitech卓上研磨機で研磨した。研磨パラメーターは次の通りである。13.79 kPa (2 psi)の押圧力、47rpmのプラテン速度、50rpmのヘッド速度、および、120ml/分の研磨組成物流量。研磨を行った後に、ポリマーの除去速度を、オングストローム/分の単位で決定した。その結果が、表1にまとめられている。
【表1】
【0051】
これらの結果は、ルイス酸である金属イオン(例えば、Al
3+、Fe
3+、または、Cu
2+)と、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンド(例えば、ピコリン酸)との組み合わせが、高分子フィルム(例えば、スピン−オンカーボンポリマー)を含む基板の研磨に関して特に効果的である、ことを実証している。特に、Al
3+とピコリン酸とを含む研磨組成物1Bは、1100オングストローム/分を超えるポリマー除去速度を示しており、これは、リガンドを含まずにAl
3+を含んでいた研磨組成物1Aのポリマー除去速度の少なくとも11倍の数値である。同様に、Fe
3+とピコリン酸とを含む研磨組成物1Dは、1200オングストローム/分のポリマー除去速度を示しており、これは、リガンドを含まずにFe
3+を含んでいた研磨組成物1Cのポリマー除去速度の少なくとも17倍の数値である。加えて、Cu
2+とピコリン酸とを含む研磨組成物1Fは、260オングストローム/分のポリマー除去速度を示しており、これは、リガンドを含まずにCu
2+を含んでいた研磨組成物1Eのポリマー除去速度の少なくとも6倍の数値である。本発明の研磨組成物1B、1Dおよび1Fの各々は、ルイス酸である金属イオンを含まずにピコリン酸を含んでおり、かつ、ポリマーの除去が認められなかった研磨組成物1Gよりも遥かに効果的であった。
【0052】
(実施例2)
この実施例は、ルイス酸である金属イオンと、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンドとの組み合わせが、高分子フィルムを効果的に除去する一方で、テトラエトキシシラン(TEOS)の除去を最小限にする(または、全く除去しない)ことを実証している。
【0053】
スピン−オンカーボン(SoC)ポリマーウエハーとテトラエトキシシラン(TEOS)ウエハーとを、従来のCMP装置を用いて、異なる研磨組成物で研磨をした。これらのウエハーを、表2に記載した9個の研磨組成物(研磨組成物2A〜2I)で研磨した。研磨組成物2B、2C、2D、2G、2Hおよび2Iは、SoCポリマーウエハーを研磨するために使用したが、TEOSウエハーの研磨には使用しなかった。研磨組成物2A〜2Iの各々には、水性担体に0.05重量%のセリア粒子と5mM Fe
3+が含まれており、また、必要に応じて、水酸化アンモニウムでpH2.3に調整がされた。各研磨組成物には、以下の表2に示したように、リガンドも含まれていた。
【0054】
基板を、EPIC(商標)D200パッド(Cabot Microelectronics社、Aurora、イリノイ州)を装着したLogitech卓上研磨機で研磨した。研磨パラメーターは次の通りである。13.79kPa(2psi)の押圧力、35rpmのプラテン速度、32rpmのヘッド速度、および、120ml/分の研磨組成物流量。研磨を行った後に、ポリマーとTEOSの除去速度を、オングストローム/分の単位で決定した。その結果が、表2にまとめられている。
【表2】
【0055】
これらの結果は、ルイス酸である金属イオン(例えば、Fe
3+)と、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンド(例えば、ピコリン酸、イソニコチン酸、ニコチン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、または、サリチルアミド)との組み合わせが、高分子フィルム(例えば、スピン−オンカーボンポリマー)を含む基板の研磨に関して特に効果的である、ことを実証している。
【0056】
これらの結果は、芳香族環に直接に結合した酸官能基を含むリガンドが、離間した酸官能基を含むリガンドと比較して(例えば、離間した酸官能基を有するリガンドを含む研磨組成物2Iのポリマー除去速度と、芳香族環に直接に結合した酸官能基を有するリガンドを含む研磨組成物2A、2Bおよび2Cのポリマー除去速度とを比較して)、高分子フィルムの除去速度が大きかったことも実証している。
【0057】
これらの結果は、本発明の研磨組成物が、高分子フィルムを効率良く除去する一方で、基板のその他の層、例えば、TEOSの除去を最小限に止めたり、あるいは、防止したりすることをさらに実証している。例えば、研磨組成物2Aは、2000オングストローム/分のポリマー除去速度を示したが、TEOSの除去速度は、わずかに10オングストローム/分であった。同様に、研磨組成物2Eおよび2Fは、それぞれ、3300オングストローム/分と3200オングストローム/分のポリマー除去速度を示したが、それらのTEOS除去速度は、それぞれ、−10オングストローム/分と30オングストローム/分であった。望ましくは、本発明の研磨組成物は、高分子フィルムに対しては有効な除去速度を示す一方で、基板に含まれるその他の成分、例えば、TEOSの除去を最小限にすることによって、高分子フィルムの選択的研磨を提供する。
【0058】
(実施例3)
この実施例は、ルイス酸である金属イオンと、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンドとの組み合わせが、高分子フィルムを効果的に除去することを実証している。
【0059】
スピン−オンカーボン(SoC)ポリマーウエハーを、従来のCMP装置を用いて、異なる研磨組成物で研磨をした。これらのウエハーを、表3に記載した14個の研磨組成物(研磨組成物3A〜3N)で研磨した。研磨組成物3A〜3Nの各々には、水性担体に0.05重量%のセリア粒子と5mM Fe
3+が含まれており、また、必要に応じて、水酸化アンモニウムで表3に報告されたpH値にまで調整がされた。各研磨組成物で用いた水性担体は、水であった。各研磨組成物には、以下の表3に示したように、リガンドも含まれていた。
【0060】
基板を、EPIC(商標) D200パッド(Cabot Microelectronics社、Aurora、イリノイ州)を装着したLogitech卓上研磨機で研磨した。研磨パラメーターは次の通りである。13.79kPa(2psi)の押圧力、35rpmのプラテン速度、32rpmのヘッド速度、および、120ml/分の研磨組成物流量。研磨を行った後に、ポリマーの除去速度を、オングストローム/分の単位で決定した。その結果が、表3にまとめられている。
【表3】
【0061】
これらの結果は、ルイス酸である金属イオン(例えば、Fe
3+)と、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンド(例えば、メチルグリシン、フェニルグリシン、ジメチルグリシン、アミノ安息香酸、ピペコリン酸、または、プロリン)との組み合わせが、高分子フィルム(例えば、スピン−オンカーボンポリマー)を含む基板の研磨に関して特に効果的である、ことを実証している。
【0062】
これらの結果は、研磨組成物のpHを3よりも大きくした場合、例えば、研磨組成物のpHを3〜3.5とした場合に、高分子フィルムを研磨するにあたって、アミノ酸をリガンドとした研磨組成物が特に効果的であったことも実証している。例えば、研磨組成物3I(pHが3未満、すなわち、pHが2.6である組成物)でのポリマー除去速度は、研磨組成物3J(pHが3である組成物)でのポリマー除去速度よりも小さく、研磨組成物3K(pHが3.5である組成物)でのポリマー除去速度よりもさらに小さい。具体的には、研磨組成物3Kのポリマー除去速度は、研磨組成物3Jのポリマー除去速度の3倍以上の大きさであり、また、研磨組成物3Iのポリマー除去速度の5倍以上の大きさでもある。
【0063】
同様に、研磨組成物3L(pHが3未満、すなわち、pHが2.6である組成物)でのポリマー除去速度は、研磨組成物3N(pHが3.5である組成物)でのポリマー除去速度よりも小さい。研磨組成物3M(pHが3である組成物)でのポリマー除去速度も、研磨組成物3Nでのポリマー除去速度よりも小さい。具体的には、研磨組成物3Nでのポリマー除去速度は、研磨組成物3Mのポリマー除去速度の3倍強の大きさであり、また、研磨組成物3Lのポリマー除去速度よりも著しく大きいものであった。
【0064】
(実施例4)
この実施例は、ルイス酸である金属イオンと、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンドとの組み合わせが、酸化物(例えば、二酸化ケイ素(SiO
2))の除去を最小限にする(または、全く除去しない)ことを実証する。
【0065】
スピン−オンカーボン(SoC)ポリマーウエハー、蒸着したポリイミドウエハー、および、二酸化ケイ素(SiO
2)ウエハーを、従来のCMP装置を用いて研磨をした。
【0066】
具体的には、8枚の基板を研磨するために、表4に記載をした4つの研磨組成物(研磨組成物4A〜4D)を用いた。研磨組成物4A〜4Dの各々には、水性担体に0.05重量%のセリア粒子、5mM Fe
3+、それに、10mMピコリン酸が含まれており、また、必要に応じて、各組成物を、水酸化アンモニウムでpH2.3にまで調整をした。3種類のスピン−オンカーボン(SoC)ポリマーウエハー、ならびに、二酸化ケイ素(SiO
2)ウエハーを研磨するために、研磨組成物4A〜4Cを用いた。蒸着したポリイミドポリマーウエハーおよびSiO
2ウエハーを研磨するために、研磨組成物4Dを用いた。
【0067】
基板を、EPIC(商標)D200パッド(Cabot Microelectronics社、Aurora、イリノイ州)を装着したApplied Materials社の300mm Reflexion(商標) 研磨機で研磨するために、研磨組成物4A〜4Cを用いた。研磨組成物4A〜4Cに関する研磨パラメーターは次の通りである。6.89kPa(1psi)の押圧力、50rpmのプラテン速度、47rpmのヘッド速度、および、300ml/分の研磨組成物流量。基板を、IC 1010(商標)パッド(Dow Chemical社)を装着したApplied Materials社の300mm Reflexion(商標)研磨機で研磨するために、研磨組成物4Dを用いた。研磨組成物4Dに関する研磨パラメーターは次の通りである。13.79kPa(2psi)の押圧力、90rpmのプラテン速度、85rpmのヘッド速度、および、300ml/分の研磨組成物流量。研磨を行った後に、様々なSoCポリマーとSiO
2の除去速度を、オングストローム/分の単位で決定した。その結果が、表4にまとめられている。
【表4】
【0068】
これらの結果は、ルイス酸である金属イオン(例えば、Fe
3+)と、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、芳香族酸アミド、アミノ酸、または、ヒドロキシ置換N−複素環であるリガンド(例えば、ピコリン酸)との組み合わせが、高分子フィルム(例えば、スピン−オンカーボン高分子フィルム、または、蒸着したポリイミドフィルム)を含む基板の研磨に関して特に効果的である、ことを実証している。
【0069】
これらの結果は、本発明の研磨組成物が、高分子フィルムを効率良く除去する一方で、基板のその他の層、例えば、酸化物(例えば、SiO
2)の層の除去を最小限に止めたり、あるいは、防止したりすることをさらに実証している。具体的には、研磨組成物4A〜4Dの各々は、1000オングストローム/分を超えるポリマー除去速度を示したが、酸化物の除去速度は、ほとんど認められなかった。望ましくは、本発明の研磨組成物は、高分子フィルムに対しては有効な除去速度を示す一方で、基板に含まれるその他の成分、例えば、酸化物の除去を最小限にすることによって、高分子フィルムの選択的研磨を提供する。
【0070】
本明細書において引用した刊行物、特許出願、および、特許を含むすべての文献の内容を、各文献が、援用されることを個別かつ具体的に明示されており、しかも、その全内容が本明細書において記載されているものと同然に、本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【0071】
本発明の説明(特に、以下の特許請求の範囲)において用いられている「a」および「an」および「the」および「少なくとも一つ(at least one)」という用語の使用は、本明細書において断りがなく、あるいは、本発明の説明と明らかに矛盾をしていない限りは、単数形および複数形の双方の要素を含むものと解釈される。一つ以上の要素の列挙を伴った「少なくとも一つ(at least one)」という用語(例えば、「AおよびBの少なくとも一つ(at least one of A and B)」の使用は、本明細書において断りがなく、あるいは、本発明の説明と明らかに矛盾をしていない限りは、提示された要素から選択された一方の要素(AまたはB)、あるいは、提示された要素の二つ以上の要素の組み合わせ(AおよびB)であると解釈される。用語「comprising」、「having」、「including」、および、「containing」は、断りの記載が無ければ、制限を受けない用語(すなわち、「を含むが、これらに限定されない(including, but not limited to,)」の意味)として解釈される。本明細書における数値範囲の記載は、断りの記載が無ければ、その範囲内に属する別個の数値の各々を個別に示すための簡便な方法を意図したものに過ぎず、また、これらの別個の数値は個別に本明細書に記載されたものとして、本明細書の一部を構成するものとして援用する。本明細書に記載されたすべての方法は、本明細書において断りがなく、あるいは、本発明の説明と明らかに矛盾をしていない限りは、適切であれば、いかなる順序でも実施することができる。本明細書に記載の一部およびすべての実施例、あるいは、例示的用語(例えば、「のような(such as)」)の使用は、本発明をさらに詳細に説明するためのものに他ならず、特許請求の範囲で請求されていない限りは、本発明の範囲を限定的に解釈すべきではない。本明細書における用語は、特許請求されていない要素が、本発明を実施する上で必須のものであることを示すものではない。
【0072】
本発明の好適な実施態様が、本発明を実施するにあたって本発明者らが知得しているベストモードをも含めて、本明細書に記載されている。本発明の好適な実施態様に対して修正を加えることは、本明細書に接した当業者に自明の事項である。本発明者らは、当業者が適切にそのような修正を行うものと考えており、そして、本発明者らは、本明細書に具体的に記載された以外の発明の実施までをも意図している。したがって、本発明は、適用法により許容される範囲において、特許請求の範囲に記載された発明を修正してなる発明とそれらと等価の発明までをも含む。さらに、本明細書において断りがなく、あるいは、本発明の説明と明らかに矛盾をしていない限りは、本発明を修正して得られるすべての発明における上記した要素のいかなる組み合わせも本発明に含まれる。