特許第6542854号(P6542854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アプライド マテリアルズ インコーポレイテッドの特許一覧

特許6542854セラミックコーティングを有する熱処理されたセラミック基板及びコートされたセラミックスへの熱処理
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6542854
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】セラミックコーティングを有する熱処理されたセラミック基板及びコートされたセラミックスへの熱処理
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/89 20060101AFI20190628BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   C04B41/89 A
   H01L21/302 101Z
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-180915(P2017-180915)
(22)【出願日】2017年9月21日
(62)【分割の表示】特願2014-558807(P2014-558807)の分割
【原出願日】2013年2月20日
(65)【公開番号】特開2018-48072(P2018-48072A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2017年9月21日
(31)【優先権主張番号】61/602,020
(32)【優先日】2012年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/745,589
(32)【優先日】2013年1月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/619,854
(32)【優先日】2012年4月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100101502
【弁理士】
【氏名又は名称】安齋 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・ワイ・サン
(72)【発明者】
【氏名】レン−グァン・デュアン
(72)【発明者】
【氏名】ビラジャ・アール・カヌンゴ
(72)【発明者】
【氏名】ドミートリー・ルボミルスキー
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−001865(JP,A)
【文献】 特開2003−203906(JP,A)
【文献】 特開2010−106318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/85−41/89
C23C 16/44
C23F 4/00
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Alを含むセラミック基板と、
セラミック基板上のセラミックコーティングであって、イットリウム含有固溶体を含む非焼結セラミックコーティングであり、セラミック基板とは異なる組成を有し、YAlと固溶体Y−ZrOとの化合物を含むセラミックコーティングと、
セラミック基板とセラミックコーティングとの間の遷移層であって、セラミック基板由来の第2の元素と反応したセラミックコーティング由来の第1の元素を含み、Al12(YAG)を含み、1ミクロン〜5ミクロンの厚さを有する遷移層とを含むセラミック物品。
【請求項2】
セラミック物品は、修復されたセラミック基板である、請求項1記載のセラミック物品。
【請求項3】
セラミックコーティングは、セラミックコーティングへの破壊されていない結合を有するセラミックコーティングの表面に複数の溶融した粒子を含む、請求項1記載のセラミック物品。
【請求項4】
遷移層は、非多孔性であり、プロセスガスに非反応である、請求項1記載のセラミック物品。
【請求項5】
セラミックコーティングは、12メガパスカルの接着強度でセラミック基板に接着している、請求項1記載のセラミック物品。
【請求項6】
セラミック物品は、プラズマエッチャ用のプロセスチャンバーコンポーネントである、請求項1記載のセラミック物品。
【請求項7】
セラミック基板上に、a)固溶体Y−ZrO、又はb)YAlと固溶体Y−ZrOとを含むセラミックコーティングを形成するために溶射プロセスを実行する工程であって、セラミックコーティングは、初期空隙率、初期のクラック量、初期粒子数、及び初期接着強度を有する工程と、
0.1℃/分〜20℃/分のランプレートで1000℃〜1800℃の間の温度範囲にセラミックコーティングを加熱する工程と、
セラミックコーティングの空隙率を初期空隙率未満に減少させ、セラミックコーティングのクラックの量を初期のクラック量未満に減少させ、セラミックコーティングの接着強度を初期接着強度未満に減少させるために、最大24時間の間、前記温度範囲内の1以上の温度でセラミックコーティングの熱処理を実行する工程であって、セラミックコーティングは、セラミックコーティングの焼結を防止するために、セラミックコーティングの焼結温度未満で熱処理される工程と、
熱処理後に前記ランプレートでセラミックコーティングを冷却する工程であって、熱処理後にセラミックコーティングは、焼結されず、初期のクラック量未満の減少したクラック量を有し、初期空隙率未満の減少した空隙率を有し、初期接着強度を超える増加した接着強度を有する工程とを含む方法。
【請求項8】
セラミックコーティングは、SiO、B、Er、Nd、Nb、CeO、Sm、及びYbのうちの1つによってドープされる、請求項記載の方法。
【請求項9】
セラミック基板は、Y、Al、YAl、YAl12(YAG)、石英、SiC、Si、AlN、又はSiC−Siのうちの少なくとも1つからなる、請求項記載の方法。
【請求項10】
セラミック基板及びセラミックコーティングは、セラミックコーティングとセラミック基板との間に遷移層を形成するために熱処理中に反応するセラミックを含む、請求項記載の方法。
【請求項11】
熱処理は、セラミック基板とセラミックコーティングとの間に遷移層を形成するために、セラミックコーティングをセラミック基板と反応させ、期間及び温度範囲は、遷移層が1ミクロン〜5ミクロンの厚さを有するように選択される、請求項記載の方法。
【請求項12】
ポリマーがセラミックコーティング上に形成された後に、加熱する工程、熱処理する工程、及び冷却する工程を、空気の存在下で繰り返す工程を含み、空気の存在下で熱処理を繰り返す工程は、ポリマーに空気と反応してガスとなるようにさせることにより、セラミックコーティングを洗浄する、請求項記載の方法。
【請求項13】
セラミックコーティングはYAlと固溶体Y−ZrOとを含む請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般的に、コートされたセラミック物品の熱処理に用いられる熱処理プロセスに関連する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業では、数多くの製造プロセスによってデバイスが製造され、常に小型化される構造を生産している。プラズマエッチやプラズマ洗浄プロセスのようないくつかの製造プロセスは、基板をエッチングまたは洗浄するために、基板をプラズマの高速の流れに露出する。プラズマは非常に腐食性であり得、プロセスチャンバー及びプラズマに露出される他の表面を腐食し得る。この腐食により粒子を生じることがあり、処理されている基板をしばしば汚染し、デバイスの欠陥につながる。
【0003】
デバイスの形状が小さくなるにつれて、欠陥に対する感受性が高まり、粒子汚染物への要求がさらに厳しくなる。従って、デバイスの形状が小さくなるにつれて、粒子汚染の許容レベルは減少され得る。プラズマエッチ及び/またはプラズマ洗浄プロセスによって導入される粒子汚染を最小化するために、プラズマに耐性のあるチャンバー材料が開発されてきた。そのような耐プラズマ材料の例は、Al、AlN、SiC、Y、石英及びZrOから構成されるセラミックスを含む。しかし、これらのセラミック材料の耐プラズマ特性はいくつかの用途には不十分であり得る。例えば、従来のセラミック製造プロセスで製造される耐プラズマセラミック蓋及び/またはノズルは、45nmまたは32nmの限界寸法を有する半導体デバイスのプラズマエッチプロセスに用いられた際に、許容できないレベルの粒子汚染を生じ得る。さらに、そのような耐プラズマセラミックスがセラミックコーティングとして用いられると、これらのコーティングは高レベルの粒子汚染を引き起こし得、表面剥離によって故障してしまい得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、セラミック基板と、初期空隙率及び初期量のクラックを伴うセラミックコーティングとを有するセラミック物品が提供される。上記セラミック物品は約1000℃から約1800℃の範囲の温度まで、約0.1℃/分から約20℃/分のランプレートで加熱される。上記セラミック物品は、上記温度範囲内の一以上の温度で、最大約24時間熱処理される。上記セラミック物品は、その後上記ランプレートで冷却され、上記熱処理後に上記セラミックコーティングは、一つの、減少した空隙率及び減少した量のクラックを有する。
【0005】
本発明は添付図面の図中に例示として描写されるが、限定するものではなく、同様の参照符号は同様の要素を示す。本開示中の「ある(an)」または「一つの(one)」実施形態への異なる参照は、必ずしも同一の実施形態へのものではなく、そのような参照は少なくとも一つを意味することに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】本発明の一実施形態に従う、製造システムの例示的な構成である。
図1B】本発明の一実施形態に従う、セラミック物品を熱処理するためのプロセスである。
図2A】本発明の実施形態に従う、セラミックコーティングが熱処理を用いて処理される前及び上記セラミックコーティングが熱処理を用いて処理された後の、セラミックコーティングの表面の顕微鏡写真である。
図2B】本発明の実施形態に従う、セラミックコーティングが熱処理を用いて処理される前及び上記セラミックコーティングが様々な温度及び処理期間の熱処理を用いて処理された後の、4000倍の倍率のセラミックコーティングの表面の追加的な顕微鏡写真である。
図2C】本発明の実施形態に従う、セラミックコーティングが処理される前及び上記セラミックコーティングが様々な温度及び処理期間の熱処理を用いて処理された後の、20000倍の倍率のセラミックコーティングの表面の追加的な顕微鏡写真である。
図2D】本発明の実施形態に従う、セラミックコーティングが処理される前及び上記セラミックコーティングが処理された後の、10000倍の倍率のセラミックコーティングの表面の追加的な顕微鏡写真である。
図3A】本発明の一実施形態に従う、処理前及び処理後のセラミック物品の垂直断面図を示す顕微鏡写真である。
図3B】本発明の実施形態に従う、様々な温度及び処理期間の熱処理前後の、4000倍の倍率のセラミック物品の垂直断面図を示す顕微鏡写真である。
図3C】本発明の実施形態に従う、熱処理前後の、20000倍の倍率のセラミック物品の垂直断面図を示す顕微鏡写真である。
図3D】本発明の一実施形態に従う、熱処理前後のHPMセラミック複合材コーティングの相組成の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態はセラミック物品を熱処理するプロセス及び上記熱処理を用いて処理されたセラミック物品に向けられる。一実施形態において、セラミック基板及びセラミックコーティングを含み、初期空隙率、上記セラミック基板への初期結合強度及び初期量のクラックを有するセラミック物品が提供される。上記セラミック基板は焼結セラミックでもよく、上記セラミックコーティングはプラズマ溶射セラミックでもよい。上記セラミック物品は、例えばプラズマエッチャ用のセラミック蓋、ノズルまたはプロセスキットでもよい。上記セラミック物品は約1000℃から約1800℃の温度範囲に約0.1℃/分から約20℃/分のランプレートで加熱される。上記セラミック物品は上記温度範囲内の一以上の温度で最大で約24時間熱処理される。上記セラミック物品は、その後上記ランプレートで冷却される。上記熱処理後、上記セラミックコーティングは表面欠陥が減少し、コーティング空隙率が減少し、クラック量が減少する。上記セラミックコーティングは、表面ラフネスも減少し得り、さらにプラズマへのより高い耐性を有し得る。追加的に、上記熱処理後、上記セラミックコーティングは上記セラミック基板へのより強い界面を有し得り、それによって上記セラミック基板へのより高い接着強度が得られ得る。上記より強い界面は、上記セラミック基板と上記セラミックコーティングとの間で遷移層が形成されることにより得る。
【0008】
一実施形態において、炉が、セラミック基板と、初期空隙率及び初期量のクラックを有するセラミックコーティングとを含むセラミック物品に熱処理プロセスを実行し得る。上記炉は上記セラミック物品を約0.1℃/分から約20℃/分のランプレートで、上記セラミック物品が特定の温度または温度範囲に到達するまで加熱する。上記特定の温度範囲は約1000℃から約1800℃まで異なり得り、上記特定の温度は上記特定の温度範囲内の温度であり得る。上記炉は、上記セラミック物品を、上記特定の温度及び/または上記特定の温度範囲内の他の特定の温度で、最大約24時間熱処理する。上記炉は、その後上記セラミック物品を上記ランプレートで冷却する。上記熱処理後、上記セラミック物品は表面空隙率が減少し、クラックの量が減少する。
【0009】
本発明の実施形態は、上記セラミックコーティングと遷移層の形成を通してそれがコートする上記セラミック基板との間の結合の強度を高める。また本発明の実施形態は、処理されたセラミック物品上のセラミックコーティングの表面欠陥を減らし、空隙率を減らし、クラック量を減らす。また実施形態は処理されたセラミックコーティングの表面ラフネスを減らし、上記セラミックコーティング上の表面粒子を最小化し得る。そのような熱処理されたセラミックコーティングは、高エネルギー結合(破壊された結合)が減少し、プラズマを適用する半導体プロセス(例えばプラズマエッチやプラズマ洗浄プロセス)で使用された時に粒子汚染の量が著しく少量になり得る。さらに、上記熱処理されたセラミックコーティングの空隙率が減り、クラックが減ることで、上記セラミックコーティングを貫通して下地基板と反応するプロセスガスの量が減少する。さらに、上記セラミックコーティングとセラミック基板との間の遷移層の形成(以降、界面遷移層とも呼ばれる)により、上記コーティングを貫通するプロセス化学と下地基板が反応するのを妨げる。これにより表面剥離の発生が最小化され得る。
【0010】
上記遷移層は上記セラミックコーティングの接着強度を高め得り、剥離を最小化し得る。例えば、エッチャマシーン用のセラミックコートされた蓋及びノズルは、プラズマエッチプロセス中に導入される粒子汚染及び/または剥離を最小化するために熱処理され得る。従って、ここで記述された上記熱処理されたセラミック物品を用いて製造された半導体は、欠陥数が減少し得り、スクラップ率が減少し得る。
【0011】
以降、「熱処理」との語は、炉などによってセラミック物品に高温状態を適用することを意味する。以降「約」との語が使用される時は、記載された公称値は10%以内で正確であることを意味するように意図される。
【0012】
いくつかの実施形態は、これ以降熱処理を実施する炉の使用と関連して記述される。しかし、記述された熱処理を行うために他の熱処理技術も用い得ることを理解されたい。使用され得る追加的な熱処理技術のいくつかの例は、レーザー表面処理(レーザー熱処理とも呼ばれる)、電子線(e−beam)表面処理(e−beam熱処理とも呼ばれる)、火炎表面処理(火炎熱処理とも呼ばれる)及び高温プラズマ処理を含む。
【0013】
またいくつかの実施形態は、半導体製造用のプラズマエッチャ内で使用されるセラミックコートされた蓋及びセラミックコートされたノズルと関連して記述されることに注意されたい。しかし、そのようなプラズマエッチャは微小電気機械システム(MEMS)デバイスの製造にも使用され得ることを理解されたい。さらに、以降記述される上記熱処理されたセラミック物品はプラズマに露出される他の構造でもよい。例えば上記セラミック物品は、プラズマエッチャ、プラズマクリーナー、プラズマ推進システム等の、セラミックコートされたリング、壁、ベース、ガス分散板、シャワーヘッド及び基板保持フレームなどでもよい。
【0014】
さらに、以降実施形態は、プラズマリッチなプロセス用のプロセスチャンバー内で使用された際に、粒子汚染の減少を引き起こすセラミック物品に関連して記述される。しかし、以降議論される上記セラミック物品は、他のプロセス用のプロセスチャンバー内で使用された際にも粒子汚染が減少し得ることが理解されよう。例えば非プラズマエッチャ、非プラズマクリーナー、化学気相堆積(CVD)チャンバー、物理気相堆積(PVD)チャンバー、プラズマ化学気相堆積(PECVD)チャンバー、プラズマ物理気相堆積(PEPVD)チャンバー、プラズマ原子層堆積(PEALD)チャンバー等である。
【0015】
図1Aは、本発明の一実施形態に従う、製造システムの例示的な構造を描写する。製造システム100はセラミックス製造システムであり得る。一実施形態において、製造システム100は、炉105(例えばキルンなどのセラミック炉)、自動機器レイヤ115及び計算装置120を含む。代替的な実施形態において、製造システム100はさらに多くの、またはより少ないコンポーネントを含み得る。例えば、製造システム100は炉105のみを含んでもよく、手動で、オフラインの機器であり得る。
【0016】
炉105はセラミック物品のような物品を加熱するために設計された機器である。炉105は、その中に挿入された物品(例えばセラミック物品)に制御された温度を適用することができる、断熱されたチャンバーまたはオーブンを含む。一実施形態において、上記チャンバーは密閉される。炉105は上記チャンバーから空気を排出し、上記チャンパー内を真空にするポンプを含んでもよい。炉105は、追加的に、または代替的に、上記チャンバー内へとガス(例えば、ArやN等の不活性ガス)を導入するために、ガス入口を含んでもよい。
【0017】
炉105は、セラミック物品の処理中に技術者によって手動でセットされる温度調節器を有する手動の炉でもよい。炉105はプロセスレシピをプログラム可能なオフラインの機器であってもよい。上記プロセスレシピによって、ランプアップレート、ランプダウンレート、プロセス回数、温度、圧力、ガスフロー等が制御され得る。代替的に、炉105は、パーソナルコンピューターのような計算装置120、サーバマシンなどから、自動機器レイヤ115を介してプロセスレシピを受け取り可能な、オンラインの自動の炉であり得る。自動機器レイヤ115は、炉105を計算装置120、他の製造装置、計測ツール及び/または他のデバイスと相互接続し得る。
【0018】
自動機器レイヤ115は、ネットワーク(例えば、位置エリアネットワーク(LAN))、ルータ、ゲートウェイ、サーバ、データストア等を含むことができる。炉105は、半導体製造装置通信スタンダード/汎用機器モデル(SECS/GEM)インターフェースを介して、イーサネット(登録商標)インターフェースを介して、及び/または他のインターフェースを介して、自動機器レイヤ115と接続し得る。一実施形態において、自動機器レイヤ115によってプロセスデータ(例えばプロセス動作中の炉105によって集められたデータ)をデータストア(図示せず)に記憶することを可能にする。代替的な実施形態において、計算装置120は炉105に直接接続する。
【0019】
一実施形態において、炉105は、プロセスレシピを読み込み、記憶し、実行できる、プログラム可能な制御装置を含む。上記プログラム可能な制御装置によって、熱処理プロセスの温度の設定、ガス及び/または真空の設定、時間の設定などが制御され得る。上記プログラム可能な制御装置が、チャンバーの昇温を制御してもよく、温度をランプアップするのと同様にランプダウンすることを可能としてもよく、単一のプロセスとしてマルチステップの熱処理を入力可能にしてもよい。上記プログラム可能な制御装置はメインメモリ(例えば読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)等)及び/またはセカンドメモリ(例えばディスクドライブなどのデータ記憶デバイス)を含み得る。上記メインメモリ及び/またはセカンドメモリは、ここで記述された熱処理プロセスを実施するための指示を記憶し得る。
【0020】
上記プログラム可能な制御装置は、指示を実行するために、メインメモリ及び/またはセカンドメモリに(例えばバスを介して)接続された処理デバイスを含み得る。上記処理デバイスはマイクロプロセッサや中央処理装置などの汎用処理デバイス等であり得る。上記処理デバイスは、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサ等の特定用途処理デバイスでもあり得る。一実施形態において、プログラム可能な制御装置はプログラム可能な論理制御装置(PLC)である。
【0021】
一実施形態において、炉105が図1Bに関連して記述される熱処理プロセスを用いてセラミック物品を熱処理することを引き起こすレシピを実行するように、炉105がプログラムされる。
【0022】
図1Bは本発明の一実施形態に従う、セラミック物品を熱処理するためのプロセス150を示すフローチャートである。プロセス150のブロック155において、セラミック物品が(例えば炉またはキルンに)提供される。一実施形態において、上記セラミック物品はローダーによって自動的に炉内にロードされる。上記セラミック物品は、少なくとも一つの表面がセラミックコーティングでコートされたセラミック基板を含む。一実施形態において、上記セラミック物品はセラミック蓋、セラミックノズル、またはプラズマエッチャ若しくはプラズマクリーナー用の別のプロセスチャンバー要素である。上記セラミック物品は、イットリアが支配的なセラミックコーティングを有し得る。イットリア酸化物の耐プラズマ特性が優れているので、イットリアが支配的なセラミックスが使用され得る。また、上記セラミック物品は高い曲げ強度並びに、高温及びまたは熱ストレスによるクラックへの耐性などの良好な機械特性を有するセラミック基板を有してもよい。
【0023】
上記セラミック基板は、上記セラミックコーティングでコートされるのに先行して機械加工され得る。さらに、上記セラミックコーティングは上記セラミック基板をコートした後に機械加工され得る。機械加工の例としては、表面研削、研磨、ドリル、摩耗、切断、ビードブラスト、または工具を用いた処理が含まれる。一実施形態において、セラミック基板上にセラミックコーティングが形成された後で、上記セラミックコーティングが研磨される。これにより大量の粒子が生じ得り、それらはセラミックコーティングのクラック、細孔、及び他の表面欠陥にトラップされ得る。
【0024】
上記セラミック基板はY、YAl、Al、YAl12(YAG)、石英、SiC、Si、AlN、ZrO等のバルクセラミックから形成されてもよい。例えば、上記セラミック基板は、上記セラミックコーティングと関連して記述される上記セラミックスのバルクを焼結した形態でもよい。また上記基板はAl−YAGセラミック複合体またはSiC−Siセラミック複合体等のセラミック複合体でもよい。また上記セラミック基板は酸化イットリウム(イットリアとして知られるY)を含む固溶体を含むセラミック複合体でもよい。例えば、上記セラミック基板は、化合物YAl(YAM)及び固溶体Y2−xZr(Y−ZrO固溶体)からなる機能性材料(HPM)でもよい。純粋な酸化イットリウムと同様に、酸化イットリウムを含む固溶体も、一以上のZrO、Al、SiO、B、Er、Nd、Nb、CeO、Sm、Ybまたは他の酸化物がドープされ得ることに注意されたい。
【0025】
セラミック基板と同様に、セラミックコーティングは、Y(イットリア)、YAl(YAM)、Al(アルミナ)、YAl12(YAG)、石英、YAlO(YAP)、SiC(炭化珪素)、Si(窒化ケイ素)、AlN(窒化アルミニウム)、ZrO(ジルコニア)、AlON(酸窒化アルミニウム)、TiO(チタニア)、TiC(炭化チタン)、ZrC(炭化ジルコニウム)、TiN(窒化チタン)、TiCN(炭窒化チタン)、Y安定化ZrO(YSZ)等から形成され得る。セラミック基板と同様に、セラミックコーティングは、一以上のZrO、Al、SiO、B、Er、Nd、Nb、CeO、Sm、Ybまたは他の酸化物がドープされ得る、純粋な酸化イットリウムまたは酸化イットリウムを含む固溶体であり得る。一実施形態において、セラミックコーティングはHPM複合体である。しかし、セラミックコーティングは、セラミック基板上にセラミックコーティングを溶射または成長させることで形成され、セラミック基板は焼結プロセスによって形成され得る。
【0026】
一実施形態において、上記セラミックコーティングは、熱溶射技術またはプラズマ溶射技術を用いて上記セラミック基板上に堆積された、酸化イットリウム含有セラミックである。熱溶射技術は材料(例えばセラミックパウダー)を溶解し、溶解した材料を上記セラミック基板上に溶射し得る。熱的に溶射されたセラミックコーティングは約20μmから約数mmの厚みを持ちうる。
【0027】
一実施形態において、上記セラミックコーティングは上記セラミック基板上にプラズマ溶射される。代替的に、デトネーション溶射、ワイヤアーク溶射、高速酸素燃料(HVOF)溶射、フレーム溶射、温溶射及び冷溶射などの他の熱溶射技術も用いられ得る。さらに、上記セラミックコーティングを形成するために、エアロゾル堆積、電気めっき、物理気相堆積(PVD)、イオンアシスト堆積(IAD)及び化学気相堆積(CVD)などの他のコーティングプロセスが用いられ得る。特に、上記セラミックコーティングプロセスは、細孔などの小さなボイド、クラック及び不完全な結合の領域を有するセラミックコーティングを生じ得る。上記セラミックコーティングはバルクセラミック材料(例えば、セラミック基板など)とは大きく異なる構造特性を有し得る。
【0028】
一実施形態において、上記セラミックコーティングはYパウダーから生産される。代替的に、上記セラミックコーティングはYパウダー、ZrOパウダー及びAlパウダーの混合物から生産されるHPMセラミック複合材であり得る。一実施形態において、HPMセラミック複合材は77%のY、15%のZrO及び8%のAlを含む。別の実施形態において、HPMセラミック複合材は63%のY、23%のZrO及び14%のAlを含む。さらに別の実施形態において、HPMセラミック複合材は55%のY、20%のZrO及び25%のAlを含む。相対的な割合は分子比であり得る。例えば、HPMセラミックは77mol%のY、15mol%のZrO及び8mol%のAlを含み得る。これらのセラミックパウダーの他の配分もまたHPM材料に使用され得る。
【0029】
上記セラミックコーティングは、初めには接着強度が弱くあり得る(例えば3メガパスカル(MPa)程度)。これにより、後にセラミックコーティングの剥離またはセラミック基板の剥離が生じ得る(例えば上記セラミック物品をプラズマリッチプロセスで使用した結果として)。さらに、上記セラミックコーティングは初期空隙率及び初期量のクラックを有し得る。これらの細孔及びクラックによって、プロセスガス及び洗浄化学がセラミックコーティングを貫通し、処理中に下地のセラミック基板と反応でき得る。そのような反応により、ガス、湿気、または他の材料がセラミックコーティング下に生じ得、それによりセラミックコーティング下にブリスタが生じ得る。さらにこれらのブリスタによってセラミックコーティングがセラミック基板から分離され得る。そのような分離によって処理された材料(例えば処理されたウェハ)上に大量の粒子汚染が生じ得る。さらに、(他の表面欠陥と同様に)ブリスタ、クラック、及び細孔は、剥離がなくても、それ自身が処理された基板への粒子汚染を引き起こし得る。
【0030】
一実施形態において、セラミックコーティング中の細孔、クラック、ボイド及び他の表面欠陥は、高エネルギー状態位置の破壊された(またはオープンな)結合を含み得る。これらの表面欠陥は粒子をトラップし得る。例えば上記粒子は上記表面欠陥においてセラミック物品と弱い破壊された結合を形成し得る。プラズマ処理の間、プラズマはこれらの弱い破壊された結合を破壊し、セラミックコーティングからいくらかの粒子を除去し得る。上記セラミック粒子は、その後、処理された基板上に堆積され得る。さらに、プラズマは欠陥サイト、細孔、クラックなどにおいてセラミック物品の結合を破壊し得り、これはセラミックコーティングを侵食し得り、さらなる粒子が生じ得る。
【0031】
ブロック160において、セラミック物品は約0.1℃から約20℃/分のランプレートで加熱される。セラミック物品は壊れやすいことがあり、急激な温度変化に曝露されるとクラックが生じ得る。従って、セラミック物品にクラックが生じるのを防ぐのに十分遅いランプレートが使用される。20℃/分よりも大きなランプレートが可能であり得るセラミックスもあることが予想される。従って、いくつかの実施形態では、クラックを生じない、20℃/分を超えるランプレートが使用されてもよい。
【0032】
セラミック物品にクラックを生じさせる温度変化はセラミック物品の組成に依存し得る。例えば、Alはクラックを生じることなく10℃/分以上のレートで加熱され得る。しかしYは約5℃/分より早いランプレートで加熱されるとクラックを生じ得る。一実施形態において、Y及びHPMセラミック複合材のセラミックコーティングには約0.1から5℃/分のランプレートが使用される。更なる実施形態において、Y及びHPMセラミック複合材からなるセラミックコーティングに約5℃/分のランプレートが用いられる。典型的にはセラミック物品は周囲温度または周囲温度付近から出発し、所定の温度まで上記ランプレートでゆっくりと加熱される。
【0033】
セラミック物品は特定の温度または温度範囲に到達するまで加熱される。上記特定の温度は約1000℃から約1800℃の範囲であり得る。使用される上記特定の温度はセラミック物品の組成または遷移層についての特定の目標厚さに依存し得る。一実施形態において、アルミナ基板と、HPMセラミックコーティングまたはイットリア(Y)セラミックコーティングとを有するセラミック物品に1400から1500℃の温度が使用される。
【0034】
ブロック165において、セラミック物品は特定の温度で、または上記温度範囲内の一以上の温度で最大24時間熱処理される。用いられる特定の処理期間は、セラミック物品の所望の性能特性と、セラミック物品の組成に依存し得る。例えば、特定の処理期間は遷移層についての目標厚さに依存し得る。
【0035】
上述の通り、セラミックコーティングは多量の表面欠陥及びこれらの表面欠陥にトラップされる粒子を有し得る。上記熱処理によってこれらの欠陥及び/または粒子が減少または消滅し得る。具体的には、熱処理によって粒子が溶解し得り、及び/または表面欠陥領域のセラミックコーティングの部分が溶解し得る。溶解した粒子は表面欠陥領域のセラミックコーティングと共に流れ得る。その後、上記溶解した粒子はセラミックコーティング上へと再堆積し、これらの表面欠陥領域でセラミックコーティングと破壊されていない結合を形成し得る。得られた破壊されていない結合は、以前に粒子をセラミックコーティングに結合した破壊された結合よりもずっと強力である。従って、粒子はプラズマエッチプロセス中にセラミックコーティングからずっと除去されにくくなり、欠陥領域は浸食されにくくなる。
【0036】
さらに、セラミックコーティングは典型的に比較的高い空隙率及び比較的多いクラックを有する。上記熱処理によって細孔及びクラックは減少し及び/または除去され得る。上述したセラミックコーティングの溶解−再堆積と同様に、細孔及びクラックが減少または消滅し得る。例えば、細孔またはクラックにおけるセラミックコーティングが溶解し、その後に再堆積し、上記ポートまたはクラックを充填及び/または治癒し得る。
【0037】
一実施形態において、セラミックコーティング及びセラミック基板は熱処理プロセス中に反応して遷移層を形成する。遷移層は、セラミックコーティング及びセラミック基板が、熱せられた際に反応する材料から構成される場合に形成される。例えば、セラミック基板がAlであり、セラミックコーティングがHPMセラミック複合材であれば、セラミックコーティングとセラミック基板とは熱処理中に反応してYAG遷移層を形成する。別の例において、セラミック基板がAlであり、セラミックコーティングがYであれば、セラミックコーティングとセラミック基板とは熱処理中に反応してYAG遷移層を形成し得る。セラミックコーティング材料及びセラミック基板材料の別の組み合わせは、別の遷移層を形成するであろう。
【0038】
特に、遷移層は非反応性で、非多孔性の層であり得る。従って、熱処理されたセラミック物品を用いた後続のプロセスにおいて、プロセスガスがセラミックコーティングを貫通し得るが、遷移層は貫通できない。従って、遷移層によってプロセスガスがセラミック基板と反応するのを防ぎ得る。これによってブリスタを最小化または防ぎ得り、セラミックコーティングの剥離性能及び接着強度(結合強度)が向上し得る。
【0039】
遷移層は数多くの有益な効果を有するが、遷移層が厚すぎる場合には問題となり得る。いくつかの遷移層はセラミックコーティング及び/またはセラミック基板と異なる膨張係数を有する。従って、遷移層が閾値厚さ(例えば5μm程度)よりも厚い場合には、遷移層は後続のプロセス中にセラミックコーティング内にクラックを導入し得る。例えば、HPMセラミック複合材とアルミナは凡そ等しい膨張係数を有するが、YAGの遷移層はHPMセラミック複合材やアルミナと異なる膨張係数を有する。従って、YAG遷移層が約5μmよりも厚い場合には、YAG遷移層の膨張及び収縮によってセラミックコーティングにクラックが生じ得る。
【0040】
遷移層は、温度及び時間に依存したレートで成長する。温度が上がり、熱処理期間が長くなるにつれて、遷移層の厚さもまた厚くなる。従って、セラミック物品を熱処理するのに用いられる温度及び期間は、約5μmよりも厚くない遷移層を形成するように選択されるべきである。一実施形態において、約0.1μmから約5μmの遷移層が形成されるように、上記温度及び期間が選択される。一実施形態では、遷移層は、処理中にガスがセラミック基板と反応するのを防ぐのに十分な最小の厚さを有する(例えば約0.1μm)。一実施形態では、遷移層は1から2μmの目標厚さを有する。
【0041】
また熱処理はセラミックコーティングのグレインサイズを大きくする。温度が高くなり、熱処理期間が長くなると、セラミックコーティングのグレインサイズもまた大きくなる。グレインサイズが大きくなると、粒界が減少する。粒界は、セラミックのグレインと比較してプラズマに浸食されやすい。従って、グレインサイズが大きくなることで、後続のプロセス中にセラミックコーティングが粒子汚染を起こしにくくなり得る。従って、熱処理温度及び期間はセラミックコーティングの目標グレインサイズに基づいて選択され得る。
【0042】
アルミナセラミック基板及びHPMまたはイットリアのセラミックコーティングについては、1500℃で熱処理期間が3から6時間の熱処理が実施され得る。一実施形態において、イットリアまたはHPMセラミック複合体のセラミックコーティングに対する熱処理期間は約4時間である。
【0043】
一実施形態において、セラミック物品は熱処理の期間の間、単一の温度で維持される。代替的に、セラミック物品は、熱処理中に上記温度範囲内の複数の異なる温度に加熱及び/または冷却され得る。例えば、セラミック物品は1500℃で4時間熱処理され得り、その後1700℃でさらに2時間熱処理され得り、その後1000℃でさらに3時間熱処理され得る。複数の異なる熱処理温度が用いられるときには、セラミック物品は上記ランプレートで加熱及び/または冷却されて熱処理温度間を移動し得ることに注意されたい。
【0044】
ブロック170では、セラミック物品が上記ランプレートで冷却される。一実施形態では、セラミック物品は、セラミック物品を加熱するのに用いられたランプレートと同じランプレートで冷却される。別の実施形態では、セラミック物品を加熱するのに使用されたのと異なるランプレートが使用されてセラミック物品が冷却される。得られた熱処理されたセラミック物品のセラミックコーティングは、処理された基板の粒子汚染、プラズマ浸食耐性、接着強度、空隙率、クラックの量及びサイズ、並びに剥離耐性に関する向上した性能を有し得る。さらに、得られた熱処理されたセラミック物品は、セラミックコーティングとセラミック基板との間に遷移層を有し得る。従って、製品の歩留まりを向上するために、セラミック蓋、セラミックノズル、プロセスキット及び他のセラミックの内部プロセスチャンバーコンポーネントがプロセス150を用いて熱処理され得る。さらに、プロセス150が適用されるセラミック物品は交換頻度が低くなり得り、装置の休止時間が減少し得る。
【0045】
プロセス150は、セラミックコーティングがセラミック基板上に形成された後の、セラミック物品の製造工程の一部として実施され得る。さらに、プロセス150は使用されたセラミック物品を治癒または修理するために定期的に実施されてもよい。例えば、セラミック物品は使用前にプロセス150で熱処理され得り、その後、数ヶ月毎、一年毎、一年に二回、または他の頻度で、プロセス150で熱処理され得る。プロセス150を実施する頻度は、セラミック物品とともに用いられるプラズマエッチ及び/またはプラズマ洗浄レシピに依存し得る。例えば、セラミック物品が特に厳しいプラズマ環境に頻繁に露出される場合には、セラミック物品は高い頻度で熱処理され得る。
【0046】
プラズマへの露出は、回数とともに、セラミックコーティングを侵食及び/または腐食し得る。例えば、プラズマにより、セラミックコーティングの表面の破壊された結合を生じ得り、処理された基板を汚染する可能性のあるセラミック粒子が生じ得り、セラミックコーティング表面に欠陥を生じ得り、セラミック基板からセラミックコーティングが剥離し得るなどである。従って、セラミック物品が古くなるに従って、より多くの粒子汚染が起こりやすい。熱処理プロセス150は、腐食的なプラズマ環境によって生じたダメージを無効にするために、そのような古くなったセラミック物品に実施され得る。熱処理は、新たに製造されたセラミック物品に加えて、使用されたセラミック物品に対して欠陥を治癒し、粒子を減らし得る。従って、有効寿命を延ばすために、プロセス150は使用されたセラミック物品に実施され得る。
【0047】
表面欠陥を治癒し、粒子を最小化するのに加えて、熱処理プロセス150はセラミック物品をドライクリーン(dry clean)するのにも用いられ得ることに留意されたい。プラズマ環境への露出によって、セラミック物品の表面上にポリマーが形成し得る。これらのポリマーは後続のプロセス中に、基板上の粒子汚染を引き起こし得る。セラミック物品からポリマーを除去するために、周期的なウェットクリーン手順がしばしば実行される。一実施形態では、熱処理プロセス150がウェットクリーンプロセスの代わりに実施される。熱処理プロセス150によって、セラミック物品を覆うポリマーは、高温環境で空気または別のガスと反応し得る。この反応によりポリマーがガス状になり得、セラミック物品の表面を離脱し得る。従って、熱処理プロセス150は、セラミック物品の洗浄と、セラミック物品の表面の修復と、の両方に使用できる。後の熱処理プロセスで使用される温度及び/または期間は、初期の熱処理プロセスで使用される温度及び/または期間と異なり得ることに注意されたい。
【0048】
図2Aは、セラミックコーティングが熱処理で処理される前及び、セラミック物品が本願の実施形態に従う熱処理を用いて処理された後のセラミックコーティングの顕微鏡写真202〜216を示す。顕微鏡写真202〜216に示されるセラミックコーティングは、YAl及びY2−xZrを有するHPMセラミック複合材である。
【0049】
顕微鏡写真202は、熱処理前のセラミック物品の例を示す。顕微鏡写真204は、顕微鏡写真202内に示される領域208の拡大図を示す。領域208は比較的表面欠陥が少ない。顕微鏡写真204はセラミックコーティングのグレインサイズを描写する。顕微鏡写真206は、顕微鏡写真202内に示される領域210の拡大図を示す。領域210は、セラミックコーティングの表面欠陥及び表面粒子を描写する。
【0050】
顕微鏡写真212は、熱処理後の顕微鏡写真202の例を示す。描かれるように、熱処理の結果、表面欠陥の量が減少している。顕微鏡写真214は顕微鏡写真212内に示される領域218の拡大図を示す。領域218は比較的表面欠陥及び表面粒子が少ない。顕微鏡写真214はセラミックコーティングのグレインサイズを描写し、顕微鏡写真204に示されるグレインサイズよりも大きい。顕微鏡写真216は顕微鏡写真212内に示される領域220の拡大図を示す。領域220はセラミックコーティングの表面欠陥を描写する。しかし、顕微鏡写真216で示される表面欠陥は、顕微鏡写真206で示される表面欠陥よりもひどくなく、表面粒子は実質的に除去されている。
【0051】
図2Bは、セラミックコーティングが熱処理される前、及びセラミックコーティングが、本発明の実施形態に従う、様々な温度、処理期間で熱処理された後の、4000倍のセラミックコーティングの表面の追加的な顕微鏡写真222〜234を示す。顕微鏡写真222は、熱処理前のセラミックコーティングの例を示す。顕微鏡写真224は、1300℃、4時間の熱処理後のセラミックコーティングの例を示す。顕微鏡写真226は、1400℃、4時間の熱処理後のセラミックコーティングの例を示す。顕微鏡写真228は、1500℃、4時間の熱処理後のセラミックコーティングの例を示す。顕微鏡写真234は、1600℃、4時間の熱処理後のセラミックコーティングの例を示す。示される通り、熱処理期間を固定して温度を高くすると、クラックのサイズ及び数が減少する。さらに、温度を高くすると、細孔のサイズ及び数が減少する(従って空隙率が減少する)。
【0052】
顕微鏡写真230は、1300℃、24時間の熱処理後のセラミックコーティングの例を示す。顕微鏡写真232は、1400℃、24時間の熱処理後のセラミックコーティングの例を示す。示される通り、4時間を超えるセラミックコーティングの熱処理は、空隙率またはクラックの量をさらに著しく減らしていない。従って、一実施形態では、熱処理期間は約4時間である。
【0053】
図2Cはセラミックコーティングが処理される前、及びセラミックコーティングが、本発明の実施形態に従う、様々な温度、処理期間で熱処理された後の、20000倍のセラミックコーティングの表面の追加的な顕微鏡写真236〜248を示す。顕微鏡写真236は、熱処理前のセラミックコーティングの例を示す。顕微鏡写真238は、1300℃、4時間の熱処理後のセラミックコーティングの例を示す。顕微鏡写真240は、1400℃、4時間の熱処理後のセラミックコーティングの例を示す。顕微鏡写真242は、1500℃、4時間の熱処理後のセラミックコーティングの例を示す。顕微鏡写真248は、1600℃、4時間の熱処理後のセラミックコーティングの例を示す。顕微鏡写真248に示されるグレインサイズは、顕微鏡写真242に示されるグレインサイズよりも大きく、それは顕微鏡写真240に示されるグレインサイズより大きく、同様に続く。従って、熱処理温度を高くすると、セラミックコーティングのグレインサイズが大きくなる。
【0054】
顕微鏡写真244は、1300℃、24時間の熱処理後のセラミックコーティングの例を示す。顕微鏡写真246は、1400℃、24時間の熱処理後のセラミックコーティングの例を示す。従って熱処理期間を長くすると、セラミックコーティングのグレインサイズも大きくなる。セラミックコーティングのグレインサイズは、熱処理前の初期はナノサイズであり得、最終的には熱処理によってナノサイズより大きく成長し得る。熱処理の温度及び/または期間は目標グレインサイズに基づいて選択され得る。処理期間を延ばすと、顕微鏡写真244及び246に示されるように、不均一なグレインサイズになり得る。
【0055】
図2Dは、セラミックコーティングが処理される前、及びセラミックコーティングが、本発明の実施形態に従って処理された後の、10000倍のセラミックコーティングの表面の追加的な顕微鏡写真250〜256を示す。顕微鏡写真250及び254は、熱処理前にセラミックコーティングが大量のセラミック粒子を含むことを示す。顕微鏡写真252及び256は、熱処理後に、セラミック粒子が減少している、または除去されていることを示す。一実施形態では、表面粒子の総数は約93%も減少し得る。
【0056】
図3Aは、本発明の一実施形態に従う熱処理前後のセラミック物品の垂直断面図を示す顕微鏡写真302〜304を描写する。顕微鏡写真302は、セラミック物品がセラミック基板314と、セラミック基板314上のセラミックコーティング310とを含むことを示す。描写されたセラミック基板314はアルミナであり、描写されたセラミックコーティング310はHPMセラミック複合材である。
【0057】
顕微鏡写真304は、セラミックコーティング310とセラミック基板314との間に形成された遷移層312とともに、セラミック基板314及びセラミックコーティング310を示す。描写された遷移層は、約1から2μmの厚さを有する。
【0058】
上記遷移層の元素マップ308もまた示されている。元素マップ308は、エネルギー分散X線分光分析(EDX)に基づき、遷移層312の元素分析を提供し得る。元素マップ308は、遷移層312が炭素、酸素、アルミニウム及びイットリウムから構成されることを示す。元素マップ308はさらに、遷移層312中の元素の原子濃度が大まかに18%の炭素、46%の酸素、23%のアルミニウム及び13%のイットリウムであることを示す。従って、遷移層312はYAl12(YAG)であると示される。上記遷移層はセラミックコーティングのセラミック基板への接着強度を著しく向上し得る。
【0059】
図3Bは、本発明の実施形態に従う、様々な温度及び処理期間での熱処理前後の、4000倍のセラミック物品の垂直断面図を示す顕微鏡写真を描写する。顕微鏡写真320は、熱処理前の、セラミックコーティング310とセラミック基板314との間の界面を示す。顕微鏡写真322は、1300℃、4時間の熱処理後の、セラミックコーティング310とセラミック基板314との間の界面を示す。顕微鏡写真324は、1400℃、4時間の熱処理後の、セラミックコーティング310とセラミック基板314との間の界面を示す。顕微鏡写真326は、1500℃、4時間の熱処理後の、セラミックコーティング310とセラミック基板314との間の界面を示す。顕微鏡写真332は、1600℃、4時間の熱処理後の、セラミックコーティング310とセラミック基板314との間の界面を示す。顕微鏡写真328は、1300℃、24時間の熱処理後の、セラミックコーティング310とセラミック基板314との間の界面を示す。顕微鏡写真330は、1300℃、24時間の熱処理後の、セラミックコーティング310とセラミック基板314との間の界面を示す。
【0060】
顕微鏡写真326、330及び332に示されるように、遷移層312は、熱処理中に特定の条件下で、セラミックコーティング310とセラミック基板314との間に形成する。1300℃の熱処理温度では、熱処理期間に関係なく、遷移層は形成されないかもしれない。1400℃の熱処理温度では、4時間の処理後には遷移層を検出できないが、24時間の処理後には遷移層312が検出可能であり得る。1500℃及び1600℃の熱処理温度では、4時間の処理後に遷移層312が検出可能であり得る。
【0061】
高い処理温度及び長い処理期間によって、より厚い遷移層が形成されることが示される。温度は遷移層の厚みに対して期間よりも大きな影響を有し得る。示される通り、1500℃で4時間の熱処理は、1400℃で24時間の熱処理で生じる遷移層312よりもわずかに厚い厚みを有する遷移層312を生じ得る。
【0062】
図3Cは、本発明の実施形態に従う熱処理前後の、20000倍のセラミック物品の垂直断面図を示す顕微鏡写真350〜356を描写する。顕微鏡写真350及び354は、熱処理前の、セラミックコーティング310とセラミック基板314との間の界面を示す。熱処理前、セラミック基板314とセラミックコーティング310との間にギャップ370が示されている。これらのギャップによって、セラミックコーティング310がセラミック基板314からさらに剥離し得る。顕微鏡写真352及び356は、遷移層312がセラミックコーティング310とセラミック基板314との間の界面に、熱処理中に形成することを示す。さらに、顕微鏡写真352及び356は、熱処理前に存在したギャップ370が、熱処理の結果、除去されるまたは減少することを示す。これにより剥離の可能性が低減し得り、セラミックコーティング310のセラミック基板314への接着または結合強度が向上し得る。
【0063】
図3Dは、本発明の一実施形態に従う熱処理前後での、HPMセラミック複合材コーティングの相組成比較を描写する。示される通り、熱処理によってセラミックコーティングまたはセラミック基板の相組成が大きくは変化していない。
【0064】
上記セラミックコーティングの表面形状は、表面粗さパラメータ及び/または表面均一性パラメータを用いて表現され得る。また、上記表面形状は、空隙率、クラック及び/またはボイドパラメータを用いて表現され得る。空隙率を表す測定されたパラメータは、細孔数及び/または平均細孔寸法を含み得る。同様に、ボイド及び/またはクラックを表す測定されたパラメータは、平均のボイド/クラック寸法及び/またはボイド/クラック数を含み得る。
【0065】
粒子数を表す測定されたパラメータは、テープ剥離試験粒子数及び液体粒子数(LPC)である。上記テープ試験は、粘着テープをセラミックコーティングに貼り付け、テープを剥離し、テープに付着した粒子の数を数えて実施され得る。LPCは、セラミック物品を水浴(例えば、脱イオン(DI)水浴)中に配し、水浴を超音波処理して決定され得る。その後、溶液中にとれた粒子数が、例えばレーザーカウンターを用いて数えられ得る。
【0066】
接着強度は、セラミック基板からセラミックコーティングが剥離するまで、セラミックコーティングに力(例えばメガパスカルで測定される)を印加することによって決定され得る。一実施形態では、セラミックコーティングの接着強度は、熱処理前には4メガパスカル(MPa)程度であり、熱処理後には12MPa程度である。従って、熱処理後のセラミックコーティングのセラミック基板への接着強度は、熱処理前の接着強度よりも約三倍強力であり得る。
【0067】
セラミックコーティングの接着強度、空隙率、クラック及び粒子数値は熱処理の結果改善し得る。さらに、熱処理の結果、グレインサイズが大きくなり得り、硬度が小さくなり得る。経験的実証によって、熱処理の結果、プラズマエッチプロセス中の、セラミックコートされた蓋及びセラミックコートされたノズルによる粒子汚染の量が減少することも示された。経験的実証によって、熱処理の結果、セラミック基板からのセラミックコーティングの剥離が減少することもまた示された。さらに、熱処理の結果、セラミックコーティングの表面粗さが減少する。
【0068】
最大約1200℃までの熱処理については、粒子とセラミックコーティングの表面との相互作用は、以下の数式1に従うファンデルワールス力が支配的であり得る。
【数1】

ここでFは力であり、Aは面積であり、Hは距離である。熱処理温度が室温から約500℃に上昇するにつれて、ファンデルワールス力は弱まり、熱膨張が距離Hの増加を引き起こし得る。熱処理温度が500℃から約1200℃に上昇するにつれて、距離Hの減少に少なくとも部分的に起因して、ファンデルワールス力が強くなり得る。このような距離の減少は、基板表面吸収粒子及び/または変形に起因し得る。
【0069】
約1200℃と1800℃の間の温度では、粒子とセラミックコーティング表面との間に、液状フィルムが形成され得る。約1200℃と1500℃の間で、上記液状フィルムは薄い液状フィルムであり得、約1500℃と1800℃の間で、上記液状フィルムは厚い液状フィルムであり得る。約1800℃に至る温度では、粒子とセラミックコーティング表面との相互作用は、以下の数式2に従う、毛管力による液体を介した相互作用が支配的であり得る。
【数2】

ここでFは力であり、γは液体−気体表面張力であり、Rは粒子と基板表面との間の界面の有効半径であり、θは接触角である。これらの温度では、粒子は液体中へと拡散し得、対応するグレイン上で再成長し得る。これによって、セラミック物品が冷却された後であっても、基板表面から粒子が除去され得る。
【0070】
HPMセラミック複合材及びイットリアについては、1800℃が焼結温度である。従って、約1800℃以上の温度では、セラミックコーティング内のパウダー間に液相が形成される。これらのパウダーは液相へと溶解し、寸法が大きくなるグレインへと成長し得る。原子は、平衡に達するまで、高エネルギーのグレインから低エネルギーのグレインへと拡散し得る。従って、一実施形態では、約1800℃よりも低温で熱処理が実施される。
【0071】
上記によって、本発明のいくつかの実施形態の良好な理解を提供するための、特定のシステム、コンポーネント、方法などの例などの数多くの特定の詳細が明らかになった。しかし、当業者にとって、これらの特定の詳細なしに、本発明の少なくともいくつかの実施形態を実施し得ることは明らかであろう。他の例では、本発明を不必要に不明確にするのを避けるために、周知のコンポーネントまたは方法は詳細には記述されていないか、単純なブロックダイアグラム形式で示されている。従って、説明された特定の詳細は、例示に過ぎない。特定の実施形態は、これらの例示的な詳細と異なり得るが、なお本発明の範囲内であると考えられる。
【0072】
本明細書を通して、「一実施形態」または「ある実施形態」との言及は、該実施形態と関連して記述された特定の特徴、構造または特性が、少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通して様々な場所でみられる「一実施形態において」または「ある実施形態において」との記載は、必ずしも同じ実施形態に言及するものではない。さらに、「または」との語は、排他的ではなく、包括的な「または」との意味に意図されている。
【0073】
ここで方法の操作が特定の順番で示され、説明されたが、各方法の操作の順番は、ある操作が逆の順番で実施されたり、ある操作が少なくとも部分的に他の操作と同時に実施されたりするように変更され得る。別の実施形態では、指示または明確な操作のサブ操作は、断続的及び/または交互であってもよい。
【0074】
上記説明は例示的なものであり、限定的なものではないことが理解されよう。多くの他の実施形態が、上記説明を読み、理解することで当業者にとって明らかとなるであろう。従って本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照し、権利が与えられる均等の完全な範囲とともに決定されるべきである。
【符号の説明】
【0075】
100 製造システム
105 炉
115 自動機器レイヤ
120 計算装置
150 プロセス
155、160、165、170 ブロック
202、204、206、212、214、216 顕微鏡写真
222、224、226、228、230、232、234 顕微鏡写真
236、238、240、242、244、246、248 顕微鏡写真
250、252、254、256 顕微鏡写真
302、304 顕微鏡写真
308 元素マップ
310 セラミックコーティング
312 遷移層
314 セラミック基板
320、322、324、326、328、330、332 顕微鏡写真
350、352、354、356 顕微鏡写真
370 ギャップ
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D