(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である分注装置および当該分注装置を用いた分析装置について説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
生化学自動分析装置は
図1に示すような分注機構を有する。分注機構は、吐出ノズル100、シリンジポンプ101、流体制御弁(吐出ノズル側)102、流体制御弁(試薬ボトル側)103、送液管104から構成され、試薬ボトル105に格納された状態で保持された試薬を反応容器に分注する。送液管104は試薬ボトルと吐出ノズルを接続するように配置され、試薬の流路を形成している。流体制御弁(吐出ノズル側)102、流体制御弁(試薬ボトル側)103は、試薬ボトルと吐出ノズルをつなぐ送液管104の経路上に配置されている。
【0015】
微量分注を実現するにあたり、分注機構の構成品は以下の部材であることが望ましいが、本発明の構成が下記の部材に限定されるものではない。なお、ここで微量とは0.2ml以下と定義し、特に4ul以上120ul以下の範囲での分注に対する効果について説明する。
【0016】
吐出ノズル100は溶液吐き出し時の流体の方向と速度が均一になるように、さらに溶液の液切れをよくするためステンレス等の金属により内径約0.5mm以下で作製することが望ましい。シリンジポンプ101は圧損を減らすため、アクリル樹脂からなるシリンダとフッ化ポリマーからなるプランジャを有し、ボールネジとステッピングモータにより吐出、吸引の駆動することが望ましい。流体制御弁(吐出ノズル側)102、流体制御弁(試薬ボトル側)103は、開閉速度が高いことと、閉弁時のポンピング量が少ないことからダイヤフラム式の電磁弁を用いることが望ましい。以上の構成は市販品として一般に流通しており、手に入り易さと価格の面でも優位性がある。送液管104は流路抵抗による圧損を低減するため濡れ性の低いフッ化ポリマーを材料として、さらにデッドボリュームを減らし、送液効率を高めるために内径1mm以下で構成されることが望ましい。試薬ボトル105は交換を容易にできるように大気圧下に開放して設置することが望ましい。
【0017】
分注の手順を以下に説明する。
図1に示すように吐出ノズル100は送液管104によって流体制御弁(吐出ノズル側)102に接続され、さらに分岐106を通じてシリンジポンプ101と流体制御弁(試薬ボトル側)103に接続する。流体制御弁(試薬ボトル側)103は送液管104を通じて試薬ボトルに接続されている。試薬分注をする場合、初めに流体制御弁(吐出ノズル側)102は閉じ、流体制御弁(試薬ボトル側)103が開いた状態で、シリンジポンプ101が試薬を吸引する。所望の量の試薬が送液管104に満たされるとシリンジポンプ101の吸引動作が終わり、次いで流体制御弁(試薬ボトル側)103が閉まり、その後流体制御弁(吐出ノズル側)102が開く。次に、シリンジポンプ101が吐出方向に動作し、吐出ノズル100から所定の量の試薬が吐出される。したがって送液は常に試薬ボトル105から吐出ノズル100の方向へ行なわれる。
【0018】
複数回に渡って分注で正確性を保つためにはシリンジポンプ101で流路内に圧力をかけて吐出ノズル100方向に溶液を吐き出す際に、再現よく一定の圧力をかけることである。圧力が不安定な場合、送液され液量がばらつくだけでなく、最後の液切れが悪化を招くことで0.5〜2ul程度の吐出量低下が引き起こされる。定量吐出の不安定要因はいくつかあり、部材が圧力で変形する場合や、装置自体の振動により液切れが悪化する場合があるが、最大の要因は流路内への気泡の混入である。開放した試薬ボトル105を使用する場合、溶存酸素が溶出することで送液管104内に気泡が生成されることがある。特にシリンジポンプ101の吸引時の圧力低下に伴って溶存酸素の溶出が促進される。気泡は溶液に比べて圧力によって大きく体積を変えるため、吸引時には低圧により膨張し、溶液の吸引不足を引き起こす。一方、吐出時は加圧状態になるため、気泡は収縮されることになる。これにより本来の圧力伝播が損なわれ、こちらも吐出不足を招く。例えば内径1mmで長さ1mの送液管に25℃で溶存酸素が飽和量に達した溶液が満たされた状態から全ての酸素を溶出させると大気圧下で約4ul分の気泡量に相当する。しかし、実際の試薬では酸素は飽和状態になく、100%溶出することも無いため、気泡の溶出量は1ulにも満たない。ところが実際に分注動作を繰り返し実施したところ、20回に1度程度の頻度で気泡約直径1mm程度の気泡が1〜3個送液管内に混入し、120ulの定量分注に対して約1〜5ulの吐出量不足が生じる現象が確認された。
【0019】
吐出量不足をもたらす気泡の発生地点について送液管104の観察を行なったところ、流体制御弁(試薬ボトル側)103から頻繁に気泡が発生することが分かった。以下で
図2を用いて気泡の発生について説明する。
図2では流体制御弁の構造を示している。
図2の流体制御弁は、導液口(
図2のIN)、排液口(
図2のOUT)、弁室で区分けされた流路と円盤状のダイヤフラムとを備える。ここで、弁室とは
図2のダイヤフラムを一側面とする空間のことを指す。弁室は円柱形になっており、ダイヤフラムは弁室内を円柱軸方向に往復運動することができる。導液口と排液口はチューブ状の流路で接続されており、導液口からの流路は弁室の中心軸(ダイヤフラムの中心軸)に設けられた弁室の入口を経由して弁室につながっている。そして、流路は、弁室の端に設けられた弁室の出口から排液口へと接続されている。導液口から排液口までが流体制御弁内の試薬の流路となっており、ダイヤフラムはこの試薬の流路の途中に配置されている。ダイヤフラムの中心部は厚みを持ち、流れを遮断する場合はダイヤフラムが導液口方向に動作して導液口との接続部に密着して流路を塞ぐ。それぞれ弁室に以下の説明では、流路の入り口側をIN、出口側をOUTとする。
【0020】
さらに
図2で示す流体制御弁(試薬ボトル側)103のヘッド107を透明の部材に変えて溶液を観察すると、試薬吸引時に弁室内で1mmに満たない気泡110が膨張して発生し、ダイヤフラム108の表面やボディとの隙間に気泡が付着する様子が見られた。吐出時には小さい気泡110は収縮して目視できなくなるがしばらくすると吐出時(加圧時)にも確認できる大きさの気泡109に成長し、弁室内の流れが遅い部分に蓄積されていることが確認できた。すなわち、溶出した細かい気泡が弁内で統合されて1mm程度の気泡になり、ある程度大きくなると流れに乗って放出される。また、本検討で使用した流体制御弁の弁室の内部容積が約30uLである。直径1.5mmの送液管を通った液体が容積の広い弁室に入ると減圧状態になり、気泡が膨張することにより試薬吸引時の圧力が不安定になる。
【0021】
流体制御弁内で気泡が成長する原因としてダイヤフラム108の部材特性が挙げられる。本実験で使用したダイヤフラム108はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の成型品である。PTFEは非常に強い撥水特性を有するため、電磁弁のコイル部分とのシール材として優れている他、柔軟性と耐久性も高い。さらに強い撥水性により圧損の低減やタンパク質等による汚染防止効果も得られる。一方で強い撥水性によって気泡が付着し易く気泡の成長を助長していると考えられる。
【0022】
その他、様々な流体制御弁が使用できるが本実験で使用したような二方ダイヤフラム式電磁弁であることが望ましい。また、流体制御弁の流体制御弁のヘッド、シール、ダイヤフラム部材がPTFE、FKM、NBR、EPR、EPDM、PEEK、PPS、PSU、SUS304、SUS316、PFA、FFKM、FKMPC、TFE、POM、HPVC、ALM203、FPA、シリコンゴムのいずれか一つあるいは二つ以上の組み合わせから選ばれることが望ましい。さらに流体制御弁室内のデッドボリュームが50uL以下であることが望ましい。発明者らは鋭意検討を行い、以下の電磁弁内の気泡生成および蓄積の防止策を検討した。
【0023】
まず、気泡生成および蓄積の防止策の一案として、PTFEのダイヤフラム表面を親水化することで気泡の付着を低減する方法を考案した。親水化はプラズマ照射あるいはエキシマUV照射によって可能である。未処理のダイヤフラム表面の水接触角は約100°であるのに対して、10分間100Wのプラズマ処理を行なうと40°付近になり、親水化することができる。親水化によって一定の効果が得られる。ただし、汚染によって親水化を長時間保つことができず気泡生成を完全に抑えるのは難しい。さらに弁室の流速が低下する部分では気泡が蓄積してしまう可能性がある。
【0024】
そこで、気泡生成および蓄積の防止策の別の一案として、ダイヤフラム108の流路に面した側を鉛直上向きになるように流体制御弁を配置することが望ましい。別の表現をすれば、ダイヤフラムが流体制御弁内の試薬の流路の下に配置されるような向きで流体制御弁を配置する、と言い換えることもできる。なお、ここで、流路の「下」とは鉛直下方に限定されるものではなく、ある程度の角度範囲を許容する意味であり、少なくとも以下で説明する角度範囲を含むものである。
【0025】
この様子を
図3に示す。このような配置にすることで、生成した気泡109、110は浮力と液の流れによって剥がれて排出される。
【0026】
さらに、また、
図4のように、流体制御弁の導水側(IN)が下側に、排液口側(OUT)が上になるように流体制御弁を斜めに配置することが望ましい。このような配置において試薬を下側から上側に送液する。別の表現をすれば、流体制御弁の導液口は排液口より低い位置になる向きで流体制御弁を配置する、と言い換えることもできる。ここで、「低い位置」とは鉛直方向の高さが低いという意味である。なお、
図4でも、ダイヤフラム108の流路に面した側が上向きになるように配置されている。この配置にすることで、気泡が生成してもすぐに排液口側に浮上して排出される。
【0027】
上記のように、第一のダイヤフラム108の向きを変えることで気泡の除去にかかる時間が大幅に短縮した。特に、流体制御弁を斜めに配置し、かつダイヤフラムの向きを上向きにすることによって、さらに気泡除去時間の短縮が見られ、の大きな気泡の蓄積を防ぐことができる。
【実施例1】
【0028】
図5を用いて流体制御弁の角度について説明する。
図5のようにダイヤフラム200の液体に接する面を鉛直上向きして配置したとき導液口204(IN側)から排液口203(OUT側)の方向をx軸とする。このとき電磁弁の中心軸Pはx軸に対して直角になる。この方向をz軸とする。
【0029】
図5に示すように、IN側からOUT側を結ぶ直線x’をxz面内に維持したまま中心軸PをIN側がOUT側より常に下になるようにいくつか角度を変えた。
P’軸:電磁弁の中心軸の向き、
z軸:鉛直方向、
x軸:流体制御弁をP’軸=z軸にして配置したときのある特定の一状態におけるINとOUTを結ぶ直線の向き、
θr:電磁弁のINとOUTを結ぶ直線のx軸に対する回転角度、
θz:P’軸と水平面とのなす角
と定義する。このときに、θz=90°、65°、45°、30°、0°となるそれぞれの条件で一度弁室内を空気で満たしてから送液を行い、気泡が完全に抜けきるまでの時間を計測した。その結果、θz=65°の時に最も気泡抜けが早く、弁室に液体が満たされてから5秒以内に気泡が完全に除去された。またθz=90°、45°、30°では10秒以上の時間を要するものの完全な気泡抜けが見られた。θz=0°では完全に気泡が抜ける場合もあったが、複数回の試行で1mm程度の気泡が電磁弁のボディ、あるいはボディとダイヤフラム弁の隙間に気泡が捕捉され1分以上経過しても抜けきらなかった。したがって、30°≦θz≦90°に配置することで気泡を除去する効果を確認した。特に、65°にすることで最も迅速に気泡を除去することが可能となる(
図14)。
【0030】
次にθz=65°の状態で中心軸Pを中心に時計回りにθr回転させた場合の評価を行なった。IN側からOUT側を結ぶ線をxz平面に維持し、かつIN側がxの正方向になる位置を基準にθr=45°回転させた。その結果、θz=65°かつθr=45°の組み合わせで5秒以内に気泡が完全に除去された。したがって、θz=65°を保持状態で中心軸を基点に0〜45°回転させても気泡除去効果が得られることが確認された(
図15)。
【0031】
さらにθr=0°かつθz=65°の電磁弁配置の状態で配置して実際に120uLの
分注実験を1000テスト実施し、気泡混入の際に見られる平均分注量に対して1〜5uL程度の低値が一度も発生しないことを確認した。
【0032】
流路交換や電磁弁交換の際、一度流路内の液体を抜き交換後に再び液を満たす必要がある。これまでは交換作業の後は流路の総容積約10mlに対して約300mlの試薬を空流しすることで内部の気泡除去を行なっていた。しかし、場合によっては気泡が抜け切らずさらに試薬を流すこともあった。一方、電磁弁の配置を上記の範囲(0°≦θr≦45°、30°≦θz≦90°)にすることで、パーツ交換後に必要な試薬の消費量を抑えられる。より具体的には電磁弁の配置をθr=0°かつθz=65°にしたときに気泡を完全に除去するための空流しの試薬は60ml程度で足りることを確認した。
【実施例2】
【0033】
次に、気泡除去効率をさらに向上させる気泡除去動作および気泡検知機能について説明する。本実施例は実施例1の流体制御弁の配置と組み合わせて用いることが特に効果的である。以下では、実施例1と同様の部分については説明を省略する。
【0034】
電磁弁内に混入する気泡は溶存気体由来の場合と試薬ボトル交換時に送液管端に残留する気泡がそのまま送液される場合がある。送液管端に残る気泡の大きさは比較的大きく1mm未満の気泡だけでなく内径1.5mmの送液管内で液を分節する5ulを超える容積のものもある。こうした容量の気泡が一つでも流体制御弁(ボトル側)を超えて分注流路内に混入すると分注精度が悪化する。
【0035】
そこで
図6のように大容量の気泡の混入を未然に防ぐ機構および動作を追加することでリスクを回避する。第一の機構及び動作として、試薬ボトル305の交換作業後、一定量の流路内溶液を試薬ボトル305側に逆流させ気泡を追い出す動作でボトルから進入した気泡が電磁弁を通過してシリンジポンプ側の流路に混入することを防ぐ。第二の機構及び動作として、試薬ボトル305から全流路内容積分以上の試薬を吸引し、吐出ノズル300から排出する動作で、第一の逆流動作では防ぎきれなかったシリンジポンプ側の流路に混入した気泡を抜く。第三の機構及び動作として、試薬ボトル305から流体制御弁(ボトル側)303までの流路の間に気泡検知器308を付けることで、ボトルから進入した気泡の有無、量を判定して、第一の逆流動作、あるいは第二の溶液吐出動作を実行するかまたは上述したような気泡除去処理を行うかを判定する。以上の三つの動作あるいは機構は独立で行ってもよいし、組み合わせて行ってもよい。これらの方法を組み合わせて行うことによってさらに効果が増す。
【0036】
以下に、効果を上げる組み合わせの一例を挙げる。試薬ボトル305を交換後、その動作を行ったという情報が信号として導線311を通じて制御部307に送信される。制御部307は試薬ボトル305の交換が行われたと認識すると、空になった試薬ボトル305からの気泡混入を防ぐため試薬ボトル側配管309内の溶液を試薬ボトル305側に逆流させる動作を始めるように制御する。次に新たに交換された試薬ボトル305からの吸引動作を始める。試薬ボトル側配管309内の溶液の逆流動作制御で気泡が除去しきれなかった場合、試薬ボトル305と流体制御弁(ボトル側)303の間にある気泡検知器308が気泡を検知し気泡の量が既定以上であれば吸引動作を停止させ、既定未満であれば停止せず流路内に進入した気泡を除去するための吐出動作が行なわれる。
【実施例3】
【0037】
次に、角度切替機能付の流体制御弁固定具について説明する。本実施例は実施例1、2の流体制御弁の配置と組み合わせて用いることが特に効果的である。以下では、実施例1と同様の部分については説明を省略する。
【0038】
ダイヤフラム式の電磁弁は複数のメーカより市販されている。特に分析装置用途で多く使用されるオリフィス径3mm以下の電磁弁は様々なオリフィス径、デッドボリューム、材質のものが販売されているが、これらの内部構造はほぼ共通の形状を持っている。
図7は市販されている代表的な二方電磁弁の内部構造を簡略化したものを示している。電磁弁には通電時に弁が開くノーマルクローズ型と、通電時に閉まるノーマルオープン型が存在するが
図8および
図9はノーマルクローズ型を示している。ノーマルオープン型はノーマルクローズ型とスプリングの配置が異なるがそれ以外の基本構造はほぼ変わらない。どちらも樹脂製の流路内の途中にダイヤフラム弁が往復運動するシリンダ状の空間があり、その中をダイヤフラム弁が動くことで流路を開閉する。ノーマルオープン型は通電時にダイヤフラム弁が流路を塞ぐ方向に作動し、ノーマルクローズ型は通電時にダイヤフラム弁が流路を開く方向に作動する。どちらの型の電磁弁も選ぶことができるが、通常、漏水を防ぐため装置停止状態で流路が遮断されるノーマルクローズ型を利用することが多い。
【0039】
図7のように、電磁弁は溶液を流す流路を形成する送液管414と流路を塞ぐダイヤフラム弁416からなるヘッド415の部分と、ダイヤフラム弁416を動かすためのプランジャ411、コイル410、スプリング412、およびコイル410へ接続された導線413が配置されるボディ409部分に分かれている。流路を構成するヘッド415部分はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)といった樹脂材でできており、ダイヤフラムも同様にPTFEやフッ素系ゴムのFKM、あるいはアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)が使用される。さらに流路を直接塞ぐ止水栓417の部分でパーフロゴム(KPF)が使用される場合もある。この他にも様々な樹脂材が使用されているが、基本的に汚染が少なく、溶液抵抗による圧損も低減できる疎水性の強い材質から選ばれている。したがって、気泡が残留しやすい性質を持った材質である。
【0040】
一方、ボディ409部はいわゆる電磁石による駆動方式であるため、プランジャ411、コイル410、スプリング412、導線413は金属製であることがほとんどである。従来は、通常使用される場合、
図7のように電磁弁はヘッド部分が下、ボディ409部分が上になるように配置される。これは電磁弁のヘッドからの漏水に際してボディ409の被水を防ぐためである。漏水は多くの場合、電磁弁と送液管414を接続するニップル401部を取り外す時に起きやすい。ボディ部は金属でできているため、ボディ409部とヘッド415部のつなぎ目から送液管402からこぼれた液が浸入するとプランジャ411や内壁部分が錆びる恐れがある。さらにコイル410や導線413に被水すると漏電し電磁弁や装置本体の故障につながる。
【0041】
本実施例でも、実施例1、2と同様、電磁弁を逆さまにしてかつ、電磁弁の中心軸方向を基準に傾斜をつけて板金に固定配置する。したがって、通常の姿勢で電磁弁を使用する場合に比べて、漏れた液体が金属製のボディ409部にかかり易い。そこで電磁弁の固定用板金403を可動式にすることで被水のリスクを回避した。その一例について
図10から
図13を用いて説明する。
【0042】
図10は電磁弁を固定用板金403(固定用部材)にボディ404が下になるように固定し、ボディ404導液口側が右、排液口が左に位置する方向からの概観図である。電磁弁の先端にあるネジ穴を用いて、固定用板金403に宙吊りになるようにネジ400で固定される。このとき電磁弁は導液口と排液口を結ぶ直線が垂直線に対して65°、かつ電磁弁の中心軸408が水平線に対して65°になるように固定される。
図10では固定用板金403は垂直方向に長い長方形をしており、2つの電磁弁が固定用板金403の上下に固定され、
図1の流路図に示した電磁弁102が上部に、電磁弁103が下部になるようにそれぞれ配置される。固定用板金403は流体制御弁の導液口と排液口を結ぶ直線と水平面との角度を可変とすることが可能な角度切替機構を有する。角度切替機構は、例えば、下側に支点を持ち、この支点を回転軸406として電磁弁の中心軸と水平線がなす角度θzが0°に至るまで任意に動かすことができる。
【0043】
さらに
図10では回転軸406を中心に固定用板金403が直立しているとき、
図11は回転軸406を中心に固定用板金403が倒されているときの状態を示している。分注動作時には
図10のように固定用板金403を直立状態(少なくとも前述したように水平面に傾斜する状態)とし、メンテナンスなどのために送液管402取り外し時には
図11のように装置を正面にした時に手前側に向けて固定用板金403を倒す。
図11では、流体制御弁の導液口と排液口を結ぶ直線が水平面に対して垂直となる角度になっている。これによって、電磁弁ごと横向きに倒れ、ニップルへのアクセス性が向上する。また、送液管402より漏水があっても電磁弁のボディ409部まで至らずに被水を免れることができる。
【0044】
また、
図12、
図13のように取付け板金408を用いて各固定配置にすることもできる。取付け用板金408は、固定用板金403に着脱可能に固定される。取付け用板金408は、流体制御弁を固定用板金403に対して傾斜して保持することができる角度にある第一取付け部と、流体制御弁の流路が鉛直方向になるような角度に流体制御弁を保持する保持部と、流体制御弁への第2取付け部と、を有する。
【0045】
取付け用板金408も角度切替機構として働く。分注動作時には
図12のように第一取付け部によって固定用板金403に斜めにネジ留めし、メンテナンス時には
図10のように取付け板金408の屈曲部(保持部)を固定用板金403に引っ掛けてニップル401を外す作業ができる。それぞれ装置内のスペースやアクセス性を考慮して取り付け方法を選べばよい。
【0046】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【0047】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置くことができる。
【0048】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。