特許第6543135号(P6543135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543135
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】粘着テープ剥離装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20190628BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190628BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   H01L21/304 622J
   C09J5/00
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-166623(P2015-166623)
(22)【出願日】2015年8月26日
(65)【公開番号】特開2017-45830(P2017-45830A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
(72)【発明者】
【氏名】高澤 徹
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−311735(JP,A)
【文献】 特開2010−206088(JP,A)
【文献】 特開平04−313563(JP,A)
【文献】 特開昭62−050835(JP,A)
【文献】 特開平02−125440(JP,A)
【文献】 特開2003−309086(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/017750(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C09J 5/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材に貼着された粘着テープを該板状部材から剥離する粘着テープ剥離装置であって、
該粘着テープを上面に露出させた状態で該板状部材を保持する保持面を有する保持テーブルと、
該保持テーブルに保持された該板状部材に貼着された粘着テープを剥離する剥離機構と、を含み、
該剥離機構は、該粘着テープに作用する剥離爪と、該粘着テープの厚さ方向と該剥離爪位置との相対位置を撮像する撮像手段と、該撮像手段から得られた画像情報に基づいて該剥離爪を該粘着テープの厚さ方向の所要位置に位置付ける位置付け手段と、から少なくとも構成される剥離起点部生成手段を含み、
該剥離爪は反射面を備え、該粘着テープの厚さ方向を捉えた像を該反射面で反射して該撮像手段に導く粘着テープ剥離装置。
【請求項2】
該撮像手段によって得られた画像情報を記憶する記憶手段を備える請求項1に記載の粘着テープ剥離装置。
【請求項3】
該剥離起点部生成手段は、該剥離爪、該撮像手段、該位置付け手段に加え、該剥離爪によって剥離された粘着テープの一部と該板状部材との間にエアーを吹き込み、剥離起点部を生成するエアーノズルとを含み、
該剥離機構は、さらに、
該剥離起点部を挟持する挟持手段と、
該挟持手段を該保持テーブルの保持面から上方に離間させ粘着テープの端部を板状部材から剥離する離間手段と、該板状部材から剥離した粘着テープの端部の粘着面側から作用して粘着テープを折り曲げる折り曲げローラと、該折り曲げローラを剥離方向に移動して粘着テープを該板状部材から剥離するローラ移動手段と、
から少なくとも構成される請求項1、又は2に記載された粘着テープ剥離装置。
【請求項4】
該保持テーブルの保持面の上方に配設された該板状部材から剥離した粘着テープを吸引保持する粘着テープ保持手段を備える請求項3に記載の粘着テープ剥離装置。
【請求項5】
剥離後の前記粘着テープを収容する廃棄容器を備え、該粘着テープ保持手段は、該粘着テープを吸引保持した後、該廃棄容器直上に移動し、該廃棄容器直上にて吸引保持した該粘着テープの吸引を解除し、該粘着テープを該廃棄容器内に収容する請求項4に記載の粘着テープ剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の板状部材に貼付された粘着テープを剥離する剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、略円板形状の板状部材である半導体ウエーハの表面に格子状に配置された分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、該半導体ウエーハの裏面を研削装置にて研削し所定の厚みに形成した後に、ダイシング装置、レーザー加工装置等により分割予定ラインに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
上記したIC、LSI等の半導体チップを小型化すべく、上記研削工程においては、半導体ウエーハ(板状部材)の裏面をできるだけ薄くすることが望まれており、研削する際に半導体ウエーハのデバイスが形成された表面を保護すべく粘着テープ等からなる保護テープを貼付するようになっている。
【0004】
研削工程が終了したあとは、前記保護テープを半導体ウエーハから剥離させる必要があり、該保護テープの剥離方法としては、半導体ウエーハの表面に貼付された保護テープの端部に剥離用の接着テープを熱圧着し、該接着テープを引っ張ることで、該保護テープを半導体ウエーハから剥離させることが知られている(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−016862号公報
【特許文献2】特開2003−338477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来技術による保護テープの剥離装置では、保護テープが研削工程の際に生じる押圧力によって半導体ウエーハの表面に貼着されていることから、半導体ウエーハの表面から保護テープを剥離する際に強い粘着力を発揮する剥離用テープを保護テープに貼着して該剥離用テープを引っ張ることで保護テープを剥離する構成となっており、当該構成を実現するために、少なくとも剥離用テープの送り出し機構、剥離用テープの切断機構、剥離用テープの圧着機構が必要となり、構造が複雑になるという問題がある。さらに、上記したように、剥離用テープは強い粘着力が要求されるとともに、強固に貼着された保護テープの剥離工程に耐え得る強度が要求され、消耗品として用いられる当該剥離装置の剥離用テープのランニングコストが高くなるという問題も生じる。
【0007】
また、上記の従来技術においては、保護テープの端部に剥離用テープを圧着して剥離を行った後、剥離後の保護テープを剥離装置の廃棄容器に廃棄する際、廃棄容器の側壁等に剥離用テープの粘着面が付着してしまい、廃棄容器の容量にまだ余裕があるにも関わらず剥離後の保護テープが廃棄容器の開口部を塞ぐことになり、廃棄容器の容量を十分に生かすことができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術課題を解決するために、本発明によれば、板状部材に貼着された粘着テープを該板状部材から剥離する粘着テープ剥離装置であって、該粘着テープを上面に露出させた状態で該板状部材を保持する保持面を有する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された該板状部材に貼着された粘着テープを剥離する剥離機構と、を含み、該剥離機構は、該粘着テープに作用する剥離爪と、該粘着テープの厚さ方向と該剥離爪位置との相対位置を撮像する撮像手段と、該撮像手段から得られた画像情報に基づいて該剥離爪を該粘着テープの厚さ方向の所要位置に位置付ける位置付け手段と、から少なくとも構成される剥離起点部生成手段を含み、該剥離爪は反射面を備え、該粘着テープの厚さ方向を捉えた像を該反射面で反射して該撮像手段に導く粘着テープ剥離装置が提供される。
【0009】
上記粘着テープ剥離装置は、該撮像手段によって得られた画像情報を記憶する記憶手段を備えるようにすることが好ましい。
【0011】
該剥離起点部生成手段は、該剥離爪、該撮像手段、該位置付け手段に加え、該剥離爪によって剥離された粘着テープの一部と該板状部材との間にエアーを吹き込み、剥離起点部を生成するエアーノズルとを含み、該剥離機構は、さらに、該剥離起点部を挟持する挟持手段と、該挟持手段を該保持テーブルの保持面から上方に離間させ粘着テープの端部を板状部材から剥離する離間手段と、該板状部材から剥離した粘着テープの端部の粘着面側から作用して粘着テープを折り曲げる折り曲げローラと、該折り曲げローラを剥離方向に移動して粘着テープを該板状部材から剥離するローラ移動手段と、から少なくとも構成されることが好ましい。
【0012】
該保持テーブルの保持面の上方に配設されたウエーハから剥離した粘着テープを吸引保持する粘着テープ保持手段を備えるようにすることが好ましく、さらには、剥離後の該粘着テープを収容する廃棄容器を備え、該粘着テープ保持手段は、該粘着テープを吸引保持した後、該廃棄容器直上に移動し、該廃棄容器直上にて吸引保持した該粘着テープの吸引を解除し、該粘着テープを該廃棄容器内に収容することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明による粘着テープ剥離装置は、上述したように構成され、ウエーハに貼着された粘着テープを該ウエーハから剥離する粘着テープ剥離装置であって、該粘着テープを上面に露出させた状態で該ウエーハを保持する保持面を有する保持テーブルと、該保持テーブルに保持されたウエーハに貼着された粘着テープを剥離する剥離機構と、を含み、該剥離機構は、該粘着テープに作用する剥離爪と、該粘着テープの厚さ方向と該剥離爪位置との相対位置を撮像する撮像手段と、該撮像手段から得られた画像情報に基づいて該剥離爪を該粘着テープの厚さ方向の所要位置に位置付ける位置付け手段と、から少なくとも構成される剥離起点部生成手段を含み、該剥離爪は反射面を備え、該粘着テープの厚さ方向を捉えた像を該反射面で反射して該撮像手段に導く粘着テープ剥離装置が提供されるので、剥離用のテープの送り出し、切断、圧着機構が不要となり、高額な剥離用テープ等の消耗品を必要とせず、剥離作業を実行する際のランニングコストを抑えることが可能となると共に、剥離作業を実行する際に、剥離爪を粘着テープの厚さ方向に適正に位置付けることができる。また、該剥離爪が反射面を備え、該粘着テープの厚さ方向を捉えた像を該反射面で反射して該撮像手段に導くことにより、該撮像手段により得た画像を確認しながら、粘着テープの厚さ方向の所定の位置に該剥離爪を正確に位置付けることが容易になり、剥離作業を確実に実行することができる。
【0014】
該撮像手段によって得られた画像情報を記憶する記憶手段を備えることにより、剥離作業において粘着テープの剥離が不十分であったり、ウエーハが損傷したりした場合等に、その記憶された該画像情報を解析することにより、その不具合の原因を検証することが可能となる。
【0016】
さらに、該剥離起点部生成手段は、該剥離爪、該撮像手段、該位置付け手段に加え、該剥離爪によって剥離された粘着テープの一部と該板状部材との間にエアーを吹き込み、剥離起点部を生成するエアーノズルとを含み、該剥離機構は、さらに、該剥離起点部を挟持する挟持手段と、該挟持手段を該保持テーブルの保持面から上方に離間させ粘着テープの端部を板状部材から剥離する離間手段と、該板状部材から剥離した粘着テープの端部の粘着面側から作用して粘着テープを折り曲げる折り曲げローラと、該折り曲げローラを剥離方向に移動して粘着テープを該板状部材から剥離するローラ移動手段と、から少なくとも構成されることで、該剥離爪により剥離された粘着テープの一部から、剥離起点部を確実に形成し、該折り曲げローラの作用により、該粘着テープをウエーハから確実に剥離させることが可能になる。
【0017】
そして、該保持テーブルの保持面の上方に配設されたウエーハから剥離した粘着テープを吸引保持する粘着テープ保持手段を備え、より好ましくは、剥離後の前記粘着テープを収容する廃棄容器を備え、該粘着テープ保持手段は、該粘着テープを吸引保持した後、該廃棄容器直上に移動し、該廃棄容器直上にて吸引保持した該粘着テープの吸引を解除し、該粘着テープを該廃棄容器内に収容する構成を備えることにより、剥離後の粘着テープを効率よく廃棄容器内に廃棄することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に従って構成された剥離装置の斜視図。
図2図1に示す剥離装置のシート保持手段を示す斜視図。
図3図1に示す剥離装置の折り曲げローラを構成する支持フレームを示す斜視図。
図4図1に示す剥離装置の剥離起点部生成手段の斜視図。
図5図4に示す剥離起点部生成手段の剥離爪部を示す図。
図6図1に示す剥離装置の要部側面図。
図7図6に示す状態において、保持テーブル上に保護テープが貼付された半導体ウエーハを載置した状態を示す要部側面図。
図8図7の状態から保持テーブルを移動させて、半導体ウエーハを移動させた状態を示す要部側面図。
図9図8の状態から剥離起点部生成ユニットを下方に移動させて半導体ウエーハに近接させた状態を示す要部側面図。
図10図9の状態から半導体ウエーハに対して剥離爪を突き当てた状態を示す要部側面図。
図11図10の状態から、保護テープの剥離部分と半導体ウエーハとの間にエアーノズルよりエアーを噴射した状態を示す要部側面図。
図12図11の状態から挟持部材を作動させて剥離した保護テープの外周端部を挟持した状態を示す要部側面図。
図13図12の状態から折り曲げローラを移動させて保護テープの粘着面に接触させた状態を示す要部側面図。
図14図13の状態から折り曲げローラと保持テーブルを移動させて保護テープを折り曲げ、剥離を開始した状態を示す図。
図15図14の状態から折り曲げローラを移動させて半導体ウエーハから保護テープを剥離させた状態を示す図。
図16図15の状態から剥離した保護テープをシート保持板の下面に吸引保持させた状態を示す図。
図17図16の状態からシート保持板の下面に保護テープを吸引保持した状態で廃棄容器直上にシート保持手段を移動させた状態を示す要部側面図。
図18図17の状態からシート保持板を廃棄容器内に降下させた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に従って構成された粘着テープの剥離装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1には、本発明に従って構成された剥離装置1の一実施形態の斜視図が示されている。図示の実施形態における剥離装置1は、静止基台2、保持テーブル機構3、粘着テープ保持手段4、折り曲げローラ移動手段5、剥離起点部生成手段6、及び廃棄容器7を具備している。
【0021】
保持テーブル機構3は、図に示すように、静止基台2上に矢印Xで示す剥離加工送り方向(剥離方向)に沿って配設された2本のガイドレール31、31と、該2本のガイドレール31、31上に摺動自在に配設された移動基台32と、ガイドレール31、31に沿って該移動基台32の下面のナット部に係合するボールねじ軸33と、該ボールねじ軸33の一端側にて該ボールねじ軸33を回転自在に支持する軸受34と、他端側にて該ボールねじ軸33を回転させ該移動基台32をX方向で往復動自在に移動させるためのパルスモータ35と、から構成される。
【0022】
移動基台32は、移動基台32上に配設された円筒状のテーブル本体36と、テーブル本体36の上面に配設された吸着チャック37と、を具備している。吸着チャック37は、ポーラスセラミックスによって形成され図示しない吸引手段に接続されており、吸着チャック37の表面にて適宜負圧が生じるようになっている。従って、吸着チャック37上に載置された本発明のウエーハを構成する上面に保護テープ11(粘着テープ)が貼着された半導体ウエーハ10は、図示しない吸引手段を作動することにより吸着チャック37上に吸引保持される。
【0023】
図1図2(a)〜(c)にその詳細を示すシート保持手段4は静止基台2に配設されており、該静止基台2に立設された第1エアーシリンダー41と、該第1エアーシリンダー41から伸びた軸42により支持される保持ベース43とを有している。該保持ベース43には、上面に立設された第2エアーシリンダー44と、該第2エアーシリンダー44から保持ベース43の下面側に貫通し、第2エアーシリンダー44の進退自在な軸45に支持されるシート保持板46と、該保持ベース43上に配設され、端部に挟持片48aを備え水平方向に進退自在な軸を備えた第3エアーシリンダー47と、前記保持ベース43の下面側で、該挟持片48aと対向する位置に配置され、挟持片48aとともに挟持手段48を構成する挟持片48bと、が配設されている。
【0024】
前記シート保持板46は内部が中空に構成され、下面には図示しない微孔が全面に渡り多数設けられており、第2エアーシリンダー44とシート保持板46とを連結する軸内部を介してシート保持板46内部の空気を吸引可能に構成され、前記微孔を介してシート保持板下面に負圧を生じさせることが可能となっている。
【0025】
前記保持ベース43は、前記第1エアーシリンダー41により進退可能に駆動される軸42とともに上下動可能に構成され、さらに、図2(b)中の矢印で示されるように、該軸42を中心にして水平方向に回転可能になっている。なお、該保持ベース43をガイドレール31、31上に位置する図2(a)の位置から、図2(b)に示す位置に向け時計方向に回転させることで、前記シート保持板46を静止基台2の傍らに設置された廃棄容器7の直上に移動させることができる。
【0026】
図3に示すように、前記折り曲げローラ移動手段5は、門型形状をなす支持フレーム51により構成され、該支持フレーム51は、支持基台2上のガイドレール31、31に沿って間隔を置いて並設された柱部52、52と、該柱部52、52の上端を連結する支持部53と、該支持部53の案内孔54に沿って該支持部53内に内蔵された図示しない駆動機構により移動せしめられる折り曲げローラ55と、を備えている。当該折り曲げローラ55は、長手方向の軸中心に回転可能であり、少なくとも半導体ウエーハ10に貼着された保護テープ11の直径よりも長く、また、剥離後の保護テープの粘着面が付着しないようにその表面にはフッ素樹脂がコーティングされている。
【0027】
図4に示すように、前記剥離起点部生成手段6は、上下方向に延びる保持ケース61と、保持ケース61に沿って配設されたボールねじ軸62と、ボールねじ軸62の一端側に連結され、ボールねじ軸62に螺合された剥離起点部生成ユニット63を上下方向で往復動自在に移動させるためのパルスモータ64と、から構成され、ボールねじ軸62の他端側は、保持ケース61の上部に設けられた軸受61aに回転自在に支持されている。剥離起点部生成ユニット63は、その一端部が保持ケース61の上下方向に延びる溝部61bに摺動可能に支持されており、剥離起点部生成ユニット63の上下方向(Z軸方向)位置を検出する図示しない位置検出手段を備えており、検出された位置信号は制御手段70に送られ、制御手段70からの制御信号に基づいてパルスモータ64を駆動し、剥離起点部生成ユニット63を所望の位置に制御することが可能になっている。
【0028】
剥離起点部生成ユニット63は、その先端部に設けられた剥離爪66、撮像手段67、及びエアーノズル68から構成されている。図5(a)に示すように、剥離爪66は、剥離起点部生成ユニット63の先端部から下方に延びる剥離爪支持部66aと、剥離爪支持部66aの下端部に側方からみて水平に対して45°の傾斜角をなす剥離爪部66bとから構成される。剥離爪部66bは、上面が鏡面からなる反射面に形成され、その先端部は薄く、且つ鋭角に尖った形状となっている。撮像手段67は、剥離爪部66bの上方に位置し、剥離爪66の剥離爪部66bの先端部側(以下、正面側ともいう)から見た図5(b)に示す剥離爪部66bの先端部領域Gの画像を撮像可能に配設されている。なお、剥離爪支持部66a、剥離爪部66bを正面側の斜め上方から見た形状は、図5(c)に示すとおりである。
【0029】
エアーノズル68は、図示しないエアー供給源から高圧エアーが供給されるように構成されており、剥離爪部66bの背面側から先端部に向け必要に応じて高圧エアーが供給されるように構成される。そして、撮像手段67、エアーノズル68は、制御手段70からの制御信号に基づき作動され、撮像手段67により撮像された画像は、制御手段70に接続された操作パネルを兼ねたモニター72に映し出されると共に、記憶手段71に随時記憶される。
【0030】
廃棄容器7は、図1に記載されているように、静止基台2のシート保持手段4の傍に配置されており、上方が解放された円筒状に形成され、略円形状にカットされて使用される保護テープ11より一回り大きく形成されており、本発明の剥離装置により剥離される該保護テープ11を容器内に積層可能に構成されている。
【0031】
図示の実施形態における剥離装置1は、以上のように構成されており、その作用について図6ないし18を参照しながら説明する。なお、図6ないし16は、図1の剥離装置1の要部側面図であり、動作を分かり易く説明するため静止基台2、支持フレーム51、第1エアーシリンダー41、保持ケース61、モータ35等、作動説明上不要な構成は、適宜省略している。
【0032】
当該剥離装置1において、半導体ウエーハ10に貼着された保護テープ11を剥離する剥離作業を開始するに当たり、先ず、図6に示すように、保持テーブル機構3のガイドレール31、31上で移動基台32を待機位置(図中右側)で待機させるとともに、シート保持板46は第2エアーシリンダー44により上方に引き上げられている。また、折り曲げローラ55はエアーノズル68よりも移動基台32の待機位置側に位置づけられている。
【0033】
図6、7に示されているように、先ず、保護テープ11が表面に貼着された半導体ウエーハ10を移動基台32のテーブル本体36の吸着チャック37上に載置する。この時、吸着チャック37裏側の空間と図示しない吸引手段が連結されていることによりポーラスセラミックスにて表裏間で通気可能に形成された吸着チャック37上に負圧が発生させられ、半導体ウエーハ10は吸着チャック37上に吸引固定される。
【0034】
半導体ウエーハ10を吸着チャック37上に固定した後、パルスモータ35を駆動しボールねじ軸33を回転させることにより、該移動基台32を図7の待機位置からガイドレール31に沿ってシート保持手段4及び剥離起点部生成ユニット63の下方に移動させる。この際、半導体ウエーハ10に貼着された保護テープ11の外周端部から所定距離離れた部分が剥離起点部生成ユニット63における剥離爪部66bの先端の直下になるように位置づけられる(図8を参照)。
【0035】
ここで、剥離起点部生成ユニット63を用いて、半導体ウエーハ10から保護テープ11を剥離させるための剥離起点部を生成する手段について以下に説明する。
【0036】
半導体ウエーハ10の外周端部から所定距離離れた部分を剥離起点部生成ユニット63の剥離爪部66bの先端部の直下に移動した後、図9に示すように撮像手段67を作動させ、剥離爪部66bの先端領域G(図5(b)を参照)撮像し、モニター72に表示させる。剥離装置1を操作するオペレーターは、先端領域Gをモニター72で確認しながら、パルスモータ64を駆動し、剥離起点部生成ユニット63を降下させる。剥離爪部66bの先端部が半導体ウエーハ10の保護テープ11の外周端部と対向する位置近傍まで降下すると、半導体ウエーハ10の上面に貼着された保護テープ11の厚さ方向を示す外側側面が、傾斜角45°をなす反射面に形成された剥離爪部66bの上面で反射され、上方に位置する撮像手段67によって捉えられ、図9中のモニター72の画面Aで示されているように、その状態がモニター72に映し出され始める。
【0037】
ここから、さらにパルスモータ64を駆動して剥離起点部生成ユニット63を下降させると、図9中のA´で示されているように、保護テープ11と共に、保護テープ11の下側に位置する半導体ウエーハ10が現れる。本発明の剥離装置1では、剥離爪部66bの先端部を保護テープ11の外側側面に突き当てることで剥離を開始させることから、オペレーターは画像A´中の保護テープ11の厚さ方向におけるP点で示す位置を突き当てポイントと定め、今度は剥離起点部生成ユニット63をモニター72に示されているスケールSを参照しながらパルスモータ64を駆動して上昇させる。その結果、剥離爪部66bの先端部と対向する高さ位置にP点を位置付けることができる。上記した制御手段70、ボールねじ軸62、及びパルスモータ64により、本発明の位置付け手段が構成されている。
【0038】
剥離爪部66bの先端部が、半導体ウエーハ10に貼着された保護テープ11の外側側面の所望の厚さ位置Pに位置付けられた後、移動基台32をわずかに図中右方に移動させることにより、該剥離爪部66bの先端部の先端が該保護テープ11の外側側面に所定量突き刺さった状態となる。剥離爪部66bの先端部が該保護テープ11の外側側面に突き刺さった後、パルスモータ64を作動させて、剥離爪部66bの先端部を僅かに上昇させると共に該移動基台をさらに右方に移動させることで、保護テープ11の外周部分の一部が良好に剥離させられる(図10を参照)。
【0039】
該保護テープ11の該一部が剥離された後、剥離起点部生成ユニット63をさらに上昇させるとともに、図11に示すように、エアーノズル68から高圧エアーを噴射することにより、該剥離爪部66bの先端部から保護テープ11の外周部分が離反し、該保護テープ11の外周部分において先に剥離した該一部を含む剥離領域が拡大し、後述する挟持手段48にて挟持するのに適する剥離起点部12が生成される。なお、剥離起点部12が生成される際の保持ベース43の高さは、当該剥離起点部12がエアーノズル68からの高圧エアーにより剥離されたときに、該剥離起点部12が該保持ベース43に設けられた挟持手段48の挟持片48a、48b間にちょうど収まる高さに調整される。
【0040】
剥離起点部12がエアーノズル68からの高圧エアーにより持ち上げられると、該移動基台32の待機位置方向への移動を一旦停止し、第3エアーシリンダー47の作動により挟持部材48aを挟持部材48b側に移動させて、剥離した保護テープ11の剥離起点部12を挟持手段48により挟持する(図12を参照)。そして、第1エアーシリンダー41を作動させることにより、挟持手段48の下方に折り曲げローラ55を進入させることが可能な程度にシート保持手段4全体を上方に移動させ、移動基台32を待機位置方向に移動させながら、門型の支持フレーム51の支持部53の案内孔54に沿って折り曲げローラ55をシート保持手段4側に移動させ剥離をさらに進行させる(図13を参照)。なお、上記したように、折り曲げローラ55の表面はフッ素樹脂がコーティングされているため、保護テープ11の粘着面は、折り曲げローラ55の表面には付着しない。
【0041】
本実施形態では、剥離時の保護テープ11が、剥離する方向(図中左方)に180度折り曲げられるが(図14を参照)、当該折り曲げ角度は、必ずしも180度である必要はない。しかし、半導体ウエーハ10は裏面が研削されて極めて薄い板状に形成されるものであり、当該折り曲げ角度が小さいと保護テープ11の剥離時に半導体ウエーハ10の割れ、破損等を引き起こす恐れがあり、できるだけ180度、もしくは、それに近い角度で折り曲げられることが好ましい。
【0042】
折り曲げローラ55がシート保持板46の下面の図中左方側他端部まで移動すると、半導体ウエーハ10から保護テープ11が完全に剥離される(図15を参照)。このようにして剥離作業が完了する。
【0043】
図16に示されているように、剥離した保護テープ11がシート保持板46の下面に展開させられるとき、中空に形成され下面に微孔が設けられているシート保持板46の内部を、図示しない吸引手段により吸引し、剥離された保護テープ11が吸引保持される。そして移動基台32と折り曲げローラ55は、剥離作業開始時に位置付けされる待機位置に移動させられるとともに、第3エアーシリンダー47の作動により挟持手段48aを一方の挟持手段48bから離反させ保護テープ11の外周端部を解放する。
【0044】
次に、図2、17、18により、前記した剥離作業に続いて実行される、剥離した保護テープ11を廃棄容器7に廃棄する廃棄作業について説明する。
【0045】
前述したように、半導体ウエーハ10から剥離された保護テープ11は、シート保持板46が静止基台2のガイドレール31、31の上方に位置付けられた状態で吸引保持されている。
【0046】
その状態から保護テープ11をシート保持板46に吸引保持させたまま、第1エアーシリンダー41の軸42を平面視時計回りに回転させて、静止基台2の傍らに配設された廃棄容器7の直上にシート保持板46を位置づける(図2(b)、図17を参照)。なお、図17、18は、静止基台2の廃棄容器を配設した側から見た側面図であり、説明の都合上、シート保持手段4と廃棄容器7のみを提示し、廃棄容器7は断面図としている。
【0047】
シート保持板46を廃棄容器7の直上に位置づけた後、第2エアーシリンダー44を作動させて、シート保持板46を廃棄容器7内に降下させる(図18を参照)。当該降下させる際の下端位置は廃棄容器7内に設けた図示しないレベルセンサーを用いて廃棄した保護テープ11の積層レベルに応じて適宜変化させてもよいし、廃棄した枚数をカウントしてカウントした枚数に応じて変化させてもよい。
【0048】
シート保持板46を廃棄容器内に降下させた後、最下端においてシート保持板46の下面の微孔からの吸引を停止し、保護テープ11を落下させる。この際シート保持板46の下面の微孔から空気を噴出させることにより保護テープ11の離脱をより確実に実行させることができる。そして、廃棄容器7のレベルセンサーにより廃棄容器に積層される剥離後の保護テープ11が廃棄容器に所定量溜まったことが検出された場合、あるいはカウントされた枚数が所定量に達した場合、廃棄容器7に溜まった保護テープ11の廃棄を促すべく、当該剥離装置1のオペレーターに知らせる警報音の発生、警報ランプの点灯などを実行する。
【0049】
なお、上記実施形態では、剥離起点部生成手段として、該粘着テープに作用する剥離爪と、該粘着テープの厚さ方向と該剥離爪位置とを撮像する撮像手段と、該撮像手段から得られた画像情報に基づいて該剥離爪を該粘着テープの厚さ方向の所要位置に位置付ける位置付け手段と、高圧エアーを噴射するエアーノズルとを有するものであって、該剥離爪部の上面を、反射面から構成し、該反射面の上方に位置する撮像手段により該反射面を撮像することで、粘着テープの厚さ方向に対する剥離爪部の先端部の相対的な位置関係を把握し、剥離爪を粘着テープの所要の位置に位置付けて突き当て、エアーノズルから高圧エアーを噴射することで剥離起点部を生成するように構成されていたが、参考例として、例えば、撮像手段を上記剥離装置1の側方側に配設し、該撮像手段により撮像された画像により、該側方側から、剥離爪の先端部位置と、該粘着テープの厚さ方向との相対位置を把握し、該剥離爪の先端部を該粘着テープの厚さ方向の所要位置に位置付けることも可能である。
【0050】
また、上記実施形態では、エアーノズルから高圧エアーを噴射するように構成されていたが、必ずしもこれに限定されない。該剥離爪部を保護テープに突き当てて該剥離起点部生成ユニットを所定量上昇させた後、エアーノズルからの高圧エアーを用いず、剥離が開始された保護テープ11の裏面に折り曲げローラ55を突き当てるなどして、剥離起点部を形成することも適用可能である。
【0051】
本発明に基づく剥離装置は以上のように構成されており、保護テープの剥離を必要とする種々の分野にて幅広く利用されることが可能であり、取り扱いが容易で、剥離用のテープ等の消耗品を使用していないことから、当該剥離装置を複雑化することなく構成することができ、また、剥離した保護テープを効率よく廃棄容器に積層廃棄できることから、廃棄容器の容量を十分に生かすことができる。
なお、上記した本発明の実施形態では、板状部材を半導体ウエーハとしたが、これに限定されず、例えば、板状部材としてサファイヤ基板を採用し、該サファイヤ基板に対して保護テープを貼付したような場合等、表面にシート状の部材を貼付した板状部材を使用し、シート状の部材を剥離させるものであれば、本願発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1:剥離装置
2:静止基台
3:保持テーブル機構(保持テーブル)
4:シート保持手段
5:折り曲げローラ移動手段
6:剥離起点部生成手段
7:廃棄容器
10:半導体ウエーハ(板状部材)
11:保護テープ(シート)
12:剥離起点部
31、31:ガイドレール
32:移動基台
36:テーブル本体
41:第1エアーシリンダー
44:第2エアーシリンダー
47:第3エアーシリンダー
48:挟持部材
55:折り曲げローラ
61:保持ケース
62:ボールねじ軸
63:剥離起点部生成ユニット
64:パルスモータ
66:剥離爪
67:撮像手段
68:エアーノズル
70:制御手段
71:記憶手段
72:モニター
図1
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