特許第6543291号(P6543291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543291
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池用セパレータ
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20190628BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20190628BHJP
【FI】
   H01M2/16 P
   H01M2/16 L
   H01M10/0566
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-41082(P2017-41082)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-147684(P2018-147684A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2018年10月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉丸 央江
(72)【発明者】
【氏名】原 秀作
(72)【発明者】
【氏名】村上 力
【審査官】 小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−061973(JP,A)
【文献】 特開2010−061974(JP,A)
【文献】 特開2010−111096(JP,A)
【文献】 特開2011−126275(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/102241(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/118660(WO,A1)
【文献】 特開2016−191069(JP,A)
【文献】 特開2007−265824(JP,A)
【文献】 特開平11−130900(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/026482(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/16
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用セパレータであって、
上記ポリオレフィン多孔質フィルムの、倍率6500倍のFIB−SEM測定と画像解析から得られ、1pixが19.2nmとなる条件において、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの面方向の範囲が256pix×256pixで、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの厚みが上記ポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚分であり、かつ、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの表面から内部厚み方向に向かって形成される、空隙部分と多孔質フィルム部分とが二階調化された連続像から、ボックスカウンティング法を用いて計測される、内部フラクタル次元が、1.77〜1.90である非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項2】
前記ポリオレフィン多孔質フィルムの細孔の孔径が、0.14μm以下である、請求項1に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の非水電解液二次電池用セパレータと絶縁性多孔質層とを備える非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項4】
前記絶縁性多孔質層がポリアミド系樹脂を含む、請求項3に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項5】
前記ポリアミド系樹脂が、アラミド樹脂である、請求項4に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータ。
【請求項6】
正極と、請求項1もしくは2に記載の非水電解液二次電池用セパレータ、又は、請求項3〜5の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とがこの順で配置されてなる非水電解液二次電池用部材。
【請求項7】
請求項1もしくは2に記載の非水電解液二次電池用セパレータ、又は、請求項3〜5の何れか1項に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータを備えることを特徴とする非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池等の非水電解液二次電池は、現在、パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末等の機器に用いる電池として広く使用されている。
【0003】
リチウムイオン電池を搭載する機器では充電器や電池パックに多種類の電気的保護回路を設け、電池を正常、安全に作動させる対策を施しているが、例えば、これら保護回路の故障や誤作動により、リチウムイオン電池が充電され続けると、発熱を伴う正負極表面での電解液の酸化還元分解や、正極活物質の分解による酸素放出、さらには負極における金属リチウムの析出が起こり、最終的に熱暴走状態に陥ることで、場合によって電池の発火や破裂を引き起こす危険がある。
【0004】
このような危険な熱暴走状態に至る前に電池を安全に停止させるため、現在ほとんどのリチウムイオン電池には、何らかの不具合で電池内部温度が上昇すると約130℃〜140℃で多孔質基材に開いている細孔が閉塞するシャットダウン機能を有するポリオレフィン多孔質基材が、セパレータとして使用されている。電池内部温度上昇時に当該機能が発現することで、セパレータを透過するイオンを遮断し、電池を安全に停止させることができる。
【0005】
上記ポリオレフィン多孔質基材としては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−130900号公報(1999年5月18日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されているような従来の非水電解液二次電池用セパレータを備える非水電解液二次電池の初期電池抵抗は十分に優れてはいなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、異なる領域の境界の複雑性の指標となる「フラクタル次元」に着目し、多孔質基材内部の空隙部分と樹脂部分(多孔質フィルム部分)との、界面構造の複雑性を「フラクタル次元」を用いて定量化した。そして本発明者らは、当該「フラクタル次元」が特定の範囲である、ポリオレフィン多孔質フィルムをセパレータに用いた非水電解液二次電池が、初期電池抵抗特性に優れ、非水電解液二次電池用セパレータとして有用であることを見出し、本発明に想到した。
【0009】
本発明は、以下の[1]〜[5]に示す発明を含む。
[1] ポリオレフィン多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用セパレータであって、
上記ポリオレフィン多孔質フィルムの、倍率6500倍のFIB−SEM測定と画像解析から得られ、1pixが19.2nmとなる条件において、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの面方向の範囲が256pix×256pixで、厚みが上記ポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚分であり、かつ、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの表面から内部厚み方向に向かって形成される、空隙部分と多孔質フィルム部分とが二階調化された連続像から、ボックスカウンティング法を用いて計測される、内部フラクタル次元が、1.75〜1.91である非水電解液二次電池用セパレータ。
[2]上記内部フラクタル次元が、1.77〜1.90である[1]に記載の非水電解液二次電池用セパレータ。
[3][1]または[2]に記載の非水電解液二次電池用セパレータと、絶縁性多孔質層とを備える非水電解液二次電池用積層セパレータ。
[4]正極と、[1]若しくは[2]に記載の非水電解液二次電池用セパレータ、または、[3]に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とがこの順で配置されてなる非水電解液二次電池用部材。
[5][1]若しくは[2]に記載の非水電解液二次電池用セパレータ、または、[3]に記載の非水電解液二次電池用積層セパレータを備えることを特徴とする非水電解液二次電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータによれば、当該非水電解液二次電池用セパレータを備える、初期電池抵抗が低い非水電解液二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態における非水電解液二次電池用セパレータの内部フラクタル次元を算出する方法の一工程である、測定用試料からXZ断面連続像を得る工程を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態における非水電解液二次電池用セパレータの内部フラクタル次元を算出する方法の一工程である、二階調化したXY面連続像から解析用の連続像を得る工程を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態における非水電解液二次電池用セパレータの内部フラクタル次元を算出する方法の一工程である、解析用の連続像をZ方向の大きさが1pixの複数の像に分割する工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に関して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0013】
[実施形態1:非水電解液二次電池用セパレータ]
本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用セパレータであって、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの、倍率6500倍のFIB−SEM測定と画像解析から得られ、1pixが19.2nmとなる条件において、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの面方向の範囲が256pix×256pixで、厚みが上記ポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚分であり、かつ、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの表面から内部厚み方向に向かって形成される、空隙部分と多孔質フィルム部分とが二階調化された連続像から、ボックスカウンティング法を用いて計測される、内部フラクタル次元が、1.75〜1.91である。
【0014】
上記内部フラクタル次元は、好ましくは1.77〜1.90であり、より好ましくは1.80〜1.89である。
【0015】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、ポリオレフィン多孔質フィルムを含み、好ましくは、ポリオレフィン多孔質フィルムからなる。ここで、「ポリオレフィン多孔質フィルム」とは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質フィルムである。また、「ポリオレフィン系樹脂を主成分とする」とは、多孔質フィルムに占めるポリオレフィン系樹脂の割合が、多孔質フィルムを構成する材料全体の50体積%以上、好ましくは90体積%以上であり、より好ましくは95体積%以上であることを意味する。
【0016】
上記多孔質フィルムは、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータまたは後述する本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータの基材となり得る。また、上記多孔質フィルムは、その内部に連結した細孔を多数有しており、一方の面から他方の面に気体や液体を通過させることが可能となっている。
【0017】
上記ポリオレフィン系樹脂には、重量平均分子量が3×10〜15×10の高分子量成分が含まれていることがより好ましい。特に、ポリオレフィン系樹脂に重量平均分子量が100万以上の高分子量成分が含まれていると、上記多孔質フィルムおよび上記多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用積層セパレータの強度が向上するのでより好ましい。
【0018】
上記多孔質フィルムの主成分であるポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂であり、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等の単量体が(共)重合されてなる単独重合体(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン)または共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体)が挙げられる。このうち、過大電流が流れることをより低温で阻止(シャットダウン)することができるため、ポリエチレンがより好ましい。当該ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン−α−オレフィン共重合体)、重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレン等が挙げられ、このうち、重量平均分子量が30万から100万の高分子量のポリエチレンまたは重量平均分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンがさらに好ましい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータにおけるポリオレフィン多孔質フィルムの「内部フラクタル次元」は、以下に示す方法にて算出される。上記ポリオレフィン多孔質フィルムを、FIB(収束イオンビーム)で加工し、倍率6500倍のSEM(走査型電子顕微鏡)で撮像することを繰り返すことにより、上記ポリオレフィン多孔質フィルム内部の連続像を得る。その後、得られた連続像に対して、空隙部分と多孔質フィルム部分の二階調化を行う。さらに、二階調化された連続像から、1pixが19.2nmとなる条件において、面方向の範囲が256pix×256pixで、厚みがセパレータ膜厚分であり、かつ、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの表面から内部厚み方向に向かって形成される連続像を抽出する。抽出された連続像を厚みが1pixである複数の像に分割する。分割されたそれぞれの像における、空隙部分と多孔質フィルム部分との境界構造のフラクタル次元を、ボックスカウンティング法を用いて計測し、計測されたこれらのフラクタル次元の平均値を算出する。算出された上記フラクタル次元の平均値を、上記ポリオレフィン多孔質フィルム内部の、空隙部分と多孔質フィルム部分との境界構造のフラクタル次元(以下、「内部フラクタル次元」と称する。)とする。
【0020】
なお、ここで、「表面」とは、ポリオレフィン多孔質フィルムの何れの表面でもよく、例えば、上面または下面であり得る。
【0021】
または、「FIB−SEM測定」とは、収束イオンビーム(FIB)にて試料を加工し、当該試料の断面を作製し(露出させ)、当該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した画像(電子顕微鏡写真)を得ることを言う。また、多孔質フィルム部分とは、ポリオレフィン多孔質フィルムの空隙部分以外の部分、言い換えれば樹脂部分を言う。
【0022】
具体的には、ポリオレフィン多孔質フィルムの内部フラクタル次元は、例えば、以下に示す方法にて計測され得る(図1〜3を参照)。
【0023】
先ず、ポリオレフィン多孔質フィルムに包埋用樹脂(エポキシ樹脂等)を含浸させ、ポリオレフィン多孔質フィルムの空隙部を埋めて硬化させ、四酸化オスミウムで処理して測定用試料を作製する。得られた測定用試料の表面にPt−Pdを蒸着する。
【0024】
図1に示すように、上記測定用試料の厚み方向をZ方向とし、厚みと直交する上記測定用試料の面と平行な任意の方向をX方向、更にX並びにZと直交する方向をY方向とする。FIB−SEM(FEI製;HELIOS600)を用いてFIB加工することにより、上記測定用試料の表面の任意の一辺Xと厚みZからなる断面(以降XZ断面)を作製する。その断面を加速電圧;2.1kV、倍率6500倍でSEM観察(反射電子像)してSEM画像を得る。
【0025】
上記SEM観察後、上記XZ断面と直交するY方向に19.2nmの厚さでFIB加工して新しくXZ断面を作製する。その断面を上記条件でSEM観察(反射電子像)してSEM画像を得る。以後同様に、厚さ19.2nm間隔でFIB加工および断面のSEM画像の取得を繰り返すことで測定用試料のXZ断面連続像を取得する。
【0026】
すなわち、図1に示すように、測定用試料のY軸に沿って19.2nm間隔にてFIB加工によりXZ断面の作製を繰り返し、作製されるそれぞれの断面をSEM観察することにより、測定用試料の連続したXZ断面像(XZ断面連続像)を得る。
【0027】
続いて、上記XZ断面連続像に対して画像解析ソフト(Visualization Sciences Group製;Avizo Ver.6.0)を用いて位置補正を行い、補正後のXZ断面連続像を、X,Y,Z軸19.2nm/pixのスケールで得る。
【0028】
上記位置補正されたXZ断面連続像に対し、定量解析ソフト(ラトックシステムエンジニアリング製;TRI/3D−BON−FCS)を使用して、樹脂部分と空隙部分とを区別できるように二階調化を行う。これにより、多孔質フィルム部分(樹脂部分)と空隙部分(包埋用樹脂部分)とを識別する。
【0029】
次いで多孔質フィルム部分と空隙部分とに二階調化した上記XZ断面連続像の、XZ面を、TRI/3D−BON−FCS上のEditViewerモードのSectionViewでXY面に回転させる。これにより、上記XZ断面連続像を、X,Y,Z軸19.2nm/pixのスケールで、上記測定用試料の表面から内部、言い換えれば表面から内部を経て当該表面と反対側の面へ向かう厚さ方向の二階調化した上記測定用試料の面方向連続像(以下、XY面連続像と称する)に変換する。
【0030】
その後、図2に示すように、上記XY面連続像の任意の一部から、画素数がX方向に256pix、Y方向に256pix、Z方向に厚み分の範囲をトリミングし、解析用の連続像を抽出する。
【0031】
その後、図3に示すように、上記解析用の連続像を、Z方向の大きさが1pixの複数の像に分割する。分割された上記像のそれぞれをビットマップ形式のモノクロ画像として保存した上で、ボックスカウンティング法によりフラクタル次元解析を行い、分割したそれぞれの像における、空隙部分と多孔質フィルム部分との境界構造のフラクタル次元を算出する。さらに、得られた上記Z方向の大きさが1pixであるそれぞれの像におけるフラクタル次元を平均し、得られた平均値を、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの「内部フラクタル次元」とする。
【0032】
上述のボックスカウンティング法による解析には、画像解析ソフトPopImaging Ver.6.0(デジタル・ビーイング・キッズ製)を用いる。具体的には、保存したビットマップ形式のモノクロ画像を画像解析ソフト(PopImaging Ver.6.0)上で開き、メニュー上の解析からフラクタル解析を行うことで、フラクタル次元を算出する。
【0033】
なお、ボックスカウンティング法によるフラクタル次元の解析は公知の方法であり、解析結果の再現性が十分に得られる限り、フラクタル次元の解析に他の同機能を有する画像解析ソフトウェアあるいはプログラムを用いても良い。他のソフトウェアとしては、例えば、「AT−Image 」等の画像解析ソフトウェアが挙げられる。
【0034】
上記フラクタル次元は、空隙部分と樹脂部分(多孔質フィルム部分)の界面構造の複雑さを定量的に示す指標であり、具体的には、単位面積におけるフラクタル次元が1の場合は、直線(一次元)を意味し、フラクタル次元が2の場合は、ベタ面(二次元)を意味する。すなわち、フラクタル次元が2に近いほど、空隙部分と樹脂部分(多孔質フィルム部分)の界面構造がより複雑かつより緻密であることを意味する。一方、フラクタル次元が1に近いほど、空隙部と樹脂部の界面構造がより単純かつより疎な構造であることを意味する。
【0035】
上記ポリオレフィン多孔質フィルムの内部フラクタル次元が小さいことは、空隙部分と樹脂部分の界面構造が単純であり、単なる円柱等の単純な構造が多数存在することを意味する。一方、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの内部フラクタル次元が大きいことは、空隙部分と樹脂部分の界面構造が複雑であり、入り組んだ樹脂部分によって仕切られた複雑な構造が多数存在することを意味する。すなわち、内部フラクタル次元が小さいほど、個々の空隙のサイズは大きくなり、また、樹脂部分の太さは太くなる傾向がある。その結果として、内部フラクタル次元が小さいほど、ポリオレフィン多孔質フィルムの面内の均一性は低下する傾向がある。また、内部フラクタル次元が大きいほど、個々の空隙のサイズは小さくなり、また、樹脂部の太さは細くなる傾向がある。その結果として、内部フラクタル次元が大きいほど、イオンの通り道(移動距離)は長くなる傾向がある。
【0036】
従って、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの内部フラクタル次元が、1.75以上であり、一定以上の複雑性を有するときには、ポリオレフィン多孔質フィルム(非水電解液二次電池用セパレータ)の面内の均一性は高くなるため、電池に用いたときに、その面内に均一にイオン(例えば、Li、等)を流すことができる。上記ポリオレフィン多孔質フィルムの内部フラクタル次元が低すぎるときには、面内の均一性が低いために、イオンが集中的に流れる部分と、流れ難い部分とが生じ、イオンが集中的に流れる部分では電極が過剰に作動し、イオンの流れ難い部分では電極が作動しないため、電極面内の作動状態にバラツキが生じ、結果的に電池の抵抗が増大することになる。
【0037】
また、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの内部フラクタル次元が、1.91以下であり、一定以下の複雑性を有するときには、複雑性が高くなり過ぎることによってイオンの移動距離が長くなることを防ぐことができるため、初期電池抵抗特性の低下を防止することができる。上記ポリオレフィン多孔質フィルムの内部フラクタル次元が高すぎるときには、過剰に複雑性が高いために、イオンの移動距離が長くなり、結果的に電池の抵抗が高くなると考えられる。
【0038】
すなわち、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの内部フラクタル次元を、1.75以上、1.91以下とすることによって、空隙部分と樹脂部分の界面構造の複雑さを適度に調節し、初期電池抵抗特性を高くすることができる。
【0039】
上記ポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚は、特に限定されないが、4〜40μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。
【0040】
上記ポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚が4μm以上であれば、電池の内部短絡を十分に防止することができるという観点から好ましい。
【0041】
一方、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの膜厚が40μm以下であれば、非水電解液二次電池の大型化を防ぐことができるという観点から好ましい。
【0042】
上記ポリオレフィン多孔質フィルムの単位面積当たりの重量目付は、電池の、重量エネルギー密度や体積エネルギー密度を高くすることができるように、通常、4〜20g/mであることが好ましく、5〜12g/mであることがより好ましい。
【0043】
上記ポリオレフィン多孔質フィルムの透気度は、十分なイオン透過性を示すという観点から、ガーレ値で30〜500sec/100mLであることが好ましく、50〜300sec/100mLであることがより好ましい。
【0044】
上記ポリオレフィン多孔質フィルムの空隙率は、電解液の保持量を高めると共に、過大電流が流れることをより低温で確実に阻止(シャットダウン)する機能を得ることができるように、20体積%〜80体積%であることが好ましく、30〜75体積%であることがより好ましい。
【0045】
上記ポリオレフィン多孔質フィルムが有する細孔の孔径は、十分なイオン透過性、および、電極を構成する粒子の入り込みを防止するという観点から、0.3μm以下であることが好ましく、0.14μm以下であることがより好ましい。
【0046】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータは、上記ポリオレフィン多孔質フィルム以外に、必要に応じて、多孔質層を含んでいてもよい。当該多孔質層としては、後述する非水電解液積層セパレータを構成する絶縁性多孔質層、および、その他の多孔質層として、耐熱層や接着層、保護層等の公知の多孔質層が挙げられる。
【0047】
[ポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法]
上記ポリオレフィン多孔質フィルムの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィン系樹脂と、添加剤とを溶融混練し、押し出すことで、ポリオレフィン樹脂組成物を作成し、当該ポリオレフィン樹脂組成物を延伸、洗浄および乾燥する方法が挙げられる。
【0048】
具体的には、以下に示す方法を挙げることができる。
(A)ポリオレフィン系樹脂と、添加剤とを二軸混練機に加えて溶融混練し、ポリオレフィン樹脂組成物を得る工程、
(B)上記工程Aにて得られた溶融したポリオレフィン樹脂組成物を押し出し機のTダイより押し出し、冷却しながらシート状に成形することにより、シート状のポリオレフィン樹脂組成物を得る工程、
(C)上記工程Bにて得られた上記シート状のポリオレフィン樹脂組成物を、延伸する工程、
(D)上記工程Cにて延伸されたポリオレフィン樹脂組成物を、洗浄液を用いて洗浄する工程、
(E)上記工程Dにて洗浄されたポリオレフィン樹脂組成物を、乾燥および/または熱固定することにより、ポリオレフィン多孔質フィルムを得る工程。
【0049】
工程(A)において、ポリオレフィン系樹脂の使用量は、得られるポリオレフィン樹脂組成物の重量を100重量%とした場合、5重量%〜50重量%であることが好ましく、10重量%〜30重量%であることがより好ましい。
【0050】
工程(A)における、上記添加剤としては、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル類、オレイルアルコール等の不飽和高級アルコール、ステアリルアルコール等の飽和高級アルコール、パラフィンワックス、石油樹脂、並びに、流動パラフィン等が挙げられる。
【0051】
石油樹脂としては、イソプレン、ペンテン、およびペンタジエンなどのC5石油留分を主原料に重合された脂肪族炭化水素樹脂;インデン、ビニルトルエン、およびメチルスチレンなどのC9石油留分を主原料に重合された芳香族炭化水素樹脂;それらの共重合樹脂;上記樹脂を水素化した脂環族飽和炭化水素樹脂;並びにそれらの混合物が挙げられる。好ましい石油樹脂は、脂環族飽和炭化水素樹脂である。
【0052】
中でも、添加剤としては、流動パラフィンなどの孔形成剤が好ましく使用される。
【0053】
また、特に、添加剤として石油樹脂を使用することによって、得られるポリオレフィン多孔質フィルムの空隙部分と樹脂部分の界面構造の複雑性を好適に調節することができる傾向がある。その結果、上記ポリオレフィン多孔質フィルムを含む非水電解液二次電池用セパレータの内部フラクタル次元を好適な範囲に制御することができる。
【0054】
工程(A)での、二軸混練機の回転数は、50rpm以上、2,000rpm以下で実施することが好ましく、100rpm以上、1,000rpm以下で実施することがより好ましく、150rpm以上、500rpm以下で実施することがさらに好ましい。回転数が50rpm以上であることにより、ポリオレフィン系樹脂と添加剤との均一分散性の低下を抑制することができ、その結果、内部フラクタル次元を向上させ、好適な範囲に制御することができる。一方、回転数が2,000rpm以下であることにより、樹脂に与えられるせん断エネルギーおよび、混練時の発熱量が大きくなることを抑制することができ、ポリオレフィン系樹脂の分子切断等の熱劣化の発生を防止することができる。その結果、内部フラクタル次元を低下させ、好適な範囲に制御することができる。
【0055】
また、熱劣化防止の観点から、二軸混練機の出口部分におけるポリオレフィン樹脂組成物の温度を255℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは245℃以下に制御することが好ましい。
【0056】
工程(B)における冷却には、冷却ロールに接触させる方法等を用いるのが好ましい。
【0057】
工程(B)において、工程(A)の二軸混練機の出口部分におけるポリオレフィン樹脂組成物の温度と、冷却ロールの温度との差を好ましくは100℃以上、260℃以下、より好ましくは110℃以上、250℃以下、さらに好ましくは115℃以上、240℃以下に制御する。上記温度差が100℃以上である場合、冷却は十分であり、ポリオレフィン系樹脂と添加剤との相分離が粗くなることを抑制することができ、その結果、内部フラクタル次元を向上させ、好適な範囲に制御することができる。一方、上記温度差が260℃以下である場合には、冷却速度が速くなり過ぎることなく適度な範囲に制御されることにより、細かなミクロ相分離の発生が抑制され、その結果、内部フラクタル次元を低下させ、好適な範囲に制御することができる。
【0058】
工程(C)において、上記シート状のポリオレフィン樹脂組成物の延伸は、市販の延伸装置を使用することができる。またシート状のポリオレフィン樹脂組成物の温度は、融点以下であり、80℃以上、125℃以下が好ましく、100℃以上、120℃以下であることがより好ましい。
【0059】
延伸はMD方向のみに行ってもよいし、TD方向のみに行ってもよいし、MD方向とTD方向の両方の方向に行ってもよい。MD方向とTD方向の両方の方向に延伸する方法としては、MD方向に延伸した後、続いてTD方向に延伸する逐次二軸延伸、およびMD方向とTD方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸が挙げられる。
【0060】
延伸には、チャックでシートの端を掴んで引き伸ばす方法を用いてもよいし、シートを搬送するロールの回転速度を変えることで引き伸ばす方法を用いてもよいし、一対のロールを用いてシートを圧延する方法を用いてもよい。
【0061】
工程(C)において、逐次二軸延伸する場合の条件について詳述する。上記シート状のポリオレフィン樹脂組成物を、MD方向に延伸する際の延伸倍率は、好ましくは、3.0倍以上、7.0倍以下であり、より好ましくは4.5倍以上、6.5倍以下である。また、TD方向に延伸する際の延伸倍率は、好ましくは、3.0倍以上、7.0倍以下であり、より好ましくは4.5倍以上、6.5倍以下である。
【0062】
工程(D)において使用される洗浄液は、孔形成剤等の添加剤を除去できる溶媒であれば特に限定されないが、例えば、ヘプタン、ジクロロメタンなどを挙げることができる。
【0063】
本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータと絶縁性多孔質層とを備える。従って、本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池用積層セパレータは、上に記載した本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータを構成するポリオレフィン多孔質フィルムを含む。
【0064】
[絶縁性多孔質層]
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータを構成する絶縁性多孔質層は、通常、樹脂を含んでなる樹脂層であり、好ましくは、耐熱層または接着層である。絶縁性多孔質層(以下、単に、「多孔質層」とも称する)を構成する樹脂は、電池の非水電解液に不溶であり、また、その電池の使用範囲において電気化学的に安定であることが好ましい。
【0065】
多孔質層は、必要に応じて、非水電解液二次電池用セパレータの片面または両面に積層される。ポリオレフィン多孔質フィルムの片面に多孔質層が積層される場合には、当該多孔質層は、好ましくは、非水電解液二次電池としたときの、ポリオレフィン多孔質フィルムにおける正極と対向する面に積層され、より好ましくは、正極と接する面に積層される。
【0066】
多孔質層を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン;(メタ)アクリレート系樹脂;含フッ素樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ゴム類;融点またはガラス転移温度が180℃以上の樹脂;水溶性ポリマー等が挙げられる。
【0067】
また、上述の樹脂のうち、ポリオレフィン、アクリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、および水溶性ポリマーが好ましい。ポリアミド系樹脂としては、全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)が好ましい。ポリエステル系樹脂としては、ポリアリレートおよび液晶ポリエステルが好ましい。
【0068】
多孔質層は、微粒子を含んでもよい。本明細書における微粒子とは、一般にフィラーと称される有機微粒子または無機微粒子のことである。従って、多孔質層が微粒子を含む場合、多孔質層に含まれる上述の樹脂は、微粒子同士、並びに微粒子と多孔質フィルムとを結着させるバインダー樹脂としての機能を有することとなる。また、上記微粒子は、絶縁性微粒子が好ましい。
【0069】
多孔質層に含まれる有機微粒子としては、樹脂からなる微粒子が挙げられる。
【0070】
多孔質層に含まれる無機微粒子としては、具体的には、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、窒化チタン、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、マイカ、ゼオライトおよびガラス等の無機物からなるフィラーが挙げられる。これらの無機微粒子は、絶縁性微粒子である。上記微粒子は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上記微粒子のうち、無機物からなる微粒子が好適であり、シリカ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、水酸化アルミニウム、またはベーマイト等の無機酸化物からなる微粒子がより好ましく、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、ベーマイトおよびアルミナからなる群から選択される少なくとも1種の微粒子がさらに好ましく、アルミナが特に好ましい。
【0072】
多孔質層における微粒子の含有量は、多孔質層の1〜99体積%であることが好ましく、5〜95体積%であることがより好ましい。微粒子の含有量を上記範囲とすることにより、微粒子同士の接触によって形成される空隙が、樹脂等によって閉塞されることが少なくなる。よって、十分なイオン透過性を得ることができると共に、単位面積当たりの目付を適切な値にすることができる。
【0073】
微粒子は、粒子または比表面積が互いに異なる2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
多孔質層の厚さは、非水電解液二次電池用積層セパレータの片面あたり、0.5〜15μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。
【0075】
多孔質層の厚さが1μm未満であると、電池の破損等による内部短絡を十分に防止することができない場合がある。また、多孔質層における電解液の保持量が低下する場合がある。一方、多孔質層の厚さが両面の合計で30μmを超えると、レート特性またはサイクル特性が低下する場合がある。
【0076】
多孔質層の単位面積当たりの重量目付(片面当たり)は、1〜20g/mであることが好ましく、4〜10g/mであることがより好ましい。
【0077】
また、多孔質層の1平方メートル当たりに含まれる多孔質層構成成分の体積(片面当たり)は、0.5〜20cmであることが好ましく、1〜10cmであることがより好ましく、2〜7cmであることがさらに好ましい。
【0078】
多孔質層の空隙率は、十分なイオン透過性を得ることができるように、20〜90体積%であることが好ましく、30〜80体積%であることがより好ましい。また、多孔質層が有する細孔の孔径は、非水電解液二次電池用積層セパレータが十分なイオン透過性を得ることができるように、3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
【0079】
[積層体]
本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池用積層セパレータである積層体は、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータおよび絶縁性多孔質層を備え、好ましくは、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータの片面または両面に上述の絶縁性多孔質層が積層している構成を備える。
【0080】
本発明の一実施形態に係る積層体の膜厚は、5.5μm〜45μmであることが好ましく、6μm〜25μmであることがより好ましい。
【0081】
本発明の一実施形態に係る積層体の透気度は、ガーレ値で30〜1000sec/100mLであることが好ましく、50〜800sec/100mLであることがより好ましい。
【0082】
尚、本発明の一実施形態に係る積層体は、上記ポリオレフィン多孔質フィルムおよび絶縁性多孔質層の他に、必要に応じて、耐熱層や接着層、保護層等の公知の多孔膜(多孔質層)を、本発明の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0083】
本発明の一実施形態に係る積層体は、内部フラクタル次元が特定の範囲であるポリオレフィン多孔質フィルムを基材として含む。よって、当該積層体を非水電解液二次電池用積層セパレータとして含む非水電解液二次電池の初期電池抵抗を低下させることができる。
【0084】
[多孔質層、積層体の製造方法]
本発明の一実施形態における絶縁性多孔質層および本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法としては、例えば、後述する塗工液を本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータが備えるポリオレフィン多孔質フィルムの表面に塗布し、乾燥させることによって絶縁性多孔質層を析出させる方法が挙げられる。
【0085】
なお、上記塗工液を本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータが備えるポリオレフィン多孔質フィルムの表面に塗布する前に、当該ポリオレフィン多孔質フィルムの塗工液を塗布する表面に対して、必要に応じて親水化処理を行うことができる。
【0086】
本発明の一実施形態における多孔質層の製造方法および本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法に使用される塗工液は、通常、上述の多孔質層に含まれ得る樹脂を溶媒に溶解させると共に、上述の多孔質層に含まれ得る微粒子を分散させることにより調製され得る。ここで、樹脂を溶解させる溶媒は、微粒子を分散させる分散媒を兼ねている。また、溶媒により樹脂をエマルションとしてもよい。
【0087】
上記溶媒(分散媒)は、ポリオレフィン多孔質フィルムに悪影響を及ぼさず、上記樹脂を均一かつ安定に溶解し、上記微粒子を均一かつ安定に分散させることができればよく、特に限定されるものではない。上記溶媒(分散媒)としては、具体的には、例えば、水および有機溶媒が挙げられる。上記溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
塗工液は、所望の多孔質層を得るのに必要な樹脂固形分(樹脂濃度)や微粒子量等の条件を満足することができれば、どのような方法で形成されてもよい。塗工液の形成方法としては、具体的には、例えば、機械攪拌法、超音波分散法、高圧分散法、メディア分散法等が挙げられる。また、上記塗工液は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記樹脂および微粒子以外の成分として、分散剤や可塑剤、界面活性剤、pH調整剤等の添加剤を含んでいてもよい。尚、添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲であればよい。
【0089】
塗工液のポリオレフィン多孔質フィルムへの塗布方法、つまり、ポリオレフィン多孔質フィルムの表面への多孔質層の形成方法は、特に制限されるものではない。多孔質層の形成方法としては、例えば、塗工液をポリオレフィン多孔質フィルムの表面に直接塗布した後、溶媒(分散媒)を除去する方法;塗工液を適当な支持体に塗布し、溶媒(分散媒)を除去して多孔質層を形成した後、この多孔質層とポリオレフィン多孔質フィルムとを圧着させ、次いで支持体を剥がす方法;塗工液を適当な支持体に塗布した後、塗布面にポリオレフィン多孔質フィルムを圧着させ、次いで支持体を剥がした後に溶媒(分散媒)を除去する方法等が挙げられる。
【0090】
塗工液の塗布方法としては、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、例えば、グラビアコーター法、ディップコーター法、バーコーター法、およびダイコーター法等が挙げられる。
【0091】
溶媒(分散媒)の除去方法は、乾燥による方法が一般的である。また、塗工液に含まれる溶媒(分散媒)を他の溶媒に置換してから乾燥を行ってもよい。
【0092】
[実施形態3:非水電解液二次電池用部材、実施形態4:非水電解液二次電池]
本発明の実施形態3に係る非水電解液二次電池用部材は、正極、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータ、または、本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池用積層セパレータ、および負極がこの順で配置されてなる。
【0093】
本発明の実施形態4に係る非水電解液二次電池は、本発明の実施形態1に係る非水電解液二次電池用セパレータ、または、本発明の実施形態2に係る非水電解液二次電池用積層セパレータを含む。
【0094】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、例えば、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であって、正極と、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータと、負極とがこの順で積層されてなる非水電解液二次電池部材を備え得る。また、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、例えば、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であって、正極と、多孔質層と、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータと、負極とがこの順で積層されてなる非水電解液二次電池部材、すなわち、正極と、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータと、負極とがこの順で積層されてなる非水電解液二次電池部材を備えるリチウムイオン二次電池であり得る。なお、非水電解液二次電池用セパレータ以外の非水電解液二次電池の構成要素は、下記説明の構成要素に限定されるものではない。
【0095】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、通常、負極と正極とが、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータまたは本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータを介して対向した構造体に非水電解液が含浸された電池要素が、外装材内に封入された構造を有する。非水電解液二次電池は、非水電解質二次電池、特にはリチウムイオン二次電池であることが好ましい。なお、ドープとは、吸蔵、担持、吸着、または挿入を意味し、正極等の電極の活物質にリチウムイオンが入る現象を意味する。
【0096】
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池部材は、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータまたは本発明一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータを備えていることから、非水電解液二次電池に組み込まれた際に、当該非水電解液二次電池の充放電サイクル後の抵抗の増加を抑制することができる。本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池は、内部フラクタル次元が特定の範囲に調整された本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータを備えていることから、初期電池抵抗に優れるという効果を奏する。
【0097】
<正極>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池部材および非水電解液二次電池における正極としては、一般に非水電解液二次電池の正極として使用されるものであれば、特に限定されないが、例えば、正極活物質およびバインダー樹脂を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える正極シートを使用することができる。なお、上記活物質層は、更に導電剤を含んでもよい。
【0098】
上記正極活物質としては、例えば、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料が挙げられる。当該材料としては、具体的には、例えば、V、Mn、Fe、CoおよびNi等の遷移金属を少なくとも1種類含んでいるリチウム複合酸化物が挙げられる。
【0099】
上記導電材としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維および有機高分子化合物焼成体等の炭素質材料等が挙げられる。上記導電材は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
上記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、アクリル樹脂、並びに、スチレンブタジエンゴムが挙げられる。なお、結着剤は、増粘剤としての機能も有している。
【0101】
上記正極集電体としては、例えば、Al、Niおよびステンレス等の導電体が挙げられる。中でも、薄膜に加工し易く、安価であることから、Alがより好ましい。
【0102】
シート状の正極の製造方法としては、例えば、正極活物質、導電材および結着剤を正極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて正極活物質、導電材および結着剤をペースト状にした後、当該ペーストを正極集電体に塗工し、乾燥した後に加圧して正極集電体に固着する方法;等が挙げられる。
【0103】
<負極>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池部材および非水電解液二次電池における負極としては、一般に非水電解液二次電池の負極として使用されるものであれば、特に限定されないが、例えば、負極活物質およびバインダー樹脂を含む活物質層が集電体上に成形された構造を備える負極シートを使用することができる。なお、上記活物質層は、更に導電助剤を含んでもよい。
【0104】
上記負極活物質としては、例えば、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料、リチウム金属またはリチウム合金等が挙げられる。当該材料としては、例えば、炭素質材料等が挙げられる。炭素質材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、および熱分解炭素類等が挙げられる。
【0105】
上記負極集電体としては、例えば、Cu、Niおよびステンレス等が挙げられ、特にリチウムイオン二次電池においてはリチウムと合金を作り難く、かつ薄膜に加工し易いことから、Cuがより好ましい。
【0106】
シート状の負極の製造方法としては、例えば、負極活物質を負極集電体上で加圧成型する方法;適当な有機溶剤を用いて負極活物質をペースト状にした後、当該ペーストを負極集電体に塗工し、乾燥した後に加圧して負極集電体に固着する方法;等が挙げられる。上記ペーストには、好ましくは上記導電助剤、および、上記結着剤が含まれる。
【0107】
<非水電解液>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池における非水電解液は、一般に非水電解液二次電池に使用される非水電解液であれば特に限定されず、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、Li10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩およびLiAlCl等が挙げられる。上記リチウム塩は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
非水電解液を構成する有機溶媒としては、例えば、カーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、アミド類、カーバメート類および含硫黄化合物、並びにこれらの有機溶媒にフッ素基が導入されてなる含フッ素有機溶媒等が挙げられる。上記有機溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
<非水電解液二次電池用部材および非水電解液二次電池の製造方法>
本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用部材の製造方法としては、例えば、上記正極、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用セパレータまたは本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池用積層セパレータ、および負極をこの順で配置する方法が挙げられる。
【0110】
また、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池の製造方法としては、例えば、上記方法にて非水電解液二次電池用部材を形成した後、非水電解液二次電池の筐体となる容器に当該非水電解液二次電池用部材を入れ、次いで、当該容器内を非水電解液で満たした後、減圧しつつ密閉することにより、本発明の一実施形態に係る非水電解液二次電池を製造することができる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0112】
[内部フラクタル次元の測定方法]
実施例1〜4、比較例1、2にて製造された非水電解液二次電池用セパレータ(ポリオレフィン多孔質フィルム)の内部フラクタル次元を以下に示す方法にて算出した。
【0113】
先ず、ポリオレフィン多孔質フィルムに包埋用樹脂(エポキシ樹脂等)を含浸させ、ポリオレフィン多孔質フィルムの空隙部を埋めて硬化させ、四酸化オスミウムで処理して測定用試料を作製し、上記測定用試料の表面にPt−Pdを蒸着した。
【0114】
上記測定用試料の厚み方向をZ方向とし、厚みと直交する上記測定用試料の面と平行な任意の方向をX方向、更にX並びにZと直交する方向をY方向とした場合に、FIB−SEM(FEI製;HELIOS600)を用いてFIB加工することにより、上記測定用試料の表面の任意の一辺Xと厚みZからなる断面(以降XZ断面)を作製し、その断面を加速電圧;2.1kV、倍率6500倍でSEM観察(反射電子像)してSEM画像を得た。
【0115】
上記SEM観察後、上記XZ断面と直交するY方向に19.2nmの厚さでFIB加工して新しくXZ断面を作製し、その断面を上記条件でSEM観察(反射電子像)してSEM画像を得た。以後同様に、厚さ19.2nm間隔でFIB加工および断面のSEM画像の取得を繰り返すことで測定用試料のXZ断面連続像を取得した。
【0116】
続いて、上記XZ断面連続像を画像解析ソフト(Visualization Sciences Group製;Avizo Ver.6.0)を用いて位置補正を行い、補正後のXZ断面連続像を得た。スケールはX,Y,Z軸19.2nm/pixであった。
【0117】
上記位置補正されたXZ断面連続像に対し、定量解析ソフト(ラトックシステムエンジニアリング製;TRI/3D−BON−FCS)を使用して、樹脂部分と空隙部分とを区別できるように二階調化を行った。
【0118】
具体的には、二階調化は、まずXZ断面連続像をTRI/3D−BON−FCS上で開き、メディアンフィルターを適用してノイズ除去を行い、次にAuto−LWを用いて、二階調化を行い、多孔質フィルム部分(樹脂部分)と空隙部分(包埋用樹脂部分)を識別して行った。
【0119】
次いで多孔質フィルム部分と空隙部分に二階調化した上記XZ断面連続像の、XZ面を、TRI/3D−BON−FCS上のEditViewerモードのSectionViewでXY面に変換し、上記測定用試料の表面から内部、言い換えれば表面から内部を経て当該表面と反対側の面へ向かう厚さ方向の二階調化した上記測定用試料の面方向連続像(以降XY面連続像)に変換した。変換後のXY面連続像のスケールもX,Y,Z軸19.2nm/pixであった。
【0120】
その後、上記XY面連続像の任意の一部を、画素数がX方向に256pix、Y方向に256pix、Z方向に厚み分pixの範囲をトリミングし、解析用の連続像を抽出した。
【0121】
上記解析用の連続像を、Z方向の大きさが1pixの複数の像に分割した。上記像のそれぞれをビットマップ形式のモノクロ画像として保存した上で、ボックスカウンティング法によりフラクタル次元解析を行い、分割したそれぞれの像における、空隙部分と多孔質フィルム部分との境界構造のフラクタル次元を算出した。さらに、得られた上記Z方向の大きさが1pixであるそれぞれの像におけるフラクタル次元を平均し、得られた平均値を、上記ポリオレフィン多孔質フィルムの「内部フラクタル次元」とした。
【0122】
[透気度の測定]
実施例1〜4、比較例1、2にて製造されたポリオレフィン多孔質フィルムを用い、JIS P8117に準拠して、それぞれの透気度を測定した。
【0123】
[初期電池抵抗特性の測定]
以下に示す実施例1〜4、比較例1、2にて製造された非水電解液二次電池の初期電池抵抗特性を、以下に示す方法にて測定した。
【0124】
充放電を経ていない上記非水電解液二次電池に対して、25℃で電圧範囲;4.1〜2.7V、電流値;0.2C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする、以下も同様)を1サイクルとして、4サイクルの初期充放電を行った。
【0125】
上記初期充放電試験後、日置電機製LCRメーター(商品名:ケミカルインピーダンスメーター:形式3532−80)によって、室温25℃において、非水電解液二次電池に電圧振幅10mV印加し、ナイキストプロットを算出し、測定周波数10Hzの実数部の抵抗値R10Hzとして読みとり、初期充放電試験後の抵抗値を測定し、その抵抗値を初期電池抵抗特性の値とした。
【0126】
[実施例1]
[ポリオレフィン多孔質フィルムの製造]
超高分子量ポリエチレン粉末(ハイゼックスミリオン145M、三井化学株式会社製)18重量%と、融点131℃の脂環族飽和炭化水素樹脂2重量%とを準備した。これらの粉末をブレンダーで、粉末の粒径が同じになるまで破砕混合した。その後、得られた混合粉末を定量フィーダーより二軸混練機に加えて、温度:210℃、スクリュー回転数:200rpmの条件で溶融混練した。この時、流動パラフィン80重量%をポンプで二軸混練機に加圧しながら加え、一緒に溶融混練した。また、上記二軸混練機の出口部分の樹脂温度は、240℃であった。
【0127】
その後、ギアポンプを経てTダイスより押し出すことで、ポリオレフィン樹脂組成物を作製した。該ポリオレフィン樹脂組成物を、40℃の冷却ロールで冷却し、シート状のポリオレフィン樹脂組成物の捲回体を得た。
【0128】
得られたシート状のポリオレフィン樹脂組成物を、117℃でMD方向に6.4倍延伸を行った。続けて、115℃でTD方向に6.0倍延伸を行った。
【0129】
延伸されたシート状のポリオレフィン樹脂組成物をヘプタンに浸漬することで、添加剤を除去した。当該ポリオレフィン樹脂組成物を室温にて静置乾燥後、さらに通風オーブンで加熱乾燥を行い、膜厚20.2μm、透気度111sec/100mLのポリオレフィン多孔質フィルムを得た。上記ポリオレフィン多孔質フィルムをポリオレフィン多孔質フィルム1とする。
【0130】
[非水電解液二次電池の製造]
次に、上記のようにして作製したポリオレフィン多孔質フィルム1を非水電解液二次電池用セパレータとして用いて非水電解液二次電池を以下に従って作製した。
【0131】
(正極の作製)
LiNi0.5Mn0.3Co0.2/導電材/PVDF(重量比92/5/3)をアルミニウム箔に塗布することにより製造された市販の正極を用いた。上記市販の正極を、正極活物質層が形成された部分の大きさが45mm×30mmであり、かつその外周に幅13mmで正極活物質層が形成されていない部分が残るように、アルミニウム箔を切り取って正極とした。正極活物質層の厚さは58μm、密度は2.50g/cm、正極容量は174mAh/gであった。
【0132】
(負極の作製)
黒鉛/スチレン−1,3−ブタジエン共重合体/カルボキシメチルセルロースナトリウム(重量比98/1/1)を銅箔に塗布することにより製造された市販の負極を用いた。上記市販の負極を、負極活物質層が形成された部分の大きさが50mm×35mmであり、かつその外周に幅13mmで負極活物質層が形成されていない部分が残るように、銅箔を切り取って負極とした。負極活物質層の厚さは49μm、密度は1.40g/cm、負極容量は372mAh/gであった。
【0133】
(非水電解液二次電池の組み立て)
上記正極、上記負極およびポリオレフィン多孔質フィルム1を使用して、以下に示す方法にて非水電解液二次電池を製造した。
【0134】
ラミネートパウチ内で、上記正極、非水電解液二次電池用セパレータとしてのポリオレフィン多孔質フィルム1、および負極をこの順で積層(配置)することにより、非水電解液二次電池用部材を得た。このとき、正極の正極活物質層における主面の全部が、負極の負極活物質層における主面の範囲に含まれる(主面に重なる)ように、正極および負極を配置した。
【0135】
続いて、上記非水電解液二次電池用部材を、アルミニウム層とヒートシール層とが積層されてなる袋に入れ、さらにこの袋に非水電解液を0.25mL入れた。上記非水電解液としては、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートおよびエチレンカーボネートの体積比が50:20:30の混合溶媒に、濃度1.0モル/リットルのLiPFを溶解させた25℃の非水電解液を用いた。そして、袋内を減圧しつつ、当該袋をヒートシールすることにより、非水電解液二次電池を作製した。非水電解液二次電池の設計容量は20.5mAhとした。上記非水電解液二次電池を非水電解液二次電池1とする。
【0136】
[実施例2]
[ポリオレフィン多孔質フィルムの製造]
超高分子量ポリエチレン粉末(ハイゼックスミリオン145M、三井化学株式会社製)18重量%と、融点156℃、軟化点115℃の脂環族飽和炭化水素樹脂2重量%とを準備した。これらの粉末をブレンダーで、粉末の粒径が同じになるまで破砕混合した。その後、得られた混合粉末を定量フィーダーより二軸混練機に加えて、温度:210℃、スクリュー回転数:200rpmの条件で溶融混練した。この時、流動パラフィン80重量%をポンプで二軸混練機に加圧しながら加え、一緒に溶融混練した。また、上記二軸混練機の出口部分の樹脂温度は、238℃であった。
【0137】
その後、ギアポンプを経てTダイスより押し出すことで、ポリオレフィン樹脂組成物を作製した。該ポリオレフィン樹脂組成物を、40℃の冷却ロールで冷却し、シート状のポリオレフィン樹脂組成物の捲回体を得た。
【0138】
得られたシート状のポリオレフィン樹脂組成物を、117℃でMD方向に6.4倍延伸を行った。続けて、115℃でTD方向に6.0倍延伸を行った。
【0139】
延伸されたシート状のポリオレフィン樹脂組成物をヘプタンに浸漬することで、添加剤を除去した。当該ポリオレフィン樹脂組成物を室温にて静置乾燥後、さらに通風オーブンで加熱乾燥を行い、膜厚19.7μm、透気度115sec/100mLのポリオレフィン多孔質フィルムを得た。上記多孔質フィルムをポリオレフィン多孔質フィルム2とする。
【0140】
[非水電解液二次電池の製造]
ポリオレフィン多孔質フィルム1の代わりにポリオレフィン多孔質フィルム2を使用した以外は、実施例1と同様にして、非水電解液二次電池を製造した。製造した非水電解液二次電池を非水電解液二次電池2とする。
【0141】
[実施例3]
[ポリオレフィン多孔質フィルムの製造]
超高分子量ポリエチレン粉末(ハイゼックスミリオン145M、三井化学株式会社製)18重量%と、融点175℃、軟化点125℃の脂環族飽和炭化水素樹脂2重量%とを準備した。これらの粉末をブレンダーで、粉末の粒径が同じになるまで破砕混合した。その後、得られた混合粉末を定量フィーダーより二軸混練機に加えて、温度:210℃、スクリュー回転数:200rpmの条件で溶融混練した。この時、流動パラフィン80重量%をポンプで二軸混練機に加圧しながら加え、一緒に溶融混練した。また、上記二軸混練機の出口部分の樹脂温度は、238℃であった。
【0142】
その後、ギアポンプを経て、Tダイスより押し出すことで、ポリオレフィン樹脂組成物を作製した。該ポリオレフィン樹脂組成物を、40℃の冷却ロールで冷却し、シート状のポリオレフィン樹脂組成物の捲回体を得た。
【0143】
得られたシート状のポリオレフィン樹脂組成物を、117℃でMD方向に6.4倍延伸を行った。続けて115℃でTD方向に6.0倍延伸を行った。
【0144】
延伸されたシート状のポリオレフィン樹脂組成物をヘプタンに浸漬することで、添加剤を除去した。当該ポリオレフィン樹脂組成物を室温にて静置乾燥後、さらに通風オーブンで加熱乾燥を行い、膜厚24.2μm、透気度179sec/100mLのポリオレフィン多孔質フィルムを得た。上記ポリオレフィン多孔質フィルムをポリオレフィン多孔質フィルム3とする。
【0145】
[非水電解液二次電池の製造]
ポリオレフィン多孔質フィルム1の代わりにポリオレフィン多孔質フィルム3を使用した以外は、実施例1と同様にして、非水電解液二次電池を製造した。製造した非水電解液二次電池を非水電解液二次電池3とする。
【0146】
[実施例4]
[ポリオレフィン多孔質フィルムの製造]
超高分子量ポリエチレン粉末(ハイゼックスミリオン145M、三井化学株式会社製)18重量%と、融点131℃、軟化点90℃の脂環族飽和炭化水素樹脂2重量%とを準備した。これらの粉末をブレンダーで、粉末の粒径が同じになるまで破砕混合した。その後、得られた混合粉末を定量フィーダーより二軸混練機に加えて、温度:210℃、スクリュー回転数:200rpmの条件で溶融混練した。この時、流動パラフィン80重量%をポンプで二軸混練機に加圧しながら加え、一緒に溶融混練した。また、上記二軸混練機の出口部分の樹脂温度は、240℃であった。
【0147】
その後、ギアポンプを経てTダイスより押し出すことで、ポリオレフィン樹脂組成物を作製した。該ポリオレフィン樹脂組成物を、40℃の冷却ロールで冷却し、シート状のポリオレフィン樹脂組成物の捲回体を得た。
【0148】
得られたシート状のポリオレフィン樹脂組成物を、117℃でMD方向に6.4倍延伸を行った。続けて、115℃でTD方向に6.0倍延伸を行った。
【0149】
延伸されたシート状のポリオレフィン樹脂組成物をヘプタンに浸漬することで、添加剤を除去した。当該ポリオレフィン樹脂組成物を室温にて静置乾燥後、さらに通風オーブンで加熱乾燥を行い、膜厚10.0μm、透気度137sec/100mLのポリオレフィン多孔質フィルムを得た。上記ポリオレフィン多孔質フィルムをポリオレフィン多孔質フィルム4とする。
【0150】
[非水電解液二次電池の製造]
ポリオレフィン多孔質フィルム1の代わりにポリオレフィン多孔質フィルム4を使用した以外は、実施例1と同様にして、非水電解液二次電池を製造した。製造した非水電解液二次電池を非水電解液二次電池4とする。
【0151】
[比較例1]
超高分子量ポリエチレン粉末(GUR4032、ティコナ社製)71重量%と、重量平均分子量1000のポリエチレンワックス(FNP−0115、日本精鑞社製)29重量%とを準備した。この超高分子量ポリエチレンとポリエチレンワックスの合計を100重量部として、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.4重量部、酸化防止剤(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.1重量部、ステアリン酸ナトリウム1.3重量部を加えた。更に得られた混合物の全体積に対して37体積%となるように平均粒径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)を加えた。これらを粉末のままヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練機で溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物とした。当該ポリオレフィン樹脂組成物を表面温度が150℃の一対のロールにて圧延し、シートを作成した。このシートを塩酸水溶液(塩酸4mol/L、非イオン系界面活性剤0.5重量%)に浸漬させることで炭酸カルシウムを除去した。続いて100〜105℃、シートを6.2倍延伸し、膜厚19.7μm、透気度65sec/100mLのフィルムを得た。さらに110℃で熱固定を行い、ポリオレフィン多孔質フィルムを製造した。上記ポリオレフィン多孔質フィルムをポリオレフィン多孔質フィルム5とする。
【0152】
[非水電解液二次電池の製造]
ポリオレフィン多孔質フィルム1の代わりにポリオレフィン多孔質フィルム5を使用した以外は、実施例1と同様にして、非水電解液二次電池を製造した。製造した非水電解液二次電池を非水電解液二次電池5とする。
【0153】
[比較例2]
[ポリオレフィン多孔質フィルムの製造]
超高分子量ポリエチレン粉末(ハイゼックスミリオン145M、三井化学株式会社製)20重量%を準備した。準備した粉末を定量フィーダーより二軸混練機に加えて、温度:210℃、スクリュー回転数:200rpmの条件で溶融混練した。この時、流動パラフィン80重量%をポンプで二軸混練機に加圧しながら加え、一緒に溶融混練した。また、上記二軸混練機の出口部分の樹脂温度は、245℃であった。
【0154】
その後、ギアポンプを経てTダイスより押し出すことで、ポリオレフィン樹脂組成物を作製した。該ポリオレフィン樹脂組成物を、40℃の冷却ロールで冷却し、シート状のポリオレフィン樹脂組成物の捲回体を得た。
【0155】
得られたシート状のポリオレフィン樹脂組成物を、117℃でMD方向に6.4倍延伸を行った。続けて、115℃でTD方向に6.0倍延伸を行った。
【0156】
延伸されたシート状のポリオレフィン樹脂組成物をヘプタンに浸漬することで、添加剤を除去した。当該ポリオレフィン樹脂組成物を室温にて静置乾燥後、さらに通風オーブンで加熱乾燥を行い、膜厚11.9μm、透気度436sec/100mLのポリオレフィン多孔質フィルムを得た。上記ポリオレフィン多孔質フィルムをポリオレフィン多孔質フィルム6とする。
【0157】
[非水電解液二次電池の製造]
ポリオレフィン多孔質フィルム1の代わりにポリオレフィン多孔質フィルム6を使用した以外は、実施例1と同様にして、非水電解液二次電池を製造した。製造した非水電解液二次電池を非水電解液二次電池6とする。
【0158】
[測定及び評価]
実施例1〜4、比較例1、2にて製造されたポリオレフィン多孔質フィルム1〜6の内部フラクタル次元と、実施例1〜4、比較例1、2にて製造された非水電解液二次電池1〜6の初期電池抵抗特性の値を以下の表1に示す。
【0159】
【表1】
【0160】
表1の記載から、内部フラクタル次元が1.75〜1.91の範囲である、実施例1〜4にて製造されたポリオレフィン多孔質フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして備える非水電解液二次電池は、内部フラクタル次元が1.75〜1.91の範囲外である、比較例1、2にて製造されたポリオレフィン多孔質フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして備える非水電解液二次電池よりも、その初期電池抵抗特性の値が低くなることが分かった。
【0161】
すなわち、実施例1〜4にて製造されたポリオレフィン多孔質フィルムは、初期電池抵抗特性に優れることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0162】
上述の通り、本発明の一実施形態に係るポリオレフィン多孔質フィルムは、初期電池抵抗特性に優れる。従って、本発明の一実施形態に係るポリオレフィン多孔質フィルムは、非水電解液二次電池用セパレータおよび非水電解液二次電池用積層セパレータの基材フィルムとして有用に活用することができる。
図1
図2
図3