特許第6543709号(P6543709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 千代田化工建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6543709-加熱システム 図000002
  • 特許6543709-加熱システム 図000003
  • 特許6543709-加熱システム 図000004
  • 特許6543709-加熱システム 図000005
  • 特許6543709-加熱システム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543709
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】加熱システム
(51)【国際特許分類】
   F24S 20/40 20180101AFI20190628BHJP
   F24S 10/70 20180101ALI20190628BHJP
   F16L 53/30 20180101ALI20190628BHJP
【FI】
   F24S20/40
   F24S10/70
   F16L53/30
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-525772(P2017-525772)
(86)(22)【出願日】2015年7月2日
(86)【国際出願番号】JP2015069148
(87)【国際公開番号】WO2017002260
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2017年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】金光 雅也
(72)【発明者】
【氏名】白井 城太郎
(72)【発明者】
【氏名】甲斐田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 靖
(72)【発明者】
【氏名】西島 靖之
【審査官】 佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−523997(JP,A)
【文献】 特表2014−531552(JP,A)
【文献】 特開2014−159892(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0175689(US,A1)
【文献】 特開平06−241376(JP,A)
【文献】 特公昭62−008696(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0238523(US,A1)
【文献】 中国実用新案第203731722(CN,U)
【文献】 国際公開第2010/079318(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24S 10/00 − 90/10
F16L 53/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽熱を受ける溶融塩が流れる熱媒流路を加熱するための加熱システムであって、
前記熱媒流路は、直列に接続された、電気抵抗が異なる複数の部材により構成され、
当該加熱システムは、
前記熱媒流路を加熱するために前記熱媒流路に通電する通電部と、
前記複数の部材のうちの1つの部材の温度を測定する温度測定部と、
測定された前記1つの部材の温度と、予め定められた、通電時間に対する前記1つの部材の想定温度とを比較し、その比較結果に応じた処理を行う処理部と、を備えることを特徴とする加熱システム。
【請求項2】
前記処理部は、前記比較結果に応じて、前記通電部による通電を制御することを特徴とする請求項1に記載の加熱システム。
【請求項3】
前記処理部は、測定された前記1つの部材の温度が、想定温度よりも所定温度または所定割合を上回ると通電を停止し、想定温度よりも所定温度または所定割合を下回ると通電を開始することを特徴とする請求項2に記載の加熱システム。
【請求項4】
通電時間に対する前記1つの部材の想定温度は、前記複数の部材が、それぞれの品質保証温度を超えることなく温められるよう定められていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の加熱システム。
【請求項5】
前記温度測定部によって温度が測定される前記1つの部材は、熱媒流路を構成する前記複数の部材のうち、通電による温度上昇率が最も低い部材であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の加熱システム。
【請求項6】
前記熱媒流路は、集光された光を受ける集熱管と、前記集熱管に接続されるフレキシブルホースと、フレキシブルホースに接続される配管と、により構成され、
前記温度測定部によって温度が測定される前記1つの部材は、配管であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の加熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱収集装置の熱媒流路を加熱する加熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光を熱媒流路に集光して熱媒流路内を流れる熱媒を加熱し、加熱された熱媒を利用して蒸気タービンを回すことにより発電を行う太陽熱発電システムが知られている。太陽熱発電システムは、太陽光発電システムよりも導入費用が安いほか蓄熱により24時間の発電が可能である。従来では、熱媒にオイルを用いた太陽熱発電システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
近年、太陽熱発電システムに用いる熱媒として溶融塩が注目されている。溶融塩は沸点が高いため、溶融塩によれば運転温度を比較的高くでき、高温蒸気を発生させることにより発電効率が向上する。
【0004】
溶融塩は250℃程度で固化してしまうため、スタートアップやメンテナンス後に熱媒流路に溶融塩を流し込むとき、熱媒流路の温度が比較的低い状態にあると熱媒流路に熱を奪われて溶融塩が固化しうる。そのため、熱媒流路に溶融塩を流し込む前に熱媒流路を所定の温度以上に温めておく必要がある。
【0005】
熱媒流路を温めるひとつの手法として、熱媒流路に電流を流すことが考えられる。電流を流すと、そのときのジュール熱で熱媒流路が温まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−102013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱媒流路は、一般に、複数の部材によって構成される。電気抵抗は部材ごとに異なり、電流を流したときの温度上昇率も部材ごとに異なる。各部材の温度を測定すれば、すべての部材が品質保証温度を超えないよう熱媒流路全体を適切に加熱できる。しかしながら、部材の中には温度測定のためのセンサの取り付けの作業性が悪いものもある。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱媒流路を構成する複数の部材のうちの1つの部材の温度を測定することによって、他の部材の温度を測定せずに、熱媒流路全体を適切に加熱できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の加熱システムは、太陽熱を受ける熱媒が流れる熱媒流路を加熱するための加熱システムであって、熱媒流路は、直列に接続された、電気抵抗が異なる複数の部材により構成され、当該加熱システムは、熱媒流路を加熱するために熱媒流路に通電する通電部と、複数の部材のうちの1つの部材の温度を測定する温度測定部と、測定された1つの部材の温度と、予め定められた、通電時間に対する1つの部材の想定温度とを比較し、その比較結果に応じた処理を行う処理部と、を備える。
【0010】
この態様によると、例えば、予め定められた通電時間に対する想定温度に沿って1つの部材が温度上昇するよう通電することにより、他の部材も想定通りに温度上昇させることができ、特定の部材のみが適度に加熱され、他の部材が過度に加熱されたり、十分に加熱されなかったりするのを防ぐことができる。このため、熱媒流路全体を適切に加熱することができる。
【0011】
処理部は、比較結果に応じて、通電部による通電を制御してもよい。
【0012】
処理部は、測定された1つの部材の温度が、想定温度よりも所定温度または所定割合を上回ると通電を停止し、想定温度よりも所定温度または所定割合を下回ると通電を開始してもよい。
【0013】
通電時間に対する1つの部材の想定温度は、複数の部材が、それぞれの品質保証温度を超えることなく温められるよう定められていてもよい。
【0014】
温度測定部によって温度が測定される1つの部材は、熱媒流路を構成する複数の部材のうち、通電による温度上昇率が最も低い部材であってもよい。
【0015】
熱媒流路は、集光された光を受ける集熱管と、集熱管に接続されるフレキシブルホースと、フレキシブルホースに接続される配管と、により構成され、温度測定部によって温度が測定される1つの部材は、配管であってもよい。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱媒流路を構成する複数の部材のうちの1つの部材の温度を測定することによって、他の部材の温度を測定せずに、熱媒流路全体を適切に加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態に係る太陽熱発電システムを示す模式図である。
図2図1の太陽熱収集装置および加熱システムを示す模式図である。
図3】加熱装置が接続された熱媒流路を回路として見た場合の回路図である。
図4】加熱システムの機能および構成を示すブロック図である。
図5】想定温度保持部に保持される、通電時間に対する配管の想定温度をグラフ化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0020】
図1は、実施形態に係る太陽熱発電システム100を示す模式図である。太陽熱発電システム100は、集熱エリア121、蓄熱エリア122、発電エリア123の3つのエリアを含む。
【0021】
集熱エリア121は、主に太陽熱収集装置8と、加熱システム2と、を含む。太陽熱収集装置8は、太陽光を集光し、熱媒流路(後述)内を流れる熱媒を加熱する。加熱された熱媒は、蓄熱エリア122に送られる。加熱システム2は、熱媒流路に溶融塩を流し込むときに熱媒流路に熱を奪われて溶融塩が固化しないよう、事前に熱媒流路を加熱する。
【0022】
蓄熱エリア122は、ホットタンク102と、コールドタンク103と、を含む。加熱された熱媒の熱をホットタンク102を用いて蓄えておくことにより、必要なときに発電できる。例えば夜間や日中の悪天候時の発電が可能となる。
【0023】
発電エリア123は、蒸気発生器104と、蒸気タービン106と、復水器108と、を含む。蒸気発生器104は、ホットタンク102に蓄えられた加熱された熱媒を用いて蒸気を発生させ、蒸気タービン106は蒸気によりタービンを回転させる。この回転により発電する。蒸気発生器104で熱交換された比較的低温の熱媒はコールドタンク103に送られる。復水器108は蒸気を液体に戻す。
【0024】
図2は、太陽熱収集装置8および加熱システム2を示す模式図である。
太陽熱収集装置8は、第1集光ユニット10と、第2集光ユニット20と、第3集光ユニット30と、第4集光ユニット40と、連結流路50と、を含む。第1集光ユニット10は、第1熱媒流路11と、複数の第1支柱12と、複数の第1反射板13と、を含む。
【0025】
複数の第1支柱12はそれぞれ、スチールにより形成され、コンクリート製の架台(不図示)上に立設される。第1支柱12は、第1熱媒流路11に沿って配置され、第1熱媒流路11を支持する。また、第1支柱12は、第1反射板13を回転可能に支持する。
【0026】
第1反射板13は、第1熱媒流路11に太陽光を集光させ、第1熱媒流路11内を流れる熱媒を加熱する。第1反射板13には、回転装置(不図示)が接続されている。回転装置は、例えば太陽の位置に応じて第1反射板13を回転させる。これにより、熱媒は効率的に加熱される。
【0027】
第1熱媒流路11は、複数の集熱管11aと、複数のフレキシブルホース11bと、複数の配管11cと、を含む。これらは、ステンレスやアルミニウムなどの金属材料により形成される。集熱管11aは、直線的に延びる管であり、その中心が第1反射板13の放物柱面状の反射面の焦点に位置するように支持される。フレキシブルホース11bは、フレキシブルなホースであり、集熱管11aに接続される。配管11cは、フレキシブルでない硬質管であり、フレキシブルホース11b同士を接続する。集熱管11a、フレキシブルホース11bおよび配管11cは、それぞれ材質が異なり、したがって、それぞれ電気抵抗が異なる。各集熱管11a、各フレキシブルホース11b、各配管11cの長さはそれぞれ、一例としては、100〜200m、1〜5m、5〜30mである。
【0028】
第1熱媒流路11内には、太陽熱を受ける熱媒としての溶融塩が流れる。溶融塩は、太陽熱収集装置において従来使用されてきた合成オイルよりも沸点が高いため、より高温に温められる。これにより、太陽熱発電システム100の発電効率が向上する。一方で、溶融塩は、250℃程度で固化してしまう。溶融塩は、集光時は太陽熱で加熱されているため基本的に固化することはないが、例えばスタートアップ時やメンテナンス後に第1熱媒流路11に溶融塩を流し込む前に、第1熱媒流路11の温度が比較的低い状態にあると第1熱媒流路11に熱を奪われて固化しうる。そのため、第1熱媒流路11に溶融塩を流し込む前には、第1熱媒流路11を所定の温度以上に温めておく必要がある。
【0029】
第1熱媒流路11を温める手法として、第1熱媒流路11に電熱線を這わせ、そこに電流を流して第1熱媒流路11を温めることが考えられる。しかしながら、第1熱媒流路11の集熱管11aは、断熱のために真空ガラス管で覆われているため、電熱線を這わせることができない。そこで、本実施の形態では、第1熱媒流路11に加熱装置4を接続して第1熱媒流路11自体に電流を流し、そのときのジュール熱で第1熱媒流路11を温める。
【0030】
図3は、加熱装置4が接続された第1熱媒流路11を回路として見た場合の回路図である。第1熱媒流路11と加熱装置4と接続配線5とによって、加熱装置4、集熱管11a、フレキシブルホース11b、配管11c、接続配線5、配管11c、フレキシブルホース11b、集熱管11aを順次巡る閉ループ回路が形成される。第1熱媒流路11を構成する集熱管11a、フレキシブルホース11bおよび配管11cは直列に接続された電気抵抗となり、それらに電流が流れるとジュール熱が発生する。これにより、第1熱媒流路11の全体が温められる。図2に戻る。
【0031】
第2集光ユニット20は、第2熱媒流路21と、複数の第2支柱22と、複数の第2反射板23と、を含む。
第3集光ユニット30は、第3熱媒流路31と、複数の第3支柱32と、複数の第3反射板33と、を含む。
第4集光ユニット40は、第4熱媒流路41と、複数の第4支柱42と、複数の第4反射板43と、を含む。
【0032】
第2熱媒流路21、第3熱媒流路31、第4熱媒流路41はそれぞれ、第1熱媒流路11と同様に構成される。
第2支柱22、第3支柱32、第4支柱42はそれぞれ、第1支柱12と同様に構成される。
第2反射板23、第3反射板33、第4反射板43はそれぞれ、第1反射板13と同様に構成される。
【0033】
連結流路50は、環状の流路であり、第1熱媒流路11、第2熱媒流路21、第3熱媒流路31および第4熱媒流路41と接続される。また連結流路50は、蓄熱エリア122のホットタンク102およびコールドタンク103とも接続される。したがって、連結流路50を介して、第1熱媒流路11、第2熱媒流路21、第3熱媒流路31および第4熱媒流路41と、ホットタンク102およびコールドタンク103とが連結される。各熱媒流路で加熱された熱媒は、連結管路50を介してホットタンク102に送られる。また、コールドタンク103に蓄えられた比較的低温の熱媒は、連結管路50を介して各熱媒流路に送られる。
【0034】
加熱システム2は、熱媒流路を加熱する加熱装置4と、加熱装置4による加熱を制御する加熱制御装置6と、を含む。加熱装置4は、可搬式であり、車両(不図示)の荷台などに載せられて移動する。
【0035】
熱媒流路に溶融塩を流し込む場合、熱媒流路の加熱に先だって、まず連結流路50を加熱する。例えば、連結流路50に電熱線を這わせ、そこに電流を流して連結流路50を加熱してもよい。また例えば、化石燃料の燃焼熱で連結流路50を加熱してもよい。連結流路50が所定の温度(例えば290℃)以上に温まったら、連結流路50に溶融塩を流す。
【0036】
続いて、加熱装置4を第1熱媒流路11に接続し、加熱システム2によって第1熱媒流路11を加熱する。第1熱媒流路11が所定の温度(例えば290℃)以上に温まったら、第1熱媒流路11に溶融塩を流し込む。溶融塩が固まることなく第1熱媒流路11内を流れることを確認したら、加熱システム2による加熱を止める。第1熱媒流路11に太陽光が集光されていない場合、加熱システム2による加熱を止めると、第1熱媒流路11内を流れる間に溶融塩は冷やされるが、その分も考慮して連結流路50において高温(例えば330℃)に温めておけば、加熱システム2による加熱を止めても溶融塩が第1熱媒流路11内で固化することはない。続いて、加熱装置4を第2集光ユニット20に移動して第2熱媒流路21に接続し、加熱システム2によって第2熱媒流路21を加熱する。このようにして、各熱媒流路を順々に温める。
【0037】
図4は、加熱システム2の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0038】
加熱装置4は、通電部67と、通信処理部63と、測定部64と、を含む。通信処理部63は、無線により加熱制御装置6に接続するための通信インタフェースである。
【0039】
通電部67は、熱媒流路に通電する。具体的には、通電部67は、本実施の形態では、発電部61と、電圧変換部62と、を含む。発電部61は、通信処理部63を介して加熱制御装置6から加熱開始指示を受けると、発電を開始する。発電部61は、例えば化石燃料を用いて発電する。電圧変換部62は、発電部61の供給電圧を所定の電圧(例えば400V)に昇圧し、昇圧された電流を熱媒流路に供給する。するとジュール熱が発生して熱媒流路が加熱される。また発電部61は、通信処理部63を介して加熱制御装置6から加熱停止指示を受けると、発電を停止する。すると、熱媒流路に電流が供給されなくなる。つまり、熱媒流路が加熱されなくなる。
【0040】
測定部64は、電流測定部65と、温度測定部66と、を含む。電流測定部65は、熱媒流路を流れる電流値を測定する。温度測定部66は、温度センサ(不図示)を介して、熱媒流路を構成する集熱管11a、フレキシブルホース11bおよび配管11cのうちのいずれか1つの温度を測定する。本実施の形態では温度測定部66は、温度センサの取付作業性が高い配管11cの温度を測定する。電流測定部65は特に、最も温まりにくい下流側の配管の温度を測定する。測定部64は、通信処理部63を介して測定結果を加熱制御装置6に送る。
【0041】
加熱制御装置6は、測定結果登録部71と、測定結果保持部72と、想定温度決定部73と、想定温度保持部74と、処理部75と、通信処理部76と、を含む。通信処理部76は、無線により加熱装置4に接続するための通信インタフェースである。測定結果登録部71は、通信処理部76を介して加熱装置4から測定結果を受け取り、これを測定結果保持部72に登録する。
【0042】
想定温度決定部73は、加熱(通電)時間に対する配管の想定温度(以下、単に「配管の想定温度」と呼ぶ)を決定する。ここで、集熱管、フレキシブルホースおよび配管は直列に繋がっているため、これらには同量の電流が流れる。しかしながら、集熱管、フレキシブルホースおよび配管は、それぞれ電気抵抗は異なるので、温度上昇率も異なる。そのため、配管の温度が品質保証温度を超えていない場合でも、集熱管またはフレキシブルホースの温度が品質保証温度を超えることが起こりうる。したがって、想定温度決定部73は特に、配管に加えて、集熱管およびフレキシブルホースも品質保証温度を超えないように、配管の想定温度を決定する。
【0043】
例えば、集熱管およびフレキシブルホースも品質保証温度を超えないことがシミュレーションによって確認された配管の想定温度であって、環境温度がそれぞれ異なる場合の想定温度で、かつ、配管、集熱管およびフレキシブルホースのすべてが所定の温度に到達するのが最速である想定温度を予め用意しておき、想定温度決定部73が環境温度に基づいてその中から選択してもよい。
【0044】
想定温度保持部74は、想定温度決定部73により決定された、配管の想定温度を保持する。図5は、想定温度保持部74に保持される配管の想定温度をグラフ化した図である。図5において、横軸は加熱(通電)を開始してからの経過時間を示し、縦軸は配管の温度または熱媒流路を流れる電流を示す。グラフ81は、配管の想定温度を示す。グラフ82、83、84はそれぞれ、配管の温度がグラフ81のごとく上昇した場合における、集熱管の温度、フレキシブルホースの温度、熱媒流路を流れる電流、を示す。また、破線85は、配管、集熱管およびフレキシブルホースの品質保証温度を示す。
【0045】
図5に示されるように、配管は、熱媒流路を構成する複数の部材の中で、通電による温度上昇率が最も低い。したがって、配管の温度が所定の温度に達するときには、他の部材は既に所定の温度に達していることになる。そのため、配管の温度を測定することで、熱媒流路の加熱完了を容易に判断できる。
【0046】
図4に戻り、処理部75は、測定結果保持部72および想定温度保持部74を参照して、加熱装置4の温度測定部66により測定された配管の温度(以下、単に「実温度」と呼ぶ)と、配管の想定温度とを比較する。処理部75は、配管の実温度が想定温度よりも第1の割合(例えば5%)以上高くなると、加熱制御装置6に加熱停止指示を送る。また処理部75は、配管の実温度が想定温度よりも第2の割合(例えば5%)以上低くなると、加熱制御装置6に加熱開始指示を送る。すなわち処理部75は、配管の温度が図5のグラフ81に沿って上昇するよう、加熱装置4を制御する。
【0047】
ここで、配管、集熱管、フレキシブルホースは金属製であるため、これらの電気抵抗は温度上昇に比例して増大する。また、熱媒流路の大半を占めるのは集熱管であるため、熱媒流路を回路として見た場合、その電気抵抗の大半は集熱管が占める。したがって、熱媒流路を流れる電流量は、概ね、集熱管の温度上昇に反比例して減少する。言い換えると、熱媒流路を流れる電流量は、概ね、集熱管の電気抵抗によって決まる。したがって、通電による温度上昇率が最も高いフレキシブルホースの温度が上昇してその電気抵抗が増大しても、電流量はあまり変化しない。電気抵抗が増大しても電流量が変わらないと、フレキシブルホースの温度はさらに上昇する。これにより、フレキシブルホースの温度は、加熱(通電)開始直後に過加熱状態になる(図5参照)。
【0048】
そのため、フレキシブルホースが品質保証温度を超えないように、加熱(通電)開始直後は、より厳格に制御してもよい。例えば、加熱を開始してから所定時間経過するまであるいは熱媒流路を流れる電流が一定となるまでは、配管の実温度が想定温度よりも第3の割合(<第1の割合)(例えば5%)以上高くなると、加熱制御装置6に加熱停止指示を送り、配管の実温度が想定温度よりも第4の割合(<第2の割合)(例えば5%)以上低くなると、加熱制御装置6に加熱開始指示を送るようにしてもよい。
【0049】
以上説明した本実施の形態に係る加熱システム2によると、配管の実温度に基づいて加熱装置4による加熱(通電)が制御される。これにより、配管は、図5のグラフ81に示される想定温度に沿って温度上昇する。この場合、集熱管、フレキシブルホースはそれぞれ、図5のグラフ82、83に沿って温度上昇する。つまり、配管、集熱管、フレキシブルホースは、品質保証温度を超えることなく所定の温度に温められる。集熱管はガラス管で覆われているため、またフレキシブルホースは動くため、いずれも温度センサの取り付けの作業性が悪いところ、本実施の形態に係る加熱システム2によると、温度センサの取り付けの作業性が比較的高い配管の温度だけを測定することによって、熱媒流路全体を適切に加熱できる。
【0050】
また、本実施の形態に係る加熱システム2によると、加熱装置4は可搬式であり、各熱媒流路は順々に加熱される。各熱媒流路に固定式の加熱装置4が設けられる場合に比べ、加熱装置4の数を減らすことができる。
【0051】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0052】
(変形例1)
実施の形態では、1つの加熱装置4で各熱媒流路を温める場合について説明したが、これに限られない。加熱システム2は、複数の加熱装置4を含み、複数の加熱装置4により各熱媒流路を温めてもよい。例えば3つの加熱装置4を第1熱媒流路11に接続し、3つの加熱装置4と第1熱媒流路11により3つの閉ループ回路を形成し、それぞれの回路に電流が流れるときに発生するジュール熱によって第1熱媒流路11を温めてもよい。第2熱媒流路21、第3熱媒流路31、第4熱媒流路41はそれぞれ、3つの加熱装置4によって順々に温められてもよい。
【0053】
(変形例2)
実施の形態では、加熱制御装置6の処理部75、配管の実温度と想定温度とを比較し、その比較結果に基づいて加熱装置4に加熱開始指示または加熱停止指示を送り、加熱装置4による通電(加熱)を制御する場合について説明したが、これに限られない。処理部75は、加熱装置4に加熱開始指示または加熱停止指示を送る代わりに、実温度が想定温度から乖離していることをユーザに通知してもよい。この場合、ユーザのマニュアル操作により、加熱装置4による加熱(通電)を制御してもよい。
【0054】
(変形例3)
実施の形態では、処理部75は、配管の実温度が想定温度よりも第1の割合(例えば5%)以上高くなると、加熱制御装置6に加熱停止指示を送り、配管の実温度が想定温度よりも第2の割合(例えば5%)以上低くなると、加熱制御装置6に加熱開始指示を送る場合について説明したが、これに限られない。処理部75は、配管の実温度が想定温度よりも第1の温度(例えば5%)以上高くなると、加熱制御装置6に加熱停止指示を送り、配管の実温度が想定温度よりも第2の温度(例えば5%)以上低くなると、加熱制御装置6に加熱開始指示を送るようにしてもよい。
【0055】
(変形例4)
実施の形態では、加熱制御装置6の処理部75が、配管の実温度と想定温度とに基づいて加熱装置4に加熱停止指示または加熱開始指示を送り、加熱装置4による加熱(通電)を停止または開始することによって、配管の温度を想定温度にしたがって変化させる場合について説明したが、これに限られない。交流電源の場合は可変抵抗器によって電流を変化させ、直流の場合は整流器によって電流を変化させることによって、配管の温度を想定温度にしたがって変化させてもよい。
【0056】
(変形例5)
実施の形態では、配管の温度を測定し、配管の想定温度に沿って配管の温度が上昇するよう加熱装置4による加熱(通電)を制御する場合について説明したが、これに限られない。例えばフレキシブルホースの温度を測定し、フレキシブルホースの想定温度に沿ってフレキシブルホースの温度が上昇するよう加熱装置4による加熱(通電)を制御してもよい。この場合、集熱管および配管の温度が品質保証温度を超えないように、フレキシブルホースの想定温度が決定されればよい。
【0057】
(変形例6)
実施の形態では、太陽熱収集装置8は、4つの集光ユニットを備える場合について説明したが、これに限られない。太陽熱収集装置8は、1つ、2つまたは3つ以上の集光ユニットを備えていてもよい。
【0058】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連係によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0059】
2 加熱システム、 4 加熱装置、 6 加熱制御装置、 8 太陽熱収集装置、 11 第1熱媒流路、 21 第2熱媒流路、 31 第3熱媒流路、 41 第4熱媒流路、 66 温度測定部、 67 通電部、 73 想定温度決定部、 75 処理部、 100 太陽熱発電システム。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、太陽熱収集装置の加熱システムに利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5