特許第6543710号(P6543710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6543710
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
   F24S 20/40 20180101AFI20190628BHJP
   F24S 10/70 20180101ALI20190628BHJP
   F16L 53/30 20180101ALI20190628BHJP
【FI】
   F24S20/40
   F24S10/70
   F16L53/30
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-525773(P2017-525773)
(86)(22)【出願日】2015年7月2日
(86)【国際出願番号】JP2015069149
(87)【国際公開番号】WO2017002261
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2017年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】金光 雅也
(72)【発明者】
【氏名】白井 城太郎
(72)【発明者】
【氏名】甲斐田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 靖
(72)【発明者】
【氏名】西島 靖之
【審査官】 佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0238523(US,A1)
【文献】 特開2014−159892(JP,A)
【文献】 特表2014−523997(JP,A)
【文献】 特表2014−531552(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0175689(US,A1)
【文献】 中国実用新案第203731722(CN,U)
【文献】 国際公開第2010/079318(WO,A1)
【文献】 特開平05−317843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24S 10/00 − 90/10
F16L 11/127
F16L 53/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽熱を受ける溶融塩が流れる熱媒流路を加熱するための加熱装置であって、
前記熱媒流路は、集光された太陽光を受ける第1集熱管および第2集熱管と、前記第1集熱管の一端部と前記第2集熱管の一端部とを接続する連結配管と、を備え、
前記第1集熱管の他端部と前記第2集熱管の他端部とを電気的に接続する接続配線と、
前記熱媒流路に電流を流すための電源と、
前記電源の一方の極と前記第1集熱管の中間とを接続する第1電源配線と、
前記電源の他方の極と前記第2集熱管の中間とを接続する第2電源配線と、
前記連結配管と電気的に並列に接続されたバイパス配線と、
を備え
前記バイパス配線の抵抗値は、前記接続配線の抵抗値よりも大きく、且つ前記連結配管の抵抗値よりも小さくなるよう設定されることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記熱媒流路は、前記第1集熱管、前記連結配管および前記第2集熱管をU字状に接続することにより形成され、
前記第1集熱管と前記第2集熱管は、互いに平行であり、
前記第1電源配線は、前記一方の極と前記第1集熱管の中心点とを接続し、
前記第2電源配線は、前記他方の極と前記第2集熱管の中心点とを接続することを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記第1電源配線、前記第1集熱管の中間から一端部までの部分、前記連結配管、前記バイパス配線、前記第2集熱管の一端部から中間までの部分および前記第2電源配線の第1合成抵抗値と、前記第1電源配線、前記第1集熱管の中間から他端部までの部分、前記接続配線、前記第2集熱管の他端部から中間までの部分および前記第2電源配線の第2合成抵抗値の差は、前記第2合成抵抗値の10%以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記連結配管と前記バイパス配線との接続位置を変えるための接続位置可変手段をさらに備えることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱発電システムの熱媒流路を加熱するための加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射鏡を用いて太陽光を熱媒流路に集光させて熱媒流路内を流れる熱媒を加熱し、加熱された熱媒を利用して蒸気を発生させ、蒸気タービンを回すことにより発電を行う太陽熱発電システムが知られている。太陽熱発電システムは、太陽光発電システムよりも導入費用が安い他に蓄熱により24時間の発電が可能である。従来では、熱媒にオイルを用いた太陽熱発電システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
近年、太陽熱発電システムに用いる熱媒として溶融塩が注目されている。溶融塩は沸点が高いため、溶融塩によれば運転温度を比較的高くでき高温蒸気を発生させることにより発電効率が向上する。
【0004】
溶融塩は250℃程度で固化してしまうため、スタートアップやメンテナンス後に熱媒流路に溶融塩を流し込むとき、熱媒流路の温度が比較的低い状態にあると熱媒流路に熱を奪われて溶融塩が固化しうる。そのため、熱媒流路に溶融塩を流し込む前に熱媒流路を所定の温度以上に温めておく必要がある。
【0005】
熱媒流路を温めるひとつの手法として、熱媒流路に電流を流すことが考えられる。電流を流すと、そのときのジュール熱で熱媒流路が温まる。
【0006】
図1は、熱媒流路を加熱するための加熱装置の一例を説明するための図である。図1に示す熱媒流路200は、太陽熱発電システムの集光エリアで用いられる熱媒流路の一部である。熱媒流路200には溶融塩が流される。熱媒流路200は、第1反射板204によって集光された太陽光を受ける第1集熱管208と、第2反射板206によって集光された太陽光を受ける第2集熱管210と、第1集熱管208の一端部208aと第2集熱管210の一端部210aとを接続する連結配管212とを備える。
【0007】
加熱装置202は、第1集熱管208の他端部208bと第2集熱管210の他端部210bとを電気的に接続する接続配線213と、熱媒流路200に電流を流すための電源214と、電源214の一方の極214aと第1集熱管208の中心点208cとを接続する第1電源配線216と、電源214の他方の極214bと第2集熱管210の中心点210cとを接続する第2電源配線218とを備える。
【0008】
図1に示す構成において、第1電源配線216、第1集熱管208の中心点208cから一端部208aまでの部分、連結配管212、第2集熱管210の一端部210aから中心点210cまでの部分および第2電源配線218は、電源214からの電流を流す第1電流経路を形成している。また、第1電源配線216、第1集熱管208の中心点208cから他端部208bまでの部分、接続配線213、第2集熱管210の他端部210bから中心点210cまでの部分および第2電源配線218は、電源214からの電流を流す第2電流経路を形成している。第1電流経路および第2電流経路に電源214から電流を流すと、ジュール熱により第1集熱管208、第2集熱管210および連結配管212を温めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014−102013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図1に示すような構成においては、通常、連結配管212の抵抗値は、接続配線213の抵抗値よりも高い。その理由として接続配線213は通常、抵抗値の非常に低い材質(例えば銅)で形成されるが、連結配管212は、高温の溶融塩に耐えうる材質(例えばステンレス鋼)で形成される必要があり、接続配線213と同様の低い抵抗値の材質は選択できないためである。そのため、第1電流経路と第2電流経路の全長が同じ場合でも、第1電流経路全体の合成抵抗は第2電流経路全体の合成抵抗よりも大きくなり、第1電流経路を流れる電流は第2電流経路を流れる電流よりも小さくなる。このように第1電流経路を流れる電流と第2電流経路を流れる電流が異なると、熱媒流路の位置によって発生するジュール熱が異なることとなるため、熱媒流路全体を適切に加熱できない可能性がある。例えば、第1集熱管208の一端部208aと他端部208bでは、発生するジュール熱が異なる可能性がある。第1電流経路と第2電流経路に別々の電源を用意すれば第1電流経路を流れる電流と第2電流経路を流れる電流を同じにできるが、この場合は費用が増大する。
【0011】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、太陽熱発電システムにおいて熱媒流路を適切に加熱できる加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の加熱装置は、太陽熱を受ける熱媒が流れる熱媒流路を加熱するための加熱装置である。熱媒流路は、集光された太陽光を受ける第1集熱管および第2集熱管と、第1集熱管の一端部と第2集熱管の一端部とを接続する連結配管とを備える。加熱装置は、第1集熱管の他端部と第2集熱管の他端部とを電気的に接続する接続配線と、熱媒流路に電流を流すための電源と、電源の一方の極と第1集熱管の中間とを接続する第1電源配線と、電源の他方の極と第2集熱管の中間とを接続する第2電源配線と、連結配管と電気的に並列に接続されたバイパス配線とを備える。
【0013】
上記のように構成された加熱装置においては、第1電源配線、第1集熱管の中間から一端部までの部分、連結配管、バイパス配線、第2集熱管の一端部から中間までの部分および第2電源配線は、第1電流回路を形成する。また、第1電源配線、第1集熱管の中間から他端部までの部分、接続配線、第2集熱管の他端部から中間までの部分および第2電源配線は、第2電流経路を形成する。この加熱装置によれば、連結配管と並列にバイパス配線を設けることにより、第1電流経路全体の合成抵抗を下げて、第2電流経路全体の合成抵抗に近づけることができる。これにより、第1電流経路を流れる電流と第2電流経路を流れる電流との差分が小さくなり、熱媒流路の位置によるジュール熱の差異が小さくなるため、熱媒流路を適切に加熱することができる。
【0014】
熱媒流路は、第1集熱管、連結配管および第2集熱管をU字状に接続することにより形成されてもよい。第1集熱管と第2集熱管は、互いに平行であってもよい。第1電源配線は、一方の極から第1集熱管の中心点に接続され、第2電源配線は、他方の極から第2集熱管の中心点に接続されてもよい。
【0015】
バイパス配線の抵抗値は、接続配線の抵抗値よりも大きく、且つ連結配管の抵抗値よりも小さくなるよう設定されてもよい。
【0016】
第1電源配線、第1集熱管の中間から一端部までの部分、連結配管、バイパス配線、第2集熱管の一端部から中間までの部分および第2電源配線の第1合成抵抗値と、第1電源配線、第1集熱管の中間から他端部までの部分、接続配線、第2集熱管の他端部から中間までの部分および第2電源配線の第2合成抵抗値の差は、第2合成抵抗値の10%以内であってもよい。
【0017】
連結配管とバイパス配線との接続位置を変えるための接続位置可変手段をさらに備えてもよい。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、太陽熱発電システムの熱媒流路を適切に加熱できる加熱装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】熱媒流路を加熱するための加熱装置の一例を説明するための図である。
図2】本発明の実施形態に係る太陽熱発電システムを説明するための図である。
図3】本発明の実施形態に係る太陽熱収集装置を説明するための図である。
図4】本発明の実施形態に係る加熱装置を説明するための図である。
図5】本発明の実施形態に係る加熱装置の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0022】
図2は、本発明の実施形態に係る太陽熱発電システム100を説明するための図である。太陽熱発電システム100は、集光エリア121、蓄熱エリア122、発電エリア123の3つのエリアを含む。
【0023】
集光エリア121は、主に太陽熱収集装置8を含む。太陽熱収集装置8は、熱媒を流すための熱媒流路11と、太陽光を熱媒流路に集光して熱媒を加熱する複数の反射板13とを備える。加熱された熱媒は、蓄熱エリア122に送られる。
【0024】
蓄熱エリア122は、ホットタンク102と、コールドタンク103と、を含む。加熱された熱媒の熱をホットタンク102に蓄えておくことにより、必要なときに発電できる。例えば夜間や日中の悪天候時の発電が可能となる。
【0025】
発電エリア123は、蒸気発生器104と、蒸気タービン発電機106と、復水器108と、を含む。蒸気発生器104は、冷却水と加熱された熱媒との熱交換により蒸気を発生させ、蒸気タービン発電機106は蒸気によりタービンを回転させる。この回転により発電する。復水器108は蒸気を冷却水に戻す。
【0026】
図3は、本発明の実施形態に係る太陽熱収集装置8を説明するための図である。図3に示すように、太陽熱収集装置8は、複数(図2では4つ)の集光ユニット10と、連結流路50とを含む。各集光ユニット10は、熱媒流路11と、複数の反射板13と、を含む。熱媒流路11は、熱媒流路11に沿って配置された複数の支柱(図示せず)によって支持される。また、反射板13は、支柱によって回転可能に支持される。
【0027】
反射板13は、熱媒流路11に太陽光を集光させ、熱媒流路11内を流れる熱媒を加熱する。反射板13には、回転装置(図示せず)が接続されている。回転装置は、例えば太陽の位置に応じて反射板13を回転させる。これにより、熱媒は断続的に加熱される。
【0028】
各熱媒流路11は、U字状に形成され、互いに平行な長直線部11aおよび11bと、長直線部11aおよび11bの一端部同士をつなぐ短直線部11cとから成る。長直線部11aおよび11bは、それぞれ、直線状に配置された複数の集熱管12から成る。隣接する2つの集熱管12のそれぞれの端部には、フレキシブルホース(図示せず)が接続される。これら2つのフレキシブルホースは、配管(図示せず)により接続される。短直線部11cは、連結配管14から成る。長直線部11a、11bの長さAは約500〜600mであってよく、各集熱管12の長さは約100〜200mであってよく、長直線部11aは2〜3本の集熱管12から構成されてよい。また、短直線部11cの長さBは20〜30mであってよい。
【0029】
集熱管12は、直線的に延びる管であり、その中心が反射板13の放物柱面状の反射面の焦点に位置するように支持される。連結配管14は、長直線部11aと長直線部11bの端に位置する集熱管12同士を連通している。集熱管12および連結配管14は、異なる金属材料から形成されてもよいし、同じ金属材料から形成されてもよい。また、集熱管12は、断熱のために真空ガラス管で覆われてもよい。
【0030】
熱媒流路11内には、太陽熱を受ける熱媒としての溶融塩が流れる。溶融塩は、太陽熱収集装置において従来使用されてきた合成オイルよりも沸点が高いため、より高温に温められる。これにより、太陽熱発電システム100の発電効率が向上する。一方で、溶融塩は、250℃程度で固化してしまう。溶融塩は、運転時は太陽熱で加熱されているため基本的に固化することはないが、例えばスタートアップ時やメンテナンス後に熱媒流路11に溶融塩を流し込むとき、熱媒流路11の温度が比較的低い状態にあると熱媒流路11に熱を奪われて固化しうる。そのため、熱媒流路11に溶融塩を流し込む前に、熱媒流路11を所定の温度以上に温めておく必要がある。
【0031】
熱媒流路11を温める手法としては、熱媒流路11に電熱線を這わせ、そこに電流を流して熱媒流路11を温めることが考えられる。しかしながら、熱媒流路11の集熱管12は、断熱のために真空ガラス管で覆われている場合には、電熱線を這わせることができない。そこで、本実施形態の集光ユニット10は、熱媒流路11自体に電流を流し、そのときに発生するジュール熱で熱媒流路11を温める加熱装置(後述)を備える。
【0032】
連結流路50は、環状の流路であり、各熱媒流路11と接続される。また連結流路50は、蓄熱エリア122のホットタンク102およびコールドタンク103とも接続される。したがって、連結流路50を介して、各熱媒流路11と、ホットタンク102およびコールドタンク103とが連結される。連結流路50にはコールドタンク103から熱媒が流れこむ。連結流路50を流れる熱媒は、各熱媒流路11の長直線部11aに流し込まれる。長直線部11aの集熱管12を通って加熱された熱媒は、連結配管14を通って長直線部11bに流れる。長直線部11bの集熱管12を通って加熱された熱媒は、連結流路50に戻り、ホットタンク102に流れ込む。
【0033】
図4は、本発明の実施形態に係る加熱装置40を説明するための図である。図4は、U字状の熱媒流路11の端部を示す。熱媒流路11は、第1反射板13aによって集光された太陽光を受ける第1集熱管12aと、第2反射板13bによって集光された太陽光を受ける第2集熱管12bと、第1集熱管12aの一端部20aと第2集熱管12bの一端部21aとを接続する連結配管14とを備える。図4に示すように、第1集熱管12a、連結配管14および第2集熱管12bは、U字状に接続される。第1集熱管12aと第2集熱管12bは等しい長さを有し、互いに平行に配置される。
【0034】
加熱装置40は、溶融塩が流れる第1集熱管12a、連結配管14および第2集熱管12bを加熱する。加熱装置40は、第1集熱管12aの他端部20bと第2集熱管12bの他端部21bとを電気的に接続する接続配線22と、熱媒流路11に電流を流すための電源23と、電源23の一方の極23aと第1集熱管12aの中心点20cとを接続する第1電源配線24と、電源23の他方の極23bと第2集熱管12bの中心点21cとを接続する第2電源配線25とを備える。連結配管14と接続配線22は等しい長さを有し、互いに平行に配置される。
【0035】
本実施形態に係る加熱装置40は、さらに、連結配管14と電気的に並列に接続されたバイパス配線30を備える。このバイパス配線30の一端部は第1集熱管12aの一端部20aに接続され、バイパス配線30の他端部は第2集熱管12bの一端部21aに接続される。連結配管14と並列にバイパス配線30を設けた場合、第1集熱管12aの一端部20aと第2集熱管12bの一端部21aとの間の抵抗値は、連結配管14とバイパス配線30の合成抵抗値となる。
【0036】
図4に示す構成において、第1電源配線24、第1集熱管12aの中心点20cから一端部20aまでの部分、連結配管14、バイパス配線30、第2集熱管12bの一端部21aから中心点21cまでの部分および第2電源配線25は、電源23からの電流を流す第1電流経路26を形成している。また、第1電源配線24、第1集熱管12aの中心点20cから他端部20bまでの部分、接続配線22、第2集熱管12bの他端部21bから中心点21cまでの部分および第2電源配線25は、電源23からの電流を流す第2電流経路27を形成している。第1電流経路26と第2電流経路27は、閉ループ回路を構成している。第1電流経路26および第2電流経路27に電源23から電流を流すと、第1集熱管12a、第2集熱管12bおよび連結配管14が有する電気抵抗によりジュール熱が発生する。これにより、第1集熱管12a、第2集熱管12bおよび連結配管14を温めることができる。
【0037】
本実施形態では、第1電源配線24は第1集熱管12aの中心点20cに接続され、第2電源配線25は第2集熱管12bの中心点21cに接続されている。第1電流経路26における第1電源配線24、第1集熱管12aの中心点20cから一端部20aまでの部分、第2集熱管12bの一端部21aから中心点21cまでの部分および第2電源配線25の合成抵抗と、第2電流経路27における第1電源配線24、第1集熱管12aの中心点20cから他端部20bまでの部分、第2集熱管12bの他端部21bから中心点21cまでの部分および第2電源配線25の合成抵抗は、同じである。従って、第1電流経路26全体の合成抵抗値(以下「第1合成抵抗値」と呼ぶ)と、第2電流経路27全体の合成抵抗値(以下「第2合成抵抗値」と呼ぶ)との差は、連結配管14とバイパス配線30の合成抵抗値と、接続配線22の抵抗値とに依存する。
【0038】
本実施形態に係る加熱装置40において、バイパス配線30の抵抗値は、バイパス配線30と連結配管14の合成抵抗値が接続配線22の抵抗値に近似するように設定される。バイパス配線30の抵抗値は、バイパス配線30の材質、太さ、長さ等を変えることにより変化させることができる。例えば、バイパス配線30を太くするほど、バイパス配線30の抵抗値は小さくなる。また、バイパス配線30の長さを長くするほど、バイパス配線30の抵抗値は大きくなる。
【0039】
本実施形態に係る加熱装置40においては、連結配管14と並列にバイパス配線30を設けることにより、第1電流経路26の第1合成抵抗値を(バイパス配線30を設けない場合と比べて)下げて、第2電流経路27の第2合成抵抗値に近づけることができる。これにより、第1電流経路26を流れる電流と第2電流経路27を流れる電流との差分が小さくなり、熱媒流路の位置によるジュール熱の差異が小さくなるため、熱媒流路11全体を適切に加熱することができる。例えば、第1電流経路26を流れる電流と第2電流経路27を流れる電流とが近似している場合、第1集熱管12aの一端部20aと他端部20bで発生するジュール熱も近似する。
【0040】
バイパス配線30の抵抗値を接続配線22と同様の非常に低い抵抗値とした場合、第1電流経路26を流れる電流の多くがバイパス配線30を流れ、連結配管14を流れる電流が少なくなるため、連結配管14で発生するジュール熱が少なくなり、連結配管14を効果的に加熱することができないおそれがある。また、バイパス配線30の抵抗値を連結配管14の抵抗値よりも大きくした場合、第1電流経路26の合成抵抗を第2電流経路27の合成抵抗に近づけることが難しくなる。そこで、バイパス配線30の抵抗値は、接続配線22の抵抗値よりも大きく、且つ連結配管14の抵抗値よりも小さくなるよう設定されることが望ましい。この場合、第1電流経路26の合成抵抗を第2電流経路27の合成抵抗に近づけつつ、連結配管14を効果的に加熱することができる。
【0041】
上述の実施形態では、第1電源配線24を第1集熱管12aの中心点20cに接続し、第2電源配線25を第2集熱管12bの中心点21cに接続した。しかしながら、第1電源配線24、第2電源配線25の接続先は、第1集熱管12a、第2集熱管12bの中心点に限定されず、第1集熱管12a、第2集熱管12bの中間(すなわち、集熱管の両端部間の任意の位置)であればよい。この場合、バイパス配線30の抵抗値は、第1合成抵抗値が第2合成抵抗値に近似するように設定される。第1合成抵抗値と第2合成抵抗値の差は、例えば第2合成抵抗値の10%以内とすることが好ましい。
【0042】
図5は、本発明の実施形態に係る加熱装置の変形例を説明するための図である。本変形例に係る加熱装置60は、連結配管14とバイパス配線30との接続位置を変えるための接続位置可変部62をさらに備える。この接続位置可変部62は、連結配管14の表面上に設けられた導電性部材であり、バイパス配線30を取り付けるための取付部が形成されている。図5に示すように、連結配管14の表面上には所定の間隔をおいて複数の接続位置可変部62が設けられている。
【0043】
バイパス配線30の一端部は、第1集熱管12aの一端部20aに接続される。また、バイパス配線30の他端部は、接続位置可変部62の取付部に接続される。本変形例において、第1集熱管12aの一端部20aと第2集熱管12bの一端部21aとの間の抵抗値は、並列に接続されたバイパス配線30と連結配管14の一部との合成抵抗値と、連結配管14の残りの部分の抵抗値の和となる。本変形例では、バイパス配線30の他端部を接続する接続位置可変部62を変えることにより、第1集熱管12aの一端部20aと第2集熱管12bの一端部21aとの間の抵抗値を変えることができる。
【0044】
本変形例に係る加熱装置60によれば、太陽熱発電システムの設置場所において作業者がバイパス配線30の接続先を複数の接続位置可変部62の中から選択することで、第1電流経路26の第1合成抵抗値を変えることができる。これにより、第1合成抵抗値を第2合成抵抗値に好適に近づけることができるため、熱媒流路11をより適切に加熱することができる。
【0045】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0046】
10 集光ユニット、 11 熱媒流路、 12 集熱管、 12a 第1集熱管、 12b 第2集熱管、 13 反射板、 14 連結配管、 22 接続配線、 23 電源、 26 第1電流経路、 27 第2電流経路、 30 バイパス配線、 40、60 加熱装置、 62 接続位置可変部。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、太陽熱発電システムで熱媒流路を加熱するために使用される加熱装置に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5