特許第6544032号(P6544032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6544032
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】多心シールドフラットケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20190705BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20190705BHJP
   H01B 11/00 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   H01B7/08
   H01B7/18 D
   H01B11/00 G
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-97295(P2015-97295)
(22)【出願日】2015年5月12日
(65)【公開番号】特開2016-213112(P2016-213112A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099597
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 賢二
(74)【代理人】
【識別番号】100124235
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】西村 慶
(72)【発明者】
【氏名】南畝 秀樹
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−298605(JP,A)
【文献】 特開2014−038777(JP,A)
【文献】 特開2012−227037(JP,A)
【文献】 特表2012−531014(JP,A)
【文献】 特開2015−022807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
H01B 7/18
H01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の信号線導体、前記一対の信号線導体を覆う絶縁体、及び前記絶縁体の周りに設けられたシールド導体を有し、互いに間隔を置いて平行に配置された複数の被覆導体と、
前記複数の被覆導体を一括して覆う外部導体と、
各被覆導体と前記外部導体との間に設けられた絶縁層と、を備え、
前記複数の被覆導体の内の少なくとも一つの前記被覆導体の前記シールド導体を送信側グランドとし、前記複数の被覆導体の内の少なくとも一つの前記被覆導体の前記シールド導体を前記信側グランドと電気的に分離される受信側グランドとし、
前記外部導体を前記送信側グランド及び前記受信側グランドと電気的に分離されるフレームグランドとした、
多心シールドフラットケーブル。
【請求項2】
前記絶縁層は、片面に接着層が設けられた絶縁テープを、前記被覆導体の周囲に2重巻きにして形成され、
1重目の前記絶縁テープは、前記接着層を外側にして、前記被覆導体に巻き付けられ、
2重目の前記絶縁テープは、前記接着層を内側にして、1重目の前記絶縁テープに重ねられた、
請求項1に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項3】
前記外部導体は、前記絶縁層が設けられた前記複数の被覆導体を挟む2つのシェルで構成され、
各シェルの前記複数の被覆導体側の面に、接着機能を有する絶縁樹脂が塗布され、
前記2つのシェルにより前記絶縁層が設けられた前記複数の被覆導体を挟んで、前記2つのシェルが張り合わされた、
請求項1又は2に記載の多心シールドフラットケーブル。
【請求項4】
前記シールド導体は、樹脂層の片面に導電層が設けられた導電性テープを、前記樹脂層を内側にして、前記絶縁体の周囲に縦添え巻きして形成された、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多心シールドフラットケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多心シールドフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
多心シールドフラットケーブルは、電子機器内において配線として用いられ、優れた高周波特性及び電磁シールド性が要求される。例えば、特許文献1に開示された多心シールドフラットケーブルは、内部導体(信号線導体)及び絶縁体を含む複数の被覆導体と、複数の被覆導体を一括して覆う外部導体とを備えている。外部導体は、複数の被覆導体を互いに協働して挟む第1シェル及び第2シェルからなり、第1シェルの縁部と第2シェルの縁部の間には、隙間の発生を防止する隙間発生防止手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−227037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の多心シールドフラットケーブルは、被覆導体の内部導体(信号線導体)を取り囲む導体として外部導体しかないため、信号線用のシグナルグランドと、筐体接地用のフレームクランドとを分離することができなかった。そのため、信号線を流れる信号が、外部の筐体等からのノイズにより影響を受ける恐れがあった。
【0005】
本発明は、信号線を流れる信号が外部からのノイズの影響を受けにくい多心シールドフラットケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、一対の信号線導体、一対の信号線導体を覆う絶縁体、及び絶縁体の周りに設けられたシールド導体を有し、互いに間隔を置いて平行に配置された複数の被覆導体と、複数の被覆導体を一括して覆う外部導体と、各被覆導体と外部導体との間に設けられた絶縁層と、を備えた、多心シールドフラットケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、信号線を流れる信号が外部からのノイズの影響を受けにくい多心シールドフラットケーブルを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る多心シールドフラットケーブルの斜視図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る多心シールドフラットケーブルの一部の断面図である。
図3】絶縁層の構成を示す図である。
図4】外部導体を取り付ける前の状態を示す図である。
図5】外部導体を取り付けた後の状態を示す図である。
図6】本発明の第2の実施の形態に係る多心シールドフラットケーブルの一部の断面図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る多心シールドフラットケーブルのシールド導体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る多心シールドフラットケーブルの斜視図である。多心シールドフラットケーブル10は、複数の被覆導体14と、複数の被覆導体14を一括して覆う外部導体16とを含んで構成されている。複数の被覆導体14は、互いに間隔を置いて平行に配置されている。なお、図1では、4つの被覆導体14が設けられているが、被覆導体14の数は、これに限らず、2つ以上であればよい。
【0010】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る多心シールドフラットケーブルの一部の断面図である。図2には、複数の被覆導体14の内の、一つの被覆導体14及びその周囲の断面が示されている。
【0011】
被覆導体14は、一対の信号線導体11,11と、一対の信号線導体11,11を覆う絶縁体12と、絶縁体12の周りに設けられたシールド導体13とを含んで構成されている。信号線導体11は、例えば銅等の金属線からなる。絶縁体12は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、またはこれらの発泡体等からなる。シールド導体13は、例えば、銅箔等の導電体を、絶縁体12の周囲に横巻きにして構成されている。
【0012】
本実施の形態では、多心シールドフラットケーブル10は、差動信号伝送用であり、一対の信号線導体11,11が一つ絶縁体12によって一括して覆われている。そして、好ましい態様として、絶縁体12の横断面形状は楕円形であり、楕円の長軸方向は、2本の信号線導体11,11の配列方向に一致している。
【0013】
被覆導体14のシールド導体13と、外部導体16との間には、絶縁層15が設けられている。図3は、絶縁層の構成を示す図である。絶縁層15は、絶縁テープ15a,15bを、被覆導体14の周囲に2重巻きにして、形成されている。絶縁テープ15a,15bは、例えば、PET(ポリエステルテープ)等からなり、片面に接着層が設けられている。1重目の絶縁テープ15aは、接着層を外側にして、被覆導体14に巻き付けられている。2重目の絶縁テープ15bは、接着層を内側にして、1重目の絶縁テープ15aに重ねられている。従って、絶縁テープ15a,15bからなる絶縁層15は、被覆導体14に接着されておらず、多心シールドフラットケーブル10の端面処理を行う際に、被覆導体14を容易に露出させることができる。
【0014】
図4は、外部導体を取り付ける前の状態を示す図である。外部導体16は、絶縁層15が設けられた複数の被覆導体14を挟む2つのシェル16a,16bにより構成されている。シェル16a,16bは、銅等の金属の薄い板又は箔からなり、プレス加工等により成形されている。一例として、シェル16a,16bの金属の板又は箔の厚さは、後述する絶縁樹脂17を含めて、0.015〜0.075mm程度である。
【0015】
図4に示すように、各シェル16a,16bの複数の被覆導体14側の面に、接着機能を有する絶縁樹脂17を塗布する。そして、2つのシェル16a,16bにより、絶縁層15が設けられた複数の被覆導体14を挟んで、2つのシェル16a,16bを張り合わせる。図5は、外部導体を取り付けた後の状態を示す図である。絶縁樹脂17の接着機能により、シェル16a,16bが張り合わせられるので、別途、2つのシェル16a,16bの間に隙間が発生するのを防止する手段を必要としない。
【0016】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、以下のような作用及び効果が得られる。
【0017】
(1)被覆導体14には、絶縁体12の周りにシールド導体13が設けられ、被覆導体14と外部導体16との間に、絶縁層15が設けられているので、シールド導体13をシグナルグランドとし、外部導体16をフレームグランドとして、シグナルグランドとフレームグランドとを分離することができる。従って、外部導体16が外部の筐体等からのノイズを受けても、信号線導体11を流れる信号が、外部からのノイズの影響を受けにくい。
【0018】
(2)複数の被覆導体14の内の一つの被覆導体14のシールド導体13を送信側グランドとし、もう一つの被覆導体14のシールド導体13を受信側グランドとして、送信側グランドと受信側グランドとを分離することができる。従って、ノイズやクロストーク等の対策を、さらに強化することができる。
【0019】
(3)片面に接着層が設けられた絶縁テープ15a,15bを、被覆導体14の周囲に2重巻きにして、絶縁層15を形成し、1重目の絶縁テープ15aを、接着層を外側にして、被覆導体14に巻き付け、2重目の絶縁テープ15bを、接着層を内側にして、1重目の絶縁テープ15aに重ねることにより、多心シールドフラットケーブル10の端面処理を行う際に、被覆導体14を容易に露出させることができる。
【0020】
(4)外部導体16を、絶縁層15が設けられた複数の被覆導体14を挟む2つのシェル16a,16bで構成し、各シェル16a,16bの複数の被覆導体14側の面に、接着機能を有する絶縁樹脂17を塗布し、2つのシェル16a,16bにより絶縁層15が設けられた複数の被覆導体14を挟んで、2つのシェル16a,16bを張り合わせることにより、別途、2つのシェル16a,16bの間に隙間が発生するのを防止する手段を必要としない。
【0021】
[第2の実施の形態]
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る多心シールドフラットケーブルの一部の断面図である。本実施の形態は、シールド導体13を、導電性テープにより形成したものである。その他の構成は、図2に示した第1の実施の形態と同様である。
【0022】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る多心シールドフラットケーブルのシールド導体を示す斜視図である。シールド導体13は、導電性テープ20を、絶縁体12の周囲に縦添え巻き(シガーレット巻き)して形成されている。導電性テープ20は、樹脂層20aの片面に、導電層20bが設けられている。樹脂層20aは、例えばポリエステル等の樹脂からなる。導電層20bは、例えば銅箔等の導電体からなる。導電性テープ20を、樹脂層20aを内側にして、絶縁体12の周囲に縦添え巻きすることにより、絶縁体12の周囲にシールド導体13が容易に形成される。
【0023】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態について説明した(1)〜(4)の作用及び効果と同様の作用及び効果が得られる。
【0024】
さらに、樹脂層20aの片面に導電層20bが設けられた導電性テープ20を、樹脂層20aを内側にして、絶縁体12の周囲に縦添え巻きして、シールド導体13を形成することにより、絶縁体12の周囲にシールド導体13を容易に形成することができる。
【0025】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0026】
[1]一対の信号線導体(11,11)、一対の信号線導体(11,11)を覆う絶縁体(12)、及び絶縁体(12)の周りに設けられたシールド導体(13)を有し、互いに間隔を置いて平行に配置された複数の被覆導体(14)と、複数の被覆導体(14)を一括して覆う外部導体(16)と、各被覆導体(14)と外部導体(16)との間に設けられた絶縁層(15)と、を備えた、多心シールドフラットケーブル。
【0027】
[2]絶縁層(15)は、片面に接着層が設けられた絶縁テープ(15a,15b)を、被覆導体(14)の周囲に2重巻きにして形成され、1重目の絶縁テープ(15a)は、接着層を外側にして、被覆導体(14)に巻き付けられ、2重目の絶縁テープ(15b)は、接着層を内側にして、1重目の絶縁テープ(15a)に重ねられた、多心シールドフラットケーブル。
【0028】
[3]外部導体(16)は、絶縁層(15)が設けられた複数の被覆導体(14)を挟む2つのシェル(16a,16b)で構成され、各シェル(16a,16b)の複数の被覆導体(14)側の面に、接着機能を有する絶縁樹脂(17)が塗布され、2つのシェル(16a,16b)により絶縁層(15)が設けられた複数の被覆導体(14)を挟んで、2つのシェル(16a,16b)が張り合わされた、多心シールドフラットケーブル。
【0029】
[4]シールド導体(13)は、樹脂層(20a)の片面に導電層(20b)が設けられた導電性テープ(20)を、樹脂層(20a)を内側にして、絶縁体(12)の周囲に縦添え巻きして形成された、多心シールドフラットケーブル。
【0030】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0031】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、以上説明した実施の形態では、一つの絶縁体12により一対の信号線導体11,11を一括して覆っているが、信号線導体11毎に絶縁体を設けてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10…多心シールドフラットケーブル
11…信号線導体
12…絶縁体
13…シールド導体
14…被覆導体
15…絶縁層
15a,15b…絶縁テープ
16…外部導体
16a,16b…シェル
17…絶縁樹脂
20…導電性テープ
20a…樹脂層
20b…導電層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7