(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0014】
図1(a)は、本実施の形態に係る信号検知装置を示す概略構成図であり、
図1(b)は信号検知装置を搭載した中継コネクタの斜視図である。
【0015】
図1(a),(b)に示すように、信号検知装置1は、差動信号を伝送する通信ケーブル2の端部に設けられたコネクタ3、または当該コネクタ3が接続される通信機器(ここでは中継コネクタ4)に設けられ、情報通信の有無を検知するものである。ここでは、中継コネクタ4に信号検知装置1を設ける場合を説明するが、ネットワークスイッチやサーバ等の他の通信機器に信号検知装置1を設けてもよい。
【0016】
本実施の形態では、通信ケーブル2として、差動信号を伝送する4対(合計8本)の信号線を有するものを用いた。
【0017】
中継コネクタ4は、通信ケーブル2の端部に設けられたコネクタ3(例えば、RJ45規格に準拠したプラグコネクタ)がそれぞれ接続される2つのコネクタ5(例えば、RJ45規格に準拠したジャックコネクタ)と、両コネクタ5を実装した回路基板6と、を備えている。中継コネクタ4の回路基板6には、両コネクタ5に接続される通信ケーブル2の4対の信号線同士を互いに電気的に接続する4対の伝送線路7が形成されている。なお、
図1(a)では、4対の伝送線路7のうち、1対のみを示している。
【0018】
信号検知装置1は、検知回路8と、自己診断用回路9と、外部電源としてのバッテリ(DC電源)15と、を備えている。
【0019】
バッテリ15は、中継コネクタ4とは別体に構成されており、バッテリ15から延出された電源線33の端部に設けられた電源コネクタ31を、中継コネクタ4の回路基板6に設けられた基板側電源コネクタ32に接続することで、信号検知装置1に電源供給がなされるように構成されている。なお、バッテリ15を省略し、外部から有線給電あるいは無線給電により信号検知装置1に電源供給するように構成しても構わない。
【0020】
(検知回路8の説明)
検知回路8は、通信ケーブル2が伝送する信号の一部を分岐させて取り出し、当該取り出した信号に基づき情報通信の有無を表示するものである。
【0021】
検知回路8は、整合回路10、増幅回路11、整流回路12、比較回路13、発光回路14を順次接続して構成されている。増幅回路11、比較回路13、および発光回路14には、バッテリ15から電源供給がなされるように構成されている。
【0022】
整合回路10は、所定の周波数帯にてインピーダンス整合をとるためのものである。本実施の形態では、通信ケーブル2が伝送する信号の一部を分岐させて取り出しているため、整合回路10は、通信ケーブル2から取り出す信号のレベルを調整する役割も兼ねることになる。
【0023】
本実施形態では、任意の伝送線路7の対から分岐した分岐伝送路7aが、整合回路10に入力される。整合回路10は、例えば、抵抗回路からなる。
【0024】
増幅回路11は、通信ケーブル2の任意の信号線(伝送線路7)から整合回路10を介して取り出した信号を増幅して後段の整流回路12に出力する回路である。増幅回路11としては、例えば、エミッタ接地回路を用いることができる。なお、増幅回路11の具体的な構成は、これに限定されない。本実施の形態では、増幅回路11を1段構成としているが、増幅回路11を多段構成としても構わない。
【0025】
整流回路12は、増幅回路11が増幅した交流の信号を直流に整流して後段の比較回路13に出力するものである。整流回路12としては、公知の全波整流回路や半波整流回路を用いることができる。
【0026】
比較回路13は、整流回路12の出力電圧が、予め設定した閾値電圧(オフセット電圧)以上であるとき、オンとなり、所定の電圧の直流信号を後段の発光回路14に出力する回路である。
【0027】
比較回路13を備えることにより、比較回路13のオフセット電圧を低く設定しておけば、整流回路12からの出力電圧が小さい場合であっても、一定の電圧の信号を発光回路14に出力することが可能になり、発光回路14を安定して動作させることが可能になる。そのため、整合回路10の抵抗Rinの抵抗値を大きくして、通信ケーブル2から取り出す信号のレベルを小さくすることが可能となり、反射損失や挿入損失を抑制して通信ケーブル2を伝送する信号の信号品質の劣化を抑制することが可能になる。
【0028】
また、通信ケーブル2が接続される通信装置によって通信ケーブル2を伝送される信号の信号強度が異なったり、通信ケーブル2が長短により信号強度が異なったりする場合も考えられるが、比較回路13を備えることで、たとえ通信ケーブル2を伝送される信号の信号強度が小さい場合であっても、発光回路14を安定して動作させることが可能になる。さらに、整流回路12からの出力電圧を小さくできるため、増幅回路11の出力電力を小さくすることができ、消費電力を抑制すると共に、増幅回路11の出力信号が通信ケーブル2に進行することによる信号品質の劣化を抑制することも可能になる。
【0029】
発光回路14は、比較回路13からの出力に基づき、発光により情報通信の有無を表示するものである。本実施の形態では、発光回路14は、発光色の異なる2つの発光素子(発光ダイオード)を有しており、情報通信の有無を、異なる色の発光により表示するように構成されている。ここでは、情報通信が有るとき(比較回路13がオンのとき)に青色の発光素子を発光させ、情報通信が無いとき(比較回路13がオフのとき)に赤色の発光素子を発光させるように発光回路14を構成した。
【0030】
このように、本実施の形態では、バッテリ15から電源供給がされているときには、発光回路14は常にいずれかの発光素子を発光させていることになる。よって、バッテリ15から電源供給がされているにもかかわらず、発光回路14の両発光素子が発光しない場合には、信号検知装置1に断線、故障等のなんらかの異常が発生していることが分かる。
【0031】
(自己診断用回路9の説明)
自己診断用回路9は、検知回路8の診断時に、検知回路8に診断用信号を入力することで、検知回路8が正常に動作しているか否かを判断するための回路である。
【0032】
本実施の形態では、自己診断用回路9は、バッテリ15を接続して検知回路8への電源供給を開始した際に、検知回路8に診断用信号を所定時間入力するように構成されている。
【0033】
具体的には、自己診断用回路9は、発振回路16と、自己診断用回路側整合回路17と、時定数回路18と、を備えている。
【0034】
発振回路16は、診断用信号を発生させる回路である。本実施の形態では、通信ケーブル2を伝送される信号(検知回路8に入力される信号)を模した信号を発振回路16で発生させることになる。そのため、発振回路16は、通信ケーブル2を伝送される信号と周波数および電力が近い、検知回路8で検知可能な信号を、診断用信号として出力するように構成される。発振回路16の具体的な構成は特に限定するものではなく、通信ケーブル2を伝送される信号の周波数等に応じて、適宜な構成の発振回路16を用いることができる。
【0035】
自己診断用回路側整合回路17は、発振回路16と検知回路8との間に設けられ、発振回路16から検知回路8に入力される診断用信号の信号レベルを調整する回路である。自己診断用回路側整合回路17は、通信ケーブル2の任意の信号線(伝送線路7)から整合回路10を介して取り出した信号が、発振回路16側に伝送されてしまうことを抑制する役割も果たす。
【0036】
本実施の形態では、自己診断用回路側整合回路17は、その入力が発振回路16に接続され、その出力が検知回路8の増幅回路11の入力に接続されている。自己診断用回路側整合回路17は、例えば、抵抗回路からなる。
【0037】
時定数回路18は、バッテリ15からの電源供給が開始された際に、当該電源供給の開始から予め設定された時間のみ発振回路16に電源を供給するように構成されている。時定数回路18は、バッテリ15から発振回路16に電源を供給する電源回路において、発振回路16と直列に接続されている。
【0038】
本実施の形態では、時定数回路18は、直列接続された容量素子Cとい抵抗素子Rとを備え、これら容量素子Cとい抵抗素子Rにより設定される時定数により、発振回路16の動作時間を調整するように構成されている。容量素子Cには、並列に抵抗素子rが接続されており、この抵抗素子rにより、容量素子Cにチャージされた電荷を処理するように構成されている。なお、時定数回路18の具体的な構成は図示のものに限定されず、適宜変更可能である。
【0039】
(信号検知装置1の動作の説明)
信号検知装置1では、バッテリ15を接続すると、時定数回路18の容量素子Cを通過して発振回路16に電流が流れて発振回路16が駆動され、発振回路16から診断用信号が出力される。また、バッテリ15を接続することにより、増幅回路11、比較回路13、および発光回路14にも電源供給がなされる。
【0040】
発振回路16から出力された診断用信号は、自己診断用回路側整合回路17を介して検知回路8に入力され、増幅回路11で増幅され、整流回路12で整流された後に比較回路13に入力され、比較回路13をオンにする。これにより、発光回路14では、青色の発光素子が発光することになる。
【0041】
このように、増幅回路11、整流回路12、比較回路13、および発光回路14に異常がなければ、通信ケーブル2での情報通信の有無にかかわらず、発光回路14では青色の発光素子が発光され、「情報通信が有る」と表示されることになる。
【0042】
他方、増幅回路11、整流回路12、比較回路13、または発光回路14に断線、故障等の異常がある場合、発光回路14では赤色の発光素子が発光され、「情報通信が無い」と表示されることになる。なお、発光回路14で発光素子が発光されない場合も、なんらかの異常が発生していると考えられる。
【0043】
バッテリ15による電源供給の開始から所定時間が経過し、時定数回路18の容量素子Cへの電荷のチャージが終了すると、発振回路16への電流が遮断され、発振回路16からの診断用信号の出力が停止される。そのため、電源供給の開始から所定時間が経過した後は、通信ケーブル2の任意の信号線(伝送線路7)から整合回路10を介して取り出した信号に基づき、「情報通信が有る」場合には発光回路14にて青色の発光素子が発光され、「情報通信が無い」場合には発光回路14にて赤色の発光素子が発光されることになる。
【0044】
以上で説明した信号検知装置1における発光回路14の発光色の変化を表1にまとめて示す。
【0046】
表1に示すように、信号検知装置1では、検知回路8が正常であるときには、電源投入時に発光回路14における発光色が青になる。これに対して、検知回路8に断線、故障等の異常が発生しているときには、電源投入時に発光回路14における発光色が赤になる。よって、電源投入時の発光回路14の発光色により、検知回路8に異常があるか否かを判断することが可能になる。
【0047】
なお、自己診断用回路9に断線、故障等の異常が発生する場合も考えられるが、この場合にも、電源投入時に発光回路14における発光色が赤になっていれば、信号検知装置1に異常が発生していると判断することができる。なお、自己診断用回路9に異常が発生している場合であっても、検知回路8が正常であれば、通信ケーブル2に情報通信が有る場合には電源投入時の発光回路14における発光色が青になるが、この場合、検知回路8は正常であるため、信号検知装置1をそのまま使用することが可能であり、通信ケーブル2の誤抜等の不具合が発生することはない。ただし、このような場合には、自己診断機能が失われており速やかに信号検知装置1を交換することが望ましいため、例えば、発振回路16から診断用信号が出力されているか否かを表示する表示回路を別途備えるようにしてもよい。
【0048】
本実施の形態では、入出力ポート(コネクタ5)を1対有する中継コネクタ4に適用する場合を説明したが、本発明は、入出力用ポートを複数有する通信機器にも適用可能である。
【0049】
例えば、
図2(a),(b)に示すように、複数(ここでは6つ)の入出力ポート21を備えるパッチパネル20に適用する場合、各入出力用ポート21に対応するように、複数(ここでは6つ)の検知回路8を備えるようにすればよい。パッチパネル20の各入出力用ポート21の近傍(ここでは上方)には、各入出力用ポート21に対応する検知回路8の発光回路14における発光を確認するための発光部22が形成される。
【0050】
複数の検知回路8を備える場合、自己診断用回路9は、1つの発振回路16で発生させた診断用信号を、複数の検知回路8のそれぞれに入力するように構成されることが望ましい。具体的には、自己診断用回路9は、各検知回路8に対応する複数の自己診断用回路側整合回路17を備え、発振回路16の出力を、各自己診断用回路側整合回路17の入力にそれぞれ接続するように構成されるとよい。自己診断用回路側整合回路17の出力は、対応する検知回路8の増幅回路11の入力にそれぞれ接続される。なお、
図2(b)では時定数回路18を省略して示している。
【0051】
このように構成することで、入出力ポート21毎に発振回路16を備える必要がなくなるため、コストを抑えることが可能になる。なお、
図2(b)では図示していないが、外部電源としてのバッテリ15から、発振回路16と各検知回路8に一括して電源供給がなされるように構成されることがより望ましい。
【0052】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る信号検知装置1では、通信ケーブル2が伝送する信号の一部を分岐させて取り出し、当該取り出した信号に基づき情報通信の有無を表示する検知回路8と、検知回路8の診断時に、検知回路8に診断用信号を入力する自己診断用回路9と、を備えている。
【0053】
検知回路8を備えることにより、通信ケーブル2が信号を伝送しているか否かを検知し、通信ケーブル2の誤抜を抑制することが可能になる。また、検知回路8により情報通信が無い通信ケーブル2を容易に確認できるため、通信ケーブル2を抜去する際の作業効率を向上できる。
【0054】
ここで、検知回路8が故障した場合、通信ケーブル2で情報通信が有るにもかかわらず、情報通信が無いという表示をする可能性があり、情報通信が有る通信ケーブル2を誤抜してしまう可能性が生じる。
【0055】
そこで、本実施の形態では、自己診断用回路9を備えることにより、検知回路8が正常に動作しているか否かを診断する自己診断機能を実現している。これにより、検知回路8に異常が発生している場合であっても、通信ケーブル2の誤抜を抑制することが可能になる。なお、検知回路8に異常が発生した場合には、通信ケーブル2を介した通信を一時的に中断する等して情報通信を停止させた状態で、異常が発生した信号検知装置1を新たな信号検知装置1に取り換えるとよい。
【0056】
また、本実施の形態に係る信号検知装置1では、自己診断用回路9を発振回路16と自己診断用回路側整合回路17と時定数回路18とで構成しているため、制御用のIC等が不要であり、低コストに自己診断用回路9を実現できる。
【0057】
また、本実施の形態では、検知回路8への電源供給を開始した際に、検知回路8に診断用信号を所定時間入力するように自己診断用回路9を構成しているため、電源投入時に自動的に検知回路8の診断が行われることになり、作業者が診断作業を忘れて通信ケーブル2を抜去してしまうことがなくなる。また、電源投入時に自動的に診断作業が行われるため、例えばスイッチ等を押下することにより診断作業を実行するような場合と比較して、診断作業が容易である。
【0058】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0059】
[1]通信ケーブル(2)の端部に設けられたコネクタ(3)、または当該コネクタ(3)が接続される通信機器(4)に設けられる信号検知装置(1)であって、前記通信ケーブル(2)が伝送する信号の一部を分岐させて取り出し、当該取り出した信号に基づき情報通信の有無を表示する検知回路(8)と、前記検知回路(8)の診断時に、前記検知回路(8)に診断用信号を入力する自己診断用回路(9)と、を備えた、信号検知装置(1)。
【0060】
[2]前記自己診断用回路(9)は、前記検知回路(8)への電源供給を開始した際に、前記検知回路(8)に前記診断用信号を所定時間入力するように構成される、[1]に記載の信号検知装置(1)。
【0061】
[3]前記自己診断用回路(9)は、前記診断用信号を発生させる発振回路(16)と、前記発振回路(16)と前記検知回路(8)との間に設けられ、前記発振回路(16)から前記検知回路(8)に入力される前記診断用信号の信号レベルを調整する自己診断用回路側整合回路(17)と、を備えている、[1]または[2]に記載の信号検知装置(1)。
【0062】
[4]前記検知回路(8)と前記自己診断用回路(9)は、外部電源(15)により動作するように構成され、前記自己診断用回路(9)は、前記外部電源(15)からの電源供給が開始された際に、当該電源供給の開始から予め設定された時間のみ前記発振回路(16)に電源を供給するように構成された時定数回路(18)を備えている、[3]に記載の信号検知装置(1)。
【0063】
[5]前記検知回路(8)を複数備え、1つの前記発振回路(16)で発生させた前記診断用信号を、前記複数の検知回路(8)のそれぞれに入力するように構成される、[3]または[4]に記載の信号検知装置(1)。
【0064】
[6]前記検知回路(8)は、情報通信の有無を、異なる色の発光により表示する発光回路(14)を有する、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の信号検知装置(1)。
【0065】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0066】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0067】
例えば、上記実施の形態では、情報通信が有るときに青色、情報通信が無いときに赤色で発光するように発光回路14を構成したが、発光色はこれに限定されるものではない。また、本実施の形態では、発光色の違いにより情報通信の有無を表示したが、これに限らず、発光色が同じ2つの発光素子を用い、情報通信が有るときに一方の発光素子を発光させ、情報通信が無いときに他方の発光素子を発光させるようにし、どちらの発光素子が発光しているかによって、情報通信の有無を判断するように発光回路14を構成してもよい。
【0068】
また、上記実施の形態では、電源投入時のみに検知回路8の診断を行うように構成したが、例えば、発振回路16に直接電源を供給するためのスイッチ回路を別途設ける等して、電源投入後任意のタイミングで検知回路8の診断を実行することもできるように自己診断用回路9を構成してもよい。