(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の第2、第3超音波素子間において超音波の伝達に要した時間から生体の位置(生体の3次元座標)を検出するということは、実際的には、超音波の伝達に要した時間に音速を乗じた伝達距離を用いて生体の位置を算出することになる。具体的には、伝達距離を基に得られる各第3超音波素子および生体間の距離と、各第3超音波素子の3次元座標とを、数式1に示すような球面の方程式に当てはめることで得られる3元2次方程式から算出することになる。よって、平方根の算出や、解を算出するための条件設定(場合分け)等が必要となり、計算負荷が高く、計算処理に時間のかかるものとなっている。
【0005】
(数1)
(x−a)
2+(y−b)
2+(z−c)
2=r
2
但し、a、b、cは球面の中心におけるx、y、z座標、rは半径である。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、対象物の位置を検出する際の計算負荷を低減可能とする位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
本発明では、超音波を用いて対象物の位置を検出する位置検出装置において、
基板(111)と、
超音波の発振および受信を可能として、基板上に複数配置された超音波素子(112)と、
複数の超音波素子から、同時期に、同周波数で超音波を発振させて、対象物で反射した超音波を、複数の超音波素子のうち、1番目に受信した1番目超音波素子(1121)の基板上の2次元位置(x1、y1)と、1番目超音波素子の発振から受信までの時間(t)に基づいて算出される対象物および1番目超音波素子間の距離(z1)とを用いて対象物の3次元位置(x1、y1、z1)を検出する制御部(120)と、を備え
、
対象物が前記基板に対して水平に位置し、
制御部は、
基板の端部と隣接する位置を含む1番目超音波素子を、同時に複数検知した場合に、
複数の1番目超音波素子のうち、基板の端部から最も離れた1番目超音波素子を用いて、対象物の先端における3次元位置を推定することを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、基板(111)に投影される対象物の2次元位置は、基板上における1番目超音波素子(1121)の2次元位置(x1、y1)として容易に算出することができる。また、対象物と基板との距離(z1)は、超音波の速度(v)と、1番目超音波素子における発振から受信までの時間(t)との積を1/2とすることで容易に算出することができる。よって、対象物の3次元位置(x1、y1、z1)を検出する際の計算負荷を低減することができ、計算処理の時間を短縮することができる。
【0010】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態における位置検出装置100について、
図1、
図2を用いて説明する。位置検出装置100は、超音波を用いて対象物の位置を検出する装置となっている。対象物は、ここでは、例えば操作者の指等(生体)となっている。位置検出装置100は、例えば、所定の空間に映し出される空中映像に対して、操作者の指等によって空中操作が行われる際の、指(指先)の3次元位置(x1、y1、z1)を検出する装置となっている。位置検出装置100は、
図1に示すように、超音波素子パネル110、および制御部120等を備えている。
【0014】
超音波素子パネル110は、基板111、および複数の超音波素子112等を有している。基板111は、四角形の板部材であり、複数の超音波素子112を搭載するための部材となっている。
【0015】
超音波素子112は、超音波の発振、および受信を可能とする素子であり、基板111の上側面に複数配置されている。ここでは、複数の超音波素子112は、基板111上で互いに直交する2軸方向(x軸方向、およびy軸方向)に等間隔で並び、全体では、格子状を成すように整列配置されている。各超音波素子112については、それぞれ、基板111上における2軸方向の座標位置(x、y)が予め設定されている。尚、2軸方向に対して直交する方向(基板111から垂直に離れる方向)をz軸方向(
図2)と定義することとする。
【0016】
複数の超音波素子112は、すべて同一仕様のものが使用されている。各超音波素子112は、電圧印加に伴い振動して超音波を発振すると共に、空中操作される指先等で反射した超音波による振動や圧力を受けたときに電圧を発生(超音波の受信)する圧電素子と、発振する際の超音波の周波数を所定周波数に設定する共振器とを備えている。ここでは、圧電素子は、例えば、変換効率に優れるPZT素子(チタン酸ジルコン酸鉛)が使用されている。また、各超音波素子112から発振される超音波の所定周波数は、共振器によって、すべての超音波素子112において同一の周波数f1となるように設定されている。
【0017】
制御部120は、空中操作される指先の位置検出を実行する部位であり、超音波発振回路121、超音波受信回路122、および検出部123等を有している。
【0018】
超音波発振回路121は、複数の超音波素子112の一つずつに接続されており、検出部123の指令に基づいて、各超音波素子112から、同時に、同一周波数f1の超音波を発振させる回路となっている。超音波発振回路121は、例えば、連続的に、あるいは所定のインターバルをもって周期的に、各超音波素子112から超音波を発振させるようになっている。
【0019】
超音波受信回路122は、複数の超音波素子112の一つずつに接続されており、各超音波素子112から超音波が発振された後、空中で操作される指先に当たって反射してくる超音波を受信した超音波素子112の受信信号を、受信した時点で検出部123に出力する回路となっている。
【0020】
検出部123は、超音波受信回路122から出力される受信信号に基づいて、空中で操作される指先の3次元位置(x1、y1、z1)を検出する部位となっている。検出部123は、受信信号に基づいて、反射してきた超音波を受信した超音波素子112の2次元位置(x1、y1)を検知すると共に、超音波の発振から受信までの反射時間tから、超音波素子112と指先との距離z1を算出するようになっている。尚、反射時間tは、本発明の発振から受信までの時間に対応する。検出部123による指先の3次元位置(x1、y1、z1)の検出要領の詳細については後述する。
【0021】
本実施形態の位置検出装置100は、上記のように構成されており、以下、
図2を加えて、作動および作用効果について説明する。
【0022】
図2に示すように、まず、検出部123の指令に基づき、超音波発振回路121によって、各超音波素子112から、同時期に、同周波数f1の超音波が発振される。複数の超音波素子112の上側となる空中で指操作が行われ、指先に各超音波が当たると、各超音波は指先で反射して各超音波素子112に向かう。そして、反射された超音波を各超音波素子112が受信すると、超音波受信回路122は、受信した時点で、その超音波素子112における受信信号を検出部123に出力していく。
【0023】
検出部123は、検出信号から、複数の超音波素子112のうち、反射してきた超音波を1番目に受信した超音波素子112を1番目超音波素子1121として検知する。1番目超音波素子1121は、複数の超音波素子112のうち、指先に対して最も近い位置となる超音波素子である。つまり、1番目超音波素子1121は、指先から基板111に対する仮想垂線を想定したときに、この仮想垂線に当たる超音波素子に対応する。
【0024】
そして、検出部123は、1番目超音波素子1121における基板111上の2次元位置(x1、y1)を把握する。2次元位置(x1、y1)は、指先の位置を基板111上に投影したときの位置に対応する。更に、検出部123は、1番目超音波素子1121において、超音波が発振されて反射した超音波を受信するまでの反射時間tを把握し、この反射時間tから1番目超音波素子1121と指先との距離z1を、下記の数式2を用いて算出する。距離z1は、基板111の上側の空間における指先のz軸方向の距離に対応する。
【0025】
(数2)
z1=v・t/2
但し、vは超音波の音速(常温で340m/s程度)、tは反射時間である。
【0026】
そして、検出部123は、上記で把握した2次元位置(x1、y1)と、距離z1とから、指先の3次元位置を座標(x1、y1、z1)として検出する。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、基板111に投影される指先の2次元位置は、基板上における1番目超音波素子1121の2次元位置(x1、y1)として容易に算出することができる。また、指先と基板111との距離z1は、超音波の音速vと、1番目超音波素子1121における発振から受信までの反射時間tとの積を1/2とすることで容易に算出することができる。よって、指先の3次元位置(x1、y1、z1)を検出する際の計算負荷を低減することができ、計算処理の時間を短縮することができる。
【0028】
(第2実施形態)
第2実施形態の位置検出装置100Aを
図3に示す。第2実施形態の位置検出装置100Aは、上記第1実施形態の位置検出装置100に対して、2点の指先(対象物)の3次元位置を検出可能としたものである。
【0029】
超音波素子パネル110Aは、基板111上において、第1エリア1111と、第2エリア1112の2つに区画されている。例えば、第1エリア1111と、第2エリア1112は、基板111のx軸方向にほぼ二分されるように分割されている。
【0030】
第1エリア1111に配置される複数の超音波素子112は、例えば、上記第1実施形態と同一の仕様で、周波数f1の超音波を発振するようになっている。また、第2エリア1112に配置される複数の超音波素子112は、第1エリア1111の超音波素子112の共振器とは異なる仕様の共振器が使用されて、周波数f1とは異なる周波数f2の超音波を発振するようになっている。
【0031】
換言すると、本実施形態の超音波素子パネル110Aは、上記第1実施形態の周波数f1の超音波を発振する超音波素子パネル110に対して、周波数f2の超音波を発振する複数の超音波素子112を有するもう一つの超音波素子パネルが隣接配置されたものと言える。
【0032】
基板111の上側空間において、第1、第2エリア1111、1112を跨ぐ2つの指(指1、指2)によって指操作がされる場合であると、検出部123は、周波数f1の超音波によって、第1エリア1111上における指1に対応する1番目超音波素子11211を検知する。また、検出部123は、周波数f2の超音波によって、第2エリア1112上における指2に対応する1番目超音波素子11212を検知する。
【0033】
更に、検出部123は、各1番目超音波素子11211、11212の2次元位置(x1、y1)、(x2、y2)と、各1番目超音波素子11211、11212から各指1、指2までの距離z1、z2を算出する。そして、検出部123は、各指1、指2の3次元位置を座標(x1、y1、z1)、座標(x2、y2、z2)として検出する。
【0034】
本実施形態では、超音波素子パネル110Aを第1エリア1111と第2エリア1112とに分割し、各エリア1111、1112における超音波素子112の発振周波数を異なる周波数f1、f2とすることで、各エリア1111、1112における超音波が混同することがなく、指1と指2の3次元位置をそれぞれ検出することができる。よって、例えば、2つのエリア1111、1112に跨るようにして、ピンチアウトやピンチイン等の2本の指を用いた指操作を行う場合に、2本の指先の位置を検出することが可能となる。
【0035】
(第3実施形態)
第3実施形態の位置検出装置100Bを
図4、
図5に示す。第3実施形態の位置検出装置100Bは、上記第1実施形態の位置検出装置100に対して、空中での指操作に対して、制御部120が同時に複数の1番目超音波素子1121a、1121b、1121c、1121dを検出した場合に、指先(指の先端)の3次元位置(x1、y1、z1)を推定可能としたものである。
【0036】
本実施形態の構成は、上記第1実施形態と同一であるが、制御部120が行う制御内容が異なっている。
【0037】
通常、操作者は、基板111の外側領域のうち、ある位置に立って指操作を行うことになる。指操作によって、例えば、
図4に示すように、基板111に対してほぼ水平に指が位置したときに、検出部123は、複数の1番目超音波素子1121a〜1121dを検知することになる。このとき、複数の1番目超音波素子1121a〜1121dには、操作者の立ち位置側となる基板111の端部と隣接する1番目超音波素子1121aを含むものとなる。指先は基板111の端部から基板111の内側に向かう方向に位置することなる。
【0038】
よって、検出部123は、複数の1番目超音波素子1121a〜1121dのうち、基板111の端部から最も離れた1番目超音波素子1121dを用いて、指の先端の3次元位置(x1、y1、z1)を推定するようにしている。
【0039】
これにより、指操作の姿勢によっては、複数の1番目超音波素子1121a〜1121dが検知される場合であっても、確実に指先の3次元位置を推定することが可能となる。
【0040】
(第4実施形態)
第4実施形態を
図6に示す。第4実施形態は、上記第1実施形態に対して、制御部120が距離z1を算出する際に、反射時間tに対する距離z1の関係を予めまとめたデータテーブルを用いるようにしたものである。
【0041】
データテーブルは、例えば、距離z1を算出する際の、数式2(z1=v・t/2)に対して、音速vを定数として、所定範囲ごとの反射時間tに対する距離z1の関係を階段状となるように近似させてまとめたものとなっており、検出部123に予め記憶されている。検出部123は、距離z1を算出する際に、このデータテーブルを用いて、反射時間tに対する距離z1の近似解を算出する。
【0042】
これにより、わざわざ数式2に基づく計算を毎回行うことなく、距離z1の近似解を得ることができ、検出部123における計算負荷を低減することができる。
【0043】
(第5実施形態)
第5実施形態の位置検出装置100Cを
図7に示す。第5実施形態の位置検出装置100Cは、上記第1実施形態の位置検出装置100に対して、指先の位置検出機能に加えて、指先に触覚を提示する触覚提示機能を持たせたものである。
【0044】
本実施形態の構成は、上記第1実施形態と同一であるが、各超音波素子112における超音波の発振形態が異なっている。
【0045】
本実施形態では、まず、前提条件として、位置検出を行う際には、超音波発振回路121は、検出部123の指令に基づいて、各超音波素子112から、同時に、同一周波数f1の超音波を、所定のインターバルをもって周期的に、発振させるようになっている。これに基づいて、上記第1実施形態で説明した位置検出が実行される。
【0046】
一方、上記インターバルの間に、超音波発振回路121は、複数の超音波素子112を活用して、複数の超音波素子112のうち、少なくとも2つから超音波(同一周波数f1)を発振させ、空間上の予め定めた触覚提示位置P1に集中させるようにする。この場合、各超音波素子112と触覚提示位置P1との距離が異なるため、超音波発振回路121は、この距離を考慮して、時間差をもって、個々の超音波素子112から超音波を発振させることで、これら超音波が触覚提示位置P1に集中するように制御する。
【0047】
そして、指先が触覚提示位置P1に位置すると、集中された超音波の音圧によって指先は刺激される。触覚の程度は、触覚提示位置P1に超音波を発振する超音波素子112の数によって異なるため、適宜、作動させる超音波素子112の対応数を決定しておけばよい。
【0048】
これにより、同一の構成を流用して、位置検出機能に加えて触覚提示機能を持たせることができる。
【0049】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、位置検出するための対象物を操作者の指等(生体)としたが、これに限らず、操作者の手によって操作されるペンや棒等としてもよい。
【0050】
また、上記各実施形態では、基板111に設けられる複数の超音波素子112は、整列されて格子状に配置されるものとしたが、これに限らず、千鳥配置、ランダム配置等としても、同様に対応可能である。