(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位15〜60重量%、およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位1〜60重量%を含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)と、
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を15〜60重量%含有し、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量が0.9重量%以下であり、ヨウ素価が120以下である高飽和ニトリルゴム(A2)と、
融点が150℃以上であるポリアミド樹脂(B)と、
架橋剤(C)とを含有する高飽和ニトリルゴム組成物を架橋してなる、液化ガスシール用のゴム架橋物であって、
前記高飽和ニトリルゴム組成物中における、前記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)、前記高飽和ニトリルゴム(A2)、および前記ポリアミド樹脂(B)の含有割合が、「カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1):高飽和ニトリルゴム(A2)」の重量比で、5:95〜95:5の範囲、「カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)および高飽和ニトリルゴム(A2)の合計:ポリアミド樹脂(B)」の重量比で、95:5〜50:50であり、
150℃における貯蔵弾性率E’が5MPa以上である液化ガスシール用ゴム架橋物。
前記高飽和ニトリルゴム組成物中における、架橋剤(C)の含有割合が、前記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)と前記高飽和ニトリルゴム(A2)との合計100重量部に対して、0.1〜30重量部である請求項1に記載の液化ガスシール用ゴム架橋物。
前記高飽和ニトリルゴム組成物が、前記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)、前記高飽和ニトリルゴム(A2)および前記ポリアミド樹脂(B)を、180℃以上の温度で混練して得られたものである請求項1〜3のいずれかに記載の液化ガスシール用ゴム架橋物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の液化ガスシール用ゴム架橋物は、後述する高飽和ニトリルゴム組成物を架橋してなり、150℃における貯蔵弾性率E’が5MPa以上であることを特徴とするものである。
【0013】
高飽和ニトリルゴム組成物
まず、本発明の液化ガスシール用ゴム架橋物を得るために用いられる高飽和ニトリルゴム組成物について説明する。
本発明で用いる高飽和ニトリルゴム組成物は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位15〜60重量%、およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位1〜60重量%を含有し、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)と、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を15〜60重量%含有し、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量が0.9重量%以下であり、ヨウ素価が120以下である高飽和ニトリルゴム(A2)と、融点が150℃以上であるポリアミド樹脂(B)と、架橋剤(C)とを後述する所定の割合で含有する。
【0014】
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)
本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位15〜60重量%、およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位1〜60重量%を含有し、ヨウ素価が120以下のゴムである。本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体、および必要に応じて加えられる共重合可能なその他の単量体を共重合することにより得られる。
【0015】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されず、たとえば、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。これらのなかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0016】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、15〜60重量%であり、好ましくは18〜55重量%、より好ましくは20〜50重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐油性および耐液化ガス性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
【0017】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。これらのなかでも、マレイン酸モノアルキルエステルが好ましく、アルキルの炭素数が2〜6のマレイン酸モノアルキルエステルがより好ましく、マレイン酸モノn−ブチルが特に好ましい。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0018】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、1〜60重量%であり、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは2〜10重量%である。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物が引張強度に劣るものとなってしまう。一方、多すぎると、耐圧縮永久歪み性および耐熱性が悪化するおそれがある。
【0019】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)は、得られるゴム架橋物がゴム弾性を有するものとするために、共役ジエン単量体単位をも含有することが好ましい。
【0020】
共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどの炭素数4〜6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエンおよびイソプレンがより好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。共役ジエン単量体は一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0021】
共役ジエン単量体単位(水素添加等により飽和化されている部分も含む)の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは25〜84重量%、より好ましくは25〜80重量%、さらに好ましくは40〜78重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量をこのような範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、耐熱性や耐化学的安定性を良好に保ちながら、十分なゴム弾性を有するものとすることができる。
【0022】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)には、本発明の効果を損なわない範囲において、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体以外のカルボキシル基含有単量体を共重合したものであってもよい。
【0023】
このようなカルボキシル基含有単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;フマル酸やマレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アリルマロン酸、テラコン酸などが挙げられる。また、α,β−不飽和多価カルボン酸の無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;などが挙げられる。
【0024】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体以外のカルボキシル基含有単量体の単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0025】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体、共役ジエン単量体および、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体以外のカルボキシル基含有単量体とともに、これらと共重合可能なその他の単量体を共重合したものであってもよい。このようなその他の単量体としては、エチレン、α−オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体(エステル化されていない無置換の(フリーの)カルボキシル基を有さないもの)、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが例示される。
【0026】
α−オレフィン単量体としては、炭素数が3〜12のものが好ましく、たとえば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0027】
芳香族ビニル単量体としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0028】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(「メタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル」の略記。以下同様。);アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシエチルなどの炭素数2〜12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸α−シアノエチル、メタクリル酸α−シアノエチル、メタクリル酸α−シアノブチルなどの炭素数2〜12のシアノアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピルなどの炭素数1〜12のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチルなどのα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル;ジメチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレートなどのジアルキルアミノ基含有α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル;などが挙げられる。
【0029】
フッ素含有ビニル単量体としては、たとえば、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0030】
共重合性老化防止剤としては、たとえば、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、 N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
【0031】
これらの共重合可能なその他の単量体は、複数種類を併用してもよい。その他の単量体の単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0032】
本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)のヨウ素価は、好ましくは120以下であり、より好ましくは60以下、さらに好ましくは40以下、特に好ましくは30以下である。ヨウ素価を120以下とすることにより、得られるゴム架橋物の耐熱性を向上させることができる。
【0033】
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)のポリマームーニー粘度(ML
1+4、100℃)は、好ましくは10〜200、より好ましくは20〜150、さらに好ましくは30〜110である。カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)のポリマームーニー粘度が低すぎると、得られるゴム架橋物の機械特性が低下するおそれがあり、逆に、高すぎると、ゴム組成物としての加工性が低下する可能性がある。
【0034】
また、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)におけるカルボキシル基の含有量、すなわち、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)100g当たりのカルボキシル基のモル数は、好ましくは0.006〜0.116ephr、より好ましくは0.012〜0.087ephr、特に好ましくは0.023〜0.058ephrである。カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)のカルボキシル基含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物が高温下における引張強度に劣るものとなってしまう。一方、多すぎると耐圧縮永久歪み性および耐熱性が低下する可能性がある。
【0035】
本発明で用いるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)の製造方法は、特に限定されないが、乳化剤を用いた乳化重合により上述の単量体を共重合して共重合体ゴムのラテックスを調製し、これを水素化することにより製造することが好ましい。乳化重合に際しては、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤等の通常用いられる重合副資材を使用することができる。
【0036】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸およびリノレン酸等の脂肪酸の塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤;などが挙げられる。乳化剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0037】
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤としては、無機または有機の過酸化物が好ましい。重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。重合開始剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。
【0038】
分子量調整剤としては、特に限定されないが、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素;α−メチルスチレンダイマー;テトラエチルチウラムダイサルファイド、ジペンタメチレンチウラムダイサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンダイサルファイド等の含硫黄化合物等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましい。分子量調整剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜0.8重量部である。
【0039】
乳化重合の媒体には、通常、水が使用される。水の量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部である。
【0040】
乳化重合に際しては、さらに、必要に応じて安定剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができる。これらを用いる場合においては、その種類、使用量とも特に限定されない。
【0041】
なお、共重合して得られた共重合体のヨウ素価が120より高い場合には、ヨウ素価を120以下とするために、共重合体の水素化(水素添加反応)を行ってもよい。この場合における、水素化の方法は特に限定されず、公知の方法を採用すればよい。
【0042】
高飽和ニトリルゴム(A2)
本発明で用いる高飽和ニトリルゴム(A2)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を15〜60重量%含有し、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量が0.9重量%以下であり、ヨウ素価が120以下のゴムである。本発明で用いる高飽和ニトリルゴム(A2)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、および必要に応じて加えられる共重合可能なその他の単量体を共重合することにより得られる。
【0043】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、上述したカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)と同様のものを用いることができる。高飽和ニトリルゴム(A2)中における、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、15〜60重量%であり、好ましくは18〜55重量%、さらに好ましくは20〜50重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の耐油性および耐液化ガス性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
【0044】
また、本発明で用いる高飽和ニトリルゴム(A2)は、得られるゴム架橋物がゴム弾性を有するものとするために、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合する単量体として、共役ジエン単量体を用いることが好ましい。共役ジエン単量体としては、上述したカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)と同様のものを用いることができる。高飽和ニトリルゴム(A2)中における、共役ジエン単量体単位(水素添加等により飽和化されている部分も含む)の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは39.1〜85重量%、より好ましくは44.5〜82重量%、さらに好ましくは50〜80重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物のゴム弾性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐熱性や耐化学的安定性が損なわれる可能性がある。
【0045】
さらに、本発明で用いる高飽和ニトリルゴム(A2)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、および共役ジエン単量体とともに、これらと共重合可能なその他の単量体を共重合したものであってもよい。このようなその他の単量体としては、上述したカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)と同様に、エチレン、α−オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体(エステル化されていない無置換の(フリーの)カルボキシル基を有さないもの)、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが例示される。
【0046】
また、本発明で用いる高飽和ニトリルゴム(A2)は、共重合可能なその他の単量体として、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体を用いてもよいが、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、0.9重量%以下であり、好ましくは0.5重量%以下であり、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量が0重量%であることが特に好ましい。すなわち、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を実質的に含有しないものであることが特に好ましい。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量が多すぎると、耐圧縮永久歪み性および耐熱性が悪化するおそれがある。なお、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体としては、上述したカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)と同様のものを挙げることができる。
【0047】
また、本発明で用いる高飽和ニトリルゴム(A2)には、本発明の効果を損なわない範囲において、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体以外のカルボキシル基含有単量体を共重合したものであってもよい。ただし、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体以外のカルボキシル基含有単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下であり、カルボキシル基含有単量体単位の含有量が0重量%であることが特に好ましい。すなわち、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体以外のカルボキシル基含有単量体単位を実質的に含有しないものであることが特に好ましい。カルボキシル基含有単量体単位の含有量が多すぎると、耐圧縮永久歪み性、耐熱性および耐寒性が悪化するおそれがある。また、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体以外のカルボキシル基含有単量体としては、上述したカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)と同様のものを挙げることができる。
【0048】
本発明で用いる高飽和ニトリルゴム(A2)のヨウ素価は、好ましくは120以下であり、より好ましくは60以下、さらに好ましくは40以下、特に好ましくは30以下である。ヨウ素価を120以下とすることにより、得られるゴム架橋物の耐熱性を向上させることができる。
【0049】
高飽和ニトリルゴム(A2)のポリマームーニー粘度(ML
1+4、100℃)は、好ましくは10〜200、より好ましくは20〜150、さらに好ましくは30〜110である。高飽和ニトリルゴム(A2)のポリマームーニー粘度が低すぎると、得られるゴム架橋物の機械特性が低下するおそれがあり、逆に、高すぎると、ゴム組成物としての加工性が低下する可能性がある。
【0050】
また、高飽和ニトリルゴム(A2)におけるカルボキシル基の含有量、すなわち、高飽和ニトリルゴム(A2)100g当たりのカルボキシル基のモル数は、好ましくは0.005ephr以下、より好ましくは0.003ephr以下であり、0ephrであることが特に好ましい。すなわち、カルボキシル基を実質的に含有しないものであることが特に好ましい。高飽和ニトリルゴム(A2)のカルボキシル基含有量が多すぎると、耐圧縮永久歪み性および耐熱性が悪化する可能性がある。
【0051】
本発明で用いる高飽和ニトリルゴム組成物中における、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)と高飽和ニトリルゴム(A2)との含有割合は、「カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1):高飽和ニトリルゴム(A2)」の重量比で、5:95〜95:5の範囲であり、好ましくは5:95〜50:50の範囲、より好ましくは5:95〜40:60の範囲である。カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)の含有割合が少なすぎると、ゴム組成物としての加工性が悪化し、かつ、得られるゴム架橋物の引張強さ、耐液化ガス性、耐圧縮永久歪み性、および耐冷凍機油性が低下してしまう。一方、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)の含有割合が多すぎると、得られるゴム架橋物の耐圧縮永久歪み性および耐熱性が低下してしまう。
なお、高飽和ニトリルゴム(A2)を全く使用しない場合には、得られるゴム架橋物の引張強さ、耐圧縮永久歪み性が、かなり悪化する。
【0052】
本発明で用いる高飽和ニトリルゴム(A2)の製造方法は、特に限定されないが、上述したカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)と同様とすることができる。
【0053】
ポリアミド樹脂(B)
本発明で用いる高飽和ニトリルゴム組成物は、上述したカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)、および高飽和ニトリルゴム(A2)に加えて、融点が150℃以上であるポリアミド樹脂(B)を含有する。
【0054】
本発明においては、高飽和ニトリルゴムとして、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量が所定範囲にあるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)と、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量が所定量以下である高飽和ニトリルゴム(A2)との2種類のゴムを併用し、これに、融点が150℃以上であるポリアミド樹脂(B)を配合するものである。そして、これに、後述する架橋剤(C)を添加し、架橋することで得られるゴム架橋物の150℃における貯蔵弾性率E’を5MPa以上に制御することにより、耐液化ガス性および耐冷凍機油性の向上が可能となる。すなわち、機械的強度を良好なものとしながら、耐液化ガス性、耐圧縮永久歪み性、および耐冷凍機油性の向上を可能とするものである。
【0055】
本発明で用いるポリアミド樹脂(B)は、融点が150℃以上であり、かつ、酸アミド結合(−CONH−)を有する重合体であれば限定されないが、たとえば、ジアミンと二塩基酸との重縮合により得られる重合体、ジホルミルなどのジアミン誘導体と二塩基酸との重縮合により得られる重合体、ジメチルエステルなどの二塩基酸誘導体とジアミンとの重縮合により得られる重合体、ジニトリルまたはジアミドとホルムアルデヒドとの反応により得られる重合体、ジイソシアナートと二塩基酸との重付加により得られる重合体、アミノ酸またはその誘導体の自己縮合により得られる重合体、ラクタムの開環重合により得られる重合体などが挙げられる。また、これらのポリアミド樹脂は、ポリエーテルブロックを含有していてもよい。
【0056】
ポリアミド樹脂(B)の具体例としては、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン1010、ナイロン1012、ナイロン11、ナイロン12、のような脂肪族ポリアミド樹脂;ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、キシレン含有ポリアミドのような芳香族ポリアミド樹脂;などが挙げられる。これらのなかでも、本発明の効果がより一層顕著になることから、脂肪族ポリアミド樹脂が好ましく、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン1010およびナイロン1012がより好ましく、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン1010およびナイロン1012がさらに好ましく、ナイロン66、およびナイロン1012が特に好ましい。
【0057】
また、本発明で用いるポリアミド樹脂(B)は、融点が150℃以上であり、好ましくは150〜350℃、より好ましくは170〜330℃であり、さらに好ましくは200〜300℃である。融点が低すぎると、得られるゴム架橋物の耐熱性、および耐液化ガス性が低下するおそれがある。
【0058】
本発明で用いる高飽和ニトリルゴム組成物中における、ポリアミド樹脂(B)の含有割合は、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)と高飽和ニトリルゴム(A2)との合計(以下、「ニトリルゴムの合計量」とする。)に対して、「ニトリルゴムの合計量:ポリアミド樹脂(B)の含有量」の重量比で、好ましくは95:5〜50:50の範囲、より好ましくは90:10〜60:40の範囲である。ニトリルゴムの合計量が多すぎると、耐圧縮永久歪み性、耐液化ガス性が低下するおそれがある。一方、ポリアミド樹脂(B)の含有量が多すぎると、得られるゴム架橋物の硬さが高くなりすぎるおそれがある。
【0059】
架橋剤(C)
本発明で用いる高飽和ニトリルゴム組成物は、上述したカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)、高飽和ニトリルゴム(A2)、およびポリアミド樹脂(B)に加えて、架橋剤(C)を含有する。架橋剤(C)としては、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)、および高飽和ニトリルゴム(A2)を架橋できるものであればよく、硫黄架橋剤、有機過酸化物架橋剤またはポリアミン架橋剤などが挙げられ、これらのなかでも、得られるゴム架橋物が、常態物性および耐熱性に優れたものとなるという観点から、有機過酸化物架橋剤が好ましい。
【0060】
有機過酸化物架橋剤としては、従来公知のものを用いることができ、ジクミルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、パラメンタンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ビス−(t−ブチル−ペルオキシ)−n−ブチルバレレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキシン−3、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、p−クロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシベンゾエート等が挙げられる。これらのなかでも、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが好ましい。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0061】
本発明で用いる高飽和ニトリルゴム組成物中における、架橋剤(C)の配合量は、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)と高飽和ニトリルゴム(A2)との合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部であり、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは2〜10重量部である。架橋剤(C)の配合量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の機械特性が低下するおそれがある。一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の耐疲労性が悪化する可能性がある。
【0062】
また、本発明で用いる高飽和ニトリルゴム組成物には、さらに共架橋剤を含有させてもよい。共架橋剤としては、ラジカル反応性の不飽和基を分子中に複数個有する低分子または高分子の化合物が好ましく、たとえば、ジビニルベンゼンやジビニルナフタレンなどの多官能ビニル化合物;トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレートなどのイソシアヌレート類;トリアリルシアヌレートなどのシアヌレート類;N,N'−m−フェニレンジマレイミドなどのマレイミド類;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルセバケート、トリアリルホスフェートなどの多価酸のアリルエステル;ジエチレングリコールビスアリルカーボネート;エチレングリコールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンのトリアリルエーテル、ペンタエリトリットの部分的アリルエーテルなどのアリルエーテル類;アリル化ノボラック、アリル化レゾール樹脂等のアリル変性樹脂;トリメチロールプロパントリメタクリレートやトリメチロールプロパントリアクリレートなどの、3〜5官能のメタクリレート化合物やアクリレート化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、本発明の効果がより一層顕著になる点で、イソシアヌレート類が好ましく、トリアリルイソシアヌレートが特に好ましい。
本発明で用いる高飽和ニトリルゴム組成物中に、共架橋剤を含有させる場合の配合量は、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)、高飽和ニトリルゴム(A2)、およびポリアミド樹脂(B)の合計100重量部に対して、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは1.5〜10重量部である。
【0063】
その他の配合剤
また、本発明で用いる高飽和ニトリルゴム組成物は、上記した各成分に加えて、充填剤を含有していることが好ましい。充填剤としては、一般にゴム加工用配合剤として用いられる充填剤であればよく、補強性の充填剤も非補強性の充填剤もいずれも使用することができ、特に限定されないが、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、酸化亜鉛等の金属酸化物、グラファイト、珪藻土、瀝青質微粉末、マイカ等が挙げられるが、カーボンブラック、シリカ、または炭酸カルシウムが好ましく、カーボンブラックが特に好ましい。
カーボンブラックとしては、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなどが挙げられる。
【0064】
また、充填剤としては、平均粒子径が0.01〜50μmのものが好ましく、0.02〜10μmのものがより好ましく、0.03〜5μmのものが特に好ましい。充填剤として、平均粒子径が上記範囲にあるものを用いることにより、得られるゴム架橋物を、硬さを低く保ちながら、耐液化ガス性、耐圧縮永久歪み性および耐冷凍機油性により優れたものとすることができる。
【0065】
充填剤としてカーボンブラックを用いる場合は、平均粒子径が0.01〜5μmのものが好ましく、0.02〜2.5μmのものがより好ましく、0.03〜1μmのものが特に好ましい。また粒子の凝集体であるアグリゲートの大きさおよび表面性状に限定はない。
なお、充填剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。充填剤を配合することにより、得られるゴム架橋物の耐液化ガス性および耐冷凍機油性を向上させることができる。
【0066】
本発明で用いる高飽和ニトリルゴム組成物中における、充填剤の配合量は、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)、高飽和ニトリルゴム(A2)、およびポリアミド樹脂(B)の合計100重量部に対して、好ましくは2〜200重量部であり、より好ましくは5〜180重量部、さらに好ましくは10〜150重量部である。充填剤の配合量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、硬さを低く保ちながら、耐液化ガス性、耐圧縮永久歪み性および耐冷凍機油性により優れたものとすることができる。
【0067】
また、本発明で用いる高飽和ニトリルゴム組成物は、上記した各成分に加えて、ゴム加工分野において通常使用される配合剤、例えば、架橋促進剤、架橋助剤、架橋遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、シランカップリング剤、スコーチ防止剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着付与剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、受酸剤、帯電防止剤、顔料、不飽和カルボン酸金属塩等を配合することができる。これらの配合剤の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、目的に応じた量を適宜配合することができる。
【0068】
さらに、本発明で用いる高飽和ニトリルゴム組成物には、本発明の効果が阻害されない範囲で上記カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)および高飽和ニトリルゴム(A2)以外のゴムを配合してもよい。
このようなゴムとしては、アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、エピクロロヒドリンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴムなどが挙げられる。
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)および高飽和ニトリルゴム(A2)以外のゴムを配合する場合における、高飽和ニトリルゴム組成物中の配合量は、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)と高飽和ニトリルゴム(A2)との合計100重量部に対して、好ましくは30重量部以下であり、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。
【0069】
本発明で用いる高飽和ニトリルゴム組成物は、たとえば、上述したカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)、高飽和ニトリルゴム(A2)、およびポリアミド樹脂(B)を、好ましくは180℃以上の温度で一次混練し、得られた混練物を、好ましくは5〜150℃に冷却した後、架橋剤(C)および必要に応じて用いられる各種配合剤などを加えて二次混練することにより、製造される。
【0070】
一次混練における混練する方法としては、特に限定されないが、一軸押出機、二軸押出機などの押出機;ニーダー、バンバリーミキサ、ブラベンダーミキサ、インターナルミキサなどの密閉型混練機;ロール混練機;などの混練機で混合する方法などが挙げられる。これらのなかでも、特に、生産効率および分散効率が高いという理由より、二軸押出機で混練する方法が好ましい。
【0071】
また、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)、高飽和ニトリルゴム(A2)およびポリアミド樹脂(B)を混練する際の混練温度は、好ましくは180℃以上であり、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは220℃以上である。また、混練温度の上限は、好ましくは400℃以下、特に好ましくは350℃以下である。混練温度を上記範囲とすることにより、溶融状態のポリアミド樹脂(B)と、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)、および高飽和ニトリルゴム(A2)とを、より良好な形態に混合することができる。そして、これにより、本発明の効果がより一層顕著なものとなる。なお、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)、高飽和ニトリルゴム(A2)およびポリアミド樹脂(B)を混練する際には、架橋剤(C)および熱に不安定な成分を除く各種配合剤や、その他のゴムを同時に混合してもよい。
【0072】
液化ガスシール用ゴム架橋物
本発明の液化ガスシール用ゴム架橋物(以下、適宜、「ゴム架橋物」と略記する。)は、上述した高飽和ニトリルゴム組成物を架橋して得られる液化ガスシール用のゴム架橋物である。
【0073】
本発明のゴム架橋物は、150℃における貯蔵弾性率E’が5MPa以上であり、好ましくは6MPa以上、より好ましくは7MPa以上である。なお、150℃における貯蔵弾性率E’の上限は、特に限定されないが、通常、100MPa以下である。本発明においては、上述した高飽和ニトリルゴム組成物を用いるとともに、150℃における貯蔵弾性率E’を5MPa以上とすることにより、耐液化ガス性および耐冷凍機油性の向上が可能となる。なお、150℃における貯蔵弾性率E’は、ゴム架橋物の内部に蓄えられた応力を保持する弾性成分を示す指標であり、たとえば、動的粘弾性測定装置を用いて、高飽和ニトリルゴム組成物をシート状に成形したゴム架橋物を150℃の雰囲気下で引張モードにて測定することができる。貯蔵弾性率E’が5MPa未満であると、耐液化ガス性および耐冷凍機油性に劣るものとなってしまう。
【0074】
本発明のゴム架橋物は、上述した高飽和ニトリルゴム組成物を用い、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0075】
なお、本発明において、ゴム架橋物の150℃における貯蔵弾性率E’を5MPa以上とする方法としては、特に限定されないが、高飽和ニトリルゴム組成物中における、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)と高飽和ニトリルゴム(A2)との含有割合、ポリアミド樹脂(B)の含有割合、ポリアミド樹脂(B)の種類、および融点、高飽和ニトリルゴム組成物に含有させる可塑剤の種類や配合量、高飽和ニトリルゴム組成物に含有させる充填剤の種類や配合量、充填剤の平均粒子径、架橋剤(C)の種類や量、共架橋剤の種類や量さらには、上述した高飽和ニトリルゴム組成物を調製する際における、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)、高飽和ニトリルゴム(A2)およびポリアミド樹脂(B)の混練温度、ならびに、上述した高飽和ニトリルゴム組成物を架橋する際の架橋条件(架橋時間、架橋温度等)などを調整することにより、制御することができる。
【0076】
たとえば、ゴム架橋物の150℃における貯蔵弾性率E’を5MPa以上とするという観点からは、高飽和ニトリルゴム組成物中における可塑剤の配合量は、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)、高飽和ニトリルゴム(A2)およびポリアミド樹脂(B)の合計100重量部に対して、25重量部以下とすることが好ましく、20重量部以下とすることがより好ましく、可塑剤を実質的に含有しないものであることがさらに好ましい。
【0077】
また、高飽和ニトリルゴム組成物に含有させる充填剤として、平均粒子径が0.01〜5μmのカーボンブラックを用いる場合には、高飽和ニトリルゴム組成物中における充填剤の配合量は、用いる可塑剤の種類や配合量、架橋条件などにもよるが、ゴム架橋物の150℃における貯蔵弾性率E’を5MPa以上とするという観点より、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)、高飽和ニトリルゴム(A2)およびポリアミド樹脂(B)の合計100重量部に対して、好ましくは2〜200重量部、より好ましくは5〜180重量部、さらに好ましくは10〜150重量部の範囲で適宜調整することが好ましい。
【0078】
さらに、上述した、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)、高飽和ニトリルゴム(A2)およびポリアミド樹脂(B)の混練温度は、上述したように、180℃以上とすることが好ましく、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは220℃以上である。また、混練温度の上限は、好ましくは400℃以下、特に好ましくは350℃以下である。
【0079】
また、上述した高飽和ニトリルゴム組成物を架橋する際の架橋条件としては、用いる充填剤(c)の種類や、平均粒子径および配合量、用いる可塑剤の種類や配合量などにもよるが、ゴム架橋物の150℃における貯蔵弾性率E’を5MPa以上とするという観点より、架橋温度は、好ましくは110〜200℃、より好ましくは120〜190℃であり、架橋時間は、好ましくは1分〜24時間、より好ましくは1.5分〜1時間である。また、ゴム架橋物の形状、大きさなどにより、さらに二次架橋が必要な場合には、二次架橋の架橋温度は、好ましくは110〜200℃、より好ましくは120〜190℃であり、二次架橋の架橋時間は、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは30分〜8時間である。
【0080】
本発明においては、これらの条件を適宜組み合わせることで、ゴム架橋物の150℃における貯蔵弾性率E’を5MPa以上、好ましくは6MPa以上、より好ましくは7MPa以上とすることができる。
【0081】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、機械的強度、耐液化ガス性、耐圧縮永久歪み性、および耐冷凍機油性に優れるものであり、液化ガスのシール材用途、具体的には、液化ガスと接触するシール材として使用される。液化ガスとしては、常用の温度(たとえば、25℃)における圧力が0.2MPa以上であり、沸点が0℃以下のものが好適に挙げられる。本発明のゴム架橋物は、このような液化ガス用のシール材の中でも、エアコンディショナの冷却装置や空調装置などのコンプレッサなどに用いられる、フルオロ炭化水素または二酸化炭素に代表される液化ガスと接触するシール材として好適である。
【0082】
なお、フルオロ炭化水素としては、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFO−1234yf )やこれらの混合物などが挙げられる。コンプレッサなどに用いられる液化ガスとしては、フルオロ炭化水素および二酸化炭素以外にも、イソブタンやプロパン、ジメチルエーテルなどの炭化水素やアンモニアなどが挙げられる。
【0083】
特に、本発明のゴム架橋物は、耐液化ガス性および耐冷凍機油性に優れていることに加え、機械的強度および耐圧縮永久歪み性に優れることから、冷凍機用シール材用途など高い圧力を保持し、また、加圧、降圧を繰り返す用途に用いた場合にも、優れたシール性を発揮することができるものである。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。以下において、特記しない限り、「部」は重量基準である。物性および特性の試験または評価方法は以下のとおりである。
【0085】
ヨウ素価
高飽和ニトリルゴムのヨウ素価は、JIS K6235に準じて測定した。
【0086】
カルボキシル基含有量
2mm角の高飽和ニトリルゴム0.2gに、2−ブタノン100mLを加えて16時間攪拌した後、エタノール20mLおよび水10mLを加え、攪拌しながら水酸化カリウムの0.02N含水エタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬とする滴定により、高飽和ニトリルゴム100gに対するカルボキシル基のモル数として求めた(単位はephr)。
【0087】
高飽和ニトリルゴムを構成する各単量体単位の含有割合
マレイン酸モノn−ブチル単位の含有割合は、2mm角の高飽和ニトリルゴム0.2gに、2−ブタノン100mLを加えて16時間攪拌した後、エタノール20mLおよび水10mLを加え、攪拌しながら水酸化カリウムの0.02N含水エタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬とする滴定により、高飽和ニトリルゴム100gに対するカルボキシル基のモル数を求め、求めたモル数をマレイン酸モノn−ブチル単位の量に換算することにより算出した。
1,3−ブタジエン単位および飽和化ブタジエン単位の含有割合は、高飽和ニトリルゴムを用いて、水素添加反応前と水素添加反応後のヨウ素価(JIS K6235による)を測定することにより算出した。
アクリロニトリル単位の含有割合は、JIS K6384に従い、ケルダール法により、高飽和ニトリルゴム中の窒素含量を測定することにより算出した。
【0088】
ムーニー粘度(ポリマー・ムーニー、コンパウンド・ムーニー)
高飽和ニトリルゴムのムーニー粘度(ポリマー・ムーニー)および高飽和ニトリルゴム組成物のムーニー粘度(コンパウンド・ムーニー)は、JIS K6300−1に従って測定した(単位は〔ML
1+4、100℃〕)。
【0089】
貯蔵弾性率E’
シート状のゴム架橋物を幅10mm、長さ50mmに列理方向に打ち抜いて動的粘弾性試験用のゴム架橋物を得た。そして、得られた動的粘弾性試験用のゴム架橋物について、動的粘弾性測定装置(商品名「Explexor 500N」、GABO QUALIMETER Testanlagen GmbH社製)を用いて、測定周波数:10Hz、静的歪:1.0%、動的歪:0.2%、温度:150℃、チャック間距離:30mm、測定モード:引張モード、の条件で貯蔵弾性率E’を測定した。
【0090】
常態物性(引張強さ、伸び、50%引張応力、100%引張応力、硬さ)
シート状のゴム架橋物を列理方向に3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。そして、得られた試験片を用いて、JIS K6251に従い、引張強さ、伸び、50%引張応力、100%引張応力を測定した。また、JIS K6253に準じ、デュロメータ硬さ試験機(タイプA)を用いて、加圧版を試験片に接触させた直後の硬さを測定した。
【0091】
耐液化ガス性
シート状のゴム架橋物を、縦2cm、横3cmの形状に打ち抜くことで、試験片を作製した。耐圧容器中にこの試験片と1,1,1,2−テトラフルオロエタンを入れ、この状態(試験片が1,1,1,2−テトラフルオロエタンの液に浸漬した状態)で23℃にて24時間静置した。24時間静置した後、耐圧容器から1,1,1,2−テトラフルオロエタンを大気中に放出し、すばやく試験片を取出し、予め150℃ に調整しておいた加温装置に入れ、試験片を1時間加熱した。その間、試験片を膨潤させていた1,1,1,2−テトラフルオロエタンが急速に気化することにより加硫ゴム表面に発生する発泡状態を観察することで、耐液化ガス性(耐フルオロ炭化水素性)を評価した。本実施例においては、試験片の表と裏を観察し、発泡が多い面の発泡数をカウントし、以下の基準にて評価した。発泡数が少ないほど、耐液化ガス性(耐フルオロ炭化水素性)に優れるものと判断することができる。
1:発泡数が0個
2:発泡数が1〜15個
3:発泡数が16個以上
【0092】
圧縮永久歪み試験(O−リング圧縮永久歪み)
O−リング状のゴム架橋物を用いて、O−リング状のゴム架橋物を挟んだ二つの平面間の距離をリング厚み方向に25%圧縮した状態で150℃にて70時間保持する条件で、JIS K6262に従って、圧縮永久歪み(O−リング圧縮永久歪み)を測定した。この値が小さいほど、耐圧縮永久歪み性に優れる。
【0093】
耐冷凍機油性
シート状のゴム架橋物を用いて、JIS K6258に従い、該ゴム架橋物を温度150℃、70時間の条件で冷凍機油(PAG油、商品名「SUNICE P−56」日本サン石油社製)に浸漬した。そして浸漬前後のゴム架橋物の体積を測定し、浸漬後の体積変化率△V(単位:%)を「体積変化率△V=([浸漬後の体積−浸漬前の体積]/浸漬前の体積)×100」にしたがって算出することで、耐冷凍機油の評価を行った。体積変化率△Vの値の絶対値が0に近いほど、冷凍機油による寸法変化が小さく、耐冷凍機油性に優れると判断できる。
【0094】
合成例1(カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1−1)の合成)
反応器に、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル37部、マレイン酸モノn−ブチル6部、およびt−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部を、この順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン57部を仕込んだ。反応器を5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、攪拌しながら16時間重合反応を継続した。次いで、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(固形分濃度約30重量%)を得た。
【0095】
次いで、上記にて得られたラテックスに、ラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対して、パラジウム量が1,000重量ppmになるように、オートクレーブ中に、ラテックスおよびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1−1)のラテックスを得た。
【0096】
そして、得られたラテックスに2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、濾過して固形物(クラム)を取り出し、これを60℃で12時間真空乾燥することにより、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1−1)を得た。得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1−1)の組成は、アクリロニトリル単位35.6重量%、ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)59.0重量%、マレイン酸モノn―ブチル単位5.4重量%であり、ヨウ素価は7、カルボキシル基含有量は3.1×10
−2ephr、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は55であった。
【0097】
合成例2(高飽和ニトリルゴム(A2−1)の合成)
反応器内でイオン交換水200部に、炭酸ナトリウム0.2部を溶解し、それに脂肪酸カリウム石鹸(脂肪酸のカリウム塩)2.25部を添加して石鹸水溶液を調製した。そして、この石鹸水溶液に、アクリロニトリル42部、およびt−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.47部をこの順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン58部を仕込んだ。次いで、反応器内を5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部、還元剤、およびキレート剤適量を仕込み、温度を5℃に保ちながら16時間重合反応を行なった。次いで、濃度10%のハイドロキノン(重合停止剤)水溶液0.1部を加えて重合反応を停止し、水温60℃のロータリーエバポレ−タを用いて残留単量体を除去して、ニトリルゴムのラテックス(固形分濃度約25重量%)を得た。
【0098】
次いで、上記にて得られたラテックスを、そのニトリルゴム分に対して3重量%となる量の硫酸アルミニウムの水溶液に加えて攪拌してラテックスを凝固し、水で洗浄しつつ濾別した後、60℃で12時間真空乾燥してニトリルゴムを得た。そして、得られたニトリルゴムを、濃度12%となるようにアセトンに溶解し、これをオートクレーブに入れ、パラジウム・シリカ触媒をニトリルゴムに対して500重量ppm加え、水素圧3.0MPaで水素添加反応を行なった。水素添加反応終了後、大量の水中に注いで凝固させ、濾別および乾燥を行なって高飽和ニトリルゴム(A2−1)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(A2−1)の組成は、アクリロニトリル単位40.5重量%、ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)59.5重量%であり、ヨウ素価は7、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は87であった。また、高飽和ニトリルゴム(A2−1)について、上記方法にしたがって、カルボキシル基含有量を測定したところ、検出限界以下であり、カルボキシル基を実質的に含有しないものであった。
【0099】
合成例3(高飽和ニトリルゴム(A2−2)の合成)
反応器内でイオン交換水200部に、炭酸ナトリウム0.2部を溶解し、それに脂肪酸カリウム石鹸(脂肪酸のカリウム塩)2.25部を添加して石鹸水溶液を調製した。そして、この石鹸水溶液に、アクリロニトリル38部、およびt−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.50部をこの順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン62部を仕込んだ。次いで、反応器内を5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部、還元剤、およびキレート剤適量を仕込み、温度を5℃に保ちながら16時間重合反応を行なった。次いで、濃度10%のハイドロキノン(重合停止剤)水溶液0.1部を加えて重合反応を停止し、水温60℃のロータリーエバポレ−タを用いて残留単量体を除去して、ニトリルゴムのラテックス(固形分濃度約25重量%)を得た。
【0100】
次いで、上記にて得られたラテックスを、そのニトリルゴム分に対して3重量%となる量の硫酸アルミニウムの水溶液に加えて攪拌してラテックスを凝固し、水で洗浄しつつ濾別した後、60℃で12時間真空乾燥してニトリルゴムを得た。そして、得られたニトリルゴムを、濃度12%となるようにアセトンに溶解し、これをオートクレーブに入れ、パラジウム・シリカ触媒をニトリルゴムに対して400重量ppm加え、水素圧3.0MPaで水素添加反応を行なった。水素添加反応終了後、大量の水中に注いで凝固させ、濾別および乾燥を行なって高飽和ニトリルゴム(A2−2)を得た。得られた高飽和ニトリルゴム(A2−2)の組成は、アクリロニトリル単位36.1重量%、ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)53.9重量%であり、ヨウ素価は10、ポリマー・ムーニー粘度〔ML
1+4、100℃〕は80であった。また、高飽和ニトリルゴム(A2−2)について、上記方法にしたがって、カルボキシル基含有量を測定したところ、検出限界以下であり、カルボキシル基を実質的に含有しないものであった。
【0101】
実施例1
合成例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1−1)20部、合成例2で得られた高飽和ニトリルゴム(A2−1)50部、およびナイロン66(商品名「アミランCM3006」、東レ社製、融点265℃)30部を、二軸押出機を用いて280℃にて混練することで、混練物を得た。
【0102】
そして、バンバリーミキサを用いて、上記にて得られた混練物100部に、N990カーボン(商品名「Thermax MT」、Cancarb社製、カーボンブラック、平均粒子径0.28μm)20部、4,4’−ジ−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「ノクラックCD」、大内振興化学社製、老化防止剤)1.5部を添加して混練し、次いで、混合物をロールに移して、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン40%品(商品名「Vul Cup 40KE」、アルケマ社製、有機過酸化物架橋剤)8部、トリアリルイソシアヌレート(商品名「TAIC」、日本化成社製、共架橋剤)4部を添加して混練することで、高飽和ニトリルゴム組成物を得た。
【0103】
次いで、得られた高飽和ニトリルゴム組成物のうち一部を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型を用いて、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレス架橋してシート状の一次架橋物を得て、次いで、得られた一次架橋物をギヤー式オーブンに移して150℃で4時間二次架橋させることで、シート状のゴム架橋物を得た。また、これとは別に、得られた高飽和ニトリルゴム組成物のうち一部を、外径30mm、リング径3mmの金型を用いて、プレス圧5MPaで加圧しながら170℃で20分間プレス架橋してO−リング状の一次架橋物を得て、次いで、得られた一次架橋物をギヤー式オーブンに移して150℃で4時間二次架橋させることで、O−リング状のゴム架橋物を得た。
【0104】
そして、得られた高飽和ニトリルゴム組成物を用いて、上述した方法に従って、コンパウンド・ムーニー粘度を、また、シート状のゴム架橋物、およびO−リング状のゴム架橋物を用いて、上述した方法に従って、貯蔵弾性率、常態物性、耐液化ガス性(耐フルオロ炭化水素性)、圧縮永久歪み、および耐冷凍機油性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
実施例2
合成例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1−1)の配合量を20部から15部に、合成例2で得られた高飽和ニトリルゴム(A2−1)の配合量を50部から55部に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム組成物、シート状のゴム架橋物、およびO−リング状のゴム架橋物を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
実施例3
合成例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1−1)の配合量を20部から16部に、N990カーボンの配合量を20部から40部に、それぞれ変更するとともに、合成例2で得られた高飽和ニトリルゴム(A2−1)50部に代えて、合成例3で得られた高飽和ニトリルゴム(A2−2)64部を使用し、かつ、ナイロン66 30部に代えて、ナイロン1012(商品名「Hiprolon11ESNNHL」、アルケマ社製、融点189℃)20部を使用した以外は実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム組成物、シート状のゴム架橋物、およびO−リング状のゴム架橋物を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例3においては、二軸押出機による混練温度を240℃とした。
【0107】
比較例1
合成例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1−1)を配合せず、かつ、合成例2で得られた高飽和ニトリルゴム(A2−1)の配合量を50部から、70部に変更した以外は実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム組成物、シート状のゴム架橋物、およびO−リング状のゴム架橋物を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
比較例2
合成例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1−1)の配合量を20部から2部に、合成例2で得られた高飽和ニトリルゴム(A2−1)の配合量を50部から68部に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム組成物、シート状のゴム架橋物、およびO−リング状のゴム架橋物を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
比較例3
合成例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1−1)の配合量を20部から15部に、合成例2で得られた高飽和ニトリルゴム(A2−1)の配合量を50部から82部に、ナイロン66の配合量を30部から3部に、N990カーボンの配合量を20部から100部に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム組成物、シート状のゴム架橋物、およびO−リング状のゴム架橋物を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
比較例4
合成例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1−1)の配合量を20部から30部に、ナイロン66の配合量を30部から15部に、N990カーボンの配合量を20部から40部に、それぞれ変更し、かつ、合成例2で得られた高飽和ニトリルゴム(A2−1)50部の代わりに、合成例3で得られた高飽和ニトリルゴム(A2−2)45部を使用するとともに、バンバリーミキサでの混練時に、アジピン酸エーテルエステエル系可塑剤(商品名「アデカサイザーRS−107」、ADEKA社製、可塑剤)30部をさらに添加し、かつ、トリアリルイソシアヌレートを使用しなかった以外は実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム組成物、シート状のゴム架橋物、およびO−リング状のゴム架橋物を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。なお、比較例4においては、二軸押出機による混練温度を240℃とした。
【0111】
比較例5
合成例1で得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1−1)およびナイロン66を使用せず、かつ、合成例2で得られた高飽和ニトリルゴム(A2−1)の配合量を50部から100部に、N990カーボンの配合量を20部から100部に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、高飽和ニトリルゴム組成物、シート状のゴム架橋物、およびO−リング状のゴム架橋物を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。なお、比較例5においては、二軸押出機による混練を行わずに、高飽和ニトリルゴム(A2−1)をバンバリーミキサに直接供給した。
【0112】
【表1】
【0113】
表1より、本発明所定の高飽和ニトリルゴム組成物を架橋することにより得られ、かつ、150℃における貯蔵弾性率E’が5MPa以上であるゴム架橋物は、引張強さ、耐液化ガス性(耐フルオロ炭化水素性)、耐圧縮永久歪み性、および耐冷凍機油性に優れ、また硬さが高すぎることもなく優れるものであると同時に、伸び、および、50%引張応力、および100%引張応力も実用上十分なものであった(実施例1〜3)。
【0114】
一方、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)を使用しなかった場合や、カルボキシル基本含有飽和ニトリルゴム(A1)の配合量が少なすぎる場合は、コンパウンド・ムーニー粘度が高く、引張強さ、耐液化ガス性、耐圧縮永久歪み性、および耐冷凍機油性に劣る結果となった(比較例1,2)。
ポリアミド樹脂(B)の配合量が少なすぎる場合は、引張強さ、耐液化ガス性、耐圧縮永久歪み性、および耐冷凍機油性に劣る結果となった(比較例3)。
また、本発明所定の高飽和ニトリルゴム組成物を用いた場合でも、ゴム架橋物とした場合の150℃における貯蔵弾性率E’が5MPa未満である場合には、得られるゴム架橋物は、引張強さ、耐液化ガス性、耐圧縮永久歪み性、耐冷凍機油性に劣る結果となった(比較例4)。
さらに、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴム(A1)およびポリアミド樹脂(B)を使用しなかった場合には、引張強さ、耐液化ガス性、耐圧縮永久歪み性、および耐冷凍機油性に劣る結果となった(比較例5)。