(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体発光装置の発光面、前記第1反射部の反射面、及び前記第2反射部の反射面は、前記半導体発光装置の光軸に対して略回転対称であり、以下に定義する光漏出角度θtが、−7.0°以上10.0°以下である請求項1に記載のスポット照明装置。
光漏出角度θt=θ1(前記半導体発光装置の光軸を含む断面図において、前記半導体発光装置の発光面の外周部の1点及び第1反射部の外周部の1点を通る第1直線と、前記半導体発光装置の光軸とがなす角度)−θ2(前記半導体発光装置の光軸を含む断面図において、前記半導体発光装置の発光面の外周部の1点及び第2反射部の外周部の1点を通る第2直線と、半導体発光装置の光軸とがなす角度)
先ず前記第2反射部、次に前記第1反射部の順序で反射されて前記開口部から放射される光は、前記開口部から放射される全放射光の50%以上である請求項1又は2に記載のスポット照明装置。
前記第1反射部及び前記第2反射部において反射されることなく、前記開口部から直接的に放射される光は、前記開口部から放射される全放射光の20%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスポット照明装置。
前記半導体発光装置から放出される光のうち、前記開口部から放射されずに、前記スポット照明装置内に閉じ込められる光の割合が10%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスポット照明装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年においては、LEDを用いたスポット照明装置の普及に伴い、当該スポット照明装置に対して、グレア光を抑制しつつも、よりスポット的に被照射物を照らすことができ、且つ被照射物をより明るく照らすことが要求されている。しかしながら、特許文献1に開示されている照明装置においては、主リフレクタ、副リフレクタ及びLED光源との構成によって光の狭角化が不十分となっており、特許文献2に開示されている照明装置においては、LED光源の光路上に遮蔽板を設けているため、光のロスが生じて照明装置の発光効率の向上を図ることができない。
【0007】
また、LEDを用いたスポット照明装置においても、軽量化が要求されており、ヒートシンクの小型化又は除去によって軽量化に対応することができるとも考えられる。しかしながら、特許文献1及び2に開示されている照明装置では、LED光源で生じた熱を基板を介して放熱するため、ヒートシンクの小型化又は除去を行ってしまうと放熱が不十分となり、スポット照明装置自体の寿命が低下してしまう。すなわち、単なるヒートシンクの小型化等では、スポット照明装置の軽量化及び高寿命化を十分に図ることができない。
【0008】
更に、天井に設置された従来のハロゲン電球型のスポット照明装置に代えて、LEDを用いたスポット照明装置を使用する要求が高まっているが、単に既存のLEDを用いたスポット照明装置に代替することのみでは、市場の要求に的確に対応することができない。このような代替を行う場合には、スポット照明装置の交換態様、被照射物に対する光学特性、スポット照明装置自体の高寿命化が重要となる。すなわち、天井等の高い位置に簡単に多数のスポット照明装置を固定でき、狙った被照射物を大光束で照射し、最適な光学演出を行える高寿命のスポット照明装置が要求されることになる。しかしながら、このような多数の要求を同時に満足させるということが課題として取り上げられておらず、このような要求に対応するスポット照明装置は存在していない。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、照明装置の発光効率の向上を図りつつもスポット的な照明光を放射し、且つ、軽量化を図りつつも十分な放熱性を備えるスポット照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するべく、本発明の第1の態様は、底部、側面部、及び前記底部に対向する開口部を有する椀状の第1反射部と、前記第1反射部の前記底部上に設けられた半導体発光装置と、前記半導体発光装置の光軸上に設けられた第2反射部と、前記第2反射部を前記半導体発光装置から離間して固定する固定部と、を有し、
前記固定部は、前記半導体発光装置の周囲に位置する環状部及び前記環状部から前記第2反射部の外側面に向かって延在する支柱により構成され、前記半導体発光装置の設置領域の周辺における前記第1反射部の底部と、前記第2反射部とを接続し、前記第2反射部は、前記半導体発光装置から放出される光の一部を直接受けて、前記第1反射部に向けて反射し、前記第1反射部は、前記半導体発光装置から放出される光の一部及び前記第2反射部において反射した光の全部又は一部を受けて、前記開口部に向けて反射し、前記第1反射部において反射されて前記開口部から放射される光は、前記開口部から放射される全放射光の80%以上であるスポット照明装置である。
【0011】
ここで、開口部から放射される全放射光の80%以上とするために、例えば、第1反射部及び第2反射部の大きさ、配置関係、並びにこれらが備える反射面と半導体発光装置の光軸とのなす角度を調整してもよい。
【0012】
本発明の第1態様に係るスポット照明装置においては、第1反射部において反射されて開口部から放射される光の割合が大きくなるため、よりスポット的である狭角の光を放射しつつ、かつ、第1反射部内に閉じ込められる光又は第1反射部の側方から漏れる光を減らして発光効率を向上することができる。
【0013】
また、本発明に係るスポット照明装置においては、第1反射部の底部上に直接的に半導体発光装置が搭載されているため、半導体発光装置の駆動に伴って発生した熱は、第1反射部に沿って伝導し、他の構成部材に影響を与えることなく、第1反射部から放熱されることになる。これにより、スポット照明装置の放熱性が向上され、半導体発光装置及びその他の構成部材の故障を防止し、スポット照明装置自体の寿命を長くすることができる。
【0014】
更に、上記の構成により、ヒートシンクを別途設けなくとも十分な放熱性を実現できるため、比較的に重量のあるヒートシンクがなくなり、スポット照明自体の軽量化が図られ、スポット照明装置を天井等の高い位置においても、容易且つ強固に設置することができる。
このような構成により、スポット照明装置の製造工程における製品ごとの位置ずれ、すなわち半導体発光装置と第2反射部との距離が製品ごとに異なることを防止することができる。また、このような構成により、物理的又は熱的衝撃に起因する、半導体発光装置と第2反射部との距離変動を防止することができる。更に、このような構成により、放射される光の配光性が一定となり、より安定した光を良好に照射することができる。
【0015】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、前記半導体発光装置の発光面、前記第1反射部の反射面、及び前記第2反射部の反射面は、前記半導体発光装置の光軸に対して略回転対称であり、以下に定義する光漏出角度θtが、−7.0°以上10.0°以下であり、光漏出角度θt=θ1(前記半導体発光装置の光軸を含む断面図において、前記半導体発光装置の発光面の外周部の1点及び第1反射部の外周部の1点を通る第1直線と、前記半導体発光装置の光軸とがなす角度)−θ2(前記半導体発光装置の光軸を含む断面図において、前記半導体発光装置の発光面の外周部の1点及び第2反射部の外周部の1点を通る第2直線と、半導体発光装置の光軸とがなす角度)である。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射し、照明光のムラをなくして優れた空間演出を行うことができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、上記第1又は2の態様において、先ず前記第2反射部、次に前記第1反射部の順序で反射されて前記開口部から放射される光が、前記開口部から放射される全放射光の50%以上であることである。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射し、照明光のムラをなくして優れた空間演出を行うことができる。
【0017】
本発明の第4の態様は、上記第1乃至3のいずれかの態様において、前記第1反射部及び前記第2反射部において反射されることなく、前記開口部から直接的に放射される光が、前記開口部から放射される全放射光の20%以下である。このようにすることにより、開口部から直接的に放射される光である無制御光を低減し、よりスポット的である狭角の光を放射し、優れた空間演出を行うことができる。
【0018】
本発明の第5の態様は、上記第1乃至4のいずれかの態様において、前記半導体発光装置から放出される光のうち、前記開口部から放射されずに、前記
スポット照明装置内に閉じ込められる光の割合が10%以下である。ここで、
スポット照明装置内に閉じ込められる光の割合を10%以下にするための手段として、例えば、光源である半導体発光装置と第2反射部とを離間し、第2反射部の反射面と半導体発光装置の光軸とのなす角を鈍角としてもよい。このようにすることにより、半導体発光装置から放出される光を効率よく第1反射部の外部に放射することができ、スポット照明装置自体の発光効率を向上することができる。
【0019】
本発明の第6の態様は、上記第1乃至5のいずれかの態様において、前記第1反射部が、対称軸を備えることである。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射して優れた空間演出を行うとともに、スポット照明装置自体の美観も向上させることができる。
【0020】
本発明の第7の態様は、上記第6の態様において、前記半導体発光装置が、前記光軸が前記第1反射部の対称軸に略一致するように設けられていることである。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射して優れた空間演出を行うとともに、スポット照明装置自体の美観も向上させることができる。
【0021】
本発明の第8の態様は、上記第1乃至7のいずれかの態様において、前記第1反射部の前記側面部が、略回転放物面形状に形成されていることである。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射して優れた空間演出を行うとともに、スポット照明装置自体の美観も向上させることができる。
【0022】
本発明の第9の態様は、上記第1乃至8のいずれかの態様において、前記第1反射部が、前記底部から前記側面部に向かって前記半導体発光装置から生じる熱を放熱する放熱経路を備えることである。このような構成により、スポット照明装置の放熱性を向上させ、信頼性の向上及び高寿命化を図ることができる。
【0023】
本発明の第10の態様は、上記第9の態様において、前記第1反射部が、熱伝導率が30W/(m・K)以上の材料からなることである。このような構成により、スポット照明装置の放熱性をより一層向上させ、信頼性の向上及び高寿命化を容易に図ることができる。
【0024】
本発明の第11の態様は、上記第1乃至10のいずれかの態様において、前記第2反射部が、対称軸を備えることである。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射して優れた空間演出を行うとともに、スポット照明装置自体の美観も向上させることができる。
【0025】
本発明の第12の態様は、上記第11の態様において、前記半導体発光装置が、前記光軸が前記第2反射部の対称軸に略一致するように設けられていることである。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射して優れた空間演出を行うとともに、スポット照明装置自体の美観も向上させることができる。
【0026】
本発明の第13の態様は、上記第1乃至12のいずれかの態様において、前記第2反射部の反射面が、前記半導体発光装置の光軸に対して傾斜し、且つ前記半導体発光装置の光軸となす角が鈍角であることである。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射し、優れた空間演出を行うことができる。
【0028】
本発明の第15の態様は、上記第1乃至13のいずれかの態様において、前記固定部が、前記第1反射部の側面部と前記第2反射部と接続することである。第1反射部の底部における固定部のためのスペースがないような場合であっても、第2反射部を強固に固定することができ、スポット照明装置の信頼性を高めることができる。
【0029】
また、上記の目的を達成するべく、本発明の第16の態様は、底部、側面部、及び前記底部に対向する開口部を有する椀状の第1反射部と、前記第1反射部の前記底部上に設けられた半導体発光装置と、前記半導体発光装置の光軸上に設けられた第2反射部と、前記第2反射部を前記半導体発光装置から離間して固定する固定部と、を有し、前記第2反射部は、前記半導体発光装置から放出される光の一部を直接受けて、前記第1反射部に向けて反射し、前記第1反射部は、前記半導体発光装置から放出される光の一部及び前記第2反射部において反射した光の全部又は一部を受けて、前記開口部に向けて反射し、前記半導体発光装置の発光面、前記第1反射部の反射面、及び前記第2反射部の反射面は、前記半導体発光装置の光軸に対して略回転対称であり、以下に定義する光漏出角度θtが、
4.0°以上10.0°以下であり、光漏出角度θt=θ1(前記半導体発光装置の光軸を含む断面図において、前記半導体発光装置の発光面の外周部の1点及び第1反射部の外周部の1点を通る第1直線と、前記半導体発光装置の光軸とがなす角度)−θ2(前記半導体発光装置の光軸を含む断面図において、前記半導体発光装置の発光面の外周部の1点及び第2反射部の外周部の1点を通る第2直線と、半導体発光装置の光軸とがなす角度)とするスポット照明装置である。
【0030】
本発明の第16態様に係るスポット照明装置においては、第1反射部において反射されて開口部から放射される光の割合が大きくなるため、よりスポット的である狭角の光を放射しつつ、かつ、第1反射部内に閉じ込められる光又は第1反射部の側方から漏れる光を減らして発光効率を向上することができる。
【0031】
また、本発明の第16態様に係るスポット照明装置においては、第1反射部の底部上に直接的に半導体発光装置が搭載されているため、半導体発光装置の駆動に伴って発生した熱は、第1反射部に沿って伝導し、他の構成部材に影響を与えることなく、第1反射部から放熱されることになる。これにより、スポット照明装置の放熱性が向上され、半導体発光装置及びその他の構成部材の故障を防止し、スポット照明装置自体の寿命を長くすることができる。
【0032】
更に、上記の構成により、ヒートシンクを別途設けなくとも十分な放熱性を実現できるため、比較的に重量のあるヒートシンクがなくなり、スポット照明自体の軽量化が図られ、スポット照明装置を天井等の高い位置においても、容易且つ強固に設置することができる。
【0033】
本発明の第17の態様は、上記第16の態様において、前記θ1が、40.0°以上、70.0°以下である。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射し、照明光のムラをなくして優れた空間演出を行うことができる。
【0034】
本発明の第18の態様は、上記第16又は17の態様において、前記θ2が、45.0°以上、60.0°以下である。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射し、照明光のムラをなくして優れた空間演出を行うことができる。
【0035】
本発明の第19の態様は、上記第16乃至18のいずれかの態様において、前記開口部から放射される光の1/2ビーム角が、5°以上25°以下である。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射し、照明光のムラをなくして優れた空間演出を行うことができる。
【0036】
本発明の第20の態様は、上記第16乃至19のいずれかの態様において、前記開口部から放射される光のスポット照明装置の重量あたりの光束は、3.0lumen/g以上である。このようにすることにより、今までに達成することができなかった、設置の容易性及び確実性、大光束によるスポット的な照射、最適な光学演出、並びに高寿命化というような複数の課題の同時達成を図ることができ、今までにない効果を発揮することができる。また、天井や柱に固定する際に、スポット照明装置自体の重さが負担とならず、必要な数量のスポット照明装置を安定的に設置することができる。更に、放射される光が狭角となるため、遠い位置、高い位置からでも、必要な照度で被照射物を照射することができる。
【0037】
本発明の第21の態様は、上記第16乃至20のいずれかの態様において、前記第1反射部の前記側面部が、略回転放物面形状に形成されていることである。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射して優れた空間演出を行うとともに、スポット照明装置自体の美観も向上させることができる。
【0038】
本発明の第22の態様は、上記第16乃至21のいずれかの態様において、前記第1反射部が、前記底部から前記側面部に向かって前記半導体発光装置から生じる熱を放熱する放熱経路を備えることである。このような構成により、スポット照明装置の放熱性を向上させ、信頼性の向上及び高寿命化を図ることができる。
【0039】
本発明の第23の態様は、上記第22の態様において、前記第1反射部が、熱伝導率が30W/(m・K)以上の材料からなることである。このような構成により、スポット照明装置の放熱性をより一層向上させ、信頼性の向上及び高寿命化を容易に図ることができる。
【0040】
本発明の第24の態様は、上記第16乃至23のいずれかの態様において、前記第2反射部が、対称軸を備えることである。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射して優れた空間演出を行うとともに、スポット照明装置自体の美観も向上させることができる。
【0041】
本発明の第25の態様は、上記第24の態様において、前記半導体発光装置が、前記光軸が前記第2反射部の対称軸に略一致するように設けられていることである。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射して優れた空間演出を行うとともに、スポット照明装置自体の美観も向上させることができる。
【0042】
本発明の第26の態様は、上記第16乃至25のいずれかの態様において、前記第2反射部の反射面が、前記半導体発光装置の光軸に対して傾斜し、且つ前記半導体発光装置の光軸となす角が鈍角であることである。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射し、優れた空間演出を行うことができる。
【0043】
本発明の第27の態様は、上記第16乃至26のいずれかの態様において、前記固定部が、前記第1反射部の側面部と前記第2反射部と接続することである。第1反射部の底部における固定部のためのスペースがないような場合であっても、第2反射部を強固に固定することができ、スポット照明装置の信頼性を高めることができる。
【0044】
更に、上記の目的を達成するべく、本発明の第28の態様は、半導体発光装置と、前記半導体発光装置を底部に搭載し、且つ、前記半導体発光装置から放射された光の少なくとも一部を反射させて前記底部の反対側に位置する開口部から放射する反射構造体と、を有し、前記開口部から放射される光の1/2ビーム角は、5°以上30°以下であり、前記開口部から放射される光のスポット照明装置の重量あたりの光束は、3.0 lumen/g以上であるスポット照明装置である。
【0045】
ここで、当該光束の数値は、半導体発光装置が備える口金の形状に起因して好ましい値が変動するものの、好ましくは4.0 lumen/g以上、更に好ましくは5.0 lumen/g以上である。
【0046】
本発明の第28態様に係るスポット照明装置においては、上述した構成及び設定により、今までに達成することができなかった、設置の容易性及び確実性、大光束によるスポット的な照射、最適な光学演出、並びに高寿命化というような複数の課題の同時達成を図ることができ、今までにない効果を発揮することができる。また、天井や柱に固定する際に、スポット照明装置自体の重さが負担とならず、必要な数量のスポット照明装置を安定的に設置することができる。更に、放射される光が狭角となるため、遠い位置、高い位置からでも、必要な照度で被照射物を照射することができる。
【0047】
本発明の第29の態様は、上記第28の態様において、前記反射構造体が、前記半導体発光装置から放射された光の少なくとも一部を2回反射して前記開口部から放射することである。このようにすることにより、よりスポット的である狭角の光を放射し、優れた空間演出を行いつつ、スポット照明装置自体の発光効率をより向上することができる。
【0048】
本発明の第30の態様は、上記第28又は29の態様において、前記反射構造体が、前記半導体発光装置から生じる熱を直接的に放熱することである。このような構成により、スポット照明装置の放熱性を向上させ、信頼性の向上及び高寿命化を図ることができる。
【0049】
本発明の第31の態様は、上記第28乃至30のいずれかの態様において、前記反射構造体が、物理的又は熱的衝撃による前記半導体発光装置と前記反射構造体の反射面との距離変動を抑制することである。このようにすることにより、放射される光の配光性が一定となり、より安定した光を良好に照射することができる。
【発明の効果】
【0050】
以上のことから、本発明によれば、発光効率の向上を図りつつもスポット的な照明光を放射し、且つ、軽量化を図りつつも十分な放熱性を備えるスポット照明装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について、実施形態に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施形態の説明に用いる図面は、いずれも本発明によるスポット照明装置及びその構造部材等を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、又は省略などを行っており、スポット照明装置及びその構造部材等の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、実施形態で用いる様々な数値及び数量は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて適宜変更することが可能である。
【0053】
≪実施形態≫
以下において、
図1乃至
図9を参照しつつ、本発明の本実施形態に係るスポット照明装置及びその構成部材を説明する。
図1は本実施形態に係るスポット照明装置の斜視図であり、
図2は本実施形態に係るスポット照明装置の正面図あり、
図3は本実施形態に係るスポット照明装置の側面図であり、
図4は本実施形態に係るスポット照明装置の底面図であり、
図5は
図2の線V-Vに沿ったスポット照明装置の断面図である。また、
図6は本実施形態に係るスポット照明装置を構成する発光モジュールの斜視図であり、
図7は本実施形態に係るスポット照明装置を構成する発光モジュールの正面図であり、
図8は
図3の線VIII-VIIIに沿った発光モジュールの断面図であり、
図9は
図8に示された断面図の要部拡大図である。
【0054】
<スポット照明装置の構成>
図1乃至
図5から分かるように、本実施形態に係るスポット照明装置1は、ドライバ筐体2、光源として機能する発光モジュール(半導体発光装置)3、発光モジュール3が搭載される略椀状の第1反射部4、第1反射部4内であって発光モジュール3の光軸上に設けられた第2反射部5、第2反射部5を発光モジュール3から離間して固定する固定部6、第1反射部4に対する発光モジュール3の位置決めをなす位置決め部材7、及びドライバ筐体2に接続された口金8から構成されている。また、本実施形態においては、第1反射部4及び第2反射部5によって、発光モジュール3から出射した光の少なくとも一部をスポット照明装置1の外部に反射して放射するための反射構造体が形成されている。
【0055】
本実施形態に係るスポット照明装置1においては、外部から供給される電力が口金8を介して発光モジュール3に給電されると、発光モジュール3が駆動して光を出射し、当該出射した光は、基本的に、第1反射部4によって1度のみ反射して外部に放射されるか、第2反射部5で反射した後に第1反射部4によって反射(合計2回の反射)して外部に放射され、第1反射部4及び第2反射部5の配置関係等に応じて、更に第1反射部4及び第2反射部5のいずれによっても反射することなく直接的に外部に放射される場合もある。そして、上述した構成から、本実施形態に係るスポット照明装置1は、AR111型照明装置として機能することができる。
【0056】
(ドライバ筐体)
スポット照明装置1のドライバ筐体2は、
図3及び
図5から分かるように、その外形が略円柱状となっており、その内部には種々の部品を内蔵するための空洞2aが形成されている。ここで種々の部品としては、
図5に示すように、発光モジュール3を点灯するためのドライバ回路を含む回路基板9がある。また、ドライバ筐体2は、外力によって破損等が生じることがない、比較的に強固な材料から形成されている。更に、ドライバ筐体2の材料としては、熱伝導性の比較的低い材料を用いることが好ましい。これは、発光モジュール3において生じる熱がドライバ筐体2側に伝導されることを抑制し、ドライバ筐体2内に設けられた部品の故障を防止するためである。ドライバ筐体2の材料として、例えば、樹脂、セラミック、金属等の材料を用いることができるが、特に熱放熱性、熱伝導性、耐久性等の観点から、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン等の樹脂が好ましい。
【0057】
なお、ドライバ筐体2の形状は上述したものに限定されることなく、スポット照明装置1が設置されるべき環境、並びに内蔵する部品の寸法及び数量等の諸条件に応じて適宜変更することができる。例えば、ドライバ筐体2の外形を略角柱状、又は略錐台状にしてもよい。
【0058】
(発光モジュール)
図5に示すように、発光モジュール3は、第1反射部4の底部4aの中央部分に搭載されている。また、発光モジュール3は、モジュール本体3aと、モジュール本体3a内に格納された波長変換部材3bを有している。モジュール本体3aは、外部から加えられる衝撃等から波長変換部材3bを保護するために設けられており、モジュール本体3aの材質は比較的硬い金属等の材料(例えば、鉄、アルミニウム、銅、セラミック)が用いられる。更に、本実施形態において、モジュール本体3aは、位置決め部材7によって第1反射部4の底部4a上に固定されているが、ネジ等の接合部材又は接着材料等を用いて底部4a上に固定されてもよい。接着剤は放熱接着剤を用いることが好ましい。そして、モジュール本体3aには、光が出射するための円形の開口が設けられており、例えば当該開口から内部で白色化を完了した光を取り出すことが可能である。このような発光モジュール3の構成により、本実施形態においては、発光モジュール3の発光面は、発光モジュール3の光軸に対して略回転対称となっている。
【0059】
一方、別の場合には、当該開口にガラス板等が設置され、当該ガラス面のモジュール内部側に蛍光体を塗布し、この部分で白色化を行って光を取り出すようにすることもできる。なお、当該開口は、円形に限られることなく、長方形等の多角形又はその他の形であってもよい。すなわち、当該開口の形状は、要求される発光モジュール3の光出射面の形状に合わせて、適宜変更することができる。
【0060】
図6乃至
図8から分かるように、モジュール本体3aは、配線基板として機能する平板部11と、平板部11のチップ実装面11a上に位置し、形状が円筒状の側壁部12と、から構成されている。また、
図6及び
図7から分かるように、平板部11のチップ実装面11a上であって側壁部12の内側には、12個の半導体発光素子であるLEDチップ13が規則的に配列されている。具体的には、平板部11の中央部に4個のLEDチップ13が等間隔で配置され、当該4個のLEDチップ13の四方を囲むように8個のLEDチップ13が配置されている。そして、中央部に配置された4個のLEDチップ13のそれぞれは、平板部11の中心から等しい距離だけ離間した位置に配置され、同様に、四方を囲むように配置された8個のLEDチップ13のそれぞれは、平板部11の中心から等しい距離だけ離間した位置に配置されている。すなわち、当該4個のLEDチップ13及び当該8個のLEDチップのそれぞれが同心円状に配置され、12個のLEDチップ13全体として、略円形のLEDチップ実装領域を形成している。なお、
図6乃至
図8には示していないが、平板部11には、これらのLEDチップ13のそれぞれに電力を供給するための配線パターンが形成されている。
【0061】
本実施形態において、LEDチップ13には、450nmのピーク波長を有した青色光を発するLEDチップを用いる。具体的には、このようなLEDチップとして、例えばInGaN半導体が発光層に用いられるGaN系LEDチップがある。なお、LEDチップ13の種類や発光波長特性はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨から逸脱しない限りにおいて、様々なLEDチップなどの半導体発光素子を用いることができる。本実施形態においてLEDチップ13が発する光のピーク波長は、380nm〜480nmの波長範囲内にあることが好ましく、440nm〜470nmの波長範囲内にあることがより好ましい。
【0062】
なお、モジュール本体3aの材質は、上述したものに限定されるものではなく、例えば、電気絶縁性に優れた材料として、樹脂、ガラスエポキシ、樹脂中にフィラーを含有した複合樹脂などから選択された材料を用いてもよい。或いは、平板部11のチップ実装面11aにおける光の反射性を良好にして波長変換部材3bの発光効率を向上させる上では、アルミナ粉末、シリカ粉末、酸化マグネシウム、酸化チタンなどの白色顔料を含むシリコーン樹脂を用いることが好ましい。より優れた放熱性を得るため、モジュール本体3aをアルミニウム等の金属から構成してもよく、当該アルミニウム等の金属の上に樹脂等の層間絶縁膜を形成し、平板部11の配線パターンなどを金属製の本体から電気的に絶縁してもよい。
【0063】
図9に示すように、LEDチップ13の平板部11側に向く面には、p電極14とn電極15とが設けられている。LEDチップ13においては、平板部11のチップ実装面11aに形成されている配線パターン16にp電極14が接合されると共に、同じくチップ実装面11aに形成された配線パターン17にn電極15が接合されている。これらp電極14及びn電極15の配線パターン16及び配線パターン17への接続は、図示しない金属バンプを介し、または、ハンダ付けによって行っている。図示されていない他のLEDチップ13も、それぞれのLEDチップ13に対応して平板部11のチップ実装面11aに形成された配線パターン16及び配線パターン17に、p電極14及びn電極15が同様にして接合されている。
【0064】
なお、LEDチップ13の平板部11への実装方法は、これに限定されるものではなく、LEDチップ13の種類や構造などに応じて適切な方法を選択可能である。例えば、LEDチップ13を平板部11の所定位置に接着固定した後、各LEDチップ13の2つの電極をワイヤボンディングで対応する配線パターンに接続してもよいし、一方の電極を上述のように対応する配線パターンに接合すると共に、他方の電極をワイヤボンディングで対応する配線パターンに接続するようにしてもよい。
【0065】
図6乃至
図8から分かるように、側壁部12によって囲まれた内部領域には、LEDチップ13から出射した青色光を波長変換する波長変換部材3bが設けられている。本実施形態に係る発光モジュール3においては、LEDチップ13から放射された青色光と、当該青色光が波長変換部材3bによって波長変換されて出射される光とを合成し、当該合成光をモジュール本体3aの開口から出射している。なお、波長変換部材3bは、モジュールの格納ケースの開口にガラス板等が設置され、当該ガラス面のモジュール内部側に塗布され、この部分で白色化を行って光を取り出すようにすることもできる。
【0066】
また、
図9に示すように、波長変換部材3bは、LEDチップ13から入射する青色光の少なくとも一部を吸収し、当該青色光とは異なる波長の出射光を放出する蛍光体18と、蛍光体18を保持する母材19とから構成されている。本実施形態に係る波長変換部材3bにおいては、青色光を放射するLEDチップ13を半導体発光素子として使用しているため、当該青色光の一部を黄色光に波長変換して白色光を合成可能である。従って、本実施形態における蛍光体18は、青色光を吸収して励起し、基底状態に戻る際に青色光とは異なる波長の光を発する黄色蛍光体が用いられる。
【0067】
具体的な黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常は530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上で、通常は620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあるものが好適である。中でも、黄色蛍光体として例えば、Y
3Al
5O
12:Ce[YAG蛍光体]、(Y,Gd)
3Al
5O
12:Ce、(Sr,Ca,Ba,Mg)
2SiO
4:Eu、(Ca,Sr)Si
2N
2O
2:Eu、α−サイアロン、La
3Si
6N
11:Ce(但し、その一部がCaやOで置換されていてもよい)が好ましい。
【0068】
母材19には、樹脂又はガラス等の透光性を備える材料を用いることができ、本実施形態においては、樹脂を使用した。本実施形態において、波長変換部材3bは、樹脂である母材19に蛍光体18を練り込むことにより形成されている。
【0069】
具体的な樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂)、アクリル系樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂)、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン系樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂は、LEDチップから放出される光(例えば、紫外光、近紫外光、又は青色光等)、または、波長変換部材から放出される可視光を吸収しないことが好ましい。更には、LEDチップ13から発せられる青色光に対して十分な透明性と耐久性とを有していることが好ましい。
【0070】
これらの樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの樹脂の共重合体であってもよく、2種類以上を積層して使用してもよい。
【0071】
なお、樹脂としては、ポリカーボネート樹脂が、透明性、耐熱性、機械的特性、難燃性に優れる点で、最も好ましく使用できる。
【0072】
また、発光モジュール3から出射される光も白色光に限られることなく、青色光、赤色光、黄色光等の有色光を出射するようにしてもよい。
【0073】
更に、本実施形態においては、複数のLEDチップ13を備えるチップ・オン・ボード(COB:Chip On Board)タイプの発光モジュール3を半導体発光装置として第1反射部4に固定していたが、半導体発光装置は上述したようなCOBに限定されることはない。例えば、LEDチップを波長変換部材内に埋設したようなパッケージタイプのLEDパッケージ装置を半導体発光装置として用いてもよい。或いは、波長変換部材が第1反射部4の底部4a上に配置され、LEDチップが当該波長変換部材上に配設された構造を有する半導体発光装置を用いてもよい。このような場合には、LEDチップ及び波長変換部材は、上述したものに限定されることなく、公知の様々なものを使用することができる。
【0074】
そして、スポット照明装置1の光源として、半導体レーザ及び当該半導体レーザのレーザ光の少なくとも一部を波長変換する波長変換部材からなる半導体発光装置を用いてもよい。このような場合には、例えば、当該波長変換部材を第1反射部4の底部4aに配置し、当該半導体レーザをドライバ筐体2側向けて突出した底部4aによって形成される収納空間に配置するようにしてもよい。
【0075】
(第1反射部)
図1乃至
図5から分かるように、第1反射部4は、底部4a、側面部4b、及び縁部4cから構成され、その外形が略椀状となっている。ここで、第1反射部4は対称軸を備えている。また、側面部4bは、当該対称軸を中心として軸対照に形成されるとともに、略回転放物面形状に形成されている。更に、第1反射部4の対称軸は、発光モジュール3の光軸Zに一致している。換言すると、発光モジュール3の光軸Zが第1反射部4の当該対称軸に略一致するように、発光モジュール3が配置されていることになり、第1反射部4の反射面として機能する側面部4bが発光モジュール3の光軸に対して略回転対称となっている。
【0076】
また、第1反射部4には、発光モジュール3及び第2反射部5を配設することができる空洞4dが形成され、更には発光モジュール3から出射された光をスポット照明装置1の外部に放射する開口部4eが形成されている。ここで、開口部4eは、底部4aに対向している。すなわち、第1反射部4は、底部4a及び側面部4bによって発光モジュール3及び第2反射部5を囲むように形成され、開口部4eを介して、発光モジュール3及び第2反射部5を視認することができるような構造となっている。例えば、開口部4eの開口径は、103mmである。
【0077】
更に、第1反射部4は、底部4aの発光モジュール3が搭載された面とは反対側面に、回路基板9が搭載されるとともに、ドライバ筐体2が固着されている。そして、第1反射部4の縁部4cは、側面部4bに向けて折り曲がった形状を有している。このような縁部4cに形状により、天井等の設置場所に設けられた照明装置の取り付け機構部分にスポット照明装置1を引っ掛けることができ、スポット照明装置1を天井等に強固に固定することができる。
【0078】
本実施形態において、第1反射部4には、熱伝導率が30W/(m・K)以上の材料が選択されている。例えば、第1反射部4は、好ましくは金属、更に好ましくはアルミニウム又はアルミニウムの合金から構成されていてもよい。このような材料によって第1反射部4が構成されることにより、第1反射部4は、発光モジュール3から生じる熱を底部4aから側面部4bに向かって放熱するための放熱経路を備えることになる。そして、当該放熱経路が形成されることにより、発光モジュール3から生じた熱を良好に外部へ放熱することができるため、発光モジュール3及びドライバ筐体2内の回路基板9等を当該熱から保護することができ、スポット照明装置1の高寿命化を図ることができる。
【0079】
また、本実施形態おいて、第1反射部4の側面部4bの内側面4fには、所望の表面処理が施されており、当該内側面4fは、発光モジュール3から出射した光を反射することができる反射面として機能する。表面処理としては、例えば、鏡面加工、ダイヤモンドカット加工、シボ加工、又はファセット加工等の各種の表面加工から選択することができる。
【0080】
このような第1反射部4の構成により、第1反射部4は、発光モジュール3から放出される光の一部及び第2反射部5において反射した光の全部又は一部を受けて、開口部4eに向けて反射することができる。
【0081】
なお、本実施形態において、第1反射部4は1つの材料から一体的に形成されているが、底部4a、側面部4b及び縁部4cを別々な材料から形成し、接着材等を用いて各部を接続して第1反射部4を形成してもよい。このような場合には、スポット照明装置1の要求仕様等の条件に応じて、底部4a、側面部4b及び縁部4cを構成する材料の熱伝導率を適宜変更することができ、スポット照明装置1のより最適化(軽量化や放熱性の向上)及びコスト低減を図ることができる。
【0082】
また、第1反射部4の側面部4bの形状は、上述した形状に限定されることなく、スポット照明装置1に要求される光学特性を満足することができれば、適宜変更することができる。すなわち、第1反射部4の側面部4bの形状は、要求される光の配光形状に合わせて、適宜変更することができる。より具体的には、第1反射部4の側面部4bにおける放物曲面の曲率を適宜変更することができ、又は側面部4bを湾曲させることなく平坦にしてもよい。
【0083】
更に、発光モジュール3の設置領域の周辺に対応する第1反射部4の底部4a(すなわち、底部4aの縁部分)を、発光モジュール3の設置領域に対応する第1反射部4の底部4a(すなわち、底部4aの中央部分)に対してドライバ筐体2側に下げてもよい。すなわち、底部4aにおいて、発光モジュール3が設置される領域を開口部4e側に突出させ、発光モジュール3が設置されない領域を凹ませてもよい。例えば、底部4aをその中央部が突出するように湾曲させてもよく、その中央部が突出するように段差を設けてもよい。このような底部4aの形状の調整により、発光モジュール3の設置領域の周辺における光の反射に起因する、スポット照明装置1の配光分布の劣化(具体的には、当該反射による光が配光分布の裾に現れてビーム角が広がること)を防止することができる。
【0084】
(第2反射部)
図1、
図2、及び
図5から分かるように、第2反射部5は、外形が円錐状であってその内部に空洞5aが形成された形状(いわゆる、中空円錐形状)を有している。ここで、第2反射部5は対称軸を備えており、当該対称軸は発光モジュール3の光軸Zに一致している。
【0085】
また、第2反射部5の外側面5bには、所望の表面処理が施されており、当該外側面5bは、発光モジュール3から出射した光を反射することができる反射面として機能する。表面処理としては、例えば、鏡面加工等の表面処理を用いることできる。
【0086】
更に、反射面である外側面5bは、発光モジュール3の光軸Zに対して傾斜しており、外側面5bと光軸Zとのなす角は鈍角となっている。すなわち、第2反射部5は、円錐の頂点が発光モジュール3の搭載側に位置するとともに、発光モジュール3の光軸Z上に位置していることになる。換言すると、発光モジュール3の光軸Zが第2反射部5の当該対称軸に略一致するように、発光モジュール3が配置されていることになり、第2反射部5の反射面として機能する外側面5bが発光モジュール3の光軸に対して略回転対称となっている。
【0087】
そして、第2反射部5は、光を透過しない材料(光非透過性の材料)から構成され、発光モジュール3から出射された光であって第2反射部5の外側面5bに到達した光を全反射することが好ましい。すなわち、第2反射部5の反射率は、好ましくは80%以上、85%以上、90%以上、95%以上である。また、第2反射部5は、鏡面反射を行い得ることが好ましい。例えば、第2反射部5は、アルミニウムなどの金属系素材、反射膜コーティングされた樹脂系素材から構成されている。このように、第2反射部5の反射率が高ければ高いほど、スポット照明装置1自体の発光効率が増加して好ましくなる。なお、第2反射部5は、全反射特性を有することが必須ではなく、グレアによる問題が生じない範囲において、少量の光を透過するような光透過性を有していてもよい。
【0088】
このような第2反射部5の構成により、第2反射部5は、発光モジュール3から放出される光の一部を直接受けて(すなわち、レンズ等の光学部材を通さずに受けて)、第1反射部4に向けて反射することができる。
【0089】
なお、第2反射部5の形状は中空円錐形状に限定されることはなく、スポット照明装置1に要求される光学特性を満足することができれば、種々の形状とすることができる。すなわち、第2反射部5の形状は、要求される光の配光形状に合わせて、適宜変更することができる。より具体的には、外側面5bが凸状又は凹状に湾曲していてもよく、或いは空洞5aを有さない単なる円錐であってもよい。更には、第2反射部5の形状は、角錐状、又は角錐の内部に空洞が形成された形状(いわゆる、中空角錐状)であってもよい。
【0090】
(固定部)
図1及び
図5から分かるように、固定部6は、発光モジュール3及び位置決め部材7の周囲に位置する環状部6a、及び環状部6aから第2反射部5の外側面5bに向かって延在する支柱6bから構成されている。このような構成により、固定部6は、発光モジュール3の設置領域の周辺から屹立し、発光モジュール3の設置領域の周辺における第1反射部4の底部4aと第2反射部5の外側面5bとを強固に接続している。
【0091】
固定部6は、例えば、光透過性を備える樹脂から構成されている。固定部6が光透過性を備えることにより、発光モジュール3から出射した光の吸収を防止し、照明装置の発光効率の向上及びスポット照明装置1から放射する光の光学的特性を設計通りに維持することができる。なお、固定部6が光透過性を有することなく、光反射性を有していてもよい。
【0092】
このような固定部6を用いて第2反射部5を第1反射部4に固定することにより、スポット照明装置1の製造工程における製品ごとの位置ずれ、すなわち発光モジュール3と第2反射部5との距離が製品ごとに異なること(いわゆる製品ばらつき)を防止することができる。また、このような強固な固定により、物理的又は熱的衝撃に起因する、発光モジュール3と第2反射部5との距離変動を防止することができる。そして、本実施形態に係るスポット照明装置1は、放射される光の配光性が一定となり、より安定した光を良好に照射することができる。
【0093】
本実施形態において、固定部6が環状部6aを含んでいることにより、環状部6aによって発光モジュール3に対する第2反射部5の設置を容易に行うことができる。すなわち、環状部6aは、第2反射部5の位置決め部材としても機能している。なお、発光モジュール3に対する第2反射部5の設置を的確に行うことができれば、環状部6aを設けることなく、支柱6bを直接的に第1反射部4の底部4aに固着してもよい。
【0094】
固定部6の構成は、上述した内容に限定されることなく、円筒状又は多角形の筒状の外形を備えていてもよい。このような場合には、固定部6は、光透過性を備える材料から構成されることになり、当該筒状に形成された固定部6の一端を発光モジュール3の外周を囲むように配置し、他端を第2反射部5の外側面5bに接続してもよい。
【0095】
また、本実施形態においては、同一部材からなる環状部6a及び支柱6bを一体的に成形して固定部6を構成しているが、環状部6aと支柱6bとを異なる材料から構成し、接着剤等によって接合してもよい。このような場合には、スポット照明装置1の要求仕様等の条件に応じて、環状部6a及び支柱6bを構成する材料を適宜変更することができ、スポット照明装置1のより最適化及びコスト低減を図ることができる。
【0096】
更に、本実施形態においては、固定部6によって第1反射部4の底部4aと第2反射部5の外側面5bとを接続しているが、第1反射部4の側面部4bの内側面4fと第2反射部5の外側面5bとを接続してもよい。このような接続方法は、第1反射部4の底部4aにおける固定部6との接触スペースを確保できない場合に、第2反射部5を第1反射部4に対して確実に固定することができる。
【0097】
(位置決め部材)
図1及び
図5から分かるように、位置決め部材7は、略環状に形成されており、発光モジュール3の周囲を囲むように配置されている。また、位置決め部材7は、発光モジュール3の平板部11のチップ実装面11aと部分的に接触し、発光モジュール3を第1反射部4と挟むようにして固定している。すなわち、位置決め部材7は、発光モジュール3の固定部材としても機能している。
【0098】
また、
図1に示すように、位置決め部材7にはネジ穴7aが形成されている。当該ネジ穴7aは、第1反射部4の底部4aに形成されたネジ穴(図示せず)と連通することとなり、当該ネジ穴7aにネジ(図示せず)を螺合することにより、位置決め部材7を第1反射部4に強固に固定させつつ、発光モジュール3も同時に第1反射部4に強固に固定することができる。
【0099】
位置決め部材7は、例えば樹脂又は金属等の材料から構成されている。ここで、第1反射部4及び第2反射部5によって反射した光を吸収することなく、第1反射部4又は第2反射部5に向かって光を反射することができる材料又は表面加工が施されていることが好ましい。
【0100】
(口金)
図3乃至
図5から分かるように、口金8は、天井等のスポット照明装置1の設置場所に設けられた照明装置の給電機構(図示せず)に嵌挿することができるように、平板状であってL型に形成されている。また、口金8は、ドライバ筐体2に内蔵された回路基板9と配線(図示せず)を介して電気的に接続されている。更に、口金8は、ネジ20によってドライバ筐体2に固定されている。このような構造から、口金8を照明装置の給電機構に嵌挿すると、給電機構から口金8及び当該配線を経由して回路基板9に所望の電力が供給されることになる。
【0101】
なお、口金8は、
図1に示すようなL型の平板状に限定されることなく、給電機構の形状に合わせて適宜変更することができる。例えば、給電ソケットが日本における一般的な螺合型のソケットである場合、口金8の形状は、ドライバ筐体2の略四角柱状の部分と同等の寸法であって、その表面がねじ切られた形状であってもよい。このような場合には、口金8が当該給電ソケットに螺合することによって着脱自在となっている。
【0102】
(発光モジュール、第1反射部、第2反射部の配置関係)
本実施形態においては、スポット照明装置1から良好なスポット光を照射するために、発光モジュール3、第1反射部4、及び第2反射部5の配置関係について、所望の関係が成立するように調整されている。具体的には、発光モジュール3から放出した光が第1反射部4及び第2反射部5によって反射することなく第1反射部4の開口部4eから直接放出されることを示す光漏出角度θtを−7.0°以上10.0°以下としている。好ましくは当該光漏出角度θtを0°以上7.0°以下とし、更に好ましくは4.0°以上7.0°以下としてもよい。
【0103】
ここで、当該光漏出角度θtは、
図5において(すなわち、発光モジュール3の光軸を含む断面図において)、発光モジュール3の発光面の外周部の点a及び第1反射部4の外周部の点bを通る第1直線c(矢印で示す)と点aを通るように発光モジュール3の光軸Zを平行移動した軸f(矢印で示す)とのなす角度θ1、並びに発光モジュール3の発光面の外周部の点a及び第2反射部5の外周部の点dを通る第2直線e(矢印で示す)と軸fとのなす角度θ2を用いて、以下の数式(1)によって定義される。
【0105】
ここで軸fは光軸Zと平行であるため、上述した角度θ1は、第1直線cと発光モジュール3の光軸Zとのなす角度と実質的に同一である。また、上述した角度θ2も、第2直線eと、発光モジュール3の光軸Zとのなす角度と実質的に同一である。
【0106】
本実施形態においては、当該角度θ1を40°.0以上70°.0以下となるように、発光モジュール3、第1反射部4、及び第2反射部5の配置関係を調整することが好ましい。また、当該角度θ2を45°.0以上60°.0以下となるように、発光モジュール3、第1反射部4、及び第2反射部5の配置関係を調整することが好ましい。
【0107】
ここで、スポット照明装置1の光漏出角度θt、θ1、θ2の値は、スポット照明装置1の実物をそのまま直接測定することにより特定することができるが、そのまま直接測定することが困難な場合にはスポット照明装置1を分解して測定しても良いし、実物で直接測定できない時は、実物から図面(断面図)を起こして測定することによって求めても良い。
【0108】
なお、光漏出角度θt、角度θ1、及び角度θ2を、上述した数値範囲内にする理由としては、発光モジュール3から放射する光の光学経路及び当該光学経路を経由する光の割合を制御することができ、スポット照明装置1から良好なスポット光を照射することが可能になるからである。なお、後述する実施例と比較例との比較の説明の際に合わせて、当該内容をより詳しく説明するものとする。
【0109】
<スポット照明装置の動作>
次に、本実施形態に係るスポット照明装置1の動作及び動作時における光の放射について
図10を参照しつつ説明する。
図10は、実施形態に係るスポット照明装置の動作を説明するための図であって、発光モジュール3、第1反射部4、及び第2反射部5のみを記載した概略断面図である。
【0110】
先ず、天井等に設置されている照明システムの給電機構(図示せず)に口金8を嵌挿し、第1反射部4の縁部4cを天井の設置場所に設けられた取り付け機構部分に引っ掛け、スポット照明装置1を天井に強固に取り付ける。このような状態において、照明システムの給電スイッチをオン状態に移行させ、スポット照明装置1に電力を供給する。当該電力は口金8及び回路基板9等を介して発光モジュール3に供給され、発光モジュール3のLEDチップ13が発光して、発光モジュール3から所望の光が出射される。
【0111】
発光モジュール3から放射した光が、スポット照明装置1の開口部4eから放出される光学経路には、
図10に示すように、主に3つのパターンがある。第1のパターンは、発光モジュール3から放射した光が、第1反射部4及び第2反射部5のいずれによっても反射されることなく、第1反射部4と第2反射部5の隙間を縫って、直接的に開口部4eから放射される光学経路A(破線で示す)である。第2のパターンは、発光モジュール3から放射した光が、先ず第1反射部4の内側面4fによって1回反射し、その後に開口部4eから放射される光学経路B(一点鎖線で示す)である。第3のパターンは、発光モジュール3から放射した光が、直接的に、又は、第1反射部4の内側面4fによって反射した光(図示せず)が、第2反射部5の外側面5bによって反射され、その後に第1反射部4の内側面4fによって反射し、合計2回以上の反射を経て開口部4eから放射される光学経路C(2回反射の場合を二点鎖線で示し、3回以上の反射は図示せず)である。また、発光モジュール3から放射した光の一部については、スポット照明装置1内で反射を繰り返し、開口部4eから放射されずにスポット照明装置1内に閉じ込められる場合もある(図示せず)。
【0112】
本実施形態においては、スポット照明装置1から良好なスポット光を照射するために、第1反射部4において反射されて開口部4eから放射される光を、開口部4eから放射される全放射光の80%以上としている。すなわち、光学経路Bを経て放射される光及び光学経路C(第1反射部4及び第2反射部5によって合計3回以上の反射を経て開口部4eから放射される光を含む)を経て放射される光の合計が、開口部4eから放射される光(光学経路A、光学経路B、光学経路C(第1反射部4及び第2反射部5によって合計3回以上の反射を経て開口部4eから放射される光を含む)の合計)の80%以上となっている。ここで、より良好なスポット光を照射するためには、光学経路B及びC(第1反射部4及び第2反射部5によって合計3回以上の反射を経て開口部4eから放射される光を含む)を経て放射される光の割合(すなわち、上記数値)を、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上としてもよい。
【0113】
ここで、光学経路B及びCを経て放射される光の合計を、開口部から放射される全放射光の80%以上とするために、発光モジュール3、第1反射部4、及び第2反射部5の各寸法、各形状、並びにこれらの位置関係が調整されている。特に、第1反射部4及び第2反射部5の大きさ、配置関係、並びにこれらが備える反射面と半導体発光装置の光軸とのなす角度を調整してもよく、更に、第1反射部4の側部の形状、開口部4eの開口径、発光モジュール3に対する第2反射部5の寸法、発光モジュール3と第2反射部5との距離を調整してもよい。
【0114】
実物の照明装置の光学経路の割合(例えば、第1反射部4において反射されて開口部4eから放射される光が、開口部4eから放射される全放射光の80%以上であること)は、実物から3D図面を起こし、半導体発光装置から放射される光の光学経路をシミュレーションすることによって求める。シミュレーションの計算条件として反射率と反射しない光の取り扱いを設定することが必要である。反射率は反射部の材料によって異なるので、実物の材料に合わせた数値を入力する。反射しない光は吸収として取り扱う。シミュレーション方法自体はどのような方法でも良いが、代表的なシミュレーション用ソフトとしては、Trace Pro(Lambda Research Corporation社製)が挙げられる。本明細書の実施例等のシミュレーションにおいては、全て当該ソフトを用いて計算した。
【0115】
また、本実施形態においては、スポット照明装置1からより良好なスポット光を照射するために、先ず第2反射部5、次に第1反射部4の順序で反射されて開口部4eから放射される光を、開口部4eから放射される全放射光の50%以上としている。すなわち、光学経路C経て放射される光の合計)の50%以上となっている。ここで、より良好なスポット光を照射するためには、光学経路Cを経て放射される光の割合(すなわち、上記数値)を、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは65%以上としてもよい。
【0116】
ここで、先ず第2反射部5、次に第1反射部4の順序で反射されて開口部4eから放射される光を、開口部4eから放射される全放射光の50%以上とするためにも、発光モジュール3、第1反射部4、及び第2反射部5の各寸法、各形状、並びにこれらの位置関係が調整されている。特に、第2反射部5の形状、発光モジュール3に対する第2反射部5の寸法、発光モジュール3と第2反射部5との距離を調整してもよい。
【0117】
更に、本実施形態においては、スポット照明装置1からより良好なスポット光を照射するために、第1反射部4及び第2反射部5において反射されることなく、開口部4eから直接的に放射される光を、開口部4eから放射される全放射光の20%以下としている。すなわち、光学経路A経て放射される光が、開口部4eから放射される光(光学経路A、光学経路B、光学経路Cを経由して開口部4eから放射する光、及び第1反射部4及び第2反射部5によって合計3回以上の反射を経て開口部4eから放射される光の合計)の20%以下となっている。ここで、より良好なスポット光を照射するためには、光学経路Aを経て放射される光の割合(すなわち、上記数値)を、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下としてもよい。
【0118】
ここで、第1反射部4及び第2反射部5において反射されることなく、開口部4eから直接的に放射される光を、開口部4eから放射される全放射光の20%以下とするためにも、発光モジュール3、第1反射部4、及び第2反射部5の各寸法、各形状、並びにこれらの位置関係が調整されている。特に、発光モジュール3の発光面に対する第1反射部4の開口部4eの開口径、発光モジュール3に対する第2反射部5の寸法、発光モジュール3と第2反射部5との距離を調整してもよい。
【0119】
そして、本実施形態においては、スポット照明装置1からより良好なスポット光を照射して被照射物をより一層明るく照らすために(すなわち、スポット照明装置1の発光効率を向上させるために)、発光モジュール3から出射した光のうち、開口部4eから放射されずに、スポット照明装置1(第1反射部4)内に閉じ込められる光の割合を10%以下としている。ここで、スポット照明装置1の発光効率をより一層向上させるためには、スポット照明装置1内に閉じ込められる光の割合(すなわち、上記数値)を、好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下としてもよい。
【0120】
ここで、照明装置内に閉じ込められる光の割合を10%以下とするためにも、発光モジュール3、第1反射部4、及び第2反射部5の各寸法、各形状、並びにこれらの位置関係が調整されている。特に、発光モジュール3と第2反射部5との距離、第2反射部5の反射面と発光モジュール3の光軸とのなす角を鈍角に調整してもよい。
【0121】
上述した光の放射により、本実施形態に係るスポット照明装置1は、光学経路B及びCを経由する光を多くすることでよりスポット的である狭角の光を放射することができる。換言すると、スポット照明装置1によって約50cm以上離間した被照射物に光を照射する場合、当該被照射物に環状の照射面が形成されず、円状の良好な照射面が形成されることになる。
【0122】
また、上述した光の放射により、本実施形態に係るスポット照明装置1は、第1反射部4及び第2反射部5を用いた反射によって第1反射部4内に閉じ込められる光又は第1反射部4の側方から漏れる光を減らし、発光効率を向上することができる。
【0123】
更に、本実施形態に係るスポット照明装置1においては、放熱経路を備える第1反射部4の底部4a上に直接的に(放熱グリース(例えば、ダウ・コーニング社製のSE4490CV)、放熱シート等の放熱材料を挟む場合を含む)、発光モジュール3が搭載されているため、発光モジュール3の駆動に伴って発生した熱は、第1反射部4の放熱経路に沿って伝導し、ドライバ筐体2の回路基板9に影響を与えることなく、第1反射部4から放熱されることになる。これにより、スポット照明装置1の放熱性が向上され、発光モジュール3及び回路基板9の故障を防止し、スポット照明装置1自体の寿命を長くすることができる。
【0124】
そして、本実施形態に係るスポット照明装置1においては、上述した放熱性の向上により、ヒートシンクを別途設けることなく、高い信頼性が実現されている。このため、比較的に重量のあるヒートシンクがなくなり、スポット照明装置1自体の軽量化が図られ、スポット照明装置1を天井等の高い位置においても、容易且つ強固に設置することができる。
【0125】
以上のことから、本実施形態に係るスポット照明装置1においては、天井等の高い位置に簡単に多数のスポット照明装置を固定でき、狙った被照射物を大光束で照射し、最適な光学演出を行い、高寿命化が図られている。すなわち、発光効率の向上を図りつつもスポット的な照明光を放射し、且つ、軽量化を図りつつも十分な放熱性を備えるスポット照明装置1が提供されることになる。
【0126】
本実施形態において、狭角の光とは光の1/2ビーム角が5°以上30°以下であり、より好ましくは5°以上25°以下である。ここで、光の1/2ビーム角とは、スポット照明装置1の最大光度に対し、スポット照明装置1の照度比が50%になる2方向をビームの境としたビームのなす角度である。
【0127】
本実施形態において、1/2ビーム角の測定方法は、「JIS C 8105−5」に規定されている「ビームの開きの測定手順」に従って行われる。具体的には、先ず、測定の原点の方向がスポット照明装置1の最大光度を含む方向と一致するように、スポット照明装置1を取り付ける。ただし、配光特性が複雑な場合には、このように取り付ける必要性はない。
【0128】
次に、水平角φ
1を一定にし、鉛直角θを変化させて、それぞれのθ方向における光度I
t(θ,φ
1)を測定する。ここで、I
t(θ,φ
1)の測定方法としては、以下の手順をとることになる。具体的には、スポット照明装置1の測光中心と配光測定装置の回転中心とを一致させ、基準軸と測定の原点とも一致させる。なお、スポット照明装置1と配光測定装置の配置について他の条件(製造業者等の指定条件)がある場合には、当該他の条件に従うことになる。
【0129】
スポット照明装置1は、通常の使用条件によって点灯させるが、他の条件(製造業者等の指定条件)がある場合には、当該他の条件に従うことになる。また、スポット照明装置1及び配光測定装置は、予熱を十分に行い、安定したことを確認することが好ましい。スポット照明装置1及び配光測定装置が安定したことを確認するために、例えば、5分間隔で光度を測定し、連続した3回の光度の変化が1%以下となった場合に、安定したものと判断してもよい。
【0130】
次に、所定の測定角度範囲及び測定角度間隔に基づいて選択した各測定点(θ,φ
1)における受光器の出力を記録する。モニタ用受光器がある場合には、各測定点の受光器の出力を、モニタ受光器の出力との比率で補正してもよい。また、温度によって受光器の出力に影響が生じる場合には、各測定点における温度も記録することが好ましい。スポット照明装置1の温度を測定する位置は、製造業者等が指定する位置で行い、指定がない場合には温度と測定結果との相関がある位置で行うことが好ましい。
【0131】
次に、記録した受光器の出力を用いて、測定点(θ,φ
1)における光度I
t(θ,φ
1)を算出する。具体的には、配光測定装置に対して光度の校正を用いた場合には、以下の数式(2)により、光度I(θ,φ
1)が算出される。
【0132】
I
t(θ,φ
1)=k×i
t(θ,φ
1)×R
1 (2)
ここで、I
t(θ,φ
1)が測定点(θ,φ
1)の光度であり、kが色補正係数であり、i
t(θ,φ
1)が測定点(θ,φ
1)における受光器の出力であり、R
1が受光器の光度の換算係数である。
【0133】
一方、配光測定装置に対して照度の校正を用いた場合には、以下の数式(3)により、光度I
t(θ,φ
1)が算出される。
【0134】
I
t(θ,φ
1)=k×i
t(θ,φ
1)×d
2×R
E (3)
ここで、I
t(θ,φ
1)が測定点(θ,φ
1)の光度であり、kが色補正係数であり、i
t(θ,φ
1)が測定点(θ,φ
1)における受光器の出力であり、dがスポット照明装置1の測定中心からの測光距離(m)であり、R
Eが受光器の光度の換算係数である。なお、測光距離は、スポット照明装置1の発光面の最大寸法の5倍以上が好ましい。例えば、本実施形態においては、第1反射部4の開口部4eの寸法が103mmであるため、当該測光距離を1mとすれば十分となる。
【0135】
その後、上述した光度測定により得られたI
t(θ,φ
1)から、水平角φにおける最大光度I
t,max(φ
1)を算出する。そして、最大光度I
t,max(φ
1)に対し、光度が50%になる2方向をビームの境とし、ビーム境のなす角A(φ
1)を求め、ビームの開きとする。なお、平均のビームの開きを求める場合には、2方向以上の水平角φ
1について、A(φ
1)を測定し、A(φ)の平均値としてもよい。
【0136】
また、本実施形態において、スポット照明装置1の軽量化及び大光束による光の照射は、開口部4eから放射される光のスポット照明装置1の重量あたりの光束を3.0lumen/g以上にすることによって実現される。
【0137】
以上のことから、開口部4eから放射される光の1/2ビーム角を5°以上30°以下とし、開口部4eから放射される光のスポット照明装置1の重量あたりの光束を3.0lumen/g以上にすることにより、今までに達成することができなかった、設置の容易性及び確実性、大光束によるスポット的な照射、最適な光学演出、並びに高寿命化というような複数の課題の同時達成を図ることができ、今までにない効果を発揮することができる。
【0138】
特に、本実施形態においては、発光モジュール3から放射された光の反射回数、及び反射される割合(すなわち、光学経路A乃至Cを経する割合)を調整し、スポット照明装置1の要求仕様に応じて、光の1/2ビーム角を5°以上30°以下の範囲内で調整して最適化を図ることになる。また、第1反射部4及び第2反射部5からなる反射構造体を利用し、発光モジュール3から出射された光の少なくとも一部を2回反射させて開口部4eから放射することにより、ビーム角の最適化を図ることになる。
【0139】
<実施例と比較例との比較>
上述したような光学経路の調整がなされた、
図11に示すようなAR111型のスポット照明装置(以下、「実施例」と称する)と、実施例のような光学経路の調整がされてない(すなわち、第1反射部及び第2反射部によって反射されることなく放射される光が多い)照明装置(以下、「比較例」と称する)として、例えば比較例2においては米国特許第6637921号の
図5Bに示す照明装置と同様の構成のスポット照明装置について、そのビーム角をシミュレーションにより比較する。ここで、
図11は、
図5と同様の実施形態における、実施例に係るスポット照明装置の断面図である。また、上述した実施例として、発光モジュール3の発光面の寸法、及び第2反射部5の寸法(すなわち、光漏出角度)の相違により、構成が若干異なる実施例1〜4を想定した(実施例4においては第2反射部の直径を実施例1〜3に比べて大きく設計することにより光漏出角度をマイナスの値になるまで小さくした。)。更に、比較例1については、発光モジュールの発光面の寸法の相違により、構成が若干異なる変形例を想定した。
【0140】
上述した実施例については、
図11からわかるように、上述した実施形態に係るスポット照明装置1(
図1乃至
図5に示す)と比較して、第2反射部5の形状及び配設位置、並びに支柱6bの長さが異なっているだけであり、その他の構成は同一である。より具体的に、実施例に係る第2反射部5は、外側面5bが湾曲して凹面状に形成されており、全体として略中空円錐状に形成されている。また、実施例に係る支柱6bは実施形態よりも短く設定されており、これによって第2反射部5が発光モジュール3により近づいて配設されている。
【0141】
また、第1反射部、第2反射部の反射率は、100%(完全反射)として計算した。発光モジュールとしては、全光束が1019 lumenであるCOB(Chip On Board)タイプの発光モジュールを用いた。
【0142】
更に、光学経路を形成する第1反射部4及び第2反射部5については、実施例及び比較例ともに、第1反射部4をアルミニウム、第2反射部5を樹脂によって形成するものとした。
【0143】
そして、
図5と同様に、光漏出角度θtは、
図11において(すなわち、発光モジュール3の光軸を含む断面図において)、発光モジュール3の発光面の外周部の点a及び第1反射部4の外周部の点bを通る第1直線c(矢印で示す)と点aを通るように発光モジュール3の光軸Zを平行移動した軸f(矢印で示す)とのなす角度θ1、並びに発光モジュール3の発光面の外周部の点a及び第2反射部5の外周部の点dを通る第2直線e(矢印で示す)と軸fとのなす角度θ2を用いて、上述した数式(1)によって定義することができる。
【0144】
図12のシミュレーション評価結果に示すように、実施例1においては、発光モジュールから放射される全ての光に対する、光学経路Aを経由する光の割合は1%、光学経路B及びCを経由する光の割合は96%となり、スポット照明装置内に閉じ込められる光の割合(光学経路D)は3%となった。また、光学経路A、B及びCを経由する光(すなわち、第1反射部4の開口部4eから放射される光)に対する、光学経路B及びCを経由する光の割合は98.97%となった。更に、光漏出角度(θ1−θ2)は0.6°となった。そして、開口部から放射される光の重量あたりの光束は、5.2 lumen/gとなった。
【0145】
実施例2においては、発光モジュールから放射される全ての光に対する、光学経路Aを経由する光の割合は6%、光学経路B及びCを経由する光の割合は89%となり、スポット照明装置内に閉じ込められる光の割合(光学経路D)は5%となった。また、光学経路A、B及びCを経由する光に対する、光学経路B及びCを経由する光の割合は93.68%となった。更に、光漏出角度(θ1−θ2)は2.8°となった。
【0146】
実施例3においては、発光モジュールから放射される全ての光に対する、光学経路Aを経由する光の割合は9%、光学経路B及びCを経由する光の割合は85%となり、スポット照明装置内に閉じ込められる光の割合(光学経路D)は6%となった。また、光学経路A、B及びCを経由する光に対する、光学経路B及びCを経由する光の割合は90.43%となった。更に、光漏出角度(θ1−θ2)は6.7°となった。
【0147】
実施例4においては、発光モジュールから放射される全ての光に対する、光学経路Aを経由する光の割合は0%、光学経路B及びCを経由する光の割合は94%となり、スポット照明装置内に閉じ込められる光の割合(光学経路D)は6%となった。また、光学経路A、B及びCを経由する光に対する、光学経路B及びCを経由する光の割合は100%となった。更に、光漏出角度(θ1−θ2)は、θ1よりもθ2が大きいため、−6.9°となった。
【0148】
一方、比較例1においては、発光モジュールから放射される全ての光に対する、光学経路Aを経由する光の割合は20%、光学経路B及びCを経由する光の割合は75%となり、スポット照明装置内に閉じ込められる光の割合(光学経路D)は5%となった。また、光学経路A、B及びCを経由する光に対する、光学経路B及びCを経由する光の割合は78.95%となった。更に、光漏出角度(θ1−θ2)は19.5°となった。
【0149】
比較例2においては、発光モジュールから放射される全ての光に対する、光学経路Aを経由する光の割合は30%、光学経路B及びCを経由する光の割合は66%となり、スポット照明装置内に閉じ込められる光の割合は4%となった。また、光学経路A、B及びCを経由する光に対する、光学経路B及びCを経由する光の割合は68.75%となった。
【0150】
以上の結果から、θ1及びθ2を調整して光漏出角度θtを−7.0°以上10.0°以下にすると、光学経路A、B及びCを経由する光に対する、光学経路B及びCを経由する光の割合を90%以上にすることができ、良好なスポット光を照射することができる。一方、比較例1のような光漏出角度θtが20°近くになると、反射部によって反射されることなく直接的に外部に放射される光が多くなり、良好なスポット光を照射することができなくなる。
【0151】
また、実施例1及び比較例2の配光分布は、
図13に示すような結果が得られた。更に、実施例2の配光分布は
図14に示すような結果が得られ、実施例3の配光分布は
図15に示すような結果が得られ、実施例4の配光分布は
図16に示すような結果が得られた。そして、比較例1の配光分布は、
図17に示すような結果が得られた。ここで、
図13乃至
図17の横軸は出射角(単位:度(°))であり、縦軸は照度比である。
【0152】
図12及び
図13に示すように、実施例1の配光分布(
図13において実線で示す)は、出射角が−15°〜+15°の範囲において照度比が急峻に増加し、1/2ビーム角は13°であった。一方、比較例2の配光分布(
図13において破線で示す)は、出射角が−50°〜+50°の範囲において照度比がゆるやかに増加し、ビーム角は40°以上であった。
【0153】
また、
図12及び
図14に示すように、実施例2の配光分布は、出射角が−22°〜+22°の範囲において照度比が急峻に増加し、1/2ビーム角は20°であった。更に、
図12及び
図15に示すように、実施例3の配光分布は、出射角が−25°〜+25°の範囲において照度比が急峻に増加し、1/2ビーム角は24°であった。そして、
図12及び
図16に示すように、実施例4の配光分布は、出射角が−15°〜+15°の範囲において照度比が急峻に増加し、1/2ビーム角は14°であった。一方、
図12及び
図17に示すように、比較例1の配光分布は、出射角が−45°〜+45°の範囲において照度比が急峻に増加し、1/2ビーム角は30°以上であった。
【0154】
以上の配光分布の結果により、実施例1乃至4においては、スポット照明装置として良好な狭角の光を放射することができるが、比較例1、2においては、実施例1乃至4のような狭角の光を放射することができず、照射範囲の比較的に広い広角の光を放射することになる。このような結果から、実施例1乃至4に係るスポット照明装置は、比較例1、2に係るスポット照明装置より、狭角の光の放射が可能となり、遠い位置、高い位置からでも、必要な照度で被照射物を照射することができる。
【0155】
また、
図12に示すように、実施例1乃至4に係るスポット照明装置は、シミュレーション検討において、狭角の光を放射しつつも、比較的に高い発光効率を備えることができ、更には照射面にムラが生じることがなかった。一方、比較例1に係るスポット照明装置は、発光効率は高いものの、全体的にぼやけた照射面を形成することになった(すなわち、鈍角の光であって照射面にムラが生じている)。
【0156】
そして、上述したシミュレーション結果自体が妥当であることを示すために、
図11に相当するAR111型LEDスポット照明装置の実物を作成して、実物での実測値を測定した。ここで、半導体発光装置の発光面の直径は9mmとし、光漏出角度θtが、4.7°(θ1=55.1°、θ2=50.4°)となるように設計・作成した。その時の1/2ビーム角度は実測の結果、21°であり、照射面のムラはなかった。これらの実測結果は、上記シミュレーションの結果と良く整合することが明らかとなった。