特許第6544722号(P6544722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6544722
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】ウエハの接合方法及び接合装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20190705BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20190705BHJP
   B23K 20/24 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   H01L21/02 B
   B23K20/00 310L
   B23K20/00 310P
   B23K20/24
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-214012(P2015-214012)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-79316(P2017-79316A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年3月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-206796(P2015-206796)
(32)【優先日】2015年10月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304019355
【氏名又は名称】ボンドテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】山内 朗
【審査官】 土谷 慎吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−115825(JP,A)
【文献】 特開2014−103291(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/157321(WO,A1)
【文献】 特開2009−177088(JP,A)
【文献】 特開2011−187716(JP,A)
【文献】 特開2014−007325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/00−21/02
B23K 20/00、20/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハの接合方法であって、
接合されるウエハの接合予定面の少なくとも一部を親水化させる親水化処理と、
前記親水化処理の後に真空中で前記ウエハを接合する接合処理とを含み、
前記親水化処理において、原子ビーム照射又はイオンビーム照射のいずれかを行うとともに、Si粒子を照射する、
ウエハの接合方法。
【請求項2】
ウエハの接合方法であって、
接合されるウエハの接合予定面の少なくとも一部を親水化させる親水化処理と、
前記親水化処理の後に真空中で前記ウエハを接合する接合処理とを含み、
前記親水化処理後前記接合処理前において、前記ウエハを大気に曝さず、
前記親水化処理において、前記ウエハの処理面上部に常時プラズマを発生させ、前記処理面のバイアスをオフして上部プラズマから前記処理面へ窒素ラジカルをダウンフローさせるラジカル処理のみを行う、
ウエハの接合方法。
【請求項3】
ウエハの接合方法であって、
ウエハ表面の少なくとも一部に絶縁物質を堆積させる堆積処理と、
堆積した絶縁物質を研磨する研磨処理と、
接合されるウエハの接合予定面の少なくとも一部を親水化させる親水化処理と、
前記親水化処理の後に真空中で前記ウエハを接合する接合処理とを含み、
前記親水化処理後前記接合処理前において、前記ウエハを大気に曝さず、
前記親水化処理において、前記ウエハの処理面上部に常時プラズマを発生させ、前記処理面のバイアスをオフして上部プラズマから前記処理面へ窒素ラジカルをダウンフローさせるラジカル処理のみを行う
ウエハの接合方法。
【請求項4】
前記親水化処理の後、かつ前記接合処理の前に、洗浄処理を行わない請求項1から3のいずれか1項に記載のウエハの接合方法。
【請求項5】
前記親水化処理の後、かつ前記接合処理の前に、水に暴露する処理を行わない請求項1から4のいずれか1項に記載のウエハの接合方法。
【請求項6】
前記ラジカル処理が、水素を含むガスで行われる請求項2又は3に記載のウエハの接合方法。
【請求項7】
前記ラジカル処理が、HOまたはOHを含むガスで行われる請求項2又は3に記載のウエハの接合方法。
【請求項8】
前記ラジカル処理時に加熱する請求項2又は3に記載のウエハの接合方法。
【請求項9】
ウエハの接合装置であって、
接合されるウエハの接合予定面の少なくとも一部を親水化させる親水化処理を実行するための親水化処理部と、
前記親水化処理の後に真空中で前記ウエハを接合するための接合処理部とを含み、
前記親水化処理部は、原子ビーム照射又はイオンビーム照射のいずれかを行うとともに、Si粒子を照射する
ウエハの接合装置。
【請求項10】
ウエハの接合装置であって、
接合されるウエハの接合予定面の少なくとも一部を親水化させる親水化処理を実行するための親水化処理部と、
前記親水化処理の後に真空中で前記ウエハを接合するための接合処理部と、
前記親水化処理が行われる第1チャンバと、
前記第1チャンバに連通し前記ウエハを大気に曝すことなく内側へ搬送可能な第2チャンバと、を含み、
前記親水化処理部は、前記ウエハの処理面上部に常時プラズマを発生させ、前記処理面のバイアスをオフして上部プラズマから前記処理面へ窒素ラジカルをダウンフローさせるラジカル処理のみを実行する、
ウエハの接合装置。
【請求項11】
ウエハの接合装置であって、
ウエハ表面の少なくとも一部に絶縁物質を堆積させるための堆積処理部と、
堆積した絶縁物質を研磨するための研磨処理部と、
接合されるウエハの接合予定面の少なくとも一部を親水化させる親水化処理を実行するための親水化処理部と、
前記親水化処理の後に真空中で前記ウエハを接合するための接合処理部と
前記親水化処理が行われる第1チャンバと、
前記第1チャンバに連通し前記ウエハを大気に曝すことなく内側へ搬送可能な第2チャンバと、を含み、
前記親水化処理部は、前記ウエハの処理面上部に常時プラズマを発生させ、前記処理面のバイアスをオフして上部プラズマから前記処理面へ窒素ラジカルをダウンフローさせるラジカル処理のみを実行する、
ウエハの接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハの接合方法及び接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CISやTSV(through−silicon via:シリコン貫通電極)のウエハ接合において、プラズマによる親水化処理接合が使われてきた。特に近年では、CISやTSVにおいて、金属電極と絶縁層とのハイブリッドボンディングが要望され、RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)プラズマによる大気中親水化接合が適用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、RIE処理を用いた場合、パーティクルが発生し、水洗浄によるパーティクルの除去工程が必要であった。また、一定の接合強度を確保するために、水分子を含んだ大気中での接合が必須となり、量産効率上の課題があった。例えば、従来では、プラズマ処理のみ真空中で行われるため、大気→真空→大気と処理され、スループットを向上させるためにはプラズマと洗浄装置が各2台以上必要となり、効率の悪い装置構成となる問題があった。その例を図1(a)に示す。
また、接合される面上に複数種の材料が露出するハイブリッドボンディングでは、接合面が汚染されたり、十分な接合強度が得られないなどといった問題があった。
【0004】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に着目してなされたものである。すなわち、本発明では、水洗浄によるパーティクルの除去工程を不要とし、接合処理を真空中で実施することで、スループットの向上と装置の簡素化が図れるウエハの接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、ウエハの接合方法であって、接合されるウエハの接合予定面の少なくとも一部を親水化させる親水化処理と、親水化処理の後にウエハを接合する接合処理とを含み、親水化処理が、ラジカルプラズマ処理、原子ビーム又はイオンビーム照射のいずれかによるものである、ウエハの接合方法が提供される。
【0006】
本発明の一態様によれば、親水化処理の後、かつ接合処理の前に、洗浄処理を行わない。
【0007】
本発明の一態様によれば、親水化処理の後、かつ接合処理の前に、水に暴露する処理を行わない。
【0008】
本発明の一態様によれば、接合処理が、真空中で行われる。
【0009】
本発明の一態様によれば、親水化処理が、ラジカルプラズマ処理である。
【0010】
本発明によれば、ウエハの接合方法であって、ウエハ表面の少なくとも一部に絶縁物質を堆積させる堆積処理と、堆積した絶縁物質を研磨する研磨処理と、接合されるウエハの接合予定面の少なくとも一部を親水化させる親水化処理と、親水化処理の後にウエハを接合する接合処理とを含み、親水化処理が、ラジカルプラズマ処理によるものである、ウエハの接合方法が提供される。
【0011】
本発明の一態様によれば、親水化処理の後、かつ接合処理の前に、洗浄処理を行わない。
【0012】
本発明の一態様によれば、親水化処理の後、かつ接合処理の前に、水に暴露する処理を行わない。
【0013】
本発明の一態様によれば、ラジカルプラズマ処理により、ひとつのプラズマ処理装置でウエハ表面と裏面の双方に対して行われ、反転機能を不要とする。
【0014】
本発明の一態様によれば、ラジカルプラズマ処理が、水素を含むガスで行われる。
【0015】
本発明の一態様によれば、ラジカルプラズマ処理が、HOまたはOHを含むガスで行われる。
【0016】
本発明の一態様によれば、ラジカルプラズマ処理時に加熱する。
【0017】
本発明の一態様によれば、RIE処理後にラジカル処理を行う場合において、処理面上部に常時プラズマを発生させ、処理面にバイアスをかけることでRIE処理を行い、処理面のバイアスをオフして上部プラズマからのダウンフローでラジカル処理を連続して行う。
【0018】
本発明の一態様によれば、上記RIE処理とラジカル処理において、少なくとも同じガスが含まれる。
【0019】
本発明によれば、ウエハの接合装置であって、接合されるウエハの接合予定面の少なくとも一部を親水化させるための親水化処理部と、親水化処理の後にウエハを接合するための接合処理部とを含み、親水化処理が、ラジカルプラズマ処理、原子ビーム又はイオンビーム照射のいずれかによるものである、ウエハの接合装置が提供される。
【0020】
本発明によれば、ウエハの接合装置であって、ウエハ表面の少なくとも一部に絶縁物質を堆積させるための堆積処理部と、堆積した絶縁物質を研磨するための研磨処理部と、接合されるウエハの接合予定面の少なくとも一部を親水化させるための親水化処理部と、親水化処理の後にウエハを接合するための接合処理部とを含み、親水化処理が、ラジカルプラズマ処理によるものである、ウエハの接合装置が提供される。
【0021】
本発明の一態様によれば、接合処理が、真空中で行われる。
【0022】
本発明の一態様によれば、親水化処理が、ラジカルプラズマ処理である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、スループットの向上と装置の簡素化が図れるウエハの接合方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ウエハ接合に係る装置の構成を説明する概略的な図である。
図2】親水化処理の例を説明する概略的な図である。
図3】接合試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明がこれらの具体的な実施形態に限定されないことは自明である。
【0026】
(実施形態1)
本実施形態に係るウエハの接合方法は、接合されるウエハの接合予定面の少なくとも一部を親水化させる親水化処理と、親水化処理の後にウエハを接合する接合処理とを含み、親水化処理が、ラジカルプラズマ処理、原子ビーム又はイオンビーム照射のいずれかによるものである、ウエハの接合方法である。
【0027】
[親水化処理]
本実施形態のウエハ接合方法においては、接合されるウエハの接合予定面の少なくとも一部を親水化させる親水化処理を含む。
接合されるウエハの接合予定面に施す親水化処理が、ラジカルプラズマ処理、原子ビーム又はイオンビーム照射のいずれかによるものであるため、ウエハの接合強度を十分に満足することができる。
【0028】
親水化処理の例として、Ar(アルゴン)の照射と同時に、Si(シリコン)粒子を照射するSiスパッタを併用するAr原子ビーム処理方法が好ましく用いられる。この処理では、図2(a)のように、ウエハの接合予定面上に原子ビーム照射を行い、必要であれば、処理された接合予定面を水分子を含む雰囲気中に晒すことで、接合予定面にOH基を存在させる。
【0029】
また、親水化処理の例として、シーケンシャルプラズマ処理方法が挙げられる。図2(b)は、ラジカルプラズマ処理の一例である、酸素‐窒素のシーケンシャルプラズマ処理方法を説明する図である。この処理では、窒素ラジカルを利用することで、ウエハ接合予定面上に、接合強度に寄与する十分なOH基が残存する。
【0030】
[接合処理]
本実施形態のウエハ接合方法においては、親水化処理の後にウエハを接合する接合処理を含む。
【0031】
従来行われてきたウエハの接合では、例えば、2J/mより大きい接合強度を得るためには、大気中で接合を行う必要があった。すなわち、従来の技術では、水分子が存在する大気中で接合を行うことで、一定の接合強度を得るような試みがなされていた。
【0032】
従来の技術では、親水化処理をしたウエハ接合予定面であっても、真空中で接合した場合の接合強度が弱いという問題があった。
これは、ウエハの接合予定面を真空中に晒すことで、親水化処理された接合予定面であっても、その面上に存在する水分子が飛んでしまい、接合処理時に、接合に寄与する十分なOH基がウエハの接合予定面上に残存していないことが要因である。
【0033】
本実施形態のウエハ接合方法では、親水化処理の後、かつ接合処理の前に、洗浄処理を行わないことが好ましい。
ラジカルプラズマ処理、原子ビーム又はイオンビーム照射のいずれかにより親水化処理をするため、パーティクルがウエハの接合予定面上に付着することを抑制できる。そのため、親水化処理の後に洗浄処理を必要とせず、スループットを向上させることができる。従来のようなRIE(reactive ion etching:反応性イオンエッチング)を利用すると、雰囲気中のパーティクルがウエハの接合予定面に付着していたが、これはRIEの特性上避けられない問題であった。
【0034】
本実施形態のウエハ接合方法では、親水化処理の後、かつ接合処理の前に、水に暴露する処理を行わないことが好ましい。
【0035】
従来の技術では、接合予定面上に水分子を分布させることで、接合に寄与するOH基を確保することが行われていたが、そのためには、ウエハの接合用予定面を水や水蒸気などに晒す工程が必要であった。この工程は大気中で行うため、親水化処理に続いてこの工程を実施することで、ウエハの環境を真空から大気へ変える必要があった。しかし、本実施形態のウエハ接合方法では、ラジカルプラズマ処理、原子ビーム又はイオンビーム照射のいずれかで親水化処理を行うため、ウエハの接合強度を十分に満足することができるOH基を確保することができる。
【0036】
親水化処理がラジカルプラズマ処理である場合、真空中においても、ウエハ接合予定面上に生成されたOH基が十分な量残存するため、ウエハの接合強度を十分に満足することができるOH基を確保することができる。
また、親水化処理が原子ビーム照射又はイオンビーム照射である場合、Ar(アルゴン)の照射と同時に、Si(シリコン)粒子を照射することで、OH基とつながるSi原子を界面に多くドープすることができ、十分な親水化能力を与えることができる。
【0037】
本実施形態のウエハ接合方法では、接合処理が、真空中で行われることが好ましい。
本実施形態のウエハ接合方法では、ラジカルプラズマ処理、原子ビーム又はイオンビーム照射のいずれかで親水化処理を行うため、ウエハの接合予定面に、接合に寄与する十分なOH基が存在するため、真空で接合処理を行うことにより、十分な接合強度を得ることができる。
【0038】
従来の技術のように、大気中でのウエハの接合を要件としないため、親水化処理から接合処理までを、同様の雰囲気中で行うことができる。すなわち、親水化処理から接合処理までを5−9Pa〜10−9Paの真空度の真空雰囲気中で行うことができる。
【0039】
接合処理が、真空中で行われることにより、従来技術に係るものより装置の構成を簡素化することができ、またスループットも向上させることができる。
【0040】
具体的には、真空中での接合においても接合強度を確保し、パーティクルを発生しない、表面活性化処理の採用により、真空処理→真空接合と装置の簡素化とスループットの向上が達成できる。
また、真空接合により、空気の巻き込みによるボイドや残留水分による加熱時のマイクロボイドを低減できる利点も得られる。
【0041】
本実施形態のウエハ接合方法では、親水化処理が、ラジカルプラズマ処理であることが好ましい。さらに好ましくは、親水化処理が、ICPプラズマ処理である。
【0042】
ウエハの接合において従来利用されてきたイオンエッチングでは、ウエハの接合予定面にOH基が生成されても、強いエッチング力でOH基が飛んでしまうため、一定以上にOH基が生成されなかった。
しかし、本実施形態に係るウエハの接合方法では、反応性の高いラジカル処理を採用することで、親水化処理能力、すなわちOH基を作る能力が高く、後から水を付加する必要がない。大気中の接合では、接合界面上に存在する水が介在してOH基を形成していた。
【0043】
本実施形態に係るウエハの接合方法に採用できる親水化処理としては、ICPプラズマ、マイクロウェーブプラズマ、トラップ板を通してラジカルのみダウンフローするプラズマ装置、等が好ましく用いられる。
【0044】
(実施形態2)
本実施形態に係るウエハの接合方法は、ウエハの接合方法であって、ウエハ表面の少なくとも一部に絶縁物質を堆積させる堆積処理と、堆積した絶縁物質を研磨する研磨処理と、接合されるウエハの接合予定面の少なくとも一部を親水化させる親水化処理と、親水化処理の後にウエハを接合する接合処理とを含み、親水化処理が、ラジカルプラズマ処理によるものである、ウエハの接合方法である。
実施形態2に係る発明は、基本的な構成は上記実施形態1と同様である。
【0045】
ウエハ表面の少なくとも一部に絶縁物質を堆積させる堆積処理では、CVD(chemical vapor deposition:化学気相成長)が好ましく用いられる。
堆積させる絶縁物質は、SiO、SiN等の、酸化膜、窒化膜、セラミックス等である。
【0046】
接合されるウエハ表面、好ましくは、ウエハの接合予定面上に絶縁物質を堆積させた後、少なくとも接合予定面を研磨する研磨処理が行われる。研磨処理では、CMP(chemical mechanical compound:化学機械研磨)が好ましく用いられる。
【0047】
本実施形態のウエハ接合方法では、堆積処理と研磨処理に次いで、接合されるウエハの接合予定面の少なくとも一部を親水化させる親水化処理と、親水化処理の後にウエハを接合する接合処理とを含む工程を経るが、親水化処理が、ラジカルプラズマ処理によるものである。
【0048】
従来技術のように、研磨処理が施された絶縁物質層をRIEの強いエッチング力で処理すると、堆積された絶縁物質の粒子が取れ、パーティクルとなってウエハ上に残るという問題があった。このような状態で接合すると、数mmから数10mmのボイドとなるため、従来は水洗浄を行ってパーティクルを除去する必要があった。
【0049】
しかし、本実施形態に係るウエハの接合方法では、ラジカル処理(ICPプラズマ、マイクロウェーブプラズマ、トラップ板を通してラジカルのみダウンフローするプラズマ装置)により、弱いエッチング力で、かつ、反応性の高いラジカル処理を施すことで、親水化処理能力が高く、パーティクルを発生させない処理が可能となる。
【0050】
上記の実施形態に係るウエハの接合方法には、以下の利点がある。
(1)ウエハの十分な接合強度を得ることができる。
従来用いられていたRIEプラズマでは、十分な接合強度を得るためのOH基をウエハの接合予定面に存在させることが難しく真空中で接合した場合に接合強度が得られないという問題があった。そのため、一定の接合強度を得る目的で、大気中の水分子を確保するために大気中での接合が行われていた。
しかし、上記の実施形態に係るウエハの接合方法では、親水化処理がラジカルプラズマ処理である場合、真空中においても、ウエハ接合予定面上に生成されたOH基が十分な量残存するため、ウエハの接合強度を十分に満足することができるOH基を確保することができる。
【0051】
(2)ウエハの接合予定面上にパーティクルが付着することを抑制できる。
上記の実施形態に係るウエハの接合方法では、水洗浄によるパーティクルの除去工程を不要とするため、スループットを向上させることができる。
【0052】
(3)異種材料で構成されるハイブリッドボンディングにも好ましく用いられる。
ハイブリッドボンディングの場合、例えば接合面に露出している樹脂材料等から発生するパーティクルによって接合面が汚染されることがあり、十分な接合強度が得られないなどといった問題があった。従来のRIE処理のためには、ウエハに電界バイアスがかかっており、パーティクルをウエハの接合予定面に引き寄せてしまうこともその要因であった。
しかしながら、上記の実施形態に係るウエハの接合方法では、このような問題は解消される。
【0053】
また、上記の実施形態に係るウエハの接合方法では、装置の構成を図1(b)(c)のように簡素化することができる。図1(b)では、FAB(Fast Atom Beam)処理と接合処理が同一のチャンバー内で行われる態様を示している。図1(c)では、プラズマ処理と接合処理とが連通される同様の雰囲気のチャンバー内で行われる態様を示している。いずれの場合も、大気と真空とを経る従来のタクトの長い処理とは異なり、スループットは格段に向上する。
【0054】
例えば、上記の実施形態に係るウエハの接合方法を採用して、水洗浄を工程に含まず、真空ちゅで接合した場合には、6.8分の処理時間を4.5分に短縮することができる。
さらに、上記の実施形態に係るウエハの接合方法の変形例として、接合処理の装置を2台で構成することで、処理時間は3分まで短縮される。
【0055】
上記の実施形態に係るウエハの接合方法では、ウエハの上下面のどちらでも親水化処理を行うことができる。そのため、ウエハの反転処理を省略することができ、スループットが向上し、装置構成を簡素化することができる。具体的には、ラジカルプラズマ処理を用いることにより、プラズマ処理に係る粒子が気体の流れに沿って移動するため、ウエハの裏面の処理も可能となる。
【0056】
従来の技術では、親水化処理を施すことができる対象が、上向きにしたウエハの表面のみに限定されていたため、親水化処理の後、ウエハの接合処理時までに、接合されるウエハのどちらか一方を反転させる必要があり、スループットに影響を及ぼしていた。しかし、上記の実施形態に係るウエハの接合方法では、このような問題は解消される。
【0057】
上記の実施形態に係るウエハの接合方法では、接合時に、真空チャンバー内で直接赤外透過認識等によりウエハの相対位置を調整(アライメント)することで、±0.2μmでの高精度アライメントを実現できる。大気中接合の場合、ウエハを撓ませて接合される試みがあるが、ウエハを撓ませたことによる歪みによってアライメント精度が下がることは避けられなかった。
【0058】
また従来技術では、大気中でのアライメント方式では、真空中での接合が必要なプロセスでは搬送ジグによるウエハの移送が必要であり、真空チャンバー内でのウエハのリリースによる精度悪化が問題であった。しかし、上記の実施形態に係るウエハの接合方法では、このような問題は解消される。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明の実施例を示す。
【0060】
(実施例1)
表1および2に、Si−SiOウエハ及びSiO−SiOウエハの接合試験の結果を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1より、従来のRIE式Nプラズマでは、大気中では十分な強度が出たが、真空中接合では強度が低下することがわかる。これはイオンが加速衝突するため、既にできたOH基を飛ばしてしまい、一定以上のOH基ができないからであると考えられる。そのため水分子を介在させて張り合わせることで接合途上でOH基が生成され強度アップする。しかし、真空中では水分子が張り合わせ面に介在しないため強度が低下する。
【0063】
これに対して、最終ラジカルを使用するシーケンシャルプラズマやラジカル処理のみを用いた処理では、真空中でもバルク破壊強度を達成した。これはラジカル処理では生成したOH基を飛ばす力はなく反応性が高いためOH基が全面に多く生成されるためである。
また、SiにおいてはSiOより界面の酸素原子が少ないため最初に酸素プラズマ処理していることが効果的である。
ラジカルのみを使用したICPプラズマによる処理においても真空中で十分な接合強度を得ることができたことがわかる。
【0064】
【表2】
【0065】
表2の結果によれば、Si−SiOのみならず、SiO−SiOの接合においても同様に真空中接合強度を得ることができた。また、SiO−SiOにおいてはCu電極があることを想定してあえてOプラズマを使用しない状態でも強度を確保した。
【0066】
ラジカルを使用することでパーティクルを抑え、真空中での接合強度を確保することができた。
シーケンシャルプラズマでのラジカル源としてはマイクロウェーブや高周波プラズマをトラップ板を通してダウンフローする方法を用いた。ICPプラズマを使用すると、1000W、1000ccとハイパワーでラジカルプラズマの量も確保できるため特に好適であった。
【0067】
表1、2の実施例では、ラジカルプラズマ処理において反応ガスとして窒素を含むガスを主体としたが、水素を含むガスを使用することもできる。そうすることで接合界面に酸素が存在する限り、残るHを供給すればOH基となり、より水分を含まない真空下でも親水化処理が可能となる。例えばHガスやHガスを使用すればより効果的であった。
【0068】
また、OガスとHガスを混合させて処理しても効果的であった。接合界面に酸素が少ない場合などにも効果があると考えられる。
【0069】
また、ラジカルプラズマ処理において反応ガスとしてHOまたはOHを含むガスを使用することもできる。HOまたはOHを含むガスをプラズマ化することで、HOやH、OHとしてプラズマ化されるので、より水分を含まない真空下でも親水化処理が可能となる。例えば反応ガスとして水ガスを使用するとより効果的であった。また、水ガスにおいては前段のイオンエッチング処理として反応ガスに使用することでも効果があった。
【0070】
また、シーケンシャルプラズマにおいては前段処理でバイアスをかけてイオンエッチングすることで物理的な界面の不純物の除去や親水化処理のための酸素を供給することができるので、よりラジカル処理が有効に利くが、ラジカル処理のみでは常温では反応が薄い場合がある。その場合、被接合物を加熱することで界面をラジカルと反応しやすくすることが効果的である。例えば150℃〜300℃の加熱を併用するとより効果的であった。
【0071】
また、シーケンシャル処理において前段のバイアスをかけてイオンエッチングする工程とラジカル処理のみを行う後段処理において、処理面上部においてプラズマを発生させ、前段で処理面にバイアスをかけて上部プラズマを引き込んでイオンエッチングし、後段のラジカルのみの処理ではバイアスをオフして上部から処理面へのガスの流れのみで処理すればラジカルのみがあたることになり、RIE処理とラジカル処理を連続して短時間で行うことができ好適である。
【0072】
また、同じガスを使用することでより短時間で連続処理することができる。例えば酸素→窒素とガスを変えずに同じ窒素でRIE処理後ラジカル処理することもできる。特に酸化膜や窒化膜においては、Siのように事前に酸素を打ち込む必要もなく好適であった。また、先に酸素でプラズマをたてRIE処理後ラジカル処理時に窒素やHガスを混合してラジカル処理することもできる。この場合においても短時間で連続処理することが可能であった。
【0073】
実験例として酸素によるRIE処理(50W、15秒)後、H混合ガスによるラジカル処理(3000W 45秒)を行ったものが、Si、酸化膜、窒化膜、などにおいて良好な結果が出た。最初に弱くRIE処理してからラジカル処理することで酸素が足りないSiや窒化膜に対して酸素を供給し、酸化膜においてもコンタミネーションが除去できて、かつ、パーティクルが出ない状態を確保することができた。
【0074】
(実施例2)
図1に、接合試験の結果を示す。これによれば、RIEでエッチングした場合、接合面にパーティクルが存在し、その周辺で未接合箇所が生じることがわかる。
【0075】
また、表3は、ウエハ表面のパーティクルの数を示す。これによれば、ウエハ表面のパーティクルの数が抑制されていることがわかる。
【0076】
【表3】
【0077】
一般的に、0.2μm以下のパーティクルは、大きなボイドとはならず、数十個レベルでは、問題とならない。通常、CVD処理が施されたSiOをRIE処理すると、数μm程度のパーティクルが数十個発生し、ボイドの問題が生じる。
図1
図2
図3