(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6545167
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】ガスレーザ装置及びコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01S 3/097 20060101AFI20190705BHJP
H01S 3/0971 20060101ALI20190705BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20190705BHJP
H01G 2/08 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
H01S3/097 A
H01S3/0971
H01G4/32 511L
H01G4/32 510
H01G2/08 A
【請求項の数】16
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2016-529601(P2016-529601)
(86)(22)【出願日】2015年6月23日
(86)【国際出願番号】JP2015068058
(87)【国際公開番号】WO2015199079
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2018年5月10日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2014/067045
(32)【優先日】2014年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 輝
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 弘司
(72)【発明者】
【氏名】對馬 弘朗
(72)【発明者】
【氏名】大久保 智幸
(72)【発明者】
【氏名】梅田 博
(72)【発明者】
【氏名】勝海 久和
【審査官】
廣崎 拓登
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−135189(JP,A)
【文献】
特開昭64−031484(JP,A)
【文献】
米国特許第04555746(US,A)
【文献】
特開平10−261543(JP,A)
【文献】
特開平11−288835(JP,A)
【文献】
特開平08−213278(JP,A)
【文献】
特開平02−146716(JP,A)
【文献】
特開平01−115114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00− 3/30
H01G 4/00− 4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にレーザガスを含むレーザチャンバと、
前記レーザチャンバ内に配置された第1放電電極と、
前記レーザチャンバ内で前記第1放電電極に対向して配置された第2放電電極と、
ポリイミドを誘電体として前記第1放電電極と前記第2放電電極との間に電力を供給するコンデンサと、
を備えるガスレーザ装置であって、
前記コンデンサは、前記誘電体を構成するポリイミド膜と、互いの一部が前記ポリイミド膜を介して対向するように前記ポリイミド膜上に配置された一対の電極膜とによって構成されるコンデンサ層を含み、
前記一対の電極膜の表面は、電気絶縁層によって覆われており、
前記コンデンサは、複数の前記コンデンサ層が積層されることによって構成されており、
前記コンデンサは、積層された複数の前記コンデンサ層同士の間に配置される複数のヒートシンク層を更に含み、
複数の前記電気絶縁層のそれぞれは、第1絶縁部材と、前記第1絶縁部材よりも絶縁破壊電圧が大きい第2絶縁部材と、を少なくとも含み、
前記第2絶縁部材は、前記一対の電極膜の内の1つの電極膜及び前記ポリイミド膜に接触して設けられ、
前記第1絶縁部材は、前記第2絶縁部材及び前記複数のヒートシンク層の内の1つのヒートシンク層に接触して設けられている
ガスレーザ装置。
【請求項2】
内部にレーザガスを含むレーザチャンバと、
前記レーザチャンバ内に配置された第1放電電極と、
前記レーザチャンバ内で前記第1放電電極に対向して配置された第2放電電極と、
ポリイミドを誘電体として前記第1放電電極と前記第2放電電極との間に電力を供給するコンデンサと、
を備えるガスレーザ装置であって、
前記コンデンサは、前記誘電体を構成するポリイミド膜と、互いの一部が前記ポリイミド膜を介して対向するように前記ポリイミド膜上に配置された一対の電極膜とによって構成されるコンデンサ層を含み、
前記一対の電極膜の表面は、電気絶縁層によって覆われており、
前記コンデンサは、複数の前記コンデンサ層が積層されることによって構成されており、
前記コンデンサは、積層された複数の前記コンデンサ層同士の間に配置される複数のヒートシンク層を更に含み、
複数の前記電気絶縁層のそれぞれは、弾性体の第1絶縁部材と、非弾性体の第2絶縁部材と、を少なくとも含み、
前記第2絶縁部材は、前記一対の電極膜の内の1つの電極膜及び前記ポリイミド膜に接触して設けられ、
前記第1絶縁部材は、前記第2絶縁部材及び前記複数のヒートシンク層の内の1つのヒートシンク層に接触して設けられている
ガスレーザ装置。
【請求項3】
前記複数のヒートシンク層は、アルミナ、窒化アルミニウム、ダイヤモンド、及びダイヤモンドライクカーボンのうちの少なくとも1つを用いて形成されている
請求項1又は請求項2に記載のガスレーザ装置。
【請求項4】
前記一対の電極膜は、第1電極膜及び第2電極膜を含み、
前記第1電極膜及び前記第2電極膜のそれぞれは、前記ポリイミド膜の面内方向において所定方向に間隔を開けて複数の電極領域に分割されている
請求項1又は請求項2に記載のガスレーザ装置。
【請求項5】
前記一対の電極膜は、前記第1電極膜における前記複数の電極領域のそれぞれの一部と、前記第2電極膜における前記複数の電極領域のそれぞれの一部とが、前記ポリイミド膜を介して対向するように形成されている
請求項4に記載のガスレーザ装置。
【請求項6】
前記第1絶縁部材と前記第2絶縁部材とは、絶縁破壊電圧が互いに異なる
請求項2に記載のガスレーザ装置。
【請求項7】
前記第1絶縁部材は、シリコーン樹脂を用いて形成されており、
前記第2絶縁部材は、ポリイミド樹脂を用いて形成されている
請求項1又は請求項2に記載のガスレーザ装置。
【請求項8】
複数の前記電気絶縁層のそれぞれは、弾性体の絶縁部材を少なくとも含む
請求項1に記載のガスレーザ装置。
【請求項9】
前記一対の電極膜は、第1電極膜及び第2電極膜を含み、
前記第1電極膜及び前記第2電極膜のそれぞれは、前記ポリイミド膜の面内方向において所定方向に間隔を開けて複数の電極領域に分割されており、
前記複数の電極領域のそれぞれは、長方形の形状を有する
請求項1又は請求項2に記載のガスレーザ装置。
【請求項10】
前記一対の電極膜は、第1電極膜及び第2電極膜を含み、
前記第1電極膜は、前記ポリイミド膜の面内方向において所定方向に間隔を開けて少なくとも3つの電極領域を含む複数の電極領域に分割されており、
前記複数の電極領域の内の両端に位置する2つの電極領域のそれぞれの前記所定方向における幅が、前記複数の電極領域の内の前記2つの電極領域の間に位置する電極領域の前記所定方向における幅より大きい
請求項1又は請求項2に記載のガスレーザ装置。
【請求項11】
前記一対の電極膜は、第1電極膜及び第2電極膜を含み、
前記第1電極膜及び前記第2電極膜のそれぞれは、前記ポリイミド膜の面内方向において所定方向に略同一の間隔を開けて複数の電極領域に分割されている
請求項1又は請求項2に記載のガスレーザ装置。
【請求項12】
前記一対の電極膜は、第1電極膜及び第2電極膜を含み、
前記第1電極膜及び前記第2電極膜のそれぞれは、前記ポリイミド膜の面内方向において所定方向に間隔を開けて複数の電極領域に分割されており、
前記間隔は、前記ポリイミド膜の膜厚より大きい
請求項1又は請求項2に記載のガスレーザ装置。
【請求項13】
前記コンデンサは、複数の電極プレートを更に含み、
前記複数のコンデンサ層、前記複数の電気絶縁層、及び前記複数のヒートシンク層は、前記複数の電極プレートに挟持されている
請求項1又は請求項2に記載のガスレーザ装置。
【請求項14】
前記コンデンサは、前記複数のコンデンサ層の内の両端に位置する2つのコンデンサ層の外側に位置する2つの外側ヒートシンク層を更に含む
請求項1又は請求項2に記載のガスレーザ装置。
【請求項15】
前記第2絶縁部材の前記第1絶縁部材側の面は略平坦である
請求項1又は請求項2に記載のガスレーザ装置。
【請求項16】
前記一対の電極膜は、第1電極膜及び第2電極膜を含み、
前記複数のコンデンサ層は、第1のコンデンサ層と、前記第1のコンデンサ層の隣に位置する第2のコンデンサ層と、前記第2のコンデンサ層の隣に位置する第3のコンデンサ層と、を含み、
前記第1のコンデンサ層に含まれる前記第1の電極膜と、前記第2のコンデンサ層に含まれる前記第1の電極膜とが、前記複数のヒートシンク層の内の1つのヒートシンク層を介して向かい合うように配置されており、
前記第2のコンデンサ層に含まれる前記第2の電極膜と、前記第3のコンデンサ層に含まれる前記第2の電極膜とが、前記複数のヒートシンク層の内の他の1つのヒートシンク層を介して向かい合うように配置されている
請求項1又は請求項2に記載のガスレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスレーザ装置及びコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、半導体露光装置においては解像力の向上が要請されている。半導体露光装置を以下、単に「露光装置」という。このため露光用光源から出力される光の短波長化が進められている。露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられている。現在、露光用のガスレーザ装置としては、波長248nmの紫外線を出力するKrFエキシマレーザ装置ならびに、波長193nmの紫外線を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられている。
【0003】
現在の露光技術としては、露光装置側の投影レンズとウエハ間の間隙を液体で満たして、当該間隙の屈折率を変えることによって、露光用光源の見かけの波長を短波長化する液浸露光が実用化されている。ArFエキシマレーザ装置を露光用光源として用いて液浸露光が行われた場合は、ウエハには水中における波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光という。ArF液浸露光はArF液浸リソグラフィーとも呼ばれる。
【0004】
KrF、ArFエキシマレーザ装置の自然発振におけるスペクトル線幅は約350〜400pmと広いため、露光装置側の投影レンズによってウエハ上に縮小投影されるレーザ光(紫外線光)の色収差が発生して解像力が低下する。そこで色収差が無視できる程度となるまでガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を狭帯域化する必要がある。スペクトル線幅はスペクトル幅とも呼ばれる。このためガスレーザ装置のレーザ共振器内には狭帯域化素子を有する狭帯域化モジュール(Line Narrowing Module:LNM)が設けられ、この狭帯域化モジュールによりスペクトル幅の狭帯域化が実現されている。なお、狭帯域化素子はエタロンやグレーティング等であってもよい。このようにスペクトル幅が狭帯域化されたレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3979863号
【特許文献2】特開2009−99902号
【特許文献3】米国特許6240112号
【特許文献4】特開2009−135189号
【特許文献5】特開昭64−31484号
【特許文献6】特開平10−261543号
【特許文献7】特開平11−288835号
【特許文献8】特開平8−213278号
【特許文献9】特開平2−146716号
【特許文献10】特開平1−115114号
【0006】
本開示の1つの観点に係るガスレーザ装置は、内部にレーザガスを含むレーザチャンバと、前記レーザチャンバ内に配置された第1放電電極と、前記レーザチャンバ内で前記第1放電電極に対向して配置された第2放電電極と、ポリイミドを誘電体として前記第1放電電極と前記第2放電電極との間に電力を供給するコンデンサと、を備え、
前記コンデンサは、前記誘電体を構成するポリイミド膜と、互いの一部が前記ポリイミド膜を介して対向するように前記ポリイミド膜上に配置された一対の電極膜とによって構成されるコンデンサ層を含み、前記一対の電極膜の表面は、電気絶縁層によって覆われており、前記コンデンサは、複数の前記コンデンサ層が積層されることによって構成されており、前記コンデンサは、積層された複数の前記コンデンサ層同士の間に配置される複数のヒートシンク層を更に含み、複数の前記電気絶縁層のそれぞれは、第1絶縁部材と、前記第1絶縁部材よりも絶縁破壊電圧が大きい第2絶縁部材と、を少なくとも含み、前記第2絶縁部材は、前記一対の電極膜の内の1つの電極膜及び前記ポリイミド膜に接触して設けられ、前記第1絶縁部材は、前記第2絶縁部材及び前記複数のヒートシンク層の内の1つのヒートシンク層に接触して設けられていてもよい。
【0007】
本開示の
他の1つの観点に係る
ガスレーザ装置は、
内部にレーザガスを含むレーザチャンバと、前記レーザチャンバ内に配置された第1放電電極と、前記レーザチャンバ内で前記第1放電電極に対向して配置された第2放電電極と、ポリイミドを誘電体として前記第1放電電極と前記第2放電電極との間に電力を供給するコンデンサと、を備え、前記コンデンサは、前記誘電体を構成するポリイミド膜と、互いの一部が前記ポリイミド膜を介して対向するように前記ポリイミド膜上に配置された一対の電極膜とによって構成されるコンデンサ層を含み、前記一対の電極膜の表面は、電気絶縁層によって覆われており、前記コンデンサは、複数の前記コンデンサ層が積層されることによって構成されており、前記コンデンサは、積層された複数の前記コンデンサ層同士の間に配置される複数のヒートシンク層を更に含み、複数の前記電気絶縁層のそれぞれは、弾性体の第1絶縁部材と、非弾性体の第2絶縁部材と、を少なくとも含み、前記第2絶縁部材は、前記一対の電極膜の内の1つの電極膜及び前記ポリイミド膜に接触して設けられ、前記第1絶縁部材は、前記第2絶縁部材及び前記複数のヒートシンク層の内の1つのヒートシンク層に接触して設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、ガスレーザ装置の構成を概略的に示す。
【
図2】
図2は、
図1に示されたレーザチャンバのZ軸方向から視た断面図を示す。
【
図3】
図3は、
図1及び
図2に示されたピーキングコンデンサの構成を説明するための図を示す。
【
図4】
図4は、ポリイミドを誘電体とするコンデンサと、セラミックスを誘電体とするコンデンサとの諸特性を比較した図を示す。
【
図5A】
図5Aは、ポリイミドコンデンサの基本構造を説明するための図であって、側面図を示す。
【
図5B】
図5Bは、ポリイミドコンデンサの基本構造を説明するための図であって、上面図を示す。
【
図5C】
図5Cは、ポリイミドコンデンサの基本構造を説明するための図であって、下面図を示す。
【
図5D】
図5Dは、ポリイミドコンデンサの基本構造を説明するための図であって、等価回路図を示す。
【
図6A】
図6Aは、
図5A〜
図5Dに示された基本構造のコンデンサ層を多層化して構成されたポリイミドコンデンサを説明するための図であって、上面図を示す。
【
図6B】
図6Bは、
図5A〜
図5Dに示された基本構造のコンデンサ層を多層化して構成されたポリイミドコンデンサを説明するための図であって、
図6Aに示されたB−B線における断面図を示す。
【
図6C】
図6Cは、
図5A〜
図5Dに示された基本構造のコンデンサ層を多層化して構成されたポリイミドコンデンサを説明するための図であって、
図6Bに示されたC−C線における断面図を示す。
【
図6D】
図6Dは、
図5A〜
図5Dに示された基本構造のコンデンサ層を多層化して構成されたポリイミドコンデンサを説明するための図であって、
図6Bに示されたD−D線における断面図を示す。
【
図6E】
図6Eは、
図5A〜
図5Dに示された基本構造のコンデンサ層を多層化して構成されたポリイミドコンデンサを説明するための図であって、
図6Bに示されたE−E線における断面図を示す。
【
図7A】
図7Aは、充電コンデンサに適用されたポリイミドコンデンサの基本構造を説明するための図を示す。
【
図7B】
図7Bは、
図7Aに示された基本構造のコンデンサ層を多層化して構成されたポリイミドコンデンサを説明するための図を示す。
【
図8】
図8は、ポリイミドコンデンサを含むガスレーザ装置の構成を説明するための図を示す。
【
図9】
図9は、
図8に示されたレーザチャンバのZ軸方向から視た断面図を示す。
【
図10】
図6A〜
図6Eに示されたポリイミドコンデンサに含まれる1つのコンデンサ層の一部を拡大した図を示す。
【
図11】
図11は、ポリイミドコンデンサの変形例を説明するための図を示す。
【
図12】
図12は、
図11に示されたポリイミドコンデンサに含まれる1つのコンデンサ層の一部を拡大した図を示す。
【
図13】
図13は、ガスレーザ装置に用いられる充放電回路の回路構成を説明するための図を示す。
【0009】
〜内容〜
1.概要
2.用語の説明
3.ガスレーザ装置
3.1 構成
3.2 動作
3.3 課題
4.ポリイミドコンデンサ
4.1 特性
4.2 基本構造
4.3 多層化されたコンデンサの構造
5.充電コンデンサに適用されたポリイミドコンデンサ
6.ポリイミドコンデンサを含むガスレーザ装置
7.ポリイミドコンデンサの変形例
8.その他
8.1 ガスレーザ装置に用いられる充放電回路
8.2 その他の変形例
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
[1.概要]
本開示は、以下の実施形態を少なくとも開示し得る。
【0012】
ガスレーザ装置1は、内部にレーザガスを含むレーザチャンバ10と、レーザチャンバ10内に配置された第1放電電極11aと、レーザチャンバ10内で第1放電電極11aに対向して配置された第2放電電極11bと、ポリイミドを誘電体として第1放電電極11aと第2放電電極11bとの間に電力を供給するポリイミドコンデンサ70と、を備えてもよい。
このような構成により、ガスレーザ装置1は、コンデンサの性能を安定化させ、レーザ光の性能を安定化させ得る。
【0013】
[2.用語の説明]
「光路軸」は、レーザ光の進行方向に沿ってレーザ光のビーム断面の中心を通る軸である。
「光路」は、レーザ光が通る経路である。光路には、光路軸が含まれてもよい。
【0014】
[3.ガスレーザ装置]
[3.1 構成]
図1〜
図3を用いて、ガスレーザ装置1の構成について説明する。
図1は、ガスレーザ装置1の構成を概略的に示す。
図2は、
図1に示されたレーザチャンバ10のZ軸方向から視た断面図を示す。
図1では、ガスレーザ装置1から出力されるレーザ光の進行方向をZ軸方向とする。すなわち、レーザチャンバ10から露光装置110へパルスレーザ光が出力される方向をZ軸方向とする。X軸及びY軸は、Z軸に直交し、且つ、互いに直交する軸とする。以降の図面でも
図1の座標軸と同様とする。
【0015】
ガスレーザ装置1は、放電励起式のガスレーザ装置であってもよい。ガスレーザ装置1は、エキシマレーザ装置であってもよい。レーザ媒質であるレーザガスは、レアガスとしてアルゴン若しくはクリプトン、ハロゲンガスとしてフッ素、バッファガスとしてネオン若しくはヘリウム、又はこれらの混合ガスを用いて構成されてもよい。
【0016】
ガスレーザ装置1は、レーザチャンバ10と、ホルダ50と、絶縁プレート51と、シール部材52と、接続部19と、ピーキングコンデンサ60と、充電器12と、パルスパワーモジュール(Pulse Power Module:PPM)13と、レーザ共振器と、パルスエネルギー計測器17と、モータ22と、圧力センサ16と、レーザガス供給部23と、レーザガス排出部24と、制御部30と、を備えてもよい。
【0017】
レーザチャンバ10の内部には、レーザガスが封入されていてもよい。
レーザチャンバ10の内部空間を形成する壁10cは、例えばアルミ金属等の金属材料で形成されてもよい。レーザチャンバ10の壁10cを形成する金属材料の表面には、例えばニッケルめっきが施されてもよい。
レーザチャンバ10の壁10cは、接地されてもよい。
レーザチャンバ10の壁10cには、開口が設けられてもよい。
レーザチャンバ10の開口周縁の壁10cは、シール部材52を介して、絶縁プレート51と接合されてもよい。シール部材52は、例えばOリングであってもよい。
レーザチャンバ10の開口周縁の壁10cは、ホルダ50の壁50aの端部と接合されてもよい。レーザチャンバ10の壁10cとホルダ50の壁50aとは電気的に接続されてもよい。
【0018】
レーザチャンバ10は、主放電部11と、予備電離放電部40と、ウインドウ10aと、ウインドウ10bと、プレート25と、配線27と、フィードスルー18と、ファン21と、熱交換器26と、を含んでもよい。
【0019】
主放電部11は、レーザガスを主放電により励起してもよい。
主放電部11は、第1放電電極11aと、第2放電電極11bと、を含んでもよい。
第1放電電極11a及び第2放電電極11bは、レーザガスを主放電により励起するための1対の電極であってもよい。主放電は、グロー放電であってもよい。
第1放電電極11a及び第2放電電極11bは、それぞれ板状の導電部材で形成されてもよい。
第1放電電極11a及び第2放電電極11bは、互いに所定距離だけ離隔し、且つ、互いの長手方向が略平行となるように対向して配置されてもよい。
第1放電電極11a及び第2放電電極11bは、互いの放電面が対向して配置されてもよい。本実施形態では、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの互いの放電面が対向する方向をY軸方向としている。
【0020】
なお、本実施形態では、第1放電電極11aの放電面と第2放電電極11bの放電面との間の空間を、「放電空間」ともいう。放電空間には、レーザチャンバ10に封入されたレーザガスが存在し得る。放電空間には主放電が発生し得る。
【0021】
第1放電電極11aは、カソード電極であってもよい。
第1放電電極11aの放電面とは反対側の面は、フィードスルー18及び接続部19を介して、ピーキングコンデンサ60に接続されてもよい。第1放電電極11aと第2放電電極11bとの間には、パルスパワーモジュール13からピーキングコンデンサ60を経由してパルス電圧が印加され得る。
第2放電電極11bは、アノード電極であってもよい。
第2放電電極11bの放電面とは反対側の面は、プレート25に固定されてもよい。
【0022】
プレート25は、導電部材で形成されていてもよい。
プレート25は、配線27を介して、接地されたレーザチャンバ10の壁10cと接続されてもよい。プレート25は、接地電位に保たれ得る。
プレート25の端部は、レーザチャンバ10の壁10cに固定されてもよい。
【0023】
予備電離放電部40は、主放電部11による主放電の前段階として、コロナ放電によりレーザガスを予備電離するための電極であってもよい。
予備電離放電部40は、プレート25に固定されてもよい。
予備電離放電部40は、第2放電電極11bに対してレーザガス流の上流側に配置されてもよい。
予備電離放電部40は、予備電離内電極41と、誘電体パイプ42と、予備電離外電極43と、を含んでもよい。
【0024】
誘電体パイプ42は、円筒状に形成されてもよい。
誘電体パイプ42は、誘電体パイプ42の長手方向と主放電部11の長手方向とが略平行となるように配置されてもよい。
予備電離内電極41は、棒状に形成されてもよい。
予備電離内電極41は、誘電体パイプ42の内側に挿入され、誘電体パイプ42の内周面に固定されてもよい。
予備電離内電極41の端部は、図示しないフィードスルーを介してホルダ50内の図示しない予備電離用コンデンサに接続されてもよい。当該予備電離用のコンデンサは、ピーキングコンデンサ60に接続されてもよい。
予備電離外電極43は、屈曲部を有する板状に形成されてもよい。
屈曲された予備電離外電極43の先端部は、当該予備電離外電極43の長手方向に亘って、誘電体パイプ42の外周表面と略接触するように配置されてもよい。
予備電離外電極43は、第2放電電極11b又はプレート25に固定されてもよい。
【0025】
フィードスルー18は、レーザチャンバ10の内部を外部から隔絶した状態で、レーザチャンバ10の内部にある第1放電電極11aと、外部にあるピーキングコンデンサ60とを電気的に接続するための導電部材であってもよい。
フィードスルー18の一方の端部は、第1放電電極11aの放電面とは反対側の面と電気的に接続されてもよい。
フィードスルー18の他方の端部は、接続部19の後述する接続プレート19aと電気的に接続されてもよい。
【0026】
ファン21は、レーザガスをレーザチャンバ10内で循環させてもよい。
ファン21は、クロスフローファンであってもよい。
ファン21は、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの長手方向とファン21の長手方向とが略平行となるように配置されてもよい。ファン21は、プレート25に対して放電空間の反対側に配置されてもよい。
ファン21は、モータ22の駆動によって回転してもよい。回転するファン21は、レーザガス流を発生させてもよい。
【0027】
ファン21が回転すると、レーザチャンバ10内のレーザガスは、ファン21の長手方向に略垂直な方向に略一様に吹き出し得る。
ファン21から吹き出したレーザガスは、放電空間に流入し得る。放電空間に流入するレーザガス流の流れ方向は、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの長手方向に略垂直な方向であり得る。
放電空間に流入したレーザガスは、放電空間から流出し得る。放電空間から流出するレーザガス流の流れ方向は、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの長手方向に略垂直な方向であり得る。
放電空間から流出したレーザガスは、熱交換器26を介してファン21に吸い込まれ得る。
【0028】
熱交換器26は、熱交換器26の内部に供給された冷媒とレーザガスとの間で熱交換を行ってもよい。
熱交換器26の内部に供給される冷媒の供給量は、制御部30からの制御により変動してもよい。冷媒の供給量が変動すると、レーザガスから冷媒への伝熱量が変動し得る。
それにより、レーザチャンバ10内のレーザガス温度は調節され得る。
【0029】
絶縁プレート51は、レーザチャンバ10の開口を塞いでもよい。
絶縁プレート51は、レーザガスとの反応性が低い絶縁材料を用いて形成されてもよい。レーザガスがフッ素であれば、絶縁プレート51は、例えばアルミナセラミックスを用いて形成されてもよい。
絶縁プレート51は、レーザチャンバ10とホルダ50との間に配置されてもよい。絶縁プレート51は、ホルダ50の壁50aに固定されてもよい。絶縁プレート51は、シール部材52を介して、レーザチャンバ10の開口周縁の壁10cに接合されてもよい。絶縁プレート51は、レーザチャンバ10の内部空間と、ホルダ50の内部空間とを隔絶してもよい。
絶縁プレート51は、第1放電電極11a及びフィードスルー18の側面を囲むように設けられてもよい。絶縁プレート51は、第1放電電極11a及びフィードスルー18を壁10cに保持してもよい。絶縁プレート51は、第1放電電極11aとレーザチャンバ10の壁10cとの間を電気的に絶縁してもよい。
【0030】
絶縁プレート51は、第1放電電極11aにおけるレーザガス流の上流側及び下流側に位置してもよい。
第1放電電極11aの上流側に位置する絶縁プレート51の一部は、上流側から下流側に向かうに従って厚くなるような傾斜面が形成されていてもよい。第1放電電極11aの下流側に位置する絶縁プレート51の一部は、上流側から下流側に向かうに従って薄くなるような傾斜面が形成されていてもよい。
それにより、レーザガスは、絶縁プレート51の傾斜面に導かれて、第1放電電極11aと第2放電電極11bとの間を効率よく流れ得る。
なお、図示していないが、絶縁プレート51と同様の傾斜面を有する絶縁部材が、第2放電電極11bの側面を囲むように設けられてもよい。レーザガスは、第1放電電極11aと第2放電電極11bとの間を更に効率よく流れ得る。
【0031】
ホルダ50は、ピーキングコンデンサ60を保持する容器であってもよい。
ホルダ50の内部空間を形成する壁50aは、例えばアルミ金属等の金属材料を用いて形成されてもよい。ホルダ50の壁50aを形成する金属材料の表面には、例えばニッケルめっきが施されてもよい。
ホルダ50の内部には、ピーキングコンデンサ60と、接続部19と、パルスパワーモジュール13の高電圧端子13bと、が配置されてもよい。
【0032】
ピーキングコンデンサ60は、主放電部11及び予備電離放電部40に電力を供給するコンデンサであってもよい。
ピーキングコンデンサ60は、主放電部11及び予備電離放電部40に印加するための電気エネルギーをパルスパワーモジュール13から受け取って蓄積してもよい。ピーキングコンデンサ60は、蓄積された当該電気エネルギーを主放電部11及び予備電離放電部40に放出してもよい。
ピーキングコンデンサ60は、ホルダ50の内部に複数個配置されてもよい。ピーキングコンデンサ60は、ホルダ50の内部であって、第1放電電極11aにおけるレーザガス流の上流側及び下流側の位置に、それぞれ複数個配置されてもよい。ピーキングコンデンサ60は、第1放電電極11aの長手方向に沿って複数個配置されてもよい。
ピーキングコンデンサ60の一方の電極60bは、接続部19を介して、パルスパワーモジュール13の高電圧端子13bに接続されてもよい。ピーキングコンデンサ60の一方の電極60bは、接続部19及びフィードスルー18を介して、第1放電電極11aに接続されてもよい。
ピーキングコンデンサ60の他方の電極60cは、接続部19を介して、ホルダ50の壁50aに接続されてもよい。
なお、ピーキングコンデンサ60の詳細な構成については、
図3を用いて後述する。
【0033】
接続部19は、ピーキングコンデンサ60を他の構成要素と接続するための部材であってもよい。
接続部19は、接続プレート19aと、接続端子19bと、接続端子19cとを含んでもよい。
【0034】
接続プレート19aは、断面がU字状の導電板によって構成されてもよい。
接続プレート19aは、第1放電電極11aの長手方向に沿って配置されてもよい。
接続プレート19aは、当該接続プレート19aの底面部が第1放電電極11aの放電面とは反対側の面と対向するように配置されてもよい。
接続プレート19aの底面部における外表面は、フィードスルー18と電気的に接続されてもよい。
接続プレート19aの底面部における内表面は、パルスパワーモジュール13の高電圧端子13bと電気的に接続されてもよい。
接続プレート19aの2つの側面部のそれぞれは、第1放電電極11aにおけるレーザガス流の上流側及び下流側に位置してもよい。
第1放電電極11aにおけるレーザガス流の上流側に位置する接続プレート19aの側面部は、当該上流側に位置する複数のピーキングコンデンサ60のそれぞれの電極60bと、複数の接続端子19bのそれぞれを介して電気的に接続されてもよい。第1放電電極11aにおけるレーザガス流の下流側に位置する接続プレート19aの側面部は、当該下流側に位置する複数のピーキングコンデンサ60のそれぞれの電極60bと、複数の接続端子19bのそれぞれを介して電気的に接続されてもよい。
【0035】
接続端子19bは、複数のピーキングコンデンサ60のそれぞれの電極60bと、接続プレート19aの側面部とを電気的に接続してもよい。
それにより、ピーキングコンデンサ60の電極60bと、第1放電電極11aとは、接続プレート19a及び接続端子19bを含む接続部19によって電気的に接続され得る。加えて、ピーキングコンデンサ60の電極60bと、パルスパワーモジュール13の高電圧端子13bとは、接続プレート19a及び接続端子19bを含む接続部19によって電気的に接続され得る。
また、接続端子19cは、複数のピーキングコンデンサ60のそれぞれの電極60cと、ホルダ50の壁50aとを電気的に接続してもよい。
それにより、ピーキングコンデンサ60の電極60cと、接地されたレーザチャンバ10の壁10cに接続されたホルダ50の壁50aとは、接続端子19cを含む接続部19によって電気的に接続され得る。
【0036】
充電器12は、パルスパワーモジュール13の充電コンデンサC0に所定の電圧で充電する直流電源装置であってもよい。充電器12は、制御部30からの制御によりパルスパワーモジュール13の充電コンデンサC0に所定の電圧で充電し得る。
【0037】
パルスパワーモジュール13は、主放電部11及び予備電離放電部40にパルス状の電圧を印加してもよい。
パルスパワーモジュール13の高電圧端子13bは、接続部19を介して、ピーキングコンデンサ60に接続されてもよい。
パルスパワーモジュール13は、制御部30によって制御されるスイッチ13aを含んでもよい。
スイッチ13aがOFFからONになると、パルスパワーモジュール13は、充電コンデンサC0に蓄積されていた電気エネルギーからパルス状の電圧を生成してもよい。パルスパワーモジュール13は、生成されたパルス電圧を主放電部11及び予備電離放電部40に印加してもよい。
このとき、パルスパワーモジュール13は、生成されたパルス電圧をピーキングコンデンサ60に印加してピーキングコンデンサ60を充電してもよい。そして、パルスパワーモジュール13は、充電されたピーキングコンデンサ60からの放電によって、主放電部11及び予備電離放電部40にパルス電圧を印加してもよい。
【0038】
レーザ共振器は、狭帯域化モジュール(Line Narrowing Module:LNM)14及び出力結合ミラー(Output Coupler:OC)15によって構成されてもよい。
狭帯域化モジュール14は、プリズム14aと、グレーティング14bと、を含んでもよい。
【0039】
プリズム14aは、レーザチャンバ10からウインドウ10aを介して出射された光のビーム幅を拡大してもよい。プリズム14aは、拡大された光をグレーティング14b側に透過させてもよい。
【0040】
グレーティング14bは、表面に多数の溝が所定間隔で形成された波長分散素子であってもよい。
グレーティング14bは、入射角度と回折角度とが同じ角度となるリトロー配置に配置されてもよい。
グレーティング14bは、回折角度に応じて特定の波長付近の光を選択的に取り出し得る。当該特定の波長付近の光は、グレーティング14bからプリズム14a及びウインドウ10aを介して、レーザチャンバ10に戻り得る。
それにより、グレーティング14bからレーザチャンバ10に戻った光のスペクトル幅は、狭帯域化され得る。
【0041】
出力結合ミラー15は、ウインドウ10bを介してレーザチャンバ10から出射された光の一部を透過させ、他の一部を反射させてレーザチャンバ10に戻してもよい。
出力結合ミラー15の表面には、部分反射膜がコーティングされていてもよい。
【0042】
上記構成により、出力結合ミラー15及び狭帯域化モジュール14は、レーザ共振器を構成し得る。
【0043】
レーザチャンバ10から出射された光は、狭帯域化モジュール14と出力結合ミラー15との間で往復し得る。このとき、レーザチャンバ10から出射された光は、レーザチャンバ10内の主放電部11の放電空間を通過する度に増幅され得る。増幅された光の一部は、出力結合ミラー15を透過し得る。出力結合ミラー15を透過した光は、パルスレーザ光として、パルスエネルギー計測器17を介して露光装置110に出射され得る。
【0044】
パルスエネルギー計測器17は、出力結合ミラー15を透過したパルスレーザ光のパルスエネルギーを計測し、計測結果を制御部30に出力してもよい。
パルスエネルギー計測器17は、ビームスプリッタ17aと、集光レンズ17bと、光センサ17cとを含んでもよい。
【0045】
ビームスプリッタ17aは、パルスレーザ光の光路上に配置されてもよい。ビームスプリッタ17aは、出力結合ミラー15を透過したパルスレーザ光を高透過率で露光装置110に向けて透過させてもよい。ビームスプリッタ17aは、出力結合ミラー15を透過したパルスレーザ光の一部を、集光レンズ17bに向けて反射させてもよい。
集光レンズ17bは、ビームスプリッタ17aによって反射したパルスレーザ光を、光センサ17cの受光面に集光してもよい。
光センサ17cは、受光面に集光されたパルスレーザ光を検出してもよい。光センサ17cは、検出されたパルスレーザ光のパルスエネルギーを計測してもよい。光センサ17cは、計測されたパルスエネルギーに関する信号を制御部30に出力してもよい。
【0046】
圧力センサ16は、レーザチャンバ10内のガス圧を検出してもよい。圧力センサ16は、検出されたガス圧の検出信号を制御部30に出力してもよい。
【0047】
モータ22は、ファン21を回転させてもよい。
モータ22は、DCモータや交流モータであってもよい。
モータ22は、制御部30からの制御によりファン21の回転数を変化させてもよい。
【0048】
レーザガス供給部23は、レーザチャンバ10内にレーザガスを供給してもよい。
レーザガス供給部23は、図示しないガスボンベと、バルブと、流量制御弁とを含んでもよい。
ガスボンベには、レーザガスが充填されてもよい。
バルブは、ガスボンベからレーザチャンバ10内へのレーザガスの流れを遮断してもよい。
流量制御弁は、ガスボンベからレーザチャンバ10内へのレーザガスの供給量を変化させてもよい。
【0049】
レーザガス供給部23は、制御部30からの制御によりバルブを開閉してもよい。
レーザガス供給部23は、制御部30からの制御により流量制御弁の開度を変化させてもよい。流量制御弁の開度が変化すると、レーザチャンバ10内へのレーザガスの供給量が変化し得る。
それにより、レーザチャンバ10内のガス圧は調節され得る。
【0050】
レーザガス排出部24は、レーザチャンバ10内のレーザガスをレーザチャンバ10外へ排出してもよい。
レーザガス排出部24は、図示しないバルブと、排気ポンプとを含んでもよい。
バルブは、レーザチャンバ10内からレーザチャンバ10外へのレーザガスの流れを遮断してもよい。
排気ポンプは、レーザチャンバ10内のレーザガスを吸引してもよい。
【0051】
レーザガス排出部24は、制御部30からの制御によりバルブを開閉してもよい。
レーザガス排出部24は、制御部30からの制御により排気ポンプを作動させてもよい。排気ポンプが作動すると、レーザチャンバ10内のレーザガスは、排気ポンプ内に吸引され得る。
それにより、レーザチャンバ10内のレーザガスはレーザチャンバ10外へ排出され、レーザチャンバ10内のガス圧は減圧され得る。
【0052】
制御部30は、露光装置110に設けられた露光装置制御部111との間で各種信号を送受信してもよい。例えば、制御部30には、露光装置110に出力されるパルスレーザ光の目標パルスエネルギーや目標発振タイミングに関する信号が、露光装置制御部111から送信されてもよい。
制御部30は、露光装置制御部111から送信された各種信号に基づいて、ガスレーザ装置1の各構成要素の動作を統括的に制御してもよい。
【0053】
制御部30には、パルスエネルギー計測器17から出力されたパルスエネルギーに関する信号が入力されてもよい。
制御部30は、当該パルスエネルギーに関する信号及び露光装置制御部111からの目標パルスエネルギーに関する信号に基づいて、充電器12の充電電圧を決定してもよい。制御部30は、決定された充電電圧に応じた制御信号を充電器12に出力してもよい。当該制御信号は、決定された充電電圧が充電器12に設定されるよう充電器12の動作を制御するための信号であってもよい。
制御部30は、パルスエネルギー計測器17からのパルスエネルギーに関する信号及び露光装置制御部111からの目標発振タイミングに関する信号に基づいて、主放電部11にパルス電圧を印加するタイミングを決定してもよい。制御部30は、決定されたタイミングに応じた発振トリガ信号をパルスパワーモジュール13に出力してもよい。当該発振トリガ信号は、決定されたタイミングに応じてスイッチ13aがON又はOFFになるようパルスパワーモジュール13の動作を制御するための制御信号であってもよい。
【0054】
制御部30には、圧力センサ16から出力されたガス圧の検出信号が入力されてもよい。
制御部30は、当該ガス圧の検出信号及び充電器12の充電電圧に基づいて、レーザチャンバ10内におけるレーザガスのガス圧を決定してもよい。制御部30は、決定されたガス圧に応じた制御信号を、レーザガス供給部23又はレーザガス排出部24に出力してもよい。当該制御信号は、決定されたガス圧に応じてレーザチャンバ10内にレーザガスが供給又は排出されるようレーザガス供給部23又はレーザガス排出部24の動作を制御するための信号であってもよい。
【0055】
上記構成において、充電器12、パルスパワーモジュール13、フィードスルー18、接続部19、ピーキングコンデンサ60、主放電部11、予備電離放電部40、プレート25、配線27、及び壁10cにて形成される電流経路は、ガスレーザ装置1の放電回路を構成し得る。
本実施形態では、放電回路を構成する電流経路のループによって囲まれた領域の面積を、放電回路の「ループ面積」ともいう。ガスレーザ装置1の放電回路におけるループ面積が小さくなると、当該放電回路におけるインダクタンスは小さくなり得る。当該放電回路におけるインダクタンスは小さくなると、当該放電回路における放電効率は、高くなり得る。
なお、「放電効率」とは、ガスレーザ装置1が外部の電源装置から投入されたエネルギーと、ガスレーザ装置1が放電により放出したエネルギーとの比であり得る。
ガスレーザ装置1の放電回路における具体的な回路構成については、
図13を用いて後述する。
【0056】
図3を用いて、ピーキングコンデンサ60の詳細な構成について説明する。
図3は、
図1及び
図2に示されたピーキングコンデンサ60の構成を説明するための図を示す。
【0057】
ピーキングコンデンサ60の外形は、略円筒形状に形成されてもよい。
ピーキングコンデンサ60は、
図3に示すように、誘電体60aと、電極60bと、電極60cと、タップ穴60dと、タップ穴60eと、絶縁層60fとを含んでもよい。
誘電体60aは、チタン酸ストロンチウム等のセラミックスを用いて形成されてもよい。
電極60b及び60cは、真鍮を用いて形成されてもよい。
タップ穴60dは、電極60bに対して接続部19の接続端子19bを接続するための穴であってもよい。タップ穴60eは、電極60cに対して接続部19の接続端子19cを接続するための穴であってもよい。
絶縁層60fは、エポキシ樹脂を用いて形成されてもよい。
【0058】
[3.2 動作]
制御部30は、レーザチャンバ10内にレーザガスが供給させるようレーザガス供給部23を制御してもよい。レーザチャンバ10の内部にはレーザガスが封入され得る。
制御部30は、モータ22を駆動し、ファン21を回転させてもよい。それにより、レーザチャンバ10内のレーザガスが循環し得る。
【0059】
制御部30は、露光装置制御部111から送信された目標パルスエネルギーEt及び目標発振タイミングに関する信号を受信してもよい。
制御部30は、目標パルスエネルギーEtに応じた充電電圧Vhvを充電器12に設定してもよい。制御部30は、充電器12に設定された充電電圧Vhvの値を記憶してもよい。
制御部30は、目標発振タイミングに同期させて、パルスパワーモジュール13のスイッチ13aを動作させてもよい。
【0060】
パルスパワーモジュール13のスイッチ13aがOFFからONになると、予備電離放電部40の予備電離内電極41と予備電離外電極43との間には、電圧が印加され得る。そして、主放電部11の第1放電電極11aと第2放電電極11bとの間には、電圧が印加され得る。
それにより、予備電離放電部40においてコロナ放電が発生し、UV(Ultraviolet)光が生成され得る。主放電部11の放電空間にあるレーザガスに当該UV光が照射されると、当該レーザガスが予備電離され得る。
その後、主放電部11の放電空間には、主放電が発生し得る。主放電の放電方向(電子が移動する方向)は、カソード電極である第1放電電極11aからアノード電極である第2放電電極11bに向かう方向である。主放電が発生すると、放電空間のレーザガスは励起されて光を放出し得る。
【0061】
レーザガスから放出された光は、レーザ共振器を構成する狭帯域化モジュール14及び出力結合ミラー15で反射され、レーザ共振器内を往復し得る。レーザ共振器内を往復する光は、狭帯域化モジュール14により狭帯域化され得る。レーザ共振器内を往復する光は、主放電部11の放電空間を通過する度に増幅され得る。その後、増幅された光の一部は、出力結合ミラー15を透過し得る。出力結合ミラー15を透過した光は、パルスレーザ光として露光装置110に出力され得る。
【0062】
出力結合ミラー15を透過したパルスレーザ光の一部は、パルスエネルギー計測器17に入射してもよい。パルスエネルギー計測器17は、入射したパルスレーザ光のパルスエネルギーEを計測し、制御部30に出力してもよい。
【0063】
制御部30は、パルスエネルギー計測器17によって計測されたパルスエネルギーEを記憶してもよい。
制御部30は、計測値である当該パルスエネルギーEと目標パルスエネルギーEtとの差分ΔEを計算してもよい。
制御部30は、差分ΔEに対応する充電電圧Vhvの増減量ΔVhvを計算してもよい。
制御部30は、計算されたΔVhvを、上記で記憶された充電電圧Vhvに加算して、新たに設定する充電電圧Vhvを計算してもよい。
このようにして、制御部30は、充電電圧Vhvをフィードバック制御し得る。
【0064】
制御部30は、新たに設定する充電電圧Vhvが許容範囲の最大値よりも大きくなった場合、レーザガス供給部23を制御して、所定のガス圧になるまでレーザチャンバ10内にレーザガスを供給してもよい。
一方、制御部30は、新たに設定する充電電圧Vhvが許容範囲の最小値よりも小さくなった場合、レーザガス排出部24を制御して、所定のガス圧になるまでレーザチャンバ10内からレーザガスを排出してもよい。
【0065】
[3.3 課題]
ガスレーザ装置1は、高出力のパルスレーザ光を高繰り返し周波数で出力するために、高電圧のパルス電圧を高繰り返し周波数で主放電部11に印加する必要があり得る。
そのため、ピーキングコンデンサ60には、高電圧のパルス電圧により高繰り返し周波数で充放電を行う必要があり、発熱して温度上昇し易い。
ピーキングコンデンサ60の誘電体60aには、高い耐電圧性能を有することから、チタン酸ストロンチウム等のセラミックスが用いられてもよい。
【0066】
しかし、セラミックスで形成された誘電体60aには、誘電率の温度依存性が大きいという特性が有り得る。誘電体60aの誘電率が変動すると、ピーキングコンデンサ60の容量も変動し得る。
よって、ピーキングコンデンサ60が高電圧のパルス電圧を高繰り返し周波数で充放電を行うと、当該ピーキングコンデンサ60の容量が変動することが有り得た。
それにより、ガスレーザ装置1では、ピーキングコンデンサ60から主放電部11に印加されるパルス電圧が不安定となり、出力されるパルスレーザ光の性能が不安定になることが有り得た。具体的には、ガスレーザ装置1から出力されるパルスレーザ光のパルスエネルギー、パルス幅の波形、スペクトル幅の波形等が不安定になることが有り得た。
【0067】
更に、セラミックスで形成された誘電体60aを含むピーキングコンデンサ60は、高周波領域において誘電正接(tanδ)が大きいという特性が有り得る。ピーキングコンデンサ60の誘電正接が大きいと、エネルギー損失が大きくなり、発熱して温度上昇し得る。それにより、ピーキングコンデンサ60は、容量が変動したり劣化したりすることが有り得た。
このようなことから、高繰り返し周波数でパルスレーザ光を出力するガスレーザ装置1において、ピーキングコンデンサ60の性能を安定化させる技術が望まれている。
【0068】
[4.ポリイミドコンデンサ]
ガスレーザ装置1は、主放電部11に電力を供給するコンデンサとして、セラミックスを誘電体とするピーキングコンデンサ60の代りに、ポリイミドを誘電体とするコンデンサであるポリイミドコンデンサ70を用いてもよい。
【0069】
[4.1 特性]
図4を用いて、ポリイミドを誘電体とするコンデンサの特性について説明する。
図4は、ポリイミドを誘電体とするコンデンサと、セラミックスを誘電体とするコンデンサとの諸特性を比較した図を示す。
【0070】
図4の表の第1行は、高周波数領域における両者のエネルギー損失として、3.5MHzの高周波数領域における両者の誘電正接を百分率で表した値を比較している。
図4の表の第1行に示されるように、セラミックスを誘電体とするコンデンサは1.99%の損失が生じるのに対し、ポリイミドを誘電体とするコンデンサは0.8%の損失で済み得る。
すなわち、ポリイミドを誘電体とするコンデンサは、セラミックスを誘電体とするコンデンサに比べて高周波数領域におけるエネルギー損失が抑制され得る。
【0071】
図4の表の第2行は、両者の容量の温度依存性として、10℃〜80℃の温度範囲における両者の容量変動幅を百分率で表した値を比較している。
図4の表の第2行に示されるように、セラミックスを誘電体とするコンデンサの容量は50%の変動が生じるのに対し、ポリイミドを誘電体とするコンデンサの容量は10%未満の変動で済み得る。
すなわち、ポリイミドを誘電体とするコンデンサは、セラミックスを誘電体とするコンデンサに比べて容量の温度依存性が低くなり得る。
【0072】
図4の表の第3行は、両者の耐熱温度を比較している。
図4の表の第3行に示されるように、セラミックスを誘電体とするコンデンサの耐熱温度は約85℃であるのに対し、ポリイミドを誘電体とするコンデンサの耐熱温度は約250℃であり得る。
セラミックスを誘電体とするコンデンサは、当該誘電体の表面に沿って端子間で放電が発生し易いため、誘電体の表面を電気絶縁性の樹脂で覆う必要があり得る。セラミックスを誘電体とするコンデンサの耐熱温度が低い原因は、セラミックスの誘電体の表面を覆う当該樹脂が温度上昇に伴って軟化し易いからであり得る。
すなわち、ポリイミドを誘電体とするコンデンサは、セラミックスを誘電体とするコンデンサに比べて耐熱温度が高くなり得る。
【0073】
このように、ポリイミドを誘電体とするコンデンサは、セラミックスを誘電体とするコンデンサに比べて、エネルギー損失、容量の温度依存性、及び耐熱性の点で優位であり得る。
よって、高繰り返し周波数でパルスレーザ光を出力するガスレーザ装置1において、ポリイミドを誘電体とするコンデンサを主放電部11に電力を供給するコンデンサとして用いることは、好適であり得る。
【0074】
[4.2 基本構造]
図5A〜
図5Dを用いて、ポリイミドを誘電体とする本実施形態のコンデンサであるポリイミドコンデンサ70の基本構造について説明する。
図5Aは、ポリイミドコンデンサ70の基本構造を説明するための図であって、側面図を示す。
図5Bは、ポリイミドコンデンサ70の基本構造を説明するための図であって、上面図を示す。
図5Cは、ポリイミドコンデンサ70の基本構造を説明するための図であって、下面図を示す。
図5Dは、ポリイミドコンデンサ70の基本構造を説明するための図であって、等価回路図を示す。
【0075】
なお、本実施形態では、
図5A〜
図5Dに示されたポリイミドコンデンサ70の基本構造を、「コンデンサ層700」ともいう。
ポリイミドコンデンサ70の基本構造であるコンデンサ層700は、ポリイミド膜710と、一対の電極膜720と、を含んでもよい。
【0076】
ポリイミド膜710は、ポリイミドコンデンサ70の誘電体を構成してもよい。
ポリイミド膜710は、適度な剛性を有して長方形形状に形成されてもよい。
ポリイミド膜710の厚みは、例えば5μm〜25μm程度であってもよい。
【0077】
一対の電極膜720は、ポリイミドコンデンサ70の電極を構成してもよい。
一対の電極膜720のそれぞれは、金、銀、銅、アルミニウム等の高熱伝導性を有する導電性材料で形成されてもよい。
一対の電極膜720のそれぞれは、ポリイミド膜710の上面及び下面に対し、プリント、めっき、溶射、蒸着等の方法によって形成されてもよい。
一対の電極膜720のそれぞれの厚みは、例えば5μm〜20μm程度であってもよい。
一対の電極膜720は、ポリイミド膜710を挟んで互いに対向して配置されてもよい。
一対の電極膜720は、第1電極膜721と、第2電極膜726と、を含んでもよい。
【0078】
第1電極膜721は、ポリイミド膜710の上面又は下面に形成されている電極膜であってもよい。
第1電極膜721は、ポリイミド膜710の面内方向において所定方向に間隔を開けて複数の電極領域に分割されてもよい。
第1電極膜721が複数の電極領域に分割される数は、2以上の任意の数であってもよい。本実施形態では、第1電極膜721は、ポリイミド膜710の端から長手方向に沿って、間隔723a〜723dを開けて複数の電極領域722a〜722eに分割されているとしてもよい。
複数の電極領域722a〜722eのそれぞれは、略同一の形状に形成されてもよい。
或いは、複数の電極領域722a〜722eのうち中間に位置する電極領域722b〜722dは、略同一の形状に形成されてもよい。加えて、複数の電極領域722a〜722eのうち両端に位置する電極領域722a及び722eは、電極領域722b〜722dよりも上記所定方向に幅が広い形状に形成されてもよい。
間隔723a〜723dのそれぞれは、略同一の間隔であってもよい。
間隔723a〜723dのそれぞれの大きさは、第1電極膜721及び第2電極膜726並びにポリイミド膜710の厚みよりも十分に大きくてもよい。間隔723a〜723dのそれぞれの大きさは、例えば0.5mm程度であってもよい。
【0079】
第2電極膜726は、ポリイミド膜710の上面又は下面であって、第1電極膜721が形成されていない方の面に形成されている電極膜であってもよい。
第2電極膜726は、ポリイミド膜710の面内方向において上記所定方向に間隔を開けて複数の電極領域に分割されてもよい。
第2電極膜726が複数の電極領域に分割される数は、第1電極膜721が分割される数より1つ少ない数であってもよい。本実施形態では、第2電極膜726は、ポリイミド膜710の端から長手方向に沿って、間隔728a〜728eを開けて複数の電極領域727a〜727dに分割されてもよい。
複数の電極領域727a〜727dのそれぞれは、第1電極膜721の複数の電極領域722a〜722eと略同一の形状に形成されてもよい。
間隔728a〜728eのうち中間に位置する間隔728b〜728dは、第1電極膜721の間隔723a〜723dと略同一の間隔であってもよい。間隔728a〜728eのうち両端に位置する間隔728a及び728eは、間隔728b〜間隔728dよりも上記所定方向に長くてもよい。
間隔728a〜728eのそれぞれの大きさは、第1電極膜721及び第2電極膜726並びにポリイミド膜710の厚みよりも十分に大きくてもよい。間隔728a〜728eのそれぞれの大きさは、例えば0.5mm程度であってもよい。
【0080】
一対の電極膜720のそれぞれの一部は、ポリイミド膜710を介して互いに対向してもよい。
具体的には、第1電極膜721の複数の電極領域722a〜722eのそれぞれの一部と、第2電極膜726の複数の電極領域727a〜727dのそれぞれの一部とが、ポリイミド膜710を介して互いに対向してもよい。
【0081】
より詳細には、第1電極膜721の複数の電極領域722a〜722eのそれぞれの一部と、第2電極膜726の複数の電極領域727a〜727dのそれぞれの一部とは、次のようにして、ポリイミド膜710を介して互いに対向してもよい。
すなわち、第1電極膜721における電極領域722aの間隔723a側の一部と、第2電極膜726における電極領域727aの間隔728a側の一部とが、ポリイミド膜710を介して互いに対向してもよい。電極領域722aの間隔723a側の一部と、電極領域727aの間隔728a側の一部と、これらに挟まれたポリイミド膜710の一部とは、
図5Dに示されるように、1つのコンデンサC1を構成し得る。
第1電極膜721における電極領域722bの間隔723a側の一部と、第2電極膜726における電極領域727aの間隔728b側の一部とが、ポリイミド膜710を介して互いに対向してもよい。電極領域722bの間隔723a側の一部と、電極領域727aの間隔728b側の一部と、これらに挟まれたポリイミド膜710の一部とは、
図5Dに示されるように、1つのコンデンサC2を構成し得る。
第1電極膜721における電極領域722bの間隔723b側の一部と、第2電極膜726における電極領域727bの間隔728b側の一部とが、ポリイミド膜710を介して互いに対向してもよい。電極領域722bの間隔723b側の一部と、電極領域727bの間隔728b側の一部と、これらに挟まれたポリイミド膜710の一部とは、
図5Dに示されるように、1つのコンデンサC3を構成し得る。
第1電極膜721における電極領域722cの間隔723b側の一部と、第2電極膜726における電極領域727bの間隔728c側の一部とが、ポリイミド膜710を介して互いに対向してもよい。電極領域722cの間隔723b側の一部と、電極領域727bの間隔728c側の一部と、これらに挟まれたポリイミド膜710の一部とは、
図5Dに示されるように、1つのコンデンサC4を構成し得る。
第1電極膜721における電極領域722cの間隔723c側の一部と、第2電極膜726における電極領域727cの間隔728c側の一部とが、ポリイミド膜710を介して互いに対向してもよい。電極領域722cの間隔723c側の一部と、電極領域727cの間隔728c側の一部と、これらに挟まれたポリイミド膜710の一部とは、
図5Dに示されるように、1つのコンデンサC5を構成し得る。
第1電極膜721における電極領域722dの間隔723c側の一部と、第2電極膜726における電極領域727cの間隔728d側の一部とが、ポリイミド膜710を介して互いに対向してもよい。電極領域722dの間隔723c側の一部と、電極領域727cの間隔728d側の一部と、これらに挟まれたポリイミド膜710の一部とは、
図5Dに示されるように、1つのコンデンサC6を構成し得る。
第1電極膜721における電極領域722dの間隔723d側の一部と、第2電極膜726における電極領域727dの間隔728d側の一部とが、ポリイミド膜710を介して互いに対向してもよい。電極領域722dの間隔723d側の一部と、電極領域727dの間隔728d側の一部と、これらに挟まれたポリイミド膜710の一部とは、
図5Dに示されるように、1つのコンデンサC7を構成し得る。
第1電極膜721における電極領域722eの間隔723d側の一部と、第2電極膜726における電極領域727dの間隔728e側の一部とが、ポリイミド膜710を介して互いに対向してもよい。電極領域722eの間隔723d側の一部と、電極領域727dの間隔728e側の一部と、これらに挟まれたポリイミド膜710の一部とは、
図5Dに示されるように、1つのコンデンサC8を構成し得る。
【0082】
このように、一対の電極膜720は、第1電極膜721の複数の電極領域722a〜722eのそれぞれの一部と、第2電極膜726の複数の電極領域727a〜727dのそれぞれの一部とが、ポリイミド膜710を介して対向するように形成されてもよい。
それにより、一対の電極膜720及びポリイミド膜710を含むコンデンサ層700は、
図5Dに示されるように、直列に接続されたコンデンサC1〜C8を構成し得る。このため、コンデンサ層700は、当該コンデンサ層700を含むポリイミドコンデンサ70の耐電圧を高くし得る。ポリイミドコンデンサ70の耐電圧は、例えば10kV〜50kV程度であってもよい。
【0083】
コンデンサ層700は、第1電極膜721の両端にある電極領域722a及び電極領域722eの間に電圧が印加されると、コンデンサC1〜C8に電気エネルギーを蓄積し得る。その後、当該電極領域722a及び電極領域722eの間に電圧が印加されなくなると、コンデンサ層700は、コンデンサC1〜C8に蓄積された電気エネルギーを放出し得る。すなわち、コンデンサ層700を含むポリイミドコンデンサ70は、第1電極膜721の両端にある電極領域722a及び電極領域722eを電極端子として充放電を繰り返し得る。
【0084】
また、コンデンサ層700は、第1電極膜721及び第2電極膜726の電極領域の数を変更することで、当該コンデンサ層700の内部に含まれる直列に接続されたコンデンサの数を適宜変更し得る。
それにより、コンデンサ層700を含むポリイミドコンデンサ70は、所望の耐電圧を簡単な設計変更で実現し得る。コンデンサ層700の内部に含まれるコンデンサの数は、例えば8個〜20個であってもよい。
【0085】
そして、コンデンサ層700を含むポリイミドコンデンサ70は、
図4を用いて説明したように、エネルギー損失、容量の温度依存性、及び耐熱性の点で優れたポリイミドを誘電体としている。
【0086】
このように、ポリイミドコンデンサ70は、エネルギー損失、容量の温度依存性、及び耐熱性の点で優れたポリイミドを誘電体とするコンデンサの耐電圧性能を簡単な構成で高め得る。
よって、ポリイミドコンデンサ70は、高繰り返し周波数でパルスレーザ光を出力するガスレーザ装置1においても高い性能を安定して発揮し得るため、主放電部11に電力を供給するピーキングコンデンサに好適であり得る。
【0087】
[4.3 多層化されたコンデンサの構造]
図6A〜
図6Eを用いて、多層化されたポリイミドコンデンサ70の構造について説明する。
図6Aは、
図5A〜
図5Dに示された基本構造のコンデンサ層700を多層化して構成されたポリイミドコンデンサ70を説明するための図であって、上面図を示す。
図6Bは、
図5A〜
図5Dに示された基本構造のコンデンサ層700を多層化して構成されたポリイミドコンデンサ70を説明するための図であって、
図6Aに示されたB−B線における断面図を示す。
図6Cは、
図5A〜
図5Dに示された基本構造のコンデンサ層700を多層化して構成されたポリイミドコンデンサ70を説明するための図であって、
図6Bに示されたC−C線における断面図を示す。
図6Dは、
図5A〜
図5Dに示された基本構造のコンデンサ層700を多層化して構成されたポリイミドコンデンサ70を説明するための図であって、
図6Bに示されたD−D線における断面図を示す。
図6Eは、
図5A〜
図5Dに示された基本構造のコンデンサ層700を多層化して構成されたポリイミドコンデンサ70を説明するための図であって、
図6Bに示されたE−E線における断面図を示す。
【0088】
ポリイミドコンデンサ70は、
図5A〜
図5Dに示された基本構造のコンデンサ層700が単層だけで構成されてもよい。或いは、ポリイミドコンデンサ70は、
図5A〜
図5Dに示された基本構造のコンデンサ層700を多層化して構成されてもよい。多層化により、ポリイミドコンデンサ70の容量増加を図り得る。
多層化されたポリイミドコンデンサ70の構成において、
図5A〜
図5Eに示されたポリイミドコンデンサ70と同様の構成については説明を省略する。
【0089】
多層化されたポリイミドコンデンサ70は、複数のコンデンサ層700と、複数の電気絶縁層730と、複数のヒートシンク層740と、電極プレート751及び752と、電極端子761及び762と、コーティング部材770と、を含んでもよい。
複数のコンデンサ層700、複数の電気絶縁層730、及び複数のヒートシンク層740は、それぞれが互いに略平行となるように配置されてもよい。
【0090】
複数のコンデンサ層700は、1つのコンデンサ層700がその厚み方向に複数積層されていてもよい。
複数のコンデンサ層700のそれぞれは、互いに略平行となるように積層されてもよい。
複数のコンデンサ層700は、隣り合う2つのコンデンサ層700の第1電極膜721側の面同士又は第2電極膜726側の面同士が、互いに向かい合うように積層されてもよい。
例えば、
図6Bの最上段にある第1段目のコンデンサ層700と、当該第1段目の下側にある第2段目のコンデンサ層700とは、隣り合う2つのコンデンサ層700であり得る。そして、第1段目のコンデンサ層700の第1電極膜721側の面と、第2段目のコンデンサ層700の第1電極膜721側の面とは、電気絶縁層730及びヒートシンク層740を介しているが、互いに向かい合い得る。
【0091】
複数のコンデンサ層700は、このように積層されることによって、隣り合う2つのコンデンサ層700の向かい合う電極膜同士が、それぞれの第1電極膜721同士又はそれぞれの第2電極膜726同士となり得る。そのため、複数のコンデンサ層700は、隣り合う2つのコンデンサ層700において略同じ電位の電極膜同士が向かい合うこととなり得る。よって、複数のコンデンサ層700は、隣り合う2つのコンデンサ層700の電極膜同士が短絡してしまうことを抑制し得る。
複数のコンデンサ層700における他の構成については、
図5A〜
図5Dに示されたコンデンサ層700の構成と同様であってもよい。
【0092】
複数の電気絶縁層730のそれぞれは、耐熱性及び電気絶縁性を有し、コンデンサ層700に密着し得る材料を用いて形成されてもよい。例えば、複数の電気絶縁層730のそれぞれは、シリコーン樹脂を用いて形成されてもよい。
複数の電気絶縁層730のそれぞれの厚みは、例えば20μm〜100μm程度であってもよい。
【0093】
複数の電気絶縁層730は、複数のコンデンサ層700のそれぞれの第1電極膜721及び第2電極膜726の各表面を覆ってもよい。
複数の電気絶縁層730は、複数のコンデンサ層700のそれぞれの第1電極膜721に含まれる複数の電極領域722a〜722eのそれぞれの表面を覆ってもよい。このとき、複数の電気絶縁層730は、複数のコンデンサ層700のそれぞれの第1電極膜721に含まれる間隔723a〜723dのそれぞれを充填するように、当該複数の電極領域722a〜722eのそれぞれの表面を覆ってもよい。
複数の電気絶縁層730は、複数のコンデンサ層700のそれぞれの第2電極膜726に含まれる複数の電極領域727a〜727dのそれぞれの表面を覆ってもよい。このとき、複数の電気絶縁層730は、複数のコンデンサ層700のそれぞれの第2電極膜726に含まれる間隔728a〜728eのそれぞれを充填するように、当該複数の電極領域727a〜727dのそれぞれの表面を覆ってもよい。
複数の電気絶縁層730のそれぞれは、互いに略平行となるように配置されてもよい。
【0094】
上記構成により、複数の電気絶縁層730は、複数のコンデンサ層700において隣り合う2つのコンデンサ層700の向かう合う電極膜同士を絶縁し得る。
それにより、複数の電気絶縁層730は、複数のコンデンサ層700において隣り合う2つのコンデンサ層700の電極膜同士が短絡してしまうことを抑制し得る。
また、複数の電気絶縁層730は、複数のコンデンサ層700のそれぞれの第1電極膜721に含まれる複数の電極領域722a〜722e同士を絶縁し得る。加えて、複数の電気絶縁層730は、複数のコンデンサ層700のそれぞれの第2電極膜726に含まれる複数の電極領域727a〜727d同士を絶縁し得る。
それにより、複数の電気絶縁層730は、複数のコンデンサ層700のそれぞれの第1電極膜721に含まれる複数の電極領域722a〜722e同士が短絡してしまうことを抑制し得る。加えて、複数の電気絶縁層730は、複数のコンデンサ層700のそれぞれの第2電極膜726に含まれる複数の電極領域727a〜727d同士が短絡してしまうことを抑制し得る。
【0095】
複数のヒートシンク層740のそれぞれは、高熱伝導性及び電気絶縁性を有する材料を用いて形成されてもよい。例えば、複数のヒートシンク層740のそれぞれは、アルミナ、窒化アルミニウム、ダイヤモンド、及びダイヤモンドライクカーボンのうちの少なくとも1つを用いて形成されてもよい。
複数のヒートシンク層740のそれぞれの厚みは、例えば400μm〜1000μm程度であってもよい。より高い熱伝導性及び電気絶縁性を有する材料で形成されていれば、複数のヒートシンク層740のそれぞれの厚みは、例えば200μm程度であってもよい。
【0096】
複数のヒートシンク層740は、複数のコンデンサ層700同士の間に配置されてもよい。複数のヒートシンク層740は、隣り合う2つのコンデンサ層700の向かい合う電極膜同士を覆いながら隣り合う2つの電気絶縁層730の間に配置されてもよい。ここで、電気絶縁層730は、上述のように例えばシリコーン樹脂のような弾性体であってもよく、コンデンサ層700及びヒートシンク層740のそれぞれと密着するように設けられてもよい。
例えば、
図6Bの最上段にある第1段目のコンデンサ層700の第1電極膜721を覆う電気絶縁層730と、第2段目のコンデンサ層700の第1電極膜721を覆う電気絶縁層730とは、隣り合う2つの電気絶縁層730であり得る。そして、当該隣り合う2つの電気絶縁層730の間には、ヒートシンク層740が配置され得る。電気絶縁層730が弾性体である場合、コンデンサ層700及びヒートシンク層740のそれぞれの熱膨張係数が異なっていても、コンデンサ層700とヒートシンク層740とは電気絶縁層730を介して近接し得る。このため、弾性体の電気絶縁層730は、コンデンサ層700で発生した熱がヒートシンク層740に伝わる効率が低下することを抑制し得る。
更に、ヒートシンク層740は、複数のコンデンサ層700のうちの最も外側ある2つのコンデンサ層700のそれぞれの外側に配置されてもよい。
例えば、
図6Bの最上段にある第1段目のコンデンサ層700は、複数のコンデンサ層700のうちの最も外側あるコンデンサ層700であり得る。そして、当該第1段目の更に上段側には、ヒートシンク層740が配置され得る。加えて、
図6Bの最下段にある第6段目のコンデンサ層700は、複数のコンデンサ層700のうちの最も外側あるコンデンサ層700であり得る。そして、当該第6段目の更に下段側には、ヒートシンク層740が配置され得る。
複数のヒートシンク層740のそれぞれは、互いに略平行となるように配置されてもよい。
【0097】
上記構成により、複数のヒートシンク層740のそれぞれは、複数のコンデンサ層700において隣り合う2つのコンデンサ層700の向かう合う電極膜同士を絶縁し得る。
それにより、複数の電気絶縁層730は、複数のコンデンサ層700において隣り合う2つのコンデンサ層700の電極膜同士が短絡してしまうことを更に抑制し得る。
また、複数のヒートシンク層740のそれぞれは、当該ヒートシンク層740に近接するコンデンサ層700で発生した熱を熱伝導により吸収し得る。特に、複数のヒートシンク層740は、隣り合う2つのコンデンサ層700の間に配置され、且つ、外側にある2つのコンデンサ層700のそれぞれの外側に配置されているため、発熱した複数のコンデンサ層700同士の熱干渉を抑制し得る。
それにより、複数のヒートシンク層740は、複数のコンデンサ層700の温度分布を略均一化しながら温度上昇を抑制し得る。
【0098】
電極プレート751及び752のそれぞれは、高い熱伝導性及び電気伝導性を有する金属材料を用いて形成されてもよい。例えば、電極プレート751及び752は、銅やアルミを用いて形成されてもよい。
電極プレート751及び752は、複数のコンデンサ層700、複数の電気絶縁層730、及び複数のヒートシンク層740を挟持してもよい。具体的には、電極プレート751及び752は、上述のように積層された状態において、これらの層をその層の側面側から挟持してもよい。
電極プレート751及び752は、当該電極プレート751及び752の面内方向が複数のコンデンサ層700の積層方向に対して略平行となるように形成されてもよい。
【0099】
電極プレート751には、複数のコンデンサ層700のそれぞれの第1電極膜721の一端にある各電極領域722aが電気的に接続されてもよい。電極プレート752には、複数のコンデンサ層700のそれぞれの第1電極膜721の他端にある各電極領域722eが電気的に接続されてもよい。
それにより、電極プレート751及び752は、複数のコンデンサ層700のそれぞれを電気的に並列に接続し得る。
電極プレート751及び752には、複数のヒートシンク層740のそれぞれの両端が熱的に接続されてもよい。このとき、複数のヒートシンク層740のそれぞれの両端には、電極プレート751及び752と同じ材料が予め溶射されていてもよい。電極プレート751及び752と、複数のヒートシンク層740のそれぞれの両端との間の接触熱抵抗が低減され得る。
それにより、電極プレート751及び752には、複数のヒートシンク層740によって吸収された熱が熱伝導により効率的に伝達され得る。
【0100】
電極端子761及び762は、電極プレート751及び752にそれぞれ電気的及び熱的に接続されてもよい。
電極端子761及び762のそれぞれは、電極プレート751及び752と同一の材料を用いて形成されてもよい。電極端子761は、電極プレート751と一体的に形成されてもよい。電極端子762は、電極プレート752と一体的に形成されてもよい。
電極端子761及び762は、複数のコンデンサ層700の積層方向に対して略垂直な方向に向かって延びるように形成されてもよい。
それにより、電極端子761及び762は、ポリイミドコンデンサ70の電極端子を構成し得る。
また、電極端子761及び762には、複数のヒートシンク層740によって吸収され電極プレート751及び752に伝わった熱が熱伝導により効率的に伝達され得る。なお、電極端子761及び762が冷媒流路等の冷却機構と熱的に接続されていると、電極端子761及び762には当該熱が更に効率的に伝達され得る。
【0101】
コーティング部材770は、電気絶縁性を有する樹脂材料を用いて形成されてもよい。例えば、コーティング部材770は、エポキシ樹脂を用いて形成されてもよい。
コーティング部材770は、電極端子761及び762以外のポリイミドコンデンサ70全体を覆ってもよい。
それにより、コーティング部材770は、ポリイミドコンデンサ70の内部を外部から電気的に絶縁し得る。
【0102】
上述のような構成を備えることで、ポリイミドコンデンサ70は、電極端子761及び762の間に電圧が印加されると、複数のコンデンサ層700のそれぞれに電気エネルギーが蓄積され得る。その後、電極端子761及び762の間に電圧が印加されなくなると、ポリイミドコンデンサ70は、複数のコンデンサ層700に蓄積された電気エネルギーを放出し得る。すなわち、ポリイミドコンデンサ70は、電極端子761及び762を介して充放電を繰り返し得る。
充放電を繰り返すと、ポリイミドコンデンサ70に含まれる複数のコンデンサ層700は発熱し得る。複数のコンデンサ層700で発生した熱は、複数のヒートシンク層740によって吸収され得る。特に、上述した複数のヒートシンク層740の構成により、発熱した複数のコンデンサ層700同士の熱干渉を抑制しながら、複数のコンデンサ層700で発生した熱が複数のヒートシンク層740に吸収され得る。
複数のヒートシンク層740によって吸収された熱は、電極プレート751及び752を介して電極端子761及び762に伝達され得る。電極端子761及び762に伝達された熱は、当該電極端子761及び762に接続された冷却機構に伝達され、ポリイミドコンデンサ70の外部に排出され得る。それにより、ポリイミドコンデンサ70の温度上昇は抑制され得る。ポリイミドコンデンサ70の温度は、例えば80℃以下に維持されてもよい。
【0103】
また、ポリイミドコンデンサ70は、コンデンサ層700の数を変更することで、当該ポリイミドコンデンサ70の内部に含まれる並列に接続されたコンデンサの数を適宜変更し得る。
それにより、ポリイミドコンデンサ70は、所望の容量を簡単な設計変更で実現し得る。ポリイミドコンデンサ70に含まれる複数のコンデンサ層700の数は、例えば16層〜24層であってもよい。ポリイミドコンデンサ70の容量がピーキングコンデンサ60と同程度である場合、ポリイミドコンデンサ70は、ピーキングコンデンサ60よりも小型化され得る。
【0104】
このように、ポリイミドコンデンサ70は、誘電体をポリイミドとしてエネルギー損失、容量の温度依存性、及び耐熱性等の優位性を確保し、簡単な構成で耐電圧性能を向上させると共に、多層化により簡単に容量増加を図りつつ、効率的に温度上昇を抑制し得る。
よって、ポリイミドコンデンサ70は、高繰り返し周波数でパルスレーザ光を出力するガスレーザ装置1においても高い性能を安定して発揮し得るため、主放電部11に電力を供給するピーキングコンデンサに好適であり得る。
【0105】
なお、ポリイミドコンデンサ70は、
図5A〜
図5Dに示されるように、単層構造のコンデンサ層700を有する構成である場合にも、電気絶縁層730、ヒートシンク層740、電極プレート751及び752、電極端子761及び762、コーティング部材770を含んでもよい。
この場合、電気絶縁層730は、単層構造のコンデンサ層700に含まれる第1電極膜721及び第2電極膜726の表面を覆ってもよい。
ヒートシンク層740は、電気絶縁層730に覆われた第1電極膜721及び第2電極膜726のそれぞれの外側に2つ配置されてもよい。
電極プレート751及び752は、コンデンサ層700、電気絶縁層730、及びヒートシンク層740が積層された状態において、これらの層をその側面側から挟持してもよい。
電極端子761及び762は、電極プレート751及び752にそれぞれ接続されてもよい。
コーティング部材770は、電極端子761及び762以外のポリイミドコンデンサ70全体を覆ってもよい。
【0106】
[5.充電コンデンサに適用されたポリイミドコンデンサ]
図7A及び
図7Bを用いて、充電コンデンサに適用されたポリイミドコンデンサ70について説明する。
上述のように、
図5A〜
図6Eに示されたポリイミドコンデンサ70は、主放電部11に電力を供給するピーキングコンデンサに適用された場合の構成を示し得る。
パルスパワーモジュール13に含まれる充電コンデンサは、充電器12から受け取った電気エネルギーを、パルス圧縮用のコンデンサを介してピーキングコンデンサに充電させ得る。主放電部11には、充電されたピーキングコンデンサからの放電によってパルス電圧が印加され得る。すなわち、パルスパワーモジュール13の充電コンデンサは、ピーキングコンデンサと同様に、主放電部11に電力を供給するためのコンデンサであり得る。
ポリイミドコンデンサ70は、パルスパワーモジュール13に含まれる充電コンデンサにも適用され得る。当該充電コンデンサはピーキングコンデンサほどの高い耐電圧を必要としない。このため、充電コンデンサに適用されたポリイミドコンデンサ70は、ピーキングコンデンサに適用されたポリイミドコンデンサ70よりも耐電圧性能が低くてもよい。
充電コンデンサに適用されたポリイミドコンデンサ70の構成において、
図5A〜
図6Eに示されたポリイミドコンデンサ70と同様の構成については説明を省略する。
【0107】
図7Aは、充電コンデンサに適用されたポリイミドコンデンサ70の基本構造を説明するための図を示す。
なお、本実施形態では、
図7Aに示されたポリイミドコンデンサ70の基本構造を、
図5A〜
図6Eと同様に、「コンデンサ層700」ともいう。
充電コンデンサに適用されたポリイミドコンデンサ70の基本構造であるコンデンサ層700は、ポリイミド膜710と、一対の電極膜720と、を含んでもよい。
【0108】
ポリイミド膜710の厚みは、例えば5μm〜25μm程度あってもよい。好適には、ポリイミド膜710の厚みは、例えば12.5μmであってもよい。
【0109】
一対の電極膜720に含まれる第1電極膜721及び第2電極膜726のそれぞれは、金、銀、銅、アルミニウム等の高い熱伝導性を有する導電性材料で形成されてもよい。好適には、第1電極膜721及び第2電極膜726のそれぞれは、銅を用いて形成されてもよい。
第1電極膜721及び第2電極膜726のそれぞれの厚みは、例えば5μm〜20μm程度であってもよい。好適には、第1電極膜721及び第2電極膜726のそれぞれの厚みは、例えば10μmであってもよい。
【0110】
第1電極膜721及び第2電極膜726のそれぞれは、
図5A〜
図6Eに示された一対の電極膜720のように、複数の電極領域に分割されていなくてもよい。
第1電極膜721及び第2電極膜726は、
図7Aに示されるように、それぞれ略一様な電極膜であってもよい。当該第1電極膜721及び第2電極膜726のそれぞれの一部は、ポリイミド膜710を介して互いに対向してもよい。
一対の電極膜720及びポリイミド膜710を含むコンデンサ層700は、1つのコンデンサを構成し得る。このとき、1つのコンデンサ層700によって構成された1つのコンデンサの容量は、一対の電極膜720のそれぞれ電極膜が略一様に形成されているため、
図5A〜
図6Eに示された1つのコンデンサ層700に比べて大容量となり得る。
なお、コンデンサ層700の他の構成については、
図5A〜
図6Eに示されたコンデンサ層700の構成と同様であってもよい。
【0111】
図7Bは、
図7Aに示された基本構造のコンデンサ層700を多層化して構成されたポリイミドコンデンサ70を説明するための図を示す。
多層化されたポリイミドコンデンサ70は、複数のコンデンサ層700と、複数の電気絶縁層730と、電極プレート751及び752と、電極端子761及び762と、コーティング部材770とを含んでもよい。
図7Bに示されたポリイミドコンデンサ70には、
図5A〜
図6Eに示されたポリイミドコンデンサ70に含まれる複数のヒートシンク層740が含まれていなくてもよい。
【0112】
複数のコンデンサ層700のそれぞれに含まれる第1電極膜721の一端は、電極プレート751に対して電気的及び熱的に接続されてもよい。複数のコンデンサ層700のそれぞれに含まれる第2電極膜726の一端は、電極プレート752に対して電気的及び熱的に接続されてもよい。
【0113】
複数の電気絶縁層730のそれぞれの厚みは、例えば20μm〜100μm程度であってもよい。好適には、複数の電気絶縁層730のそれぞれの厚みは、例えば70μmであってもよい。
ポリイミドコンデンサ70の他の構成については、
図5A〜
図6Eに示されたポリイミドコンデンサ70の構成と同様であってもよい。
【0114】
上述のような構成を備えることで、ポリイミドコンデンサ70は、
図5A〜
図6Eに示されたポリイミドコンデンサ70と同様に、電極端子761及び762を介して充放電を繰り返し得る。
充放電を繰り返すと、ポリイミドコンデンサ70に含まれる複数のコンデンサ層700は発熱し得る。複数のコンデンサ層700で発生した熱は、当該複数のコンデンサ層700のそれぞれに含まれる一対の電極膜720を伝って、電極プレート751及び752によって吸収され得る。これは、当該一対の電極膜720の第1電極膜721及び第2電極膜726が、分割されておらず略一様に形成されているためであり得る。このことから、当該ポリイミドコンデンサ70には複数のヒートシンク層740が含まれていなくてもよい。
電極プレート751及び752によって吸収された熱は、電極端子761及び762に伝達され得る。電極端子761及び762に伝達された熱は、当該電極端子761及び762に接続された冷却機構に伝達され、ポリイミドコンデンサ70の外部に排出され得る。それにより、ポリイミドコンデンサ70の温度上昇は抑制され得る。
【0115】
このように、
図7Bに示されたポリイミドコンデンサ70は、
図5A〜
図6Eに示されたポリイミドコンデンサ70と比べて、エネルギー損失、容量の温度依存性、及び耐熱性等の優位性を確保しつつ、より簡単な構成で更なる容量増加を図ると共に温度上昇を抑制し得る。
よって、ポリイミドコンデンサ70は、高繰り返し周波数でパルスレーザ光を出力するガスレーザ装置1においても高い性能を安定して発揮し得るため、主放電部11に電力を供給する充電コンデンサにも好適であり得る。
【0116】
なお、充電コンデンサに適用されたポリイミドコンデンサ70の多層構造は、
図7Bに示された複数のコンデンサ層700が積層された構造に限定されない。
例えば、複数のコンデンサ層700のそれぞれに含まれるポリイミド膜710が1つのシート状に繋がって形成されていてもよい。当該ポリイミド膜710は、幅50mm〜100mm、長さ1000mm〜2000mmの大きさに形成されてもよい。シート状のポリイミド膜710の上面及び下面には、複数対の電極膜720が形成されてもよい。
そして、充電コンデンサに適用されたポリイミドコンデンサ70は、複数対の電極膜720が形成されたシート状のポリイミド膜710を、蛇腹状に折り畳んだり、渦巻き状に巻き込んだりすることによって、多層化されてもよい。
【0117】
[6.ポリイミドコンデンサを含むガスレーザ装置]
図8及び
図9を用いて、ポリイミドコンデンサ70を含むガスレーザ装置1について説明する。
図8は、ポリイミドコンデンサ70を含むガスレーザ装置1の構成を説明するための図を示す。
図9は、
図8に示されたレーザチャンバ10のZ軸方向から視た断面図を示す。
【0118】
ポリイミドコンデンサ70は、上述のように、ピーキングコンデンサや充電コンデンサ等の主放電部11に電力を供給するコンデンサに適用され得る。
図8及び
図9に示されたガスレーザ装置1では、
図1〜
図3に示されたピーキングコンデンサ60の代りに、
図6A〜
図6Eの多層化されたポリイミドコンデンサ70が適用されている。当該ポリイミドコンデンサ70は、ピーキングコンデンサ60よりも小型であり得る。
図8及び
図9に示されたガスレーザ装置1の構成において、
図1及び
図2に示されたガスレーザ装置1と同様の構成については説明を省略する。
図8及び
図9に示されたガスレーザ装置1に含まれるポリイミドコンデンサ70の構成において、
図5A〜
図6Eと同様の構成については説明を省略する。
【0119】
図6A〜
図6Eの多層化されたポリイミドコンデンサ70は、ピーキングコンデンサ60と同様に、当該第1放電電極11aにおけるレーザガス流の上流側及び下流側の位置に、それぞれ複数個配置されてもよい。
ポリイミドコンデンサ70の電極端子761は、パルスパワーモジュール13の高電圧端子13bに接続されてもよい。ポリイミドコンデンサ70の電極端子761は、接続部19及びフィードスルー18を介して、第1放電電極11aに接続されてもよい。
ポリイミドコンデンサ70の電極端子762は、ホルダ50の壁50aに接続されてもよい。
ポリイミドコンデンサ70がピーキングコンデンサ60よりも小型化され得るため、ポリイミドコンデンサ70は、ピーキングコンデンサ60よりもレーザチャンバ10側に近い位置に配置されてもよい。
それにより、
図8及び
図9に示されたガスレーザ装置1の放電回路におけるループ面積は、
図1及び
図2に示されたガスレーザ装置1よりも小さくなり得る。
図8及び
図9に示されたガスレーザ装置1の放電効率は、
図1及び
図2に示されたガスレーザ装置1よりも向上し得る。
【0120】
ガスレーザ装置1の接続部19は、ピーキングコンデンサに適用されたポリイミドコンデンサ70を他の構成要素と接続するための部材であってもよい。
接続部19は、接続プレート19aと、接続端子19bと、接続端子19cとを含まなくてもよい。接続部19は、接続プレート19dを含んでもよい。
【0121】
接続プレート19dは、断面が矩形状の導電板によって構成されてもよい。
接続プレート19dは、第1放電電極11aの長手方向に沿って配置されてもよい。
接続プレート19dの下面は、フィードスルー18と電気的に接続されてもよい。
接続プレート19dの上面は、パルスパワーモジュール13の高電圧端子13bと電気的に接続されてもよい。
第1放電電極11aにおけるレーザガス流の上流側に位置する接続プレート19dの上面は、当該上流側に位置する複数のポリイミドコンデンサ70のそれぞれの電極端子761と電気的に接続されてもよい。第1放電電極11aにおけるレーザガス流の下流側に位置する接続プレート19dの上面は、当該下流側に位置する複数のポリイミドコンデンサ70のそれぞれの電極端子761と電気的に接続されてもよい。
【0122】
ホルダ50は、ピーキングコンデンサに適用されたポリイミドコンデンサ70を保持する容器であってもよい。
ポリイミドコンデンサ70がピーキングコンデンサ60よりも小型化され得るため、ホルダ50のY軸方向の大きさは、ピーキングコンデンサ60を保持するホルダ50に比べて小さくてもよい。
ホルダ50の壁50aの内部には、冷媒が流れる冷媒流路53が設けられてもよい。冷媒は冷却水であってもよい。
冷媒流路53は、図示しないポンプに連結されてもよい。冷媒流路53を流れる冷媒は、当該ポンプによって循環してもよい。
冷媒流路53は、ポリイミドコンデンサ70の電極端子762が接続された位置付近の壁50aの内部に設けられてもよい。
ポリイミドコンデンサ70で発生した熱は、電極端子762を介してホルダ50の壁50aに伝達され得る。当該壁50aに伝達された熱は、冷媒流路53を循環する冷媒に伝達され、ホルダ50の外部に排出され得る。
それにより、
図8及び
図9に示されたガスレーザ装置1に含まれるポリイミドコンデンサ70は、
図1及び
図2に示されたガスレーザ装置1に含まれるより温度上昇が抑制され得る。
図8及び
図9に示されたガスレーザ装置1の他の構成については、
図1及び
図2に示されたガスレーザ装置1の構成と同様であってもよい。
【0123】
上述のような構成を備えることで、
図8及び
図9に示されたガスレーザ装置1は、高繰り返し周波数でパルスレーザ光を出力する場合であってもピーキングコンデンサの性能を安定化させ得る。
それにより、
図8及び
図9に示されたガスレーザ装置1は、ピーキングコンデンサから主放電部11に印加されるパルス電圧を安定化させ、出力されるパルスレーザ光の性能を安定化させ得る。特に、
図8及び
図9に示されたガスレーザ装置1は、出力されるパルスレーザ光のパルスエネルギー、パルス幅の波形、スペクトル幅の波形等を安定化させ得る。
更に、
図8及び
図9に示されたガスレーザ装置1は、当該ガスレーザ装置1の放電回路において放電効率を向上させ得る。
【0124】
[7.ポリイミドコンデンサの変形例]
図10〜
図12を用いて、ポリイミドコンデンサ70の変形例について説明する。
半導体露光装置の光源として用いられるガスレーザ装置1において、ポリイミドコンデンサ70には、例えば150pF〜400pF程度の容量が要求され得る。更に、ポリイミドコンデンサ70には、例えば20kV〜50kV程度の耐電圧性能が要求され得る。
しかしながら、ポリイミドを誘電体とするコンデンサにおいて、上記のような容量で上記のような高い耐電圧性能を有するコンデンサは普及していないのが現状であり得る。
【0125】
図10は、
図6A〜
図6Eに示されたポリイミドコンデンサ70に含まれる1つのコンデンサ層700の一部を拡大した図を示す。
上述のように、1つのコンデンサ層700には、一対の電極膜720及びポリイミド膜710が含まれ得る。一対の電極膜720には、第1及び第2電極膜721及び726が含まれ得る。第1及び第2電極膜721及び726には、複数の電極領域722a〜722e及び727a〜727dが含まれ得る。
【0126】
ポリイミドコンデンサ70に高電圧が印加されると、
図10の破線部分に示されるように、一対の電極膜720に含まれる複数の電極領域722a〜722e及び727a〜727dの角部分には、電界集中が発生し易い。加えて、
図10の破線部分に示されるように、複数の電極領域722a〜722e及び727a〜727dと、ポリイミド膜710と、電気絶縁層730との三者の境界部分には、電界集中が発生し易い。
そのため、複数の電極領域722a〜722e同士や複数の電極領域727a〜727d同士で絶縁破壊が発生し、複数の電極領域722a〜722e同士の間や複数の電極領域727a〜727d同士が短絡し易い。
よって、複数の電極領域722a〜722e同士や複数の電極領域727a〜727d同士で発生する絶縁破壊を抑制することには改善の余地があり得る。当該絶縁破壊を抑制することによってポリイミドコンデンサ70の耐電圧性能を向上させ得る。
【0127】
なお、
図10に示されたポリイミドコンデンサ70のポリイミド膜710の厚みは、例えば12〜15μm程度であってもよい。
一対の電極膜720に含まれる複数の電極領域722a〜722e及び727a〜727dのそれぞれの厚みは、例えば10μm程度であってもよい。
電気絶縁層730の厚みは、ポリイミド膜710の表面から例えば70μm〜80μm程度であってもよい。
【0128】
図11は、ポリイミドコンデンサ70の変形例を説明するための図を示す。
図12は、
図11に示されたポリイミドコンデンサ70に含まれる1つのコンデンサ層700の一部を拡大した図を示す。
変形例に係るポリイミドコンデンサ70は、
図6A〜
図6Eに示されたポリイミドコンデンサ70に対して、複数の電気絶縁層730の構成が主に異なってもよい。
変形例に係るポリイミドコンデンサ70の構成において、
図6A〜
図6Eに示されたポリイミドコンデンサ70と同様の構成については説明を省略する。
【0129】
変形例に係るポリイミドコンデンサ70に含まれる複数の電気絶縁層730のそれぞれは、絶縁破壊電圧が互いに異なる複数の絶縁部材を含んでもよい。
複数の電気絶縁層730のそれぞれは、少なくとも弾性体の絶縁部材を含んでもよい。
複数の電気絶縁層730のそれぞれは、絶縁破壊電圧及び弾性体の有無が互いに異なる複数の絶縁部材を含んでもよい。
複数の電気絶縁層730のそれぞれは、第1絶縁部材731と、第2絶縁部材732と、を含んでもよい。
【0130】
第2絶縁部材732は、非弾性体の電気絶縁材料を用いて形成されてもよい。第2絶縁部材732は、第1絶縁部材731より大きい絶縁破壊電圧を有する電気絶縁材料を用いて形成されてもよい。第2絶縁部材732は、複数のコンデンサ層700のそれぞれに含まれる一対の電極膜720及びポリイミド膜710に密着し得る電気絶縁材料を用いて形成されてもよい。
第2絶縁部材732は、ポリイミド樹脂を用いて形成されてもよい。
第2絶縁部材732は、ポリイミドワニス等の液体状のポリイミド樹脂を一対の電極膜720及びポリイミド膜710の上に塗布した後、乾燥されて固化されることによって、形成されてもよい。
第2絶縁部材732の厚みは、ポリイミド膜710の表面から例えば20μm程度であってもよい。第2絶縁部材732の厚みは、複数の電極領域722a〜722e及び727a〜727dのそれぞれの表面から例えば10μm程度であってもよい。
【0131】
第2絶縁部材732は、複数のコンデンサ層700のそれぞれに含まれる一対の電極膜720及びポリイミド膜710のそれぞれに接触して設けられてもよい。
第2絶縁部材732は、一対の電極膜720に含まれる複数の電極領域722a〜722e及び727a〜727dのそれぞれの表面を覆い、且つ、ポリイミド膜710の表面を覆ってもよい。このとき、第2絶縁部材732は、間隔723a〜723d及び728a〜728eのそれぞれを充填するように、複数の電極領域722a〜722e及び727a〜727d並びにポリイミド膜710のそれぞれの表面を覆ってもよい。更に、第2絶縁部材732は、その表面が略平坦で且つポリイミド膜710に略平行となるように、複数の電極領域722a〜722e及び727a〜727d並びにポリイミド膜710のそれぞれの表面を覆ってもよい。
【0132】
第2絶縁部材732の表面が、略平坦でなく、複数の電極領域722a〜722e及び727a〜727dと間隔723a〜723d及び728a〜728eとの凹凸形状に追従するように形成されると、凹凸形状となった第2絶縁部材732の角部分で電界集中が発生し易い。
このため、第2絶縁部材732の表面は略平坦であることが好ましい。
【0133】
第1絶縁部材731は、弾性体の電気絶縁材料を用いて形成されてもよい。第1絶縁部材731は、第2絶縁部材732より小さい絶縁破壊電圧を有する電気絶縁材料を用いて形成されてもよい。第1絶縁部材731は、ある程度の熱伝導性を有する電気絶縁材料を用いて形成されてもよい。第1絶縁部材731は、第2絶縁部材732及びヒートシンク層740に密着し得る材料を用いて形成されてもよい。
第1絶縁部材731は、シリコーン樹脂を用いて形成されてもよい。第1絶縁部材731を形成する材料は、
図6A〜
図6Eに示された複数の電気絶縁層730のそれぞれを形成する材料と実質的に同一であってもよい。
第1絶縁部材731の厚みは、第2絶縁部材732の表面から例えば50μm程度であってもよい。
【0134】
第1絶縁部材731は、第2絶縁部材732及びヒートシンク層740のそれぞれに接触して設けられてもよい。
第1絶縁部材731は、第2絶縁部材732とヒートシンク層740との間を充填するように、設けられてもよい。
【0135】
また、変形例に係るポリイミドコンデンサ70に含まれる1つのコンデンサ層700の内部に含まれる直列に接続されたコンデンサの数は、要求される耐電圧性能が絶縁破壊電圧で20kV〜50kVである場合、例えば8〜30個であってもよい。
変形例に係るポリイミドコンデンサ70に含まれる複数のコンデンサ層700の数は、要求される容量が150pF〜400pFである場合、例えば16層〜50層であってもよい。
【0136】
変形例に係るポリイミドコンデンサ70の他の構成については、
図6A〜
図6Eに示されたポリイミドコンデンサ70と同様であってもよい。
【0137】
上記構成により、変形例に係るポリイミドコンデンサ70は、半導体露光装置の光源として用いられるガスレーザ装置1のコンデンサにおいて最適な150pF〜400pF程度の容量を確保し得る。
更に、変形例に係るポリイミドコンデンサ70は、複数の電気絶縁層730のそれぞれが第2絶縁部材732を含むことにより、耐電圧性能を向上させて20kV〜50kV程度の高い耐電圧性能を確保し得る。
また、変形例に係るポリイミドコンデンサ70は、複数の電気絶縁層730のそれぞれが第1絶縁部材731を含むことにより、コンデンサ層700で発熱した熱を、第2絶縁部材732を介してヒートシンク層740に効率的に伝達し得る。
しかも、変形例に係るポリイミドコンデンサ70は、複数の電気絶縁層730のそれぞれが第1絶縁部材731を含むことにより、コンデンサ層700、第2絶縁部材732及びヒートシンク層740の熱変形を、第1絶縁部材731の弾性変形によって吸収し得る。
【0138】
それにより、変形例に係るポリイミドコンデンサ70は、
図6A〜
図6Eに示されたポリイミドコンデンサ70よりも更に耐電圧性能及び耐久性能を向上させ得るため、高繰り返し周波数でパルスレーザ光を出力する場合であってもコンデンサの性能を更に安定化させ得る。
その結果、変形例に係るポリイミドコンデンサ70を備えるガスレーザ装置1は、
図6A〜
図6Eに示されたポリイミドコンデンサ70を備えるガスレーザ装置1よりも、出力されるパルスレーザ光の性能を更に安定化させ得る。
【0139】
なお、
図11及び
図12に示されたポリイミドコンデンサ70の変形例は、
図6A〜
図6Eに示されたピーキングコンデンサに適用されたポリイミドコンデンサ70に限定されない。
図11及び
図12に示されたポリイミドコンデンサ70の変形例は、
図7A及び
図7Bに示された充電コンデンサに適用されるポリイミドコンデンサ70においても、適用され得る。
【0140】
[8.その他]
[8.1 ガスレーザ装置に用いられる充放電回路]
図13を用いて、ガスレーザ装置1に用いられる充放電回路について説明する。
図13は、ガスレーザ装置1に用いられる充放電回路の回路構成を説明するための図を示す。
【0141】
パルスパワーモジュール13は、上述したスイッチ13aである半導体スイッチと、トランスTC
1と、磁気スイッチMS
1〜MS
3と、充電コンデンサC
0と、コンデンサC
1及びC
2と、を含んでもよい。
コンデンサC
1及びC
2は、パルス圧縮用のコンデンサであってもよい。
コンデンサC
3は、ピーキングコンデンサであってもよい。
コンデンサC
cは、予備電離用のコンデンサであってもよい。
磁気スイッチMS
1〜MS
3に印加される電圧の時間積分値が閾値に達すると、磁気スイッチMS
1〜MS
3には電流が流れ易くなり得る。当該閾値は磁気スイッチ毎に異なる値であってもよい。
本実施形態では、磁気スイッチMS
1〜MS
3が電流を流し易い状態であることを、「磁気スイッチが閉じている」ともいう。
【0142】
スイッチ13aは、トランスTC
1の1次側と充電コンデンサC
0との間に設けられてもよい。
磁気スイッチMS
1は、トランスTC
1の2次側とコンデンサC
1との間に設けられてもよい。
磁気スイッチMS
2は、コンデンサC
1とコンデンサC
2との間に設けられてもよい。
磁気スイッチMS
3は、コンデンサC
2とコンデンサC
3との間に設けられてもよい。
トランスTC
1の1次側と2次側とは、電気的に絶縁されていてもよい。トランスTC
1の1次側の巻き線の方向と2次側の巻き線の方向とは、逆方向であってもよい。
【0143】
第2放電電極11b及び予備電離外電極43は、接地されていてもよい。
コンデンサC
cを含む分圧回路は、第1放電電極11a及び第2放電電極11bに対して並列に接続されてもよい。
コンデンサC
cは、予備電離内電極41、誘電体パイプ42、及び予備電離外電極43に対して直列に接続されてもよい。
【0144】
図13に示された充放電回路の動作について説明する。
充電器12には、制御部30により充電電圧Vhvが設定されてもよい。充電器12は、設定された充電電圧Vhvに基づいて、充電コンデンサC
0を充電してもよい。
パルスパワーモジュール13のスイッチ13aには、制御部30により発振トリガ信号が出力されてもよい。発振トリガ信号がスイッチ13aに入力されると、パルスパワーモジュール13は、スイッチ13aがONになってもよい。スイッチ13aがONになると、充電コンデンサC
0からトランスTC
1の1次側に電流が流れ得る。
【0145】
トランスTC
1の1次側に電流が流れると、電磁誘導によってトランスTC
1の2次側に逆方向の電流が流れ得る。トランスTC
1の2次側に電流が流れると、やがて磁気スイッチMS
1に印加される電圧の時間積分値が閾値に達し得る。
磁気スイッチMS
1に印加される電圧の時間積分値が閾値に達すると、磁気スイッチMS
1は磁気飽和した状態となり、磁気スイッチMS
1は閉じ得る。
磁気スイッチMS
1が閉じると、トランスTC
1の2次側からコンデンサC
1に電流が流れ、コンデンサC
1が充電され得る。
【0146】
コンデンサC
1が充電されることにより、やがて磁気スイッチMS
2は磁気飽和した状態となり、磁気スイッチMS
2は閉じ得る。
磁気スイッチMS
2が閉じると、コンデンサC
1からコンデンサC
2に電流が流れ、コンデンサC
2が充電され得る。このとき、コンデンサC
1を充電する際の電流のパルス幅よりも短いパルス幅で、コンデンサC
2が充電されてもよい。
【0147】
コンデンサC
2が充電されることにより、やがて磁気スイッチMS
3は磁気飽和した状態となり、磁気スイッチMS
3は閉じ得る。
磁気スイッチMS
3が閉じると、コンデンサC
2からコンデンサC
3に電流が流れ、コンデンサC
3が充電され得る。このとき、コンデンサC
2を充電する際の電流のパルス幅よりも短いパルス幅で、コンデンサC
3が充電されてもよい。
【0148】
このように、コンデンサC
1からコンデンサC
2、コンデンサC
2からコンデンサC
3へと電流が順次流れることにより、当該電流のパルス幅は圧縮され得る。
【0149】
コンデンサC
3が充電されることにより、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの間には、コンデンサC
3によってパルス電圧が印加され得る。
【0150】
第1放電電極11a及び第2放電電極11bに対して並列に接続された分圧回路は、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの間に印加されるパルス電圧を分圧してもよい。
分圧される範囲は、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの間に印加されるパルス電圧の25%〜75%の範囲であってもよい。分圧されたパルス電圧は、予備電離内電極41及び予備電離外電極43の間に印加されてもよい。
分圧回路における分圧比、コンデンサC
cの容量、及びインダクタL
0のインダクタンスを調節することにより、分圧回路の時定数は所望の値に調節され得る。それにより、主放電に対する予備電離放電のタイミングは調節され得る。分圧回路における合成容量は、コンデンサC
3の容量の10%以下に調節されてもよい。
予備電離内電極41と予備電離外電極43との間にパルス電圧が印加されると、誘電体パイプ42の表面にコロナ放電が生成し得る。そして、このコロナ放電により生成したUV光によって、主放電部11の放電空間内のレーザガスは予備電離され得る。
【0151】
第1放電電極11a及び第2放電電極11bの間に印加されたパルス電圧がレーザガスの絶縁耐圧より大きくなると、レーザガスは絶縁破壊され得る。レーザガスが絶縁破壊されると、第1放電電極11a及び第2放電電極11bの間には主放電が発生し得る。このとき、第1放電電極11aには、負の電位が印加されてもよい。
【0152】
[8.2 その他の変形例]
ガスレーザ装置1は、エキシマレーザ装置ではなく、フッ素ガス及びバッファガスをレーザガスとするフッ素分子レーザ装置であってもよい。
【0153】
第1放電電極11aは、カソード電極ではなくアノード電極であってもよい。第2放電電極11bは、アノード電極ではなくカソード電極であってもよい。この場合、例えば、パルスパワーモジュール13のトランスTC
1における1次側の巻き線方向と2次側の巻き線方向とを同一の方向にすることで、第1放電電極11a及び第2放電電極11bをそれぞれアノード電極及びカソード電極にすればよい。
【0154】
ガスレーザ装置1は、狭帯域化モジュール14を備えた狭帯域化レーザ装置でなく、自然発振光を出力するレーザ装置であってもよい。この場合、ガスレーザ装置1には、狭帯域化モジュール14の代りに高反射ミラーが配置されてもよい。
【0155】
上記で説明した実施形態は、変形例を含めて、各実施例同士や各実施形態同士で互いの技術を適用し得ることは、当業者には明らかであろう。
【0156】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0157】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0158】
1 …ガスレーザ装置
10 …レーザチャンバ
11 …主放電部
11a …第1放電電極
11b …第2放電電極
30 …制御部
70 …ポリイミドコンデンサ
700 …コンデンサ層
710 …ポリイミド膜
720 …電極膜
721 …第1電極膜
722 …電極領域
723 …間隔
726 …第2電極膜
727 …電極領域
728 …間隔
730 …電気絶縁層
731 …第1絶縁部材
732 …第2絶縁部材
740 …ヒートシンク層