(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6546979
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】周波数変換結晶アニール方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/37 20060101AFI20190705BHJP
C30B 29/30 20060101ALI20190705BHJP
C30B 33/02 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
G02F1/37
C30B29/30 A
C30B33/02
【請求項の数】17
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-229902(P2017-229902)
(22)【出願日】2017年11月30日
(62)【分割の表示】特願2016-257173(P2016-257173)の分割
【原出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2018-41103(P2018-41103A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2017年11月30日
(31)【優先権主張番号】61/510,633
(32)【優先日】2011年7月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/412,564
(32)【優先日】2012年3月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー−テンカー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドリビンスキ ヴラディミル
(72)【発明者】
【氏名】チュアン ヤン−ホ アレックス
(72)【発明者】
【氏名】アームストロング ジョセフ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】フィールデン ジョン
【審査官】
山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−249092(JP,A)
【文献】
国際公開第1996/038757(WO,A1)
【文献】
特表2006−519159(JP,A)
【文献】
米国特許第06650819(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/35−1/39
H01S 3/108
C30B 29/30,33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変換結晶をアニールする方法であって、
約2時間にわたって約150℃に温度を上昇させるステップと、
約10時間、前記温度を150℃近くで保持するステップと、
約1時間にわたって前記温度を約200℃に上昇させるステップと、
約100時間以上、前記温度を150℃と200℃との間で保持するステップと、
約3時間にわたって前記温度を室温近くに低下させるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
周波数変換結晶をアニールする方法であって、
(a)約2時間にわたって温度を約150℃に上昇させるステップと、
(b)約10時間、前記温度を150℃近くで保持するステップと、
(c)ステップ(b)の間に、−OH結合吸収が第1のレベルであるかどうかを判断し、第1のレベルではない場合には、前記温度を150℃近くで保持し続け、第1のレベルである場合には、ステップ(d)に進む、ステップと、
(d)約1時間にわたって前記温度を約200℃に上昇させるステップと、
(e)約100時間、温度を150℃と200℃の間に保持するステップと、
(f)ステップ(e)の間に、前記‐OH結合吸収が第2のレベルであるかどうかを判断し、第2のレベルではない場合には、前記温度を150℃と200℃との間で保持し続け、第2のレベルである場合には、ステップ(g)に進む、ステップと、
(g)約3時間にわたって前記温度を実質的に室温まで低下させるステップと、
を含む方法。
【請求項3】
前記判断するステップ(c)及び(e)がFTIR(フーリエ変換赤外線分光法)を使用する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記FTIRが赤外線スペクトルの3580cm−1近くで‐OH結合を監視する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
結晶中の不純物の量を減少させる多段強化アニール方法であって、
前記結晶の温度を第1の所定温度に上昇させる第1の強化段階と、
前記結晶を前記第1の所定温度に保持し、前記結晶中の前記不純物の量を元の量から第1のレベルに減少させるステップと、
前記結晶の温度を、前記第1の所定温度よりも高い、第2の所定温度に上昇させる第2の強化段階と、
前記結晶を前記第2の所定温度に保持し、前記結晶中の前記不純物の量を前記第1のレベルから第2のレベルに減少させるステップと、
前記結晶の温度を室温近くに低下させるステップと、
を含む、多段強化アニール方法。
【請求項6】
前記方法が、前記結晶中の水の量を減少させるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の強化段階の間、前記保持するステップの間、前記第2の強化段階の間、及び前記温度を低下させるステップの間に、前記結晶を約20ppm未満の水のある環境に置くステップと、をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の強化段階が前記環境の温度を約150℃まで漸進的に上昇させるステップを含み、
前記結晶を前記第1の所定温度に保持するステップが、前記環境を約150℃に維持するステップを含み、
前記第2の強化段階が、前記環境の温度を150℃から約200℃に漸進的に上昇させるステップを含み、
前記結晶を前記第2の所定温度に保持するステップが、前記環境を約200℃に維持するステップを含み、
前記温度を低下させるステップが前記環境を約200℃から室温に徐々に下げるステップを含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記環境の温度を約150℃まで上昇させるステップが、前記結晶の温度を約2時間にわたり漸進的に上昇させるステップを含み、
前記環境を約150℃に維持するステップが、前記結晶を約10時間150℃に保持するステップを含み、
前記環境の温度を150℃から約200℃に漸進的に上昇させるステップが、前記結晶の温度を約1時間にわたり漸進的に上昇させるステップを含み、
前記環境を約200℃に維持するステップが、前記結晶を約100時間200℃に保持するステップを含み、
前記環境を室温に下げるステップが、前記結晶の温度を約3時間にわたり漸進的に室温まで低下させるステップを含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記結晶を前記第1の所定温度に保持するステップが、−OH結合吸収が第1のレベルであるかどうかを判断し、第1のレベルではない場合には前記温度を150℃近くで保持し続け、第1のレベルである場合には、前記環境の温度を150℃から約200℃に上昇させる前記ステップを行う、ステップをさらに含み、
前記結晶を前記第2の所定温度に保持するステップが、前記‐OH結合吸収が第2のレベルであるかどうかを判断し、第2のレベルではない場合には、前記温度を150℃と200℃との間で保持し続け、第2のレベルである場合には、前記環境を室温に下げる前記ステップを行う、ステップをさらに含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記判断するステップがFTIR(フーリエ変換赤外線分光法)を利用するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
吸湿性物質中の水の量を減少させる多段強化アニールプロセスであって、
20ppm未満の水を有する環境に置かれた吸湿性物質の温度を第1の所定温度に上昇させる第1の強化段階と、
‐OH結合吸収が第1のレベルになるまで、前記吸湿性物質を前記環境において前記第1の所定温度に保持するステップと、
前記環境における前記吸湿性物質の温度を、前記第1の所定温度よりも高い第2の所定温度に上昇させる第2の強化段階と、
前記‐OH結合吸収が第2のレベルになるまで、前記吸湿性物質を前記環境において前記第2の所定の温度に保持するステップと、
前記吸湿性物質の温度を室温近くに低下させるステップと、
を含む、多段強化アニール方法。
【請求項13】
周波数変換結晶をアニールする方法であって、
第1の設定点に前記周波数変換結晶の温度を変更するステップと、
予備焼成期間に前記周波数変換結晶の温度を前記第1の設定点に保持するステップと、
第2の設定点に前記周波数変換結晶の温度を変更するステップと、
焼成期間に前記周波数変換結晶の温度を前記第2の設定点に保持するステップと、
前記周波数変換結晶の前記温度を実質的に室温に変更するステップと、
を含み、
前記焼成期間の間に、FTIR(フーリエ変換赤外線分光法)が赤外線スペクトルの3580cm−1近くで‐OH吸収ピークが初期値から所定レベルまで削減されたか否かを監視し、前記所定レベルまで削減された場合に前記周波数変換結晶のアニールが完了していると判断する、方法。
【請求項14】
前記第1の設定点が100℃を超えている、請求項13に記載のアニール方法。
【請求項15】
前記予備焼成期間が4時間を超えている、請求項13に記載のアニール方法。
【請求項16】
前記第2の設定点が150℃を超えている、請求項13に記載のアニール方法。
【請求項17】
前記焼成期間が50時間を超えている、請求項13に記載のアニール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、「Mode−Locked UV Laser With High Quality,Stable Output Beam, Long−Life High Conversion Efficiency Non−Linear Crystal And A Wafer Inspection Using A Mode−Locked UVLaser」と題し、2011年7月22日に出願された米国仮出願第61/510,633号の優先権を主張する。
【0002】
本発明はレーザに関し、特に周波数変換プロセスによってより長波長の放射からより短波長の放射を得るために非線形結晶を使用するレーザに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体製造の各連続ノードは、ウェハのより小さな欠陥および粒子の検出を必要とする。したがって、ウェハ検査用のなおさらに高い出力およびより短い波長のUV(紫外線)レーザはつねに需要がある。欠陥または粒径は縮小されるため、その欠陥または粒子によって反射または散乱される光の小部分も通常は縮小される。結果的に、より小さい欠陥および粒子を検出するには改善された信号対雑音比が必要になる。欠陥または粒子を照明するためにより明るい光源が使用される場合、その結果より多くの光子が散乱または反射され、他の雑音源が制御されている限り信号対雑音比を改善できる。光の波長よりも小さい粒子によって散乱する光の小部分は、波長が減少するにつれ大きくなるため、より短い波長を使用することで、より小さな欠陥に対する感度をさらに改善することができる。
【0004】
一般に、半導体ウェハの検査および計測のニーズは、(たとえば、M
2がビームのビームパラメータ積の、同じ波長の理想的なガウスビームのビームパラメータ積に対する比である、1に近いM
2を用いる)高いビーム品質の連続波(CW)レーザによって満たすことができる。十分な出力およびビーム品質のCWレーザが利用できない場合、次いで一般に次善の代替策は、たとえば約50MHz以上の繰返し率の高繰返し率レーザである。係る高繰返し率は(パルスレーザの一種である)モードロックレーザで可能である。Qスイッチレーザは、はるかに低い(10MHzより低く、通常は1MHzよりも低い)繰返し率を有する。一般に、モードロックレーザは約ピコ秒またはフェムト秒ものきわめて短いパルスを発することができる。モードロックレーザは、その共振空洞のモードの間に固定された位相関係を生じさせ、その結果それらのモード間の干渉によってパルスとしてレーザ光を生じさせる。
【0005】
小さな欠陥または粒子を検出するおよび/または小さな面積を測定するためにはレーザビームを小さなスポット(または線)に集束しなければならないため、(たとえば、M
2によって測定されるような)ビーム品質は、半導体の検査および計測の用途で重要である。ビーム品質が低い場合には、ウェハ上の集束されたスポット(または線)は、プロファイルがガウスではなく、そのプロファイルの尾部は理想よりも多くのエネルギーを含む。それらの尾部がより大きくなった結果、信号の少なくともいくらかが関心のある領域外から収集され、それによって関心のある領域からの信号のコントラストが削減される。
【0006】
非線形結晶は、長波長ビームの高調波を発生させることによって、または異なる周波数の2つのレーザビームを混合して、その2つの周波数の和(または差)に等しい周波数を生じさせることによってUVレーザビームを生じさせるために使用できる。高調波の発生および混合のプロセスは非線形プロセスであるため、より高い入射出力密度は、通常より効率的な変換プロセスおよびより高い出力パワーを生じさせる。
【0007】
しかしながら、非線形結晶上で入射レーザ出力を増大すると望ましくない副次的影響が生じることがある。具体的には、高出力レベルは結晶の屈折率を変化させることがある(写真屈折検査法)。結晶内で集束したレーザスポットはほぼガウスのプロファイルを有するため、輝度は結晶内部の異なる場所で相違する。したがって、屈折率の変化は結晶内の場所で変わる。結晶でのこの屈折率勾配は出力ビームを歪め、それによって非点収差を生じさせることがある。出力レーザビームの質が悪化するにつれ、そのビームによって生成されるウェハ上のスポットまたは線はより広くなり、したがって小さな粒子または欠陥を検出するにはより効率的でなくなる。少量の非点収差は結晶の後ろのビーム経路に配置される光学部品によってほぼ補正され得るが、係る補正はおおよそであるにすぎず、初期の非点収差レベルが非常に低い場合にのみ効果的となる。
【0008】
結晶でのより高い入射出力レベルの別の望ましくない副次的影響は、経時的に結晶内で恒久的な損傷が発生することがあるという点である。露光が蓄積されると、この損傷により非点収差が概して増大するだけではなく、出力強度も概して減少することがある。したがって、光学部品を用いて非点収差を補正するには、頻繁な較正調整が必要となり、商業的な用途では実現困難だろう。さらに、非点収差が、調整を行っても較正が可能ではないレベルまで急速に増大することもある。
【0009】
また、より短い出力波長を生成することは、出力光子がより活動的であり、したがって結晶の特性を変化させる、または結晶の特性に恒久的に損傷を与えることもあるため、結晶の劣化を加速することもある。したがって、より短い出力波長では、非点収差および他の有害なビーム品質および強度の影響が次第に発生することもある。
【0010】
非線形結晶の最適出力密度は、(通常は可能な限り高い出力密度を要求する)最大変換効率と、優れたビームプロファイルを維持しつつ、最小化する色中心形成、写真屈折検査法、および二光子吸収(そのすべてが出力密度を引き下げることによって最小限に抑えられる)との間のバランスである。
【0011】
特に、写真屈折検査法および二光子吸収は光学特性に一時的な変化を生じさせることがあり、それは少なくとも入射レーザパルスの持続時間の間、および通常はそれ以後の短時間持続する。Qスイッチレーザにおいてのようにレーザ繰返し率が低いとき、あるパルスと次のパルスとの間に、結晶に対するこれらの変化が元の状態に戻るまで部分的にまたは完全に軽減するほど十分な時間がある場合がある。この軽減は、(標準的な動作にとって典型的な温度範囲である、120℃と150℃の間等の)高温で結晶が動作している場合にはより速くなることがある。半導体の検査および計測での用途には、通常、モードロックレーザによって達成できるような(50MHz、100MHz、またはそれ以上等の)非常に高い繰返し率がより役立つ。ただし、係る高繰返し率は、通常、結晶特性の変化があるパルスから次のパルスで実質的に軽減する時間を与えない。
【0012】
CLBO(セシウムホウ酸リチウム)またはCBO(ホウ酸セシウム)等の非線形結晶は、可視レーザ光入力の第2高調波から深いUV光を生じさせるために使用できる。たとえば、266nmの波長光はCLBOを使用して532nmのレーザビームから生じさせることができる。別の実施形態では、213nmの波長に近い光を、たとえば266nmの波長と1064nmの波長を混合することによって生じさせることができる。係る結晶を操作できる最大出力レベルは、結晶内の欠陥および不純物によって制限される。
【0013】
結晶内の不純物またはその結晶格子の欠陥は、結晶の寿命を低下する、または結晶の光学特性での変化が結晶内の他の場所よりも速く起こる場所になる色中心を生じさせることがある。したがって、可能な範囲で、結晶を製作するためには最高の純度の出発物質が使用されるべきである。
【0014】
特に水等の不純物は、結晶の中にその成長過程の間、またはたとえ出発物質に存在しなくても(検査システムで使用されているときには)通常の操作の間にも組み込まれることがある。これらの不純物は高出力密度で結晶の寿命に悪影響を及ぼすことがある。残念なことに、出発物質の純度を改善しても、操作中に組み込まれる不純物は削減されない。
【0015】
結晶での劣化を削減するまたは遅くするための1つの既知の技法は、(通常は120℃と150℃の間の)高温で結晶を操作することであり、これは結晶内でより高いエネルギー電子を生成する。これらのより高いエネルギー電子はより容易に動き回ることができ、それによって短期間での光誘起変化のいくつかを取り消す。パルス間には相対的に長い時間間隔があり、それが1個のパルスの影響からの回復を可能にするため、この技法は、低い繰返し率のレーザに対して最も役立つ。また、この高い動作温度は、結晶が使用されている間の結晶による水の吸収を防ぐのに役立つことがある。
【0016】
高温で結晶を操作することによって、結晶内でのいくつかの変化を無効にするほど十分に高い移動性をもったより多くの電子を提供できるが、それによって結晶内の欠陥状態のエネルギーも高まる。したがって、高い操作温度は、他の欠陥のメカニズムを加速する一方でいくつかの欠陥のメカニズムを遅くすることがある。特に、高まった温度は、繰返し率が高いときに結晶内での短期変化を削減するにはあまり効果的ではない。
【0017】
結晶の損傷に対処する別の既知の技法は、一時期結晶内の1つの場所を使用し、次いで出力ビームの質および/または強度の劣化が過度になる前に新しい場所に移動することである。周波数変換に使用される結晶内の場所の頻繁な調整とは、動作時間のかなりの部分、レーザが調整されている、再調整されている、または調整後に安定化することを意味する。調整および再調整が自動化されていても、レーザが調整後に安定化する間に完全な仕様までレーザが動作していないときがある場合がある。製造施設が1日24時間稼働する半導体業界のような産業での検査用途および測定用途では、動作時間に対するこの中断または動作時間の削減は著しい不利益である。損傷率が高い場合、結晶内の変換場所の頻繁かつ自動的な調整を行ったとしても、結晶は依然として、交換を必要とする前に数日または数週間しか持ちこたえられない場合がある。業務イベント間の係る短い時間間隔は、半導体業界では受け入れがたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0180176号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0073982号公報
【特許文献3】米国特許第5108176号
【特許文献4】米国特許第5377001号
【特許文献5】米国特許第5377002号
【特許文献6】米国特許第5189481号
【特許文献7】米国特許第5712701号
【特許文献8】米国特許6118525号
【特許文献9】米国特許第6201601号
【特許文献10】米国特許第6271916号
【特許文献11】米国特許第6608676号
【特許文献12】米国特許第7088443号
【特許文献13】米国特許第7492451号
【特許文献14】米国特許第7525649号
【特許文献15】米国特許第7957066号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、周波数変換結晶(つまり、基本レーザ波長の高調波を発生できる非線形結晶)を含み、しかも高品質で安定したレーザビームおよび長い結晶寿命を保証できる高出力レーザシステムに対するニーズが生じる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
低温で動作可能なモードロックレーザシステムが説明される。本明細書で使用されるように、「低」温は約50℃以下である(従来の標準的な動作温度は少なくとも100℃、および通常は120℃と150℃の間である)。一実施形態では、低温は30℃と‐10℃の間であってよい。このレーザシステムは、アニールされた周波数変換結晶、および低温での標準的な動作の間に結晶を不純物から保護し、それによって結晶のアニール状態を維持するためのハウジングを含むことがある。一般に、結晶は、非ウォークオフ方向でのレイリー領域の2倍、およびラジアン単位でのウォークオフ角で除算されたウォークオフ方向でのビームウエスト半径の2倍の長さの小さい方にほぼ等しい長さを有する。一実施形態では、結晶は(532nmを266nmに変換するために使用される典型的な長さ10mmのCLBOと比較して、長さ12.5mmまたは長さ15mmのCLBO等の)増加した長さを有することがある。第1のビーム成形光学部品は、光源から、結晶内にまたは結晶に近接して位置するビームウエストでの楕円断面にビームを集束するように構成できる。高調波分離ブロックは、結晶からの出力を空間で分離される異なる周波数のビームに分割できる。一実施形態では、モードロックレーザシステムは、所望される周波数のビームの楕円断面を、円形断面等の所望されるアスペクト比のビームに変換するように構成された第2のビーム成形光学部品をさらに含むことがある。
【0021】
一実施形態では、結晶内の楕円断面は2:1と6:1との間のアスペクト比を有することがある。第1のビーム成形光学部品は、プリズム、円筒形湾曲素子、放射状‐対称湾曲素子、および回折素子の内の少なくとも1つを含むことがある。高調波分離ブロックは、ペラン‐ブロカプリズム等のプリズムを含むことがある。結晶はCLBO(セシウムホウ酸リチウム)結晶、CBO(ホウ酸セシウム)結晶、BBO(βホウ酸バリウム)結晶、LBO(三ホウ酸リチウム)結晶、ニオブ酸リチウム結晶、KDP(リン酸二水素カリウム)結晶、または別の非線形光学結晶である場合がある。
【0022】
低温でレーザシステムを操作する方法も説明される。この方法では、光源からのビームを、アニールされた周波数変換結晶内のまたはアニールされた周波数変換結晶に近接したビームウエストでの楕円断面に集束することができる。結晶の出力から、任意の望ましくない周波数ビームから所望される周波数ビームを分離することもできる。方法は、低温での標準的な動作中に結晶のアニール状態を維持すること、および/または楕円断面を円形断面に変換することをさらに含むことがある。
【0023】
周波数変換結晶をアニールする方法も説明される。この方法では、温度は約2時間にわたって結晶の約150℃に上昇させることができる。温度は約10時間、150℃近くで保持できる。次いで、温度は約1時間にわたって約200℃に上昇させることができる。このとき、約100時間、温度が150℃と200℃との間で保持されることがある。最終的に、温度は約3時間にわたって室温まで低下させることができる。
【0024】
周波数変換結晶をアニールする別の方法も説明される。この方法では、上述された第1のアニールステップの間に、−OH結合吸収が第1のレベルであるかどうかが決定される。第1のレベルではない場合、次いで温度は150℃近くで保持され続ける。第1のレベルである場合、次いで温度は約1時間にわたって約200℃に上昇される。上述された第2のアニールステップの間に、―OH結合吸収が第2のレベルであるかどうかが決定される。第2のレベルではない場合、次いで温度は150℃と200℃との間で保持され続ける。第2のレベルである場合、次いで温度は約3時間にわたって室温まで低下される。一実施形態では、吸収を決定することは、FTIR(フーリエ変換赤外線分光法)を使用して実行できる。たとえば、FTIRは赤外線スペクトルの3580cm
−1近くで−OH結合を監視できる。
【0025】
多段強化アニールプロセスも説明される。このプロセスでは、第1の強化段階が第1の所定の温度に温度を上昇させることができる。温度は第1の所定期間、第1の所定温度で保持できる。次いで、第2の強化段階が第2の所定の温度に温度を上昇させることができ、第2の所定の温度は第1の所定の温度よりも高い。温度は第2の所定の期間、第2の所定の温度で保持できる。最後に、温度は室温まで低下させることができる。
【0026】
別の多段強化アニールプロセスも説明される。このプロセスでは、第1の強化段階は第1の所定温度に温度を上昇させることができる。温度は、−OH結合吸収が第1のレベルになるまで第1の所定温度で保持できる。次いで、第2の強化段階が、第1の所定温度よりも高い第2の所定温度に温度を上昇させることができる。温度は、−OH結合吸収が第2のレベルになるまで第2の所定温度で保持できる。最後に、温度は室温まで低下させることができる。
【0027】
試験表面で汚染物質および欠陥を検出するための光学システムも説明される。この光学システムは、レーザビームを生成するための改善型レーザシステム、およびレーザビームを経路に沿って試験表面の上に導き、その上に照明スポットを生じさせる光学部品を含むことがある。検出器および楕円鏡面も提供される。鏡面および検出器は、試験表面に直角な線の回りに対称軸を有する。鏡面は、試験表面に近接して配置されて、表面からそこを通って散乱した光を受光する入力アパーチャ、および出口アパーチャを画定する。鏡面は対称軸の回りで実質的に回転対称であり、したがって鏡面は、入力アパーチャを通って検出器に移動する光を対称軸の回りで回転対称に反射し、集束する。出口アパーチャは入力アパーチャの反対に位置する。
【0028】
サンプルの異常を検出するための光学システムも説明される。この光学システムは、第1のビームおよび第2のビームを生成するための改善型レーザシステムを含むことがある。第1の光学部品は、発光の第1のビームを第1の経路に沿ってサンプルの表面の第1のスポットの上に導くことができる。第2の光学部品は、発光の第2のビームを第2の経路に沿ってサンプルの表面の第2のスポットの上に導くことができる。第1の経路および第2の経路は、サンプルの該表面への異なる入射角となる。集光光学部品はサンプル表面の第1のスポットまたは第2のスポットから散乱し、第1のビームまたは第2のビームから生じる発光を受け取り、散乱した発光を第1の検出器に集束するための曲線状の鏡面を含むことがある。第1の検出器は、該曲線状の鏡面によってその上に集束された発光に応えて単一の出力値を提供できる。計器は、スポットがサンプルの表面全体で走査されるように、2つのビームとサンプルとの間に相対的な運動を引き起こすことがある。
【0029】
表面検出装置も説明される。この装置は、発光のビームを生成するための改善型レーザシステムを含むことがある。照明システムは、表面を基準にして非正規入射角で発光のビームを集束して、実質的に集束ビームの入射面内の表面に照明線を形成するように構成できる。入射平面は、集束ビーム、および集束ビームを通り、表面に垂直である方向によって画定される。集光システムは、照明線を結像するように構成できる。集光システムは、照明線を含む、表面の領域から散乱した光を集光するための結像レンズ、集光された光を集束するための焦点レンズ、および受光素子のアレイを含む装置を含むことがある。受光素子のアレイの各受光素子は、照明線の拡大画像の対応する部分を検出するように構成できる。
【0030】
入力レーザパルスを生成するための改善型レーザシステムを含むパルス逓倍器も説明される。このパルス逓倍器は、入力レーザパルスを受け取る偏光ビームスプリッタをさらに含むことがある。波長板は、偏光されたビームスプリッタから光を受光し、第1のセットのパルスおよび第2のセットのパルスを生成し、第1のセットのパルスは第2のセットのパルスとは異なる偏光を有する。鏡のセットは、偏光ビームスプリッタおよび波長板を含む、リング空洞を生じさせることがある。偏光ビームスプリッタは、第1のセットのパルスをパルス逓倍器の出力として伝達し、第2のセットのパルスをリング空洞の中に反射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】本発明に係る簡略化されたレーザシステムを示す図である。
【
図1B】ビームウエストが示された、例示的なガウスレーザビームを示す図である。
【
図1C】不純物から周波数変換結晶を保護し、それによってレーザが動作しているのか、それとも動作していないのかに関わりなく、結晶のアニール状態を維持するためのハウジングを実装できる例示的なハウジングを示す図である。
【
図1D】不純物から周波数変換結晶を保護し、それによってレーザが動作しているのか、それとも動作していないのかに関わりなく、結晶のアニール状態を維持するためのハウジングを実装できる例示的なハウジングを示す図である。
【
図1E】不純物から周波数変換結晶を保護し、それによってレーザが動作しているのか、それとも動作していないのかに関わりなく、結晶のアニール状態を維持するためのハウジングを実装できる例示的なハウジングを示す図である。
【
図2A】光源出力の楕円断面を生じさせるための例示的なアナモルフィック光学部品を示す図である。
【
図2B】光源出力の楕円断面を生じさせるための例示的なアナモルフィック光学部品を示す図である。
【
図2C】光源出力の楕円断面を生じさせるための例示的なアナモルフィック光学部品を示す図である。
【
図3A】周波数変換結晶で使用できる例示的なアニールプロセスを示す図である。
【
図3B】周波数変換結晶で使用できる例示的なアニールプロセスを示す図である。
【
図4】改善型レーザシステムを含む例示的な検査システムを示す図である。
【
図5】改善型レーザシステムを含む例示的な検査システムを示す図である。
【
図6】改善型レーザシステムを含む例示的な検査システムを示す図である。
【
図7】改善型レーザシステムを含む例示的な検査システムを示す図である。
【
図8】改善型レーザシステムによって生成される各入力レーザパルスからパルス列を生成するように構成された例示的なパルス逓倍器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
改善されたレーザシステムおよび動作に従って、モードロックレーザシステムは、アニールされた周波数変換結晶、および通常の動作中に結晶内にまたは結晶に近接して位置する楕円断面ビームウエストを生じさせる入力光源を含む。いくつかの実施形態では、周波数変換結晶は低温で維持される。本明細書に使用されるように、「低」温はほぼ50℃以下である。一実施形態では、低温は30℃と‐10℃の間であってよい。構成要素と動作のこの組合せが、ビーム品質、ビーム安定性、および結晶寿命を保証できる。
【0033】
レーザシステムのいくつかの実施形態に従って、(以下に説明される)「長い」結晶を含むことができる。レーザの典型的な周波数変換段階では、入力レーザビームは周波数変換結晶内のまたは周波数変換結晶に近接したほぼ円形の断面ビームウエストに集束される。入力レーザビームは結晶内部でより多くの時間を費やすため、結晶が長いほど、出力波長に変換される入力波長(複数の場合がある)が多くなる。ただし、入力波長と出力波長との間のウォークオフのために、長すぎる結晶はビーム品質を下げる。最大使用可能変換結晶長を決定する1つの要因は(結晶材料および入力波長および出力波長に依存する)ウォークオフ角およびビーム直径である。半導体の検査および測定のための用途では、優れたビーム品質が必要とされ、したがって通常、最大使用可能結晶長は、ラジアン単位のウォークオフ角で除算されたレーザビームウエスト直径にほぼ等しい。方程式として表される場合、ビームウエストの半径がw
0であると、ラジアン単位のウォークオフ角はα
w0であり、結晶長がLであると、最大使用可能結晶長は以下によってほぼ与えられる。
【数1】
【0034】
たとえば、CLBO結晶で532nmの入力レーザビームを266nmに変換するためには、(動作温度に対する弱い依存性がある場合)ウォークオフ角はほぼ33mradである。ビームウエスト半径が約175μmである場合、最大結晶長は約11mmになるだろう。係る用途には、通常10mmのCLBO結晶長が使用されるだろう。ビームウエスト半径を増加するとより長い結晶を使用できるようになるだろうが、単位長あたりの変換効率はw
0の二乗とともに逆に拡大縮小する出力密度に依存するため、全体的な変換効率は下がるだろう。
【0035】
高すぎる出力密度は結晶に急速に損傷を与えるため、一般に、w
0の非常に小さい値は望ましくない。さらに、w
0の小さな値は集束レーザビームのレイリー領域を縮小し、したがってシステムをミスアラインメントに対しより敏感にし、結晶長がレイリー領域の約2倍よりも大きい場合、結晶長の一部だけしか周波数変換のために効率的に使用させない。ほぼ断面のビームおよび優れたビーム品質(つまり、以下に説明される1.0に近いM
2)のレーザビームのレイリー領域は、以下によって与えられる。
【数2】
【0036】
十分に優れた品質の十分に大きな結晶が妥当なコストで入手できる場合、多くの場合、結晶長はレイリー領域の2倍、および上記L
maxの小さい方にほぼ等しくなるように選ばれる。したがって、一般に、結晶はレイリー領域の2倍、およびラジアン単位のウォークオフ角で除算されたビームウエスト半径の2倍の長さの小さい方にほぼ等しい長さを有する。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、ビームは、以下に説明されるように、結晶内のまたは結晶に近接したビームウエストでの楕円断面の中に集束される。楕円は、非ウォークオフ方向に比べてウォークオフ方向で細長い。L
maxはウォークオフ方向のw
0の値だけに依存するので、ウォークオフ方向でのビームウエスト半径の増加によって、より長い結晶を使用できるようになる。
【0038】
楕円焦点での出力密度はビームウエスト半径の積に反比例する(または円形断面ビームウエストの場合、二乗されたビームウエスト半径に反比例する)。出力密度が円形焦点の出力密度にほぼ同等となるように、円形焦点の代わりに、2つのビームウエスト半径が選ばれた楕円焦点を使用することができ、単位長あたりの変換効率および損傷率は円形焦点のケースと楕円焦点のケースの間でほぼ類似する結果になる。ただし、楕円焦点はウォークオフ方向でより大きなビームウエスト半径を有するため、結晶長が長くなり、全体的な変換効率が増加する結果となる場合がある。代わりに、楕円焦点ビームウエスト半径が、出力密度をわずかに(たとえば、円形ビームウエストの出力密度の約70%に)削減するために選ばれて、十分に長い結晶(この例では2倍の長さ)を使用して実質的に等しい全体的な変換効率を生じさせる一方で、結晶に対する損傷率を削減することができるだろう。楕円が大きすぎるアスペクト比を有する場合、次いでよりぴったりと集束した方向でのより小さいw
0値がその方向でのより小さいレイリー領域につながり、したがって最大有効結晶長を制限することに留意されたい。当業者は、これら、ならびに全体的な変換効率、損傷率、結晶長およびコストの他のトレードオフを理解し、適切なビームウエストプロファイルを選択できる。
【0039】
楕円焦点が本発明の実施形態に従って使用されるときに非ウォークオフ方向でのビームウエスト半径はウォークオフビームウエスト半径よりも小さいので、非ウォークオフ方向のレイリー領域はウォークオフ方向でのレイリー領域よりも短くなる。したがって、最大有効結晶長は、非ウォークオフ方向でのレイリー領域の2倍、およびラジアン単位のウォークオフ角で除算されたウォークオフ方向でのビームウエスト半径の2倍によって定められる長さの小さい方によってほぼ決定される。
【0040】
たとえば、CLBO結晶を使用して532nmを266nmに変換する周波数変換段階では、半径が約175μmの円形ビームウエストの代わりに、半径が約125μm(非ウォークオフ方向) x 半径250μm(ウォークオフ方向)の楕円形ビームウエストが使用できるだろう。これらの2つの場合の出力密度は実質的に類似しているが、円形焦点の場合の約11mmの最大結晶長に対し、楕円焦点は約15mmの最大結晶長を可能にするだろう。全体的な変換効率は、より長い結晶と使用される場合、楕円焦点の場合約50%大きくなるだろう。
【0041】
図1Aは、簡略化された改善型レーザシステム100を示す。レーザシステム100では、光源101の出力は、ビーム成形光学部品102を使用して(参照を容易にするために結晶103とも呼ばれる)周波数変換結晶103内のまたは周波数変換結晶103に近接した楕円断面ガウスビームウエストに集束できる。本明細書に使用されるように、用語「近接した」は好ましくは結晶103の中心からレイリー領域の半分未満である。結晶103が、上述したように長い結晶であってよい、または標準サイズの結晶であってよいことに留意されたい。好ましい一実施形態では、楕円の主軸のガウス幅間のアスペクト比は約2:1と約6:1との間となるだろう。楕円104の主軸104Aおよび104Bが互いに対して直角であり、楕円104の最長長さおよび最も幅広い幅を画定することに留意されたい。他の好ましい実施形態では、楕円の主軸間の比は約2:1と約10:1の間となるだろう。一実施形態では、より幅広いガウス幅は、周波数変換結晶のウォークオフ方向と(たとえば、位置合わせの約10°の範囲内に)実質的に位置合わせされる。
【0042】
図1Bは、(明確にするために尾部が強調された)例示的なガウスレーザビーム108を示し、線104Cは(焦点領域とも呼ばれる)2xビームウエストを示す。
図1C、
図1D、および
図1Eは、標準動作中に周波数変換結晶103を保護できるハウジング107を実装できるだろう例示的なハウジングを示す。一実施形態では、ハウジング107は、不純物から結晶103を保護し、それによって低い標準動作温度、つまり約50℃未満でもそのアニール状態を維持しやすくすることができる。経時的に不純物にさらされる結晶は劣化を開始し、実質的にアニールされていない状態に戻ることがあることに留意されたい。2008年5月6日に出願された「Enclosure For Controlling The Environment of Optical Crystals」と題する米国特許出願第12/154,337号は、これらのハウジングをさらに詳細に説明し、参照により本明細書に組み込まれる。他の実施形態では、ハウジング107は、結晶103およびレーザシステムの他の構成部品を含むより大きな構造体であってよい。一実施形態では、ハウジング107はレーザシステムのすべての構成部品を収納するほど十分に大きい。ハウジングが大きくなるほど、(劣化から結晶103を保護し、そのアニール状態を維持するために)レーザシステムの保守および修理により多くの予防措置が必要となることに留意されたい。したがって、一実施形態では、ハウジング107は好ましくはより大きいより、むしろより小さい。
【0043】
ビーム成形光学部品102は、光源101からの出力の断面を変更できるアナモルフィック光学部品を含むことがある。アナモルフィック光学部品は、たとえばプリズム、円筒形湾曲素子、放射状‐対称湾曲素子、および屈折素子の内の少なくとも1つを含むことがある。一実施形態では、光源101は、結晶103の内部で二倍にされる、たとえば532nm等、可視範囲で周波数を生成するレーザを含むことがある。他の実施形態では、光源101は、結晶103の内部で結合されて和周波数または差周波数を生成する2つ以上の周波数を生成するレーザソースを含むことがある。
【0044】
図1Fは、たとえば1064nmの基本波長から第4高調波発生を発生させる例示的な周波数変換を示す。レーザ190によって生成される基本波長は、第2高調波発生技法191および周波数分離技法192を使用して第2高調波196(つまり532nmの波長)に変換できる。周波数分離技法192は、不必要な基本(つまり、消費されていない基本197)を第2高調波196から分離できる。一実施形態では、第2高調波発生技法191および周波数分離技法192は、上述されたビーム成形光学部品102、周波数変換結晶103、および高調波分離ブロック105を使用して実装できる。
【0045】
第2高調波196は、同様に、第4高調波発生技法193および周波数分離技法194を使用して生じさせることができる第4高調波198(つまり、266nm波長)のソースとなることがある。周波数分離技法194は、第4高調波198から不必要な第2高調波、つまり消費されていない第2高調波199を分離する。一実施形態では、第4高調波発生技法193および周波数分離技法194は、上述されたビーム成形光学部品102、周波数変換結晶103、および高調波分離ブロック105を使用して実装できる。別の実施形態では、(例の第1高調波発生段階および第4高調波発生段階等の)周波数変換段階および周波数分離段階の内の複数を、上述されたビーム成形光学部品102、周波数変換結晶103、および高調波分離ブロック105を使用して実装できる。
【0046】
図1Fの例示的な周波数変換が事例的にすぎず、制限ではないことに留意されたい。他の高調波は、たとえば基本を第2高調波と混合して第3高調波を生じさせる、または基本を第4高調波と混合して(または第2高調波と第3高調波を混合して)第5高調波を生じさせることによって生じ得る。紫外線(UV)波長を生成する変換段階のいずれかまたはすべてが、ビーム成形光学部品、周波数変換結晶、および高調波分離ブロックを使用できる。
図1Fは、あたかも高調波分離ブロックが不要な周波数を反射し、求められている周波数は実質的には偏位されずに移動するかのように示されているが、これは単にその高調波分離ブロックが周波数を分離するという説明図にすぎず、どの周波数が反射される、または伝達されるのかを制限するように意図されていないことに留意されたい。
【0047】
図2A、
図2Bおよび
図2Cは例示的なアナモルフィック光学部品を示す。
図2Aは、ブルースター角近くで動作するように構成できる2つのプリズム201および202を示す。一実施形態では、プリズム201および202は、システムにいかなる出力も導入せずにビームの楕円率を調節するために調整できる。
図2Bは、2枚のレンズ203および204で実装される円筒形の望遠鏡を示す。円筒形の望遠鏡では、大部分の非点収差を補償するために視準を設定できることに留意されたい。
図2Cは、3枚のレンズ205、206、207で実装される無限焦点円筒形ズーム望遠鏡を示す。無限焦点円筒形ズーム望遠鏡は、ビーム直径を調整し、焦点調節を設定するために使用できる。
図2A、
図2B、および
図2Cのアナモルフィック光学部品は2つまたは3つの構成部品を含んでいるが、他の実施形態は任意の数の構成部品を含んでよいことに留意されたい。実際に、
図2Aから
図2Cの光学部品の構成は事例的にすぎず、制限ではない。
図1を参照し直すと、ビーム成形光学部品102は楕円断面ビーム出力を生成し、楕円断面ビーム出力は、次いで既知の球形光学部品または円筒形光学部品(不図示)を使用して結晶103内のまたは結晶103に近接したビームウエストで集束できる。
【0048】
高調波分離ブロック105は、ビーム分離用のプリズムを含むことがある。一実施形態では、コーティングされていないペラン‐ブロカプリズムが、一方のビーム(つまり、所望される周波数のビーム)がフレネル反射に起因して最小の損失を有し、他方のビーム(つまり、望ましくない周波数のビーム)がフレネル反射に起因して多大な損失を被るように2つのビームを生じさせることができる。特に、ペラン‐ブロカプリズムによって生成される出力ビームは入力ビームに対して90度であり、それが、便利なセットアップおよび不必要なビーム(つまり、不必要な周波数)の除去を可能にする。他の実施形態が所望される波長の複数のビームを生成すること、および/または望ましくない周波数を有する1つまたは複数の不必要なビームを除去するための他の手段を含んでよいことに留意されたい。さらに、高調波分離ブロック105は、たとえば第2高調波、第3高調波、第4高調波、または第5高調波等の任意の数の高調波、および/または係る高調波および/または基本の和周波数または差周波数を生成してよい。
【0049】
特に、ビーム成形光学部品106は、レーザシステム100の出力ビーム用に実質的に円形の対称ビームプロファイルを生じさせるために結晶103の後ろに配置できる。一実施形態では、当業者によって理解されるように、ビーム成形光学部品102(円形ビームから楕円ビームへ)の光学部品に類似した光学部品が楕円断面から円形断面に出力ビームを変換するために使用されてよい。ただし、(通常軸に対して直角であり、ビームへの歪みを引き起こす)ウォークオフ平面では、出力ビームの開きは入力ビームの開きに実質的に類似しているが、結晶103によって引き起こされるビームプロファイルの歪みに起因して少し大きくなってよいことに留意されたい。対照的に、非ウォークオフ方向で(つまり、通常軸で)は、出力ビームの幅は非線形(ほぼ二次)変換プロセスのために約
【数3】
の因数で縮小されることになる。さらに、ビーム成形光学部品106を実装するための光学部品も出力ビームのより短い波長の主原因となるはずである。特に、より高いレーザ出力および/またはより短いレーザ波長が、より高速でのより小さな欠陥の検出を可能にする。M
2=1.0に近い高品質ビームを小さなスポットまたは狭い線にぴったりと集束し、それによって小さい欠陥の検出を容易にすることができる。1.0のM
2値が理想的なガウス断面のあるレーザビームに相当することに留意されたい。好ましい一実施形態では、ビーム成形光学部品106は約1.2未満であるM
2値の出力ビームを生じさせることができる。
【0050】
M
2はビーム品質の1つの測定基準であるが、ビーム品質はその非点収差によってさらに定量化され得る。レーザシステム100の別の態様に従って、ビーム成形光学部品102(および使用されているとき、ビーム成形光学部品106)は、2つの軸の相対的なウエスト位置でわずか10%のレイリー領域のシフトを引き起こす非点収差のあるUV出力レーザを生じさせることがある。
【0051】
いくつかの用途では、楕円出力ビームがレーザシステム100の用途にさらによく適合し得ることに留意されたい。たとえば、UV照明ビームが斜めにウェハに入射する場合、楕円レーザビームは円形のスポットを可能にするだろう。係る用途の場合、アナモルフィック光学部品はビーム成形光学部品106には不必要な場合がある。代わりに、他の実施形態では、ビーム成形光学部品106のアナモルフィック光学部品は、出力楕円断面を、ビーム成形光学部品102によって出力される楕円断面とは異なる楕円断面に変更してよい。その実施形態では、ビーム品質はM
x2およびM
y2で測定することができ、xおよびyは楕円の主軸(つまり、
図1の104Aおよび104B)を表す。この場合、M
x2とM
y2の両方とも1.2未満であるべきである。
【0052】
一実施形態では、結晶103の欠陥または(H
2Oおよび/またはOH等の)不純物を削減するために、改善されたアニールプロセスを実行できる。一般に、アニールは約20ppm未満の水のある環境で実行できる。一実施形態では、環境は清潔で乾燥した空気または(N
2またはAr等の)乾燥した不活性ガスを含むことがある。
【0053】
図3Aに示される1つの多段強化アニールプロセス300で、温度は、ステップ301の約2時間の時間間隔にわたって室温から約150℃にゆっくりと上昇させることができる。ステップ302は、約10から20時間150℃近くの温度を保持できる。ステップ303は、次いで別の約1時間の期間にわたって約200℃に温度を上昇させることができる。初期結晶が特に高い含水量を有する場合、次いでステップ303はこの温度ランピングをよりゆっくりと実行してよい。次いで、ステップ304は少なくとも100時間(いくつかの実施形態では、約200時間または300時間)、約150℃と200℃との間に温度を保持してよい。他方、初期含水量がより低い場合、次いでより速い温度ランピング(ステップ303)およびたとえば48時間等のより短いアニール時間(ステップ304)を使用できる。ステップ305は、約3時間にわたって温度を室温まで低下させることができる。ステップ301から305に関連する時間が、約5から15mmの範囲の線形寸法の結晶に対してであることに留意されたい。結晶のバルクから水を除去するプロセスは基本的に拡散プロセスであるため、より大きな寸法(したがって、より低い表面積対体積の比)の結晶はより長いアニール時間を要することがある。対照的に、より小さい寸法(したがって、より大きい表面積対体積の比)の結晶はより短時間で適切にアニールされ得る。
【0054】
さらに、初期に過剰に速く払われる水に起因するのか、それとも温度変化によって誘発される機械的な応力に起因するのかに関わりなく、結晶に対して機械的な損傷が発生しないことを保証するために温度ランピング速度を調節できる。一般に、より高いレベルの水を含む、またはより大きい機械的寸法の結晶は、より小さい結晶またはより乾燥した結晶に比べて、よりゆっくりとした温度ランピングおよび/または150℃近くでのより長い保持時間を必要とすることがある。
【0055】
図3Bに示される別の多段強化アニールプロセス310では、FTIR(フーリエ変換変換赤外線分光法)が、赤外線スペクトルの3580cm
−1近くで(H
2O)を含む−OH結合の吸収を監視するために使用されてよい。たとえば、FTIR監視は、結晶がステップ302Aでアニールを受けている(つまり、150℃近くの温度を保持している)間に結晶に対して行うことができる。ステップ302Bは、−OH吸収ピークがその初期値から約20%削減される等、吸収が第の1レベルであるかどうかを判断できる。第1のレベルではない場合、次いでプロセスはステップ302Aで続行する。第1のレベルである場合、次いでプロセスはステップ302Aのアニールに進む。さらに、ステップ304Aで、アニールの(つまり、約150℃と200℃との間に温度を保持する)間にFTIR測定を行うことができる。ステップ304Bは、−OH吸収ピーク領域がその元の値の約5%に削減された等、吸収が第2のレベルであるかどうかを判断できる。第2のレベルではない場合、次いでプロセスはステップ304Aで続行する。第2のレベルである場合、次いでプロセスはステップ305の下降に進む。
【0056】
アニールプロセス300および310は、たとえばCLBO、CBO、BBO、LBO(三ホウ酸リチウム)、ニオブ酸リチウム、KDP、または他の非線形材料から作られる結晶を含む多様な周波数変換結晶のために使用できる。いくつかの実施形態では、これらの結晶材料は、ドーパント等の他の要素を含んでよい。アニールプロセス300および310は、CBOおよびCLBO等の吸湿剤に特に有効であってよい。いくつかの非吸湿性材料にとっても、アニールは表面のまたはバルクの汚染物質を削減するために有効である場合がある。
【0057】
150℃を十分に下回るレーザ動作温度は、欠陥または不純物がほとんどない高純度の周波数変換結晶と使用されるときに特に役立つ。特に、最小の欠陥/不純物を有する結晶は、通常の動作よりもはるかに低温で使用され、それによって結晶寿命を延ばすことができる。たとえば、一実施形態では、(上述されたプロセスの内の1つを使用してアニールされた)結晶103は約10℃と約50℃の間の動作温度等の、室温に近いまたは室温以下の温度でも使用できる。好ましい一実施形態では、結晶の動作温度は約30℃である。別の好ましい実施形態では、結晶は水蒸気がない制御された環境に保存され、次いで約0℃、−10℃、またはさらに冷たい等非常に低い温度で使用できる。一実施形態では、結晶103の温度を維持し、制御するために熱電(つまりペルチェ)冷却器を使用できる。
【0058】
変換結晶の寿命を延ばすことは、レーザシステムの保守の頻度を有利に減少させ、レーザシステムを組み込む検査ツールまたは計測ツールが生産的に動作する時間の割合を高める。また、レーザシステムの各業務イベント間の時間間隔を延ばすことができるため、結晶の寿命の増加はレーザシステムにとってのより低い操業費も意味する。
【0059】
本書で説明されるレーザシステムは、参照により本明細書に組み込まれる、現在は米国第20110228263号として公開されている、2011年3月28日に出願された米国特許出願第13/073,986号(第986号出願)に開示されるコヒーレンス削減方式を有利に組み込むことができる。第986号出願に説明されるように、1台または複数の電気光学変換器との1つまたは複数の分散素子の組合せは、光を変調することによって、ならびに光の空間特性および時間特性を混合することによってコヒーレンスを削減するために使用できる。
【0060】
図4は、表面401の異常を検出するために使用できる表面検査システムを示す。本実施形態では、表面401は、レーザシステム100(
図1を参照)によって生成されるレーザビームを含むシステム400の実質的に固定された照明装置部分によって照明できる。ビームを拡大し、集束するために、レーザシステム100の出力を偏光光学部品421、ビームエクスパンダおよびアパーチャ422、ならびにビーム形成光学部品423に連続して通過させることができる。
【0061】
集束されたレーザビーム402は、次いでビーム折畳み構成部品403およびビーム偏向器404によって反射されて、表面を照明するためにビーム405を表面401に向かって導く。他の実施形態では、ビームは表面401に対して斜めであってよいが、好ましい実施形態では、ビーム405は表面401に対して実質的に垂直または直角をなす。
【0062】
一実施形態では、ビーム405は表面401に対して実質的に直角をなす、または垂直であり、ビーム偏向器404が表面401からのビームの鏡面反射をビームターニング構成部品403に向かって反射し、それによって鏡面反射が検出器に到達するのを防ぐためのシールドとして働く。鏡面反射の方向は、表面401に垂直である線SRに沿っている。ビーム405が表面401に垂直である一実施形態では、この線SRは照明ビーム405の方向と一致し、本明細書ではこの共通の基準線または方向は検査システム400の軸と呼ばれる。ビーム405が表面401に対して斜めである場合、鏡面反射SRの方向はビーム405の入射方向と一致しないだろう。係る例では、表面法線の方向を示す線SRは、検査システム400の集光部分の主軸と呼ばれる。
【0063】
小さい粒子によって散乱する光は鏡406によって集光され、アパーチャ407および検出器408に向かって導かれる。大きな粒子によって散乱する光はレンズ409によって集光され、アパーチャ410および検出器411に向かって導かれる。いくつかの大きな粒子が、やはり集光され、検出器407に導かれる光を散乱させ、同様にいくつかの小さい粒子が、やはり集光され、検出器411に導かれる光を散乱させるが、係る光は、それぞれの検出器が検出するように設計される散乱光の輝度に比較して相対的に低い輝度であることに留意されたい。一実施形態では、検査システムは、パターンのないウェハの欠陥を検出する際に使用するために構成できる。
【0064】
図5は、法線照明ビームと斜照明ビームの両方を使用して異常検出を実施するように構成された検査システム500を示す。この構成では、レーザシステム100(
図1)がレーザビーム501を提供できる。レンズ502は空間フィルタ503を通してビーム501を集束し、レンズ504がビームを視準し、偏光ビームスプリッタ505にビームを伝達する。ビームスプリッタ505は、第1の偏光成分を法線照明チャネルに通し、第2の偏光成分を斜照明チャネルに通し、そこで第1の成分および第2の成分は直交している。法線照明チャネル506では、第1の偏光成分は光学部品507によって集束され、鏡508によってサンプル509の表面に向かって反射される。サンプル509によって散乱する発光は集光され、放物面鏡510によって光電子増倍管511に集束される。
【0065】
斜照明チャネル512では、第2の偏光成分がビームスプリッタ505によって、半波長板514を通して係るビームを反射する鏡513に反射され、光学部品515によってサンプル509に集束される。斜チャネル512の斜照明ビームから発し、サンプル509によって散乱する発光は放物面鏡510によって集光され、光電子倍増管511に集束される。光電子倍増管511はピンホール入口を有する。ピンホールおよび(表面509の法線照明チャネルおよび斜照明チャネルから)照明されたスポットは、好ましくは放物面鏡510の焦点にある。
【0066】
放物面鏡510は、サンプル509から散乱する発光を視準ビーム516の中に視準する。視準ビーム516は、次いで対物レンズ517によって、およびアナライザ518を通して光電子倍増管511に集束される。放物面形状以外の形状を有する曲線状の鏡面も使用され得ることに留意されたい。スポットがサンプル509の表面全体で走査されるように、計器520はビームとサンプル509との間で相対的な運動を提供できる。
【0067】
図6は、表面20の領域を検査するための、照明システム601および集光システム610を含む別の表面検査装置600を示す。
図6に示されるように、レーザシステム100(
図1)はレンズ603を通して光ビーム602を導くように構成される。レンズ603は、その主平面が表面611に対して実質的に平行となり、その結果、レンズ603の焦点面内の表面611に照明線605が形成されるように配向される。さらに、光ビーム602および集束ビーム604は表面611に対して非直交入射角で導かれる。特に、光ビーム602および集束ビーム604は、法線方向から表面611に約1度と約85度との間の角度で導かれてよい。このようにして、照明線605は実質的には集束ビーム604の入射平面内にある。
【0068】
集光システム610は、照明線605から散乱する光を集光するためのレンズ612、およびレンズ612から出射する光を、光検出器のアレイを含む、電荷結合素子(CCD)614等の装置の上に集束するためのレンズ613を含む。一実施形態では、CCD614は検出器の直線アレイを含んでよい。係る場合、CCD614内部の検出器の直線アレイは、照明線615に対して平行に配向できる。一実施形態では、複数の集光システムを含むことができ、集光システムのそれぞれが類似する構成部品を含むが、向きで異なる。たとえば、
図7は、表面検出システム(たとえば照明システム601の照明システムに類似するその照明システムは、簡単にするために不図示である)用の集光システム701、702、703の例示的なアレイを示す。
【0069】
(すべてが参照により本明細書に組み込まれる)米国特許出願公開第2009/0180176号および第2011/0073982号だけではなく、米国特許第5,108,176号、第5,377,001号、第5,377,002号、第5,189,481号、第5,712,701号、第6、118,525号、第6,201,601号、第6,271,916号、第6,608,676号、第7,088,443号、第7,492,451号、第7,525,649号、および第7,957、066号は、レーザシステム100を含むことがある他の検査システムの実施形態を説明する。レーザシステム100は、参照により本明細書に組み込まれる、2011年6月13日に出願された米国特許仮出願第61/496,446号に開示されるパルスストレッチ方式およびパルスレート逓倍方式の内の1つまたは複数と組み合わせることもできる。
【0070】
図8は、レーザシステム100(
図1)によって出力される各入力パルス801からパルス列を生成するように構成された例示的なパルス逓倍器を示す。入力パルス801は、入力パルス801の入力偏光のためにその光のすべてをレンズ806に伝達する偏光ビームスプリッタ802に衝突する。このようにして、伝達された偏光は入力パルス801の入力偏光に平行である。レンズ806は入力パルス801の光を集束し、半波長板805に導く。一般に、波長板は光波の垂直偏光成分間で位相をシフトし、よって波長板を通過する光の偏光状態を変更できる。波長板では、1つの偏光成分は垂直成分よりもわずかにゆっくりと伝搬する。半波長板805は、出射する光の場合、一方の偏光成分が他方の偏光成分に比して実質的に波長の半分(180度)遅延するように製作される。いくつかの好ましい実施形態では、半波長板805は、その光軸が入力偏光の平面に対して実質的に27.4°になるように配向される。したがって、入力偏光のある光が半波長板805にぶつかるとき、これらの好ましい実施形態では、その偏光は実質的に54.8°、回転される。
【0071】
半波長板805を出射する光は、鏡804および803によって偏光ビームスプリッタ802に反射して戻される。したがって、偏光ビームスプリッタ802、レンズ806、半波長板805、ならびに鏡804および803はリング空洞構成を形成する。リング空洞を横切った後に偏光ビームスプリッタ802に衝突する光は、半波長板805のために、入力偏光を基準にした角度(いくつかの好ましい実施形態では実質的に54.8°の角度)で偏光される。したがって、偏光ビームスプリッタ802は、矢印809によって示されるように、ある光は伝達し、他の光は反射する。具体的には、偏光ビームスプリッタ802は、入力パルス801と同じ偏光を有する鏡803からの光を伝達する。この伝達された光は、出力パルス807としてパルス逓倍器800を出射する。入力パルス801の偏光に垂直な偏光を有する反射光は、リング空洞の中に再導入される(簡単にするためにパルスは不図示)。半波長板805軸が入力偏光に対して実質的に27.4°で配向されたそれらの好ましい実施形態では、単一入射パルスのエネルギーの実質的に3分の2がリング空洞の中に反射し直され、入射エネルギー単一パルスの実質的に3分の1が伝達される。
【0072】
特に、これらの再導入されるパルスは、上述されたようにリングを横切り、さらに半波長板805によって偏光回転され、次いで偏光ビームスプリッタ802によって光分割される。したがって、一般に、上述されたリング空洞は、いくらかの光が出射し、(いくらかの最小損失のある)光の残りがリングの回りで続行できるように構成される。毎回リングを横断する間に、追加の入力パルスが導入されないと、総光のエネルギーは、出力パルス807としてリングを出射する光のために減少するだろう。
【0073】
周期的に、新しい入力パルスがパルス逓倍器800に提供される。リングのサイズ、したがってリングの時間遅延は、矢印808で示される軸に沿って鏡804を移動することによって調整できる。リングの時間遅延がレーザ100からのパルス間の繰返し時間のほぼ半分になるように調整されると、次いで出力パルスの半分は入力パルス間のほぼ中間となり、リングからのパルスの残り半分が入力パルスとほぼ一致する。
【0074】
例示的な一実施形態では、レーザは125MHzの繰返し率および約10から20psのパルス幅を有する可能性があり、空洞は4.05nsの遅延時間を有することがあるため、空洞を1周したパルスは2つの入力パルス間のほぼ中間で到着し、2周した第2のパルスは、次の入力レーザパルスの約100ps後に到着する。したがって、この例の実施形態での125MHzでの狭い入力パルスの一定の流れは、250MHzの繰返し率でのはるかに幅広いパルスの流れに変えられる(空洞時間は、厳格にではないが、入力パルス間の時間間隔の半分に近くなるように慎重に設定されているため、広げられる)だろう。半波長板の光軸が入力パルスの偏光に対して実質的に27.4℃で配向される好ましい実施形態では、出力パルスは総エネルギーで互いに実質的に等しくなる。
【0075】
上述される本発明の構造および方法の多様な実施形態は、本発明の原理を示すだけであり、説明された特定の実施形態に本発明の範囲を制限することを目的としていない。たとえば、上述された検査システムは暗視野検査ツールまたは明視野検査ツールのどちらかに組み込むことができる。したがって、本発明は以下の特許請求の範囲およびその同等物によってのみ制限される。