特許第6547089号(P6547089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6547089薄膜形成方法、薄膜形成装置及びリチウム電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6547089
(24)【登録日】2019年6月28日
(45)【発行日】2019年7月17日
(54)【発明の名称】薄膜形成方法、薄膜形成装置及びリチウム電池
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/58 20060101AFI20190705BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20190705BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20190705BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20190705BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20190705BHJP
   H01M 4/12 20060101ALI20190705BHJP
   H01M 4/08 20060101ALI20190705BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20190705BHJP
【FI】
   C23C14/58 B
   C23C14/14 D
   H01M4/1395
   H01M4/134
   H01M4/40
   H01M4/12 F
   H01M4/08 A
   H01M4/06 V
   H01M4/06 X
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-518126(P2019-518126)
(86)(22)【出願日】2019年2月1日
(86)【国際出願番号】JP2019003723
【審査請求日】2019年4月3日
(31)【優先権主張番号】特願2018-19784(P2018-19784)
(32)【優先日】2018年2月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】宜保 学
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊介
(72)【発明者】
【氏名】木本 孝仁
【審査官】 谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/018980(WO,A1)
【文献】 特開2012−17478(JP,A)
【文献】 特開平6−124700(JP,A)
【文献】 特開平1−211856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/58
C23C 14/14
H01M 4/06
H01M 4/08
H01M 4/12
H01M 4/134
H01M 4/1395
H01M 4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にリチウム金属膜を真空チャンバ内で成膜し、
前記リチウム金属膜の表面を前記真空チャンバ内で酸化し、
酸化された前記リチウム金属膜の表面を前記真空チャンバ内で炭酸化する
薄膜形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の薄膜形成方法であって、
前記リチウム金属膜の表面を酸化する工程は、前記表面に第1の厚みの酸化リチウム膜を形成し、
前記リチウム金属膜の表面を炭酸化する工程は、前記表面に前記第1の厚み以下の第2の厚みで炭酸リチウム膜を形成する
薄膜形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の薄膜形成方法であって、
前記第1の厚みは、10nm以上150nm以下である
薄膜形成方法。
【請求項4】
請求項3に記載の薄膜形成方法であって、
前記第2の厚みは、10nm以上50nm以下である
薄膜形成方法。
【請求項5】
リチウム金属の蒸発源を含み、基材上にリチウム金属膜を形成する成膜部と、
前記リチウム金属膜の表面を酸化する第1の処理室を含む第1の処理部と、
酸化された前記リチウム金属膜の表面を炭酸化する第2の処理室を含む第2の処理部と
を具備する薄膜形成装置。
【請求項6】
金属製の基材と、
前記基材の上に配置されたリチウム金属層と、炭酸リチウム層と、前記リチウム金属層と前記炭酸リチウム層との間に位置する酸化リチウム層とを有するリチウム電極と
を具備するリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム金属を蒸発させて基材上にリチウム金属膜を形成する薄膜形成方法、薄膜形成装置及びリチウム電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォン等のモバイル機器の進展に伴い、これらの機器に搭載されるリチウム電池が注目されている。リチウム電池は、その製造工程において、リチウム金属を基材上に形成する工程が特に重要であり、これまでに種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、チャンバ内でリチウム金属を蒸発させて、飛散した粒子を基材に堆積させることにより、基材上にリチウム金属を形成する技術が記載されている。ここで、特許文献1には、リチウム金属膜の表面に炭酸リチウムからなる保護膜を形成することで、リチウム金属膜の劣化を抑制する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−017478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、基材上にリチウム金属膜が形成されたリチウム積層部材を水分が除去された処理室に移動し、この処理室に炭酸ガスを含む不活性ガスを導入することによって、リチウム金属膜の表面に炭酸リチウムからなる保護膜を形成している。
【0006】
しかしながら、上記手法では、リチウム金属膜の表面全域に安定して炭酸リチウムからなる保護膜を形成することができない場合がある。このため、大気に暴露したときに保護膜の形成が不十分な領域で水酸化リチウム膜が成長してしまい、所望とする電気特性を確保することができないという問題がある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、リチウム金属膜の表面全域に炭酸リチウムからなる保護膜を安定に形成することができる薄膜形成方法、薄膜形成装置及びリチウム電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る薄膜形成方法は、基材上にリチウム金属膜を真空チャンバ内で成膜することを含む。
前記リチウム金属膜の表面は、前記真空チャンバ内で酸化される。
酸化された前記リチウム金属膜の表面は、前記真空チャンバ内で炭酸化される。
【0009】
上記薄膜形成方法においては、リチウム金属膜の表面を酸化し、酸化されたリチウム金属膜の表面を炭酸化することで、リチウム金属膜の表面全域に炭酸リチウムからなる保護膜を形成するようにしている。リチウムの酸化反応はその炭酸化反応よりも高効率であるため、リチウム金属膜の表面全域を安定に酸化させることができ、さらにその後の炭酸化処理により、リチウム金属膜の表面全域に炭酸リチウムからなる保護膜を安定に形成することができる。
【0010】
前記リチウム金属膜の表面を酸化する工程は、前記表面に第1の厚みの酸化リチウム膜を形成し、前記リチウム金属膜の表面を炭酸化する工程は、前記表面に前記第1の厚み以下の第2の厚みで炭酸リチウム膜を形成してもよい。
つまり、上記炭酸化処理により、リチウム金属膜表面の酸化リチウムのすべてが炭酸化リチウムに変換されてもよいし、酸化リチウムの表層の所定の厚み範囲が炭酸化リチウムに変換されてもよい。
【0011】
本発明の一形態に係る薄膜形成装置は、成膜部と、第1の処理部と、第2の処理部とを具備する。
前記成膜部は、リチウム金属の蒸発源を含み、基材上にリチウム金属膜を形成する。
前記第1の処理部は、前記リチウム金属膜の表面を酸化する第1の処理室を含む。
前記第2の処理部は、酸化された前記表面を炭酸化する第2の処理室を含む。
【0012】
本発明の一形態に係るリチウム電池は、金属製の基材と、リチウム電極とを具備する。
前記リチウム電極は、前記基材の上に配置されたリチウム金属層と、炭酸リチウム層と、前記リチウム金属層と前記炭酸リチウム層との間に位置する酸化リチウム層とを有する。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明によれば、リチウム金属膜の表面全域に炭酸リチウムからなる保護膜を安定に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る薄膜形成方法を示す工程図である。
図2】上記薄膜形成方法の処理手順を示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係る薄膜形成装置の概略構成図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る薄膜形成装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
[薄膜形成方法]
図1は、本発明の一実施形態に係る薄膜形成方法を示す工程図、図2は、上記薄膜形成方法の処理手順を示すフローチャートである。
本実施形態では、リチウム電池の負極を構成するリチウム電極11(図1C参照)の形成方法について説明する。
【0017】
本実施形態の薄膜形成方法は、成膜処理(ステップ01)と、酸化処理(ステップ02)と、炭酸化処理(ステップ03)とを有する。
【0018】
(成膜処理)
図1Aに示すように、成膜処理では、基材10の表面にリチウム金属膜11Aが形成される。
【0019】
成膜方法は特に限定されず、典型的には、真空蒸着法が採用される。基材10は、典型的には、銅やステンレス鋼等の金属材料の板材で構成される。基材10は、可撓性を有していてもよいし、リジッド性を有していてもよい。成膜方式も特に限定されず、バッチ式でもよいし、ロール・ツー・ロール方式でもよい。リチウム金属膜11Aの厚みも特に限定されず、例えば、数μm〜数十μmである。
【0020】
(酸化処理)
酸化処理では、図1Bに示すように、リチウム金属膜11Aの表面を酸化することで、所定厚みの酸化リチウム膜11Bが形成される。
【0021】
酸化処理は、典型的には、リチウム金属膜11Aの成膜室とは異なる処理室で行われる。
酸化ガスは特に限定されず、典型的には酸素あるいは酸素とアルゴン等との混合ガスが用いられる。
【0022】
これに限られず、酸化処理は、リチウム金属膜11Aの成膜室内で実施することも可能である。この場合、リチウム金属膜11Aの形成後、成膜室に酸素あるいは酸素とアルゴン等との混合ガスを導入し、それを所定時間(例えば1分)保持することで、リチウム金属膜11Aの表面に酸化リチウム膜11Bを形成することができる。
【0023】
酸化リチウム膜11Bの厚み(第1の厚み)は特に限定されず、例えば、10nm以上150nm以下である。これにより、後述する炭酸リチウム膜11C(図1C)を安定に形成しつつ、負極材料として要求される所定の電気的特性を安定に確保することができる。
つまり、酸化リチウム膜11Bの厚みが10nm未満の場合、リチウム金属膜11Aの表面に均一に酸化リチウム膜11Bを形成しつつ、炭酸リチウム膜11Cを所定以上の厚みで形成することが困難である。一方、酸化リチウム膜11Bの厚みが150nmを超えると、十分な厚みの炭酸リチウム膜11Cを形成することは可能になるが、リチウムイオン伝導度が低下するおそれがある。
【0024】
(炭酸化処理)
炭酸化処理では、図1Cに示すように、リチウム金属膜11Aの表面を炭酸化することで、所定厚みの炭酸リチウム膜11Cが形成される。炭酸化ガスは特に限定されず、典型的には、一酸化炭素、二酸化炭素あるいはこれらとアルゴン等との混合ガスが用いられる。
【0025】
炭酸化処理は、典型的には、リチウム金属膜11Aの成膜室及びリチウム金属膜11Aの表面を酸化する処理室とは異なる処理室で行われる。これに限られず、炭酸化処理は、リチウム金属膜11Aの表面を酸化する処理室と同一の処理室で構成されてもよく、この場合は処理室に導入されるガスの種類が切替え可能に構成される
【0026】
炭酸リチウム膜11Cは、酸化リチウム膜11Bを炭酸化処理することで形成される。したがって、炭酸リチウム膜11Cの厚み(第2の厚み)は、酸化リチウム膜11Bの厚み以下の厚みで形成される。本実施形態において炭酸リチウム膜11Cは、例えば、10nm以上50nm以下の厚みで形成される。これにより、リチウム金属膜11Aの表面を水酸化及び窒化から効果的に保護することができる。
【0027】
炭酸リチウム膜11Cは、酸化リチウム膜11Bを炭酸化処理することで形成される。したがって、酸化リチウム膜11Bのすべてが炭酸リチウム膜11Cに置き換えられるのが最も好ましい。
【0028】
以上のようにして形成される本実施形態のリチウム金属電池用負極100は、図1Cに示すように、金属製の基材10と、リチウム電極11とを備える。
リチウム電極11は、基材10の上に配置されたリチウム金属層111(11A)と、炭酸リチウム層113(11C)と、リチウム金属層111と炭酸リチウム層113との間に位置する酸化リチウム層112(11B)とを有する積層膜で構成される。
【0029】
リチウム電極11の炭酸リチウム層113は、図示せずとも、電解液を介して正極と対向配置されることで、リチウム金属電池が構成される。リチウム金属電池は一次電池であってもよいし、二次電池であってもよい。正極は、例えば、二酸化マンガン等のマンガン酸化物系材料で構成されるが、勿論これに限られない。
【0030】
本実施形態のリチウム電極11は、表面に炭酸リチウム層113からなる保護膜(炭酸リチウム膜11C)を有するため、大気暴露による表面への水酸化物あるいは窒化物の形成を抑制することができる。
【0031】
以上のように本実施形態においては、リチウム金属膜11Aの表面を酸化し、酸化されたリチウム金属膜の表面を炭酸化することで、リチウム金属膜11Aの表面全域に炭酸リチウムからなる保護膜(11C)を形成するようにしている。リチウムの酸化反応はその炭酸化反応よりも高効率であるため、リチウム金属膜の表面全域を安定に酸化させることができ、さらにその後の炭酸化処理により、リチウム金属膜の表面全域に炭酸リチウムからなる保護膜を安定に形成することができる。
【0032】
さらに、リチウム金属膜11Aの表面を酸化する工程では、リチウム金属膜11Aの表面に第1の厚みの酸化リチウム膜11Bが形成され、リチウム金属膜11Aの表面を炭酸化する工程では、リチウム金属膜11Aの表面に上記第1の厚み以下の第2の厚みの炭酸リチウム膜が形成される。つまり、上記炭酸化処理により、リチウム金属膜表面の酸化リチウムの少なくとも一部を炭酸化リチウムに変換するようにしているため、酸化リチウム膜11B及び炭酸リチウム膜11Cのトータル厚みを最小限に抑えることができる。これにより、リチウムイオン伝導度の低下を抑制しつつ、電池特性の改善を図ることができる。
【0033】
[薄膜形成装置]
続いて、上述のリチウム電極11の形成装置について説明する。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態に係る薄膜形成装置201の概略構成図である。同図に示す薄膜形成装置201は、バッチ式の薄膜形成装置として構成される。
【0035】
薄膜形成装置201は、成膜部21Aと、第1の処理部21Bと、第2の処理部21Cとを有する。成膜部21A、第1及び第2の処理部21B,21Cは、ゲートバルブ22を介して順に接続された複数の処理室で構成されるとともに、それぞれ真空排気装置23を介して内部を所定の圧力に減圧することが可能に構成される。
【0036】
真空排気装置23は図示するように各室に個別に接続される場合に限られず、各室に共通に接続されてもよい。また図示せずとも、成膜部21Aの基材搬入側及び第2の処理部21Cの基材搬出側に、ローディング用及びアンローディング用のロードロック室がそれぞれ設置されてもよい。
【0037】
成膜部21Aは、リチウム金属の蒸発源を含み、搬入された基材10上にリチウム金属膜11Aを形成することが可能に構成される。
第1の処理部21Bは、酸素を導入可能な酸素供給ライン23を有し、リチウム金属膜11Aの表面を酸化して酸化リチウム膜11Bを形成することが可能に構成される。
第2の処理部21Cは、二酸化炭素(あるいは一酸化炭素)を導入可能な炭酸ガス供給ライン24を有し、酸化されたリチウム金属膜の表面を炭酸化して炭酸リチウム膜11Cを形成することが可能に構成される。
【0038】
薄膜形成装置201は、ゲートバルブ22を介して、基材10を成膜部21A、第1の処理部21B及び第2の処理部21Cへ順次搬送する搬送機構を有する。これにより、リチウム金属膜11Aの成膜、酸化リチウム膜11Bの形成及び炭酸リチウム膜11Cの形成を順次行うことができる。
【0039】
図4は、本発明の他の実施形態に係る薄膜形成装置202の概略構成図である。同図に示す薄膜形成装置201は、ロール・ツー・ロール方式の薄膜形成装置として構成される。
【0040】
薄膜形成装置202は、図4に示すように、真空チャンバ110と、成膜部120と、搬送部130と、第1の処理部140と、第2の処理部150と、回収部160と、搬送機構170と、を有する。
【0041】
真空チャンバ110は、密閉構造を有し、真空ポンプP1を有する排気ラインLに接続される。これにより、真空チャンバ110は、その内部が所定の減圧雰囲気に排気又は維持可能に構成される。また、真空チャンバ110は、図4に示すように、成膜部120、搬送部130、処理室141、処理室151及び回収部160をそれぞれ区画する複数の仕切り板111,112,113,114,115を有する。
【0042】
成膜部120は、仕切り板111と真空チャンバ110の外壁により区画された成膜室であり、その内部に蒸発源121を有する。蒸発源121は、リチウム金属を蒸発させるリチウム蒸発源であり、例えば、抵抗加熱式蒸発源、誘導加熱式蒸発源、電子ビーム加熱式蒸発源等で構成される。
【0043】
成膜部120は、排気ラインLに接続されている。これにより、真空チャンバ110が排気される際には、先ず、成膜部120内が排気される。一方、成膜部120は搬送部130と連通しているため、成膜部120内が排気されると、搬送部130内も排気される。これにより、成膜部120と搬送部130との間に圧力差が生じる。この圧力差により、リチウム原料の蒸気流が搬送部130内に侵入することが抑制される。
【0044】
搬送部130は、仕切り板111,112,115と、真空チャンバ110の外壁に区画された搬送室であり、真空チャンバ110内のY軸方向上方に配置される。本実施形態では、第1排気ラインLを成膜部120にのみ接続したが、搬送部130にも別の排気ラインを接続することにより、搬送部130と成膜部120とを独立して排気してもよい。
【0045】
第1の処理部140は、処理室141と、ガス供給ライン142と、圧力調整機構143と、を有する。
【0046】
処理室141は、ガス供給源S1を有するガス供給ライン142に接続されている。これにより、処理室141は、その内部に第1ガスが導入可能に構成される。第1ガスは、酸素を含むガスであれば特に限定されず、典型的には、酸素あるいはこれとアルゴンとの混合ガスである。
【0047】
処理室141は、ポンプP2を有する圧力調整機構143に接続されている。これにより、処理室141は、所定の減圧雰囲気に維持されると共に、処理室141内の第1ガスのガス圧が所定の圧力に調整される。
【0048】
本実施形態では、処理室141に導入された第1ガスが排気される際に、先ず処理室141内が排気される。一方、処理室141は、搬送部130と連通しているため、処理室141内が排気されると、搬送部130内も排気される。これにより、処理室141と搬送部130と間に圧力差が生じる。この圧力差により、第1ガスが搬送部130内に侵入することが抑制される。
【0049】
第2の処理部150は、処理室151と、ガス供給ライン152と、排気ライン153と、を有する。
【0050】
処理室151は、ガス供給源S2を有するガス供給ライン152に接続されている。これにより、処理室151は、その内部に第2ガスが導入可能に構成される。第2ガスは、炭素と酸素を含むガスであれば特に限定されず、具体的には、例えば、アルゴン等の希ガスと二酸化炭素との混合ガスが用いられる。この場合、第2ガスに含まれる二酸化炭素の量も適宜設定可能であり、例えば体積比で5%程度である。
【0051】
処理室151は、ポンプP3を有する排気ライン153に接続されている。これにより、処理室151は、所定の減圧雰囲気に維持可能に構成される。なお、処理室151内の内圧は処理室141の内圧と同圧又は高くてもよい。
【0052】
搬送機構170は、巻出しローラ171と、メインローラ172と、巻取りローラ173と、を有する。
【0053】
巻出しローラ171、メインローラ172及び巻取りローラ173は、それぞれ図示しない回転駆動部を備え、Z軸周りに所定の回転速度で図4における矢印方向にそれぞれ回転可能に構成されている。これにより、真空チャンバ110内において、巻出しローラ171から巻取りローラ173へ向かって基材Fが所定の搬送速度で搬送される。
【0054】
メインローラ172は、基材Fの搬送方向において巻出しローラ171と巻取りローラ173との間に配置される。メインローラ172は、Y軸方向における下部の少なくとも一部が、仕切り板111に設けられた開口部111aを通って成膜部120に臨む位置に配置される。これにより、メインローラ172は、所定の間隔を空けて開口部111aに対向し、蒸発源121とY軸方向に対向する。
【0055】
メインローラ172は、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム等の金属材料で筒状に構成され、その内部に例えば図示しない温調媒体循環系等の温調機構が設けられてもよい。メインローラ172の大きさは特に限定されないが、典型的には、Z軸方向の幅寸法が基材FのZ軸方向の幅寸法よりも大きく設定される。
【0056】
基材Fは、例えば、所定幅に裁断された長尺のフィルムである。基材Fは、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス等の金属で構成される。これに限られず、基材Fには、OPP(延伸ポリプロピレン)フィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PPS(ポリフェニレンサルファイト)フィルム、PI(ポリイミド)フィルム等の樹脂フィルムが用いられてもよい。基材Fの厚さは、特に限定されず、例えば数μm〜数十μmである。また、基材Fの幅や長さについても特に制限はなく、用途に応じて適宜決定可能である。
【0057】
以上のように構成される薄膜形成装置202によれば、成膜部120における基材F上へのリチウム金属膜11Aの成膜、第1の処理部140(処理室141)における酸化リチウム膜11Bの形成、及び、第2の処理部150(処理室151)における炭酸リチウム膜11Cの形成を連続的に行うことができる。
【0058】
所定厚みの酸化リチウム膜11B及び炭酸リチウム膜11Cを形成するため、処理室141,151内に複数のガイドローラを配置して、処理室141,151を通過する基材Fのパスを任意の長さに調整するようにしてもよい。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0060】
例えば以上の実施形態では、成膜方法の一例として真空蒸着法が採用されるが、これに限られず、分子線蒸着法、イオンプレーティング法又はイオンビーム蒸着法等が採用されてもよい。
【0061】
また、以上の実施形態では、リチウム金属電池用の電極材料薄膜の形成に本発明が適用されたが、これに限られず、例えば、中性子発生源用固体リチウムターゲットの製造にも、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10,F…基材
11…リチウム電極
11A…リチウム金属膜
11B…酸化リチウム膜
11C…炭酸リチウム膜
21A,120…成膜部
21B,140…第1の処理部
21C,150…第2の処理部
100…リチウム金属電池用負極
201,202…薄膜形成装置
【要約】
本発明の一形態に係る薄膜形成方法は、基材上にリチウム金属膜を真空チャンバ内で成膜することを含む。前記リチウム金属膜の表面は、前記真空チャンバ内で酸化される。酸化された前記リチウム金属膜の表面は、前記真空チャンバ内で炭酸化される。
図1
図2
図3
図4