特許第6547650号(P6547650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6547650基板処理装置、基板処理方法及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6547650
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20190711BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20190711BHJP
   C23C 16/46 20060101ALI20190711BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   H01L21/31 C
   H01L21/316 X
   C23C16/46
   C23C16/52
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-21211(P2016-21211)
(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公開番号】特開2017-139430(P2017-139430A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】特許業務法人弥生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162008
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 宣明
(72)【発明者】
【氏名】山賀 健一
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−022653(JP,A)
【文献】 特開2012−248634(JP,A)
【文献】 特開平07−201753(JP,A)
【文献】 特開2011−096986(JP,A)
【文献】 特開2007−149774(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0326186(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02、21/205、21/31−21/32、
21/365、21/469−21/475、
21/67−21/687、21/86、
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内にて、回転テーブルの一面側に配置された基板を当該回転テーブルにより公転させ、基板の通過領域に処理ガスを供給して基板に対して成膜処理する基板処理装置において、
前記基板を加熱する主加熱機構と、
前記回転テーブル上の基板の通過領域と対向するように設けられ、基板の吸収波長領域の光の照射により基板を加熱して前記基板の温度分布を調整するために、回転テーブルの内外方向に沿って光強度を調整できるように構成された補助加熱機構と、
前記基板における前記回転テーブルの内外方向に沿った温度分布を検出する温度測定部と、
前記回転テーブルの回転方向の位置を検出する位置検出部と、
前記温度測定部により測定して得られた温度測定データと基板の目標とする温度分布に対応するデータと前記位置検出部にて検出した位置検出値とに基づいて、当該温度測定データに対応する基板が前記補助加熱機構による加熱領域を通過するときに、補助加熱機構の光強度を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記温度測定部は、前記補助加熱機構に対して回転テーブルの周方向に離れた位置に設けられることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記補助加熱機構は、前記回転テーブルの内外方向に沿って配置され、各々独立して光強度を調整できる複数の光照射部からなることを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記補助加熱機構は、照射される光が前記回転テーブルの内外方向に沿って移動可能な光照射部からなることを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記光照射部は、前記回転テーブルの内外方向に沿って移動可能であることを特徴とする請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記温度測定データは、回転テーブルの内外方向に沿って区画された複数の区画領域の各々と温度に対応する評価値とを対応付けたデータであり、
前記基板の目標とする温度分布に対応するデータは、前記複数の区画領域の各々と目標温度に対応する目標値とを対応付けたデータであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板の目標とする温度分布は、基板の中心寄りの領域と外周寄りの領域との間で温度が異なる分布であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
真空容器内にて、回転テーブルの一面側に配置された基板を当該回転テーブルにより公転させ、基板の通過領域に処理ガスを供給して基板に対して成膜処理する基板処理方法において、
前記回転テーブル上の基板の通過領域と対向するように設けられ、基板の吸収波長領域の光の照射により基板を加熱して前記基板の温度分布を調整するために、回転テーブルの内外方向に沿って光強度を調整できるように構成された補助加熱機構を用い、
前記基板を主加熱機構により加熱する工程と、
温度測定部により、基板における前記回転テーブルの内外方向に沿った温度分布を検出する工程と、
前記回転テーブルの回転方向の位置を位置検出部により検出する工程と、
前記温度測定部により測定して得られた温度測定データと基板の目標とする温度分布に対応するデータと前記位置検出部にて検出した位置検出値とに基づいて、当該温度測定データに対応する基板が前記補助加熱機構による加熱領域を通過するときに、補助加熱機構の光強度を制御する工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項9】
前記温度測定データは、回転テーブルの内外方向に沿って区画された複数の区画領域の各々と温度に対応する評価値とを対応付けたデータであり、
前記基板の目標とする温度分布に対応するデータは、前記複数の区画領域の各々と目標温度に対応する目標値とを対応付けたデータであることを特徴とする請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
真空容器内にて、回転テーブルの一面側に配置された基板を当該回転テーブルにより公転させ、基板の通過領域に処理ガスを供給して基板に対して成膜処理する基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項8または9に記載の基板処理方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を公転させながら処理ガスを基板に供給することにより成膜処理を行う技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)に対してALD(Atomic Layer Deposition)により成膜が行われる場合がある。このようなALDを行う装置としては、例えば複数のウエハを載置した回転テーブルを回転させることでウエハを公転させ、回転テーブルの径方向に沿うように配置される処理ガスの供給領域を繰り返し通過させる装置が知られている。
【0003】
ところで、ウエハに対してドライエッチングを行う装置においては、ウエハの中心部を中心とする同心円状の分布でエッチング速度を調整する場合があることから、ドライエッチングの前工程であるウエハの成膜工程では、同心円状の膜厚分布が要求されることがある。しかしながら、既述のウエハを公転させる装置においては、ウエハに形成される膜は、回転テーブルの中心部を中心とした膜厚分布となる傾向があり、同心円状の膜厚分布とすることが困難であるという問題があった。
【0004】
そこで、本件出願人は、ウエハWに形成される膜厚分布はウエハ温度に依存することから、ウエハの温度分布を調整することにより、同心円状の膜厚分布を確保することを検討している。ところで、本件と同一の出願人である特許文献1〜4には、ウエハを公転させる成膜装置において、加熱ランプを用いる構成が記載されている。特許文献1及び特許文献2は、ウエハを成膜温度よりも高い温度に加熱して薄膜の改質を行う技術であり、特許文献3は加熱により反応生成物を緻密化する技術、特許文献4はオゾンガスが熱分解する温度以上に補助加熱する技術である。また、特許文献5には面内温度差を発生させないように多数の加熱ランプを制御することが示されているが、いずれも本発明の構成とは異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−22653号公報
【特許文献2】特開2014−138076号公報
【特許文献3】特開2010−245448号公報
【特許文献4】特開2014−17331号公報
【特許文献5】特開2015−70095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、回転テーブルにより基板を公転させて成膜処理を行う装置において、基板に所望の温度分布を形成することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基板処理装置は、
真空容器内にて、回転テーブルの一面側に配置された基板を当該回転テーブルにより公転させ、基板の通過領域に処理ガスを供給して基板に対して成膜処理する基板処理装置において、
前記基板を加熱する主加熱機構と、
前記回転テーブル上の基板の通過領域と対向するように設けられ、基板の吸収波長領域の光の照射により基板を加熱して前記基板の温度分布を調整するために、回転テーブルの内外方向に沿って光強度を調整できるように構成された補助加熱機構と、
前記補助加熱機構に対して回転テーブルの周方向に離れた位置に設けられ、基板における前記回転テーブルの内外方向に沿った温度分布を検出する温度測定部と、
前記回転テーブルの回転方向の位置を検出する位置検出部と、
前記温度測定部により測定して得られた温度測定データと基板の目標とする温度分布に対応するデータと前記位置検出部にて検出した位置検出値とに基づいて、当該温度測定データに対応する基板が前記補助加熱機構による加熱領域を通過するときに、補助加熱機構の光強度を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の基板処理方法は、
真空容器内にて、回転テーブルの一面側に配置された基板を当該回転テーブルにより公転させ、基板の通過領域に処理ガスを供給して基板に対して成膜処理する基板処理方法において、
前記回転テーブル上の基板の通過領域と対向するように設けられ、基板の吸収波長領域の光の照射により基板を加熱して前記基板の温度分布を調整するために、回転テーブルの内外方向に沿って光強度を調整できるように構成された補助加熱機構を用い、
前記基板を主加熱機構により加熱する工程と、
温度測定部により、基板における前記回転テーブルの内外方向に沿った温度分布を検出する工程と、
前記回転テーブルの回転方向の位置を位置検出部により検出する工程と、
前記温度測定部により測定して得られた温度測定データと基板の目標とする温度分布に対応するデータと前記位置検出部にて検出した位置検出値とに基づいて、当該温度測定データに対応する基板が前記補助加熱機構による加熱領域を通過するときに、補助加熱機構の光強度を制御する工程と、を含むことを特徴とする。


【0009】
本発明の記憶媒体は、
真空容器内にて、回転テーブルの一面側に配置された基板を当該回転テーブルにより公転させ、基板の通過領域に処理ガスを供給して基板に対して成膜処理する基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、上記の基板処理方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、回転テーブルを回転させることにより基板を公転させながら当該基板に対して処理ガスを供給して成膜処理するにあたって、主加熱機構により基板を加熱すると共に、補助加熱機構からの光により基板を加熱する。補助加熱機構は回転テーブルの内外方向に沿って光強度が調整できるように構成され、その光強度は、基板における回転テーブルの内外方向に沿った温度分布を検出する温度測定部により測定して得られた温度測定データと、目標とする温度分布に対応するデータと、回転テーブルの回転方向の位置の検出値と、に基づいて制御される。これにより、基板の温度分布が調整され、所望の温度分布を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の基板処理装置を適用した成膜装置の一実施形態を示す縦断側面図である。
図2】成膜装置の概略横断斜視図である。
図3】成膜装置の横断平面図である。
図4】成膜装置を周方向に切断した様子を模式的に示す縦断側面図である。
図5】成膜装置に設けられる照射ユニットを示す概略斜視図である。
図6】成膜装置に設けられる照射ユニットと温度測定部と制御部とを示す概略斜視図である。
図7】ウエハの区画領域の一例を示す平面図である。
図8】成膜装置の動作を説明するための模式図である。
図9】成膜装置の動作を説明するための模式図である。
図10】成膜装置の動作を説明するための概略斜視図である。
図11】成膜装置の他の実施形態の照射ユニットを示す平面図である。
図12】成膜装置のさらに他の実施形態の照射ユニットを示す概略斜視図である。
図13】評価試験の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の基板処理装置を適用した成膜装置1の一実施形態について、図1図4を参照しながら説明する。この成膜装置1は、ウエハWの温度分布を所望の形状に調整するものであり、例えば基板であるウエハWの面内に同心円状の膜厚分布を形成するために、ウエハ面内に同心円状の温度分布を形成し、そのように温度分布が形成された状態で処理ガスを供給して成膜処理を行うものである。同心円状の温度分布とは、より具体的にはウエハWの中心から等距離であるウエハWの周方向に沿った各位置では同じないしは概ね同じ温度であり、ウエハWの内外方向(半径方向)に沿った各位置では互いに異なる温度となる温度分布である。
【0013】
図1は成膜装置1の縦断側面図、図2は成膜装置1の内部を示す概略斜視図、図3は成膜装置1の横断平面図、図4は成膜装置1を周方向に切断した様子を模式的に示す縦断面図であって、図1図3のA−A´線に沿って切断した縦断側面図である。成膜装置1は、概ね円形状の扁平な真空容器(処理容器)11と、真空容器11内に設けられた円板状の水平な回転テーブル2と、を備えている。真空容器11は、天板12と真空容器11の側壁及び底部をなす容器本体13とにより構成される。図1中14は、容器本体13の下側中央部を塞ぐカバー、15は、成膜処理中にカバー14内へパージガス例えばN(窒素)ガスを供給するためのガス供給管である。また、真空容器11の側壁には、ウエハWの搬送口16が開口しており、ゲートバルブ17により開閉自在に構成されている。
【0014】
回転テーブル2の下面側中心部は、回転軸21を介してカバー14内に設けられる回転機構22に接続され、鉛直軸まわりに回転できるように構成されている。回転機構22は位置検出部をなすエンコーダ221に接続され、回転テーブル2の回転方向の位置が検出されるようになっている。以下回転テーブル2の回転方向を「回転方向」、回転テーブル2の回転方向の位置を「回転位置」として、説明を続ける。回転テーブル2の表面側(一面側)には、回転方向に沿って例えば6つの円形の凹部23が互いに間隔をおいて形成されており、この凹部23の底面上にウエハWが水平に載置される。載置されたウエハWは、凹部23の側壁により位置を規制された状態で回転テーブル2の回転によって公転する。
【0015】
回転テーブル2の下方側には、ウエハWを加熱する主加熱機構をなすヒータユニット18が設けられており、回転テーブル2を介してウエハWを成膜温度である200℃〜800℃に加熱するように構成されている。このヒータユニット18の配置空間には、パージガス例えばNガスを供給するためのパージガス供給管19が周方向に亘って複数個所に設けられている。回転テーブル2上に載置されるウエハWは、ヒータユニット18及び後述する照射ユニット4により加熱されて所望の温度分布が形成される。
【0016】
回転テーブル2の上方には、図3に示すように、夫々回転テーブル2の外周から中心へ向かって伸びる棒状の原料ガスノズル31、分離ガスノズル32、酸化ガスノズル33、プラズマ発生用ガスノズル34及び分離ガスノズル35が、この順で回転テーブル2の周方向に沿って間隔をおいて配設されている。これらのガスノズル31〜35は、図4に示すように、その下方に、長さ方向に沿って多数の開口部36を備え、回転テーブル2の径に沿って夫々ガスを供給するように構成されている。
【0017】
原料ガスノズル31は、成膜を行うための処理ガスとして、原料ガスである例えばBTBAS(ビスタ−シャルブチルアミノシラン)などのSi(シリコン)含有ガスを吐出する。酸化ガスノズル33はSi含有ガスを酸化するための酸化ガスとして、例えばO3(オゾン)ガスとO(酸素)ガスの混合ガスを吐出する。分離ガスノズル32、35は分離ガスとして例えばN2ガス、プラズマ発生用ガスノズル34は例えばAr(アルゴン)ガスとOガスの混合ガスを夫々吐出する。
【0018】
原料ガスノズル31の下方のガス供給領域を第1の処理領域P1、酸化ガスノズル33の下方のガス供給領域を第2の処理領域P2とする。分離ガスノズル32、35は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離する分離領域を各々形成するためのものである。これら分離ガスノズル32、35のうち、分離ガスノズル35の上方側における天板12には、図4に示すように、下方に突出する概略扇形の突状部37が設けられている。分離ガスノズル32、35から分離ガスが供給されることによって、回転テーブル2と突状部37との間は、処理領域P1、P2の雰囲気を互いに分離する分離領域として構成される。
【0019】
この例においては、分離ガスノズル32の上方側近傍には、補助加熱機構をなす照射ユニット4が設けられている。例えば分離ガスノズル32の上方側における天板12は平面視概略扇状に開口し、例えば石英などの光を透過する材料よりなる透過部材40により気密に塞がれており、その上方側に照射ユニット4が設けられている。この照射ユニット4は、ウエハWの吸収波長領域の光の照射によりウエハWを加熱してウエハWの温度分布を調整するために設けられるものであり、照射された光が分離ガスノズル32に妨げられないように分離ガスノズル32の上方側から横方向に外れた位置に設けられている。
【0020】
この例の照射ユニット4は、各々独立して光強度を調整できる複数例えば5個の光照射部41〜45からなり、これら光照射部41〜45は、例えば回転テーブル2の内外方向(半径方向)に沿って互いに等間隔で離間するように配置されている。光照射部41〜45としては、ウエハWが吸収する波長のレーザー光を発光するレーザー発光器が用いられ、ウエハWの温度をヒータユニット18にて加熱された温度に対して例えば±5℃の範囲で微調整する。これら5個の光照射部41〜45による照射領域は、図5に示すように、ウエハWの直径をカバーするように設定され、回転テーブル2の回転により、回転テーブル2上の6枚のウエハW1〜W6の表面全体にレーザー光が照射されるようになっている。このようにレーザー光が照射される領域が照射ユニット4による加熱領域となる。図1中46は、光照射部41〜45の支持部材である。
【0021】
光照射部41〜45は、図6に示すように、夫々電力制御部47に接続され、後述する制御部7からの制御信号に基づいて個別に電力(給電量)が供給されて、各々独立して光強度が制御できるように構成されている。後述するように、各々の光照射部41〜45の給電量を制御して、出力を夫々調整することにより、ウエハWに所望の温度分布、この例ではウエハWの中心寄りの領域の温度が外周寄りの領域の温度よりも高い山型の同心円状の温度分布が形成される。
【0022】
透過部材40は、例えば下面側における外縁部401が周方向に亘って垂直に伸び出して、ガス規制用の突起部401をなしている。そのため分離ガスノズル32から分離ガスを吐出すると、回転テーブル2の回転方向上流側から原料ガスが侵入すること、及び回転テーブル2の回転方向下流側から酸化ガスが侵入することが防止され、処理領域P1、P2の雰囲気を互いに分離する分離領域として機能する。
【0023】
照射ユニット4に対して回転テーブル2の周方向に離れた位置、例えば搬送口16近傍の上方側には、例えば石英よりなる透過部材50を介して温度測定部5が設けられている。温度測定部5としては例えばサーモビューワー(赤外線熱画像装置)が用いられ、例えばウエハWにおける回転テーブル2の内外方向に沿った温度分布を検出し、この検出結果を後述する制御部7に出力できるように構成されている。この例の透過部材50は、突起部が設けられていない以外は、照射ユニット4にて説明した透過部材40と同様に構成されている。
【0024】
プラズマ発生用ガスノズル34の上方側には、例えば石英よりなる透過部材60を介して、金属線をコイル状に巻回して構成したアンテナ61が設けられている。このアンテナ61は、接続電極62、整合器63を介して高周波電源64に接続される。この例の透過部材60は照射ユニット4にて説明した透過部材40と同様に構成され、その下面にはガス規制用の突起部601を備えている。また、65は導電性のファラデーシールド、66はアンテナ61において発生する電磁界のうち、磁界をウエハWに到達させるためのスリットである。なお、図3ではファラデーシールド65を省略している。
【0025】
真空容器11の底面において、回転テーブル2の内外方向外側には排気口24が2つ開口しており、図1に示すように、各排気口24には排気管25の一端が接続されている。各排気管25の他端は合流し、バルブを含む排気量調整部26を介して真空ポンプにより構成される排気機構27に接続される。排気量調整部26により各排気口24からの排気量が調整され、それによって真空容器11内の圧力が調整される。
【0026】
回転テーブル2の中心部領域C上の空間には、ガス供給路28を介してパージガスであるN2ガスが供給されるように構成されている。このN2ガスは、回転テーブル2の内外方向外側にパージガスとして流れる。このような成膜装置1には、外部の搬送機構29により、搬送口16に臨む位置における凹部23との間でウエハWの受け渡しが行われる。凹部23には、ウエハWを移載するための複数の昇降ピン(図示せず)の昇降用の孔部が形成され、この昇降ピンと搬送機構29との協働作業によりウエハWの受け渡しが行われる。
【0027】
この成膜装置1には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部7が設けられている。この制御部7には、図6に示すように、CPU71と、後述のように成膜処理を実行するためのプログラム72と、メモリ73が格納され、プログラム72には、後述の各処理が実行されるようにステップ群が組まれている。また、当該プログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体から制御部7内にインストールされる。
【0028】
さらに、制御部7は、温度測定部5により検出された温度分布のデータに基づいて、温度測定データを求め、メモリ73に格納する機能を備えている。温度測定データとは、例えば回転テーブル2の内外方向(以下「内外方向」という)に沿って区画された複数の区画領域の各々と温度に対応する評価値とを対応付けたデータである。区画領域8の一例について、図7に示す。この例では、例えば内外方向に沿って5つに区画されると共に、回転方向に沿って5つに区画されている。図7中Oは、回転テーブル2の回転中心であり、前記内外方向に沿う5つの区画領域は、照射ユニット4の光照射部41〜45による照射領域に夫々対応するものである。また、評価値とは、温度測定部5により検出された温度分布に基づいて、例えば各区画領域の温度の平均値を求めたものである。
【0029】
そして、制御部7は、この温度測定データと、ウエハWの目標とする温度分布に対応するデータと、位置検出値(回転テーブル2の回転方向の位置)とに基づいて、温度測定データに対応するウエハWが照射ユニット4による加熱領域を通過するときに、照射ユニット4の光強度を制御するように構成されている。ウエハWの目標とする温度分布に対応するデータとは、複数の区画領域8の各々と目標温度に対応する目標値とを対応付けたデータである。具体的な制御手法については、以降に成膜装置1の作用と合わせて説明する。
【0030】
続いて、成膜装置1により行われる動作について説明する。先ず、ヒータユニット18によって真空容器11内全体を加熱する。そして、ゲートバルブ17を開放して、昇降ピンの昇降と回転テーブル2の断続的な回転との協働により、ウエハWを保持した搬送機構29が真空容器11内への進入する度に、ウエハWを凹部23内へ移載する。こうして、6つの凹部23にウエハW1〜W6を夫々収納し、搬送機構29が真空容器11から退避すると、ゲートバルブ17を閉じる。
【0031】
その後、真空容器11内を所定の圧力の真空雰囲気になるように調整すると共に、この圧力調整に並行して、ヒータユニット18により回転テーブル2を介してウエハWを所定温度例えば400℃に加熱し、回転テーブル2を例えば200rpmで回転させる。その後、温度測定部5によりウエハW1〜W6の温度分布を順次検出して、夫々の温度測定データを取得する。次いで、ウエハW1〜W6が照射ユニット4の加熱領域を順次通過するときに、夫々の温度測定データに基づいて照射ユニット4の出力を制御する。こうして、各ウエハW1〜W6毎に、照射ユニット4の各光照射部41〜45の出力を調整して加熱(微小調整加熱)することにより、ウエハWに所望の温度分布を形成する。
【0032】
以下、照射ユニット4によるウエハWの加熱について、図8図10を参照して具体的に説明する。図8(a)は説明の便宜上の模式モデルであり、回転テーブル2がホーム位置にある状態を示している。このホーム位置は、回転テーブル2の外縁の基準位置P1が0度になる位置である。また、このモデルでは、図8(b)に示すように、温度測定部5を0度の位置、照射ユニット4を180度の位置に夫々配置している。
【0033】
回転テーブル2は例えば時計回りに回転し、回転テーブル2上には、0度の位置にウエハW1、300度の位置にウエハW2、240度の位置にウエハW3、180度の位置にウエハW4、120度の位置にウエハW5、60度の位置にウエハW6を夫々配置する。ウエハW1が0度の位置にあるとは、ウエハW1の回転方向の前方端が、回転テーブル2の中心Oと0度の位置とを結ぶ線D1に接する位置である。また、例えばウエハW1の回転方向の後方端と前記中心Oとを結ぶ線D2を引いたとき、当該線D2と、回転テーブル2の中心Oと300度の位置とを結ぶ線D3とのなす角θは例えば5度とする。
【0034】
温度測定データTの取得は、例えば次のように行う。ホーム位置にある回転テーブル2を回転し、基準位置P1が例えば175度のときに予め設定した照射パターンで照射ユニット4をオンにして、ウエハW1から加熱(微小調整加熱)を開始する。そして、例えば回転テーブル2を1回転し、図9(a)に示すように、基準位置P1が次に0度になったときに、温度測定部5にてウエハW1の温度分布の検出を始める。温度測定部5では、ウエハW1における内外方向に沿った温度分布が検出され、基準位置P1が55度になるまで(図9(b)の状態)、ウエハW1に対して、0度から55度までの温度分布を取得する。そして、制御部7のメモリ73に、0度〜55度までの温度測定データTをウエハW1のデータエリアに書き込む。
【0035】
同様に、基準位置P1が60度になったときに、温度測定部5にてウエハW2の温度分布の取得が開始され、基準位置P1が60度〜115度の温度測定データT2をウエハW2のデータエリアに書き込む。こうして、基準位置P1が120度〜175度の温度測定データT3をウエハW3、基準位置P1が180度〜235度の温度測定データT4をウエハW4のデータエリアに夫々対応付けて書き込む。また、基準位置P1が240度〜295度の温度測定データT5をウエハW5、基準位置P1が300度〜355度の温度測定データT6をウエハW6のデータエリアに夫々対応付けて書き込む。
【0036】
そして、例えば図10(a)に示すように、温度測定部5により検出された温度分布に基づいて温度測定データT1が取得されたウエハW1が、図10(b)に示すように、照射ユニット4の加熱領域を通過するときに、ウエハW1の温度測定データT1に基づいて作成された光強度データL1によりウエハW1を加熱する。光強度データL1とは、照射ユニット4の各光照射部41〜45の光強度と、回転テーブル2の回転位置とを対応付けたデータであり、例えば温度測定データT1とウエハWの目標とする温度分布に対応する目標温度分布データとの比較結果に基づいて作成される。目標温度分布データとは、ウエハWの区画領域8の夫々の温度の目標値、例えば区画領域8の温度平均値である。この例における目標とする温度分布は、ウエハWの中心寄りの領域の温度が外周寄りの領域の温度よりも高い同心円状の山型の温度分布である。
【0037】
例えば制御部7内のメモリ73に、目標温度分布データを記憶しておく。そして、例えばウエハWの区画領域8の夫々において、温度の評価値と目標値との差分を取得し、この差分に相当する分、光照射部41〜45による加熱で温度を上昇させるように、光照射部41〜45の光強度を決定し、光強度データLを作成する。光強度データLは、例えば区画領域8毎に、光照射部41〜45の出力を書き込んだものである。光照射部41〜45の光強度と温度の変化量との関係は予め把握されており、光の強度はゼロである場合も含む。この例では、ウエハWの外周側の区画領域は中心側の区画領域よりも面積が広いため、光照射部41〜45から同一の出力で光を照射すると、外周側の区画領域では昇温の程度が小さくなる。従って、例えば光照射部41〜45毎に、温度の変化量と光強度(出力)との変化量との関係を把握し、光強度データLが作成される。
【0038】
こうして、ウエハW1の温度測定データT1から光強度データL1を作成し、基準位置P1が180度〜235度の間、各光照射部41〜45から、光強度データL1に基づいて制御された出力により、ウエハW1にレーザ光を照射する。また、基準位置P1が240度〜295度の間、ウエハW2の温度測定データT2から作成された光強度データL2より、照射ユニット4の出力を制御してウエハW2を加熱する。同様に、基準位置P1が300度〜355度の間はウエハW3、基準位置P1が360度(0度)〜555度の間はウエハW4、基準位置P1が60度〜115度の間はウエハW5、基準位置P1が120度〜175度の間はウエハW6に対して、夫々照射ユニット4の出力を制御して加熱する。
【0039】
このように、回転テーブル2を回転によりウエハWが温度測定部5を通過する毎に、当該ウエハWの温度分布を検出して温度測定データTを取得し、この温度測定データTに対応するウエハWが照射ユニット4の加熱領域を通過するときに、照射ユニット4の光強度を制御する。こうして、回転テーブル2の回転を続けることにより、次第にウエハWの温度分布が、目標となる温度分布つまり山型の同心円状の温度分布に近付いていく。ここで言う同心円状とは、ウエハWの中心部から周縁に至るまでの温度分布が周方向で互いに近似している場合も含み、一般の同心円よりも広い意味を指している。以上では、模式モデルを用いて説明したが、実際には、照射ユニット4及び温度測定部5は設計上適宜配置される。
【0040】
そして、ウエハWに同心円状の温度分布が形成された状態で、回転テーブル2を例えば平面視時計回りに回転する一方、分離ガスノズル32、35及び中心部領域Cから所定の流量でN2ガスを供給し、原料ガスノズル31、酸化ガスノズル33から例えばSi含有ガス、Oガス及びOガス、プラズマ発生用ガスノズル34からArガス及びOガスを夫々供給する。
【0041】
温度分布が形成されているウエハWは、原料ガスノズル31の下方の第1の処理領域P1と酸化ガスノズル33の下方の第2の処理領域P2とを交互に繰り返し通過する。それによって、ウエハWへのSi含有ガスの吸着と、吸着されたSi含有ガスの酸化によるSiOの分子層の形成とからなるサイクルが繰り返し行われ、この分子層が積層される。また、高周波電源64から高周波電力を供給することにより、プラズマ発生用ガスノズル34から吐出されるガスが、磁界によって活性化されて、プラズマが生成する。そして、このプラズマがウエハWの表面に衝突することにより、分子層から不純物が放出され、元素の再配列が起こって、膜の緻密化(高密度化)が図られる。
【0042】
このALDのサイクルが行われている間、例えばウエハWの温度測定データTの取得と、この温度測定データTに基づいて光強度が制御された状態での照射ユニット4による加熱を行う。こうして、ウエハWの面内には、例えばウエハWのエハWの中心側では周縁側に比べて温度が高い同心円状の温度分布が形成されていることにより、ウエハWの中心側では周縁側に比べてSi含有ガスの吸着量が多くなり、1サイクルで形成されるSiOの分子層の厚さが大きくなる。そのような分子層が上記のように積層されることで、中心側の膜厚が周縁側の膜厚よりも大きい同心円状の膜厚分布でSiO膜が形成される。
【0043】
真空容器11内においては、分離領域に供給された分離ガスであるNガスが、当該分離領域を周方向に広がり、回転テーブル2上で原料ガスと酸化ガスとが混合されることを防ぐ。また、中心部領域Cに供給されたN2ガスが回転テーブル2の内外方向外側に供給され、中心部領域Cでの原料ガスと酸化ガスとの混合を防ぐことが出来る。また、このサイクルが行われるときには、既述したようにヒータユニット18の収納空間及び回転テーブル2の裏面側にもN2ガスが供給され、原料ガス及び酸化ガスがパージされる。
【0044】
こうして、ウエハWの面内各部が所望の膜厚になると、分離ガスノズル32、35及び中心部領域CへのN2ガスの供給量が低下して、ガスノズル31、33から処理ガスの供給が停止する。そして、ヒータユニット18及び照射ユニット4によるウエハWの加熱、温度測定部5によるウエハWの温度分布の検出、アンテナ61への高周波電力の供給、回転テーブル2の回転を停止する。次いで、所定の時間経過後、ゲートバルブ17を開放して昇降ピンの昇降と回転テーブル2の間欠的な回転との協働により、真空容器11内に進入した搬送機構29に順次各ウエハWを受け渡して、真空容器11から搬出する。
【0045】
この成膜装置1によれば、回転テーブル2によりウエハWを公転させながら当該ウエハWに対して処理ガスを供給して成膜処理を行うにあたり、ヒータユニット18によりウエハWを加熱すると共に、回転テーブル2の内外方向に沿って光強度が調整できる照射ユニット4により、ウエハWを補助的に加熱している。照射ユニット4は、温度測定部5にてウエハWにおける回転テーブル2の内外方向に沿った温度分布を検出して得た温度測定データと、目標とする温度分布に対応するデータと、回転テーブル2の回転方向の位置の検出値とに基づいて、その内外方向の光強度が調整される。このため、照射ユニット4から、回転テーブル2の回転方向の位置に対応して、回転テーブル2の内外方向に沿って光強度が制御された光が照射されるので、ウエハWにおける内外方向の温度を目標とする温度分布に調整でき、例えば同心円状の温度分布を形成することができる。従って、例えば同心円状の温度分布を形成した場合には、既述のように同心円状の膜厚分布を確保することができる。
【0046】
また、複数枚のウエハWに対して個別に温度分布を検出し、照射ユニット4による加熱もウエハWに対して個別に行うので、ウエハW毎に温度分布の微調整が可能であり、回転テーブル2上の全てのウエハWの温度分布を目標とする温度分布に調整することができる。さらに、回転テーブル2を回転させ、同じウエハWに対して複数回、温度分布の検出と、照射ユニット4による加熱が行う場合には、複数回の加熱によってウエハWの温度を目標値まで上昇させればよいので、小出力の照射ユニット4を用いて目標温度に調整することができる。
【0047】
続いて、本発明の他の実施形態について説明する。この実施形態が上述の実施形態と異なる点は、補助加熱機構が、回転テーブル2の内外方向に沿って移動可能な光照射部からなることである。例えば図11に示すように、この例の補助加熱機構9は、例えば1つの光照射部91を備え、この光照射部が移動機構92により、内外方向に移動自在に構成されている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0048】
例えば光照射部91は、移動機構92により、図11に示すように、内外方向の5つの区画領域に対応する位置に順次配置される。この例では、回転テーブル2を回転させ、温度測定部5を通過する毎にウエハW1〜W6の温度分布を順次検出して、夫々の温度測定データTを取得する。そして、例えば温度調整開始後の1回転目は、光照射部91を内外方向の最も内側の位置に配置してウエハW1〜W6を加熱し、2回転目は光照射部91を内外方向の内側から2番目の位置に配置してウエハW1〜W6を加熱する。こうして、回転テーブル2の1回転毎に光照射部91を回転テーブル2の内外方向に移動させながら、ウエハW1〜W6を加熱することにより、ウエハW1〜W6に所望の温度分布が形成される。
【0049】
また、図12に示すように、例えば光照射部93からの光を反射部94により反射させて、ウエハWに照射するようにしてもよい。この例では光照射部93を固定して設けると共に、反射部94の角度を調整することにより、反射された光が例えば内外方向の5つの区画領域に対応する位置に順次照射されるように構成されている。この例においても、図11に示す例と同様に、回転テーブル2の1回転毎に反射部94の角度を調整して、反射された光を回転テーブル2の内外方向に移動させながら、ウエハW1〜W6を加熱することにより、ウエハW1〜W6に所望の温度分布が形成される。但し、ここに記載した手法は一例であり、光照射部の形状や温度調整時の光照射部の移動の仕方は適宜選択可能である。
【0050】
以上において、照射ユニット4による加熱は、温度測定部5により測定して得られた温度測定データと、目標とする温度分布に対応するデータと、回転テーブル2の回転方向の位置検出値とに基づいて制御されればよく、既述の制御手法には限定されない。また、照射ユニット4及び温度測定部5の形状や設置位置は、上述の例に限定されるものでなく適宜選択可能であり、原料ガスや酸化ガスが供給される領域に設置するようにしてもよい。さらに、温度測定部5は、照射ユニット4からの光の照射を妨げない位置であれば、照射ユニット4の回転方向の上流側又は下流側に接近して設けるようにしてもよい。また、照射ユニット4の形状については、回転テーブル2の内外方向の光強度が制御できる構成であればよい。また、解像度の低下を抑制するためには、照射形状が回転テーブル2の内外方向に伸びる細長い光源を用いることが好ましい。さらにまた、補助加熱機構を複数の光照射部により形成する場合には、その個数は上述の例に限られず、照射ユニット4の光照射部はレーザー発光器の代わりに、フラッシュランプであってもよい。
【0051】
また、ウエハWに形成される温度分布については、必ずしも同心円状であることには限られず、同心円状の温度分布には、ウエハWの中心寄りの領域の温度が外周寄りの領域の温度よりも低い、すり鉢型の温度分布も含まれる。さらに、ウエハの区画領域は、回転テーブルの内外方向に沿って区画された複数の区画領域であれば、上述の例に限定されない。
【0052】
また、照射ユニット4でウエハWの温度の微調整を行う間は、ALDのサイクルを行う間よりも、回転テーブルの回転速度は小さくしてもよい。さらに、ALDのサイクルの実行中は、照射ユニット4への電力供給を停止し、ヒータユニット18のみによって真空容器11内を加熱するようにしてもよい。さらにまた、温度測定部5は、サーモビューワー以外に回転テーブルに埋め込んだ熱電対等であってもよい。また、例えばサーモビューワーよりなる温度測定部の周囲に光照射部を設ける構成のように、温度測定部と補助加熱機構とを一体に構成するようにしてもよい。またミラー等を用いてサーモビューワーの撮像範囲に光照射部の光路が重なる構造を採用してもよい。これらの場合には、例えば温度測定部によるウエハの温度分布の検出を所定のタイミングにて実施し、次いで、この検出値に基づいた光強度で補助加熱機構から光を照射するように制御される。光を照射するタイミングは、ウエハの温度分布の検出の直後であってもよいし、温度分布を検出してから回転テーブルの回転により、温度分布を検出したウエハが再び補助加熱機構の下方側に位置するタイミングであってもよい。例えば1回転目でウエハWに光を照射し、次の2回転目でウエハWの温度を測定し、次の3回転目で温度測定の結果に基づいて光照射部を制御するといった手法を採用することができる。
【0053】
一例として、SiO膜の形成について説明したが、ウエハWに形成する膜としてはSiOに限られない。例えば、原料ガスとして上記のSi含有ガスの代わりに例えばチタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト(Ti(MPD)(THD)))ガスなどのTi(チタン)含有ガスを用い、酸化ガスとしてOガスを用いてTiO(酸化チタン)膜を形成してもよい。また、プラズマによる膜の緻密化のための機構は必ずしも必要はない。さらに、本発明は基板の面内の温度によって当該基板への処理ガスの吸着量を調整できるものに適用することができる。従って、本発明はALDにより成膜を行う成膜装置に適用することには限られず、CVDにより成膜を行う装置にも適用することができる。さらに、本発明は角型の基板を処理する場合にも適用することができる。
【0054】
(評価試験)
既述した成膜装置1において、照射ユニットを第1の光照射部と第2の光照射部との2つの光照射部(レーザー発光器)により構成した。第1の光照射部をウエハWの回転テーブル2の中心部側の外縁から30mm程度内側に光を照射する位置、第2の光照射部をウエハWの中心部に光を照射する位置に夫々配置し、サーモビューワーよりなる温度測定部5にてウエハ温度度を検出した。回転テーブル2の回転数は20rpm、真空容器11内の圧力は260Paとし、ヒータユニット18によりウエハWを400度に昇温した後、温度測定部5により温度の検出を開始した。
【0055】
このウエハWの温度の測定結果を図13に示す。図13中縦軸は、ウエハWの温度、横軸は、ウエハW上の直径方向の位置である。また、点線は、光照射部による加熱を開始する前のデータ、一点鎖線は、第2の光照射部の出力が37.5Wのデータ、実線は、第2の光照射部の出力が75Wのデータを夫々示している。第1の光照射部の出力は30Wである。
【0056】
この結果、第1及び第2の光照射部によりウエハWの温度分布が変化することが認められ、さらに、第2の光照射部の出力を変えることにより温度分布が調整できることが確認された。これにより、光照射部の個数や設置個所、出力の制御により、所望の温度分布が形成できることが理解される。また、75Wの出力により、400℃のウエハWに+6℃の温度調整ができることが確認され、実際に光を照射することによりウエハWが加熱され、微小加熱による温度制御が有効であることが認められた。
【符号の説明】
【0057】
W ウエハ
1 成膜装置
11 真空容器
18 ヒータユニット
2 回転テーブル
22 回転機構
31 原料ガスノズル
4 照射ユニット
41〜45 光照射部
5 温度測定部
7 制御部
8 区画領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13