【実施例】
【0033】
(シリカコロイドゾル(SiO
2ゾル)の調製)
図2の調製フローチャートに示すように、珪酸エチル(Si(OC
2H
5)
4:TEOS)の加水分解・縮重合反応を経てSiO
2ゾルを調製した。
【0034】
まず、500ml三角フラスコに、所定濃度の珪酸エチル(試薬特級、キシダ化学(株))、溶媒としてイオン交換水、さらに触媒として硝酸(試薬特級、片山化学)を加えて室温で約1時間攪拌し、加水分解・縮重合反応させ、シリカポリマーを得た。
【0035】
その後、濃度調整のために水を加え、pH調整のための硝酸を加え、煮沸攪拌を10〜12時間行い、SiO
2ゾルを調製した。煮沸攪拌時には、溶液濃度を一定に保つために、15分おきにイオン交換水を加えた。表1にSiO
2ゾルの出発溶液組成を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
得られたSiO
2ゾル(TEOS Weight[%]=3.0,2.0,1.0,0.5)について、Intensity基準の粒径分布を測定した。粒径分布の測定は、DLS(Dynamic light scattering(動的光散乱法))で測定した。このDLS測定はZetasizer Nano (ZS,Malvern)を用いて行った。
【0038】
その結果を
図3に示すとともに、
図3のピークが最大となったときの粒径を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
図3、表2から、TEOS濃度が高くなると粒径も大きくなっており、TEOS濃度を調整することにより、得られるSiO
2ゾルの粒径を制御できることがわかる。
【0041】
(Fドープシリカゾル(F−SiO
2ゾル)の調製)
図4の調製フローチャートに示すように、TEOSにより形成されるネットワーク構造へFをドープし、加水分解・縮重合反応させることにより、F−SiO
2ゾルを調製した。
【0042】
まず、所定のバイアル瓶を用意し、エタノール溶媒中にシリカ源としてオルトケイ酸エチル(試薬特級、キシダ化学(株))を加え、更に、フッ素源としてフッ化アンモニウム(NH
4F)を水に溶解させたものを加えた。なお、水とケイ素のモル比(H
2O/Si)は200である。更に、触媒として硝酸(試薬特級、片山化学)を加え、室温で3時間攪拌し加水分解・縮重合させることで、F−SiO
2ゾルを得た。
【0043】
なお、F−SiO
2ゾルは、FとSiのモル比が1/9及び2/8になるようにし、それぞれについて、表3、表4に示す配合量で合成した。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
上記のSiO
2ゾルと同様に、調製したF−SiO
2ゾルのIntensity基準の粒径分布を測定した。F/Si=1/9の結果を
図5に示すとともに、
図5のピークが最大となったときの粒径を表5に示す。また、F/Si=2/8の結果を
図6に示すとともに、
図6のピークが最大となったときの粒径を表6に示す。
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
図5、
図6、表5、表6から、SiO
2ゾルと同様、F−SiO
2ゾルについても、TEOS濃度が高くなると粒径も大きくなっており、TEOS濃度を調整することにより、得られるF−SiO
2ゾルの粒径を制御できることがわかる。
【0050】
(SiO
2ゾルを用いた分離膜の作製)
図7に示すSiO
2膜形成フローチャートに従い、上記で調製したSiO
2ゾルを用い分離膜を作製した。
【0051】
(膜支持体)
膜支持体として、多孔質シリカガラス管(住友電気工業株式会社)を用いた。多孔質シリカガラス管の空隙率は60〜65%、細孔径は170〜200nm、膜径は8.5mm、膜長は100mmである。
【0052】
(中間層の形成)
まず、多孔質シリカガラス管の表面の平滑化を行った。多孔質シリカガラス管表面にシリカガラス粒子を不織布(ベンコットM−1;旭化成株式会社)で担持した。これを室温乾燥(10分)し、電気管状炉(EKR−29K,いすゞ製作所株式会社)にて、180℃予熱(10分)、550℃焼成(15分)の順に行い、多孔質シリカガラス管表面に中間層を形成した。
【0053】
(SiO
2膜の形成)
中間層を形成した膜支持体を予め高温(200℃)で加熱し、調製したSiO
2ゾルを粒径の大きいものから順に不織布(ベンコットM−1;旭化成株式会社)で塗布し(ホットコーティング法)、350℃で10分焼成を繰り返すことでシリカ膜の製膜を行った。なお、TEOS濃度が高濃度のものに関しては、溶媒で希釈してから塗布した。また、最後にコーティングするゾルは、SiO
2ゾルではなくシリカポリマーゾルとした。このようにしてSiO
2膜を作製した。このSiO
2膜をF=0と記す。
【0054】
(F−SiO
2ゾルを用いた分離膜の作製)
図8に示すF−SiO
2膜形成フローチャートに従い、上記で調製したF−SiO
2ゾルを用い分離膜を作製した。
【0055】
なお、用いるゾルを上記で調製したF−SiO
2ゾルに変更するだけで、上記のSiO
2ゾルを用いた分離膜の作製と同様にし、F/Si=1/9及び2/8のそれぞれについてF−SiO
2膜を作製した。これらのF−SiO
2膜をそれぞれF/Si=1/9、F/Si=2/8とも記す。
【0056】
(純ガス透過実験)
作製した各膜のガス透過率は、
図9に示す純ガス透過装置を用いて測定した。測定ガスはHe、Ne、H
2、CO
2、N
2、CH
4、C
2H
6、CF
4、SF
6の9種類(市販の高純度ガス)を用いた。ガスボンベから純ガスを膜一次側に50〜750℃で供給し、真空ポンプを用いて膜二次側を真空にすることで透過させた。
【0057】
膜を透過したガスはオリフィスで圧力損失をつけ、オリフィス前後の圧力差を測定し、あらかじめ作成していた検量線を用いて透過率を算出した。なお、製膜時の温度以上で熱処理をしたときは、各純ガスの透過率が定常になるまで透過率の経時変化を測定した後、透過率の温度依存性を測定した。物性値は表7に示す値を用いた。
【0058】
【表7】
【0059】
図10に、それぞれの分離膜(F=0、F/Si=1/9、F/Si=2/8)における各ガスの透過率の結果を示す。また、表8に、H
2選択性(H
2/N
2、H
2/SF
6)を示す。
【0060】
【表8】
【0061】
図10のSiO
2膜、F−SiO
2膜(F/Si=1/9、F/Si=2/8)の透過率分子径依存性、H
2選択性をみると、Fドープ量が多くなるほど、各透過率が大きくなっていることがわかる。
また、Fドープ量が多くなるほど、H
2/N
2選択性が小さくなっていることから、シリカネットワークサイズ、即ち、細孔径が大きくなっている可能性が示された。
【0062】
また、測定されたそれぞれの分離膜における各ガスの透過率から、下式の修正GT(Gas translation)モデル式を用い、細孔径構造の解析指標になるk
o,iを算出した。なお、iは特定のガスを表す。
【0063】
【数1】
【0064】
P
iは、それぞれのガスの透過率、aは膜構造パラメータ、d
pは膜の細孔径サイズ、d
iはそれぞれのガスの分子サイズ、M
iはそれぞれのガスの分子量、Rは気体定数、Tは温度、ΔE
p,iはそれぞれのガスが膜を透過するための活性化エネルギーを示す。
【0065】
そして、分子サイズを横軸にし、k
o,iの1/3乗の値を縦軸にして、それぞれの分離膜について、算出された各ガスのk
o,iをプロットし、フィッティング直線を引いた。
図11にSiO
2膜(F=O)、
図12にF−SiO
2膜(F/Si=1/9)、
図13にF−SiO
2膜(F/Si=2/8)の結果を示す。
【0066】
修正GTモデル式から算出される膜の細孔径は、フィッティング線と横軸との交点で表され、SiO
2膜(F=0)の細孔径:3.9Å<F−SiO
2膜(F/Si=1/9)の細孔径:4.6Å<F−SiO
2膜(F/Si=2/8)の細孔径:4.8Åとなった。すなわち、Fドープ量が多くなるにつれ、細孔径が大きくなっている。
【0067】
SiO
2膜(F=0)では、C
2H
6、CF
4、SF
6などの分子径の大きいガスはフィッティング線から外れている。これは、SiO
2膜(F=0)が2元的な構造、すなわち、細孔径が不均一であり、ブロードな分布であることがわかる。SiO
2膜(F=0)では、種々のSi員環数を有するネットワークから分離膜が形成されるため、細孔径が不均一であり、H
2やHeなどの微小分子が優先的に透過する細孔(S
i6員環、7員環)と分子径の大きいガスが透過する細孔が異なると考えられる。分子サイズが大きいガスは、SiO
2膜内に存在する比較的大きな細孔をKnudsen拡散により透過する割合が高くなるため、これら大きい分子においてはC
2H
6/CF
4、CF
4/SF
6透過率比も小さく分子ふるい性が小さくなっている。
【0068】
一方、
図12、13をみると、F−SiO
2膜(F/Si=1/9、F/Si=2/8)では、すべての気体がほぼフィッティング線上にあり、細孔径が均一化されて、よりシャープな分布となったことがわかる。
【0069】
このように、シリカネットワークにフッ素をドープして得られたF−SiO
2膜では、これまでのSiO
2膜にくらべ、単に細孔径が大きくなっただけではなく、細孔径が均一化されたことを立証した。
【0070】
また、CO
2/CH
4透過特性を比較した。
図14にF−SiO
2膜(F/Si=1/9)のCO
2及びCH
4透過率の温度依存性を示すとともに、
図15にF−SiO
2膜(F/Si=1/9)及びSiO
2膜のCO
2/CH
4透過率比とCO
2透過率の関係を示す。
【0071】
図14をみると、CO
2は温度の低下とともに透過率が増加する表面拡散傾向を示し、CH
4は温度の低下とともに透過率が減少する活性化拡散傾向を示している。また、
図15をみると、SiO
2膜にくらべ、F−SiO
2膜(F/Si=1/9)では高いCO
2透過率、CO
2/CH
4透過率比を示している。これらのことから、フッ素をドープしたシリカ膜では、特に低温条件にて、CO
2とCH
4の混合ガスからCO
2を分離する膜として有用であることがわかる。
【0072】
(XRD解析)
また、SiO
2膜及びF−SiO
2膜(F/Si=2/8)について、XRD解析を行った。その結果を
図16に示す。
【0073】
図16を見ると、いずれの膜も2θ=20°付近にシリカのアモルファス構造由来のピークが検出されているが、フッ素ドープ量が増加するにつれてピークがシャープになっている。これは、フッ素ドープによりシリカネットワーク構造の結晶性が高くなっていると考えられ、これにより、F−SiO
2膜ではSiの員環構造が均一になり、細孔径が均一化しているものと考えられる。また、ピーク位置がFをドープすることで低角側にわずかにシフトしていることから、ネットワークサイズがルースになっていると考えられる。