特許第6548249号(P6548249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6548249難燃性樹脂組成物、難燃性マスターバッチ、成形体およびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548249
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】難燃性樹脂組成物、難燃性マスターバッチ、成形体およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20190711BHJP
   C08G 8/28 20060101ALI20190711BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20190711BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20190711BHJP
   C08L 61/14 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   C08L67/00
   C08G8/28 B
   C08J3/22CFD
   C08K5/5313
   C08L61/14
【請求項の数】15
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-6707(P2014-6707)
(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公開番号】特開2015-134877(P2015-134877A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2017年1月6日
【審判番号】不服2018-8738(P2018-8738/J1)
【審判請求日】2018年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】高橋 芳行
(72)【発明者】
【氏名】林 弘司
(72)【発明者】
【氏名】神門 伸昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 毅彦
【合議体】
【審判長】 大熊 幸治
【審判官】 近野 光知
【審判官】 武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−294759(JP,A)
【文献】 特開2013−203856(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/102211(WO,A1)
【文献】 特開2003−165911(JP,A)
【文献】 特開2004−91679(JP,A)
【文献】 特開2005−344092(JP,A)
【文献】 社団法人高分子学会、高分子辞典第3版、株式会社朝倉書店、2005年6月30日、初版、74〜75頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂(A)とリン原子含有オリゴマー(B)とを必須成分として含有する難燃性樹脂組成物であって、
前記リン原子含有オリゴマー(B)が、下記構造式(1):
【化1】
(式中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基を表し、nは繰り返し単位で1以上であり、Xは下記構造式(x1)又は(x2):
【化2】
で表される構造部位であり、Yは水素原子、水酸基又は前記構造式(x1)若しくは(x2)で表される構造部位であり、また、該構造式(x1)又は(x2)中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、フェニル基、アラルキル基を表す。)
で表されること
前記構造式(1)においてnが2以上の成分の含有率が、GPC測定におけるピーク面積基準で5〜90%の範囲にあること、を特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、リン原子含有オリゴマー(B)を1〜300質量部の範囲で含有する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂(A)が、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、アルキレン鎖の炭素原子数が2〜4の範囲のポリアルキレンテレフタレート及びアルキレン鎖の炭素原子数が2〜4の範囲のポリアルキレンナフタレートから選択された少なくとも1種の単位を有するホモ又はコポリエステルである請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートを主成分とするコポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、及びエチレンテレフタレートを主成分とするコポリエステルから選択された少なくとも一種である請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
ポリエステル樹脂(A)およびリン原子含有オリゴマー(B)を溶融混練する請求項1〜の何れか一項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
ポリエステル樹脂(A)とリン原子含有オリゴマー(B)とを必須成分として含有する難燃性マスターバッチであって、
前記リン原子含有オリゴマー(B)が、下記構造式(1):
【化3】
(式中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基を表し、nは繰り返し単位で1以上であり、Xは下記構造式(x1)又は(x2):
【化4】
で表される構造部位であり、Yは水素原子、水酸基又は前記構造式(x1)若しくは(x2)で表される構造部位であり、また、該構造式(x1)又は(x2)中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、フェニル基、アラルキル基を表す。)
で表されること、
前記構造式(1)においてnが2以上の成分の含有率が、GPC測定におけるピーク面積基準で5〜90%の範囲にあること
ポリエステル樹脂(A)と前記リン原子含有オリゴマー(B)の合計質量に対し、前記リン原子含有オリゴマー(B)を5〜75質量%の範囲となる含有割合で含有する難燃性マスターバッチ。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂(A)が、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、アルキレン鎖の炭素原子数が2〜4の範囲のポリアルキレンテレフタレート及びアルキレン鎖の炭素原子数が2〜4の範囲のポリアルキレンナフタレートから選択された少なくと
も1種の単位を有するホモ又はコポリエステルである請求項記載の難燃性マスターバッチ。
【請求項8】
前記ポリエステル樹脂(A)が、ポリブチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートを主成分とするコポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、及びエチレンテレフタレートを主成分とするコポリエステルから選択された少なくとも一種である請求項記載の難燃性マスターバッチ。
【請求項9】
予めポリエステル樹脂(A)および請求項6〜8の何れか一項記載のリン原子含有オリゴマー(B)を溶融混練して難燃性マスターバッチを製造する工程(1)、前記工程(1)で得られた難燃性マスターバッチに、さらに、熱可塑性樹脂(E)を溶融混練する工程(2)を有する難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記工程(1)において、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、リン原子含有オリゴマー(B)を1〜300質量部の範囲で溶融混練する請求項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記工程(2)において、ポリエステル樹脂(A)および熱可塑性樹脂(E)との合計100質量部に対し、リン原子含有オリゴマー(B)が1〜300質量部の範囲となるよう溶融混練する請求項9又は10記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記工程(2)において、前記熱可塑性樹脂(E)がポリエステル樹脂である請求項9〜11の何れか一項記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜の何れか一項記載の難燃性樹脂組成物を成形して得られる成形体。
【請求項14】
請求項1〜の何れか一項記載の難燃性樹脂組成物を成形して得られる繊維。
【請求項15】
請求項1〜の何れか一項記載の難燃性樹脂組成物を成形して得られるフィルム又はシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性樹脂組成物に関し、とくにポリエステル系樹脂本来の機械特性を損なうことなく難燃性、耐熱性、耐衝撃性に優れた難燃性樹脂組成物、およびそれからなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂のうち、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂は、優れた機械的特性、電気的特性、耐候性、耐水性、耐薬品性や耐溶剤性を有するため、電気・電子部品、自動車部品など種々の用途に利用されている。一方、利用分野が拡大するにつれ、難燃特性の向上が検討されている。
【0003】
一般的なポリエステル樹脂の難燃化方法としては、臭素化合物などの難燃化効率の高いハロゲン系難燃剤や酸化アンチモンを樹脂に配合する方法が従来より採用されているものの、近年、環境負荷低減の観点から、非ハロゲン系難燃剤の開発が求められてきている。そこで、リン含有化合物や、窒素含有化合物などの非ハロゲン系難燃剤が提案されており、例えば、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下、「HCA」と略記する。)が知られている(特許文献1参照)。しかし、該HCAは、ポリエステル樹脂との相溶性が低く、ポリエステル樹脂に配合しても、ブリードアウトを引き起こし、透明性や難燃性が低いという問題があった。
【0004】
そこで、該HCAをイタコン酸と反応させた後、さらにイタコン酸由来のカルボン酸にエチレングリコールをエステル結合で付加させた線状高分子化合物をポリブチレンテレフタレートに配合する技術が知られている(特許文献2参照)。しかし、この線状高分子化合物はエステル結合を有することから耐熱性が低く、溶融混練した際に、HCA化合物が遊離し、ブリードアウトして透明性や難燃性を低下させるだけでなく、長期連続使用における機械物性、電気特性の低下を招いていた。このため、HCAを用いた共重合体からなる難燃剤は、実用化には至っていなかった。
【0005】
一方、ポリエステル樹脂に配合して難燃性を付与しつつ、耐熱性に優れる非ハロゲン系難燃剤としてリン系難燃剤のレゾルシノールビス(ジキシリルホスフェート)が実用化されている(特許文献3)。しかし、当該化合物の難燃性付与効果は十分とは言えず、UL94V−0を達成するレベルまで難燃性を向上させるためには、当該リン系難燃剤の配合比を増やすか、窒素系難燃剤など他の非ハロゲン系難燃剤を併用する必要があることから、ポリエステル樹脂の配合比の減少とともに機械強度等の基礎物性も低下する傾向にあった。このため、近年、成型品の小型化、薄肉化が進む中で、機械強度等のポリエステル樹脂の基礎物性を維持しつつ薄肉成型品、或いは成型品を成形しようとすると、薄肉部の難燃性が依然不足しているのが現状であった。また、透明性についても、当該化合物の配合比の増加や窒素系難燃剤など他の非ハロゲン系難燃剤との併用は、ポリエステル樹脂本来の特徴である透明性を低下させる原因となり、フィルムなど透明性を要する用途では使用が困難であり、使用用途に制限があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭47−16436号公報
【特許文献2】特開昭53−128195号公報
【特許文献3】特開平9−143350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、非ハロゲン系難燃剤を用い、機械強度や透明性等のポリエステル樹脂本来の物性を維持しつつ、かつ前記非ハロゲン系難燃剤のブリードアウトの抑制、難燃性および耐熱性に優れたポリエステル樹脂組成物およびその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは種々の検討を行った結果、HCAまたはその誘導体とo−ヒドロキシベンズアルデヒド化合物を反応させて得られるリン原子含有フェノール系オリゴマーをポリエステル樹脂に配合して得られるポリエステル樹脂組成物およびその成形品が、ポリエステル樹脂本来の物性を維持しつつ、かつ前記オリゴマーのブリードアウトを抑制し、優れた難燃性および耐熱性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明はポリエステル樹脂(A)およびリン原子含有オリゴマー(B)を溶融混練する難燃性樹脂組成物の製造方法であって、前記リン原子含有オリゴマー(B)が、下記構造式(1)
【0010】
【化1】
(式中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基を表し、nは繰り返し単位で1以上であり、Xは下記構造式(x1)又は(x2)
【0011】
【化2】
で表される構造部位であり、Yは水素原子、水酸基又は前記構造式(x1)若しくは(x2)で表される構造部位であり、また、該構造式(x1)又は(x2)中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、フェニル基、アラルキル基を表す。)で表されることを特徴とする難燃性樹脂組成物の製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、ポリエステル樹脂(A)とリン原子含有オリゴマー(B)とを必須成分として含有する難燃性樹脂組成物であって、
前記リン原子含有オリゴマー(B)が、下記構造式(1)
【0013】
【化3】
(式中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基を表し、nは繰り返し単位で1以上であり、Xは下記構造式(x1)又は(x2)
【0014】
【化4】
で表される構造部位であり、Yは水素原子、水酸基又は前記構造式(x1)若しくは(x2)で表される構造部位であり、また、該構造式(x1)又は(x2)中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、フェニル基、アラルキル基を表す。)
【0015】
で表されることを特徴とする難燃性樹脂組成物に関する。
【0016】
さらに本発明は予めポリエステル樹脂(A)およびリン原子含有オリゴマー(B)を溶融混練して難燃性マスターバッチを製造する工程(1)、前記工程(1)で得られた難燃性マスターバッチに、さらに、熱可塑性樹脂(C)を溶融混練する工程(2)を有する難燃性樹脂組成物の製造方法であって、
前記リン原子含有オリゴマー(B)が、
下記構造式(1)
【0017】
【化5】
(式中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基を表し、nは繰り返し単位で1以上であり、Xは下記構造式(x1)又は(x2)
【0018】
【化6】
で表される構造部位であり、Yは水素原子、水酸基又は前記構造式(x1)若しくは(x2)で表される構造部位であり、また、該構造式(x1)又は(x2)中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、フェニル基、アラルキル基を表す。)で表されることを特徴とする難燃性樹脂組成物の製造方法に関する。
【0019】
さらに本発明は、
ポリエステル樹脂(A)とリン原子含有オリゴマー(B)とを必須成分として含有する難燃性マスターバッチであって、
前記リン原子含有オリゴマー(B)が、下記構造式(1)
【0020】
【化7】
(式中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基を表し、nは繰り返し単位で1以上であり、Xは下記構造式(x1)又は(x2)
【0021】
【化8】
で表される構造部位であり、Yは水素原子、水酸基又は前記構造式(x1)若しくは(x2)で表される構造部位であり、また、該構造式(x1)又は(x2)中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、フェニル基、アラルキル基を表す。)で表されること、
ポリエステル樹脂(A)と前記リン原子含有オリゴマー(B)の合計質量に対し、前記リン原子含有オリゴマー(B)を5〜75質量%の範囲となる含有割合で含有する難燃性マスターバッチに関する。
【0022】
さらに本発明は前記難燃性樹脂組成物を成形して得られる成形体、繊維、フィルム又はシートに関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、非ハロゲン系難燃剤を用い、機械強度や透明性等のポリエステル樹脂本来の物性を維持しつつ、かつ前記非ハロゲン系難燃剤のブリードアウトの抑制、難燃性および耐熱性に優れたポリエステル樹脂組成物およびその成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
・ポリエステル樹脂(A)
本発明に使用するポリエステル樹脂(A)(以下、単に「樹脂(A)」と言うことがある)は、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合、オキシカルボン酸又はラクトンの重縮合、またはこれらの成分の重縮合などにより得られるホモポリエステル又はコポリエステルである。好ましいポリエステル樹脂としては、通常、飽和ポリエステル系樹脂、特に芳香族飽和ポリエステル系樹脂が挙げられる。
【0025】
前記ジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸などの炭素原子数4〜40の範囲、好ましくは炭素原子数4〜14の範囲の脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸などの炭素原子数8〜12の範囲の脂環式ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−オキシジ安息香酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸などの炭素原子数8〜16の範囲の芳香族ジカルボン酸、またはこれらの誘導体、例えば、低級アルキルエステル、アリールエステル、酸無水物などのエステル形成可能な誘導体などが挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。さらに、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸などを併用してもよい。好ましいジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0026】
前記ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールなどの炭素原子数2〜12の範囲、好ましくは炭素原子数2〜10の範囲の脂肪族ジオールや、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの、アルキレン基の炭素原子数が2〜4の範囲であり、かつ複数のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコールや、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなどの脂環族ジオールなど、アルコール性水酸基を有する化合物が挙げられる。これらのジオール成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。好ましいジオール成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの直鎖状アルキレングリコールや、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの繰り返し数が2〜4の範囲のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコールや、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0027】
また、前記ジオール成分に加え、さらにハイドロキノン、レゾルシノール、ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、キシリレングリコールなどの芳香族ジオールを、前記したアルコール性水酸基を有する化合物と併用してもよい。さらに、本発明の効果を損ねない範囲で必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオールを併用してもよい。
【0028】
オキシカルボン酸としては、例えば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、オキシカプロン酸などのオキシカルボン酸又はこれらの誘導体などが挙げられる。
【0029】
また、ラクトンとしては、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトンとすると、カプロラクトン(例えば、ε−カプロラクトンなど)などの炭素原子数3〜12の範囲のラクトンなどが挙げられる。
【0030】
このような原料をもとにして得られるポリエステル樹脂としては、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのアルキレン鎖の炭素原子数が2〜4の範囲のポリアルキレンテレフタレートや、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのアルキレン鎖の炭素原子数が2〜4の範囲のアルキレンポリアルキレンナフタレートなどが挙げられる。また、アルキレンテレフタレート、アルキレンナフタレートなどのアルキレン鎖の炭素原子数が2〜4の範囲のアルキレンアリレート構造を主成分、すなわちポリマ全体のうち、50質量%以上かつ100質量%未満の範囲、好ましくは75質量%以上かつ100質量%未満の範囲で有するコポリエステルなども挙げられる。その際、コポリエステルにおいてアルキレンアリレート構造以外の構造としては、共重合可能な単量体、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのアルキレン鎖の炭素原子数が2〜6の範囲のアルキレングリコールや、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの繰り返し数が2〜4の範囲のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコールや、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのアルキル鎖の炭素原子数が6〜12の範囲の脂肪族ジカルボン酸や、フタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸や、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸などの芳香族オキシカルボン酸などに由来する構造が挙げられる。なお、前記ポリエステル樹脂は、溶融成形性などを損なわない限り、直鎖状のみならず分岐鎖構造を有していてもよく、架橋されていてもよい。また、液晶ポリエステルであってもよい。なお、これらのポリエステル樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0031】
上記のポリエステル樹脂の数平均分子量は、本発明の効果を損ねなければ特に制限されるものではなく、樹脂の種類や用途に応じて、例えば、5×10〜200×10の範囲、好ましくは1×10〜150×10の範囲、さらに好ましくは1×10〜100×10の範囲から適宜選択すればよい。
【0032】
・リン原子含有オリゴマー(B)
次に、本発明で用いるリン原子含有オリゴマー(B)は、前記した通り、下記構造式(1)
【0033】
【化9】
(式中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基を表し、nは繰り返し単位で1以上であり、Xは下記構造式(x1)又は(x2)
【0034】
【化10】
で表される構造部位であり、Yは水素原子、水酸基又は前記構造式(x1)若しくは(x2)で表される構造部位であり、また、該構造式(x1)又は(x2)中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、フェニル基、アラルキル基を表す。)で表され、かつ、前記構造式(1)においてnが2以上の成分の含有率が、GPC測定におけるピーク面積基準で5〜90%の範囲にあることを特徴とするものである。本発明では、斯かるリン原子含有オリゴマー(B)を難燃剤成分として用いることにより、溶融混練時のブリードを抑えかつ金型からの離型性を良好に維持しながらも、薄肉成型品、成型品の薄肉部、薄膜部における難燃性能を飛躍的に高めることができるものである。
【0035】
前記リン原子含有オリゴマー(B)は、このように前記構造式(1)中に下記構造式(2)
【0036】
【化11】
(式中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基を表し、nは繰り返し単位で1以上であり、Xは下記構造式(x1)又は(x2)
【0037】
【化12】
(前記構造式(x1)又は(x2)中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、フェニル基、アラルキル基を表す。)で表される構造部位である。)で表される構造部位を繰り返し単位として有することから、成型品における難燃性、特に薄肉部における難燃性が飛躍的に向上する。
【0038】
ここで、前記構造式(2)中で表される構造部位は、具体的には、下記構造式(2−1)〜(2−8)で表されるものが挙げられる。
【0039】
【化13】
【0040】
本発明では、前記構造式(1)中のXは構造式(x1)及び構造式(x2)から選択されるものであるが、特に難燃性の点から構造式(x1)であることが好まく、よって、前記構造式(2)で表される構造部位のなかでも、前記構造式(x−1)に対応する構造式(2−1)、(2−2)、(2−3)、及び(2−4)が好ましい。
【0041】
また、前記構造式(1)において、Yは、水素原子、水酸基又は前記構造式(x1)若しくは(x2)で表される構造部位であるが、該リン原子含有オリゴマー中にこれらが共存していてもよい。本発明では、Yは、耐熱性や難燃性の点から水素原子又は前記構造式(x1)若しくは(x2)で表される構造部位であることが好ましく、特に、難燃性の点から構造式(x1)であることが好ましい。
【0042】
また、前記リン原子含有オリゴマーは、前記した通り、上記した構造式(1)において、nが1以上の範囲であり、好ましくは1〜10の範囲である。さらに、nが2以上の成分の含有率が、GPC測定におけるピーク面積基準で5〜90%の範囲にあると、樹脂(A)との相溶性に優れ、また、薄肉部の難燃性が顕著に優れたものとなるためより好ましい。
【0043】
ここで、前記構造式(1)におけるnが2以上の成分の含有率とは、下記の条件で測定されたGPCのチャートにおいて、36.0分未満のピーク面積の割合をいう。
【0044】
<GPC測定条件>
GPC:測定条件は以下の通り。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
【0045】
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
【0046】
検出器: RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
【0047】
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
【0048】
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0049】
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
【0050】
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0051】
NMR:日本電子製JNM―ECA500型核磁気共鳴装置
磁場強度:500MHz
パルス幅:3.25μsec
積算回数:8000回
溶媒:DMSO−d6
試料濃度:30wt%
【0052】
MS :島津バイオテック製 AXIMA―TOF2
測定モード:linear
積算回数:50回
試料組成:sample/DHBA/NaTFA/THF=9.4mg/104.7mg/6.3mg/1ml
【0053】
本発明では、nが2以上の成分の含有率が、GPC測定におけるピーク面積基準で5%以上の場合、樹脂(A)との相溶性が良好、かつ、溶融混練時のブリードの少ないものとなり、他方、90%以下の場合には溶融混練時の流動性が良好なものとなり、且つ衝撃強度にも優れるものとなる。ここで、その他の成分はnが1の成分であり、よって、本発明のリン原子含有オリゴマーは、nが1の成分がGPC測定におけるピーク面積基準で95〜10%の割合となる。本発明では樹脂(A)との相溶性や加工性を、高いレベルに保持しつつ、更に硬化物において優れた難燃性能を向上させることができる点からnが2以上の成分の含有率が、40〜75%となる範囲であって、nが1の成分の含有率が60〜25%となる範囲であることが好ましい。
【0054】
更に、具体的には、nが1の成分の含有率が95〜10%、nが2の成分の含有率が3〜50%、かつ、nが3以上の成分の含有率が1〜45%であることが溶剤溶解性の点から好ましく、特に、nが1の成分の含有率が60〜25%、nが2の成分の含有率が10〜45%、かつ、nが3以上の成分の含有率が10〜40%であることが、加工性と難燃性とのバランスに優れたものとなる点から好ましい。
【0055】
また、前記した通り、前記構造式(1)におけるYは構造式(x1)であることが好ましく、よって、前記構造式(1)において、Yが構造式(x1)であって、かつ、nが2以上の成分の含有率が40〜75%、nが1の成分の含有率が60〜25%であるリン原子含有オリゴマーが難燃性と耐熱性の点から好ましく、更に、前記構造式(1)において、Yが構造式(x1)であって、かつ、nが1の成分の含有率が95〜10%、nが2の成分の含有率が3〜50%、nが3以上の成分の含有率が1〜45%であることが、ブリード防止と難燃性向上、更に樹脂(A)との相溶性に優れる点から好ましく、特に、Yは構造式(x1)であって、かつ、nが1の成分の含有率が60〜25%、nが2の成分の含有率が10〜45%、かつ、nが3以上の成分の含有率が10〜40%であるリン原子含有オリゴマー(B)であることがこれらの性能バランスに優れる点から特に好ましい。
【0056】
また、上記したリン原子含有オリゴマー(B)は、該オリゴマー中のリン原子含有率が9〜12質量%の範囲であることが難燃性の点から好ましい。かかるリン原子含有率は、「JIS規格K0102 46」に準拠して測定した値である。
【0057】
以上詳述したリン原子含有オリゴマー(B)は、以下の製造方法によって製造することができる。
【0058】
即ち、前記リン原子含有オリゴマー(B)は、下記構造式(b1−1)又は(b1−2)
【0059】
【化14】

(式中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、フェニル基、アラルキル基を表す。)で表される化合物(b1)と、下記構造式(b2)
【0060】
【化15】
(式中、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基を表す。)で表される化合物(b2)とを、モル比[化合物(b1)/化合物(b2)]が0.01/1.0〜0.99/1.0となる割合で配合し、酸触媒の存在下、80〜180℃で反応を行い、次いで、前記化合物(b2)の仕込み量に対して、モル基準で合計1.01〜3.0倍量となる前記化合物(b1)を加え、120〜200℃にて反応を行う方法により製造できる。
【0061】
本発明では、かかる方法によりリン原子含有オリゴマー(B)を製造する場合、反応中間体の析出を良好に抑制でき、高分子量化し易くなる。
【0062】
ここで、前記構造式(b1−1)又は(b1−2)中の、R、R、R、Rを構成する炭素原子数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基が挙げられるが、本発明で用いる化合物(b1)は、R、R、R、Rの全てが水素原子であるものが難燃性の点から好ましい。更に化合物(b1)は、硬化物の難燃性に優れる点から構造式(b1−1)を有するものが好ましい。他方、化合物(b2)における前記構造式(b2)中のRは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、メトキシ基等が挙げられるが、化合物(b1)との反応性及び硬化物の難燃性に優れる点からRは水素原子であることが好ましい。
【0063】
前記方法において使用し得る触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。その使用量は硬化物の電気絶縁の低下を防ぐ観点から仕込み原料の総重量に対して、0.1〜5.0質量%の範囲であることが好ましい。
【0064】
該反応は前記化合物(b2)が液状であるため、これを有機溶媒として用い反応を行うことができるが、作業性等の向上という観点から他の有機溶媒を使用してもよい。ここで、用いる有機溶媒としては、アルコール系有機溶媒、炭化水素系有機溶媒などの非ケトン系有機溶媒が挙げられ、具体的には、前記アルコール系有機溶媒としてはプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられ、前記炭化水素系有機溶媒としてはトルエン、キシレン等が挙げられる。
【0065】
反応終了後は、減圧下で乾燥することによって目的とする前記リン原子含有オリゴマー(B)を得ることができる。
【0066】
本発明で使用するリン原子含有オリゴマー(B)の難燃性樹脂組成物中の含有割合は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されるものではないが、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、1〜300質量部の範囲であることが好ましく、さらに2〜100質量部の範囲であることがより好ましい。当該範囲で用いると、機械強度や透明性等のポリエステル樹脂本来の物性を維持しつつ、かつ前記難燃剤の耐ブリードアウト性、難燃性および耐熱性に優れる傾向となるため好ましい。
【0067】
・難燃助剤(C)
本発明の難燃性樹脂組成物は、難燃性や熱安定性を向上させるため、必要に応じて種々の難燃助剤(例えば、他の難燃剤、酸化防止剤、安定剤、ドリッピング防止剤など)を含んでいてもよい。
【0068】
(C1 他の難燃剤)
なお、本発明の難燃性樹脂組成物は、さらに難燃性を付与するため、他の難燃剤、例えば、リン含有化合物、窒素含有難燃剤、硫黄含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤、アルコール系難燃剤、無機系難燃剤(金属酸化物、金属水酸化物など)(以下、他の難燃剤ということがある)などを含んでいてもよい。
【0069】
(C1−1)リン含有化合物
リン含有化合物リン含有化合物としては、有機リン化合物(モノマー型、ダイマー型及びトリマー型のオリゴマー型有機リン化合物、ポリマー型有機リン化合物など)、無機リン化合物などが挙げられる。
【0070】
(C1−1−1)有機リン化合物
前記有機リン化合物のうち、オリゴマー型有機リン化合物には、リン酸エステル、リン酸エステルアミド、ホスホニトリル化合物、有機ホスホン酸化合物(エステル、金属塩など)、有機ホスフィン酸化合物(エステル、金属塩など)、ポリマー型有機リン化合物、ホスフィンオキシドなどが含まれる。
【0071】
(C1−1−1−1)リン酸エステル
リン酸エステルとしては、脂肪族リン酸エステル[リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリイソブチル、リン酸ペンタエリスリトール(例えば、GreatLakes Chemical社のNH−1197、特開2001−106889号公報に記載のビシクロリン酸エステルなど)などのリン酸トリC1-10アルキルエステル;前記リン酸トリエステルに対応するリン酸ジC1-10アルキルエステル及びリン酸モノC1-10アルキルエステルなど]、芳香族リン酸エステル[リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシリル、リン酸ジフェニルクレジル、リン酸トリ(イソプロピルフェニル)、リン酸ジフェニルエチルクレジルなどのリン酸トリC6-20アリールエステルなど]、脂肪族−芳香族リン酸エステル[リン酸メチルジフェニル、リン酸フェニルジエチル、スピロ環状芳香族リン酸エステル(ジフェニルペンタエリスリトールジホスフェート、ジクレジルペンタエリスリトールジホスフェート、ジキシリルペンタエリスリトールジホスフェート等)など]などが挙げられる。
【0072】
(C1−1−1−2)リン酸エステルアミド
リン酸エステルアミドとしては、リン酸エステル及びリン酸アミドの結合様式を含み、特開2002−226547号公報、特開2001−354684号公報、特開2001−139823号公報、特開2000−327834号公報、特開2000−154277号公報、特開平10−175985号公報、特開平8−59888号公報、特開昭63−235363号公報、特開昭54−19919号公報に記載のリン酸エステルアミドなどが使用できる。
【0073】
リン酸エステルアミドは、商品名「リン酸エステルアミド系難燃剤SPシリーズ(例えば、SP−601、SP−670、SP−703など)」(四国化成工業(株)製)として入手できる。
【0074】
(C1−1−1−3)ホスホニトリル化合物
ホスホニトリル化合物としては、直鎖状及び環状のフェノキシホスファゼンなどが使用できる。
【0075】
(C1−1−1−4)有機ホスホン酸化合物
有機ホスホン酸(亜リン酸)化合物としては、例えば、芳香族亜リン酸エステル(アリールがフェニル、クレジル、キシリルなどである亜リン酸トリC6-20アリールエステルなど)、脂肪族亜リン酸エステル(アルキルが前記アルキルなどである亜リン酸トリC1-10アルキルエステル;前記亜リン酸トリアルキルエステルに対応する亜リン酸ジ又はモノC1-10アルキルエステルなど)、有機亜リン酸エステル[例えば、アルキルが前記例示のアルキルであるC1-6アルキルホスホン酸ジC1-6アルキル(ペンタエリスリトールビス(メチルホスホネート)などのスピロ環状アルキルホスホン酸エステルなど)、アルキルが前記例示のアルキルであり、アリールがフェニル、クレジル、キシリルなどであるC1-6アルキルホスホン酸ジC6-10アリール及びC1-6アルキルホスホン酸C1-6アルキルC6-10アリールなどのアルキルホスホン酸ジエステル;前記アルキルホスホン酸ジエステルに対応するC6-10アリール−ホスホン酸ジエステル(ペンタエリスリトールジフェニルホスホネートなどのスピロ環状C6-10アリールホスホン酸エステルなど);C6-10アリールホスホン酸モノエステル(例えば、10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドなど);ホスホノカルボン酸エステル(メトキシカルボニルメチルホスホン酸ジメチルなどの前記アルキルホスホン酸ジエステルに対応するC1-4アルコキシカルボニルオキシC1-4アルキルホスホン酸ジエステル)などのホスホノカルボン酸トリエステル]などの各種ホスホン酸エステルが含まれる。また、アルキル又はアリール基で置換されていてもよい亜リン酸、亜リン酸モノエステル、又はホスホノカルボン酸の金属塩(Ca、Mg、Zn、Ba、Al塩など)なども含まれる。
【0076】
(C1−1−1−5)有機ホスフィン酸化合物
有機ホスフィン酸化合物には、アルキル基(C1-4アルキル基など)又はアリール基(C6-10アリール基など)が置換(一置換又は二置換)していてもよいホスフィン酸エステル(ホスフィン酸メチルなどのホスフィン酸C1-6アルキル、ホスフィン酸フェニルなどのホスフィン酸C6-10アリール、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−C1-30アルキル又はC6-20アリール置換−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドなどの環状ホスフィン酸エステルなど)などが含まれる。また、アルキル基又はアリール基が置換していてもよいホスフィン酸(例えば、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸など)の金属塩(Ca、Mg、Zn、Ba、Al塩など)、ホスフィニコカルボン酸エステル(例えば、3−メチルホスフィニコプロピオン酸エステル、3−フェニルホスフィニコプロピオン酸エステルなど)、及びその単独重合体や共重合体なども含まれる。
【0077】
(C1−1−1−6)ポリマー型有機リン化合物
ポリマー型有機リン化合物としては、ポリマー型リン酸エステル(B)以外のモノマー型有機リン化合物の縮合物、例えば、ポリホスフィニコカルボン酸エステル、ポリホスホン酸アミドも含まれる。
【0078】
(C1−1−1−7)ホスフィンオキシド
ホスフィンオキシドとしては、トリフェニルホスフィンオキシド、トリクレジルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0079】
(C1−1−2)無機リン化合物
前記無機リン化合物には、例えば、赤リン、(ポリ)リン酸塩などが含まれる。
【0080】
(C1−1−2−1)赤リン
赤リンは、難燃効果が高く、少量であっても樹脂に難燃性を付与できる。また、少量で効果が得られるため、樹脂の特性(例えば、機械的特性や電気的特性)を損なうことなく難燃化できる。赤リンとしては、通常、安定化処理を施した赤リン(安定化赤リン)が好ましく用いられる。特に、赤リンの粉砕を行わず、赤リン表面に水や酸素との反応性が高い破砕面を形成させずに微粒子化する方法で得られた赤リン、さらには、赤リンの表面が、樹脂(例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂)、金属、金属化合物(例えば、金属水酸化物、金属酸化物等)等により単独で又は2種以上組み合わせて被覆された赤リンなどが使用できる。
【0081】
赤リンとしては、通常、安定化赤リンを粉粒状で使用できる。安定化赤リンの粒子径としては、例えば、0.01〜100μm、好ましくは0.1〜70μm、さらに好ましくは0.1〜50μm程度である。
【0082】
(1−2−2)(ポリ)リン酸の無機塩
(ポリ)リン酸塩としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸等の非縮合又は縮合リン酸の無機塩(アンモニウム、Ca、Mg、Zn、Ba、Al塩)などが挙げられる。
【0083】
(C1−2)窒素含有難燃剤
窒素含有難燃剤窒素含有難燃剤としては、トリアジン類とシアヌール酸又はその誘導体との塩、例えば、メラミンシアヌレートなどのシアヌール酸のメラミン塩;メラミン塩に対応するメレム塩、メラム塩、メロン塩、グアナミン塩(例えば、グアナミンシアヌレート、アセトグアナミンシアヌレート、ベンゾグアナミンシアヌレートなど)などが含まれる。これらの塩は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0084】
(C1−3)硫黄含有難燃剤
硫黄含有難燃剤硫黄含有難燃剤としては、有機スルホン酸(アルカンスルホン酸、パーフルオロスルホン酸、アリールスルホン酸、スルホン化ポリスチレンなど)、スルファミン酸、有機スルファミン酸、有機スルホン酸アミドなどの塩(アンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩など)などが挙げられる。
【0085】
(C1−4)ケイ素含有難燃剤
ケイ素含有難燃剤には、(ポリ)オルガノシロキサンが含まれる。(ポリ)オルガノシロキサンとしては、ジアルキルシロキサン(例えば、ジメチルシロキサンなど)、アルキルアリールシロキサン(フェニルメチルシロキサンなど)、ジアリールシロキサン、モノオルガノシロキサンなどの単独重合体(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンなど)、又は共重合体などが含まれる。また、(ポリ)オルガノシロキサンとしては、分岐オルガノシロキサン[東芝シリコーン(株)の商品名「XC99−B5664」、信越化学工業(株)の商品名「X−40−9243」、「X−40−9244」、「X−40−9805」、特開平10−139964号公報記載の化合物など]、分子末端や主鎖に、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エーテル基などの置換基を有する変性(ポリ)オルガノシロキサン(例えば、変性シリコーンなど)なども使用できる。
【0086】
(C1−5)アルコール系難燃剤
アルコール系難燃剤としては、多価アルコール(ペンタエリスリトールなど)、オリゴマーの多価アルコール(ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなど)、エステル化された多価アルコール、置換されたアルコール、セルロース類(セルロース、ヘミセルロース、リグノセルロース、ペクトセルロース、アジポセルロースなど)、糖類(単糖類、多糖類など)などが挙げられる。
【0087】
(C1−6)無機系難燃剤
無機系難燃剤のうち、金属酸化物としては、例えば、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化マンガン、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどが挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化スズ、水酸化ジルコニウムが挙げられる。金属硫化物としては、例えば、硫化亜鉛、硫化モリブデン、硫化タングステンなどが挙げられる。また、無機系難燃剤には、膨張性黒鉛なども含まれる。
【0088】
これら他の難燃剤は、一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。他の難燃剤の含有量は、本発明の効果を損ねない範囲であれば特に制限されないが、用いる場合は、例えば、樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜50質量部の範囲が好ましく、さらに0.05〜30質量部の範囲がより好ましく、さらに0.1〜20質量部の範囲が最も好ましい。
【0089】
(C2 酸化防止剤又は安定剤)
また、本発明の難燃性樹脂組成物は、長期間安定に耐熱性を維持するために酸化防止剤又は安定剤を含んでいてもよい。酸化防止剤又は安定剤には、例えば、フェノール系(ヒンダードフェノール類など)、アミン系(ヒンダードアミン類など)、リン系、イオウ系、ヒドロキノン系、キノリン系酸化防止剤(又は安定剤)、無機系安定剤、活性水素原子に対して反応性の官能基を有する化合物(反応性安定剤)などが含まれる。
【0090】
(C2−2)フェノール系酸化防止剤
フェノール系酸化防止剤には、ヒンダードフェノール類(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)、例えば、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC2-10アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのジ又はトリオキシC2-4アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、グリセリントリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC3-8アルキレントリオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC4-8アルキレンテトラオールテトラキス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが好ましい。
【0091】
(C2−3)アミン系酸化防止剤
アミン系酸化防止剤には、ヒンダードアミン類、例えば、トリ又はテトラC1-3アルキルピペリジン又はその誘導体(4−位にメトキシ、ベンゾイルオキシ、フェノキシなどが置換していてもよい2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど)、ビス(トリ、テトラ又はペンタC1-3アルキルピペリジン)C2-20アルキレンジカルボン酸エステル[例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オギザレート、オギザレートに対応するマロネート、アジペート、セバケート、テレフタレートなど;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート]、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタン、フェニルナフチルアミン、N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−シクロヘキシル−1,4−フェニレンジアミンなどが含まれる。
【0092】
(C2−4)リン系(有機リン系)安定剤又は酸化防止剤
リン系(有機リン系)安定剤又は酸化防止剤には、例えば、トリイソデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、トリス(分岐C3-6アルキルフェニル)ホスファイト[例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ホスファイトなど]、(分岐C3-6アルキルフェニル)フェニルホスファイト[例えば、ビス(2−t−ブチルフェニル)フェニルホスファイト、2−t−ブチルフェニルジフェニルホスファイトなど]、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、ビス(C1-9アルキルアリール)ペンタエリスリトールジホスファイト[例えば、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなど]、トリフェニルホスフェート系安定剤(例えば、4−フェノキシ−9−α−(4−ヒドロキシフェニル)−p−クメニルオキシ−3,5,8,10−テトラオキサ−4,9−ジホスファピロ[5.5]ウンデカン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェートなど)、ジホスフォナイト系安定剤(例えば、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル)−4,4’−ビフェニレンジホスフォナイトなど)などが含まれる。リン系安定剤は、通常、分岐C3-6アルキルフェニル基(特に、t−ブチルフェニル基)を有している。
【0093】
(C2−5)ヒドロキノン系酸化防止剤
ヒドロキノン系酸化防止剤には、例えば、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノンなどが含まれ、キノリン系酸化防止剤には、例えば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが含まれ、イオウ系酸化防止剤には、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどが含まれる。
【0094】
(C2−6)無機系安定剤(無機金属又は鉱物系安定剤)
無機系安定剤(無機金属又は鉱物系安定剤)には、ハイドロタルサイト、ゼオライト及びアルカリ土類金属化合物などが含まれる。
【0095】
(C2−6−1)ハイドロタルサイト
前記ハイドロタルサイトとしては、特開昭60−1241号公報及び特開平9−59475号公報などに記載されているハイドロタルサイト類、例えば、下記式[M2+1-x3+x(OH)2x+[An-x/n・mH2O]x-(式中、M2+はMg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+などの二価金属イオンを示し、M3+はAl3+、Fe3+、Cr3+などの三価金属イオンを示す。An-はCO32-、OH-、HPO42-、SO42-などのn価(特に1価又は2価)のアニオンを示す。xは、0<x<0.5であり、mは、0≦m<1である)で表されるハイドロタルサイト化合物などが使用できる。なお、ハイドロタルサイトは、「DHT−4A」、「DHT−4A−2」、「アルカマイザー」などとして協和化学工業(株)から入手可能である。
【0096】
(C2−6−2)ゼオライト
前記ゼオライトとしては、特に制限されないが、例えば、特開平7−62142号公報に記載されているゼオライト[最小単位セルがアルカリ及び/又はアルカリ土類金属の結晶性アルミノケイ酸塩であるゼオライト(A型、X型、Y型、L型及びZSM型ゼオライト、モルデン沸石型ゼオライト;チャバザイト、モルデン沸石、ホージャサイトなどの天然ゼオライトなど)など]などが使用できる。なお、A型ゼオライトは、「ゼオラムシリーズ(A−3、A−4、A−5)」、「ゼオスターシリーズ(KA100P、NA−100P、CA−100P)」などとして、また、X型ゼオライトは、「ゼオラムシリーズ(F−9)」、「ゼオスターシリーズ(NX−100P)」などとして、Y型ゼオライトは、「HSZシリーズ(320NAA)」などとして東ソー(株)、日本化学工業(株)から入手可能である。
【0097】
(C2−6−3)アルカリ土類金属化合物
前記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、酸化物(酸化マグネシウムなど)、水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、炭酸塩[炭酸マグネシウム、(軟質/コロイド/重質)炭酸カルシウムなど]、有機カルボン酸塩(酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなど)などが使用できる。
【0098】
これらの無機系安定剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0099】
(C2−7)反応性安定剤
反応性安定剤には、活性水素原子に対して反応性の官能基を有する化合物が含まれる。活性水素原子に対して反応性の官能基を有する化合物としては、環状エーテル基、オキセタン基、酸無水物基、イソシアネート基、オキサゾリン基(環)、オキサジン基(環)、カルボジイミド基等から選択された少なくとも一種の官能基を有する化合物が例示できる。
【0100】
(C2−7−1) 環状エーテル基を有する化合物
環状エーテル基を有する化合物には、エポキシ基やオキセタン基を有する化合物などが含まれる。エポキシ基を有する化合物としては、例えば、ビニルシクロヘキセンジオキシドなどの脂環式化合物、バーサティック酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル化合物、グリシジルエーテル化合物(ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Aジグリシジルエーテルなど)、グリシジルアミン化合物、エポキシ基含有ビニル共重合体、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化ジエン系モノマー−スチレン共重合体、トリグリシジルイソシアヌレート、エポキシ変性(ポリ)オルガノシロキサンなどが挙げられる。
【0101】
(C2−7−2) オキセタン基を有する化合物
オキセタン基を有する化合物としては、例えば、イソフタル酸ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエステルやテレフタル酸ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエステルなどのオキセタニルエステル化合物、オキセタニルエーテル化合物{例えば、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテルや3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンなどのアルキルオキセタニル化合物、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタンなどのアリールオキセタニル化合物、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼンなどのアラルキルオキセタニルエーテル化合物、ビスフェノール−Aジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテルなどのビスフェノール型オキセタン樹脂、モノ乃至ポリ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル化フェノールノボラックやモノ乃至ポリ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル化クレゾールノボラックなどのノボラック型オキセタン樹脂など}、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチルオキセタンなどのオキセタン変性(ポリ)オルガノシロキサン、及び前記オキセタニル単位を有する誘導体{例えば、[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル誘導体}に対応するアルキルオキセタニルメチル誘導体{例えば、[1−メチル(3−オキセタニル)]メチル誘導体}などが挙げられる。
【0102】
(C2−7−3)酸無水物基を有する化合物
酸無水物基を有する化合物としては、例えば、無水マレイン酸基を有するオレフィン系樹脂(例えば、エチレン−無水マレイン酸共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等)などが挙げられる。
【0103】
(C2−7−4)イソシアネート基を有する化合物
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、これらのイソシアネートの変性体(例えば、イソホロンジイソシアネートの三量体など)などが挙げられる。
【0104】
(C2−7−5)オキサゾリン基を有する化合物
オキサゾリン基を有する化合物としては、例えば、2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)や2,2’−(1,4−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)などのビスオキサゾリン化合物や、オキサゾリン基を有するビニル系樹脂(例えば、ビニルオキサゾリン変性スチレン系樹脂等)などが挙げられる。
【0105】
(C2−7−6)オキサジン基を有する化合物
オキサジン基を有する化合物としては、例えば、2,2’−ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)などのビスオキサジン化合物などが挙げられる。
【0106】
(C2−7−7)カルボジイミド基を有する化合物
カルボジイミド基を有する化合物としては、例えば、ポリ(フェニルカルボジイミド)、ポリ(ナフチルカルボジイミド)などのポリアリールカルボジイミド、ポリ(2−メチルジフェニルカルボジイミド)、ポリ(2,6−ジエチルジフェニルカルボジイミド)、ポリ(2,6−ジイソプロピルジフェニルカルボジイミド)、ポリ(2,4,6−トリイソプロピルジフェニルカルボジイミド)、ポリ(2,4,6−トリt−ブチルジフェニルカルボジイミド)などのポリアルキルアリールカルボジイミド、ポリ[4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルフェニル)カルボジイミド]、ポリ[4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルフェニル)カルボジイミド]、ポリ[4,4’−メチレンビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド]、ポリ[4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルシクロヘキシルフェニル)カルボジイミド]などのポリ[アルキレンビス(アルキル又はシクロアルキルアリール)カルボジイミド]などが挙げられる。
【0107】
これらの反応性安定剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0108】
以上あげた、これらの酸化防止剤及び/又は安定剤は単独で又は二種以上使用できる。酸化防止剤及び/又は安定剤の含有量は、本発明の効果を損ねない範囲であれば特に制限されないが、用いる場合は、例えば、樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜15質量部の範囲が好ましく、さらに0.05〜10質量部の範囲がより好ましく、さらに0.1〜10質量部の範囲が最も好ましい。
【0109】
これらの酸化防止剤及び安定剤のうち、耐加水分解性の点から、無機系安定剤と反応性安定剤とを組み合わせるのが好ましく、両者の割合(質量比)は、無機系安定剤/反応性安定剤=95/5〜10/90、好ましくは90/10〜30/70、さらに好ましくは80/20〜50/50である。
【0110】
樹脂(A)に前記特定の難燃助剤の項で例示したリン酸類(例えば、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などの無機リン酸;ホスホノカルボン酸、含窒素リン酸などの有機リン酸など)を添加すると、熱安定性がさらに向上する。
【0111】
(C3 ドリッピング防止剤)
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物は、フッ素系樹脂などのドリッピング防止剤を添加してもよい。ドリッピング防止剤により、燃焼時の火種及び融液の滴下(ドリップ)を抑制できる。フッ素系樹脂には、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどのフッ素含有モノマーの単独又は共重合体;前記フッ素含有モノマーと、エチレン、プロピレン、アクリレートなどの共重合性モノマーとの共重合体が含まれる。このようなフッ素系樹脂(フッ素含有樹脂)としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドなどの単独重合体;テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体などの共重合体が例示される。これらのフッ素樹脂は、一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0112】
前記フッ素系樹脂は、粒子状で使用してもよく、平均粒径は、例えば、10〜5000μm程度、好ましくは100〜1000μm程度、さらに好ましくは100〜700μm程度であってもよい。
【0113】
フッ素系樹脂の含有量は、例えば、熱可塑性樹脂と芳香族樹脂との合計100重量部に対して、0.01〜10重量部程度、好ましくは0.1〜5重量部程度、さらに好ましくは0.1〜3重量部程度である。
【0114】
・添加剤(D1)/充填剤(D2)
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物は、目的に応じて他の成分として添加剤(D1)や充填剤(D2)を含んでいてもよい。他の添加剤(D1)としては、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤など安定剤、滑剤、離型剤、着色剤、可塑剤、核剤、衝撃改良剤、摺動剤などが挙げられる。さらに、本発明の難燃性樹脂組成物は、機械的強度、剛性、耐熱性及び電気的性質などをさらに向上させるため、充填剤(D2)により改質されていてもよい。充填剤(D2)には、繊維状充填剤、非繊維状充填剤(板状充填剤、粉粒状充填剤など)が含まれる。これら添加剤(D1)や充填剤(D2)を用いる場合、難燃性樹脂組成物中の添加剤(D1)または充填剤(D2)の割合は、本発明の効果を損ねない範囲であれば特に制限されないが、用いる場合は、例えば、組成物中に1〜60質量%の範囲が好ましく、さらに1〜50質量%の範囲がより好ましく、さらに1〜45質量%の範囲が最も好ましい。
【0115】
(D2−1 繊維状充填剤)
繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維、高融点有機質繊維(例えば、脂肪族又は芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリルなどのアクリル樹脂など)などが例示できる。好ましい繊維状充填剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維が挙げられる。
【0116】
(D2−2 繊維状充填剤)
非繊維状充填剤のうち、板状充填剤には、例えば、ガラスフレーク、マイカ、グラファイト、各種金属箔などが例示できる。粉粒状充填剤には、カーボンブラック、炭化ケイ素、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドファイバー(例えば、ミルドガラスファイバーなど)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、ケイ藻土、ウォラストナイトなどのケイ酸塩;酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなどの金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属の硫酸塩、金属粉末などが含まれる。好ましい非繊維状充填剤としては、粉粒状又は板状充填剤、特に、ガラスビーズ、ミルドファイバー、カオリン、タルク、マイカ、及びガラスフレークが挙げられる。
【0117】
また、特に好ましい充填剤(D2)には、ガラス繊維、例えば、高い強度・剛性を有するガラス繊維(チョップドストランドなど)が含まれる。
【0118】
これらの充填剤(D2)の使用に当たっては、必要ならば、収束剤又は表面処理剤を使用することが望ましい。このような収束剤又は表面処理剤としては、官能性化合物が含まれる。前記官能性化合物としては、例えば、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物、好ましくはエポキシ系化合物、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0119】
充填剤(D2)は、前記収束剤又は表面処理剤により、収束処理又は表面処理されていてもよい。処理の時期については、充填剤の添加と同時に処理してもよく、添加前に予め処理してもよい。また、併用される官能性表面処理剤又は収束剤の使用量は、充填剤に対して5質量%以下、好ましくは0.05〜2質量%程度である。
【0120】
本発明のリン原子含有オリゴマー(B)は、燃焼時に樹脂表面の炭化を促進するためか、樹脂を高度に難燃化できる。また、ポリマー型リン酸エステルや、芳香族樹脂、などと組み合わせて用いることにより、少量であっても樹脂(A)にさらに難燃性を付与することができ、ブリードアウトや耐熱性の低下も引き起こすこともないため好ましい。
【0121】
・難燃性樹脂組成物の製造方法
本発明の難燃性樹脂組成物は、樹脂(A)とリン原子含有オリゴマー(B)と、さらに必要に応じて、難燃助剤(C)、添加剤(D1)、充填剤(D2)とを例えば、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を使用し、前述の各成分を予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダー等の混合機を用い、樹脂設定温度を融点以上にして溶融混練する。 また各成分を予め混合せずに、又は一部の成分のみ予め混合してフィダーを用いて押出機に供給して溶融混練して製造してもよい。更に(C)、(D1)、(D2)成分が溶融混練により破壊しやすいなど脆性を有する部材であるときは、(A)乃至(B)成分を上流部分に一括投入し、中流以降で(C)、(D1)、(D2)成分を添加し樹脂成分と溶融混練する方法も、得られる樹脂組成物の機械的強度の点から好ましい。 溶融混練後の樹脂組成物の形態は、本発明の効果を損ねなければ、ペレットや粉末など公知の形態でよく、特に限定されることはないものの取扱い性の観点からペレットであることが好ましい。ペレットは、常法に従って製造することができ、例えば前記溶融混練に使用した装置からストランド状に押出した後、水冷、カッティングし、ペレットとすることが好ましい。
【0122】
・難燃性マスターバッチ及びその製造方法
本発明の難燃性樹脂組成物は、樹脂(A)および高濃度でリン原子含有オリゴマー(B)を含有する難燃性マスターバッチを製造し、得られた難燃性マスターバッチに、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂(E)を希釈配合して得ることができる。以下、詳述する。
【0123】
より具体的には、上記した各(A)、(B)成分を必要に応じてV型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサーなどの混合機により予備混合したのち、単軸押出型混錬機、オープンロールミキサー、加圧型ニーダー、バンバリーミキサー、二軸押出型混錬機等、既知の混合機を用い、樹脂設定温度を融点以上にして溶融混練する。このなかでも二軸押出型混練機は混練性、生産性の点で好ましい。溶融混練後、常法に従ってペレット等に加工することにより、本発明の難燃性マスターバッチが得られる。難燃性マスターバッチ中のリン原子含有オリゴマー(B)の含有割合は、本発明の効果を損ねない範囲であれば特に限定されないが、ポリエステル樹脂(A)と前記リン原子含有オリゴマー(B)の合計質量に対し、前記リン原子含有オリゴマー(B)を5〜75質量%の範囲で含有するよう溶融混練する。
【0124】
本発明の難燃性樹脂組成物は、このようにして得られた難燃性マスターバッチに、さらに、熱可塑性樹脂(E)を希釈樹脂として加えて溶融混練して得られる。このようにマスターバッチを経由して難燃性樹脂組成物を得ることで、難燃成分であるリン原子含有オリゴマー(B)を安定的に均一分散でき、さらに高濃度添加することもできるため、成形体に優れた難燃効果を付与することができる。
【0125】
ここで本発明に用いることができる熱可塑性樹脂(E)としては、本発明の効果を損ねない限り特に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂などが挙げられる。樹脂(A)を含む難燃性マスターバッチと、熱可塑性樹脂(E)とを溶融混練する際、樹脂(A)と熱可塑性樹脂(E)は、目的に応じて同じ種類の樹脂を用いても、異なる種類の樹脂を用いても良いが、相溶性の点から同じ種類の樹脂を用いることが好ましい。
【0126】
本発明の難燃性マスターバッチから、難燃性樹脂組成物を製造するには、最終的に得られる難燃性樹脂組成物中のポリエステル樹脂(A)および熱可塑性樹脂(E)の合計100質量部に対し、前記リン原子含有オリゴマー(B)が1〜300質量部、好ましくは2〜100質量部の範囲となるよう、前述した本発明の難燃性マスターバッチに、希釈用の熱可塑性樹脂(E)を調整して加え、溶融混練すればよい。溶融混練の方法は、特に制限はなく、例えば、当該マスターバッチの製造方法と同様の方法を採用することができる。
【0127】
なお、前記難燃性マスターバッチを製造する際に上記の樹脂(A)及びリン原子含有オリゴマー(B)と伴に、または、前記難燃性マスターバッチに希釈する際に熱可塑性樹脂(E)と伴に、上記した難燃助剤(C)、添加剤(D1)、充填剤(D2)を配合することもできる。
【0128】
・成形体/用途
溶融混練して得られた難燃性樹脂組成物は、成形機内で混練し、供して押出成形、射出成形、カレンダー成形、中空成形、真空成形、圧空成形等などの公知の各種成形法にて、難燃性樹脂成形体を製造する。
【0129】
本発明の難燃性樹脂組成物は、高難燃性が求められる種々の用途で使用することが可能であり、特に、特にフィルム、シート、繊維などの用途に好適に用いることができる。具体的には、スイッチ類、超小型スライドスイッチ、ディップスイッチ、スイッチのハウジング、ランプソケット、結束バンド、電解コンデンサー、コンデンサーケース、モータの内部フィルム状部品、耐熱容器、電子レンジ部品、炊飯器部品、工業用養生シート、プリンタリボンガイド等に代表される電気・電子関連部品、家庭・事務電気製品部品、コンピューター関連部品、ファクシミリ・複写機関連部品、機械関連部品等各種用途等への適用が可能である。その中でも近年、特に高難燃性が求められている建築ないし設備メンテナンス用養生シートとして有用であり、このうち、導電性をも付与したものは、発塵を著しく低減する必要がある半導体製造現場の床、壁、天井を覆う養生シートに好適に用いることができる。
【0130】
本発明の難燃性樹脂組成物をシート状ないしフィルム状に成形して得られるシートないしフィルムの厚みは、その用途に応じて異なり、任意の厚さとすることができるが、通常5〜200μm、好ましくは10〜150μm、より好ましくは20〜100μm、特に好ましくは30〜70μmである。
【0131】
本発明の難燃性樹脂組成物を成形してなる成形体、特にシート状ないしフィルム状又は繊維状に成形してなるフィルムないしシートまたは繊維は、機械強度や透明性等の樹脂(A)本来の物性を維持しつつ、難燃成分であるリン原子含有オリゴマー(B)のブリードアウトを抑制し、UL−94/VTM−0を満たす優れた難燃性と、耐熱性を発揮することができる。
【0132】
なお、本発明におけるシート又はフィルムの用語は特にシートとフィルムを厳密に区別する為のものではなく、いずれをも含むことを明確にするために使用するものであり、本発明の特徴を有する限り、シート、フィルムは最大限広く解釈しうるもので、シートの用語は本発明の特徴を有する限り、プレート又は板と言われているものも含むものとする。なお、シートとフィルムを区別する必要がある場合には、シートは通常その厚さが0.5〜5mm程度のものの場合に使用し、フィルムは通常その厚さが5〜500μm程度のものの場合に使用される。
【実施例】
【0133】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0134】
(合成例1)リン原子含有オリゴマー(B−1)の合成
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2−ヒドロキシベンズアルデヒド1220g(10.0モル)と9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下、「HCA」と略記する。)1512g(7.0モル)、シュウ酸22.3g(0.19モル)を仕込み、120℃まで昇温し1時間反応させた。次いで、HCA1728g(8.0モル)を添加し、180℃まで昇温して、3時間反応させた。次いで、水を加熱減圧下に除去し、下記構造式
【0135】
【化16】
で表される構造単位を有するリン原子含有オリゴマー(B−1)4100gを得た。得られたリン原子含有オリゴマーの軟化点は138℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:180℃)は66dPa・s、水酸基当量は428g/eq.リン含有量10.5%であり、n=2以上の成分比率は49.0%であった。
【0136】
(実施例1、比較例1〜4)
・難燃性マスターバッチの製造
表1に記載の組成成分をタンブラーミキサーで予備混合後、30mmφの二軸ベント式押出機(設定温度280℃)内で溶融混練し、その後、ペレット化してポリエステル樹脂組成物ぺレット(マスターバッチ)(1)〜(5)を製造した。
【0137】
(マスターバッチの測定例:押出安定性)
上記押出機を用いて連続運転した時の押出安定性を下記基準にて評価した。
○:混練吐出物の状態は安定しており問題なく押出できた。
×:混練吐出物が粘度低下および脈動現象を起こし、サンプリングが困難であった。
【0138】
(マスターバッチの測定例:固有粘度)
得られたポリエステル樹脂組成物ペレット(マスターバッチ)(1)〜(4)を、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比 1/1)の混合溶媒を用いて、濃度1.00×10−2kg/Lとなるように、110℃で溶解させた後、30℃まで冷却し、全自動溶液粘度計(センテック社製「2CH型DJ504」)を用いて測定した。測定は、濃度1.00×10−2kg/Lの試料溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、下式により算出した。
IV=[(1+4KH・ηsp)0.5−1]/(200KH・C)
(ここで、 ηsp=η/η−1 であり、ηは試料溶液の落下秒数、ηは溶媒の落下秒数、Cはポリマー溶液濃度(kg/L)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。)
【0139】
【表1】
なお、表中の組成成分の数値は質量部を表す。
A:ポリエチレンテレフタレート(インドラマ「RAMAPET」)
B−2:フォスファゼン系難燃剤(伏見製薬「FP−110」)
B−3:リン酸塩系難燃剤(クラリアント株式会社製「OP−935」)
B−4:リン酸エステル系難燃剤(大八化学株式会社製「PX−200」)
【0140】
(実施例2、比較例4〜6)
得られた各ポリエステル樹脂組成物ペレット(マスターバッチ)(1)〜(4)を用い、難燃剤濃度が3質量%になるよう、表2に記載の組成成分を30mmφの二軸ベント式押出機(設定温度280℃)内で溶融混練し、その後、ペレット化して難燃性樹脂組成物を製造した。
得られた各難燃性樹脂組成物を押出機及びTダイにより成形(設定温度280℃)し、厚み200μmのシートサンプルを作成した。得られたシートサンプルを用いて、以下の相溶性、透明性の評価を実施した。
【0141】
(成形品の測定例:相溶性)
上記シートサンプルのシート表面を観察して、添加剤のブリード量を目視で確認し、相溶性の良し悪しを下記基準に基づき評価した。その結果を表2に示す。
シートサンプル表面全体ブリードが無いもの :○
シートサンプル表面一部にブリードがあるもの :△
シートサンプル表面全体にブリードがあるもの :×
【0142】
(成形品の測定例:透明性)
上記シートサンプルを、日本電色工業株式会社製ヘイズメーターNDH2000を使い、JIS−K7136試験方法3に準拠して測定した。その結果を表2に示す。
【0143】
【表2】
なお、表中の組成成分の数値は質量部を表す。
【0144】
(実施例3〜5、比較例7〜15)
得られた各ポリエステル樹脂組成物ペレット(マスターバッチ)(1)〜(4)を用い、表3〜表4に記載の難燃剤濃度となるよう組成成分を調製して、30mmφの二軸ベント式押出機(設定温度280℃)内で溶融混練し、その後、ペレット化して難燃性樹脂組成物を製造した。得られた各難燃性樹脂組成物を押出機及びTダイにより成形(設定温度280℃)し、(L)125mm×(W)13mm×(H)1mmのシートサンプルを作成した。
【0145】
(成形品の測定例:難燃性)
得られたシートサンプルをUL94規格に準拠した方法で評価した。
【0146】
【表3】
なお、表中の組成成分の数値は質量部を表す。
【0147】
【表4】
なお、表中の組成成分の数値は質量部を表す。