(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548321
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】包装装置及び包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65B 39/00 20060101AFI20190711BHJP
【FI】
B65B39/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-28500(P2015-28500)
(22)【出願日】2015年2月17日
(65)【公開番号】特開2016-150765(P2016-150765A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 考勇
(72)【発明者】
【氏名】永見 知里
【審査官】
米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−193914(JP,A)
【文献】
特開2005−187027(JP,A)
【文献】
特開平09−058615(JP,A)
【文献】
特開2006−008199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 39/00−39/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出ノズルと、前記吐出ノズルの外面に、相対向する包装材を供給する包装材供給手段と、前記包装材をシールするシール手段を備える包装装置であって、
前記吐出ノズルは、吐出物の流路を囲む外筒と、前記外筒の内側に設けられたシャフトと、前記シャフトに設けられた弁体とを備え、
前記弁体は、前記外筒の先端に設けられた吐出口を閉鎖することにより前記流路を閉鎖し、前記流路を開放する際には、前記外筒の長手方向に直交する面内において、前記吐出口から前記吐出物が吐出される方向を、相対向する2方向に規制し、
前記包装材は、前記外筒の長手方向に直交する面内において、前記相対向する2方向に沿って配置され、
前記吐出ノズルの先端側に、前記相対向する2方向に沿って配置され、前記包装材を外側から支持する脱気ローラが設けられていることを特徴とする包装装置。
【請求項2】
前記弁体は、前記弁体が前記流路を開放する際にも、前記外筒の長手方向に直交する面内において、前記相対向する2方向とは垂直な2方向において前記外筒の内面又は前記吐出口の周縁に接触し、前記垂直な2方向への流路を制限することを特徴とする請求項1に記載の包装装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の包装装置を用い、前記吐出ノズルにより前記吐出物を前記包装材に供給し、前記シール手段により前記包装材をシールすることを特徴とする包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は
、包装装置及び包装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体等の内容物を包装袋に供給して包装体を製造する装置としては、フィルム等の包装材をシールして袋状に形成し、内容物を供給し、その後に密封シールする装置が知られている。この際、内容物が密封シールされるフィルムに付着すると、フィルム間に内容物を噛み込むことにより、シール不良を引き起こすおそれがある。
【0003】
特許文献1には、充填完了後に液ダレ防止のためのエアーカット機構として、間歇圧縮エアーによって、液切れパイプ内に残った内容物(残留物)を排除する機構が記載されている。しかしながら、圧縮エアーにより飛び散った残留物がシール部に付着し、かえって噛み込みを増大するおそれがある。また、圧縮エアーにより包装材が変形し、シール部にシワが発生しやすくなる。
【0004】
特許文献2には、充填後にノズルと包装材を相対的に回転させることにより、粘性流体の吐出後に発生する糸引き部分を捩じり切る装置が記載されている。しかしながら、ノズル又は包装材を回転させる機構が必要となり、設備が複雑で高価になる。
【0005】
特許文献3には、ノズルに2つの配管を設け、ノズル供給口1つ当たりの流量を低減することで、液の跳ね上がりや泡立ちを抑制する充填装置が記載されている。しかしながら、充填系統が2系統分必要になり、設備が複雑で高価になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−202258号公報
【特許文献2】特開2011−218325号公報
【特許文献3】特開2012−035890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、吐出物がシール部に噛み込むことなく密封することが可能
な包装装置及び包装体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、
吐出ノズルと、前記吐出ノズルの外面に、相対向する包装材を供給する包装材供給手段と、前記包装材をシールするシール手段を備える包装装置であって、前記吐出ノズルは、吐出物の流路を囲む外筒と、前記外筒の内側に設けられたシャフトと、前記シャフトに設けられた弁体とを備え、前記弁体は、前記外筒の先端に設けられた吐出口を閉鎖することにより前記流路を閉鎖し、前記流路を開放する際には、前記外筒の長手方向に直交する面内において、前記吐出口から前記吐出物が吐出される方向を、相対向する2方向に規制
し、前記包装材は、前記外筒の長手方向に直交する面内において、前記相対向する2方向に沿って配置され、前記吐出ノズルの先端側に、前記相対向する2方向に沿って配置され、前記包装材を外側から支持する脱気ローラが設けられていることを特徴とする
包装装置を提供する。
前記弁体は、前記弁体が前記流路を開放する際にも、前記外筒の長手方向に直交する面内において、前記相対向する2方向とは垂直な2方向において前記外筒の内面又は前記吐出口の周縁に接触し、前記垂直な2方向への流路を制限することが好ましい。
【0009】
また
、本発明は、前記包装装置を用い、前記吐出ノズルにより前記吐出物を前記包装材に供給し、前記シール手段により前記包装材をシールすることを特徴とする包装体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、弁体が流路を開放する際には、外筒の長手方向に直交する面内において、吐出口から吐出物が吐出される方向を、相対向する2方向に規制するので、相対向する2方向に沿って包装材を配置することにより、包装材への吐出物の付着を抑制することができる。これにより、吐出物がシール部に噛み込むことなく包装材を密封することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】吐出ノズル及び包装装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】吐出ノズルの(a)開、(b)閉の状態の一例を示す縦断面図である。
【
図3】包装材の内部における吐出ノズルの一例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1に、吐出ノズル10を備える包装装置の一例を示す。吐出ノズル10は、吐出物の流路14を囲む外筒11と、外筒11の内側に設けられたシャフト13と、シャフト13に設けられた弁体12とを備える。なお、
図1の上部において、包装材30及び吐出ノズル10の上部を切り欠いて示しているが、実際には、吐出ノズル10及び包装材30は
図1に示すよりも上方に延びている。図示例の外筒11は、流路14の長手方向が、重力に対して上下方向(鉛直方向)となるように配置されている。
【0013】
図1の場合、包装材30は、折り返し部32でV字状に2つ折りにしたフィルムの側方の端部同士をシール部31によりシールした構成である。この場合、シール部31が形成される前段階ではフィルムの端部同士の間から吐出ノズル10を差し込むことができる。シール部31は、包装材30の長手方向に沿って延びる縦シール部である。また、
図1では、包装材30を透明として吐出ノズル10の形状を示しているが、包装材30が不透明でもよい。
【0014】
図1では、吐出ノズル10の先端部近傍に脱気装置20が設けられている。脱気装置20は、一対の脱気ローラ21,22により包装材30を挟み込んで、脱気ローラ21,22の間隔以内に包装材30の膨らみを規制する。脱気ローラ21,22の間隔は、例えば数ミリメートル程度であり、包装材30の内部空間33に内容物が供給されても包装材30が脱気ローラ21,22の間を通過できる。吐出ノズル10の先端部近傍では、包装材30の断面形状30Sは、シール部31及び折り返し部32において狭く、吐出ノズル10の周囲で広くなっている。
【0015】
図2(a)に示すように、外筒11の先端には、内容物が吐出される吐出口15が開口している。図示例の弁体12は、シャフト13の先端に設けられたポペット式である。なお、シャフト13の先端が弁体12の下方に多少突出することも可能であり、弁体12がシャフト13の側面に設けられてもよい。弁体12は、吐出口15全体を閉鎖することにより流路14を閉鎖する閉鎖体12aを含む。
図2(b)に示すように、弁体12が流路14を閉鎖するとき、閉鎖体12aは吐出口15全体を塞ぐ。閉鎖体12aが外筒11に接触して流路14を閉鎖するため、閉鎖体12aが外筒11の内面11a又は吐出口15の周縁15aの一方又は両方に接触してもよい。横断面における閉鎖体12aの形状は、吐出口15と同形状が好ましい。なお、
図2において、脱気装置20の上面の位置の一例を二点鎖線で示す。脱気装置20の配置は、脱気ローラ21,22の最小間隔となる位置が、吐出口15より下方であれば、特に限定されない。
【0016】
弁体12は、閉鎖体12aの上部に仕切り部12bを有する。
図3に、外筒11の長手方向に直交する面(以下「横断面」という。)における各部の配置を示す。仕切り部12bは、横断面において、外筒11の径方向(長手方向に直交する方向)の両側に対向して2方向に張り出し形成されている。
図2(a)に示すように、弁体12が流路14を開放するとき、閉鎖体12aは下方に突出して吐出口15から離れ、仕切り部12bは外筒11に接触する範囲で吐出口15の流路を規制(制限)する。これにより、吐出物(図示せず)が仕切り部12bのない2方向(吐出方向)A,Bへ吐出される。弁体12の変位は、自動制御でも手動操作でも可能であるが、自動制御が好ましい。例えばアクチュエータ(図示せず)により、間歇的にシャフトを作動させることで実現可能である。包装材30の搬送、シール、ノズルからの吐出等の動作は、弁体12とタイミングを合わせるように制御することが可能である。
【0017】
包装材30は、横断面において、2つの壁面30a,30bが外筒11の両側に相対向して配置される。この場合、2つの壁面30a,30bが外筒11の外面11bに接触ないし近接するが、包装材30の各壁面30a,30bが、吐出方向A,Bに沿って配置されるので、吐出物が包装材30に付着しにくくなり、シール部への噛み込みを抑制することができる。また、吐出方向A,Bは、外筒11の中心軸(シャフト13の位置)を中心として相対向する2方向であるので、横断面に沿った吐出物の運動量成分が相殺され、吐出物の勢いが横断面内において釣り合う。これにより、側方に吐出しても振動が起こりにくく、安定した吐出が可能になる。
【0018】
仕切り部12bは、横断面内において、吐出方向A,Bとは垂直な2方向において外筒11に接触し、これら2方向への流路を制限することができる。仕切り部12bが外筒11に接触して吐出方向A,Bを規制するため、仕切り部12bが外筒11の内面11a又は吐出口15の周縁15aの一方又は両方に接触してもよい。横断面における仕切り部12bの配置を合わせるため、キーや突起等により、シャフト13の周りで弁体12の回転を阻止する機構を備えてもよい。
【0019】
図示例の外筒11は、横断面における内面11a及び外面11bの断面形状が同心状の円形であるが、楕円形、矩形、多角形等、他の形状であってもよい。シャフト13の断面形状は、図示例では円形であるが、楕円形、矩形、多角形等、他の形状であってもよい。
これらの断面形状は、特に吐出口15の近傍においては、吐出方向を安定にするため、吐出方向A,Bに沿った直線(
図3の左右方向)や、これに垂直な方向(
図3の上下方向)に関して、線対称であることが好ましい。外筒11の断面寸法は、先端(吐出口15)に向かって段階的又は連続的に縮小してもよい。
【0020】
弁体12が吐出方向A,Bを規制する構成は、シャフト13と外筒11の内面11aとの間を塞ぐ仕切り部12bに限られない。例えば、吐出口15の近傍で、外筒11の内面11a全周にわたり筒状の部材を設け、筒状部材の所定の位置に開口や切欠等を設けることによっても、吐出方向A,Bを規制することができる。
【0021】
本実施形態の吐出ノズル10によれば、吐出方向A,Bが吐出ノズル10の側方であるので、吐出物の糸が少し延びても包装材30の長手方向における糸の付着範囲が狭く、包装材30の余裕(長さ)を過度に大きくする必要がない。これにより、包装材30を節約し、小型の包装袋も製造できる。吐出方向A,Bの先で吐出物が包装材30に付着しても、弁体12による流路14の閉鎖により、吐出物の糸が切れるので、糸が延びにくい。吐出物が吐出ノズル10の先端に再付着することも抑制されるので、付着物が吐出ノズル10から包装材30に移行することによる噛み込みも抑制することができる。
【0022】
脱気ローラ21,22で各壁面30a,30bの向きを支持することにより、吐出ノズル10から吐出された吐出物が各壁面30a,30bに付着しても、壁面30a,30bに付着した吐出物が吐出口15に近づきにくくなり、吐出ノズル10への付着を抑制できる。
【0023】
本実施形態の包装装置は、吐出ノズル10と、吐出ノズル10の外面に、相対向する包装材30を供給する包装材供給手段(図示せず)と、包装材30をシールするシール手段(図示せず)を備える。シール手段は、包装材30の長手方向に交差する方向(
図1ではシール部31から折り返し部32の間)にシール部(横シール部)を形成し、包装材30の長手方向に沿って2以上の横シール部を形成することで、吐出物(内容物)を収容する収容室を形成する。横シール部を形成するシール手段としては、シールロール、シールバー等が挙げられる。包装装置は、1つの包装袋が1つ又は所定数の収容室を有するように、横シール部を切断するため、カッター等の切断手段を備えることができる。
【0024】
図示例の包装材30は、長手方向に交差する方向の両側にそれぞれシール部31及び折り返し部32を有するが、これらは必須ではない。包装材が両側に縦シール部を有してもよく、包装材が両側に折り返し部を有してもよい。包装材30の供給に際しては、各壁面30a,30bが分断されない一様の包装材(フィルム、チューブ等)であってもよく、あらかじめ各壁面30a,30bが分断された別々の包装材として供給されてもよく、包装装置に供給する際に、各壁面30a,30bを分断してもよい。
【0025】
本実施形態の包装体は、吐出ノズル10により吐出物(内容物)を包装材30の内部空間33に供給し、シール手段により包装材30をシールすることにより製造される。包装材30から製造される包装袋としては、三方シール袋、四方シール袋、ピロー袋、平袋などが挙げられる。包装袋には、内容物が収容(充填)される。
【0026】
包装材は特に限定されないが、シーラントを少なくとも片面に備える積層体、又はシーラントの単層フィルムが好ましい。具体例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン樹脂層を最内層(シーラント)とし、二軸延伸ナイロンフィルムや二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどの延伸フィルムを基材とし、必要に応じてエチレン―ビニルアルコール共重合体、金属や無機化合物の蒸着層(アルミ蒸着など)、アルミ箔等の金属箔、インキ層等の印刷層などを中間層としたラミネートフィルムが挙げられる。
【0027】
内容物は特に限定されないが、液体、粘稠物、クリーム、粉粒体、混合物等、各種の流体に適用可能である。特に粘度が高く、任意の2点間に付着した後に2点間の距離が増加しても切れにくく、糸引きしやすい内容物に適用することが好適である。また、シール部に内容物が付着しにくいので、界面活性剤、離型剤等、包装材同士のシールを弱めやすい成分を含む内容物に適用することが好適である。内容物の粘度は、水の粘度(約1mPa・s)と同程度でもよいが、高粘度の場合に特に好適であり、例えば、10
3〜10
8mPa・s程度、さらには10
4〜10
6mPa・sが挙げられる。
【0028】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
上述の実施形態では、吐出ノズルからの吐出方向を、横断面内で相対向する2方向としたが、これを1方向又は3方向以上とすることも可能である。3方向以上の場合も、吐出方向がノズルの周りに分布する角度範囲を制限することにより、吐出口近傍のノズル及び包装材に吐出物が付着することを抑制することができる。
上述の実施形態では、弁体を外筒の流路内に設けられたシャフトに設けたが、外筒の内面と外面との間、又は外筒の外側に、弁体を支持し、変位させる機構を設けることも可能である。
【0029】
また、外筒の内側に、吐出物の流路を囲む内筒を設け、外筒に対して内筒を長手方向に変位可能にし、内筒で流路の先端を閉鎖すると共に、内筒の先端側の側面に吐出方向を規制する開口部等を設けることで、シャフト及び弁体に代えることも可能である。この場合、内筒がシャフト及び弁体の機能を有し、吐出物の流路がシャフトの内部に設けられ、外筒が内筒を介して吐出物の流路を囲む構成ということもできる。
【符号の説明】
【0030】
A,B…吐出方向、10…吐出ノズル、11…外筒、11a…内面、11b…外面、12…弁体、12a…閉鎖体、12b…仕切り部、13…シャフト、14…流路、15…吐出口、15a…周縁、20…脱気装置、21,22…脱気ローラ、30…包装材、30a,30b…壁面、30S…断面形状、31…シール部、32…折り返し部、33…内部空間。