(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を、
図1〜
図4を参照しつつ説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
本実施形態では、家畜舎システムとして、鶏を養育する養鶏システムを例に挙げて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る養鶏システム(家畜舎システム)1を示す系統図である。
図2は、本実施形態に係る養鶏システム1のヒートポンプ20を示す系統図である。
図3は、夏期における第1媒体および第2媒体の流れを説明するための系統図である。
図4は、冬期における第1媒体の流れを説明するための系統図である。
【0014】
養鶏システム1は、
図1に示すように、鶏が養育される鶏舎10と、冷熱および温熱を同時に取り出し可能なヒートポンプ20と、鶏舎10および鶏に供給する飲み水を加熱する加熱経路30と、鶏舎10および鶏に供給する飲み水を冷却する冷却経路40と、加熱経路30または冷却経路40に連結可能な連結経路45と、鶏舎10内の温度を調整する気体熱交換器50と、鶏舎10内の湿度を調整する除湿機51と、鶏に給水するための給水管60と、給水管60の内部を流れる飲み水を加熱または冷却するための給水管熱交換器70と、鶏舎10内を殺菌する殺菌装置80と、制御部90と、を有する。
【0015】
鶏舎10は、
図1に示すように、幼雛C1が居住する第1空間11と、成鶏C2が居住する第2空間12と、を有する。第1空間11および第2空間12は、互いに行き来できないように仕切られている。
【0016】
第1空間11は、
図1に示すように、鉛直方向に沿って、例えば3つの空間に区切られている。3つの空間はそれぞれ、ベルトコンベア11aを有する。ベルトコンベア11aの上には、例えば金網11fが配置され、その上で幼雛C1が飼育される。幼雛C1が排泄する糞尿は金網11fを介してベルトコンベア11aに落下し、ベルトコンベア11aによって外部に排出される。また、第1空間11の第2空間12が設けられる側とは反対側の壁11bには、後述する除湿機51が取り付けられている。第1空間11の床下には、加熱経路30が配設されている。
【0017】
第2空間12は、床面12aを有する。床面12aには、例えば敷きわらが配置され、その上で成鶏C2が飼育される。また、第2空間12の第1空間11が設けられる側とは反対側の壁12bには、気体熱交換器50が取り付けられている。第2空間12の床下には、加熱経路30は配設されていない。
【0018】
ヒートポンプ20は、冷熱および温熱を同時に取り出し可能に構成されている。また、ヒートポンプ20は、温熱のみを取り出し可能にも構成されている。ヒートポンプ20は電気式であるため、火気を使用することがなく、火災の心配が不要である。以下、ヒートポンプ20の構成について、
図2を参照して、詳述する。
【0019】
ヒートポンプ20は、
図2に示すように、冷媒が循環する冷媒流路21と、冷媒を圧縮する圧縮機22と、冷媒を膨張する膨張弁23と、加熱経路30内を循環する第1媒体に温熱を供給する温水熱交換器24と、冷却経路40内を循環する第2媒体に冷熱を供給する冷水熱交換器25と、外部から取り込んだ空気を冷却する空気熱交換器26と、空気熱交換器26によって冷却された空気を外部に排出する排出ファン27と、温水熱交換器24の下流側に設けられる切替え弁28と、を有する。なお、冷媒流路21を循環する冷媒としては、特に限定されないが、例えば二酸化炭素を用いることができる。
【0020】
冷媒流路21は、加熱経路30内を循環する第1媒体を加熱する第1流路21aと、冷却経路40内を循環する第2媒体を冷却する第2流路21bと、外部から取り込んだ空気を冷却する第3流路21cと、を有する。
【0021】
第1流路21aは、
図2に示すように、切替え弁28が設けられる位置において、第2流路21bおよび第3流路21cに分岐する。また、分岐された第2流路21bおよび第3流路21cは、合流部21dにおいて、第1流路21aに合流する。
【0022】
圧縮機22は、第1流路21aに設けられる。圧縮機22は、特に限定されないが、例えば、CO
2冷凍機を用いることができる。冷媒が圧縮機22を通過する際に圧縮されることによって、圧縮機22は冷媒の温度を上昇させる。圧縮機22を通過する前の冷媒の温度は、例えば、5℃であって、圧縮機22を通過した後の冷媒の温度は、例えば、90℃である。
【0023】
膨張弁23は、第2流路21bおよび第3流路21cにそれぞれ設けられる。第2流路21bに設けられる膨張弁23は、切替え弁28および冷水熱交換器25の間に配置される。第3流路21cに設けられる膨張弁23は、切替え弁28および空気熱交換器26の間に配置される。なお、膨張弁23は、温水熱交換器24および切替え弁28の間に1つだけ配置されてもよい。冷媒が膨張弁23を通過する際に膨張されることによって、膨張弁23は冷媒の温度を低下させる。膨張弁23を通過する前の冷媒の温度は、例えば、60℃であって、膨張弁23を通過した後の冷媒の温度は、例えば、5℃である。
【0024】
温水熱交換器24は、第1流路21aのうち、圧縮機22から膨張弁23までの間に配置される。温水熱交換器24は、圧縮機22から膨張弁23に向かって循環する高温の冷媒により、加熱経路30内を循環する第1媒体を加熱する。
【0025】
冷水熱交換器25は、第2流路21bのうち、膨張弁23から圧縮機22までの間に配置される。冷水熱交換器25は、膨張弁23から圧縮機22に向かって循環する低温の冷媒により、冷却経路40内を循環する第2媒体を冷却する。
【0026】
空気熱交換器26は、第3流路21cのうち、膨張弁23から圧縮機22までの間に配置される。空気熱交換器26は、膨張弁23から圧縮機22に向かって循環する低温の冷媒により、外部から取り込んだ空気を冷却する。
【0027】
排出ファン27は、空気熱交換器26に隣り合うように配置されている。排出ファン27は、空気熱交換器26によって冷却された空気を外部に排出する。
【0028】
切替え弁28は、第1流路21aを通過する冷媒の供給を、第2流路21bまたは第3流路21cに切り替える。
【0029】
以上のように構成されたヒートポンプ20によれば、例えば、第1流路21aを通過する冷媒が第2流路21bに供給されるように、切替え弁28を切り替えることによって、第1流路21aおよび第2流路21bが連結される。この結果、温水熱交換器24は、加熱経路30内を循環する第1媒体を加熱するとともに、冷水熱交換器25は、冷却経路40内を循環する第2媒体を冷却する。このため、ヒートポンプ20は、温熱および冷熱を同時に取り出し可能な状態となる。
【0030】
一方、第1流路21aを通過する冷媒が第3流路21cに供給されるように、切替え弁28を切り替えることによって、第1流路21aおよび第3流路21cが連結される。この結果、温水熱交換器24は、加熱経路30内を循環する第1媒体を加熱するとともに、空気熱交換器26は外部から取り込んだ空気を冷却して、排出ファン27によって、冷却された空気が外部に排出される。このため、ヒートポンプ20は、温熱のみを取り出し可能な状態となる。
【0031】
図1に戻って、加熱経路30は、ヒートポンプ20から取り出される温熱によって加熱される第1媒体が内部を循環することによって、鶏舎10および鶏に供給する飲み水を加熱する。加熱経路30は、
図1に示すように、温水熱交換器24から温熱を受け取るとともに第1空間11の床下に配設される第1加熱経路31と、除湿機51と第1配管55を介して連結されるとともに連結経路45と連結される第2加熱経路32と、を有する。
【0032】
加熱経路30内の第1媒体の循環は、加熱ポンプP1によって行われる。また、加熱経路30内を循環する第1媒体は、特に限定されないが、例えば水である。加熱経路30内を循環する第1媒体の温度は、例えば65℃である。
【0033】
第1加熱経路31は、分岐部J1において、第2加熱経路32と分岐される。第2加熱経路32は、切替え弁V1において、第1配管55と連結される。切替え弁V1は、第2加熱経路32を通過する第1媒体の、除湿機51への供給のオン/オフを切り替える。
【0034】
冷却経路40は、
図1に示すように、ヒートポンプ20から取り出される冷熱によって冷却される第2媒体が内部を循環することによって、鶏舎10および鶏に供給する飲み水を冷却する。冷却経路40は、
図1に示すように、冷水熱交換器25から冷熱を受け取る。また、冷却経路40は、除湿機51と第2配管56を介して連結される。また、冷却経路40は、連結経路45と連結される。
【0035】
冷却経路40内の第2媒体の循環は、冷却ポンプP2によって行われる。また、冷却経路40内を循環する第2媒体は、特に限定されないが、例えば水である。冷却経路40内を循環する第2媒体の温度は、例えば7〜10℃である。
【0036】
冷却経路40は、切替え弁V2において、第2配管56と連結される。切替え弁V2は、冷却経路40を通過する第2媒体の、除湿機51への供給のオン/オフを切り替える。
【0037】
連結経路45は、切替え弁V3において、第2加熱経路32または冷却経路40と連結される。切替え弁V3は、第2加熱経路32を流れる第1媒体または冷却経路40を流れる第2媒体の、連結経路45への供給を切り替える。
【0038】
連結経路45は、
図1に示すように、気体熱交換器50が配置される第1連結経路46と、後述する給水管熱交換器70が配置される第2連結経路47と、を有する。連結経路45は、分岐部J2において、第1連結経路46および第2連結経路47に分岐される。
【0039】
分岐部J2において分岐された第1連結経路46および第2連結経路47は、合流部J3において、連結経路45に合流する。合流部J3において合流した連結経路45は、切替え弁V4において、第2加熱経路32および冷却経路40の一方と連結される。
【0040】
以上のように構成された加熱経路30、冷却経路40、および連結経路45によれば、例えば、切替え弁V3、V4を第2加熱経路32および連結経路45が連結するように切り替えることによって(
図4参照)、連結経路45には温水熱交換器24によって加熱された第1媒体が流れる。
【0041】
一方、切替え弁V3、V4を冷却経路40および連結経路45が連結するように切り替えることによって(
図3参照)、連結経路45には冷水熱交換器25によって冷却された第2媒体が流れる。
【0042】
気体熱交換器50は、鶏舎10の温度を調整する。具体的には、気体熱交換器50は、
図1に示すように、第2空間12の温度を調整する。
【0043】
気体熱交換器50は、第1連結経路46に配置されている。気体熱交換器50の隣には、ファンF2が配置されている。切替え弁V3、V4において、第2加熱経路32および連結経路45を連結することによって、第1媒体からの温熱をファンF2によって第2空間12内に供給することができ、第2空間12内を例えば20〜35℃に暖めることができる。一方、切替え弁V3、V4において、冷却経路40および連結経路45を連結することによって、第2媒体からの冷熱をファンF2によって第2空間12内に供給することができ、第2空間12内に例えば10〜20℃の冷風を供給することができる。
【0044】
除湿機51は、第1空間11内の湿度を調整する。除湿機51は、第1配管55および第2配管56に配置されている。除湿機51の隣には、ファンF1が配置されている。除湿機51の機能をオンにする際は、切替え弁V1において、第2加熱経路32を通過する第1媒体の、除湿機51への供給をオンにするとともに、切替え弁V2において、冷却経路40を通過する第2媒体の、除湿機51への供給をオンにする(
図3参照)。第2媒体によって除湿機51近傍の空気を冷却して、湿気を水滴に変え結露させて排除することで、乾燥した空気を放出して除湿が行われる。なお、除湿機51の機能をオフにする際は、切替え弁V1において、第2加熱経路32を通過する第1媒体の、除湿機51への供給をオフにするとともに、切替え弁V2において、冷却経路40を通過する第2媒体の、除湿機51への供給をオフにする(
図4参照)。
【0045】
給水管60は、井戸85からの水をポンプP3によってくみ上げて、鶏に飲み水として供給する。給水管60は、第1空間11に設けられ幼雛C1に水を供給する第1給水管61と、第2空間12に設けられ成鶏C2に水を供給する第2給水管62と、を有する。
【0046】
第1給水管61には、幼雛C1が水を飲むためのニップル式給水器61aが取り付けられている。また、第2給水管62には、成鶏C2が水を飲むためのニップル式給水器62aが取り付けられている。
【0047】
第1給水管61は、第2給水管62と連結して配置されており、第1空間11の3つの空間に供給されるように、3本に分岐される。
【0048】
給水管熱交換器70は、第2連結経路47に配置されている。給水管熱交換器70は、第2給水管62と隣り合うように配置されている。切替え弁V3、V4において、第2加熱経路32および連結経路45を連結することによって、第2連結経路47には第1媒体が流れる。
【0049】
給水管熱交換器70は、第1媒体の温熱によって、第2給水管62を流れる飲み水を例えば30℃に温めることができる。一方、切替え弁V3、V4において、冷却経路40および連結経路45を連結することによって、第2連結経路47には第2媒体が流れる。給水管熱交換器70は、第2媒体の冷熱によって、第2給水管62を流れる飲み水を例えば10〜20℃に冷やすことができる。
【0050】
殺菌装置80は、第1空間11内に設けられ、第1空間11を殺菌する。殺菌装置80としては、例えば、エキシマランプを用いることができる。このように殺菌装置80としてエキシマランプを用いることによって、拡散性の良いオゾン、ラジカルが発生して、殺菌、ウイルスの増殖を抑えて、においやアンモニアに対する消臭効果を高くすることができる。よって快適な環境を実現することにより幼雛C1の成長を安全に促進させることができる。なお、殺菌装置として、放電式オゾナイザを用いてもよい。
【0051】
制御部90は、切替え弁28、切替え弁V1、切替え弁V2、切替え弁V3、切替え弁V4の切り替えを制御する。制御部90は、例えば、CPUである。制御部90は、鶏の月齢情報および季節情報に基づいて、切替え弁28、切替え弁V1、切替え弁V2、切替え弁V3、切替え弁V4を自動的に切り替えてもよい。
【0052】
次に、本実施形態に係る養鶏システム1による鶏の養育方法について説明する。以下、季節が夏期、冬期の場合に分けて、養鶏システム1による鶏の養育方法について説明する。
【0053】
まず、
図3を参照して、夏期の場合について説明する。
図3において、黒い太線は第1媒体の循環経路を示しており、グレーの太線は第2媒体の循環経路を示している。
【0054】
夏期では近年の温暖化により、鶏舎10内が急激に温度上昇し、成鶏C2の熱死が多発している。このため、成鶏C2が養育される第2空間12を冷房するとともに、成鶏C2の飲み水を冷却する必要がある。これに対して、幼雛C1は、成鶏C2よりは高温環境にすることが好ましい。
【0055】
夏期では、
図2に示す切替え弁28を切り替えて、第1流路21aおよび第2流路21bを連結し、
図3に示すように、ヒートポンプ20から温熱および冷熱を同時に取り出し可能とする。また、切替え弁V3、V4を切り替えて、冷却経路40および連結経路45を連結する。
【0056】
この結果、第1加熱経路31は、第1空間11の床下から、第1空間11内を暖めることができる。したがって、幼雛C1に対して、好適な養育環境を提供することができる。
【0057】
一方、気体熱交換器50は、第2媒体からの冷熱をファンF2によって第2空間12内に供給することができ、第2空間12内を冷やすことができる。また、給水管熱交換器70は、第2媒体からの冷熱によって第2給水管62内の飲み水を冷やすことができる。成鶏C2は、汗腺が無く、羽毛に覆われているため、発汗による体温調節ができず、熱が放散されにくく体内に熱がこもりやすい。このため、急激な外気温度の上昇があると体温調整が追いつかない。また、成鶏C2は、他の生物よりも、水を飲む量が多い特性を備えている。このため、第2媒体からの冷熱によって冷やされた飲み水を成鶏C2が飲むことで、成鶏C2の体温を好適に調整することができる。したがって、成鶏C2に対して、好適な養育環境を提供することができる。
【0058】
このように、夏期において、幼雛C1を飼育する第1空間11の高温環境の維持と、成鶏C2を飼育する第2空間12の冷房および飲み水の冷却とが同時に達成できるため、エネルギーの有効活用を図ることができる。
【0059】
次に、
図4を参照して、冬期の場合について説明する。
図4において、黒い太線は第1媒体の循環経路を示している。
【0060】
冬期では、幼雛C1および成鶏C2ともに、急激な外気気温の低下に対応できるよう、鶏舎10内を高温環境にすることが好ましい。
【0061】
冬期では、
図2に示す切替え弁28を切り替えて、第1流路21aおよび第3流路21cを連結し、
図4に示すように、ヒートポンプ20から温熱のみを取り出し可能とする。このため、冷却経路40に循環する第2媒体は冷水熱交換器25によって冷却されない。また、切替え弁V3、V4を切り替えて、第2加熱経路32および連結経路45を連結する。
【0062】
この結果、第1加熱経路31は、第1空間11の床下から、第1空間11内を暖めることができる。したがって、幼雛C1に対して、好適な養育環境を提供することができる。
【0063】
一方、気体熱交換器50は、第1媒体からの温熱をファンF2によって第2空間12内に供給することができ、第2空間12内を温めることができる。また、給水管熱交換器70は、第1媒体からの温熱によって第2給水管62内の飲み水を温めることができる。したがって、成鶏C2に対して、好適な養育環境を提供することができる。
【0064】
なお、春期や秋期のような中間期では、その日の気温に応じて、上述した夏期のモードおよび冬期のモードを適宜切り替えて使用される。また、除湿機51は、第1空間11内の湿度に応じて、
図3に示す除湿機能がオンの状態、
図4に示す除湿機能がオフの状態を適宜切り替えて使用することができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態に係る養鶏システム1は、鶏が養育される鶏舎10と、冷熱および温熱を同時に取り出し可能なヒートポンプ20と、ヒートポンプ20から取り出される温熱によって加熱される第1媒体が循環することによって、鶏舎10および飲み水を加熱する加熱経路30と、ヒートポンプ20から取り出される冷熱によって冷却される第2媒体が循環することによって、鶏舎10および飲み水を冷却する冷却経路40と、を有する。ヒートポンプ20は、第1流路21a、第2流路21b、および第3流路21cを備え、第2流路21bおよび第3流路21cは第1流路21aから分岐されかつ第1流路21aに合流するように構成されるとともに、冷媒が循環する冷媒流路21を有する。また、ヒートポンプ20は、第1流路21aに設けられ、第1流路21aを通過する冷媒を圧縮して、冷媒を温度上昇させる圧縮機22と、冷媒を膨張して、当該冷媒を温度下降させる膨張弁23と、を有する。また、ヒートポンプ20は、第1流路21aに設けられ、圧縮機22から膨張弁23に向かって循環する冷媒により、第1媒体を加熱する温水熱交換器24と、第2流路21bに設けられ、膨張弁23から圧縮機22に向かって循環する冷媒により、第2媒体を冷却する冷水熱交換器25と、を有する。また、ヒートポンプ20は、第3流路21cに設けられ、膨張弁23から圧縮機22に向かって循環する冷媒により、外部から取り込んだ空気を冷却する空気熱交換器26と、空気熱交換器26によって冷却された空気を外部に排出する排出ファン27と、第1流路21aを通過する冷媒の供給を、第2流路21bまたは第3流路21cに切り替える切替え弁28と、を有する。
【0066】
このように構成された養鶏システム1によれば、暖房用の電源として、化石燃料によるブリーダー装置やボイラーを使用しないで、電気式のヒートポンプ20を使用する。このため、二酸化炭素の排出を抑制することができる。また、加熱経路30を循環する第1媒体は、鶏舎10および家畜に供給する飲み水を加熱し、冷却経路40を循環する第2媒体は、鶏舎10および家畜に供給する飲み水を冷却する。このため、季節に応じて、鶏舎10の暖房および冷房を切り替えるとともに、鶏に供給する飲み水の加熱および冷却を切り替えることができる。よって、鶏に対して好適な養育環境を与えることができる。以上から、環境を考慮するとともに、鶏に対して好適な養育環境を与えることのできる養鶏システム1を提供することができる。
【0067】
また、養鶏システム1は、加熱経路30および冷却経路40に連結可能な連結経路45と、連結経路45に設けられ、加熱経路30を循環する第1媒体により鶏舎10内を暖める、または冷却経路40を循環する第2媒体により鶏舎10内を冷やす気体熱交換器50と、連結経路45に設けられ、加熱経路30を循環する第1媒体により飲み水を加熱する、または冷却経路40を循環する第2媒体により飲み水を冷却する給水管熱交換器70と、有する。加熱経路30は鶏舎10の床下を通過するように配置されている。このように構成された養鶏システム1によれば、鶏に対してより好適な養育環境を与えることができる。
【0068】
また、鶏舎10は、幼雛C1が居住する第1空間11と、成鶏C2が居住する第2空間12と、を有し、気体熱交換器50は、第2空間12に配置され、加熱経路30は、第1空間11の床下のみを通過するように配置されている。このように構成された養鶏システム1によれば、幼雛C1を養育する空間と、成鶏C2を養育する空間とを分けることができる。
【0069】
例えば、従来の鶏舎では、平均的に1棟10000羽を幼雛C1の状態でいれ、48日間で成鶏C2として出荷する。その後、清掃、殺菌、および乾燥を12日間で行い、合計60日を1サイクルで養育している。よって、年間6回転をさせて、60000羽/年を生産している。これに対して、本実施形態に係る養鶏システム1では、幼雛C1が居住する第1空間11と、成鶏C2が居住する第2空間12とに区分けしている。ここで、まず幼雛C1を第1空間11で21日間だけ養育する。その後、第1空間11で21日間だけ養育された鶏は第2空間12に移動され、第2空間12において28日間飼育された後、成鶏C2として出荷される。その後、第2空間12において、清掃、殺菌、および乾燥を12日間で行う。このため、第2空間12の利用期間を28日プラス12日の40日にすることができ、年間9回転させることができる。よって、90000羽/年を生産することができ、生産性が向上する。なお、鶏舎の規模に応じて、上述した飼育数は適宜変更することができる。
【0070】
また、鶏舎10内を殺菌する殺菌装置80をさらに有し、殺菌装置80はエキシマランプである。このように構成された養鶏システム1によれば、快適な養育環境を実現することにより幼雛C1の成長を安全に促進させることができる。
【0071】
<変形例1>
次に、
図5を参照して、変形例1に係る養鶏システム2の構成について説明する。
図5は、変形例1に係る養鶏システム2を示す系統図である。
【0072】
上述した実施形態では、養鶏システム1において、鶏舎10は1つ設けられ、1つの鶏舎10の中に、幼雛C1が養育される第1空間11および成鶏C2が養育される第2空間12が構成された。
【0073】
これに対して、変形例1に係る養鶏システム2は、
図5に示すように、複数(例えば5つ)の鶏舎10を有する。複数の鶏舎10には、互いに月齢が異なる鶏が居住する。また、複数の鶏舎10には、鶏舎10内の温度を調整する気体熱交換器50および鶏に供給する飲み水の温度を調整する給水管熱交換器70がそれぞれ配置される。加熱経路30は、複数の鶏舎10の床下を通過するように配置されている。
【0074】
このように構成された養鶏システム2によれば、各鶏舎10に居住する鶏の月齢および季節に応じて、鶏舎10内の温度を調整したり、鶏の飲み水の温度を調整したりすることができる。
【0075】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0076】
例えば、上述した実施形態では、家畜舎システムとして鶏を養育する養鶏システムに適用されたが、豚等の養育にも適用することができる。
【0077】
また、上述した実施形態では、養鶏システム1は、気体熱交換器50および給水管熱交換器70の両方が設けられていたが、気体熱交換器50および給水管熱交換器70の一方が設けられていてもよい。
【0078】
また、上述した実施形態では、第1空間11と第2空間12との間で、幼雛C1および成鶏C2が互いに行き来できないように、仕切られていた。しかしながら、第1空間11と第2空間12は仕切られてなくてもよい。仕切られていなくても、第1空間11の下にだけ、加熱経路30が配設されていれば、幼雛C1は加熱経路30上に集まる。結果として、成鶏C2は、第1空間11以外の空間である第2空間12に居住し、幼雛C1および成鶏C2が空間で分類される。