(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、太陽電池、タッチパネル、カラーフィルター等の電子デバイスは、主にガラスを基板として製造される。このガラス基板の代わりにプラスチック等のフレキシブル基板を用いた電子デバイスは、いわゆるフレキシブルデバイスという。フレキシブルデバイスの一種であるフレキシブルディスプレイを製造する場合、新規設備導入による製造コスト増加を抑制するため、既存のガラス基板用の製造技術(製造設備を含む。)を活用することが望まれる。
【0003】
既存の製造技術を利用したフレキシブルディスプレイの製造方法の一例は、先ず、ガラスを支持体として、前記支持体上にフレキシブル基板を搭載し、さらにフレキシブル基板上に機能素子を搭載し、導通パターン形成、封止等を行う(以下、合わせて「機能層形成工程」という。)。次に、前記支持体からフレキシブル基板を機能素子ごと剥離する(以下、「支持体除去工程」という。)。このため、機能層形成工程においてガラス基材とフレキシブル基板が剥離せず、かつ支持体除去工程においては、フレキシブル基板が、フレキシブル基板自体及び機能素子にダメージを与えることなく剥離することが重要である。
【0004】
また、フレキシブルデバイスの製造工程において、通常は、フレキシブル基板に対して加熱処理(200〜500℃)及び種々の薬品処理を行う。このため、フレキシブル基板は耐熱性及び耐薬品性が要求される。このような要求に対応するフレキシブル基板材料として、ポリイミド樹脂が検討されてきた(特許文献1〜3参照)。このポリイミド樹脂は、線熱膨張係数(CTE)が低く、その制御が比較的容易であることから、高温に晒されることのある製造工程及び製品の使用において、不具合が生じにくいという特徴がある。
【0005】
このうち、上記特許文献1では、液状の樹脂組成物をキャリア基板上に塗布成膜して固体状の樹脂膜を形成し、前記樹脂膜上に回路を形成して、樹脂膜からキャリア基板を剥離する工程を含むフレキシブルデバイスの製造方法を開示しており、前記樹脂膜が、前記回路に剥がれなどの欠陥を生じさせることなくキャリア基板からの剥離性に優れる旨の開示がある。しかしながら、キャリア基板−樹脂膜間の剥離強度の制御について開示はない。つまり、上記機能層形成工程におけるキャリア基板−樹脂膜の剥離しにくさは不明である。
【0006】
また、特許文献2では、支持体上にポリイミド皮膜を形成し、さらにその上に薄膜デバイスを形成した後に、支持体から剥離してフィルムデバイスを得るプロセスを開示しており、支持体からのポリイミド皮膜の剥離力が0.05N/cm〜1.5N/cmであることを開示している。その際、フィルムデバイス加工中に剥離することなく、かつ加工終了後には速やかに剥離することが可能である旨を開示している。しかしながら、このプロセスに適用できる樹脂は、ベンザゾール骨格を有するものに限られる。
【0007】
また、特許文献3では、基板上に窒化物層を設け、さらにその上に酸化物層を設けることで被剥離層を形成し、さらにその上に、絶縁層及び素子を形成した後、物理的手段により前記酸化物層の層内または界面において剥離する方法を開示している。しかしながら、基板上に上記のような被剥離層を設ける必要があるため、製造プロセスが複雑であり、製造コストアップにつながる。
以上のように、機能層の形成において支持体からフレキシブル基板が剥離せずに、尚且つ、その後にフレキシブル基板及び機能層にダメージを与えることなく支持体からフレキシブル基板を剥離する上で、低コストで簡便に行うことができる手段が望まれている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のフレキシブルデバイスの製造方法の一形態について、詳細に説明する。
【0020】
本発明のフレキシブルデバイスの製造方法は、フレキシブル基板上に所定の機能を有する機能層を備えたフレキシブルデバイスの製造方法であって、以下の3つの工程を含む。
(1)硬質支持体上に、樹脂溶液を塗布して、硬質支持体上にフレキシブル基板を形成するフレキシブル基板形成工程、
(2)上記フレキシブル基板上に機能層を形成する機能層形成工程、
(3)上記機能層が形成されたフレキシブル基板から硬質支持体を除去する支持体除去工程の各工程。
そして本発明においては、上記フレキシブル基板形成工程において、硬質支持体を加熱処理した後に樹脂溶液を塗布する。
【0021】
先ず、フレキシブル基板形成工程について説明する。
硬質支持体は、無機物であり、かつ、積層体としての性能を担保できれば、その種類に制限はないが、例えば、ガラスやセラミックや金属を挙げることができる。ここで、金属としては銅、アルミニウム、ステンレス、鉄、銀、パラジウム、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、ジルコニウム、金、コバルト、チタン、タンタル、亜鉛、鉛、錫、シリコン、ビスマス、インジウムもしくはこれらの合金からなる群から選択された1種または2種以上の金属材料を例示することができ、また、ガラスと複合して形成されるようにしてもよく、これらであれば耐熱性やフレキシブル基板層を支持する観点から、好ましい。また、セラミックとしては、アルミナ、シリカ、シリコンウエハーが挙げられる。より好ましくは、既存のフレキシブルデバイスの製造工程への適合性に優れるガラスである。
【0022】
また、これらの硬質支持体については、表面性状の調整及びフレキシブル基板との接着力などの向上を目的として、その表面にサイジング、クロムメッキ、ニッケルメッキ、クロム−ニッケルメッキ、銅−亜鉛合金メッキ、酸化銅析出またはアルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルコキシチタンなどのチタン化合物、アルコキシシランなどのシラン化合物、トリアジンチオール類、ベンゾトリアゾール類、アセチレンアルコール類、アセチルアセトン類、カテコール類、o−ベンゾキノン類、タンニン類、キノリノール類などの化学的表面処理、あるいは表層粗化処理などの機械的な表面処理を施してもよい。
【0023】
この硬質支持体上に、樹脂溶液を塗布して硬質支持体上にフレキシブル基板を形成する。樹脂溶液は公知の樹脂を公知の溶媒に溶解させたものである。樹脂は、例えばポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、ポリイミド又はポリイミド前駆体が挙げられる。好ましくは、フレキシブル基板としたときに耐熱性及び耐薬品性に優れる、ポリイミド又はポリイミド前駆体である。溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルフォキサイド(DMSO)、硫酸ジメチル、スルフォラン、ブチロラクトン、クレゾール、フェノール、ハロゲン化フェノール、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム系、トリグライム系、カーボネート系(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートほか)などが挙げられる。
【0024】
樹脂がポリイミド又はポリイミド前駆体である場合、硬質支持体にポリイミド又はポリイミド前駆体を含む樹脂溶液を塗布し、硬質支持体を加熱処理することで、樹脂溶液を硬化させ、フレキシブル基板とする。このとき、硬化させる前の樹脂溶液の層を「プレポリイミド樹脂層」という。
【0025】
上記フレキシブル基板がポリイミドで形成される場合、ポリイミドの構造は特に制限なく適用できるが、硬質支持体から除去しやすい点から、主鎖骨格に脂環構造を有するポリイミド(以下「脂環含有ポリイミド」という。)又はフッ素原子を有するポリイミド(以下「フッ素含有ポリイミド」という。)が好ましい。脂環含有ポリイミドの例としては、モノマーとして、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(DCHM)、シクロヘキシルアミン(CHA)等の脂環構造含有ジアミノ化合物、又は、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)、1,2,4,5−シクロシクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)等の脂環構造含有酸無水物の少なくとも1種類以上を有し、これをポリイミドとしたものである。フッ素含有ポリイミドの例としては、モノマーとして、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)等のフッ素含有ジアミノ化合物、又は、2,2−ビス(3,4−アンヒドロジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FDA)、9,9−ビス(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物(6FCDA)、9−フェニル−9−(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物(3FCDA)等のフッ素含有酸無水物の少なくとも1種類以上を有し、これをポリイミドとしたものである。より好ましくは、フッ素含有ポリイミドであり、更に好ましくは、フッ素含有ジアミノ化合物としてTFMB、及び、フッ素含有酸無水物として6FDAを有するフッ素含有ポリイミドである。
【0026】
プレポリイミド樹脂層の形成は、任意の塗布方法が使用できる。また、硬質支持体上に複数層のプレポリイミド樹脂層を形成してもよい。複数層を形成する場合、好ましくは、膜厚等の精度が高いため、以下の3つの方法が好ましい。
【0027】
方法1)多層ダイにより2種以上のプレポリイミド樹脂層を同時に形成する。
方法2)任意の方法でプレポリイミド樹脂層を形成後、その未乾燥の塗布面上にナイフコート方式やダイ方式等によりさらに別のプレポリイミド樹脂層を形成する。
方法3)任意の方法でプレポリイミド樹脂層を形成、乾燥後、その塗工面上に任意の方法で別のプレポリイミド樹脂層を形成する。
ここで述べるナイフコート方式とは、バー、スキージ、ナイフなどにより樹脂溶液をならして塗布する方法である。
【0028】
プレポリイミド樹脂層の硬化方法としては、任意の方法が使用できる。プレポリイミド樹脂層を形成したのちに、予備乾燥したプレポリイミド樹脂層を含む硬質支持体を、バッチ式の加熱乾燥炉の中で、高温状態で一定時間静置するか、連続加熱処理装置の炉内における前記積層体の移動速度を制御し、乾燥及び硬化のための時間及び温度を確保することで、単層または複数層のポリイミド樹脂層からなるフレキシブル基板を形成することができる。
【0029】
プレポリイミド樹脂層が硬化する際、プレポリイミド樹脂層は加熱処理加熱によって溶媒が除去される。特に、ポリイミド前駆体樹脂溶液を用いた場合には、さらに閉環反応によりイミド結合が形成される(以下、「イミド化」という。)。硬化条件は、後述するポリイミド及びポリイミド前駆体の化学構造、加熱処理装置の構造等により適宜調整されるが、急激に高温で加熱処理すると樹脂層表面にスキン層が生成して溶媒が蒸発しづらくなったり、発泡したりするので、低温から徐々に高温まで上昇させながら加熱処理していくのが望ましい。
【0030】
プレポリイミド樹脂層がポリイミド前駆体である場合、硬化させる際の加熱処理条件は、製造工程におけるフレキシブル基板の熱劣化及び製造コストを抑えるため、加熱処理温度は低い方が好ましく、加熱処理時間は短い方が好ましい。但し、加熱処理温度が低すぎる、または加熱処理時間が短すぎると、十分硬化しないおそれがあるので、好ましくは、最高温度が300℃以上であり、かつ該最高温度における保持時間が2分以上であるのがよい。この温度範囲であれば、イミド化が効率良く進行する。また、硬質支持体の表面に分布する、大気成分、水分等に由来する吸着物を十分除去できる。より好ましくは、最高温度が320℃以上であり、かつ該最高温度における保持時間が2分以上である。さらに好ましくは、最高温度が360℃以上であり、かつ該最高温度における保持時間が2分以上である。
一方、プレポリイミド樹脂層がポリイミドである場合、乾燥により硬化を行う。従って、ポリイミド前駆体の場合よりも加熱処理温度は低くてもよい。この場合の加熱処理温度は、最高温度が280℃以上であることが好ましく、より好ましくは300℃以上である。
【0031】
また、硬化は、窒素、アルゴン等の不活性ガス中及び空気中のいずれの条件でも行うことができる。また、常圧下、減圧下、加圧下及び真空下のいずれの条件でも行うことができる。
【0032】
また、プレポリイミド樹脂層の形成とフレキシブル基板の形成を連続加熱処理装置で連続的に行ってもよい。
【0033】
また、上記フレキシブル基板形成工程において、硬質支持体を加熱処理した後に樹脂溶液を塗布する。この、樹脂溶液を塗布する前の硬質支持体の加熱処理を、「前加熱処理」ともいう。前加熱処理を行うことで、機能層形成工程において、硬質支持体からフレキシブル基板が剥離せず、かつ、支持体除去工程において、硬質支持体、フレキシブル基板及び機能層にダメージを与えることなくフレキシブル基板から硬質支持体を除去することができる。具体的には、前加熱処理を行わない場合、硬質支持体−フレキシブル基板の剥離強度が高すぎて、硬質支持体を除去する際に、硬質支持体、フレキシブル基板又は機能層に、破れ、ひび等のダメージが与えられることがあるが、前加熱処理を行うことで、機能層形成工程において剥離が生じない程度に硬質支持体−フレキシブル基板の剥離強度が抑制され、前記ダメージなく、支持体除去工程を行うことができる。
【0034】
前加熱処理の条件は、使用する硬質支持体及び樹脂溶液によって異なるが、硬質支持体上の不純物を除去し、硬質支持体−フレキシブル基板の剥離強度を適切な範囲で維持するという観点から、前加熱処理の最高温度は300℃以上であることが好ましい。より好ましくは前加熱処理の最高温度は360℃以上である。また、加熱時の雰囲気は、大気中、不活性ガス中、減圧環境下中のいずれの雰囲気でもよいが、製造コストを抑制する点、硬質支持体表面の除去効率が高い点から大気中が好ましい。なお、例えば硬化支持体としてガラスを使用する場合、熱変形を抑制する観点及び製造コストを抑制するという観点から、この前加熱処理の最高温度の上限は、実質的には500℃である。
【0035】
また、加熱処理を行った硬質支持体への、不純物や水分の付着を防ぐため、前記加熱処理の終了後、180分以内で、前記硬質支持体上に樹脂溶液を塗布することが好ましい。より好ましくは120分以内である。一方で、加熱処理後、余り時間が経過しないうちに樹脂溶液を塗布すると、硬質支持体の熱により、フレキシブル基板にフクレや劣化が生じる可能性がある。そのため、加熱処理後、硬質支持体の温度が40℃以下の状態で、樹脂溶液を塗布することが好ましい。ここで、加熱処理終了とは、加熱処理後に硬質支持体の冷却を開始した時点のことである。冷却の方法は、放冷、送風による強制的な冷却等が挙げられる。
【0036】
次に、機能層形成工程について説明する。前記工フレキシブル基板形成工程で得られたフレキシブル基板上に機能層を形成する。機能層としては、公知のフレキシブルデバイスの機能を担保する素子を適用できるが、例えば、有機EL・TFT、光電変換素子、電子ペーパー駆動素子、カラーフィルター等が挙げられる。フレキシブルデバイスとして、有機ELディスプレイを製造する場合、機能層としては、画像駆動のためのTFTが挙げられる。TFTの材質としては、シリコン半導体または酸化物半導体が挙げられる。従来技術であるフレキシブル基板を用いない場合は、板ガラス等の硬質支持体上に無機系成分によるバリア層を設け、その上にTFTを形成する。この形成時に、高温処理(300℃台〜400℃台)が必要となる。従って、前記フレキシブル基板においても、この高温処理に耐え得ることが重要である。また、例えば、フレキシブルデバイスとしてタッチパネルを製造する場合、機能層としては、透明導電膜、メタルメッシュ等の電極層が挙げられる。透明導電膜の一例としては、ITO(tin-doped indium oxide)、SnO、ZnO、IZOが挙げられる。これらの電極層の形成時に、200℃以上で熱処理を行うことで抵抗値の小さな導電層を成形出来る。従って、前記フレキシブル基板においても、この高温処理に耐え得ることが重要である。
【0037】
次に、支持体除去工程について説明する。上記機能層が形成されたフレキシブル基板から硬質支持体を除去する。除去する際に、フレキシブル基板上に機能層が形成された部分(以下、「機能層形成部」という。)の表面周縁部に任意の方法で切り込み線を形成し、枠体を区画してもよい。切り込み線を形成することで、機能層が形成されたフレキシブル基板の大きさ及び形状を制御することができる。例えば、製造効率を上げるために、一つのフレキシブル基板上に複数の機能層を形成したときに、切り込み線を形成することで、複数のフレキシブル基板の大きさ及び形状を揃えることができる。枠体の面積が小さい程、フレキシブル基板の面積が大きくなり、一つのフレキシブル基板上に形成できる機能層を増やすことができる。従って、枠体の面積は、フレキシブル基板の大きさ及び形状を制御できる範囲で、小さい方が好ましい。
【0038】
さらに、切り込み線で区画された内側領域のフレキシブル基板を、機能層ごと硬質支持体から剥離して、フレキシブル基板上に機能層を備えたフレキシブルデバイスを得る。上記剥離の方法は、得られるフレキシブルデバイスの品質を低下させない限りは、公知の方法を使用することができる。枠体の剥離も、公知の方法を使用することができる。フレキシブル基板の剥離及び枠体の剥離は、どちらを先に行っても良い。切り込み線を形成しない場合は、フレキシブル基板全体を機能層ごと剥離する。
【0039】
以上のように、本発明のフレキシブルデバイスの製造方法は、硬質支持体の加熱処理という簡便な方法により、硬質支持体−フレキシブル基板の剥離強度を適切に制御することができる。その結果、硬質支持体からフレキシブルデバイスを分離する際に、硬質支持体、フレキシブル基板及び機能層にダメージを与えることなく、フレキシブルデバイスを製造することができる。従って、この製造方法により製造されたフレキシブルデバイスは、製造歩留まりが高く、製品寿命が長いことが期待される。
【0040】
次に、本発明のフレキシブルデバイス製造装置について説明する。前記フレキシブルデバイス製造装置は、フレキシブル基板形成工程を連続的に行うことを特徴とする。具体的には、
図1に示すような、硬質支持体を連続的に300℃以上で加熱処理をする装置を備える。一例として、
図1に示すフレキシブルデバイス製造装置10について、以下に説明する。コンベア16上に硬質支持体11を置くと、コンベア16上で硬質支持体11が矢印の方向に移動する。硬質支持体11は、第1の連続加熱処理装置13内で、最高温度が300℃以上で加熱される(前加熱処理)。加熱後、硬質支持体11の表面に、樹脂溶液供給装置14から供給される樹脂溶液が塗布される。その後、第2の連続加熱処理装置15内で、最高温度が300℃以上で加熱され(後加熱処理)、硬質支持体11上にフレキシブル基板12が形成される。
【0041】
別な一例として、以下の工程1〜7からなるフレキシブルデバイス製造装置が挙げられる。
(工程1)ストッカー(保管装置)から硬質支持体を引出し、オーブンに入れて最高温度が300℃以上で加熱する(前加熱処理)。
(工程2)加熱後、オーブンから硬質支持体を引出し、硬質支持体の表面に、コーターで樹脂溶液を塗布する。
(工程3)樹脂溶液が塗布された硬質支持体を、真空乾燥機、ホットプレートまたはオーブンで乾燥し、硬質支持体上にプレポリイミド樹脂層を形成する。
(工程4)プレポリイミド樹脂層が形成された硬質支持体を、連続加熱処理装置に投入し、最高温度が300℃以上で加熱してフレキシブル基板を形成する(後加熱処理)。連続加熱処理装置内は、金属製のコンベアまたはロールで搬送される。
(工程5)フレキシブル基板が形成された硬質支持体を、機能層形成装置に写し、連続バッチ式で機能層を形成する。
(工程6)機能層を形成したフレキシブル基板と硬質支持体を、剥離機で分離する。
(工程7)剥離された硬質支持体を洗浄し、ストッカーに移す。
以上の工程1〜7において、硬質支持体等の移動は、ロボットを用いてもよいし、手作業で行ってもよい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの内容に制限されるものではない。
【0043】
1.各種物性測定および性能試験方法
【0044】
[剥離強度の測定]
硬質支持体とポリイミド樹脂層との間の剥離強度は、積層体について、測定に適切な線幅(1mm〜30mm位)にポリイミド側での切れ込みまたは基材側でのパターン・エッチングの加工を行い、東洋精機株式会社製引張試験機(ストログラフ−M1)を用いて、樹脂層を180°方向に引き剥がし、ピール強度を測定した。なお、加工細線と樹脂界面間の接着が強固であり、剥離が困難であるものは「剥離不可」とした。
【0045】
2.ポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液の合成
以下の合成例や実施例および比較例において取扱われるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液の合成に用いた原料、芳香族ジアミノ化合物、芳香族テトラカルボン酸の酸無水物化合物及び脂環構造含有酸無水物、溶剤、を以下に示す。
〔芳香族ジアミノ化合物〕
・4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)
・4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(44DAPE)
〔芳香族テトラカルボン酸の酸無水物化合物〕
・無水ピロメリット酸(PMDA)
・2,2−ビス(3,4−アンヒドロジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FDA)
・2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)
〔脂環構造含有酸無水物〕
・1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)
〔溶剤〕
・N、N―ジメチルアセトアミド(DMAc)
【0046】
合成例1
窒素気流下で、TFMB(15.8227g)を300mlのセパラブルフラスコの中で攪拌しながら溶剤DMAc170g中に加え加温し、20℃で溶解させた。次いで、6FDA(7.5660g)とPMDA(6.6113g)を加えた。その後、溶液を室温で4時間攪拌を続けて重合反応を行い、200gの淡黄色の粘稠なポリアミド酸Aワニスを得た。なお、このポリアミド酸Aワニスを後述の加熱条件で硬化することによりポリイミド樹脂Aが得られる。
【0047】
合成例2
芳香族ジアミノ化合物として、TFMB(16.93g)、芳香族テトラカルボン酸の酸無水物化合物としてPMDA(10.12g)及び6FDA(2.95g)を使用した他は、合成例1と同じ方法で200gの淡黄色の粘稠なポリアミド酸Bワニスを得た。なお、このポリアミド酸Bワニスを後述の加熱条件で硬化することによりポリイミド樹脂Bが得られる。
【0048】
合成例3
芳香族ジアミノ化合物として、TFMB(12.54g)、芳香族テトラカルボン酸の酸無水物化合物として6FDA(17.46g)を使用した他は、合成例1と同じ方法で200gの淡黄色の粘稠なポリアミド酸Cワニスを得た。なお、このポリアミド酸Cワニスを後述の加熱条件で硬化することによりポリイミド樹脂Cが得られる。
【0049】
合成例4
芳香族ジアミノ化合物として、TFMB(12.31g)、芳香族テトラカルボン酸の酸無水物化合物として6FCDA(17.69g)を使用した他は、合成例1と同じ方法で200gの淡黄色の粘稠なポリアミド酸Dワニスを得た。なお、このポリアミド酸Dワニスを後述の加熱条件で硬化することによりポリイミド樹脂Dが得られる。
【0050】
合成例5
芳香族ジアミノ化合物として、44DAPE(14.29g)、芳香族テトラカルボン酸の酸無水物化合物としてBPDA(15.65g)を使用した他は、合成例1と同じ方法で200gの褐色の粘稠なポリアミド酸Eワニスを得た。なお、このポリアミド酸Eワニスを後述の加熱条件で硬化することによりポリイミド樹脂Eが得られる。
【0051】
合成例6
芳香族ジアミノ化合物として、TFMB(17.60g)、脂環構造含有酸無水物としてCHDA(12.37g)を使用した他は、合成例1と同じ方法で200gの淡黄色の粘稠なポリアミド酸Fワニスを得た。なお、このポリアミド酸Fワニスを後述の加熱条件で硬化することによりポリイミド樹脂Fが得られる。
【0052】
3.支持基材上へのポリイミド層の形成及び性能評価
以下の実施例および比較例において取扱われる硬質支持体を以下に示す。
・ガラス板…コーニング社製無アルカリガラス、商品名「イーグル XG」、厚み500μm
硬質支持体上に塗布したポリアミド酸ワニスは、70℃〜100℃のホットプレート上で乾燥させたのち、100℃から360℃まで30分程度で昇温して硬化させた。
【0053】
実施例1
清浄なガラスシート(15cm×15cm)をオーブンで大気中360℃、60分加熱した後、大気中で冷却し、表面をアセトンで拭いた後、前記表面上に、ポリアミド酸Aワニスを塗布した。加熱終了後から塗布までの時間は60分であった。これを上記加熱条件で加熱し、厚みが25μmのフレキシブル基板を形成した。次に、このフレキシブル基板をカッターで切り込み線を形成して、ポリイミド樹脂層内に10mm×100mmの枠体を区画した。そして、切り込み線で囲まれた内側領域のフレキシブル基板を剥離した。剥離強度を表1に示した。
【0054】
実施例2〜6
下記表1に示したように、ポリアミド酸Aワニスの代わりにポリアミド酸Bワニスを用いた以外は実施例1と同様にして実施例2とし、実施例1のポリアミド酸Aワニスの代わりにポリアミド酸Cワニスを用い(実施例3)、以下同様にポリアミド酸Dワニスを用いた場合(実施例4)、ポリイミド酸Eワニスを用いた場合(実施例5)、ポリイミド酸Fワニスを用いた場合(実施例6)について、それ以外は実施例1と同じ方法で、厚みが25μmのフレキシブル基板を形成し、更にフレキシブル基板を剥離した。剥離強度を表1に示した。
【0055】
実施例7
オーブンで大気中300℃、60分加熱した以外は、実施例1と同じ方法で、厚みが25μmのフレキシブル基板を形成し、更にフレキシブル基板を剥離した。剥離強度を表1に示した。
【0056】
実施例8
前記加熱処理の終了後、200分で前記表面上にポリイミド酸Aワニスを塗布した以外は、実施例1と同じ方法で、厚みが25μmのフレキシブル基板を形成し、更にフレキシブル基板を剥離した。剥離強度を表1に示した。
【0057】
比較例1
ガラスシートを加熱しないようにした事以外は実施例1と同様にしてフレキシブル基板を形成し、剥離した。結果を表1に示した。
【0058】
【表1】
【0059】
これらの実施例、比較例の結果から分かるように、硬質支持体を加熱処理した後に樹脂溶液を塗布してフレキシブル基板を形成することで、良好な剥離強度が得られるようになる。そのため、このようにして硬質支持体上にフレキシブル基板を形成すれば、その後の機能層形成工程で所定の機能層を精度良く設けることができ、また、支持体除去工程では、フレキシブル基板を機能層ごと硬質支持体から容易に除去することが可能となり、フレキシブルデバイスを低コストで簡便に製造することができるようになる。