(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリコン含有ガスは、ジクロロシランガス、ジシランガス、ヘキサクロロジシランガス、ジイソプロピルアミノシランガス、トリスジメチルアミノシランガス、ビスターシャルブチルアミノシランガスのいずれかである請求項1乃至4のいずれか一項に記載の成膜方法。
前記基板の温度は、前記窪みパターンを含む前記基板の表面をアンモニアラジカルで窒化できる400℃以上に設定された請求項1乃至5のいずれか一項に記載の成膜方法。
前記第1の処理ガスをプラズマ化する第1のプラズマは、前記第2の処理ガスをプラズマ化する第2のプラズマよりも前記基板の表面から離間した高い位置で生成される請求項7に記載の成膜方法。
前記吸着サイト制御工程と前記シリコン吸着工程との間、及び前記シリコン吸着工程と前記窒化工程との間に、前記窪みパターンを含む前記基板の表面にパージガスを供給するパージ工程を更に有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載の成膜方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0011】
〔成膜装置の構成〕
図1に、本発明の実施形態に係る成膜方法を実施する成膜装置の一例の概略縦断面図を示す。また、
図2に、本発明の実施形態に係る成膜方法を実施する成膜装置の一例の概略平面図を示す。なお、
図2では、説明の便宜上、天板11の描画を省略している。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る成膜方法を実施する成膜装置は、平面形状が概ね円形である真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有すると共にウエハWを公転させるための回転テーブル2と、を備えている。
【0013】
真空容器1は、内部で基板を処理するための処理室である。真空容器1は、回転テーブル2の後述する凹部24に対向する位置に設けられた天板(天井部)11と、容器本体12とを備えている。また、容器本体12の上面の周縁部には、リング状に設けられたシール部材13が設けられている。そして、天板11は、容器本体12から着脱可能に構成されている。平面視における真空容器1の直径寸法(内径寸法)は、限定されないが、例えば1100mm程度とすることができる。
【0014】
真空容器1内の上面側における中央部には、真空容器1内の中心部領域Cにおいて互いに異なる処理ガス同士が混ざり合うことを抑制するために分離ガスを供給する、分離ガス供給管51が接続されている。
【0015】
回転テーブル2は、中心部にて概略円筒形状のコア部21に固定されており、このコア部21の下面に接続されると共に鉛直方向に伸びる回転軸22に対して、鉛直軸周り、
図2に示す例では時計回りに、駆動部23によって回転自在に構成されている。回転テーブル2の直径寸法は、限定されないが、例えば1000mm程度とすることができる。
【0016】
回転軸22及び駆動部23は、ケース体20に収納されており、このケース体20は、上面側のフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられている。また、このケース体20には、回転テーブル2の下方領域に窒素ガス等をパージガス(分離ガス)として供給するためのパージガス供給管72が接続されている。
【0017】
真空容器1の底面部14におけるコア部21の外周側は、回転テーブル2に下方側から近接するようにリング状に形成されて突出部12aを為している。
【0018】
回転テーブル2の表面部には、直径寸法が例えば300mmのウエハWを載置するための円形状の凹部24が基板載置領域として形成されている。この凹部24は、回転テーブル2の回転方向に沿って、複数箇所、例えば5箇所に設けられている。凹部24は、ウエハWの直径よりも僅かに、具体的には1mm乃至4mm程度大きい内径を有する。また、凹部24の深さは、ウエハWの厚さにほぼ等しいか、又はウエハWの厚さよりも大きく構成される。したがって、ウエハWが凹部24に収容されると、ウエハWの表面と、回転テーブル2のウエハWが載置されない領域の表面とが同じ高さになるか、ウエハWの表面が回転テーブル2の表面よりも低くなる。なお、凹部24の深さは、ウエハWの厚さよりも深い場合であっても、あまり深くすると成膜に影響が出ることがあるので、ウエハWの厚さの3倍程度の深さまでとすることが好ましい。
【0019】
なお、ウエハWの表面には、トレンチ、ビア等の窪みパターンが形成されている。本発明の実施形態に係る成膜方法は、窪みパターン内に埋め込み成膜を行うのに適した方法であるので、表面に窪みパターンが形成されてウエハWの埋め込み成膜に好適に適用され得る。
【0020】
凹部24の底面には、ウエハWを下方側から突き上げて昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピンが貫通する、図示しない貫通孔が形成されている。
【0021】
図2に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と対向する位置には、例えば石英からなる複数本、例えば5本のノズル31、32、33、41、42が真空容器1の周方向に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。これら各々のノズル31、32、33、41、42は、回転テーブル2と天板11との間に配置される。また、これら各々のノズル31、32、33、41、42は、例えば真空容器1の外周壁から中心部領域Cに向かってウエハWに対向して水平に伸びるように取り付けられている。
【0022】
図2に示す例では、原料ガスノズル31から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に、分離ガスノズル42、第1のプラズマ処理用ガスノズル32、第2のプラズマ処理用ガスノズル33、分離ガスノズル41がこの順番で配列されている。しかしながら、本実施形態に係る成膜装置は、この形態に限定されず、回転テーブル2の回転方向は反時計回りであっても良く、この場合、原料ガスノズル31から反時計回りに、分離ガスノズル42、第1のプラズマ処理用ガスノズル32、第2のプラズマ処理用ガスノズル33、分離ガスノズル41がこの順番で配列されている。
【0023】
第1のプラズマ処理用ガスノズル32、第2のプラズマ処理用ガスノズル33の上方側には、
図2に示すように、各々のプラズマ処理用ガスノズルから吐出されるガスをプラズマ化するために、プラズマ発生部81a、81bが各々設けられている。これらプラズマ発生部81a、81bについては、後述する。
【0024】
なお、本実施形態においては、各々の処理領域に1つのノズルを配置する例を示したが、各々の処理領域に複数のノズルを配置する構成であっても良い。例えば、第1のプラズマ処理用ガスノズル32は、複数のプラズマ処理用ガスノズルから構成され、各々、後述するアルゴン(Ar)ガス、アンモニア(NH
3)ガス、水素(H
2)ガス等を供給する構成であっても良いし、1つのプラズマ処理用ガスノズルのみを配置し、アルゴンガス、アンモニアガス及び水素ガスの混合ガスを供給する構成であっても良い。
【0025】
処理ガスノズル31は、原料ガス供給部をなしている。また、第1のプラズマ処理用ガスノズル32は、第1のプラズマ処理用ガス供給部をなしており、第2のプラズマ処理用ガスノズル33は、第2のプラズマ処理用ガス供給部をなしている。さらに、分離ガスノズル41、42は、各々分離ガス供給部をなしている。なお、分離ガスは、上述のように、パージガスと呼んでもよい。
【0026】
各ノズル31、32、33、41、42は、流量調整バルブを介して、図示しない各々のガス供給源に接続されている。
【0027】
原料ガスノズル31から供給される原料ガスは、シリコン含有ガスである。シリコン含有ガスの一例としては、DCS[ジクロロシラン]、ジシラン(Si
2H
6)、HCD[ヘキサクロロジシラン]、DIPAS[ジイソプロピルアミノシラン]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、BTBAS[ビスターシャルブチルアミノシラン]等のガスが挙げられる。
【0028】
原料ガスノズル31から供給される原料ガスとして、シリコン含有ガスの他、TiCl
4[四塩化チタン]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]、TMA[トリメチルアルミニウム]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMHF[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)
2[ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]等の金属含有ガスを使用しても良い。
【0029】
第1のプラズマ処理用ガスノズル32から供給される第1のプラズマ処理用ガスは、窒化ガスとして、アンモニア(NH
3)含有ガスが選択される。NH
3を用いることにより、窪みパターンを含むウエハWの表面上にNH
2基を吸着させ、シリコン含有ガスの吸着サイトを形成することができる。なお、NH
3以外のガスとしては、H
2ガス、Ar等を必要に応じて含んでよく、これらの混合ガスが第1のプラズマ処理用ガスノズル32から供給され、第1のプラズマ発生器81aによりプラズマ化される。
【0030】
第2のプラズマ処理用ガスノズル33から供給される第2のプラズマ処理用ガスは、NH
2基を一部N基に変換するため、窒素(N
2)含有ガスが選択される。N
2を供給することにより、表面上に吸着したNH
2基の一部をN基に変換し、NH
2基による吸着サイトを一部消滅させる。これにより、次に供給される原料ガスの選択的な吸着が可能となる。なお、具体的には、プラズマ化したN
2ガスは、窪みパターンの奥(底部)までは到達せず、ウエハWの表面及び窪みパターンの上部に吸着したNH
2基からHが除去され、N基に変換されることになる。
【0031】
N
2含有ガスは、N
2以外のガスとしては、Arガス、H
2ガス等を必要に応じて含んでよく、これらの混合ガスが第2のプラズマ処理用ガスノズル33から第2のプラズマ処理用ガスとして供給されてもよい。
【0032】
このように、第1のプラズマ処理用ガスと第2のプラズマ処理用ガスは、異なるガスが選択される。
【0033】
分離ガスノズル41、42から供給される分離ガスとしては、例えば窒素(N
2)ガス等が挙げられる。
【0034】
前述したように、
図2に示す例では、原料ガスノズル31から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に、分離ガスノズル42、第1のプラズマ処理用ガスノズル32、第2のプラズマ処理用ガスノズル33、分離ガスノズル41がこの順番で配列されている。即ち、ウエハWの実際の処理においては、原料ガスノズル31から供給されたSi含有ガスが窪みパターンを含む表面に吸着したウエハWは、分離ガスノズル42からの分離ガス、第1のプラズマ処理用ガスノズル32からのプラズマ処理用ガス、第2のプラズマ処理用ガスノズル33からのプラズマ処理用ガス、分離ガスノズル41からの分離ガスの順番で、ガスに曝される。
【0035】
これらのノズル31、32、33、41、42の下面側(回転テーブル2に対向する側)には、前述の各ガスを吐出するためのガス吐出孔35が回転テーブル2の半径方向に沿って複数箇所に例えば等間隔に形成されている。各ノズル31、32、33、41、42の各々の下端縁と回転テーブル2の上面との離間距離が例えば1〜5mm程度となるように配置されている。
【0036】
原料ガスノズル31の下方領域は、Si含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1である。また、第1のプラズマ処理用ガスノズル32の下方領域は、ウエハW上の薄膜の第1のプラズマ処理を行うための第2の処理領域P2となり、第2のプラズマ処理用ガスノズル33の下方領域は、ウエハW上の薄膜の第2のプラズマ処理を行うための第3の処理領域P3となる。
【0037】
図3に、成膜装置の回転テーブルの同心円に沿った断面図を示す。なお、
図3は、分離領域Dから第1の処理領域P1を経て分離領域Dまでの断面図である。
【0038】
分離領域Dにおける真空容器1の天板11には、概略扇形の凸状部4が設けられている。凸状部4は、天板11の裏面に取り付けられており、真空容器1内には、凸状部4の下面である平坦な低い天井面44(第1の天井面)と、この天井面44の周方向両側に位置する、天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)とが形成される。
【0039】
天井面44を形成する凸状部4は、
図2に示すように、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有している。また、凸状部4には、周方向中央において、半径方向に伸びるように形成された溝部43が形成され、分離ガスノズル41、42がこの溝部43内に収容されている。なお、凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は、各処理ガス同士の混合を阻止するために、回転テーブル2の外端面に対向すると共に容器本体12に対して僅かに離間するように、L字型に屈曲している。
【0040】
原料ガスノズル31の上方側には、第1の処理ガスをウエハWに沿って通流させるために、且つ分離ガスがウエハWの近傍を避けて真空容器1の天板11側を通流するように、ノズルカバー230が設けられている。ノズルカバー230は、
図3に示すように、原料ガスノズル31を収納するために下面側が開口する概略箱形のカバー体231と、このカバー体231の下面側開口端における回転テーブル2の回転方向上流側及び下流側に各々接続された板状体である整流板232とを備えている。なお、回転テーブル2の回転中心側におけるカバー体231の側壁面は、原料ガスノズル31の先端部に対向するように回転テーブル2に向かって伸び出している。また、回転テーブル2の外縁側におけるカバー体231の側壁面は、原料ガスノズル31に干渉しないように切り欠かれている。
【0041】
次に、第1のプラズマ処理用ガスノズル32、33の上方側に各々配置される、第1のプラズマ発生部81a及び第2のプラズマ発生部81bについて、詳細に説明する。なお、本実施形態においては、第1のプラズマ発生部81a及び第2のプラズマ発生部81bは、各々独立したプラズマ処理を実行することができるが、各々の具体的構成については、同様のものを使用することができる。
【0042】
図4は、プラズマ発生部の一例を示す縦断面図である。また、
図5は、プラズマ発生部の一例を示す分解斜視図である。さらに、
図6は、プラズマ発生部に設けられる筐体の一例を示す斜視図である。
【0043】
プラズマ発生部81a、81bは、金属線等から形成されるアンテナ83をコイル状に例えば鉛直軸回りに3重に巻回して構成されている。また、プラズマ発生部81は、平面視で回転テーブル2の径方向に伸びる帯状体領域を囲むように、且つ回転テーブル2上のウエハWの直径部分を跨ぐように配置されている。
【0044】
アンテナ83は、整合器84を介して周波数が例えば13.56MHz及び出力電力が例えば5000Wの高周波電源85に接続されている。そして、このアンテナ83は、真空容器1の内部領域から気密に区画されるように設けられている。なお、
図4において、アンテナ83と整合器84及び高周波電源85とを電気的に接続するための接続電極86が設けられている。
【0045】
図4及び
図5に示すように、第1のプラズマ処理用ガスノズル32の上方側における天板11には、平面視で概略扇形に開口する開口部11aが形成されている。
【0046】
開口部11aには、
図4に示すように、開口部11aの開口縁部に沿って、この開口部11aに気密に設けられる環状部材82を有する。後述する筐体90は、この環状部材82の内周面側に気密に設けられる。即ち、環状部材82は、外周側が天板11の開口部11aに臨む内周面11bに対向すると共に、内周側が後述する筐体90のフランジ部90aに対向する位置に、気密に設けられる。そして、この環状部材82を介して、開口部11aには、アンテナ83を天板11よりも下方側に位置させるために、例えば石英等の誘導体により構成された筐体90が設けられる。
【0047】
また、環状部材82は、
図4に示すように、鉛直方向に伸縮可能なベローズ82aを有している。また、プラズマ発生部81a、81bは、電動アクチュエータ等の図示しない駆動機構(昇降機構)により、各々独立して昇降可能に形成されている。プラズマ発生部81a、81bの昇降に対応して、ベローズ82aを伸縮させることで、プラズマ処理時における、プラズマ発生部81a、81bの各々とウエハW(即ち、回転テーブル2)との間の距離、即ち、(以後、プラズマ生成空間の距離と呼ぶことがある)を変更可能に構成されている。
【0048】
筐体90は、
図6に示すように、上方側の周縁部が周方向に亘ってフランジ状に水平に伸び出してフランジ部90aをなすと共に、平面視において、中央部が下方側の真空容器1の内部領域に向かって窪むように形成されている。
【0049】
筐体90は、この筐体90の下方にウエハWが位置した場合に、回転テーブル2の径方向におけるウエハWの直径部分を跨ぐように配置されている。なお、環状部材82と天板11との間には、O−リング等のシール部材11cが設けられる。
【0050】
真空容器1の内部雰囲気は、環状部材82及び筐体90を介して気密に設定されている。具体的には、環状部材82及び筐体90を開口部11a内に落とし込み、次いで環状部材82及び筐体90の上面であって、環状部材82及び筐体90の接触部に沿うように枠状に形成された押圧部材91によって筐体90を下方側に向かって周方向に亘って押圧する。さらに、この押圧部材91を図示しないボルト等により天板11に固定する。これにより、真空容器1の内部雰囲気は気密に設定される。なお、
図5においては、簡単のため、環状部材82を省略して示している。
【0051】
図6に示すように、筐体90の下面には、当該筐体90の下方側の処理領域P2、P3の各々を周方向に沿って囲むように、回転テーブル2に向かって垂直に伸び出す突起部92が形成されている。そして、この突起部92の内周面、筐体90の下面及び回転テーブル2の上面により囲まれた領域には、前述した第1のプラズマ処理用ガスノズル32及び第2のプラズマ処理用ガスノズル33が収納されている。なお、第1のプラズマ処理用ガスノズル32及び第2のプラズマ処理用ガスノズル33の基端部(真空容器1の内壁側)における突起部92は、第2のプラズマ処理用ガスノズル33の外形に沿うように概略円弧状に切り欠かれている。
【0052】
筐体90の下方側には、
図4に示すように、突起部92が周方向に亘って形成されている。シール部材11cは、この突起部92によって、プラズマに直接曝されず、即ち、プラズマ生成領域から隔離されている。そのため、プラズマ生成領域からプラズマが例えばシール部材11c側に拡散しようとしても、突起部92の下方を経由して行くことになるので、シール部材11cに到達する前にプラズマが失活することとなる。
【0053】
筐体90の上方側には、当該筐体90の内部形状に概略沿うように形成された導電性の板状体である金属板例えば銅などからなる、接地されたファラデーシールド95が収納されている。このファラデーシールド95は、筐体90の底面に沿うように水平に形成された水平面95aと、この水平面95aの外終端から周方向に亘って上方側に伸びる垂直面95bと、を備えており、平面視で例えば概略六角形となるように構成されていても良い。
【0054】
図7は、プラズマ発生部の一例を示す平面図である。
図8は、プラズマ発生部に設けられるファラデーシールドの一部を示す斜視図である。
【0055】
回転テーブル2の回転中心からファラデーシールド95を見た場合の右側及び左側におけるファラデーシールド95の上端縁は、各々、右側及び左側に水平に伸び出して支持部96を為している。そして、ファラデーシールド95と筐体90との間には、支持部96を下方側から支持すると共に筐体90の中心部領域C側及び回転テーブル2の外縁部側のフランジ部90aに各々支持される枠状体99が設けられている。
【0056】
アンテナ83によって生成した電界がウエハWに到達する場合、ウエハWの内部に形成されているパターン(電気配線等)が電気的にダメージを受けてしまう場合がある。そのため、
図8に示すように、水平面95aには、アンテナ83において発生する電界及び磁界(電磁界)のうち電界成分が下方のウエハWに向かうことを阻止すると共に、磁界をウエハWに到達させるために、多数のスリット97が形成されている。
【0057】
スリット97は、
図7及び
図8に示すように、アンテナ83の巻回方向に対して直交する方向に伸びるように、周方向に亘ってアンテナ83の下方位置に形成されている。ここで、スリット97は、アンテナ83に供給される高周波に対応する波長の1/10000以下程度の幅寸法となるように形成されている。また、各々のスリット97の長さ方向における一端側及び他端側には、これらスリット97の開口端を塞ぐように、接地された導電体等から形成される導電路97aが周方向に亘って配置されている。ファラデーシールド95においてこれらスリット97の形成領域から外れた領域、即ち、アンテナ83の巻回された領域の中央側には、当該領域を介してプラズマの発光状態を確認するための開口部98が形成されている。なお、前述した
図2においては、簡単のために、スリット97を省略しており、スリット97の形成領域例を、一点鎖線で示している。
【0058】
図5に示すように、ファラデーシールド95の水平面95a上には、ファラデーシールド95の上方に載置されるプラズマ発生部81a、81bとの間の絶縁性を確保するために、厚み寸法が例えば2mm程度の石英等から形成される絶縁板94が積層されている。即ち、プラズマ発生部81a、81bは、各々、筐体90、ファラデーシールド95及び絶縁板94を介して真空容器1の内部(回転テーブル2上のウエハW)に対向するように配置されている。
【0059】
このように、第1のプラズマ発生器81aと第2のプラズマ発生器81bとは、ほぼ同様な構成を有するが、設置される高さが異なっている。即ち、回転テーブル2の表面と第1のプラズマ発生器81aとの間の距離と、回転テーブル2の表面と第2のプラズマ発生器81bとの間の距離とが異なっている。これは、筐体90の底面の高さを調整することにより、容易に高さを異ならせることができる。
【0060】
具体的には、第1のプラズマ発生器81aの高さの方が、第2のプラズマ発生器81bの高さよりも高く設定される。上述のように、第1のプラズマ発生器81aの下方の領域は、筐体90により実質的に閉じられた第2の処理領域P2が形成されており、第2のプラズマ発生器81bの下方の領域も、筐体90により実質的に閉じられた第3の処理領域P3が形成されている。よって、回転テーブル2の表面との距離が小さい方、即ち、プラズマ発生器81a、81bが低く設置されている方が、より狭い空間を形成する。ここで、第2の処理領域P2における第1のプラズマ発生器81aと回転テーブル2の表面との間の距離を第1の距離、第3の処理領域P3における第2のプラズマ発生器81bと回転テーブル2の表面との間の距離を第2の距離とすると、第1の距離よりも相対的に小さい第2の距離によって、第3の処理領域P3においては、ウエハWに到達するイオン量が、第2の処理領域P2と比較して多くなる。よって、第3の処理領域P3においては、ウエハWに到達するラジカル量も、第2の処理領域P2と比較して多くなる。
【0061】
一般に、プラズマ化されたN
2は、エネルギーは高いものの、寿命が短いため、ウエハWの表面まで到達せず、均一な窒化や改質処理を行うのに不利であった。しかしながら、ウエハWと第2のプラズマ発生器81bとの距離を短くすることにより、ウエハWの表面及び窪みパターンの上部にまでは到達し、ウエハWの表面及び窪みパターンの上部にのみ選択的に非吸着サイトを形成することができる。即ち、N
2ガスを全体の窒化ではなく、局所的な非吸着サイトの形成に利用することにより、N
2プラズマのエネルギーは高いが寿命は短いという性質を適切に利用することができ、ボトムアップ性の高い埋め込み成膜に活用することができる。
【0062】
なお、第1のプラズマ発生器81aと回転テーブル2の表面との間の第1の距離と、第2のプラズマ発生器81bと回転テーブル2の表面との間の第2の距離は、第1の距離が第2の距離より大きい限り、種々の値とすることができるが、例えば、第1の距離が80mm以上150mm以下、第2の距離が20mm以上80mm未満の範囲内に設定されてもよい。ただし、距離は、用途に応じて種々変更することができ、これらの値に限定されるものではない。
【0063】
再び、本実施形態に係る成膜装置の他の構成要素について、説明する。
【0064】
回転テーブル2の外周側において、回転テーブル2よりも僅かに下位置には、
図2に示すように、カバー体であるサイドリング100が配置されている。サイドリング100の上面には、互いに周方向に離間するように例えば2箇所に排気口61、62が形成されている。別の言い方をすると、真空容器1の床面には、2つの排気口が形成され、これら排気口に対応する位置におけるサイドリング100には、排気口61、62が形成されている。
【0065】
本明細書においては、排気口61、62のうち一方及び他方を、各々、第1の排気口61、第2の排気口62と呼ぶ。ここでは、第1の排気口61は、分離ガスノズル42と、この分離ガスノズル42に対して、回転テーブルの回転方向下流側に位置する第1のプラズマ発生部81aとの間に形成されている。また、第2の排気口62は、第2のプラズマ発生部81bと、このプラズマ発生部81bよりも回転テーブル2の回転方向下流側の分離領域Dとの間に形成されている。
【0066】
第1の排気口61は、第1の処理ガスや分離ガスを排気するためのものであり、第2の排気口62は、プラズマ処理用ガスや分離ガスを排気するためのものである。これら第1の排気口61及び第2の排気口62は、各々、バタフライバルブ等の圧力調整部65が介設された排気管63により、真空排気機構である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0067】
前述したように、中心部領域C側から外縁側に亘って筐体90を配置しているため、プラズマ処理領域P2、P3に対して回転テーブル2の回転方向上流側から通流してくるガスは、この筐体90によって排気口62に向かおうとするガス流が規制されてしまうことがある。そのため、筐体90よりも外周側におけるサイドリング100の上面には、ガスが流れるための溝状のガス流路101(
図1及び
図2参照)が形成されている。
【0068】
天板11の下面における中央部には、
図1に示すように、凸状部4における中心部領域C側の部位と連続して周方向に亘って概略リング状に形成されると共に、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成された突出部5が設けられている。この突出部5よりも回転テーブル2の回転中心側におけるコア部21の上方側には、中心部領域Cにおいて各種ガスが互いに混ざり合うことを抑制するためのラビリンス構造部110が配置されている。
【0069】
前述したように筐体90は中心部領域C側に寄った位置まで形成されているので、回転テーブル2の中央部を支持するコア部21は、回転テーブル2の上方側の部位が筐体90を避けるように回転中心側に形成されている。そのため、中心部領域C側では、外縁部側よりも、各種ガス同士が混ざりやすい状態となっている。そのため、コア部21の上方側にラビリンス構造を形成することにより、ガスの流路を稼ぎ、ガス同士が混ざり合うことを防止することができる。
【0070】
より具体的には、ラビリンス構造部110は、回転テーブル2側から天板11側に向かって垂直に伸びる壁部と、天板11側から回転テーブル2に向かって垂直に伸びる壁部とが、各々周方向に亘って形成されると共に、回転テーブル2の半径方向において交互に配置された構造を有する。ラビリンス構造部110では、例えば原料ガスノズル31から吐出されて中心部領域Cに向かおうとする第1の処理ガスは、ラビリンス構造部110を乗り越えていく必要がある。そのため、中心部領域Cに向かうにつれて流速が遅くなり、拡散しにくくなる。結果として、処理ガスが中心部領域Cに到達する前に、中心部領域Cに供給される分離ガスにより、処理領域P1側に押し戻されることになる。また、中心部領域Cに向かおうとする他のガスについても、同様にラビリンス構造部110によって中心部領域Cに到達しにくくなる。そのため、処理ガス同士が中心部領域Cにおいて互いに混ざり合うことが防止される。
【0071】
一方、分離ガス供給管51からこの中心部領域Cに供給された分離ガスは、周方向に勢いよく拡散しようとするが、ラビリンス構造部110を設けているため、ラビリンス構造部110を乗り越えるうちに流速が抑えられていく。この場合、窒素ガスは、例えば回転テーブル2と突起部92との間の極めて狭い領域へも侵入しようとするが、ラビリンス構造部110により流速が抑えられているので、例えば搬送口15付近等の比較的広い領域へと流れていく。そのため、筐体90の下方側への窒素ガスの流入が抑えられる。
【0072】
回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、
図1に示すように、加熱機構であるヒータユニット7が設けられている。ヒータユニット7は、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWを例えば室温〜760℃程度に加熱することができる構成となっている。なお、
図1における参照符号71aは、ヒータユニット7の側方側に設けられたカバー部材であり、参照符号7aは、このヒータユニット7の上方側を覆う覆い部材である。また、真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側において、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が、周方向に亘って複数個所に設けられている。
【0073】
図2に示すように、真空容器1の側壁には、ウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。この搬送口15は、ゲートバルブGより気密に開閉自在に構成されている。真空容器1の外部には、図示しない搬送アームが設けられ、搬送アームを用いて真空容器1内にウエハWを搬送する。
【0074】
回転テーブル2の凹部24は、この搬送口15に対向する位置にて図示しない搬送アームによりウエハWの受け渡しが行われる。そのため、回転テーブル2の下方側の受け渡し位置に対応する箇所には、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための図示しない昇降ピン及び昇降機構が設けられている。
【0075】
また、本実施形態に係る成膜装置には、装置全体の動作を制御するためのコンピュータからなる制御部120が設けられている。この制御部120のメモリ内には、後述の基板処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは、装置の各種動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスク等の記憶媒体である記憶部121から制御部120内にインストールされる。
【0076】
〔成膜方法〕
次に、本発明の実施形態に係る成膜方法について説明する。本発明の実施形態に係る成膜方法は、ALD法(Atomic Layer Deposition、原子層堆積方法)又はMLD法(Molecular Layer Deposition、分子層堆積方法)による成膜が可能な成膜装置であれば、種々の成膜装置により実施することができるが、本実施形態では、上述の回転テーブル式の成膜装置を用いて実施する例について説明する。
【0077】
なお、第1のプラズマ処理を行う第2の処理領域P2におけるプラズマ発生器81aと回転テーブル2との間の距離は90mm、第2のプラズマ処理を行う第3の処理領域P3におけるプラズマ発生器81bと回転テーブル2との間の距離は60mmに設定した例を挙げて説明する。また、原料ガスノズル31から供給する原料ガスとしてはDCS(SiH
2Cl
2、ジクロロシラン)とN
2の混合ガス、第1のプラズマ処理用ガスノズル32から供給する第1のプラズマ処理用ガスとしてはNH
3、Ar及びH
2の混合ガス、第2のプラズマ処理用ガスノズル33から供給する第2のプラズマ処理用ガスノズルとしてはN
2、Ar及びH
2の混合ガスを用いる例を挙げて説明する。但し、これらは一例として挙げるものであり、原料ガスとしては種々のSi含有ガス、第1のプラズマ処理用ガスとしては種々のNH
3含有ガス、第2のプラズマ処理用ガスとしては種々のN
2含有ガスを用いることができる。
【0078】
図9は、本発明の実施形態に係る成膜方法を説明するための図である。
【0079】
成膜方法の実施に先立ち、ウエハWを真空容器1内に搬入する。具体的には、先ず、ゲートバルブGを開放する。そして、回転テーブル2を間欠的に回転させながら、搬送アーム(図示せず)により搬送口15を介して回転テーブル2上に載置する。
【0080】
次いで、ゲートバルブGを閉じて、ヒータユニット7により、ウエハWを所定の温度に加熱する。なお、ウエハWの温度は、アンモニアラジカルでウエハWの表面を窒化できる温度に設定され、例えば、400℃以上800℃以下に設定される。続いて、原料ガスノズル31から原料ガスを、所定の流量で吐出すると共に、第1のプラズマ処理用ガスノズル32及び第2のプラズマ処理用ガスノズル33から、所定の流量で第1及び第2のプラズマ処理用ガスを各々供給する。
【0081】
そして、圧力調整部65により真空容器1内を所定の圧力に調整する。また、プラズマ発生部81a、81bでは、各々、アンテナ83に対して、所定の出力の高周波電力を印加する。高周波電力は、例えば、5kWに設定してもよい。
【0082】
図9(a)は、ウエハWの初期状態の一例を示した図である。ウエハWの表面には、トレンチ、ビア等の窪みパターンが形成されている。ここでは、ウエハWの表面にトレンチTが形成されている例を挙げて説明する。
図9(a)に示されるように、トレンチTを含むウエハWの表面には、OH基が吸着している。
【0083】
図9(b)は、窒化工程の一例を示した図である。窒化工程では、ウエハWにプラズマ化されたNH
3含有ガス(第1のプラズマ処理用ガス)が供給され、トレンチTを含むウエハWの表面が窒化される。具体的には、回転テーブル2を回転させると、ウエハWは第2の処理領域P2を通過し、第1のプラズマ処理用ガスノズル32からAr/NH
3/H
2の混合ガスが供給され、これがプラズマ発生器81aによりプラズマ化される。かかるプラズマ化されたNH
3によりトレンチTを含むウエハWの表面が窒化され、表面にNH
2基が吸着する。
【0084】
なお、窒化工程では、ウエハWの表面全体を均一に窒化すべく、NH
3含有ガスが供給される。プラズマ化したNH
3は、プラズマの寿命が比較的長く、第2の処理領域P2の全体に拡散し、トレンチTの奥(底面)まで到達し、トレンチT内を含むウエハWの表面全体を窒化する。NH
3プラズマの寿命が長いため、全体を均一に窒化すべく、プラズマ発生器81aと回転テーブル2との距離も比較的大きく設定される。本実施形態では、プラズマ発生器81aと回転テーブル2との距離は90mmに設定されているが、第3の処理領域P3におけるプラズマ発生器81bと回転テーブル2との間の距離より大きい限り、種々の値とすることができる。例えば、プラズマ発生器81aと回転テーブル2との距離は、80mm以上150mm以下に設定されてもよい。なお、プラズマ発生器81aと回転テーブル2との間の距離は、筐体90の底面と回転テーブル2の表面との間の距離、即ち、筐体90の底面の高さを調整することにより、種々の値に設定することができる。
【0085】
図9(c)は、NH
2基130が、トレンチTを含むウエハWの表面上に吸着した状態を模式的に示した図である。
図9(c)に示されるように、NH
2基130は、トレンチTを含むウエハWの表面上にコンフォーマルに形成される。
【0086】
図9(d)は、吸着サイト制御工程の一例を示した図である。吸着サイト制御工程では、ウエハWにプラズマ化したN
2含有ガス(第2のプラズマ処理用ガス)が供給され、トレンチTの上部及びウエハWの上面のNH
2基がN基に変換される。具体的には、回転テーブル2の回転により、ウエハWは第3の処理領域P3を通過し、第2のプラズマ処理用ガスノズル33からN
2/Ar/H
2の混合ガスが供給され、プラズマ発生器81bによりプラズマ化される。プラズマ化されたN
2は、寿命が比較的短いため、トレンチTの奥までは到達せず、トレンチTの上部とウエハWの上面のみ、NH
2基からHを除去し、N基に変換する。NH
2基は、DCS等の原料ガスに対して吸着基として機能するが、N基は非吸着基として機能するため、トレンチTの上部及びウエハWの上面に非吸着サイトが形成され、トレンチTの底部付近に吸着サイトが形成された状態となる。
【0087】
ここで、N
2は、寿命が短いため、プラズマ発生器81bと回転テーブル2との距離は、第2の処理領域P2におけるプラズマ発生器81aと回転テーブル2との間の距離よりも短く設定される。本実施形態では、プラズマ発生器81bと回転テーブル2との間の距離を60mmに設定しているが、第2の処理領域P2におけるプラズマ発生器81aと回転テーブル2との間の距離よりも短く設定されていれば、種々の値とすることができる。例えば、第3の処理領域P3におけるプラズマ発生器81bと回転テーブル2との間の距離は、20mm以上80mm未満に設定してもよい。
【0088】
なお、トレンチTの上部のNH
2基のみからHを抜き、N基に変換すべく、N
2の流量、高周波電力の大きさ、プラズマ発生器81bと回転テーブル2の表面との距離等の種々の条件を適宜変更し、適切な値に設定することができる。
【0089】
また、本実施形態では、第2のプラズマ処理用ガスとして、N
2/Ar/H
2の混合ガスを用いているが、N
2を含有する限り、種々のN
2含有ガスを用いることができる。
【0090】
図9(e)は、NH
2基130の一部がN基131に変換した状態を模式的に示した図である。
図9(e)に示されるように、トレンチTの上部及びウエハWの上面に形成されたNH
2基130は、N基131に変換される。
【0091】
次に、回転テーブル2の回転により、ウエハWは分離領域Dの下方を通過し、分離ガスが供給されてパージされる。なお、分離ガス(パージガス)は、N
2、Ar等が用いられる。ウエハWは、分離領域Dを通過後、第1の処理領域P1に到達する。
【0092】
図9(f)は、原料吸着工程の一例を示した図である。原料吸着工程では、ウエハWに原料ガスが供給され、原料ガスが選択的にトレンチT内のNH
2基130上に吸着する。具体的には、ウエハWは第1の処理領域P1を通過し、原料ガスノズル31からDCSが供給される。DCSは、NH
2基130上には吸着するが、N基131上には吸着しない。よって、トレンチTの底面付近にのみDCSが吸着する。
【0093】
図9(g)は、DCSが選択的に吸着した状態を模式的に示した図である。
図9(g)に示されるように、トレンチTの底面付近にDCS132が吸着しており、トレンチTの上部及びウエハWの上面には、DCS132はあまり吸着していない。よって、ボトムアップするような形でトレンチT内にDCS132が埋め込まれる。このように、本実施形態に係る成膜方法によれば、選択的にDCS132を吸着させることができ、ボトムアップ性の高い埋め込み成膜を行うことができる。
【0094】
次いで、回転テーブル2の回転により、ウエハWは分離領域Dの下方を通過し、分離ガスが供給されてパージされる。その後、ウエハWは、第2の処理領域P2に到達する。
【0095】
第2の処理領域P2をウエハWが通過すると、再び
図9(b)、(c)で説明した窒化工程が行われる。以下、回転テーブル2の回転に伴い、ウエハWは
図9(b)〜(g)で説明した窒化工程、吸着サイト制御工程及び原料吸着工程を繰り返し、トレンチT内の底面からボトムアップするように埋め込み成膜が行われる。そして、トレンチT内にSiN膜が埋め込まれて成膜され、トレンチT内が総て埋め込まれた段階で、成膜処理が終了する。これにより、本発明の実施形態に係る成膜方法が終了する。
【0096】
成膜処理が終了したら、ガスノズル31〜33、41、42からのガスの供給を停止するとともに、回転テーブル2の回転も停止する。そして、ゲートバルブGを開放し、成膜処理後のウエハWを、搬送アーム(図示せず)を用いて搬送口15から搬出する。総てのウエハWの搬出を終えたら、成膜処理の総てが終了する。必要に応じて、次に処理すべきウエハWを搬入し、また同様に成膜処理を実施する。
【0097】
このように、本発明の実施形態に係る成膜方法によれば、良好なボトムアップ性でトレンチT、ビア等の窪みパターンにシリコン窒化膜を埋め込むことができるので、シリコン窒化膜のボイドの発生を防止することができる。
【0098】
図10は、
図9で説明した成膜方法を、反応モデルで示した図である。
【0099】
図10(a)は、初期のウエハWの表面状態の一例を示した図である。初期状態では、ウエハWの表面には、OH基が形成されている。
【0100】
図10(b)は、窒化工程におけるウエハWの表面状態の一例を示した図である。窒化工程では、ウエハWの表面にプラズマ化したNH
3/H
2/Arの混合ガスが供給され、ウエハWの表面にNH
2基が形成される。
【0101】
図10(c)は、吸着サイト制御工程におけるウエハの表面状態の一例を示した図である。吸着サイト制御工程においては、ウエハWの表面にプラズマ化したN
2/H
2/Arの混合ガスが供給され、改質を行うとともに、NH
2基の一部をN基に変換する。なお、かかる吸着サイト及び非吸着サイトの形成は、トレンチの深さ方向で制御する。つまり、トレンチの上部に非吸着サイトを形成し、トレンチの中段から下部に吸着サイトを残す。
【0102】
図10(d)は、原料吸着工程におけるウエハの表面状態の一例を示した図である。原料吸着工程においては、原料ガスであるDCS(SiH
2Cl
2)をウエハWの表面に供給するが、DCSは、吸着サイトであるNH
2基に選択的に化学吸着し、N基には吸着しない。これにより、選択的な埋め込み成膜が可能となる。
【0103】
なお、以降、
図10(b)〜(d)が繰り返され、トレンチ内にSiN膜が充填されてゆく。
【0104】
〔実施例〕
図11は、本発明の実施形態に係る成膜方法を実施した実施例の結果を、比較例とともに示した図である。比較例1、2及び実施例の結果が
図1に示されている。
【0105】
本実施例に係る成膜方法は、上述の回転テーブル式の成膜装置を用いて実施した。また、第2の処理領域P2におけるプラズマ発生器81aと回転テーブル2の表面との間の距離は90mm、第3の処理領域P3におけるプラズマ発生器81bと回転テーブル2の表面との間の距離は60mmに設定した。また、高周波電力の出力は5kWとした。第2の処理領域P2における第1のプラズマ処理用ガスノズル32からは、NH
3/H
2/Arの混合ガスを、300/600/2000sccmの流量で供給した。
【0106】
第3の処理領域P3の第2のプラズマ処理用ガスノズル33からは、NH
3/N
2/Arの混合ガスを、流量条件を変更して供給した。比較例1では、NH
3/N
2/Ar=2000/0/2000sccm(NH
3/N
2=2000/0sccm)とした。比較例2では、NH
3/N
2/Ar=1500/500/2000sccm(NH
3/N
2=1500/500sccm)とした。実施例では、NH
3/N
2/Ar=0/1500/2000sccm(NH
3/N
2=0/2000sccm)とした。
【0107】
比較例1は、第2のプラズマ処理用ガスの窒化ガスをNH
3のみとした例であり、比較例2は、第2のプラズマ処理用ガスの窒化ガスをNH
3/N
2の混合ガスとし、NH
3の流量を多くした例である。実施例は、第2のプラズマ処理用ガスの窒化ガスをN
2のみとした例である。
【0108】
図11は、比較例1、2及び実施例を実施した後のトレンチを示す図であり、比較例1の22nmの膜厚を100%の基準状態とした。なお、
図11中には、膜厚を測定した箇所が破線の丸で示されており、その箇所の膜厚が記載されている。
【0109】
比較例2では、比較例1と比較すると、底部BTMの膜厚が96%となっており、他の部分での膜厚は100%であるので、底部よりも上部の方がやや厚く成膜されている。
【0110】
一方、実施例においては、底部BTM及び下から2番目の2μmの部分の膜厚が115%であり、上部の100%、105%の膜厚よりも厚く成膜されていることが示されている。このように、本実施例に係る成膜方法によれば、選択的に埋め込み成膜を行うことができ、ボトムアップ性の良好な埋め込み成膜を行うことができることが
図11により示された。
【0111】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。